JP3910088B2 - 洗濯機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、一般に洗濯機に関するものであり、より特定的には、洗剤を使用しないコースを有する洗濯機に関する。
【0002】
【従来の技術】
洗濯機で洗濯に使用される洗浄用水は、水道水に代表される。水道水は水源からホース等で洗濯機に供給され、使用者の操作で洗濯機内の洗濯槽に給水されて、衣類の洗濯に用いられる。
【0003】
洗濯時には、給水と同時に界面活性剤成分を含む合成洗剤を使用するのが一般的であり、清潔意識の高まりとともに、かなりの消費量となっている。
【0004】
しかし、近年環境意識の高まりとともに、界面活性剤成分の環境への負荷が問題になりつつある。洗濯機の中では、汚れを落とすために有効に使われる界面活性剤であるが、自然環境中に放出されるとその親水性と親油性という二面性を有する性質から、水生生物の生態系や植物に害を与える可能性が出てきた。
【0005】
また、古くから使われてきた石鹸も、その使用量の多さから、水を汚す汚濁物質となり得る可能性を有している。
【0006】
これらの課題に対し、従来から洗剤を減らすことが可能な洗濯機が提案されている。たとえば、特開平10−328485号公報によると、給水経路の途中にイオン除去手段を設けることで、水道水中の硬度成分(カルシウムおよびマグネシウムなど)を取除く洗濯機が提案されている。
【0007】
界面活性剤を含む洗剤は上記硬度成分である二価の陽イオンと反応して、金属石鹸を生じ、そのため洗浄に寄与できる界面活性剤が減少するので洗浄力が低下する。
【0008】
イオン交換樹脂を通した水を洗濯に使用することで、今まで金属イオンとなっていた界面活性剤分を有効に洗濯に利用することができ、その分、洗剤量を減らすことが可能となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開平10−328485号公報は、使用洗剤量を減らしても、従来と同等な洗浄力が得られる洗濯機を提案したものである。
【0010】
しかしながら、あくまで洗剤使用が前提であり、その洗剤を使わないことは全く考えられていない。
【0011】
また、特開平7−185187号公報によると、電気分解した水道水のアルカリ水を洗濯時に使用することで、洗浄能力の向上を図るものであるが、あくまで洗剤の節約に寄与できるものである。
【0012】
この発明は上記のような問題点を解決するために、界面活性剤を使用しないで、高い洗浄力が得られるように改良された洗濯機を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段として、環境負荷になり得る可能性のある界面活性剤を使用しない洗濯機が望まれている。そのためには、給水される水を改質することで、洗浄力を得られるようにすることが必須である。
【0014】
そこで、この発明にかかる洗濯機では、洗濯を行なうための洗濯槽と、陽イオン交換樹脂を収容してこの洗濯槽に給水する給水経路中に設けられ、給水された水道水を軟水化するためのイオン交換手段と、上記イオン交換手段を再生する再生手段と、上記イオン交換手段を通水させた水から電気分解によってアルカリ水と酸性水を生成する電解手段を有し、再生手段は、食塩を収容する容器と、その容器に収容された食塩のうち所定量の食塩を給水路に繰出す繰出し機構とを備え、イオン交換手段によって軟水化された水は、再生手段の繰出し機構によって食塩が添加された後に電解手段によって電気分解されることを特徴とした洗濯機を提案する。
【0015】
この構成によれば、イオン交換樹脂により軟水化した水を電気分解することで、そのアルカリ水を使用した洗濯は、タンパク質汚れに効果が得られることとなる。
【0016】
特に、給水された水道水は上記イオン交換樹脂で軟水化され、上記再生手段により食塩を添加された後、電解手段により電気分解される構成とすることで、電解直前に食塩が添加された水は電解質リッチになり、高アルカリ水を生成することが可能となる。高アルカリ条件は、頑固な皮脂汚れにも効果を発揮する。
【0017】
この発明の好ましい実施態様によれば、イオン交換樹脂の再生手段は、繰出し機構により再生剤としての食塩の添加量を調整できるようにされていることで、再生剤を無駄なく使用することが可能となる。
【0018】
この発明のさらに好ましい実施態様によれば、供給水量と電流を制御することで、高アルカリ水を生成することが可能となる。
【0019】
この発明のさらに好ましい実施態様によれば、給水路中にあるイオン交換樹脂として、ナトリウム置換型の樹脂を使用したことで、ナトリウムイオンの多いアルカリ水を生成することが可能となる。ナトリウムイオンリッチ条件下で電気分解を行なうことで、頑固汚れに対応可能となる。
【0020】
この発明のさらに好ましい実施態様によれば、イオン交換樹脂の再生手段は、再生時には洗濯時とは逆方向に水を流せる構成とした。このことで、コンパクトな設計が可能となっている。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図を用いて説明する。
【0022】
図1は、本発明における給水時の運転が可能な洗濯機の構成を概略的に示す図である。
【0023】
図1を参照して、洗濯機本体を構成する外槽1の内部には、水槽2が、その周囲に配された4本の支持機構50によって吊り下げられた状態で設けられている。水槽2の内部には、洗濯兼脱水槽3があり、水槽2の底部より、さらに下方となる外槽1内には、機構部5が設けられている。機構部5はモータ6を有し、モータ6の駆動を洗濯兼脱水槽3に伝達するように構成されている。
【0024】
水槽2の内部には、洗濯兼脱水槽3が回転自在に配設されている。洗濯兼脱水槽3は底面にはパルセータ4なる攪拌部が設けられており、洗濯兼脱水槽3とクラッチ機構で連動したり、独立したりして回転を行なう構成となっている。洗濯兼脱水槽3は壁面に小孔を持たない、いわゆる孔なし槽としてある。槽3はテーパ状に形成されており、脱水時の排水は上方にある小孔から水槽2へ行なうものである。
【0025】
外槽1の上端の開口部の周囲に上面板部8が装着され、操作パネル(図示せず)が設けられ、この操作パネルによって洗濯機上部の外装を施している。また、上面板部8の中央部には洗濯物投入口8aが形成されている。また、外槽1内には、洗濯兼脱水槽3内の水量を検知し得る水位センサ(図示せず)ならびに投入負荷量が検知可能な制御部32が設けられている。
【0026】
今、運転を開始するために、洗濯兼脱水槽3に洗濯物40を投入して、モータ6を駆動させると、モータ6の回転駆動は機構部5を介して、洗濯兼脱水槽3に伝達され、洗濯兼脱水槽3内の洗濯物40が攪拌される。
【0027】
初期の攪拌時に、制御部32に予め設定されたプログラムに従い、洗濯兼脱水槽3内の負荷量が判別され、その負荷量に対して水位が決定される。すると、洗濯機に接続された給水口30から給水が始まり、洗濯が開始する。モータ6は高速で連続回転を行なうことで脱水運転も可能である。
【0028】
上記のように構成され動作する洗濯機において、本実施の形態の洗濯機は、給水路としてのイオン交換手段14、イオン交換樹脂再生手段15、および電解手段16、流量調節弁17を備えている。
【0029】
図2は、洗濯機が有するイオン交換手段14と再生手段15と電解手段16を含む給水経路を示している。この図に示すように、給水部は、水道栓等に接続される流量調節弁17aと、容器で構成されるイオン交換手段14と、容器で構成される再生手段15と、貯留槽23を含む電解手段16とを有している。電解手段16は、貯留槽23と、電解槽24と、隔膜25と電極26を有する。電解手段16は、吐出口31aおよび31bに接続される。吐出口31aには流量調節弁17bが取付けられており、吐出口31bには流量調節弁17cが取付けられている。アルカリ水側の吐出口は、洗濯兼脱水槽3内に給水する流路に続いている。
【0030】
イオン交換手段14は円筒容器である。円筒容器は下部に入水口22a、上部に吐出口22c、底面に塩水排出口22bが設けられている。容器中には、メッシュ板28で仕切られた空間に、陽イオン交換樹脂29が充填されている。ここでは、ナトリウム置換型のイオン交換樹脂を使用した。
【0031】
流量調節弁17aは通常イオン交換手段14側に切換わっており、給水電磁弁の開動作により、水道水がイオン交換手段14に送水されると、水は入水口22aを通り、イオン交換手段14の下方の空間に充填されることとなる。下方の空間に十分な量の水が送水されると、続いて仕切りのメッシュ板28を通過し、イオン交換樹脂29を通水することとなる。イオン交換樹脂29を通り軟水化された水は、吐出口22cを通り、続いて電解槽24手前の貯留槽23まで水圧により送られる。
【0032】
再生手段15は蓋を有した状態で洗濯外槽1の上部へ配設されている。再生手段としては市販の食塩41を使用するものである。再生手段15の内部には食塩41を繰出すための送り出し機構部15aとして螺旋状の治具が回転可能なように配設されており、容器はホッパー形状となっている。
【0033】
必要に応じ制御部32の信号により、送出し機構部15aを動作させ、再生手段容器下方の空間へ、食塩41を繰出すものである。食塩41を繰出すタイミングとしては、貯留槽23に軟水が一定量貯留される毎に動作させる。この場合、貯留槽23に図示しない水位センサーにより貯留された軟水の量を制御部32が検知するのが好ましい。
【0034】
また、食塩41の繰出し時には、制御部32によって流量調節弁17aが再生手段15側に切換わり、食塩添加量に見合った水量を送水する。食塩41の繰出しは、繰り出し機構15aにより、貯留槽23の容積から1回転あたり規定の食塩41が送り出せるようにするのが好ましい。これにより繰り出し機構15aの1回の動作が終了した時点で、食塩添加量に見合った水量が送水された後に、流量調節弁17aがイオン交換手段14側に切り換わる動作を交互に繰り返して、再生手段15から、ある一定の濃度を持った食塩水が貯留槽23に送水される。
【0035】
また、再生手段15からある一定の濃度を持った食塩水が、流量調節弁17dの制御により、イオン交換樹脂14側に切り換わり、後述するイオン交換樹脂14の陽イオン交換樹脂29の再生のために送水される。
【0036】
電解手段16は、上方に貯留槽23を有している。貯留槽23には、流量調節弁17dによりイオン交換樹脂を通水した水、あるいは再生手段15で生成された食塩水が流入する流入口22eが設けられている。軟水化された水道水は徐々に貯留され、貯留される一定量毎に上述した再生手段15から必要量の食塩水が添加される。
【0037】
ある一定量以上の水量(例えば満水の水量)になると自重により、下方のばねが下がり、貯留槽23の下方から電解槽24へ送水可能となる。この場合、貯留槽23の貯留した軟水を電解槽24へ全量を送水するとともに、その間流量調節弁17aを制御して給水を止めるとともに、貯留槽23が空になった時点で、流量調節弁17aを制御して給水を開始するのが好ましい。電解槽24には、2枚の電極板26,26が配設されており、それぞれに通電可能な状態になっている。電極板26,26の間には隔膜25が設けられている。貯留槽23から送られた水は電解槽で電気分解され、陰極側ではアルカリ水が、陽極側では酸性水が生成される。
【0038】
このとき流量と電流値を制御することで、効果的なpHを持つアルカリ水が生成され得る。生成したアルカリ水は、下方の吐出口31aから洗濯兼脱水槽3へ送水される。送水量は吐出口31aの途中にある流量調節弁17bにより調節されている。また、酸性水は下方の吐出口31bから排出される。このとき生成した酸性水は廃棄する。しかし、別にタンクを設け、一旦このタンクに酸性水を貯める。この貯水した酸性水を濯ぎ水に利用することも可能である。その場合、酸性水により除菌効果も得られることとなる。
【0039】
なお、洗濯兼脱水槽3への給水が完了した時点で、制御部32により再生手段15の繰り出し機構15aが動作し、食塩41を一定量送り出すとともに、流量調節弁17aを再生手段15側に切り換えて、流量調節手段17dをイオン交換手段14に切り換えることで、イオン交換手段14に一定量の食塩水の給水を行なう。
【0040】
上述した構成により、本発明の洗濯機の動作を説明する。図1と図2を参照して、使用者が洗濯物を洗濯兼脱水槽3に入れ、電源スイッチを入れ、スタートボタンを押す。
【0041】
洗濯機はパルセータ4の回転により、布負荷量を検知し、その量に見合った水量を水位センサの指示値まで給水を開始する。布量を検知後、内蔵されたマイコンにより、給水電磁弁(図示せず)を開く。水道水は給水栓から、給水電磁弁を通過して、イオン交換手段14側へ切換えられた流量調節弁17aを通り、入水口22aから円筒容器内に流入する。流入した水道水は、その圧力で円筒容器内を上昇し、充填されている陽イオン交換樹脂29を通過して、吐出口22cから流れ出す。軟水化処理を行なっている途中で、流量調節弁17aを再生手段15側へ切換え、食塩水を貯留槽23へ送水しておく。貯留槽23内では、ナトリウムリッチな軟水が貯留されることになる。貯留された軟水は下方の電解槽24へ送水され、電解槽24内では電極26、26に電圧印加することで、強アルカリ水と酸性水が生成する。それぞれの水は電解手段16の下方に設けられた吐出口31bおよび31aから、それぞれ酸性水とアルカリ水が吐出する。アルカリ側からの水は、そのまま洗濯兼脱水槽に給水される。酸性水は、洗濯兼脱水槽外に廃棄され、そのまま排水口から排水される。水位センサにより、必要な洗濯用水が洗濯兼脱水槽に給水されたことを知ると、再生手段15の繰り出し機構部15aが食塩を繰り出し、流量調節弁17aは再生手段15側に切換わり、再生手段15で再び食塩水を生成する。
【0042】
以上の動作により、軟水を生成する制御と、食塩水を生成する制御が行なえるので必要な洗濯用水が供給できるとともに、イオン交換樹脂14の陽イオン交換樹脂29の再生を速やかに行ない、軟水生成の準備が速やかに行なえる。
【0043】
この食塩水は、流量調節弁17dの切換により、イオン交換手段14へ送水され、陽イオン交換樹脂29の再生を行なう構成になっている。陽イオン交換樹脂29を通過した食塩水は排出口22bより排出される構成となっている。その後、マイコンは給水電磁弁を閉じ、給水を停止させる。そして、洗濯兼脱水槽3の底部に設けられたたパルセータ4を正逆反転させて洗濯を開始する。洗濯兼脱水槽3に給水された水は洗剤を含んでいないが、洗剤と同等の洗浄力が得られる。表1に、本発明を利用した洗濯試験結果を示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1は、本発明により生成した水を使い、部分洗いに使用して得た結果を示したものである。部分洗いは、超音波染み抜き器を用いた。JIS湿式人工汚染布の汚れ落ち比較を行なった。洗浄時間は30秒〜60秒で、表1はそれぞれの洗浄率を示している。
【0046】
ここでいう洗浄率とは、JISに準拠したもので汚染布表面の反射率から、下記の算出式によって得られる洗浄力を示す値である。
【0047】
洗浄率(%)=100×(原布反射率−洗浄後反射率)/(原布反射率−洗浄前反射率)
結果について説明すると、洗剤原液を供給した場合には及ばないが、通常洗濯に使用する濃度の洗浄液に比較すると、5%程(54.5と59.1%)高い値を示していた。また単に水道水を電気分解した水に比べてもかなり有意な差を確認できた。そこで本発明による生成水を使用して、機械力を有する洗濯を行なうことで、従来の洗剤と同等以上の洗浄力が期待できることがわかった。
【0048】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したとおり、この発明によれば、イオン交換樹脂により軟水化した水に食塩添加を行ない、さらにこれを電気分解して得られたアルカリ水を洗濯に使用することで、洗剤を使用しないで、効果的な洗浄力が得られる洗濯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る洗濯機の概略図である。
【図2】 実施の形態に係る洗濯機の給水路を示す概略図である。
【符号の説明】
2 水槽、14 イオン交換手段、15 再生手段、16 電解手段。
Claims (5)
- 洗濯を行なう洗濯槽と、
陽イオン交換樹脂を収容して前記洗濯槽に給水する給水経路中に設けられ、給水された水道水を軟水化するためのイオン交換手段と、
前記イオン交換手段を再生する再生手段と、
前記イオン交換手段を通水させた水から電気分解によってアルカリ水と酸性水を生成する電解手段と、を有し、
前記再生手段は、
食塩を収容する容器と、
前記容器に収容された前記食塩のうち所定量の食塩を前記給水路に繰出す繰出し機構と
を備え、
前記イオン交換手段によって軟水化された水は、前記再生手段の前記繰出し機構によって前記食塩が添加された後に前記電解手段によって電気分解される、洗濯機。 - 前記イオン交換樹脂の前記再生手段は、前記繰出し機構により再生剤としての前記食塩の添加量を調整できるようにされている、請求項1に記載の洗濯機。
- 高アルカリ水を生成するために、供給水量と電流を制御できるようにした、請求項1または2に記載の洗濯機。
- 前記イオン交換樹脂はナトリウム置換型の樹脂を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の洗濯機。
- 前記イオン交換樹脂の再生時には、通水路を水が逆流するようにされている、請求項1〜4のいずれかに記載の洗濯機。
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