JP3910156B2 - 試料の安定化方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶血試料の安定化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
血球中の糖化タンパク質の中でも、特に糖化ヘモグロビン(HbA1c)は、生体内血糖値の過去の履歴を反映していることから、糖尿病の診断や治療等における重要な指標とされている。
【0003】
糖化ヘモグロビンは、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法、ミニカラム法、免疫法等により、ヘモグロビンの糖化率として測定されており、最近では、糖化アミノ酸酸化還元酵素(FAOD)を用いた酵素法により測定する方法も開発されている。
【0004】
前記酵素法は、まず、血球を溶血させた溶血試料を調製し、この溶血試料をフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(以下、「FAOD」という)で処理し、糖化ヘモグロビンの糖化部分に作用させて過酸化水素を発生させる。この過酸化水素量は、前記糖化ヘモグロビンの糖化量に対応する。そして、この試料に、さらにペルオキシダーゼ(以下、「POD」という)および還元剤を添加し、前記PODを触媒として前記過酸化水素と前記還元剤との間で酸化還元反応させる。この時、前記還元剤として、酸化されることにより発色する発色性基質を用いれば、その発色の測定により前記過酸化水素量を測定でき、この結果、血球中の糖化ヘモグロビン量を知ることができる。このような酵素法は、実際に臨床医療の分野において適用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この酵素法では、以下のような問題が生じている。すなわち、糖化タンパク質を測定するにあたっては、前述のように、まず第1に溶血試料を調製する必要があるが、必ずしも溶血試料の調製直後に糖化タンパク質の測定が行われるわけではない。つまり、一定数の溶血試料が揃ってから、これら全てを測定に供するため、各溶血試料によって、調製から測定開始までの時間が様々であり、このような溶血試料の放置によって測定精度が低下するという現象が見られたのである。具体的には、同じ溶血試料であっても、それを室温で放置した場合、放置時間に応じて経時的に測定値の上昇が見られ、糖化タンパク質量の正確な値を得ることができないという問題が生じたのである。このような問題を回避し、優れた測定精度を維持するためには、溶血試料を調製した直後に、糖化タンパク質の測定を行うことが要求される。しかし、臨床医療の分野においては、多量の検体を処理する必要があるため、各検体について溶血試料を調製した直後に測定を行うことは、効率面からも現実的に困難である。
【0006】
そこで、本発明の目的は、室温に放置しても、後に行う測定において測定精度に影響を与えない溶血試料の安定化方法の提供である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の溶血試料の安定化方法は、血球を溶血させた溶血試料に、炭酸イオン、炭酸水素イオンおよび二酸化炭素からなる群から選択された少なくとも一つを含有させることを特徴とする。
【0008】
発明者らは、溶血試料を室温に放置した際に、前述のように糖化ヘモグロビンの測定値が経時的に増加する原因について鋭意研究を行った。その結果、溶血試料を放置する間に大気中の二酸化炭素が前記溶血試料に溶解するため、溶解した二酸化炭素によって前記試料中のヘモグロビン構造が徐々に変化し、これに伴い、プロテアーゼによる消化反応速度に変化が生じたり、ヘモグロビン自身の酸化還元能にも変化が生じるため、前述のようなFAODやPODによる酸化還元反応が影響を受け、結果的に測定値が上昇したと推察したのである。このような推察に基づいて研究を行った結果、本発明者らは、溶血試料に二酸化炭素を溶存させることによって、または、溶血試料に炭酸イオンもしくは炭酸水素イオンを含有させることによって、前述のような溶血試料の放置による測定値の経時的変化を抑制できることを見出し、本発明に到達したのである。このように溶血試料の放置によって、測定値が経時的に上昇すること、それが二酸化炭素の溶存が原因であると推察したこと、ならびに溶血試料に予め二酸化炭素または炭酸イオンもしくは炭酸水素イオンを含有させることによって前述の課題を解決できることは、全て本発明の発明者らが初めて見出したことである。このような溶血試料の安定化方法に基づけば、溶血試料を調製した直後に酵素反応による測定を行う必要がないため、前述のような臨床分野において非常に効率よく、糖化ヘモグロビンをはじめとする糖化タンパク質の測定を行うことができ、極めて有用な方法であると言える。
【0009】
また、前述のように本発明の溶血試料の安定化方法は、例えば、界面活性剤を含む血球溶血用の溶血試薬液であって、さらに炭酸イオン、炭酸水素イオンおよび二酸化炭素からなる群から選択された少なくとも一つを含む試薬液を用いて行うことができる。このような溶血試薬液を用いれば、前述のような本発明の溶血試料の安定化を容易に行うことができるため、例えば、臨床分野等、糖化タンパク質の測定の際に非常に有用な試薬と言える。また、本発明の溶血試料の安定化方法により、溶血試料の製造を行うことができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の溶血試料の安定化方法は、前述のように、血球を溶血させた溶血試料に、炭酸イオン、炭酸水素イオンおよび二酸化炭素からなる群から選択された少なくとも一つを含有させることを特徴とする。なお、本発明において溶血試料に二酸化炭素を含有させるとは、前記溶血試料に二酸化炭素を溶存させることをいう。
【0011】
まず、溶血試料に二酸化炭素を溶存させて、前記溶血試料を安定化する方法の一例について説明する。
【0012】
前記溶血試料における二酸化炭素の溶存濃度は、例えば、溶血処理に供した血球量等に応じて適宜決定できるが、例えば、2〜35℃の場合、8mmol/L以上である。好ましくは10〜80mmol/Lの範囲が好ましく、より好ましくは15〜80mmol/Lの範囲である。具体的に、前記溶血試料における血球濃度が5g/Lの場合、二酸化炭素の溶存濃度は、2〜35℃において、例えば、8mmol/L以上であり、好ましくは10〜80mmol/Lの範囲であり、より好ましくは15〜80mmol/Lの範囲である。
【0013】
本発明において、前記溶血試料に、さらに界面活性剤を含有させることが好ましい。界面活性剤を含有させることによって、例えば、糖化ヘモグロビン等の糖化タンパク質を測定する際のプロテアーゼ処理を効率よく行うことができる。また、前述のように二酸化炭素の影響によって、例えば、ヘモグロビンの消化速度に変化が生じるおそれがあるが、界面活性剤を添加すれば、その消化反応を促進することができる。前記界面活性剤としては、特に制限されず、例えば、ポリオキシエチレン-p-t-オクチルフェニル エーテル(Triton系界面活性剤等)、ポリオキシエチレン ソルビタン アルキル エステル(Tween系界面活性剤等)、ポリオキシエチレン アルキル エーテル(Brij系界面活性剤等)等の非イオン性界面活性剤が使用でき、具体的には、例えば、TritonX−100、Tween−20、Brij35等があげられる。
【0014】
前記溶血試料における界面活性剤の含有濃度は、例えば、6〜40mmol/Lの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜40mmol/Lの範囲であり、特に好ましくは15〜40mmol/Lの範囲である。具体的に、前記溶血試料における血球濃度が5g/Lの場合、界面活性剤の濃度は、2〜35℃において、例えば、8mmol/L以上であり、好ましくは10〜40mmol/Lの範囲であり、より好ましくは15〜40mmol/Lの範囲である。
【0015】
本発明の安定化方法において、溶血試料に二酸化炭素を溶存させるため、例えば、界面活性剤を含みかつ二酸化炭素が溶存した溶血試薬液により、血球を溶血させる工程を含むことが好ましい。このような溶血試薬液を用いて血球を溶血させることによって、二酸化炭素を溶存させた溶血試料を調製することができる。
【0016】
溶血は、例えば、全血に前記溶血試薬液を添加して行ってもよいし、全血から回収した血球(ペレット)に前記溶血試薬液を添加混合して行ってもよい。血球は、例えば、遠心分離、血球分離膜等の膜処理等、従来公知の方法によって回収できる。
【0017】
前記溶血試薬液における界面活性剤(A)と二酸化炭素(B)との割合(A:B)は、特に制限されないが、1:0.5〜1:13の範囲が好ましく、より好ましくは1:2〜1:13の範囲であり、特に好ましくは1:2〜1:3の範囲である。
【0018】
前記溶血試薬液における界面活性剤および二酸化炭素の濃度は、例えば、血球への添加量や血球量によって適宜決定できるが、例えば、界面活性剤6〜40mmol/L、二酸化炭素8〜80mmol/Lであり、好ましくは界面活性剤10〜40mmol/L、二酸化炭素10〜80mmol/Lであり、より好ましくは界面活性剤15〜40mmol/L、二酸化炭素15〜80mmol/Lである。なお、前記二酸化炭素の濃度は、例えば、2〜35℃における濃度である。
【0019】
前記界面活性剤を含み、かつ二酸化炭素が溶存した前記溶血試薬液は、例えば、前記界面活性剤を含む溶液に、99.9%の二酸化炭素ガスをバブリングすることによって調製できる。バブリングは、例えば、二酸化炭素のボンベ等を用いて行うことができる。その条件は特に制限されないが、通常、2〜35℃の条件下で行われ、具体的には、前記溶液が10mlの場合、例えば、自然大気圧下、温度1.5〜35℃、時間10秒の条件でバブリングを行うことによって、二酸化炭素の溶存濃度が、20〜80mmol/Lの溶血試薬液を得ることができる。
【0020】
なお、界面活性剤を含む溶液の溶媒としては、特に制限されず、例えば、水や各種緩衝液が使用できる。また、二酸化炭素は、以上のように界面活性剤を含む溶液に溶存させる他に、例えば、前記溶液を調製するための前記溶媒に予め溶存させてもよい。
【0021】
血球と前記溶血試薬液との混合割合は、特に制限されず、例えば、調製した溶血試料における二酸化炭素の溶存濃度や、界面活性剤の濃度が、前述のような範囲になるように設定することが好ましい。
【0022】
また、本発明の安定化方法において、前記溶血試料へ二酸化炭素を溶存させるため、前述のような溶血試薬液を使用する以外に、例えば、界面活性剤を用いる方法、超音波による方法、浸透圧の差を利用する方法等によって溶血試料を調製した後、この溶血試料に、直接、二酸化炭素ガスのバブリングを行ってもよい。
【0023】
つぎに、溶血試料に炭酸イオンまたは炭酸水素イオンを含有させて、前記溶血試料を安定化する方法の一例について説明する。
【0024】
前記溶血試料における炭酸イオンまたは炭酸水素イオンの濃度は、例えば、溶血処理に供した血球量等に応じて適宜決定できるが、例えば、8mmol/L以上であり、好ましくは10〜80mmol/Lの範囲、より好ましくは15〜80mmol/Lの範囲である。具体的に、前記溶血試料における血球濃度が5g/Lの場合、炭酸イオンまたは炭酸水素イオンの濃度は、例えば、8mmol/L以上であり、好ましくは10〜80mmol/Lの範囲であり、より好ましくは15〜80mmol/Lの範囲である。なお、炭酸イオンおよび炭酸水素イオンは、いずれか一方が含まれてもよいし、両方が含まれてもよい。また、両イオンを含む場合は、その合計濃度が、例えば、前述のような濃度(例えば、8mmol/L以上)であってもよい。
【0025】
前記溶血試料には、前述と同様に、さらに界面活性剤を含有させることが好ましい。なお、界面活性剤の種類や濃度等は、特に制限されず、例えば、前述と同様である。
【0026】
本発明において、溶血試料に炭酸イオンまたは炭酸水素イオンを含有させるため、例えば、界面活性剤を含みかつ炭酸イオンまたは炭酸水素イオンを含む溶血試薬液により、血球を溶血させる工程を含むことが好ましい。このような溶血試薬液を用いて血球を溶血させることによって、炭酸イオンまたは炭酸水素イオンを含む溶血試料を調製することができる。
【0027】
前記界面活性剤を含み、かつ炭酸イオンまたは炭酸水素イオンが溶存した前記溶血試薬液は、例えば、界面活性剤を含む溶液に炭酸塩を溶解することによって調製することができる。
【0028】
前記炭酸塩としては、例えば、アルカリ金属塩が好ましく、具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム・カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムおよび炭酸トリス等が使用でき、これらの中でも好ましくは炭酸ナトリウム等である。
【0029】
前記溶血試薬液における界面活性剤(A)と炭酸塩(C)との添加割合(A:C)は、例えば、1:0.2〜1:27の範囲であることが好ましく、より好ましくは1:1.5〜1:27の範囲であり、特に好ましくは1:1.5〜1:4の範囲である。
【0030】
また、前記溶血試料に炭酸イオンまたは炭酸水素イオンを含有させるには、前述のような溶血試薬液を使用する以外に、例えば、溶血試料を調製した後、この溶血試料に、直接、前述のような炭酸塩を溶解したり、前記炭酸塩を溶解した溶液を添加混合してもよい。
【0031】
なお、従来の問題として、特に、血液を溶血させた状態で放置することによって、前述のようなHbA1c値の上昇が見られることから、本発明の安定化方法においては、少なくとも溶血試料の放置時に、二酸化炭素や炭酸イオン、炭酸水素イオンが含有されていればよい。本発明の安定化方法において、前記二酸化炭素や炭酸イオン、炭酸水素イオンは、例えば、前述のように溶血試料に含有させてもよく、溶血前の検体に予め含有させてもよい。また、溶血試料や溶血前検体に直接含有させてもよいし、前述のように溶血試薬液に二酸化炭素や炭酸イオン、炭酸水素イオンを含有させ、この試薬液を溶血前検体に添加することもできる。これらの中でも、例えば、臨床試験の現場における利便性や簡便性の点から、予め溶血試薬に二酸化炭素や炭酸イオン、炭酸水素イオンを含有させ、溶血前の検体に添加することが好ましい。
【0032】
以上のようにして調製した二酸化炭素または炭酸イオンもしくは炭酸水素イオンを含有させた溶血試料であれば、例えば、室温条件下で保存した場合に、長期間安定な状態を維持することができる。このため、例えば、前述のように保存後に酵素反応によって溶血試料中の糖化タンパク質の測定を行った場合でも、測定値の経時的変化を抑制することができる。本発明は、低温条件下での保存を行う場合にも適用できるが、前述のように室温条件での問題点を解決できることから、室温(例えば、15〜35℃程度)で溶血試料を保存する際に有用な方法といえる。特に、前述のような臨床医療等における分析化学の分野では、実際に調製後の溶血試料を室温で保存することが多く見られ、そのような条件下での保存によって前述のような問題が生じていることからも、室温での安定化に有用といえる。また、調製直後に溶血試料の測定を行うことももちろん可能であるが、前述のように保存の際の問題を回避できることから、前述のような臨床医療の分野における、調製直後の使用が困難な際に適用することが好ましい。本発明によれば、例えば、溶血試料の調整後、26時間程度、調製直後と同程度の測定値を維持することができ、好ましくは3〜10時間程度である。
【0033】
本発明によって調製した溶血試料は、例えば、糖化ヘモグロビン、ヘモグロビン、グリコアルブミン、アルブミン、グロブリン、ミオグロビン等の測定試料として使用することができ、特に好ましくは糖化ヘモグロビンである。
【0034】
以下に本発明により調製した溶血試料について、糖化ヘモグロビンを測定する方法の一例を以下に説明する。
【0035】
前記溶血試料に対してプロテアーゼ処理を行い、前記試料中の糖化ヘモグロビンを分解する。前記プロテアーゼ処理は、通常、緩衝液中で行われ、その処理条件は、使用するプロテアーゼの種類、糖化ヘモグロビンの量等により適宜決定される。
【0036】
プロテアーゼとしては、特に制限されないが、例えば、セリンプロテアーゼ、チオールプロテアーゼ、メタロプロティナーゼ等が使用でき、具体的には、トリプシン、プロテナーゼK、キモトリプシン、パパイン、ブロメライン、ズブチリシン、エラスターゼ、アミノペプチダーゼ等が好ましい。また、分解する糖化タンパク質が糖化ヘモグロビンの場合、前記プロテアーゼは、前記糖化ヘモグロビンを選択的に分解するプロテアーゼであり、ブロメライン、パパイン、ブタ膵臓由来トリプシン、メタロプロティナーゼ、Bacillus subtillis由来のプロテアーゼ等が好ましい。前記Bacillus subtillis由来プロテアーゼとしては、商品名プロテアーゼN(例えば、フルカ社製)、商品名プロテアーゼN「アマノ」(天野製薬社製)等があげられる。前記メタロプロティナーゼとしては、Bacillus属由来メタロプロティナーゼ(EC3.4.24.4)(例えば、東洋紡社製:商品名トヨチーム)等があげられる。これらの中でもより好ましくはメタロプロティナーゼ、ブロメライン、パパインであり、特に好ましくはメタロプロティナーゼである。このように、選択的に分解するプロテアーゼを使用すれば、特定のタンパク質の分解物を選択的に調製できる。前記プロテアーゼ処理は、通常、緩衝液中で行われ、その処理条件は、使用するプロテアーゼの種類、測定対象物である糖化タンパク質の種類およびその濃度等により適宜決定される。
【0037】
前記緩衝液としては、例えば、CHES緩衝液、CAPSO緩衝液、CAPS緩衝液、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、EPPS緩衝液、HEPES緩衝液等が使用できる。そのpHは、例えば、6〜13の範囲であり、好ましくは7〜11の範囲である。また、プロテアーゼ処理溶液における前記緩衝液の最終濃度は、例えば、1.0〜10mmol/Lの範囲である。
【0038】
具体的には、例えば、前記プロテアーゼとしてメタロプロティナーゼを用いて前記前処理済み溶血試料を処理する場合、通常、反応液中のメタロプロティナーゼ濃度0.1〜40MU/L、反応液中の血球濃度0.05〜15体積%、反応温度15〜37℃、反応時間1分〜24時間、pH6〜12の範囲である。
【0039】
また、例えば、前記プロテアーゼとしてプロテアーゼKを用いて前記前処理済み溶血試料を処理する場合、通常、反応液中のプロテアーゼ濃度10〜300KU/L、反応液中の血球濃度0.05〜15体積%、反応温度15〜37℃、反応時間1分〜24時間、pH6〜12の範囲である。また、前記緩衝液の種類も特に制限されず、例えば、トリス塩酸緩衝液、EPPS緩衝液、PIPES緩衝液等が使用できる。
【0040】
つぎに、前記プロテアーゼ処理により得られた糖化ヘモグロビン分解物を、後述するFAODで処理する。このFAOD処理により、下記式(1)に示す反応が触媒される。前記FAODと反応させる糖化ヘモグロビン分解物の糖化部分は、使用するFAODの触媒反応により異なるが、例えば、アミノ酸残基側鎖の糖化アミノ基や糖化α−アミノ基であることが好ましい。この中でも、後述する触媒機能を有するFAODが作用し易いことから、前記アミノ酸残基側鎖の糖化アミノ基であることが好ましく、例えば、リジン残基側鎖の糖化アミノ基、アルギニン残基側鎖の糖化アミノ基があげられる。
【0041】
このFAOD処理は、前記プロテアーゼ処理と同様に緩衝液中で行うことが好ましく、前記緩衝液としては、特に制限されず、前記プロテアーゼ処理と同様の緩衝液が使用できる。
【0042】
この処理条件は、例えば、反応液中のFAOD濃度200〜30,000U/L、反応液中のヘモグロビン濃度0.1〜10g/L、反応温度15〜37℃、反応時間1〜20分、pH7〜9の範囲である。
【0043】
つぎに、前記FAOD処理で生じた過酸化水素を、PODおよび酸化により発色する基質を用いて、酸化還元反応を利用して測定する。
【0044】
このPODによる酸化還元反応は、通常、緩衝液中で行われ、その条件は、過酸化水素濃度等により適宜決定される。通常、反応液中のPOD濃度1〜20000IU/L、基質濃度0.0001〜1mmol/L、反応温度20〜37℃、反応時間1〜5分、pH6〜9である。また、前記緩衝液は、特に制限されず、前記FAOD処理等と同様の緩衝液等が使用できる。
【0045】
前記酸化により発色する基質としては、特に制限されず、例えば、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミンナトリウム、オルトフェニレンジアミン(OPD)、トリンダー試薬と4−アミノアンチピリンとを組み合せた基質等があげられる。前記トリンダー試薬としては、例えば、フェノール、フェノール誘導体、アニリン誘導体、ナフトール、ナフトール誘導体、ナフチルアミン、ナフチルアミン誘導体等があげられる。また、前記4−アミノアンチピリンの他に、アミノアンチピリン誘導体、バニリンジアミンスルホン酸、メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)、スルホン化メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(SMBTH)等も使用できる。このような発色性基質の中でも、特に好ましくは、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミンナトリウムである。
【0046】
前記酸化により発色する基質を用いた場合は、その発色(反応液の吸光度)を分光光度計で測定することにより、過酸化水素の濃度を測定でき、これから前記試料中のヘモグロビン糖化量を測定できる。
【0047】
前記FAODとしては、例えば、下記式(1)に示す反応を触媒するFAODが使用できる。
【0048】
【0049】
前記式(1)において、R1−CO−CH2−NH−R2 は、例えば、糖化タンパク質、糖化ペプチドおよび糖化アミノ酸である。前記式(1)において、R1は、水酸基もしくは糖化反応前の糖に由来する残基(糖残基)を示す。前記糖残基(R1)は、反応前の糖がアルドースの場合はアルドース残基であり、反応前の糖がケトースの場合、ケトース残基である。例えば、反応前の糖がグルコースの場合は、アマドリ転位により、反応後の構造はフルクトース構造をとるが、この場合、糖残基(R1)は、グルコース残基(アルドース残基)となる。この糖残基(R1)は、例えば、
−[CH(OH)]n−CH2OH
で示すことができ、nは、0〜6の整数である。なお、前記式(1)において、R2は、アミノ酸残基またはペプチド残基を示す。
【0050】
使用するFAODの触媒反応は、前述のような反応であれば特に制限されないが、前記式(1)において、α−アミノ基以外のアミノ基に糖が結合した糖化部位に作用する触媒反応であることが好ましい。また、前記FAODは、このような触媒機能のみに制限されず、さらにα−アミノ基に糖が結合した糖化部位に作用する触媒機能を併せ持ってもよい。
【0051】
【実施例】
(実施例1)
(標準試料の調製)
ヘモグロビン凍結乾燥品を下記溶血試薬液Aで溶解し、ヘモグロビン濃度4.1g/LでありHbA1c値4.4%の試料溶液(以下、「試料Low」という)と、ヘモグロビン濃度5.3g/LでありHbA1c値10.4%の試料溶液(以下、「試料High」という)とを調製した。
【0052】
(検体試料の調製)
ヒト全血を遠心処理(3000rpm、10分、20℃)して赤血球を回収し、前記赤血球に50倍量(体積)の下記溶血試薬液Aを添加混合することによって、溶血を行い、検体試料とした。
【0053】
【0054】
前記各試料(溶血試料)を25℃で所定時間(0、2、4、6、8時間)放置した。そして、放置後の溶血試料20μLに、下記プロテアーゼ試薬180μLを添加し、37℃で5分間処理した後、さらに下記FAOD試薬45μLを添加して37℃で処理を行った。そして、FAOD試薬の添加5分間後における反応液の吸光度を、主波長700nm、副波長570nmで測定した。そして、HbA1cの標準物質を用いて予め作製した、HbA1c(%)と吸光度との検量線から、前記溶血試料のHbA1c(%)を求め、放置時間が0時間である溶血試料のHbA1c値(%)を「100%」として、各溶血試料のHbA1c値について相対値(%)を算出した。また、界面活性剤濃度を12g/Lとし、炭酸ナトリウムを未添加とする他は、前記溶血試薬Aと同じ組成である溶血試薬液Cを調製した。そして、溶血試薬液Aに代えて溶血試薬液Cを使用する以外は、同様にして溶血試料の調製および放置を行い、発色反応を行ったものを比較例1とした。これらの結果を図1〜図3に示す。なお、図1〜図3は、それぞれ、溶血試料の放置時間とHbA1c値の相対値(%)との関係を示すグラフであって、図1は試料Lowの結果、図2は試料Highの結果、図3は検体試料の結果を示す。
【0055】
(プロテアーゼ試薬)
メタロプロテアーゼ(アークレイ社製) 2MU/L
MES緩衝液(pH5.5) 1mM
【0056】
【0057】
(実施例2)
溶血試薬液Aに代えて下記溶血試薬液Bを使用した以外は、前記実施例1と同様にして吸光度の測定を行い、HbA1c値の相対値を求めた。これらの結果を図1〜図3にあわせて示す。
【0058】
(溶血試薬液B)
Na2CO3を添加しない以外は、前記溶血試薬液Aと同じ組成の混合液に、ハンディーボンベ(商品名Standard Gas CO2 ;ジーエルサイエンス社製)により二酸化炭素のバブリングを行った。バブリングの条件は、室温(約20℃)、自然大気圧下、10秒間とした。これによって二酸化炭素濃度が約30mmol/Lの溶血試薬液Bを調製した。
【0059】
前記図1〜図3に示すように、炭酸ナトリムが無添加であり、二酸化炭素のバブリングを行っていない以外は、前記溶血試薬Aと同じ組成である前記溶血試薬液Cを用いた比較例によれば、溶血試料の放置によって経時的にHbA1c値の相対値が増加した。これに対して、溶血試薬液Aまたは溶血試薬液Bを使用した実施例によれば、比較例と同様に溶血試料を7時間放置しても、ほとんどHbA1c値の相対値の増加は認められなかった。これらの結果から、溶血試料に予め二酸化炭素を溶解させることによって、溶血試料の放置によるHbA1c値の相対値の増加を防止でき、溶血試料の放置による測定精度の低下を防止できることがわかる。
【0060】
(実施例3、比較例2)
さらに、溶血試料を25℃で24時間放置した場合におけるHbA1c値の相対値の変動を確認した。まず、前記溶血試薬液Bを使用して前述のとおり溶血試料を調製し、調製直後の溶血試料と、25℃で24時間放置した溶血試料とを用いて、それぞれ発色反応を行い、吸光度を測定した。そして、HbA1cの標準物質を用いて予め作製した、HbA1c(%)と吸光度との検量線から、前記各溶血試料のHbA1c(%)を求めた。また、比較例2としては、溶血試薬液Aに代えて溶血試薬液Cを使用した以外は、実施例と同様にしてHbA1c(%)を求めた。これらの結果を下記表1に示す。なお、下記表において、0hrおよび24hrとは溶血試料の25℃での放置時間を示し、かっこ内の値は、24時間放置後のHbA1c(%)の変動値を示す。
【0061】
【0062】
前記表1に示すように、比較例2によれば、測定変動値が0.9%であるのに対して、実施例3によれば、測定誤差の範囲(約0.5%以下)であり、溶血試料を放置しても信頼性の高いHbA1c濃度が測定できることがわかった。
【0063】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、調製した溶血試料を、例えば、室温に保存しても、調製直後の溶血試料と同様の測定精度で糖化タンパク質の測定を行うことができる。したがって、大量の検体を処理する必要がある場合において、特に有用な溶血試料の安定化方法であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により調製した溶血試料の一実施例において、前記溶血試料の保存時間と、測定値変化との関係を示したグラフである。
【図2】前記実施例において、その他の溶血試料の保存時間と、測定値変化との関係を示したグラフである。
【図3】前記実施例において、さらにその他の溶血試料の保存時間と、測定値変化との関係を示したグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶血試料の安定化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
血球中の糖化タンパク質の中でも、特に糖化ヘモグロビン(HbA1c)は、生体内血糖値の過去の履歴を反映していることから、糖尿病の診断や治療等における重要な指標とされている。
【0003】
糖化ヘモグロビンは、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法、ミニカラム法、免疫法等により、ヘモグロビンの糖化率として測定されており、最近では、糖化アミノ酸酸化還元酵素(FAOD)を用いた酵素法により測定する方法も開発されている。
【0004】
前記酵素法は、まず、血球を溶血させた溶血試料を調製し、この溶血試料をフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(以下、「FAOD」という)で処理し、糖化ヘモグロビンの糖化部分に作用させて過酸化水素を発生させる。この過酸化水素量は、前記糖化ヘモグロビンの糖化量に対応する。そして、この試料に、さらにペルオキシダーゼ(以下、「POD」という)および還元剤を添加し、前記PODを触媒として前記過酸化水素と前記還元剤との間で酸化還元反応させる。この時、前記還元剤として、酸化されることにより発色する発色性基質を用いれば、その発色の測定により前記過酸化水素量を測定でき、この結果、血球中の糖化ヘモグロビン量を知ることができる。このような酵素法は、実際に臨床医療の分野において適用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この酵素法では、以下のような問題が生じている。すなわち、糖化タンパク質を測定するにあたっては、前述のように、まず第1に溶血試料を調製する必要があるが、必ずしも溶血試料の調製直後に糖化タンパク質の測定が行われるわけではない。つまり、一定数の溶血試料が揃ってから、これら全てを測定に供するため、各溶血試料によって、調製から測定開始までの時間が様々であり、このような溶血試料の放置によって測定精度が低下するという現象が見られたのである。具体的には、同じ溶血試料であっても、それを室温で放置した場合、放置時間に応じて経時的に測定値の上昇が見られ、糖化タンパク質量の正確な値を得ることができないという問題が生じたのである。このような問題を回避し、優れた測定精度を維持するためには、溶血試料を調製した直後に、糖化タンパク質の測定を行うことが要求される。しかし、臨床医療の分野においては、多量の検体を処理する必要があるため、各検体について溶血試料を調製した直後に測定を行うことは、効率面からも現実的に困難である。
【0006】
そこで、本発明の目的は、室温に放置しても、後に行う測定において測定精度に影響を与えない溶血試料の安定化方法の提供である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の溶血試料の安定化方法は、血球を溶血させた溶血試料に、炭酸イオン、炭酸水素イオンおよび二酸化炭素からなる群から選択された少なくとも一つを含有させることを特徴とする。
【0008】
発明者らは、溶血試料を室温に放置した際に、前述のように糖化ヘモグロビンの測定値が経時的に増加する原因について鋭意研究を行った。その結果、溶血試料を放置する間に大気中の二酸化炭素が前記溶血試料に溶解するため、溶解した二酸化炭素によって前記試料中のヘモグロビン構造が徐々に変化し、これに伴い、プロテアーゼによる消化反応速度に変化が生じたり、ヘモグロビン自身の酸化還元能にも変化が生じるため、前述のようなFAODやPODによる酸化還元反応が影響を受け、結果的に測定値が上昇したと推察したのである。このような推察に基づいて研究を行った結果、本発明者らは、溶血試料に二酸化炭素を溶存させることによって、または、溶血試料に炭酸イオンもしくは炭酸水素イオンを含有させることによって、前述のような溶血試料の放置による測定値の経時的変化を抑制できることを見出し、本発明に到達したのである。このように溶血試料の放置によって、測定値が経時的に上昇すること、それが二酸化炭素の溶存が原因であると推察したこと、ならびに溶血試料に予め二酸化炭素または炭酸イオンもしくは炭酸水素イオンを含有させることによって前述の課題を解決できることは、全て本発明の発明者らが初めて見出したことである。このような溶血試料の安定化方法に基づけば、溶血試料を調製した直後に酵素反応による測定を行う必要がないため、前述のような臨床分野において非常に効率よく、糖化ヘモグロビンをはじめとする糖化タンパク質の測定を行うことができ、極めて有用な方法であると言える。
【0009】
また、前述のように本発明の溶血試料の安定化方法は、例えば、界面活性剤を含む血球溶血用の溶血試薬液であって、さらに炭酸イオン、炭酸水素イオンおよび二酸化炭素からなる群から選択された少なくとも一つを含む試薬液を用いて行うことができる。このような溶血試薬液を用いれば、前述のような本発明の溶血試料の安定化を容易に行うことができるため、例えば、臨床分野等、糖化タンパク質の測定の際に非常に有用な試薬と言える。また、本発明の溶血試料の安定化方法により、溶血試料の製造を行うことができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の溶血試料の安定化方法は、前述のように、血球を溶血させた溶血試料に、炭酸イオン、炭酸水素イオンおよび二酸化炭素からなる群から選択された少なくとも一つを含有させることを特徴とする。なお、本発明において溶血試料に二酸化炭素を含有させるとは、前記溶血試料に二酸化炭素を溶存させることをいう。
【0011】
まず、溶血試料に二酸化炭素を溶存させて、前記溶血試料を安定化する方法の一例について説明する。
【0012】
前記溶血試料における二酸化炭素の溶存濃度は、例えば、溶血処理に供した血球量等に応じて適宜決定できるが、例えば、2〜35℃の場合、8mmol/L以上である。好ましくは10〜80mmol/Lの範囲が好ましく、より好ましくは15〜80mmol/Lの範囲である。具体的に、前記溶血試料における血球濃度が5g/Lの場合、二酸化炭素の溶存濃度は、2〜35℃において、例えば、8mmol/L以上であり、好ましくは10〜80mmol/Lの範囲であり、より好ましくは15〜80mmol/Lの範囲である。
【0013】
本発明において、前記溶血試料に、さらに界面活性剤を含有させることが好ましい。界面活性剤を含有させることによって、例えば、糖化ヘモグロビン等の糖化タンパク質を測定する際のプロテアーゼ処理を効率よく行うことができる。また、前述のように二酸化炭素の影響によって、例えば、ヘモグロビンの消化速度に変化が生じるおそれがあるが、界面活性剤を添加すれば、その消化反応を促進することができる。前記界面活性剤としては、特に制限されず、例えば、ポリオキシエチレン-p-t-オクチルフェニル エーテル(Triton系界面活性剤等)、ポリオキシエチレン ソルビタン アルキル エステル(Tween系界面活性剤等)、ポリオキシエチレン アルキル エーテル(Brij系界面活性剤等)等の非イオン性界面活性剤が使用でき、具体的には、例えば、TritonX−100、Tween−20、Brij35等があげられる。
【0014】
前記溶血試料における界面活性剤の含有濃度は、例えば、6〜40mmol/Lの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜40mmol/Lの範囲であり、特に好ましくは15〜40mmol/Lの範囲である。具体的に、前記溶血試料における血球濃度が5g/Lの場合、界面活性剤の濃度は、2〜35℃において、例えば、8mmol/L以上であり、好ましくは10〜40mmol/Lの範囲であり、より好ましくは15〜40mmol/Lの範囲である。
【0015】
本発明の安定化方法において、溶血試料に二酸化炭素を溶存させるため、例えば、界面活性剤を含みかつ二酸化炭素が溶存した溶血試薬液により、血球を溶血させる工程を含むことが好ましい。このような溶血試薬液を用いて血球を溶血させることによって、二酸化炭素を溶存させた溶血試料を調製することができる。
【0016】
溶血は、例えば、全血に前記溶血試薬液を添加して行ってもよいし、全血から回収した血球(ペレット)に前記溶血試薬液を添加混合して行ってもよい。血球は、例えば、遠心分離、血球分離膜等の膜処理等、従来公知の方法によって回収できる。
【0017】
前記溶血試薬液における界面活性剤(A)と二酸化炭素(B)との割合(A:B)は、特に制限されないが、1:0.5〜1:13の範囲が好ましく、より好ましくは1:2〜1:13の範囲であり、特に好ましくは1:2〜1:3の範囲である。
【0018】
前記溶血試薬液における界面活性剤および二酸化炭素の濃度は、例えば、血球への添加量や血球量によって適宜決定できるが、例えば、界面活性剤6〜40mmol/L、二酸化炭素8〜80mmol/Lであり、好ましくは界面活性剤10〜40mmol/L、二酸化炭素10〜80mmol/Lであり、より好ましくは界面活性剤15〜40mmol/L、二酸化炭素15〜80mmol/Lである。なお、前記二酸化炭素の濃度は、例えば、2〜35℃における濃度である。
【0019】
前記界面活性剤を含み、かつ二酸化炭素が溶存した前記溶血試薬液は、例えば、前記界面活性剤を含む溶液に、99.9%の二酸化炭素ガスをバブリングすることによって調製できる。バブリングは、例えば、二酸化炭素のボンベ等を用いて行うことができる。その条件は特に制限されないが、通常、2〜35℃の条件下で行われ、具体的には、前記溶液が10mlの場合、例えば、自然大気圧下、温度1.5〜35℃、時間10秒の条件でバブリングを行うことによって、二酸化炭素の溶存濃度が、20〜80mmol/Lの溶血試薬液を得ることができる。
【0020】
なお、界面活性剤を含む溶液の溶媒としては、特に制限されず、例えば、水や各種緩衝液が使用できる。また、二酸化炭素は、以上のように界面活性剤を含む溶液に溶存させる他に、例えば、前記溶液を調製するための前記溶媒に予め溶存させてもよい。
【0021】
血球と前記溶血試薬液との混合割合は、特に制限されず、例えば、調製した溶血試料における二酸化炭素の溶存濃度や、界面活性剤の濃度が、前述のような範囲になるように設定することが好ましい。
【0022】
また、本発明の安定化方法において、前記溶血試料へ二酸化炭素を溶存させるため、前述のような溶血試薬液を使用する以外に、例えば、界面活性剤を用いる方法、超音波による方法、浸透圧の差を利用する方法等によって溶血試料を調製した後、この溶血試料に、直接、二酸化炭素ガスのバブリングを行ってもよい。
【0023】
つぎに、溶血試料に炭酸イオンまたは炭酸水素イオンを含有させて、前記溶血試料を安定化する方法の一例について説明する。
【0024】
前記溶血試料における炭酸イオンまたは炭酸水素イオンの濃度は、例えば、溶血処理に供した血球量等に応じて適宜決定できるが、例えば、8mmol/L以上であり、好ましくは10〜80mmol/Lの範囲、より好ましくは15〜80mmol/Lの範囲である。具体的に、前記溶血試料における血球濃度が5g/Lの場合、炭酸イオンまたは炭酸水素イオンの濃度は、例えば、8mmol/L以上であり、好ましくは10〜80mmol/Lの範囲であり、より好ましくは15〜80mmol/Lの範囲である。なお、炭酸イオンおよび炭酸水素イオンは、いずれか一方が含まれてもよいし、両方が含まれてもよい。また、両イオンを含む場合は、その合計濃度が、例えば、前述のような濃度(例えば、8mmol/L以上)であってもよい。
【0025】
前記溶血試料には、前述と同様に、さらに界面活性剤を含有させることが好ましい。なお、界面活性剤の種類や濃度等は、特に制限されず、例えば、前述と同様である。
【0026】
本発明において、溶血試料に炭酸イオンまたは炭酸水素イオンを含有させるため、例えば、界面活性剤を含みかつ炭酸イオンまたは炭酸水素イオンを含む溶血試薬液により、血球を溶血させる工程を含むことが好ましい。このような溶血試薬液を用いて血球を溶血させることによって、炭酸イオンまたは炭酸水素イオンを含む溶血試料を調製することができる。
【0027】
前記界面活性剤を含み、かつ炭酸イオンまたは炭酸水素イオンが溶存した前記溶血試薬液は、例えば、界面活性剤を含む溶液に炭酸塩を溶解することによって調製することができる。
【0028】
前記炭酸塩としては、例えば、アルカリ金属塩が好ましく、具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム・カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムおよび炭酸トリス等が使用でき、これらの中でも好ましくは炭酸ナトリウム等である。
【0029】
前記溶血試薬液における界面活性剤(A)と炭酸塩(C)との添加割合(A:C)は、例えば、1:0.2〜1:27の範囲であることが好ましく、より好ましくは1:1.5〜1:27の範囲であり、特に好ましくは1:1.5〜1:4の範囲である。
【0030】
また、前記溶血試料に炭酸イオンまたは炭酸水素イオンを含有させるには、前述のような溶血試薬液を使用する以外に、例えば、溶血試料を調製した後、この溶血試料に、直接、前述のような炭酸塩を溶解したり、前記炭酸塩を溶解した溶液を添加混合してもよい。
【0031】
なお、従来の問題として、特に、血液を溶血させた状態で放置することによって、前述のようなHbA1c値の上昇が見られることから、本発明の安定化方法においては、少なくとも溶血試料の放置時に、二酸化炭素や炭酸イオン、炭酸水素イオンが含有されていればよい。本発明の安定化方法において、前記二酸化炭素や炭酸イオン、炭酸水素イオンは、例えば、前述のように溶血試料に含有させてもよく、溶血前の検体に予め含有させてもよい。また、溶血試料や溶血前検体に直接含有させてもよいし、前述のように溶血試薬液に二酸化炭素や炭酸イオン、炭酸水素イオンを含有させ、この試薬液を溶血前検体に添加することもできる。これらの中でも、例えば、臨床試験の現場における利便性や簡便性の点から、予め溶血試薬に二酸化炭素や炭酸イオン、炭酸水素イオンを含有させ、溶血前の検体に添加することが好ましい。
【0032】
以上のようにして調製した二酸化炭素または炭酸イオンもしくは炭酸水素イオンを含有させた溶血試料であれば、例えば、室温条件下で保存した場合に、長期間安定な状態を維持することができる。このため、例えば、前述のように保存後に酵素反応によって溶血試料中の糖化タンパク質の測定を行った場合でも、測定値の経時的変化を抑制することができる。本発明は、低温条件下での保存を行う場合にも適用できるが、前述のように室温条件での問題点を解決できることから、室温(例えば、15〜35℃程度)で溶血試料を保存する際に有用な方法といえる。特に、前述のような臨床医療等における分析化学の分野では、実際に調製後の溶血試料を室温で保存することが多く見られ、そのような条件下での保存によって前述のような問題が生じていることからも、室温での安定化に有用といえる。また、調製直後に溶血試料の測定を行うことももちろん可能であるが、前述のように保存の際の問題を回避できることから、前述のような臨床医療の分野における、調製直後の使用が困難な際に適用することが好ましい。本発明によれば、例えば、溶血試料の調整後、26時間程度、調製直後と同程度の測定値を維持することができ、好ましくは3〜10時間程度である。
【0033】
本発明によって調製した溶血試料は、例えば、糖化ヘモグロビン、ヘモグロビン、グリコアルブミン、アルブミン、グロブリン、ミオグロビン等の測定試料として使用することができ、特に好ましくは糖化ヘモグロビンである。
【0034】
以下に本発明により調製した溶血試料について、糖化ヘモグロビンを測定する方法の一例を以下に説明する。
【0035】
前記溶血試料に対してプロテアーゼ処理を行い、前記試料中の糖化ヘモグロビンを分解する。前記プロテアーゼ処理は、通常、緩衝液中で行われ、その処理条件は、使用するプロテアーゼの種類、糖化ヘモグロビンの量等により適宜決定される。
【0036】
プロテアーゼとしては、特に制限されないが、例えば、セリンプロテアーゼ、チオールプロテアーゼ、メタロプロティナーゼ等が使用でき、具体的には、トリプシン、プロテナーゼK、キモトリプシン、パパイン、ブロメライン、ズブチリシン、エラスターゼ、アミノペプチダーゼ等が好ましい。また、分解する糖化タンパク質が糖化ヘモグロビンの場合、前記プロテアーゼは、前記糖化ヘモグロビンを選択的に分解するプロテアーゼであり、ブロメライン、パパイン、ブタ膵臓由来トリプシン、メタロプロティナーゼ、Bacillus subtillis由来のプロテアーゼ等が好ましい。前記Bacillus subtillis由来プロテアーゼとしては、商品名プロテアーゼN(例えば、フルカ社製)、商品名プロテアーゼN「アマノ」(天野製薬社製)等があげられる。前記メタロプロティナーゼとしては、Bacillus属由来メタロプロティナーゼ(EC3.4.24.4)(例えば、東洋紡社製:商品名トヨチーム)等があげられる。これらの中でもより好ましくはメタロプロティナーゼ、ブロメライン、パパインであり、特に好ましくはメタロプロティナーゼである。このように、選択的に分解するプロテアーゼを使用すれば、特定のタンパク質の分解物を選択的に調製できる。前記プロテアーゼ処理は、通常、緩衝液中で行われ、その処理条件は、使用するプロテアーゼの種類、測定対象物である糖化タンパク質の種類およびその濃度等により適宜決定される。
【0037】
前記緩衝液としては、例えば、CHES緩衝液、CAPSO緩衝液、CAPS緩衝液、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、EPPS緩衝液、HEPES緩衝液等が使用できる。そのpHは、例えば、6〜13の範囲であり、好ましくは7〜11の範囲である。また、プロテアーゼ処理溶液における前記緩衝液の最終濃度は、例えば、1.0〜10mmol/Lの範囲である。
【0038】
具体的には、例えば、前記プロテアーゼとしてメタロプロティナーゼを用いて前記前処理済み溶血試料を処理する場合、通常、反応液中のメタロプロティナーゼ濃度0.1〜40MU/L、反応液中の血球濃度0.05〜15体積%、反応温度15〜37℃、反応時間1分〜24時間、pH6〜12の範囲である。
【0039】
また、例えば、前記プロテアーゼとしてプロテアーゼKを用いて前記前処理済み溶血試料を処理する場合、通常、反応液中のプロテアーゼ濃度10〜300KU/L、反応液中の血球濃度0.05〜15体積%、反応温度15〜37℃、反応時間1分〜24時間、pH6〜12の範囲である。また、前記緩衝液の種類も特に制限されず、例えば、トリス塩酸緩衝液、EPPS緩衝液、PIPES緩衝液等が使用できる。
【0040】
つぎに、前記プロテアーゼ処理により得られた糖化ヘモグロビン分解物を、後述するFAODで処理する。このFAOD処理により、下記式(1)に示す反応が触媒される。前記FAODと反応させる糖化ヘモグロビン分解物の糖化部分は、使用するFAODの触媒反応により異なるが、例えば、アミノ酸残基側鎖の糖化アミノ基や糖化α−アミノ基であることが好ましい。この中でも、後述する触媒機能を有するFAODが作用し易いことから、前記アミノ酸残基側鎖の糖化アミノ基であることが好ましく、例えば、リジン残基側鎖の糖化アミノ基、アルギニン残基側鎖の糖化アミノ基があげられる。
【0041】
このFAOD処理は、前記プロテアーゼ処理と同様に緩衝液中で行うことが好ましく、前記緩衝液としては、特に制限されず、前記プロテアーゼ処理と同様の緩衝液が使用できる。
【0042】
この処理条件は、例えば、反応液中のFAOD濃度200〜30,000U/L、反応液中のヘモグロビン濃度0.1〜10g/L、反応温度15〜37℃、反応時間1〜20分、pH7〜9の範囲である。
【0043】
つぎに、前記FAOD処理で生じた過酸化水素を、PODおよび酸化により発色する基質を用いて、酸化還元反応を利用して測定する。
【0044】
このPODによる酸化還元反応は、通常、緩衝液中で行われ、その条件は、過酸化水素濃度等により適宜決定される。通常、反応液中のPOD濃度1〜20000IU/L、基質濃度0.0001〜1mmol/L、反応温度20〜37℃、反応時間1〜5分、pH6〜9である。また、前記緩衝液は、特に制限されず、前記FAOD処理等と同様の緩衝液等が使用できる。
【0045】
前記酸化により発色する基質としては、特に制限されず、例えば、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミンナトリウム、オルトフェニレンジアミン(OPD)、トリンダー試薬と4−アミノアンチピリンとを組み合せた基質等があげられる。前記トリンダー試薬としては、例えば、フェノール、フェノール誘導体、アニリン誘導体、ナフトール、ナフトール誘導体、ナフチルアミン、ナフチルアミン誘導体等があげられる。また、前記4−アミノアンチピリンの他に、アミノアンチピリン誘導体、バニリンジアミンスルホン酸、メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)、スルホン化メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(SMBTH)等も使用できる。このような発色性基質の中でも、特に好ましくは、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミンナトリウムである。
【0046】
前記酸化により発色する基質を用いた場合は、その発色(反応液の吸光度)を分光光度計で測定することにより、過酸化水素の濃度を測定でき、これから前記試料中のヘモグロビン糖化量を測定できる。
【0047】
前記FAODとしては、例えば、下記式(1)に示す反応を触媒するFAODが使用できる。
【0048】
【0049】
前記式(1)において、R1−CO−CH2−NH−R2 は、例えば、糖化タンパク質、糖化ペプチドおよび糖化アミノ酸である。前記式(1)において、R1は、水酸基もしくは糖化反応前の糖に由来する残基(糖残基)を示す。前記糖残基(R1)は、反応前の糖がアルドースの場合はアルドース残基であり、反応前の糖がケトースの場合、ケトース残基である。例えば、反応前の糖がグルコースの場合は、アマドリ転位により、反応後の構造はフルクトース構造をとるが、この場合、糖残基(R1)は、グルコース残基(アルドース残基)となる。この糖残基(R1)は、例えば、
−[CH(OH)]n−CH2OH
で示すことができ、nは、0〜6の整数である。なお、前記式(1)において、R2は、アミノ酸残基またはペプチド残基を示す。
【0050】
使用するFAODの触媒反応は、前述のような反応であれば特に制限されないが、前記式(1)において、α−アミノ基以外のアミノ基に糖が結合した糖化部位に作用する触媒反応であることが好ましい。また、前記FAODは、このような触媒機能のみに制限されず、さらにα−アミノ基に糖が結合した糖化部位に作用する触媒機能を併せ持ってもよい。
【0051】
【実施例】
(実施例1)
(標準試料の調製)
ヘモグロビン凍結乾燥品を下記溶血試薬液Aで溶解し、ヘモグロビン濃度4.1g/LでありHbA1c値4.4%の試料溶液(以下、「試料Low」という)と、ヘモグロビン濃度5.3g/LでありHbA1c値10.4%の試料溶液(以下、「試料High」という)とを調製した。
【0052】
(検体試料の調製)
ヒト全血を遠心処理(3000rpm、10分、20℃)して赤血球を回収し、前記赤血球に50倍量(体積)の下記溶血試薬液Aを添加混合することによって、溶血を行い、検体試料とした。
【0053】
【0054】
前記各試料(溶血試料)を25℃で所定時間(0、2、4、6、8時間)放置した。そして、放置後の溶血試料20μLに、下記プロテアーゼ試薬180μLを添加し、37℃で5分間処理した後、さらに下記FAOD試薬45μLを添加して37℃で処理を行った。そして、FAOD試薬の添加5分間後における反応液の吸光度を、主波長700nm、副波長570nmで測定した。そして、HbA1cの標準物質を用いて予め作製した、HbA1c(%)と吸光度との検量線から、前記溶血試料のHbA1c(%)を求め、放置時間が0時間である溶血試料のHbA1c値(%)を「100%」として、各溶血試料のHbA1c値について相対値(%)を算出した。また、界面活性剤濃度を12g/Lとし、炭酸ナトリウムを未添加とする他は、前記溶血試薬Aと同じ組成である溶血試薬液Cを調製した。そして、溶血試薬液Aに代えて溶血試薬液Cを使用する以外は、同様にして溶血試料の調製および放置を行い、発色反応を行ったものを比較例1とした。これらの結果を図1〜図3に示す。なお、図1〜図3は、それぞれ、溶血試料の放置時間とHbA1c値の相対値(%)との関係を示すグラフであって、図1は試料Lowの結果、図2は試料Highの結果、図3は検体試料の結果を示す。
【0055】
(プロテアーゼ試薬)
メタロプロテアーゼ(アークレイ社製) 2MU/L
MES緩衝液(pH5.5) 1mM
【0056】
【0057】
(実施例2)
溶血試薬液Aに代えて下記溶血試薬液Bを使用した以外は、前記実施例1と同様にして吸光度の測定を行い、HbA1c値の相対値を求めた。これらの結果を図1〜図3にあわせて示す。
【0058】
(溶血試薬液B)
Na2CO3を添加しない以外は、前記溶血試薬液Aと同じ組成の混合液に、ハンディーボンベ(商品名Standard Gas CO2 ;ジーエルサイエンス社製)により二酸化炭素のバブリングを行った。バブリングの条件は、室温(約20℃)、自然大気圧下、10秒間とした。これによって二酸化炭素濃度が約30mmol/Lの溶血試薬液Bを調製した。
【0059】
前記図1〜図3に示すように、炭酸ナトリムが無添加であり、二酸化炭素のバブリングを行っていない以外は、前記溶血試薬Aと同じ組成である前記溶血試薬液Cを用いた比較例によれば、溶血試料の放置によって経時的にHbA1c値の相対値が増加した。これに対して、溶血試薬液Aまたは溶血試薬液Bを使用した実施例によれば、比較例と同様に溶血試料を7時間放置しても、ほとんどHbA1c値の相対値の増加は認められなかった。これらの結果から、溶血試料に予め二酸化炭素を溶解させることによって、溶血試料の放置によるHbA1c値の相対値の増加を防止でき、溶血試料の放置による測定精度の低下を防止できることがわかる。
【0060】
(実施例3、比較例2)
さらに、溶血試料を25℃で24時間放置した場合におけるHbA1c値の相対値の変動を確認した。まず、前記溶血試薬液Bを使用して前述のとおり溶血試料を調製し、調製直後の溶血試料と、25℃で24時間放置した溶血試料とを用いて、それぞれ発色反応を行い、吸光度を測定した。そして、HbA1cの標準物質を用いて予め作製した、HbA1c(%)と吸光度との検量線から、前記各溶血試料のHbA1c(%)を求めた。また、比較例2としては、溶血試薬液Aに代えて溶血試薬液Cを使用した以外は、実施例と同様にしてHbA1c(%)を求めた。これらの結果を下記表1に示す。なお、下記表において、0hrおよび24hrとは溶血試料の25℃での放置時間を示し、かっこ内の値は、24時間放置後のHbA1c(%)の変動値を示す。
【0061】
【0062】
前記表1に示すように、比較例2によれば、測定変動値が0.9%であるのに対して、実施例3によれば、測定誤差の範囲(約0.5%以下)であり、溶血試料を放置しても信頼性の高いHbA1c濃度が測定できることがわかった。
【0063】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、調製した溶血試料を、例えば、室温に保存しても、調製直後の溶血試料と同様の測定精度で糖化タンパク質の測定を行うことができる。したがって、大量の検体を処理する必要がある場合において、特に有用な溶血試料の安定化方法であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により調製した溶血試料の一実施例において、前記溶血試料の保存時間と、測定値変化との関係を示したグラフである。
【図2】前記実施例において、その他の溶血試料の保存時間と、測定値変化との関係を示したグラフである。
【図3】前記実施例において、さらにその他の溶血試料の保存時間と、測定値変化との関係を示したグラフである。
Claims (10)
- 溶血試料に、炭酸イオン、炭酸水素イオンおよび二酸化炭素からなる群から選択された少なくとも一つを含有させる溶血試料の安定化方法。
- 2〜35℃における前記溶血試料中の二酸化炭素の溶存濃度が、8mmol/L以上である請求項1記載の安定化方法。
- 2〜35℃における前記溶血試料中の二酸化炭素の溶存濃度が、8〜80mmol/Lの範囲である請求項2記載の安定化方法。
- 前記溶血試料中の炭酸イオンまたは炭酸水素イオンの濃度が、8mmol/L以上である請求項1記載の安定化方法。
- 前記溶血試料中の炭酸イオンまたは炭酸水素イオンの濃度が、8〜80mmol/Lの範囲である請求項4記載の安定化方法。
- 前記溶血試料に、二酸化炭素ガスをバブリングする請求項1〜3のいずれか一項に記載の安定化方法。
- 前記溶血試料に炭酸塩を溶解する請求項1、4および5のいずれか一項に記載の安定化方法。
- 前記炭酸塩が、アルカリ金属塩である請求項7記載の安定化方法。
- 前記アルカリ金属塩が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム・カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムおよび炭酸トリスからなる群から選択された少なくとも一つの塩である請求項8記載の安定化方法。
- 前記溶血試料が糖化ヘモグロビン測定用である請求項1〜9のいずれか一項に記載の安定化方法。
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