JP3910282B2 - 架橋エラストマーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧縮永久歪みや引張永久伸び等のクリープが小さく(低クリープ)、しかも、引張破断強さや引張破断伸び等の機械的強度等の各種物性に優れた架橋エラストマーを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
広範囲の分野で使用されているゴムと称される材料は、一般に、いわゆる生ゴムに補強を目的として、カーボンブラック等のフィラーや、架橋剤等の各種添加剤を混練し、さらに、加硫と称される後架橋工程にて該生ゴムを架橋させることによって得られる架橋ゴムを指している。上記の後架橋工程は、ゴムに機械的強度やゴム弾性、耐久性等を付与するために、欠かすことのできない工程である。
【0003】
ところが、上記工程を経て最終製品である架橋ゴムを製造する方法は、工程数が多くなることに加えて、各工程にて多大なエネルギと時間とを費やさなければならない。従って、架橋ゴムの製造に莫大なコストがかかってしまう。
【0004】
フィラーや添加剤を混練する混練工程にて費やされるエネルギと時間とを削減するために、生ゴムに滑剤やオイル、低分子化合物等の添加剤を添加することによって混練物の低粘度化を計る方法も行われている。しかしながら、この方法は、該添加剤が架橋ゴムの各種物性に悪影響を及ぼす場合が多い。また、液状ポリイソプレンや液状ポリウレタン等の液状ゴムにおいては、混練工程にて費やされるエネルギと時間とを或る程度削減することが可能であるものの、原料費が高くなるという難点を有している。その上、これら方法においても、後架橋工程は不可欠の工程である。
【0005】
そこで、近年、生ゴムから架橋ゴムを製造する上記方法に代わる方法として、架橋工程を簡略化する方法が種々提案されている。例えば、特開昭56−74110号公報や特開昭57−179209号公報には、金属塩ビニルモノマーを含むアクリル系モノマー混合物をラジカル重合することにより、イオン架橋アクリル樹脂(アクリルゴム)を製造する方法が開示されている。該製造方法においては、後架橋工程を必要としないので、ゴム弾性および延性に優れた架橋ゴム(架橋エラストマー)を、簡単な工程で以て製造することができる。つまり、上記の製造方法においては、架橋性モノマーである金属塩ビニルモノマーを含むアクリル系モノマー混合物をラジカル重合するので、いわゆる1potで架橋ゴムを得ることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の製造方法では、アクリル系モノマー混合物における金属塩ビニルモノマーの含有量を高めること、つまり、金属塩ビニルモノマーの濃度を高めることに限界がある。従って、上記従来の製造方法では、架橋ゴムの架橋度をさらに高めることによって機械的強度等の各種物性をより一層向上させることに限界がある。また、イオン架橋された架橋ゴムは、引張破断強さや引張破断伸び等の機械的強度が改善(向上)されるものの、圧縮永久歪みや引張永久伸び等のクリープが逆に大きくなる。その結果、上記従来の製造方法で得られる架橋ゴムは、非架橋ゴムと同程度にクリープが大きくなってしまうという、物性上の問題点を有している。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、圧縮永久歪みや引張永久伸び等のクリープが小さく(低クリープ)、しかも、引張破断強さや引張破断伸び等の機械的強度等の各種物性に優れた架橋エラストマーを、混練工程にて費やされるエネルギと時間とを削減し、しかも、後架橋工程を必要としない簡便な工程で生産性良く、かつ、安価に製造することができる方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明者等は、上記の目的を達成すべく、架橋エラストマーの製造方法について鋭意検討した。その結果、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、かつ、分子内に複数個の重合性基を有する化合物を含む重合性モノマー組成物に、平均一次粒子径が1nm〜200nmの範囲内であるカーボンブラック等の微粒子を含有させて配合組成物を形成した後、該配合組成物を重合することにより、該微粒子を配合することによって生じる補強効果が顕著に発揮された架橋エラストマー、つまり、上記の目的を達成することができる架橋エラストマーを、簡便な工程で生産性良く、かつ、安価に製造することができることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明の架橋エラストマーの製造方法は、上記の課題を解決するために、分子内に複数個の重合性基を有する化合物を含む重合性モノマー組成物に、平均一次粒子径が1nm〜200nmの範囲内である微粒子を含有させて配合組成物を形成した後、該配合組成物を重合する架橋エラストマーの製造方法であって、分子内に複数個の重合性基を有する化合物が、多価金属塩ビニル化合物を含有することを特徴としている。
【0010】
本発明の架橋エラストマーの製造方法は、上記の課題を解決するために、分子内に複数個の重合性基を有する化合物が、多価金属塩ビニル化合物および分子内に複数個のビニル基を有する重合体からなることを特徴としている。
【0011】
本発明の架橋エラストマーの製造方法は、上記の課題を解決するために、上記の架橋エラストマーの製造方法において、重合性モノマー組成物の主成分が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることを特徴としている。
【0012】
本発明の架橋エラストマーの製造方法は、上記の課題を解決するために、上記の架橋エラストマーの製造方法において、微粒子が、カーボンブラック、および/または、ポリマー処理されたカーボンブラックであることを特徴としている。
【0013】
本発明の架橋エラストマーの製造方法は、上記の課題を解決するために、上記の架橋エラストマーの製造方法において、微粒子が、含水ケイ酸および/または含水ケイ酸金属塩であることを特徴としている。
【0014】
上記の方法によれば、重合性モノマー組成物に微粒子を含有させて配合組成物を形成した後、該配合組成物を重合する。つまり、架橋エラストマーは、微粒子の存在下で重合性モノマー組成物、即ち、配合組成物を重合させることによって製造される。このため、上記の方法によって得られる架橋エラストマーにおける重合物(マトリクス)と微粒子との接着強度は、従来の架橋ゴムにおける生ゴムとフィラーとの接着強度よりも大きい。従って、単位重量当たりの微粒子の補強効果は、フィラーの補強効果よりも大きくなるので、得られる架橋エラストマーは、該微粒子を配合することによって生じる補強効果が顕著に認められ、例えば、引張破断伸びを実質的に低下させることなく、引張破断強さを大幅に向上させることができる。また、上記の方法によれば、微粒子を重合性モノマー組成物に含有させて配合組成物を形成する。従って、生ゴムにフィラー等を混練する混練工程を行う従来の製造方法と比較して、配合組成物を得るのに、遙に少ないエネルギおよび時間しか必要としない。即ち、本発明にかかる製造方法においては、配合組成物を、従来の混練工程にて費やされるエネルギおよび時間よりも遙に少ないエネルギおよび時間で以て得ることができる。
【0015】
これにより、圧縮永久歪みや引張永久伸び等のクリープが小さく(低クリープ)、しかも、引張破断強さや引張破断伸び等の機械的強度等の各種物性に優れた架橋エラストマーを、混練工程にて費やされるエネルギと時間とを削減し、しかも、後架橋工程を必要としない簡便な工程で生産性良く、かつ、安価に製造することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる架橋エラストマーの製造方法は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする重合性モノマー組成物に、平均一次粒子径が1nm〜200nmの範囲内であるカーボンブラック等の微粒子を含有させて配合組成物を形成した後、該配合組成物を重合する方法である。
【0017】
本発明にかかる重合性モノマー組成物とは、分子内に複数個の重合性基を有する化合物(以下、多官能性化合物と記す)と、分子内に1個の重合性基を有する化合物(以下、単官能性化合物と記す)とから構成される組成物である。
【0018】
上記の単官能性化合物としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが特に好ましい。該(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル;が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら化合物は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。このうち、アクリル酸エチルおよび/またはアクリル酸−n−ブチルを主成分とする(メタ)アクリル酸アルキルエステル、並びに、アクリル酸エチルおよび/またはアクリル酸−n−ブチルと、メタクリル酸アルキルエステルとを組み合わせてなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
【0019】
重合性モノマー組成物における該(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、30重量%〜99重量%の範囲内が好ましい。該割合が30重量%未満である場合には、得られる架橋エラストマー(以下、単にエラストマーと記す)の各種物性、特に、耐熱性、耐油性、耐候性等が低下することがある。
【0020】
また、上記の単官能性化合物として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル或いは多官能性化合物と共重合可能な化合物(以下、単官能ビニルモノマーと記す)を用いることもできる。つまり、本発明においては、上記の単官能性化合物として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと単官能ビニルモノマーとを併用することができる。
【0021】
該単官能ビニルモノマーとしては、具体的には、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル等のアクリル酸アルコキシアルキルエステル;メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸ブトキシエチル等のメタクリル酸アルコキシアルキルエステル;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有ビニル化合物;ビニルクロロアセテート、アリルクロロアセテート、ビニルベンジルクロライド等のハロゲン基含有ビニル化合物;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、エチレングリコールモノアリルエーテル等の水酸基含有ビニル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル化合物;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のアミノ基含有ビニル化合物;ビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン等のシリル基含有ビニル化合物;シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド等のマレイミド類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル化合物;ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン等の脂環式ビニル化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;クロロプレン、イソプレン等のオレフィン化合物;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら化合物は、必要に応じて、一種類を用いてもよく、また、二種類以上を用いてもよい。
【0022】
本発明にかかる多官能性化合物としては、例えば、多官能ビニルモノマーが挙げられる。具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジフタレートのジ(メタ)アクリレート化物、ジエチレングリコールジフタレートのジ(メタ)アクリレート化物、ジビニルベンゼン、ダイマー酸のジグリシジル(メタ)アクリレート化物、等の二官能ビニル化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の三官能ビニル化合物;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら化合物は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0023】
重合性モノマー組成物における該多官能ビニルモノマーの割合は、0.5重量%〜10重量%の範囲内が好ましい。該割合が0.5重量%未満である場合には、得られるエラストマーの圧縮永久歪みや引張永久伸び等のクリープが大きくなり、ゴム弾性が不良となるので好ましくない。また、該割合が10重量%を越える場合には、エラストマーの機械的強度や伸びが低下して靱性が乏しくなるので好ましくない。
【0024】
また、上記の多官能性化合物として、多官能ビニルモノマーの他に、分子内に複数個のビニル基を有する重合体(以下、ビニル基含有重合体と記す)を用いることもできる。つまり、本発明においては、上記の多官能性化合物として、多官能ビニルモノマーおよび/またはビニル基含有重合体を用いることができる。
【0025】
該ビニル基含有重合体は、本発明における重合性モノマー組成物を構成するビニル基含有重合体以外の成分(他の成分)に溶解し、かつ、これら他の成分と共重合可能な重合体であればよく、特に限定されるものではない。より具体的には、上記のビニル基含有重合体は、数平均分子量(Mn)が500以上であり、かつ、重合反応に関与するビニル基を側鎖および/または末端に2つ以上有する重合体であればよい。ビニル基含有重合体の合成方法は、特に限定されるものではない。該ビニル基含有重合体としては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、ポリビニルエステル、不飽和ポリエステル、或いは、これら重合体をスチレンや(メタ)アクリル酸アルキルエステル等のビニルモノマーに溶解させてなる組成物等が挙げられる。
【0026】
尚、重合性モノマー組成物の重合反応において、ビニル基含有重合体は、該ビニル基の部分が重合に関与する。従って、ビニル基含有重合体は、該重合反応においてはモノマーの一種であると見なすことができるので、本発明においては、ビニル基含有重合体をモノマーの範疇に含めることとする。
【0027】
上記の(メタ)アクリル酸エステル系重合体としては、例えば、前記した(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする、ビニル化合物の混合物を、溶液重合や塊状重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の方法でビニル重合した後、得られる重合体(以下、重合体Aと記す)にビニル基を導入することによって合成される化合物が挙げられるが、特に限定されるものではない。上記混合物における(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外のビニル化合物としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、スチレン、アクリロニトリル、マレイミド類等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0028】
上記の重合体Aにビニル基を導入する方法としては、具体的には、例えば、(1)重合体Aがカルボキシル基を有している場合には、該重合体Aに(メタ)アクリル酸グリシジルエステル類を反応させる方法;(2)重合体Aがヒドロキシル基を有している場合には、該重合体Aにトルエンジイソシアネート等の多官能イソシアネートを反応させた後、該反応生成物にヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有ビニルモノマーを反応させる方法;等を採用することができる。尚、上記方法においては、必要に応じて、触媒や重合禁止剤等を用いることができる。
【0029】
また、例えば、前記した(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする、ビニル化合物の混合物を塊状重合し、該重合反応を中断して得られるポリマーシラップ(つまり、重合体Aと、未反応の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含む混合物)にビニル基を導入することによって、(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含む(メタ)アクリルシラップを得ることもできる。この場合、該(メタ)アクリルシラップには(メタ)アクリル酸アルキルエステルが含まれている。従って、重合性モノマー組成物を形成する際には、該(メタ)アクリルシラップにおける(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量を考慮する必要がある。つまり、重合性モノマー組成物における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合が所望する割合となるように、上記(メタ)アクリルシラップの使用量を決定する必要がある。
【0030】
上記のポリビニルエステルとしては、例えば、エポキシ系ビニルエステル、ウレタン系ビニルエステル、ポリエステル系ビニルエステル等の公知のポリビニルエステルが挙げられるが、特に限定されるものではない。エポキシ系ビニルエステルは、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させてなる化合物である。該エポキシ樹脂としては、具体的には、例えば、ビスフェノール類やノボラックフェノール類のグリシジルエーテル化物等が挙げられる。ウレタン系ビニルエステルは、ポリイソシアネート化合物に(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを反応させてなる化合物である。該ポリイソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。ポリエステル系ビニルエステルとしては、例えば、カルボキシル基を両末端に有するオリゴエステルに(メタ)アクリル酸グリシジルエステル類を反応させてなる化合物や、ヒドロキシル基を両末端に有するオリゴエステルに(メタ)アクリル酸を反応させてなる化合物等が挙げられる。
【0031】
上記の不飽和ポリエステルとしては、例えば、酸成分とアルコール成分とを縮合させることにより得られる公知の化合物が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、該縮合反応の反応条件も、特に限定されるものではない。酸成分としては、具体的には、例えば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、アジピン酸等の、飽和多塩基酸並びにその無水物;マレイン酸、フマル酸等の、不飽和多塩基酸並びにその無水物;等が挙げられる。アルコール成分としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等の二官能アルコール;トリメチロールプロパン等の三官能アルコール;エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のモノエポキシド;等が挙げられる。また、不飽和ポリエステルは、ジシクロペンタジエン等のジエン化合物;官能基を末端に有するブタジエン−アクリロニトリル共重合体等のゴム成分;等の種々の化合物によって変性されていてもよい。
【0032】
上記のビニル基含有重合体は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。このうち、(メタ)アクリル酸エステル系重合体がより好ましい。重合性モノマー組成物におけるビニル基含有重合体の割合は、1重量%〜50重量%の範囲内が好ましい。該割合が1重量%未満である場合には、得られるエラストマーの圧縮永久歪みや引張永久伸び等のクリープが大きくなり、ゴム弾性が不良となるので好ましくない。また、該割合が50重量%を越える場合には、エラストマーの機械的強度や伸びが低下して靱性が乏しくなるので好ましくない。
【0033】
上記のビニル基含有重合体を多官能性化合物として用いることにより、重合性モノマー組成物に適度な粘性を付与することができると共に、例えば増粘剤の添加による増粘効果を利用して粘度を調節することができるので、重合性モノマー組成物に対する本発明にかかる微粒子の分散安定性や、必要に応じて添加される種々の添加剤(後述する)の混合性や分散安定性を向上させることができる。また、得られる配合組成物を重合させる際の取り扱い性や成形性、作業性、生産性等をより一層向上させることができる。
【0034】
さらに、上記の多官能性化合物として、多官能ビニルモノマー並びにビニル基含有重合体の他に、多価金属塩ビニル化合物(以下、金属塩モノマーと記す)を用いる。つまり、本発明においては、上記の多官能性化合物として、金属塩モノマーを単独で用いてもよく、或いは、金属塩モノマーと、多官能ビニルモノマーおよび/またはビニル基含有重合体とを併用してもよい。
【0035】
該金属塩モノマーは、多価金属化合物とカルボキシル基含有ビニルモノマーとの反応生成物(塩)である。多価金属化合物としては、例えば、金属酸化物、金属水酸化物、金属塩化物、炭酸金属塩等の無機多価金属化合物;酢酸金属塩等のカルボン酸多価金属塩、アセチルアセトン錯体等の錯体、金属プロピラートや金属ブチラート等の多価金属アルコラート、等の有機多価金属化合物;が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら化合物は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0036】
このうち、多価金属酸化物および多価金属水酸化物が、カルボキシル基含有ビニルモノマーとの反応性に、より一層優れているので、さらに好ましい。該多価金属酸化物としては、具体的には、例えば、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化マグネシウム等が挙げられるが、特に限定されるものではない。該多価金属水酸化物としては、具体的には、例えば、水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等が挙げられるが、特に限定されるものではない。上記の多価金属酸化物や多価金属水酸化物を用いることにより、得られるエラストマーの機械的強度等の物性がより一層向上する。
【0037】
本発明にかかるカルボキシル基含有ビニルモノマーは、分子内にカルボキシル基を有するビニルモノマーであればよい。該カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸;2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸、2−メタクリロイルオキシエチルピロメリット酸等の、エステル基を有する不飽和カルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;マレイン酸モノメチルエステル等の、不飽和ジカルボン酸と一価アルコールとのモノエステル;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら化合物は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。このうち、アクリル酸とメタクリル酸とを併用することがより好ましい。
【0038】
上記の多価金属化合物とカルボキシル基含有ビニルモノマーとを、本発明における重合性モノマー組成物を構成する金属塩モノマー以外の成分(他の成分)の一部または全部(以下、これら他の成分を選択モノマーと記す)の存在下で反応させることにより、金属塩モノマーが簡単に得られる。また、該反応は、上記の選択モノマーに、本発明にかかる微粒子や、必要に応じて添加される種々の添加剤や合成樹脂(後述する)等を配合、分散してなる分散物の存在下で行うこともできる。尚、該反応方法については後述する。
【0039】
重合性モノマー組成物における金属塩モノマーの割合は、0.5重量%〜20重量%の範囲内が好ましい。該割合が0.5重量%未満である場合には、得られるエラストマーの機械的強度が低下するので好ましくない。また、該割合が20重量%を越える場合には、エラストマーのクリープが大きくなるので好ましくない。従って、上記多価金属化合物並びにカルボキシル基含有ビニルモノマーの使用量は、得られる金属塩モノマーの割合が上記範囲内となるように設定すればよい。
【0040】
カルボキシル基含有ビニルモノマーと多価金属化合物との当量比(カルボキシル基含有ビニルモノマー/多価金属化合物)は、カルボキシル基含有ビニルモノマーの組成や多価金属化合物の種類、両者の組み合わせ、エラストマーの用途、該エラストマーに要求される各種物性等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、1.0〜1.2の範囲内がより好ましい。
【0041】
また、カルボキシル基含有ビニルモノマーとして二種類以上の化合物を併用することがより好ましく、アクリル酸とメタクリル酸とを併用することが特に好ましい。そして、例えば二種類の化合物をカルボキシル基含有ビニルモノマーとして用いる場合における両化合物のモル比は、0.2/0.8〜0.8/0.2の範囲内がより好ましく、凡そ1/1が特に好ましい。二種類以上の化合物を併用することにより、一種類の化合物を用いた場合と比較して、得られる金属塩モノマーの選択モノマーに対する溶解性がより一層向上すると共に、より一層安定性に優れた重合性モノマー組成物を形成することができる。即ち、二種類以上の化合物をカルボキシル基含有ビニルモノマーとして併用することにより、選択モノマーに金属塩モノマーをより一層多量に溶解させることができる。二種類以上の化合物を併用することによって金属塩モノマーの溶解性がより一層向上する詳細な理由は明らかではないが、一つの多価金属に互いに異なる化合物が結合してなる複塩、つまり金属塩モノマーが形成されることによって、該金属塩モノマーの結晶性が低下するためではないかと推察される。
【0042】
選択モノマーの存在下で多価金属化合物とカルボキシル基含有ビニルモノマーとを反応させる方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、多価金属化合物とカルボキシル基含有ビニルモノマーとを選択モノマー中で混合し、常温または加熱下で攪拌する方法が挙げられる。これにより、両者の反応が進行して、金属塩モノマーが形成され、選択モノマーに該金属塩モノマーが溶解した状態のモノマー混合物が得られる。選択モノマーに多価金属化合物とカルボキシル基含有ビニルモノマーとを混合する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、(1)選択モノマーに多価金属化合物を混合した後、カルボキシル基含有ビニルモノマーを混合する方法;(2)選択モノマーにカルボキシル基含有ビニルモノマーを混合した後、多価金属化合物を混合する方法;(3)選択モノマーに多価金属化合物とカルボキシル基含有ビニルモノマーとを同時に混合する方法;等が挙げられる。
【0043】
多価金属化合物とカルボキシル基含有ビニルモノマーとの反応が完結したか否かは、例えば用いた多価金属化合物が選択モノマーおよび/またはモノマー混合物に不溶である場合には、モノマー混合物が常温で均一かつ透明となっているか否かで確認すればよい。常温で均一かつ透明なモノマー混合物が得られた時点が、上記反応の終点である。従って、上記時点で、攪拌等の操作を終了すればよい。反応温度や反応時間等の反応条件は、上記反応が進行し、かつ、選択モノマー並びにモノマー混合物が変質しない条件であればよく、特に限定されるものではない。
【0044】
また、上記の反応においては、必要に応じて反応系に水を添加してもよい。つまり、選択モノマーと水との存在下で、多価金属化合物とカルボキシル基含有ビニルモノマーとを反応させてもよい。水の存在下で上記の反応を行うことにより、該反応をより一層速くかつ円滑に進行させることができると共に、得られる金属塩モノマーの選択モノマーに対する溶解性をより一層向上させることができる。水の添加量は、特に限定されるものではないが、多価金属化合物1モルに対して、4.0モル以下となるように設定することがより好ましい。水を添加することによって上記の効果を奏する詳細な理由は明らかではないが、得られる金属塩モノマーに水が配位することによって、該金属塩モノマーが可溶化されるためではないかと推察される。
【0045】
さらに、上記の反応においては、必要に応じて反応系に可溶化剤を添加してもよい。つまり、選択モノマーと可溶化剤との存在下で、多価金属化合物とカルボキシル基含有ビニルモノマーとを反応させてもよい。可溶化剤の存在下で上記の反応を行うことにより、水の存在下で反応を行った場合と同様の効果を奏することができる。可溶化剤の添加量は、特に限定されるものではない。
【0046】
可溶化剤は、一般に金属塩モノマーの可溶化剤として用いられている公知の化合物を採用することができ、特に限定されるものではない。該可溶化剤としては、例えば、長鎖の炭化水素基または脂環式炭化水素基を有するカルボン酸;チオール基を有する含硫黄有機化合物;アミン化合物、イミン化合物、アミド化合物、アンモニウム化合物、含窒素複素環化合物等の、含窒素有機化合物;等が挙げられる。これら化合物は、必要に応じて、一種類を用いてもよく、また、二種類以上を用いてもよい。さらに、水と可溶化剤とを併用することもできる。
【0047】
上記の反応方法により、金属塩モノマーが選択モノマーに溶解した状態で得られるので、モノマー混合物における該金属塩モノマーの濃度を、簡単に比較的高濃度にすることができる。つまり、最終的に形成される重合性モノマー組成物における該金属塩モノマーの濃度を比較的高濃度にすることができるので、得られるエラストマーのイオン架橋度を充分に大きくすることができる。それゆえ、機械的強度や伸び等が向上して、靱性に優れたエラストマーを製造することができる。
【0048】
そして、上記のモノマー混合物に、所望する重合性モノマー組成物が最終的に形成されるように、必要に応じて、他の成分を混合する。上記の方法によれば、モノマー混合物から金属塩モノマーを単離することなく、本発明にかかる重合性モノマー組成物を得ることができる。該重合性モノマー組成物は、安定性に優れているので、長期間放置しても金属塩モノマーが沈降することはない。また、該重合性モノマー組成物は、増粘やゲル化等を生じることもない。
【0049】
本発明においては、多官能性化合物として、多官能ビニルモノマーおよび/またはビニル基含有重合体と、金属塩モノマーとを併用することがより好ましい。これにより、得られるエラストマーの機械的強度並びにクリープ等の各種物性をより一層バランス良く改善することができる。また、ビニル基含有重合体と、金属塩モノマーとを併用することが特に好ましい。これにより、重合性モノマー組成物に適度な粘性を付与することができると共に、例えば増粘剤の添加による増粘効果を利用して粘度を調節することができるので、重合性モノマー組成物に対する本発明にかかる微粒子の分散安定性や、得られる配合組成物を重合させる際の取り扱い性をより一層向上させることができる。
【0050】
また、上記の重合性モノマー組成物には、必要に応じて、該重合性モノマー組成物に溶解若しくは分散する合成樹脂が添加されていてもよい。つまり、配合組成物は、必要に応じて、合成樹脂を含んでいてもよい。配合組成物が合成樹脂を含むことにより、重合性モノマー組成物が多官能性化合物としての金属塩モノマーを含む場合における該金属塩モノマーの溶解性を、さらに一層向上させることができるので、金属塩モノマーの濃度を、より高濃度にすることができる。さらに、重合性モノマー組成物に対する本発明にかかる微粒子の分散安定性や、重合性モノマー組成物、つまり、配合組成物に必要に応じて添加される種々の添加剤の分散安定性をより一層向上させることができる。その上、配合組成物に適度な粘性を付与することができるので、該配合組成物の取り扱い性や成形性、作業性、生産性等をより一層向上させることができる。
【0051】
上記の合成樹脂は、重合性モノマー組成物に溶解若しくは分散し、かつ、配合組成物を重合してなるエラストマーが備えるべき性能(各種物性)を損なわない合成樹脂であればよく、特に限定されるものではない。また、合成樹脂の添加量は、特に限定されるものではない。尚、配合組成物が合成樹脂を含んでいる場合には、重合性モノマー組成物は、微粒子および合成樹脂の存在下で重合されることになる。
【0052】
該合成樹脂としては、具体的には、例えば、ポリアルキル(メタ)アクリレート樹脂、アクリルゴム等のアクリル樹脂;ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ジエン系重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリエステル樹脂;エポキシ樹脂;ポリスチレン樹脂;等の公知の合成樹脂が挙げられる。これら合成樹脂は、必要に応じて、一種類を用いてもよく、また、二種類以上を用いてもよい。このうち、アクリル樹脂が、得られるエラストマーの透明性がより一層良好となるので、より好ましい。
【0053】
本発明にかかる微粒子は、平均一次粒子径が1nm〜200nmの範囲内、より好ましくは10nm〜100nmの範囲内であればよく、特に限定されるものではない。上記の微粒子としては、ゴムを補強するために生ゴムに混練される一般的なフィラーである各種無機粒子、各種有機粒子、および、無機・有機複合粒子が挙げられる。重合性モノマー組成物に微粒子を配合することにより、つまり、重合性モノマー組成物に微粒子を含有させて配合組成物を形成した後、該配合組成物を重合することにより、得られるエラストマーの各種物性を、微粒子が配合されていない従来のエラストマー(架橋ゴム)と比較して、より一層向上させることができる。具体的には、微粒子を配合することによって生じる補強効果によって、例えば、引張破断伸びを実質的に低下させることなく、引張破断強さを大幅に向上させることができる。尚、微粒子の形状は、特に限定されるものではない。
【0054】
微粒子の平均一次粒子径が1nmよりも小さい場合には、重合性モノマー組成物に対する分散安定性が乏しくなるので、安定な状態の配合組成物を調製することが困難となる。一方、微粒子の平均一次粒子径が200nmを越える場合には、その配合量に関係無く、該微粒子が配合された配合組成物を重合することによって得られるエラストマーの各種物性を向上させることが困難となる。具体的には、微粒子を配合することによって生じる補強効果が乏しくなるので、例えば、引張破断強さが殆ど向上しないにも関わらず、引張破断伸びが低下する、或いは、引張破断強さが向上しても、硬さや引張弾性率が増大して引張破断伸びが大幅に低下する、という不都合を生じる。このように、微粒子の平均一次粒子径が上記の範囲を越える場合には、エラストマーの各種物性を向上させる効果が乏しくなる。
【0055】
上記の微粒子としては、具体的には、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;これらカーボンブラックをポリマーで処理してなるポリマーグラフト型カーボンブラック、具体的には、例えば、(1)カーボンブラックと反応し得るアジリジン基等の反応性基を分子内に有する、ポリ(メタ)アクリレート等のポリマーを、カーボンブラックと反応させることによって得られるポリマーグラフト型カーボンブラック、(2)カーボンブラックと反応し得るアジリジン基等の反応性基を分子内に有する、ポリスチレン等のポリマーセグメント、および、上記反応性基を分子内に有しない、ポリアクリレート等のポリマーセグメント、からなるブロック型またはグラフト型のポリマーを、カーボンブラックと反応させることによって得られるポリマーグラフト型カーボンブラック、等;各種界面活性剤や各種樹脂を用いて、その表面を被覆する等の処理が施されたカーボンブラック;含水ケイ酸(SiO2 ・nH2 O)、親水性無水ケイ酸(SiO2)、疎水性無水ケイ酸、含水ケイ酸アルミニウムや含水ケイ酸カルシウム等の含水ケイ酸金属塩、および、これらケイ酸類の複合物等の、いわゆるホワイトカーボン、並びに、界面活性剤等の各種処理剤で処理されたホワイトカーボン;極微細炭酸カルシウム(合成品)、脂肪酸やポリマーで処理してなる極微細炭酸カルシウム、改質クレー、微粉酸化亜鉛、微粉酸化チタン、金属微粒子、金属錯体微粒子、ポリマー微粒子;等が挙げられる。これら微粒子は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。上記例示の微粒子のうち、カーボンブラック、ポリマー処理されたカーボンブラックであるポリマーグラフト型カーボンブラック、含水ケイ酸、含水ケイ酸金属塩がより好ましい。
【0056】
ポリマーグラフト型カーボンブラックは、重合性モノマー組成物に対する分散安定性に優れており、それゆえ、配合組成物における濃度を比較的高濃度となるように配合することができる。ポリマーグラフト型カーボンブラックを形成するのに好適なポリマーとしては、具体的には、例えば、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等が挙げられる。該ポリマーは、重合性モノマー組成物を構成する主成分であるモノマー、例えば、アクリル酸エチルやアクリル酸ブチルの構造に類似した構造を有していることがより好ましい。ポリマーグラフト型カーボンブラックは、例えば、重合性モノマー組成物を構成する主成分であるモノマー、或いは、該モノマーの構造に類似した構造を有しているモノマーに分散させた状態で、つまり、分散液の状態で、重合性モノマー組成物に配合することができる。または、ポリマーグラフト型カーボンブラックの分散液を、配合組成物とすることもできる。
【0057】
含水ケイ酸、含水ケイ酸金属塩、含水ケイ酸と含水ケイ酸金属塩との複合物は、重合性モノマー組成物に対する分散安定性に優れており、それゆえ、配合組成物における濃度を比較的高濃度となるように配合することができる。そして、これらケイ酸化合物が配合された配合組成物を重合することにより、補強効果が特に顕著に発揮されたエラストマーを得ることができる。
【0058】
配合組成物における微粒子の含有量、つまり、重合性モノマー組成物に対する微粒子の配合量は、重合性モノマー組成物の組成、微粒子の種類、重合性モノマー組成物と微粒子との組み合わせ、分散安定性、配合組成物を取り扱う上において許容される粘度、エラストマーに所望する各種物性等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない。微粒子の配合量は、重合性モノマー組成物100重量部に対して、5重量部(5phr (parts per hundred parts of rubber))〜200重量部(200phr)の範囲内がより好ましく、10重量部〜100重量部の範囲内がさらに好ましく、10重量部〜60重量部の範囲内が特に好ましい。従来のエラストマー(架橋ゴム)が生ゴムにフィラー等を混練する混練工程を経て製造されているのに対して、本発明にかかるエラストマーは、微粒子の存在下で重合性モノマー組成物を重合、架橋させることによって製造される。このため、本発明にかかるエラストマーにおける重合物(マトリクス)と微粒子との接着強度は、従来のエラストマーにおける生ゴムとフィラーとの接着強度よりも大きい。従って、単位重量当たりの微粒子の補強効果は、フィラーの補強効果よりも大きくなるので、本発明にかかる製造方法によれば、比較的少ない配合量で以て各種物性に優れたエラストマーを得ることができる。
【0059】
微粒子を重合性モノマー組成物に配合(添加)、分散する方法は、特に限定されるものではない。例えば、ペイントシェーカー、ビーズミル、サンドグラインドミル、2本ロールミル等の分散機を用いて、微粒子を液状の重合性モノマー組成物に分散することによって配合組成物が容易に得られる。また、微粒子として上記ポリマーグラフト型カーボンブラックの分散液や、ケイ酸化合物を用いる場合には、これら化合物が分散安定性に優れているので、ミキサー等を用いた比較的簡便な方法で重合性モノマー組成物に分散することができる。
【0060】
また、微粒子を重合性モノマー組成物に配合する際には、必要に応じて、微粒子の凝集や沈降を抑制するために、該重合性モノマー組成物に公知の分散助剤を適宜添加することができる。または、微粒子を重合性モノマー組成物に分散する際には、必要に応じて、得られる配合組成物の粘度を増加させて微粒子の凝集や沈降を抑制するために、該重合性モノマー組成物に親水性無水ケイ酸、疎水性無水ケイ酸、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物等の増粘助剤を適宜添加することができる。尚、微粒子は、配合組成物内において分散状態で存在していてもよく、或いは、ゾルやコロイドの状態で存在していてもよい。
【0061】
本発明にかかる製造方法においては、微粒子を液状の重合性モノマー組成物に含有させて配合組成物を形成する。従って、生ゴムにフィラー等を混練する混練工程を行う従来の製造方法と比較して、配合組成物を得るのに、遙に少ないエネルギおよび時間しか必要としない。即ち、本発明にかかる製造方法においては、配合組成物を、従来の混練工程にて費やされるエネルギおよび時間よりも遙に少ないエネルギおよび時間で以て得ることができる。
【0062】
上記構成の配合組成物を重合することにより、本発明にかかるエラストマーが得られる。重合方法は、特に限定されるものではなく、例えば、加熱による重合方法;紫外線や、電子線等の放射線を照射する重合方法;ラジカル重合開始剤等の重合開始剤を用いる重合方法;等の公知の種々の重合方法を採用することができる。また、重合反応の形態としては、例えば、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、分散重合等の公知の種々の反応形態を採用することができる。従って、得られるエラストマーは、重合反応の形態等に応じて、シート状、粒状(ビーズ状)、粉体状、微粒子状等の種々の形状で得られる。このうち、配合組成物にラジカル重合開始剤を添加して塊状重合する方法が、製造工程が最も簡便となり、かつ、エラストマーを安価に製造することができるので、特に好ましい。そして、該塊状重合を工業的に実施する場合における好適な形態、つまり、成形方法や塗工方法としては、例えば、注型成形、プレス成形、射出成形、RIM(反応射出成形)、押出成形、積層、スプレー塗工等が挙げられる。
【0063】
上記のラジカル重合開始剤としては、具体的には、例えば、ベンゾイルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等の有機アゾ化合物;ベンゾフェノン、アセトフェノン類、アシルホスフィンオキシド;等が挙げられる。ラジカル重合開始剤の添加量は、特に限定されるものではない。また、重合促進剤を上記ラジカル重合開始剤と併用してもよい。該重合促進剤としては、具体的には、例えば、オクテン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛等の有機金属塩;ジメチルアニリン等の芳香族三級アミン類;トリフェニルホスフィン;等が挙げられる。さらに、重合調節剤(いわゆる重合防止剤)や光増感剤等をラジカル重合開始剤と併用することもできる。該重合調節剤としては、具体的には、例えば、ベンゾキノン、パラメトキシフェノール、ハイドロキノン等が挙げられる。尚、重合促進剤や重合調節剤、光増感剤等を用いる場合におけるこれらの添加量は、特に限定されるものではない。
【0064】
重合反応における反応圧力や反応温度、反応時間等の反応条件は、該重合反応が完結するように、例えば、重合性モノマー組成物の組成;水や可溶化剤、合成樹脂の添加の有無;重合方法;重合反応の形態;添加剤の有無;等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。また、得られるエラストマーの平均分子量も、特に限定されるものではない。
【0065】
また、上記構成の配合組成物を重合する際には、重合性モノマー組成物、つまり、該配合組成物に、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。配合組成物に添加剤を添加することにより、得られるエラストマーに該添加剤を簡単に配合することができる。
【0066】
該添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タルク、クレー等の充填剤(フィラー);酸化亜鉛や酸化マグネシウム、ポリイソシアネート化合物等の増粘剤;ガラス繊維等の補強材;芳香族油等の可塑剤;老化防止剤;顔料等の着色剤;離型剤;顔料分散剤;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、これら添加剤の添加量は、特に限定されるものではない。
【0067】
例えば、ビニル基含有重合体や合成樹脂を含む配合組成物に増粘剤を添加すると、該配合組成物は増粘剤の添加による増粘効果を示す。つまり、増粘効果を利用して粘度を調節することにより、配合組成物に適度な粘性を付与することができる。これにより、配合組成物と、充填剤や補強材、着色剤等の添加剤との混合性、並びに、これら添加剤の分散安定性をより一層向上させることができる。また、該配合組成物の取り扱い性や成形性、作業性をより一層向上させることができる。
【0068】
以上のように、本発明にかかる方法によれば、重合性モノマー組成物に微粒子を含有させて配合組成物を形成した後、該配合組成物を重合する。つまり、エラストマーは、微粒子の存在下で重合性モノマー組成物、即ち、配合組成物を重合させることによって製造される。このため、上記の方法によって得られるエラストマーにおける重合物(マトリクス)と微粒子との接着強度は、従来のエラストマー(架橋ゴム)における生ゴムとフィラーとの接着強度よりも大きい。従って、単位重量当たりの微粒子の補強効果は、フィラーの補強効果よりも大きくなるので、得られるエラストマーは、該微粒子を配合することによって生じる補強効果が顕著に認められ、例えば、引張破断伸びを実質的に低下させることなく、引張破断強さを大幅に向上させることができる。また、上記の方法によれば、微粒子を重合性モノマー組成物に含有させて配合組成物を形成する。従って、生ゴムにフィラー等を混練する混練工程を行う従来の製造方法と比較して、配合組成物を得るのに、遙に少ないエネルギおよび時間しか必要としない。即ち、本発明にかかる製造方法においては、配合組成物を、従来の混練工程にて費やされるエネルギおよび時間よりも遙に少ないエネルギおよび時間で以て得ることができる。
【0069】
これにより、圧縮永久歪みや引張永久伸び等のクリープが小さく(低クリープ)、しかも、引張破断強さや引張破断伸び等の機械的強度等の各種物性に優れたエラストマーを、混練工程にて費やされるエネルギと時間とを削減し、しかも、後架橋工程を必要としない簡便な工程で生産性良く、かつ、安価に製造することができる。
【0070】
本発明にかかるエラストマーは汎用性に優れており、各種用途に好適に供することができる。該用途としては、例えば、自動車用や土木建築用、船舶用等として好適なシール材、ロール材、シーラント(パッキング材)、ホース材等の各種用途;RIM(反応射出成形)にて形成される被塗装外装材や防音用成形品、防振用成形品、或いはFRP(繊維強化プラスチック)との一体成形品等の、ポリオレフィン系やウレタン系等の各種用途(成形材料);塗膜防水等の防水ライニングとしての用途;複写機の内部部材である帯電ローラや転写ローラ、現像ローラ、或いは、フレキシブル印刷板やフォトレジスト等の感光性ゴム、導電性ゴム、吸油性ゴム、吸水性ゴム等の高性能ゴムとしての用途;等が挙げられる。本発明にかかるエラストマーは、これら種々の用途において優れた性能(各種物性)を発揮することができると共に、例えば成形材料として用いた場合においては、成形品の生産性を向上させることができる。
【0071】
【実施例】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。尚、実施例および比較例に記載の「部」は、「重量部」を示している。
【0072】
実施例および比較例にて得られたエラストマーの諸物性、つまり、タイプAデュロメータ硬さ、引張弾性率、引張破断強さ、引張破断伸び、引張永久伸び、および圧縮永久歪みは、JIS K 6301等の試験方法に準じて測定した。
【0073】
即ち、上記引張弾性率、引張破断強さ、引張破断伸びの測定は、厚さ3mmのダンベル2号型試験片を用い、引張速度500mm/分で行った。引張弾性率は、100%伸びでの値を読み取った。また、上記引張永久伸びの測定は、厚さ3mmのダンベル2号型試験片を用い、引張速度を、引張破断伸びの長さの半分の長さを15秒間かけて引っ張ることができるように設定して行った。そして、該測定は、試験片を上記引張速度にて10分間引っ張り、荷重を除いてから10分間経過後における標線間距離を読み取ることにより行った。上記圧縮永久歪みの測定は、直径20mm、厚さ12mmの円柱試験片を用い、圧縮率25%、90℃で70時間圧縮した後、荷重を除くと共に徐冷し、荷重を除いてから30分間経過後における厚さを測定することにより行った。
〔実施例1〕
ビニル基含有重合体としての(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含む(メタ)アクリルシラップを合成した。即ち、攪拌機、冷却管、温度計、およびガス導入管を備えた容量500mlの反応器に、メタクリル酸メチル177部と、メタクリル酸22.8部とを仕込んだ後、該反応器内を窒素ガス置換した。次に、この混合物を攪拌しながら、該混合物に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(ラジカル重合開始剤)0.1部と、n−ドデシルメルカプタン(重合調整剤)0.28部とを添加した。その後、窒素ガス気流下で反応器の内温を80℃に昇温させ、該温度を維持しながら上記混合物を重合させた。
【0074】
そして、重合率が凡そ40%に達した時点、即ち、不揮発分(メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体、つまり、重合体A)の量が凡そ40重量%に達した時点で、反応液に、メタクリル酸グリシジル37.6部、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(触媒)0.15部、およびヒドロキノン(重合禁止剤)0.02部を添加・混合し、反応器を急冷した。
【0075】
急冷後、再び、空気雰囲気下で攪拌しながら反応器の内温を100℃に昇温させ、該温度を維持しながら上記混合物を23時間、反応させた。即ち、重合体Aにメタクリル酸グリシジルを反応させることにより、該重合体Aの側鎖にビニル基を導入した。これにより、ビニル基を側鎖に2つ以上有するメタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体と、未反応のメタクリル酸メチルおよびメタクリル酸とを含む混合物、つまり、メタクリル酸エステル系重合体を含むメタクリルシラップ(以下、シラップAと記す)を得た。
【0076】
該シラップAは透明であり、不揮発分の量が45.1重量%であった。また、シラップA中のメタクリル酸エステル系重合体の酸価は21.0mgKOH/gであった。そして、重合体Aの酸価と、メタクリル酸エステル系重合体の酸価との差が41.7mgKOH/gであることから、重合体Aが有するカルボキシル基のうち、66.5%がビニル基に変換されたことが判った。上記組成のシラップA(つまり、重合性モノマー組成物)を、下記配合組成物の調製に用いた。
【0077】
一方、微粒子としてのポリマーグラフト型カーボンブラックを含むアクリル酸エチル分散液を合成した。即ち、トルエン100部に、ポリアクリル酸ブチルマクロマー(東亞合成株式会社製;商品名 AB−6)75部、スチレン15部、イソプロペニルオキサゾリン10部、および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(ラジカル重合開始剤)3部を溶解させることにより、モノマー混合物を得た。
【0078】
次いで、攪拌機、冷却管、温度計、滴下ロート、およびガス導入管を備えたフラスコに、トルエン50部を仕込んだ後、該フラスコ内を窒素ガス置換した。また、上記のモノマー混合物を滴下ロートに仕込んだ。次に、トルエンを攪拌しながら、窒素ガス気流下、フラスコの内温を80℃に昇温させた。そして、トルエンを80℃で攪拌しながら、該トルエンにモノマー混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、フラスコ内の混合物を窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃で2時間さらに重合させた後、フラスコの内温を100℃に昇温させ、該温度を維持しながら上記混合物の熟成を行った。
【0079】
反応終了後、冷却して内容物を取り出した。これにより、不揮発分の量が39.8重量%である、反応性基としてオキサゾリン基を有する反応性ポリマーのトルエン溶液を得た。該溶液から減圧下でトルエンを留去した後、減圧乾燥機にて乾燥させることにより、不揮発分の量が99.7重量%である反応性ポリマーを得た。そして、アクリル酸エチル52部に、上記の反応性ポリマー8部を溶解させることにより、ポリマー溶液を得た。
【0080】
次に、攪拌機、冷却管、および温度計を備えたセパラブルフラスコに、上記のポリマー溶液60部を仕込んだ後、該フラスコ内に、カーボンブラック(デグサ株式会社製;商品名 SB250,PH3.1;平均一次粒子径56nm)40部を添加して分散させた。さらに、該フラスコ内に、ジルコニア製ビーズ700部を仕込んだ後、回転数700rpmで攪拌しながら、100℃で1時間、グラフト化反応を行った。
【0081】
反応終了後、反応生成物とジルコニア製ビーズとを分離した。これにより、ポリアクリル酸ブチルを主成分とするポリマーがグラフト重合した、微粒子としてのポリマーグラフト型カーボンブラック(以下、グラフト型カーボンと記す)を含むアクリル酸エチル分散液(以下、分散液Bと記す)を得た。
【0082】
該分散液Bの不揮発分の量は49.1重量%であった。分散液Bは比較的低粘度であり、調製した時点から1ヵ月経過した後においても、グラフト型カーボンが沈降または凝集することはなく、安定な状態であった。上記組成の分散液B(つまり、重合性モノマー組成物と微粒子との混合物)を、下記配合組成物の調製に用いた。
【0083】
上記の方法で調製したシラップAおよび分散液Bを用いて、配合組成物を調製した。即ち、攪拌機、冷却管、および温度計を備えた容量200mlの反応器に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしてのアクリル酸エチル34.5部、アクリル酸ブチル16.9部、およびシラップA15部を仕込んで溶解させた。次に、該反応器に、多価金属化合物としての酸化亜鉛2.6部を添加して30分間、攪拌・混合した。一方、カルボキシル基含有ビニルモノマーとしてのアクリル酸2.2部およびメタクリル酸2.7部と、水0.5部とを混合することにより、混合液を調製した。多価金属化合物(酸化亜鉛)とカルボキシル基含有ビニルモノマー(アクリル酸およびメタクリル酸の合計)と水とのモル比は、1.0:2.08:1.0であった。
【0084】
次に、反応器内の混合物に上記の混合液を攪拌しながら添加し、70℃で1時間反応させた。得られた反応混合物(重合性モノマー組成物)は均一かつ透明であり、室温に冷却した後においても、均一かつ透明な状態を維持していた。さらに、該反応混合物は、室温で1週間放置した後においても、均一かつ透明な状態を維持していた。このことから、添加した酸化亜鉛の全量が、アクリル酸およびメタクリル酸の複塩(アクリル酸・メタクリル酸の亜鉛塩、以下、亜鉛複塩と記す)に変換されていることを確認した。金属塩モノマーとしての該亜鉛複塩の生成量は、6.4部であった。
【0085】
上記の方法で調製した反応混合物および分散液Bを用いて、配合組成物を調製した。即ち、上記の反応混合物に前記の分散液B50部を混合、攪拌することにより、本発明にかかる配合組成物を調製した。従って、配合組成物に含まれる重合性モノマー組成物の量は99.9部であり、グラフト型カーボンの量は24.4部(24.4phr)である。そして、重合性モノマー組成物の組成は、多官能性化合物としてのメタクリル酸エステル系重合体(ビニル基含有重合体)6.8部、および亜鉛複塩(金属塩モノマー)6.4部、並びに、単官能性化合物としてのアクリル酸エチル60.0部、アクリル酸ブチル16.9部、メタクリル酸メチル8.2部、(メタ)アクリル酸1.1部、および水0.5部である。配合組成物は比較的低粘度であり、調製した時点から1週間経過した後においても、グラフト型カーボンが沈降または凝集することはなく、安定な状態であった。
【0086】
次に、上記の配合組成物100部に、ラジカル重合開始剤としての硬化剤328E(商品名,化薬アクゾ株式会社製の有機過酸化物)0.8部と、重合促進剤としてのオクテン酸コバルトのミネラルスピリット溶液(コバルト含有量8重量%)0.3部とを添加、混合した。そして、得られた混合物を、2枚のガラス板とシリコーン樹脂製ガスケットとを用いて組み立てたセル中に注入し、55℃で7時間重合した後、120℃で2時間さらに重合させた。これにより、本発明にかかるエラストマーを得た。
【0087】
得られたエラストマーの諸物性を、上記の方法により測定した。その結果、タイプAデュロメータ硬さは88HDA、引張弾性率は90kgf/cm 2 、引張破断強さは197kgf/cm 2 、引張破断伸びは310%、引張永久伸びは3.7%、圧縮永久歪みは35%であった。結果を表1に示す。
〔実施例2〕
実施例1におけるアクリル酸エチルの仕込み量を60.0部に、アクリル酸ブチルの仕込み量を25.0部にそれぞれ変更した以外は、同実施例の反応および操作と同様の反応および操作を行い、反応混合物(重合性モノマー組成物)を得た。得られた反応混合物は均一かつ透明であり、室温に冷却した後においても、均一かつ透明な状態を維持していた。さらに、該反応混合物は、室温で1週間放置した後においても、均一かつ透明な状態を維持していた。このことから、添加した酸化亜鉛の全量が亜鉛複塩に変換されていることを確認した。該亜鉛複塩の生成量は、6.4部であった。
【0088】
上記の方法で調製した反応混合物108部に、微粒子としてのカーボンブラック(東海カーボン株式会社製;商品名 シーストN,LI−HAF;平均一次粒子径29nm)15部を添加した後、ガラス製ビーズを仕込んだペイントシェーカーを用いて30分間、攪拌、分散させた。
【0089】
分散終了後、ガラス製ビーズを分離することにより、本発明にかかる配合組成物を調製した。従って、配合組成物に含まれる重合性モノマー組成物の量は108部であり、カーボンブラックの量は15.0部(13.9phr)である。そして、重合性モノマー組成物の組成は、多官能性化合物としてのメタクリル酸エステル系重合体(ビニル基含有重合体)6.8部、および亜鉛複塩(金属塩モノマー)6.4部、並びに、単官能性化合物としてのアクリル酸エチル60.0部、アクリル酸ブチル25.0部、メタクリル酸メチル8.2部、(メタ)アクリル酸1.1部、および水0.5部である。配合組成物は、チキソトロピー性を有していたが流動性を示し、安定な分散状態を維持していた。
【0090】
次に、上記の配合組成物を用いて、実施例1の反応および操作と同様の反応および操作を行うことにより、本発明にかかるエラストマーを得た。得られたエラストマーの諸物性を、上記の方法により測定した。結果を表1に示す。
〔実施例3〕
実施例2の反応および操作と同様の反応および操作を行い、反応混合物(重合性モノマー組成物)を得た。該反応混合物100部に、微粒子としての含水ケイ酸(株式会社トクヤマ製;商品名 トクシールU;平均一次粒子径15nm〜18nm)20部(20phr)を添加して分散させた。これにより、本発明にかかる配合組成物を調製した。配合組成物は、外観が曇ったゾル状を呈していたが比較的低粘度であり、安定な分散状態を維持していた。
【0091】
次に、上記の配合組成物を用いて、実施例1の反応および操作と同様の反応および操作を行うことにより、本発明にかかるエラストマーを得た。得られたエラストマーの諸物性を、上記の方法により測定した。結果を表1に示す。
〔実施例4〕
実施例2の反応および操作と同様の反応および操作を行い、反応混合物(重合性モノマー組成物)を得た。該反応混合物100部に、微粒子としての含水ケイ酸/炭酸カルシウム複合物(株式会社トクヤマ製;商品名 ソーレックスCM;含水ケイ酸の含有量58.5重量%;平均一次粒子径15nm〜18nm、以下、含水ケイ酸複合物と記す)30部(30phr)を添加して分散させた。これにより、本発明にかかる配合組成物を調製した。配合組成物は、白色で比較的低粘度であり、安定な分散状態を維持していた。
【0092】
次に、上記の配合組成物を用いて、実施例1の反応および操作と同様の反応および操作を行うことにより、本発明にかかるエラストマーを得た。得られたエラストマーの諸物性を、上記の方法により測定した。結果を表1に示す。
〔比較例1〕
アクリル酸エチル60部、アクリル酸ブチル25部、および前記のシラップA15部を混合、攪拌することにより、比較用の配合組成物を調製した。従って、比較用配合組成物は、微粒子を含んでいない。
【0093】
次に、上記の比較用配合組成物を用いて、実施例1の反応および操作と同様の反応および操作を行うことにより、比較用のエラストマーを得た。得られた比較用エラストマーの諸物性を、上記の方法により測定した。その結果、該比較用エラストマーは、実施例1にて得られたエラストマーと比較して、引張破断強さが特に劣っていた。結果を表1に示す。
〔比較例2〕
実施例2の反応および操作と同様の反応および操作を行って得られた反応混合物を、比較用の配合組成物とした。従って、比較用配合組成物は、微粒子を含んでいない。
【0094】
次に、上記の比較用配合組成物を用いて、実施例1の反応および操作と同様の反応および操作を行うことにより、比較用のエラストマーを得た。得られた比較用エラストマーの諸物性を、上記の方法により測定した。その結果、該比較用エラストマーは、実施例1〜4にて得られたエラストマーと比較して、引張破断強さが特に劣っていた。結果を表1に示す。
〔比較例3〕
実施例2の反応および操作と同様の反応および操作を行い、反応混合物を得た。該反応混合物100部に、水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製;商品名 ハイジライトH−320;マイクロトラック粒度分布法による平均粒子径8000nm)50部(50phr)を添加した後、ホモミキサーを用いて30分間、攪拌、分散させた。その後、水酸化アルミニウムの沈降を抑制するために、増粘剤である親水性無水ケイ酸(日本アエロジル株式会社製;商品名 アエロジル200)3.1部を添加し、再度、ホモミキサーを用いて30分間、攪拌、分散させた。これにより、比較用の配合組成物を調製した。
【0095】
次に、上記の比較用配合組成物を用いて、実施例1の反応および操作と同様の反応および操作を行うことにより、比較用のエラストマーを得た。得られた比較用エラストマーの諸物性を、上記の方法により測定した。その結果、該比較用エラストマーは、実施例1〜4にて得られたエラストマーと比較して、引張破断強さが特に劣っていた。結果を表1に示す。
〔比較例4〕
実施例2の反応および操作と同様の反応および操作を行い、反応混合物を得た。該反応混合物100部に、重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム株式会社製;商品名 R重炭;比表面積法による平均粒子径7400nm)100部(100phr)を添加した後、ホモミキサーを用いて30分間、攪拌、分散させた。これにより、比較用の配合組成物を調製した。
【0096】
次に、上記の比較用配合組成物を用いて、実施例1の反応および操作と同様の反応および操作を行うことにより、比較用のエラストマーを得た。得られた比較用エラストマーの諸物性を、上記の方法により測定した。その結果、該比較用エラストマーは、実施例1〜4にて得られたエラストマーと比較して、引張破断強さおよび引張破断伸びが特に劣っていた。結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
上記実施例1〜4の結果から明らかなように、本発明にかかる製造方法により得られるエラストマーは、微粒子を配合することによって生じる補強効果が顕著に認められ、圧縮永久歪みや引張永久伸び等のクリープが小さく(低クリープ)、しかも、引張弾性率や引張破断強さ、引張破断伸び等の機械的強度に優れていることが判った。つまり、該エラストマーは、微粒子を配合することによる補強効果によって、機械的強度並びにクリープ等の各種物性がバランス良く改善されていることが判った。これに対し、上記比較例1〜4の結果から明らかなように、比較用のエラストマーは、機械的強度に劣っており、機械的強度並びにクリープ等の各種物性のバランスが不良であることが判った。
【0099】
また、上記実施例1〜4の結果から明らかなように、本発明にかかる製造方法を採用することにより、重合性モノマー組成物に対する微粒子や各種添加剤の混合を容易に行うことができること、並びに、後架橋工程を必要としない簡便な工程、いわゆる1potでエラストマーを製造することができることが判った。
【0100】
【発明の効果】
本発明の架橋エラストマーの製造方法は、以上のように、分子内に複数個の重合性基を有する化合物を含む重合性モノマー組成物に、平均一次粒子径が1nm〜200nmの範囲内である微粒子を含有させて配合組成物を形成した後、該配合組成物を重合する架橋エ ラストマーの製造方法であって、分子内に複数個の重合性基を有する化合物が、多価金属塩ビニル化合物を含有する方法である。
【0101】
本発明の架橋エラストマーの製造方法は、以上のように、分子内に複数個の重合性基を有する化合物が、多価金属塩ビニル化合物および分子内に複数個のビニル基を有する重合体からなる方法である。
【0102】
本発明の架橋エラストマーの製造方法は、以上のように、重合性モノマー組成物の主成分が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルである方法である。
【0103】
本発明の架橋エラストマーの製造方法は、以上のように、微粒子が、カーボンブラック、および/または、ポリマー処理されたカーボンブラックである方法である。
【0104】
本発明の架橋エラストマーの製造方法は、以上のように、微粒子が、含水ケイ酸および/または含水ケイ酸金属塩である方法である。
【0105】
これにより、圧縮永久歪みや引張永久伸び等のクリープが小さく(低クリープ)、しかも、引張破断強さや引張破断伸び等の機械的強度等の各種物性に優れた架橋エラストマーを、混練工程にて費やされるエネルギと時間とを削減し、しかも、後架橋工程を必要としない簡便な工程で生産性良く、かつ、安価に製造することができるという効果を奏する。
Claims (5)
- 分子内に複数個の重合性基を有する化合物を含む重合性モノマー組成物に、平均一次粒子径が1nm〜200nmの範囲内である微粒子を含有させて配合組成物を形成した後、該配合組成物を重合する架橋エラストマーの製造方法であって、
分子内に複数個の重合性基を有する化合物が、多価金属塩ビニル化合物を含有することを特徴とする架橋エラストマーの製造方法。 - 分子内に複数個の重合性基を有する化合物が、多価金属塩ビニル化合物および分子内に複数個のビニル基を有する重合体からなることを特徴とする請求項1記載の架橋エラストマーの製造方法。
- 重合性モノマー組成物の主成分が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることを特徴とする請求項1または2記載の架橋エラストマーの製造方法。
- 微粒子が、カーボンブラック、および/または、ポリマー処理されたカーボンブラックであることを特徴とする請求項1、2または3記載の架橋エラストマーの製造方法。
- 微粒子が、含水ケイ酸および/または含水ケイ酸金属塩であることを特徴とする請求項1、2または3記載の架橋エラストマーの製造方法。
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