JP3910273B2 - 瓦 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、瓦に係り、より詳細には、瓦を葺く際、該瓦を任意にスライド調整ができ、また小さい瓦を数多く葺いたような景観が得られ、かつ緩勾配でも葺くことができる瓦に関する。
【0002】
【従来の技術】
屋根瓦には、平板状、波板状等、種々の形状・形態のものがある。近年、屋根の有効利用、屋根の外観的な美しさ、あるいは施工性という観点から平板状の瓦が着目されている。この平板状瓦としては、通常、薄型スレート瓦が多く用いられている。しかし、薄型スレート瓦の場合、板状に形成されていて、瓦を葺いた際の重なり部分が多くなるため、一枚一枚の瓦としては、一般の瓦に比べて軽量であるものの、全体としての重量は重くなる。更に、緩勾配に葺くことが難しいという問題がある。
【0003】
そこで、このような問題に鑑み、種々の平板状の瓦が提案されている。この平板状の瓦は、一般的は、瓦表面の流水部の側方に、瓦の葺く際の差込み部を備えていて、この差込み部に一条若しくは二条の排水用溝を設けた構成からなる。そして、これらの瓦は、薄型スレート瓦に比べて、強度を有することから、瓦としての安定性を有する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述したような瓦の場合、次のような課題がある。すなわち、
(1)この平板状の瓦をレンガ目地状に葺いた場合、前記差込み部に形成されている排水用溝が、屋根の棟から軒先までストレートに位置する形態となるため、該排水用溝から流水が溢れることになり、雨漏れの原因となる。
(2)そのため、瓦を千鳥状に葺かなければならないため、その位置合わせ等、施工性が悪くなる。
(3)また、瓦の差込み部の厚みと、該差込み部と重なり合わさる桟部の厚みとの合計厚みを、瓦厚みと同じにする必要があるが、該厚みとした場合、かかる個所の強度が低下する。
(4)更に、緩勾配に葺くことが難しい。
等の課題がある。
【0005】
本発明は、以上のような課題に対処して創案したものであって、その目的とする処は、瓦を葺く際、該瓦を任意にスライド調整ができ、かつ緩勾配でも葺くことができる瓦を提供することにある。また小さい瓦を数多く葺いたような景観が得られる瓦を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そして、上記課題を解決するための手段としての本発明の瓦は、瓦表面に流水部を有し、瓦表面の側方に瓦差込み部を備えた瓦において、該瓦の瓦尻部と瓦頭部との間に瓦尻部側が瓦頭部側に対して高い位置にくる1列または複数列の段差部を設け、前記瓦差込み部に瓦尻部側から瓦頭部方向の一条もしくは複数条の溝を設け、また該溝の段差部瓦尻部側に位置する部位と段差部瓦頭部側の流水部とを繋ぐ水誘導溝を設け、前記瓦表面の段差部と瓦頭部の間に、段差部側から瓦頭部方向の飾り溝を設け、瓦裏面に、該飾り溝に対応する個所に段差部側から瓦頭部方向のリブを設けてなる。
本発明の瓦において、(1)前記瓦尻部と段差部との間に、上側に位置する瓦をスライド自在に葺ける瓦スライド調整部を有する構成、(2)前記瓦表面の瓦尻部と段差部の間に、瓦尻部側から段差方向のスライド用溝を設け、瓦裏面に、該スライド用溝に対応する個所に瓦尻部側から段差方向のリブを設け、また瓦裏面の該段差部から瓦頭部の間に、瓦を葺く際、下側に位置する瓦のスライド用溝と係合する係合用突起を設けてなる構成であってもよい
他の発明に係る瓦は、瓦表面に流水部を有し、瓦表面の側方に瓦差込み部を備えた瓦において、該瓦の瓦尻部と瓦頭部との間に瓦尻部側が瓦頭部側に対して高い位置にくる1列または複数列の段差部を設け、前記瓦差込み部に瓦尻部側から瓦頭部方向の一条もしくは複数条の溝を設け、また該溝の段差部瓦尻部側に位置する部位と段差部瓦頭部側の流水部とを繋ぐ水誘導溝を設け、前記瓦表面の瓦尻部と段差部の間に、瓦尻部側から段差部方向のスライド用溝を設け、瓦裏面に、該スライド用溝に対応する個所に瓦尻部側から段差部方向のリブを設け、また瓦裏面の該段差部から瓦頭部の間に、瓦を葺く際、下側に位置する瓦のスライド用溝と係合する係合用突起を設けてなる。
【0007】
ここで、前記瓦には、瓦の流水部が、平坦状の平板状瓦のみでなく、種々の洋瓦、和瓦を含み、セメント瓦、粘土瓦、樹脂製瓦、を含む。なお、前記瓦尻部とは、瓦を葺いた際、棟側に位置する部分をいい、また前記瓦頭部とは、瓦を葺いた際、軒側に位置する部分をいう。前記瓦差込み部とは、瓦を葺いた際、左側または右側に位置する瓦で覆われる重なり合う部分をいう。
また、前記段差部は、一例の段差、二列以上の段差を形成してもよい。すなわち、大略的には、階段状に形成している。そして、この段差部は、流水を積極的に前方に送り出す作用をすることができる。これによって、瓦を緩勾配に葺いても屋根の勾配を吸収できる。
【0008】
本発明の瓦は、通常、屋根の軒側から葺いていくが、瓦をスライドできるので、瓦の位置合わせ容易に行える。そして、葺いた状態で、瓦の流水部を流下する水は、瓦途中の段差部で、積極的に前方に送り出し、また瓦重合わせ部である瓦差込み部に入り込んだ水は、該瓦差込み部に形成されている溝内を流下し、途中の段差部分に形成してある水誘導溝により、瓦表面の流部に送り出せる。従って、水が瓦差込み部に溢れることがなく、流下させることができる。
【0009】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明の瓦によれば、瓦の瓦尻部と瓦頭部との間に瓦尻部側が瓦頭部側に対して高い位置にくる1列または複数列の段差部を設け、瓦差込み部に瓦尻部側から瓦頭部方向の一条もしくは複数条の溝を設け、また該溝の段差部瓦尻部側に位置する部位と段差部瓦頭部側の流水部とを繋ぐ水誘導溝を設けてなるので、該段差部が、屋根勾配を吸収できるため緩勾配に葺くことができるという効果を有する。
また、該水誘導溝によって、瓦差込み部に侵入した水を、流下途中で、瓦表面の流水部に送り出せるので、瓦差込み部で水が溢れるのを防止できるという効果を有する。また、前記発明において、瓦尻部と段差部との間に、上側に位置する瓦をスライド自在に葺ける瓦スライド調整部を有する場合、瓦を葺く際、その位置合わせが容易にでき、その施工性が良好になるという効果を有する。また、前記瓦表面の瓦尻部と段差部の間に、瓦尻部側から段差方向のスライド用溝を設け、瓦裏面に、該スライド用溝に対応する個所に瓦尻部側から段差方向のリブを設け、また瓦裏面の該段差部から瓦頭部の間に、瓦を葺く際、下側に位置する瓦のスライド用溝と係合する係合用突起を設けてなる構成にあっては、瓦のスライド調整を容易に行え、かつ瓦の強度を維持できるという効果を有する。
更に、前記各発明において、前記瓦表面の段差部と瓦頭部の間に、段差部側から瓦頭部方向の飾り溝を設け、瓦裏面に、該飾り溝に対応する個所に段差部側から瓦頭部方向のリブを設けてなる構成にあっては、該飾り溝とスライド溝とにより、小さい瓦を数多く葺いたような景観が得られる瓦を得ることができるという効果を有する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明を具体化した好ましい実施の形態について説明する。ここに、図1〜図5は、本発明の実施例を示し、図1は瓦の平面図、図2は瓦表面側の斜視図、図3は瓦裏面側の斜視図、図4は縦方向の拡大した断面図、図5は瓦を葺いた状態の斜視図である。
【0011】
本実施形態の瓦1は、通常の瓦と同じく、図1〜図3に示すように、瓦表面2に流水部3、瓦表面2の一方の側部(本実施形態では瓦表面の右側)に瓦差込み部4、瓦表面2の上方(瓦を葺いた状態で棟側)の瓦尻部5に水返し部5a、瓦表面2の他方の側部(本実施形態では瓦表面の左側)に瓦差込み部4との係合部6、および瓦表面2の下方(瓦を葺いた状態で軒側)の瓦頭部7に水垂れ部8を有している。
【0012】
瓦表面2の瓦尻部5と瓦頭部7との間には、瓦1を横断する方向の一列の段差部9が設けてある。段差部9は、段差始端9aと水垂れ部8の水垂れ始端8aとを結ぶ線分に対して内方に窪む窪み部9bを有する。そして、窪み部9bの折れ曲がり点9cと段差始端9aとの間に形成される流水増速面9dと、段差始端9aと瓦尻部5との間の上方流水面10とがなす角度αと、折れ曲がり点9cと水垂れ始端8aとの間の下方流水面11と、流水増速面9dとがなす角度βが、それぞれ90度若しくはそれ以上大きい角度に形成されている。そして、ここでは、下方流水面11が、流水増速面9dで増速された流水を送り出す流水送り出し面を形成する。本実施形態においては、それぞれ120度程度としてある。この角度は、90度若しくはそれ以上大きい角度であればよいが、あまり大きすぎる角度の場合、流水増速性が低下する。好ましくは、90度〜150度程度がよい。この段差部9によって、流水を積極的に下方に誘導できる。
【0013】
瓦表面2の瓦尻部5と段差部9との間には、瓦を葺いた際、上側に位置する瓦が上方に外れるのを防止するための横方向のリブ12が設けてある。また間隔を開けて2本のスライド溝13が設けてある。このスライド溝13は瓦を葺く際、上側に葺く瓦を任意にスライドさせ得るための瓦誘導用の溝である。このスライド溝13,13は、本実施形態においては、上方流水面10の若干盛り上がった部分(一般的には谷部という)に形成してある。
【0014】
瓦表面2の段差部9と瓦頭部との間で、前記2本のスライド溝13,13の間に対応する部位には、飾り溝14と、瓦1を固定するために使用する盲孔15が設けてある。このスライド溝13,13と、飾り溝14、および段差部9の存在によって、この一枚の瓦は、瓦を葺いた状態において、4枚の小さい瓦を葺いている景観を得ることができる。また、盲孔15は、この孔を用いて瓦を固定するとき孔開けして使用するようにしている。また、瓦表面2の瓦頭部には、段差部と同様の流水増速面16と、流水送り出し面17を形成している。ここでも、角度α′とβ′は、段差部における角度α、βと同じく、90度若しくはそれ以上大きい角度としている(通常は、120度程度である)。
【0015】
瓦表面2の一方の側部の瓦差込み部4は、縦方向の水排出溝18が設けてあり、この水排出溝18は、中間のリブによって二条の水排出溝18a,18bを有し、瓦尻部5側から瓦頭部の方向に直線状に形成してある。そして、この水排出溝18は、溝18の段差部9の瓦尻部側に位置する部位19と段差部瓦頭部側の下方流水面11とを繋ぐ斜め方向の水誘導溝20が設けてある。水誘導溝20は、水排出溝18に侵入した水が溢れることを防止するための溝であって、該水を段差部9の段差を利用して溝を形成し、下方流水面11に誘導することができる。ここで、水誘導溝20は、内側に位置する水排出溝18aと繋がれていて、外側に位置する水排出溝18bとは、水排出溝18aと水排出溝18bとを繋ぐ、リブを若干傾斜して横切る連絡溝18cによって繋がれ、また水誘導溝20と連絡溝18cとは、水排出溝18aを介して繋がれ、途中でリブが堰を形成している。
【0016】
また、瓦1の裏面には、前記スライド溝13,13、飾り溝14に対応する部位には、リブ22,22,23が形成してある。これによって、瓦1の強度を上げている。また、水垂れ部8の底面で、前記スライド溝13,13に対応する部位には、瓦を葺いた状態で、下側に位置する瓦のスライド溝13,13と係合する係合突起24,24が設けてある。また、瓦差込み部4の裏面において、瓦1は瓦表面2の瓦尻部5と段差部9との間でスライドするが、段差部9と瓦頭部との間ではスライドしない構成であるので、瓦差込み部4の裏面は、段差部9と瓦頭部との間は、瓦尻部5と段差部9との間に比べて肉厚にしている。これによって、瓦の強度が弱くなる個所に強度を付与できる。
【0017】
本実施形態の瓦1は、屋根の軒側から、順次、葺いていく。すなわち、図5に示すように、左右方向の瓦は、先に葺いた瓦の瓦差込み部4に、これから葺く瓦の係合部6を覆うようにして葺く。そして、その上側に瓦を葺く場合、先に葺いている瓦1の瓦表面2に形成されているスライド溝13,13に、これから葺く瓦の係合突起24,24を嵌めてスライドさせ、その位置合わせを行うことで葺くことができる。このようにして、順次、屋根全体に瓦を葺くことができる。このように上下方向において瓦の位置をスライド調整することで、屋根全体に正確に、かつスピーディに瓦を葺くことができる。また、途中に段差部9が形成してあることにより、1.5寸〜2寸の屋根勾配に瓦を葺くことができる。
【0018】
そして、瓦を葺いた状態において、瓦1の流水部3を流下する水は、瓦1の途中に形成されている段差部9で、積極的に前方に送り出し、また瓦重ね合わせ部である瓦差込み部4に入り込んだ水は、瓦差込み部4に形成されている水排出溝18a,18bを流下し、途中の段差部分に形成してある水誘導溝20で瓦表面2の下方流水面11に送り出せる。従って、水が瓦差込み部4に溢れることがなく、流下させることができる。
【0019】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、種々、変形・実施できる構成を含む。因みに、前述した実施形態においては、瓦の瓦表面に低い谷、山が形成されている平板状の瓦で説明したが、波状の瓦、その他の瓦にも実施できる。また、段差部やスライド溝、飾り溝は、適宜、好ましいものを用いることができる。すなわち、上述した実施形態では、一枚の瓦が、4枚の小さい瓦を葺いているかのような景観を生じているが、そのスライド溝や段差部の数によって、異なる景観を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す瓦の平面図である。
【図2】瓦表面側の斜視図である。
【図3】瓦裏面側の斜視図である。
【図4】縦方向の拡大した断面図である。
【図5】瓦を葺いた状態の斜視図である。
【符号の説明】
1・・・瓦、2・・・瓦表面、3・・・流水部、4・・・瓦差込み部、5・・・瓦尻部、5a・・・水返し部、6・・・係合部、7・・・瓦頭部、8・・・水垂れ部、8a・・・水垂れ始端、9・・・段差部、9a・・・段差始端、9b・・・窪む窪み部、9c・・・折れ曲がり点、9d・・・流水増速面、10・・・上方流水面、11・・・下方流水面、12・・・リブ、13・・・スライド溝、14・・・飾り溝、15・・・盲孔、16・・・流水増速面、17・・・流水送り出し面、18・・・縦方向の水排出溝、18a・・・内側の水排出溝、18b・・・外側の水排出溝、18c・・・連絡溝、19・・・溝18の段差部9の瓦尻部側に位置する部位、20・・・水誘導溝、22・・・瓦裏面のリブ、23・・・瓦裏面のリブ、24・・・係合突起

Claims (4)

  1. 瓦表面に流水部を有し、瓦表面の側方に瓦差込み部を備えた瓦において、該瓦の瓦尻部と瓦頭部との間に瓦尻部側が瓦頭部側に対して高い位置にくる1列または複数列の段差部を設け、前記瓦差込み部に瓦尻部側から瓦頭部方向の一条もしくは複数条の溝を設け、また該溝の段差部瓦尻部側に位置する部位と段差部瓦頭部側の流水部とを繋ぐ水誘導溝を設け、前記瓦表面の段差部と瓦頭部の間に、段差部側から瓦頭部方向の飾り溝を設け、瓦裏面に、該飾り溝に対応する個所に段差部側から瓦頭部方向のリブを設けてなることを特徴とする瓦。
  2. 前記瓦尻部と段差部との間に、上側に位置する瓦をスライド自在に葺ける瓦スライド調整部を有する請求項1に記載の瓦。
  3. 前記瓦表面の瓦尻部と段差部の間に、瓦尻部側から段差方向のスライド用溝を設け、瓦裏面に、該スライド用溝に対応する個所に瓦尻部側から段差方向のリブを設け、また瓦裏面の該段差部から瓦頭部の間に、瓦を葺く際、下側に位置する瓦のスライド用溝と係合する係合用突起を設けてなる請求項1または2に記載の瓦。
  4. 瓦表面に流水部を有し、瓦表面の側方に瓦差込み部を備えた瓦において、該瓦の瓦尻部と瓦頭部との間に瓦尻部側が瓦頭部側に対して高い位置にくる1列または複数列の段差部を設け、前記瓦差込み部に瓦尻部側から瓦頭部方向の一条もしくは複数条の溝を設け、また該溝の段差部瓦尻部側に位置する部位と段差部瓦頭部側の流水部とを繋ぐ水誘導溝を設け、前記瓦表面の瓦尻部と段差部の間に、瓦尻部側から段差部方向のスライド用溝を設け、瓦裏面に、該スライド用溝に対応する個所に瓦尻部側から段差部方向のリブを設け、また瓦裏面の該段差部から瓦頭部の間に、瓦を葺く際、下側に位置する瓦のスライド用溝と係合する係合用突起を設けてなることを特徴とする瓦。
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