JP2005062067A - 異常糖化ヘモグロビンの検出方法 - Google Patents

異常糖化ヘモグロビンの検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 異常ヘモグロビン(Hb)の検出方法を提供する。
【解決手段】 予め、正常ヘモグロビンにおける異なる2箇所以上のアミノ酸残基の糖化量から、それらの比率を求めておき、前記異なる2箇所以上のアミノ酸残基と同じアミノ酸残基について、分析対象ヘモグロビンにおける糖化量をそれぞれ測定し、測定した糖化量からそれらの比率を求め、この比率と、前記正常ヘモグロビンにおける比率とを比較し、前記両比率が一致すれば正常ヘモグロビン、両比率が相違すれば異常ヘモグロビンとする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ヘモグロビン(Hb)における変異の有無を検出する方法に関する。
血液中の糖化Hbは、生体内血糖値の過去の履歴を反映しているため、糖尿病の診断や治療等における重要な指標とされており、中でも、β鎖N末端のバリンが糖化したものは、「HbA1c」と呼ばれ、特に前記指標としての測定が行われている。
このような糖化Hbは、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法、ミニカラム法、免疫法等により、Hbの糖化量または糖化率として測定されている。また、近年では、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼをHbの糖化部分に作用させ、その酸化反応により発生した過酸化水素を測定することによって前記糖化量等を求める酵素法も実用化されている。そして、Hbの中でも特にHbA1c(%)は、前記各種方法によって、そのβ鎖N末バリンの糖化を特異的に検出することによって測定されている。
しかしながら、Hbの中には、1残基〜数残基のアミノ酸が変異した異常Hbが存在する場合がある。そして、このような異常Hbは、そのアミノ酸の変異箇所によってHbA1c(%)の測定に様々な影響を与え、例えば、HbA1c(%)値が真の値よりも増加もしくは減少する場合がある。このような誤った測定値を真のHbA1c(%)であると誤認すれば、その誤認した測定値に基づいて診断等が行われるという問題が生じることとなる。したがって、臨床医療の分野においては、Hbにおける異常の有無を確認することは非常に重要なことである。
しかしながら、例えば、HPLCによりHbA1c(%)を測定する場合には、例えば、臨床所見において異常Hbの存在が推測されるにも関わらず、測定値が正常値範囲内にある場合等、前記臨床所見とHbA1c(%)の測定値との不一致から異常Hbの存在を発見するという、非常に不確実な方法しかなかった。そして、このような異常Hbを有する場合には、異常Hbと正常Hbとを分離した上で、その糖化率を測定する必要があった(例えば、非特許文献1)。
ダブリュー.ギャリー ジョンら(W. Garry John et al.)、クリニカルケミストリー(Clinical Chemistry)、1997年、43巻、6号、968〜975頁
そこで、本発明の目的は、異常Hbの新たな検出方法の提供である。
前記目的を達成するために、本発明の異常Hbの検出方法として、以下に示す第1の検出方法および第2の検出方法があげられる。
本発明の第1の検出方法は、予め、正常Hbにおける異なる2箇所以上のアミノ酸残基(X1〜Xn;nは2以上の整数)の糖化量のうち、いずれか1つのアミノ酸残基(X1)の糖化量を基準値(x1)として、前記基準値(x1)と、他のアミノ酸残基(X2〜Xn)の糖化量(x2〜xn)との比率(x1:x2〜x1:xn)をそれぞれ求めておき、
前記異なる2箇所以上のアミノ酸残基と同じアミノ酸残基について、分析対象Hbにおける糖化量をそれぞれ測定し、測定したアミノ酸残基(X1)の糖化量(x1')と、測定した他のアミノ酸残基(X2〜Xn)の糖化量(x2'〜xn')から前記比率(x1:x2〜x1:xn)を用いて換算したアミノ酸残基(X1)の換算糖化量(x2''〜xn'')とを比較し、両者が異なれば異常Hb、両者が一致すれば正常Hbとする異常Hbの検出方法である。
また、本発明の第2の検出方法は、予め、正常Hbにおける異なる2箇所以上のアミノ酸残基の糖化量から、それらの比率を求めておき、
前記異なる2箇所以上のアミノ酸残基と同じアミノ酸残基について、分析対象Hbにおける糖化量をそれぞれ測定し、測定した糖化量からそれらの比率を求め、この比率と、前記正常Hbにおける比率とを比較し、前記両比率が一致すれば正常Hb、両比率が相違すれば異常Hbとする異常Hbの検出方法である。
このような本発明の第1および第2の検出方法によれば、コントロールとして正常Hbにおける2箇所以上の糖化量を測定し、かつ、分析対象Hbにおける同箇所の糖化量を測定することによって、分析対象Hbにおける異常Hbの有無が確認できる。このような方法は、特に前述のような、特異的な箇所の総量を測定できるFAODを利用した酵素法や免疫法において有用であり、HPLCのように様々なピークとして得られるという問題がなく、また、HPLC等の装置が不要であることから容易かつ簡便に検出を行うことができる。また、後述するように、本発明の検出方法を利用することによって、真のHb糖化量または糖化率、具体的には真のHbA1c(%)を決定できるため、臨床医療の分野において非常に有用な方法であるといえる。
本発明の第1の検出方法は、前述のとおり、予め、正常Hbにおける異なる2箇所以上のアミノ酸残基(X1〜Xn;nは2以上の整数)の糖化量のうち、いずれか1つのアミノ酸残基(X1)の糖化量を基準値(x1)として、前記基準値(x1)と、他のアミノ酸残基(X2〜Xn)の糖化量(x2〜xn)との比率(x1:x2〜x1:xn)をそれぞれ求めておき、
前記異なる2箇所以上のアミノ酸残基と同じアミノ酸残基について、分析対象Hbにおける糖化量をそれぞれ測定し、測定したアミノ酸残基(X1)の糖化量(x1')と、測定した他のアミノ酸残基(X2〜Xn)の糖化量(x2'〜xn')から前記比率(x1:x2〜x1:xn)を用いて換算したアミノ酸残基(X1)の換算糖化量(x2''〜xn'')とを比較し、両者が異なれば異常Hb、両者が一致すれば正常Hbとする異常Hbの検出方法である。
この第1の検出方法により、どのようにして異常Hbか否かを判断するかについて、測定するアミノ酸残基数「Xn」の「nが2」である場合の一例を以下に説明する。まず、予め、コントロールとして正常Hbについて異なる2箇所のアミノ酸残基(X1、X2)における糖化量を測定しておく。この結果を、結果[1](x1、x2)と表す。そして、前記結果[1]における、アミノ酸残基(X1)における糖化量を基準値(x1)として、前記基準値(x1)と、他のアミノ酸残基(X2)の糖化量(x2)との比率を求めておく。この結果を、結果[2](x1:x2)と表す。
一方、前記異なる2箇所のアミノ酸残基と同じアミノ酸残基(X1、X2)について、分析対象Hbにおける糖化量をそれぞれ測定する。この結果を、結果[3](x1'、x2')と表す。そして、前記結果[3]におけるアミノ酸残基(X2)の糖化量(x2')から、前記結果[2]における比率(x1:x2)を用いて、アミノ酸残基(X1)における糖化量を換算する。この換算した糖化量を、結果[4](x2'')と表す。なお、前記アミノ酸残基(Xn)における糖化量(xn)を用いた場合、換算糖化量(xn'')は、
xn''=(xn')・(x1/xn)
の式から求めることができ、前記アミノ酸残基(X2)の糖化量(x2')を使用する場合は、
x2''=(x2')・(x1/x2)
となる。
このようにして求めた結果[4]の換算糖化量(x2'')と、実際に測定した結果[3]におけるアミノ酸残基(X1)の糖化量(x1')とを比較する。そして、両者が異なれば異常Hb、両者が一致すれば正常Hbと判断することができるのである。
また、測定するアミノ酸残基数「Xn」の「nが5」である場合の一例を以下に説明する。まず、予め、コントロールとして正常Hbについて異なる5箇所のアミノ酸残基(X1〜X5)における糖化量を測定しておく。この結果を、結果[1](x1、x2、x3、x4、x5)と表す。そして、前記結果[1]における、いずれか一つのアミノ酸残基(X1)における糖化量を基準値(x1)として、前記基準値(x1)と、他のアミノ酸残基(X2〜X5)の糖化量(x2〜x5)との比率を求めておく。この結果を、結果[2](x1:x2、 x1:x3、 x1:x4、 x1:x5)と表す。
一方、前記異なる5箇所のアミノ酸残基と同じアミノ酸残基(X1〜X5)について、分析対象Hbにおける糖化量をそれぞれ測定する。この結果を、結果[3](x1'、x2'、x3'、x4'、x5')と表す。そして、前記結果[3]におけるアミノ酸残基(X2〜X5)の糖化量(x2'〜x5')から、前記結果[2]における比率(x1:x2、 x1:x3、 x1:x4、 x1:x5)を用いて、アミノ酸残基(X1)における糖化量を換算する。この換算した糖化量を、結果[4](x2''〜x5'')と表す。
このようにして求めた結果[4]に示す換算糖化量(x2''〜x5'')と、実際に測定した結果[3]におけるアミノ酸残基(X1)の糖化量(x1')とを比較する。そして、両者が異なれば異常Hb、両者が一致すれば正常Hbと判断することができるのである。
このように2箇所以上のアミノ酸残基における糖化量を測定すれば、例えば、結果[4]の全ての値と、結果[3]の糖化量(x1')とが一致することによって、正常Hbであることの信頼性がより一層増す。反対に、結果[4]の全ての値と、結果[3]の糖化量(x1')とが異なる場合には、異常Hbであることの信頼性が増す。さらに、このように2箇所以上で測定して異常Hbと判断された場合、他の数値と比較して、値の異なる糖化量を示したアミノ酸残基に変異が生じていると推測することも可能になるのである。これは、例えば、結果[4]の値が4つであり、そのうちの1つの値のみが、結果[3]の糖化量(x1')と異なる場合には、その値を示したアミノ酸残基に変異が生じている確立が高いと判断できるということである。一方、結果[4]の値が全て同じ値であり、結果[3]の糖化量(x1')のみが異なる範囲である場合には、アミノ酸残基(X1)に変異が生じている確立が高いと判断することができるのである。
糖化量を測定するアミノ酸残基は、異なる2箇所以上のアミノ酸残基(X1〜Xn;nは2以上の整数)であれば、特に制限されないが、好ましくは2〜10箇所であり、より好ましくは2〜4箇所である。
本発明の第1の検出方法において、正常ヘモグロビンにおける基準値(x1)となる糖化量は、β鎖N末バリンの糖化量に相当するHbA1c(%)であることが好ましい。HbA1c(%)は、前述のように糖尿病の指標として特に重要であり、かつ、β鎖N末端バリンの糖化量に相当するからである。したがって、この場合、測定するアミノ酸残基のうち(X1)は、β鎖N末端バリンであることが好ましい。
つぎに、本発明の第2の検出方法は、前述のとおり、予め、正常Hbにおける異なる2箇所以上のアミノ酸残基(X1〜Xn;nは2以上の整数)の糖化量から、それらの比率を求めておき、
前記異なる2箇所以上のアミノ酸残基と同じアミノ酸残基について、分析対象Hbにおける糖化量をそれぞれ測定し、測定した糖化量からそれらの比率を求め、この比率と、前記正常Hbにおける比率とを比較し、前記両比率が一致すれば正常Hb、両比率が相違すれば異常Hbとする異常Hbの検出方法である。
この第2の検出方法により、どのようにして異常Hbか否かを判断するかについて、測定するアミノ酸残基数「Xn」の「nが2」である場合の一例を以下に説明する。まず、予め、コントロールとして正常Hbについて異なる2箇所のアミノ酸残基(X1、X2)における糖化量を測定しておく。この結果を、結果[1](x1、x2)と表す。そして、前記結果[1]における測定した糖化量の比率を求めておく。この結果を、結果[2](x1:x2)と表す。
一方、前記異なる2箇所のアミノ酸残基と同じアミノ酸残基(X1、X2)について、分析対象Hbにおける糖化量をそれぞれ測定する。この結果を、結果[3](x1'、x2')と表す。そして、前記結果[3]における測定した糖化量の比率を求める。この結果を、結果[4](x1':x2')と表す。
このようにして求めた、コントロールの結果[2]と分析対象Hbの結果[4]とを比較し、両者が異なれば異常Hb、両者が一致すれば正常Hbと判断することができるのである。
また、測定するアミノ酸残基数「Xn」の「nが5」である場合の一例を以下に説明する。まず、予め、コントロールとして正常Hbについて異なる5箇所のアミノ酸残基(X1〜X5)における糖化量を測定しておく。この結果を、結果[1](x1、x2、x3、x4、x5)と表す。そして、前記結果[1]における各糖化量の比率を求めておく。この結果を、結果[2](x1:x2:x3:x4:x5)と表す。
一方、前記異なる5箇所のアミノ酸残基と同じアミノ酸残基(X1〜X5)について、分析対象Hbにおける糖化量をそれぞれ測定する。この結果を、結果[3](x1'、x2'、x3'、x4'、x5')と表す。そして、前記結果[3]における各糖化量の比率を求める。この結果を、結果[4](x1':x2':x3':x4':x5')と表す。
このようにして求めた結果[2](x1:x2:x3:x4:x5)と、結果[4](x1':x2':x3':x4':x5')とを比較し、両者が異なれば異常Hb、両者が一致すれば正常Hbと判断する。
このように2箇所以上のアミノ酸残基における糖化量を測定すれば、前述の本発明の第1の検出方法と同様に、結果[2]における比率と、結果[4]における比率が全て一致することによって、正常Hbであることの信頼性がより一層増すのである。反対に、結果[4]における比率と結果[3]における比率との間で、異なる部分が多い程、異常Hbであることの信頼性が増すのである。さらに、このように2箇所以上で測定すれば、前述と同様に、いずれの部位に変異を有する異常Hbであるかを決定することも可能になるのである。これは、例えば、結果[4]の比率のうち1つの値のみが、結果[3]の比率と異なる場合には、その値を示したアミノ酸残基に変異が生じている確立が高いと判断できるのである。
第2の検出方法においても、糖化量を測定するアミノ酸残基は、異なる2箇所以上のアミノ酸残基(X1〜Xn;nは2以上の整数)であれば、特に制限されないが、好ましくは2〜10箇所であり、より好ましくは2〜4箇所である。
本発明の検出方法において、アミノ酸残基の糖化量の測定方法は特に制限されないが、酵素法や免疫法を使用することが好ましい。この酵素法とは、例えば、糖化Hbの糖化部分にフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(以下「FAOD」という)を作用させ、この酸化反応を測定することによって、前記Hbの糖化程度を測定する方法である。
前記FAODと反応させる糖化Hbの糖化部分は、使用するFAODの触媒反応により異なるが、例えば、N末端バリンの糖化α−アミノ基や、リジン残基やアルギニン残基等の側鎖の糖化アミノ基が好ましい。
前記酸化反応の測定は、例えば、前記反応により生じる過酸化水素量の測定が好ましく、例えば、ペルオキシダーゼ(以下、「POD」という)と酸化により発色する基質とを用いた測定であることが好ましい。
前記酸化により発色する基質としては、特に制限されず、例えば、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミンナトリウム、オルトフェニレンジアミン(OPD)、トリンダー試薬と4−アミノアンチピリンとを組み合せた基質等があげられる。前記トリンダー試薬としては、例えば、フェノール、フェノール誘導体、アニリン誘導体、ナフトール、ナフトール誘導体、ナフチルアミン、ナフチルアミン誘導体等があげられる。また、前記4−アミノアンチピリンの他に、アミノアンチピリン誘導体、バニリンジアミンスルホン酸、メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)、スルホン化メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(SMBTH)等も使用できる。このような発色性基質の中でも、特に好ましくは、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミンナトリウムである。
本発明において使用するFAODとしては、下記式(1)に示す反応を触媒するFAODであることが好ましく、具体的には、例えば、α−アミノ基が糖化された糖化アミンに特異的に作用するFAOD(以下、「FAOD−α」という)、アミノ酸側鎖のアミノ基が糖化された糖化アミンに特異的に作用するFAOD(以下、「FAOD−S」という)、α−アミノ基が糖化された糖化アミンおよびアミノ酸側鎖のアミノ基が糖化された糖化アミンのいずれにも特異的に作用するFAOD(以下、「FAOD−αS」という)等があげられる。
R1-CO-CH2-NH-R2 + H2O + O2
→ R1-CO-CHO + NH2-R2 + H2O2 ...(1)
前記式(1)において、R1は、水酸基もしくは糖化反応前の糖に由来する残基(糖残基)を意味する。前記糖残基(R1)は、反応前の糖がアルドースの場合はアルドース残基であり、反応前の糖がケトースの場合、ケトース残基である。例えば、反応前の糖がグルコースの場合は、アマドリ転位により、反応後の構造はフルクトース構造をとるが、この場合、糖残基(R1)は、グルコース残基(アルドース残基)となる。この糖残基(R1)は、例えば、
-[CH(OH)]n-CH2OH
で示すことができ、nは、0〜6の整数である。
前記式(1)において、R2は、特に制限されないが、糖化アミンが糖化アミノ酸または糖化ペプチドの場合、α−アミノ基が糖化されている場合と、それ以外のアミノ基(アミノ酸側鎖のアミノ基)が糖化されている場合とで異なる。
前記式(1)において、α−アミノ基が糖化されている場合、R2は、下記式(2)で示すアミノ酸残基またはペプチド残基である。この場合に前記式(1)の反応を特異的に触媒するのが前記FAOD−αおよびFAOD−αSである。
-CHR3-CO-R4 …(2)
前記式(2)において、R3はアミノ酸側鎖基を示し、R4は水酸基、アミノ酸残基またはペプチド残基を示し、例えば、下記式(3)で示すことができる。下記式(3)において、nは、0以上の整数であり、R3は、前述と同様に、アミノ酸側鎖基を示し、アミノ酸側鎖基は全て同一でも、異なっていても良い。
-(NH-CR3H-CO)n-OH …(3)
また、前記式(1)において、α−アミノ基以外のアミノ基が糖化されている(アミノ酸側鎖基が糖化されている)場合、R2は下記式(4)で示すことができる。この場合に前記式(1)の反応を特異的に触媒するのが前記FAOD−SおよびFAOD−αSである。
-R5-CH(NH-R6)-CO-R7 …(4)
前記式(4)において、R5は、アミノ酸側鎖基のうち、糖化されたアミノ基以外の部分を示す。例えば、糖化されたアミノ酸がリジンの場合、R5
-CH2-CH2-CH2-CH2-
であり、
例えば、糖化されたアミノ酸がアルギニンの場合、R5は、
-CH2-CH2-CH2-NH-CH(NH2)-
である。
また、前記式(4)において、R6は、水素、アミノ酸残基またはペプチド残基であり、例えば、下記式(5)で示すことができる。なお、下記式(5)において、nは0以上の整数であり、R3は、前述と同様にアミノ酸側鎖基を示し、アミノ酸側鎖基は全て同一でも、異なっていても良い。
-(CO-CR3H-NH)n-H …(5)
また、前記式(4)において、R7は、水酸基、アミノ酸残基またはペプチド残基であり、例えば、下記式(6)で示すことができる。なお、下記式(6)において、nは0以上の整数であり、R3は、前述と同様にアミノ酸側鎖基を示し、アミノ酸側鎖基は全て同一でも、異なっていても良い。
-(NH-CHR3-CO)n-OH …(6)
前記糖化α−アミノ基に特異的に作用するFAOD−αとしては、例えば、市販の商品名フルクトシル−アミノ酸オキシダーゼ(FAOX−E)(キッコーマン社製)、ペニシリウム属由来FAOD(特開平8−336386公報)等があげられる。前記糖化されたアミノ酸側鎖に特異的に作用するFAOD−Sとしては、例えば、フサリウム属由来FAOD(日本生物工学会大会 平成12年度 「Fusarium oxysporum 由来アミノ酸オキシダーゼの基質特異性の変換;藤原真紀 他」)等があげられる。また、前記糖化α−アミノ基および糖化アミノ酸側鎖基の両方に作用するFAOD−αSとしては、例えば、市販の商品名FOD(旭化成社製)、ギベレラ属由来FAOD(特開平8-154672号公報)、フサリウム属由来FAOD(特開平7-289253号公報)、アスペルギルス属由来FAOD(WO99/20039号)等があげられる。
なお、前記式(1)において、α−アミノ基に糖が結合した糖化部位(前記R2が前記式(2)に示す構造である)に作用する触媒機能を有するものが、FAOD−αであり、α−アミノ基以外のアミノ基に糖が結合した糖化部位(前記R2が前記式(4)に示す構造である)に作用する触媒反応を有するものがFAOD−Sであり、両方の触媒機能を有するものFAOD−αSである。
本発明においては、前述のようなFAODの基質特異性を利用して糖化量の測定を行うため、FAODが作用し易いようにHbをプロテアーゼで処理し、この処理物に対してFAODを作用させることが好ましい。
前記プロテアーゼとしては、特に限定されず、例えば、使用するFAODの特異的な触媒作用に応じて、前記FAODが作用し易いアミノ酸残基や、前記アミノ酸残基を含むペプチド断片(例えば、ジペプチド、トリペプチド等)を遊離できるものを適宜選択すればよい。前記プロテアーゼとしては、糖化Hbを選択的に分解できることから、例えば、ブロメライン、パパイン、ブタ膵臓由来トリプシン、メタロプロテイナーゼ、Bacillus subtillis由来のプロテアーゼ等が好ましい。前記Bacillus subtilis由来プロテアーゼとしては、商品名プロテアーゼN(例えば、フルカ社製)、商品名プロテアーゼN「アマノ」(天野製薬社製)等があげられる。前記メタロプロテイナーゼとしては、Bacillus属由来メタロプロテイナーゼ(EC3.4.24.4)(例えば、東洋紡社製:商品名トヨチーム)等があげられる。これらの中でもより好ましくはメタロプロテイナーゼ、ブロメライン、パパインである。なお、FAODとプロテアーゼの組み合わせとしては、後述するように、それぞれの触媒作用に応じて適宜決定することができる。
糖化量を測定する2箇所以上のアミノ酸残基としては、特に制限されないが、例えば、2箇所以上のアミノ酸残基が、全てβ鎖におけるアミノ酸残基であってもよいし、全てα鎖におけるアミノ酸残基であってもよい。また、少なくとも、α鎖のアミノ酸残基およびβ鎖のアミノ酸残基の双方を含んでもよい。
2箇所以上のアミノ酸残基のうち少なくとも2箇所がβ鎖のアミノ酸残基である場合、β鎖におけるN末端バリン残基と、β鎖におけるリジン残基またはアルギニン残基とを含むことが好ましく、より好ましくは前記N末端バリン残基とリジン残基とを含むことが好ましい。
2箇所以上のアミノ酸残基のうち少なくとも2箇所がβ鎖におけるアミノ酸残基およびα鎖におけるアミノ酸残基である場合、β鎖におけるアミノ酸残基がN末端バリンであって、α鎖におけるアミノ酸残基がリジン残基、アルギニン残基またはN末端バリンであることが好ましい。前記α鎖におけるアミノ酸残基は、より好ましくはリジン残基またはN末端バリンである。
つぎに、本発明の検出方法において、異なる2箇所以上のアミノ酸残基の糖化量を測定する方法を、以下、具体例をあげて説明する。なお、以下に示す方法には制限されず、例えば、FAODの基質特異性、プロテアーゼの基質特異性等に応じて適宜決定できる。
HbのN末端バリンの糖化量
N末端バリンは、FAODとして、例えば、糖化されたα-アミノ基に特異的に作用する酵素、すなわち前述のFAOD-αを用いて測定することができる。
具体的には、糖化Hb試料にFAOD−αを作用させ、この酸化反応を前述のような方法で測定することにより、N末端バリンの糖化量を求めることができる。より好ましくは、予め、糖化Hb試料をプロテアーゼで処理し、そのHb分解物をFAOD−αで処理し、同様に糖化量を求める。
特にβ鎖N末端バリンの糖化量を測定する場合には、前記FAOD−αとしては、例えば、商品名FAOX−TE(キッコーマン社製)が使用できる。このFAOD−αは、α-アミノ基が糖化された遊離の「バリン」に特異的に作用するため、N末端配列が「Val-His-Leu・・・」となるβ鎖のN末端バリンの糖化量測定に適している。FAOD−α処理を行う前のプロテアーゼとしては、FAOD−αが作用し易いように、N末端バリン、もしくはこれを含むペプチド(例えば、ジペプチド、トリペプチド等)を、特異的に遊離できるプロテアーゼが好ましく、例えば、アンギオテンシン変換酵素等が使用できる。具体的には、糖化Hb試料をズブチリシン、プロナーゼ等で処理することによってVal-His-Leuのトリペプチドを遊離させ、さらにHis-Leuに特異的なアンギオテンシン変換酵素で処理することによって糖化バリン(フルクトシルバリン)を遊離することができる。そしてこの糖化バリンをFAOD−αで処理すればよい。
一方、α鎖N末端バリンの糖化量を測定する場合には、前記FAOD−αとして、例えば、Fusarium sp.GL2-1(FERM BP-8451)から常套手段によって得られるFAODが使用できる。このFAOD−αは、α-アミノ基が糖化された遊離のVal、Val-Leu、Val-Leu-Serに特異的に作用するため、N末端配列が「Val-Leu-Ser-Pro-Ala-Asp・・・」となるα鎖のN末端バリンの糖化量測定に適している。FAOD−α処理を行う前のプロテアーゼとしては、FAOD−αが作用し易いように、N末端バリン、もしくはこれを含むペプチド(例えば、ジペプチド、トリペプチド等)を、特異的に遊離できるプロテアーゼが好ましく、例えば、エンドプロティナーゼASP−N等が使用できる。具体的には、糖化Hb試料を前記エンドプロティナーゼASP-Nで処理することによって、Val-Leu-Ser-Pro-Ala-Aspペプチドを遊離させ、さらにカルボキシペプチダーゼYで処理することによって糖化Val-Leuを遊離できる。
リジン側鎖またはアルギニン側鎖の糖化量
(1) リジンまたはアルギニンの側鎖における糖化量は、FAODとして、例えば、アミノ酸残基側鎖の糖化部分にのみ作用するFAOD−Sを用いて測定することができる。
具体的には、糖化Hb試料にFAOD−Sを作用させ、この酸化反応を前述のような方法で測定することにより、リジンまたはアルギニンの糖化量を求めることができる。より好ましくは、予め、糖化Hb試料をプロテアーゼで処理し、そのHb分解物をFAOD−αで処理し、同様に糖化量を求めることができる。
以上のような方法によれば、2箇所以上のアミノ酸残基における糖化量の測定を、同じ糖化Hb試料を用いて別々に行い、得られた糖化量を用いて、本発明の第1または第2の検出方法を前述のようにして行うことができる。一方、以下のような方法によれば、糖化量を測定するアミノ酸残基が2箇所以上であっても、同じ糖化Hb試料を用いて連続的に測定を行い、糖化量を求めることもできる。
リジンもしくはアルギニン側鎖の糖化量、およびN末端バリンの糖化量
リジンもしくはアルギニン側鎖の糖化量、およびN末端バリンの糖化量を連続的に測定する場合、FAODとしては、糖化されたアミノ酸残基側鎖に特異的に作用するFAOD-Sと、糖化されたα-アミノ基に特異的に作用するFAOD-αを使用することができる。
まず、糖化Hb試料にFAOD-Sを添加し、このFAODによりリジン残基側鎖またはアルギニン残基側鎖の糖化部分を酸化反応させ、その酸化反応を測定することにより、前記側鎖における糖化量を求める。この反応液に、さらにFAOD−αを添加し、このFAOD−αによりN末端バリンの糖化部分を酸化反応させ、その酸化反応を測定することにより糖化量を求める。このようにすれば、一つの反応系において、連続的に異なる2箇所以上のアミノ酸残基における糖化量を測定できるのである。
また、前述と同様に、各種FAOD処理に先立って、糖化Hb試料をプロテアーゼ処理によって分解しておくことが好ましい。例えば、前記FAOD−S処理の前に、予め、リジン残基またはアルギニン残基、もしくはこれらを含み、かつ、前記FAOD−Sが作用しやすい断片を遊離させることが好ましく、このようなプロテアーゼとしては、例えば、ズブチリシン、パパイン、ブロメライン、メタロプロティナーゼ等が使用あげられる。
また、前記FAOD-α処理前にも、さらに糖化Hb試料をプロテアーゼ処理することが好ましい。例えば、前記FAOD−α処理の前に、予め、N末端バリン、またはこれを含むペプチドであって、前記FAOD−αが作用しやすい断片を遊離させることが好ましく、このようなプロテアーゼとしては、例えば、アンギオテンシン変換酵素、GARE(WO 00/050579号公報、WO 00-061732号公報記載)等が使用あげられる。
特にβ鎖N末端バリンの糖化量を測定する場合には、前記FAOD−αとしては、前述のような商品名FAOX−TE(キッコーマン社製)が使用できる。そして、このFAOD−αが作用し易い、バリンまたはこれを含むペプチド(Val-His、Val-His-Leu)断片を遊離させるプロテアーゼとして、例えば、プロティナーゼK等が使用できる。
なお、FAOD−SとFAOD−αの処理順序は、逆であってもよい。すなわち、糖化Hb試料にFAOD-αを添加し、このFAOD−αによりN末端バリンの糖化部分を酸化反応させ、その酸化反応を測定することにより糖化量を求めた後、さらにFAOD−Sを添加し、このFAOD-Sによりリジン残基側鎖またはアルギニン残基側鎖の糖化部分を酸化反応させ、その酸化反応を測定することにより糖化量を求めることもできる。
本発明の検出方法において、使用する糖化Hb試料としては、特に制限されず、糖化Hbを含有する全血試料、血球試料、溶血試料等があげられる。全血試料や血球試料については、界面活性剤を用いる方法、超音波による方法、浸透圧の差を利用する方法等、従来公知の溶血方法によって溶血処理を行い、溶血試料として使用すればよい。この中でも、操作の簡便性等の理由から、界面活性剤を用いる方法が好ましい。
前記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン-p-t-オクチルフェニル エーテル(Triton系界面活性剤等)、ポリオキシエチレン ソルビタン アルキル エステル(Tween系界面活性剤等)、ポリオキシエチレン アルキル エーテル(Brij系界面活性剤等)等の非イオン性界面活性剤が使用でき、具体的には、例えば、TritonX−100、Tween−20、Brij35等があげられる。前記界面活性剤による処理条件は、通常、処理溶液中の血球濃度が1〜10体積%の場合、前記処理溶液中の濃度が0.1〜1重量%になるように前記界面活性剤を添加し、室温で5秒〜1分程度攪拌すればよい。
また、前述のように糖化Hb試料にプロテアーゼ処理を施す場合、通常、緩衝液中で行われ、その処理条件は、使用するプロテアーゼの種類、糖化ヘモグロビンの量等により適宜決定される。
通常、反応液中のヘモグロビン濃度0.05〜200g/リットル、反応温度10〜60℃、反応時間5分〜40時間、pH5〜9の範囲である。また、前記緩衝液の種類も特に制限されず、例えば、トリス塩酸緩衝液、EPPS緩衝液、PIPES緩衝液、リン酸緩衝液、ADA緩衝液、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液等が使用できる。
プロテアーゼとしてメタロプロテイナーゼを用いて、前記溶血試料を処理する場合、通常、反応液中のプロテアーゼ濃度10〜2000KU/リットル、反応液中のヘモグロビン濃度0.1〜40g/リットル、反応温度15〜60℃、反応時間10分〜40時間、pH6〜9の範囲である。前記緩衝液は、前述と同様のものが使用できる。また、他のプロテイナーゼも同様に使用できる。
糖化Hb試料をFAOD処理する際も、前記プロテアーゼ処理と同様に緩衝液中で行うことが好ましく、前記緩衝液としては、特に制限されず、同様のものが使用できる。
この処理条件は、例えば、反応液中のFAOD濃度200〜30,000U/リットル、反応液中のヘモグロビン濃度0.1〜10g/リットル、反応温度15〜37℃、反応時間1〜20分、pH7〜9の範囲である。
糖化Hb試料の糖化部分を各種FAODにより酸化させる酸化反応の測定は、前述のようにPODおよび酸化により発色する基質を使用した過酸化水素量の測定であることが好ましい。
このPODを用いた過酸化水素量の測定は、通常、緩衝液中で行われ、その条件は、過酸化水素濃度等により適宜決定される。通常、反応液中のPOD濃度1〜20000IU/リットル、基質濃度0.0001〜1mmol/リットル、反応温度20〜37℃、反応時間1〜5分、pH6〜9である。また、前記緩衝液は、特に制限されず、前記FAOD処理等と同様の緩衝液等が使用できる。なお、前記過酸化水素量は、前記POD等を用いた酵素的手法の他に、例えば、電気的手法により測定することもできる。
前記酸化により発色する基質を用いた場合は、その発色(反応液の吸光度)を分光光度計で測定することにより、過酸化水素の濃度を測定でき、これから前記試料中のヘモグロビン糖化量を測定できる。
本発明の検出方法において、糖化量の測定は、各処理工程を別々に行ってもよいが、例えば、以下に示すような組み合わせで同時に行ってもよい処理工程がある。また、前記FAOD、PODおよび基質の添加順序も、特に制限されない。
1 : 溶血処理+プロテアーゼ処理
2 : プロテアーゼ処理+FAOD処理
3 : FAOD処理+POD処理
次に、本発明の検出方法を利用して、真のHbA1c(%)を決定する方法について説明する。
従来の酵素法によれば、β鎖N末端バリンの糖化量に基づいてHbA1c(%)が算出されるため、異常Hbの影響により、前記糖化量自体が正確に測定されていない場合には、それから算出されるHbA1c(%)も誤った値となる。例えば、糖化されているにも関わらず、Hbの異常によって、酵素がその糖化部分と反応できなかったり、測定対象とするアミノ酸残基以外の部位が、変異によって酵素と反応するようになるため、そのような結果が生じていた。そこで、前述のように、異なる2箇所以上のアミノ酸残基における糖化量を測定する本発明の異常Hbの検出方法を利用すれば、糖化Hb試料が異常Hbであるか正常Hbであるかを容易に検出するだけでなく、その糖化量の結果から、異常Hbの影響を受けずに真のHbA1c(%)を決定することができることを、本発明者らが見出したのである。
Hbのサブユニット構成比に異常がある場合
本発明の検出方法、例えば、第2の検出方法を利用した一例を示す。まず、前述のような方法により、コントロールとなる正常Hbについて、α鎖における一箇所のアミノ酸残基(X1;例えば、リジン)の糖化量(x1)と、β鎖における一箇所のアミノ酸残基(X2;例えば、N末端バリン)の糖化量(x2)とを測定し、その比率を求める(x1:x2)。一方、分析対象Hbについて、同様にα鎖およびβ鎖のアミノ酸残基の糖化量(x1':x2')を測定する。そして、コントロールの比率(x1:x2)と分析対象Hbの比率(x1':x2')とを比較することによって、両比率が同じであれば正常Hb、異なる場合には異常Hbであると判断できる。
そして、正常Hbと判断された場合には、測定した糖化量から得られるHbA1c(%)が真のHbA1c(%)と決定できる。なお、糖化量(x1')からHbA1c(%)を求める場合には、標準HbについてのHbA1c(%)とアミノ酸残基(X1)の糖化量(x1)との検量線を用いて、また、糖化量(x2')からHbA1c(%)を求める場合には、HbA1c(%)とアミノ酸残基(X2)の糖化量(x2)との検量線を用いて、算出することができる。なお、この場合、いずれの糖化量から算出したHbA1c(%)も同程度の値となる。
一方、異常と判断された場合は、以下のようにして真の糖化量およびHbA1c(%)が決定できる。正常Hbは、αサブユニット:βサブユニットが2:2の構成比となる4量体(α2β2)である。したがって、前記正常Hbの糖化量の比率(x1:x2)は、α2量体の糖化量とβ2量体の糖化量との比率といえる。そうすると、正常Hbのα鎖(1量体)の糖化量は(x1/2)、β鎖(1量体)の糖化量は(x2/2)となるため、この1量体当たりの糖化量と、分析対象Hbの糖化量比率(x1':x2')から、前記分析対象Hbの構成比を求めることができる。
具体的に説明すると、例えば、正常Hbの比率が(x1:x2)=10:8を示す場合、α1量体とβ1量体の比率は、[5:4]となる。一方、分析対象Hbの比率が(x1':x2')=15:4を示した場合、分析対象Hbの構成比は、α:β=15/5:4/4(すなわち3:1)となる。このような計算により、分析対象Hbが、α3量体、β1量体から形成される異常Hbであることがわかる。そして、このようにαサブユニットが3量体、βサブユニットが1量体であることから、x1'、x2'より、真の糖化量がそれぞれ 2/3*(x1')および 2*(x2')として算出できる。このように真の糖化量が算出できるため、さらに、これらの値から真の糖化率、真のHbA1c(%)を算出できるのである。
Hbのサブユニット構造に異常がある場合
次に、βサブユニットに代えてγサブユニットを有する異常Hb(α2γ2)の真のHbA1c(%)を決定する方法の一例を説明する。
γサブユニットは、βサブユニットに類似した配列構造を示すが、N末端がValではなくGlyに変化している。このため、β鎖のアミノ酸残基(N末端バリン)について糖化量(x1')を測定しても、1つのβ鎖がγ鎖に変化した場合には、1量体に対応する糖化量しか検出されず、2つのβ鎖がともにγ鎖に変化した場合には、β鎖における糖化量は検出されない。一方、α鎖のアミノ酸残基(例えば、リジン)について糖化量を測定した場合、Hbはαサブユニットの2量体を維持するため、正しい糖化量(x2')を示すこととなる。このため、コントロールである正常なHbについての、β鎖N末端バリンの糖化量(x1)と、α鎖リジンの糖化量(x2)との比率(x1:x2)に対して、異なる挙動を示すことから、異常Hbであるとの判断ができる。そして、この正常Hbについての比率と、分析対象Hbの比率とから、α鎖もしくはβ鎖の1量体当たりの糖化量を導くことができるため、その糖化量から真の糖化率、真のHbA1c(%)を算出できるのである。
以上のように、本発明の検出方法によれば、例えば、酵素法によって容易かつ簡便に異常Hbであるか否かを検出できる。また、この検出方法を利用することによって、真のHbA1c(%)を決定することができ、HbA1c(%)の糖尿病の指標としての信頼性を向上することができる。

Claims (2)

  1. 予め、正常ヘモグロビンにおける異なる2箇所以上のアミノ酸残基(X1〜Xn;nは2以上の整数)の糖化量のうち、いずれか1つのアミノ酸残基(X1)の糖化量を基準値(x1)として、前記基準値(x1)と他のアミノ酸残基(X2〜Xn)の糖化量(x2〜xn)との比率(x1:x2〜x1:xn)をそれぞれ求めておき、
    前記異なる2箇所以上のアミノ酸残基と同じアミノ酸残基について、分析対象ヘモグロビンにおける糖化量をそれぞれ測定し、測定したアミノ酸残基(X1)の糖化量(x1')と、測定した他のアミノ酸残基(X2〜Xn)の糖化量(x2'〜xn')から前記比率(x1:x2〜x1:xn)を用いて換算したアミノ酸残基(X1)の換算糖化量(x2''〜xn'')とを比較し、両者が異なれば異常ヘモグロビン、両者が一致すれば正常ヘモグロビンとする異常ヘモグロビンの検出方法。
  2. 予め、正常ヘモグロビンにおける異なる2箇所以上のアミノ酸残基の糖化量から、それらの比率を求めておき、
    前記異なる2箇所以上のアミノ酸残基と同じアミノ酸残基について、分析対象ヘモグロビンにおける糖化量をそれぞれ測定し、測定した糖化量からそれらの比率を求め、この比率と、前記正常ヘモグロビンにおける比率とを比較し、前記両比率が一致すれば正常ヘモグロビン、両比率が相違すれば異常ヘモグロビンとする異常ヘモグロビンの検出方法。
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