JP3578004B2 - 洗濯機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗濯機に係り、特に、洗濯に用いる水から硬度成分を除去する手段およびこれを搭載した洗濯機に関する。
【0002】
【従来の技術】
洗濯機で洗濯に使用される洗濯用水は、水道水等に代表される水源からホース等で洗濯機に供給され、使用者の操作で洗濯機内の洗濯槽に給水されて、衣類の洗濯に用いられている。
【0003】
しかし、例えば水道水中には雑菌の殺菌を目的とした次亜塩素酸イオン等の陰イオン、水道源水に含まれる硬度成分としてのカルシウム、マグネシウムあるいは水道源水に含まれるあるいは水道水供給配管系統から溶け出す銅、鉄、クロム等の陽イオンが含まれており、これら金属イオンは被洗濯物、使用洗剤の洗浄力に種々の悪影響を与える。
【0004】
洗剤の洗浄力に大きな影響を及ぼすのは、硬度成分としてのカルシウム、マグネシウムイオンという2価の陽イオンである。これらは洗剤中の界面活性剤と反応して不溶性の金属せっけんを生成し、洗浄に寄与する界面活性剤量を減少させ洗浄力を低下させる。また先の金属せっけんは不溶性であり、被洗濯物に残留して特に黒色衣類では白い斑点となって見える。さらに洗濯槽の外壁等に付着堆積した場合には、そこにカビ等が繁殖する場合もある。
【0005】
従来、洗剤の中には前述の硬度成分の悪影響を防止するためリン酸塩が混入されていた。しかし、琵琶湖汚染問題として知られるように、リン酸塩が湖沼の汚染に及ぼす影響が取り上げられた。このため、従来洗剤に含まれているビルダーとして用いられてきたリン酸塩に代わる代替ビルダーの研究が進み、この中でリン酸塩代替ビルダーとして合成ゼオライトが注目され多くの市販洗剤に用いられている。洗濯用水にカルシウムイオン、マグネシウムイオンが含まれていた場合、これに人工ゼオライト混入洗剤を投入するとゼオライトは確かに洗濯用水から吸着によりこれらイオンを除去するが、吸着している間にもこれらイオンは洗剤の界面活性剤を金属せっけん化する。このためゼオライト混入の効果は薄められることになる。本来ならば洗濯用水からこれらイオンを除去した後、この用水に洗剤を溶かして洗濯に用いる方が好ましい。さらにビルダーとしてこの人工ゼオライトを洗剤に多量に混入すると洗濯後の衣類にゼオライト粒子が付着して仕上がりを悪化させる問題もある。
【0006】
硬度成分は、すすぎに対しても影響を及ぼす。すすぎは、洗濯で衣類から取り除かれた汚れ成分を洗濯槽から排除し、再び衣類へ付着しないようにすることと、衣類に吸着した洗剤を取り除くために行う。衣類に吸着した洗剤中の界面活性剤は、すすぎ水で希釈され、衣類から離脱する。この時、すすぎ水が硬度成分を多く含む硬水では、硬度成分と界面活性剤が結合し金属石けんを作る。界面活性剤が衣類に吸着した状態で金属石けん化すると、これを取り除くことは困難となる。従って、すすぎ後も衣類に金属石けんが付着した状態となり、衣類の肌触りが悪化(ゴワゴワ感)し、着心地も悪くなる。
【0007】
これら金属イオンの弊害を除去する方法として、特開平10−328485号公報に記載される洗濯機がある。これは、ナトリウム型強酸性陽イオン交換樹脂を充填した着脱可能な円筒容器を洗濯機のトップカバー内の給水経路途中に設け、水道水をイオン交換樹脂に通すことで、洗浄に悪影響を及ぼすカルシウムイオン、ナトリウムイオンなどの硬度成分を除去し軟水化したした後に、洗剤の投入されている洗濯槽に給水して洗濯を行うものである。イオン交換樹脂のイオン除去能力は有限であり、ある水量を処理した時点でイオン除去能力を失うため、再生という操作が必要である。イオン交換樹脂の再生処理は、使用者が円筒容器を洗濯機から取り外し、予め作っておいた塩水に浸け揺動することにより行っている。
【0008】
また、イオン交換樹脂の再生を洗濯毎に自動的に行う洗濯機も知られている。これは、イオン交換樹脂を充填した容器の上部に再生用の塩を収容する容器と、この塩へ給水するための給水弁を設け、洗濯工程の最初か最終すすぎの給水終了後に塩への給水弁を動作し、塩水を自動的に生成し、重力でイオン交換樹脂へ塩水を流しイオン交換樹脂を再生する方法である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術の洗濯機では、硬度成分除去のために、イオン交換樹脂を使用している。イオン交換樹脂のイオン交換能力は、上述のように有限であり、ある水量を処理した時点でイオン交換能力を失うため、再生を行いイオン交換能力を回復している。イオン交換樹脂を内蔵した円筒容器を洗濯機に搭載するためには、小型化する(イオン交換樹脂量を極力少なくする)必要があるため、イオン交換樹脂の処理能力を洗濯1槽分にしている。このため、前者の従来技術の洗濯機では、洗濯毎にイオン交換樹脂が入った円筒容器を取り外して手動で再生を行っている。従って、すすぎを軟水で行うためには、洗濯工程の途中で円筒容器を取り外す必要があり、現実的ではない。
【0010】
また、後者の洗濯機では、再生は自動的に行われるが、再生は洗濯工程の最初か最後に行うようになっており、すすぎ水の軟水化に関しては考慮されていない。更に、再生排水を外槽へ流す構造となっており、すすぎ水を軟水化したとしても高硬度の再生排水が流入してしまうという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、洗濯水、すすぎ水ともに軟水で行うことができ、かつイオン除去能力の再生を自動的に行うことができるイオン除去手段を備えた洗濯機を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明における洗濯機の特徴とするところは、洗い、すすぎ工程毎に自動的にイオン交換樹脂の再生を行い、洗い、すすぎを軟水で行うことにある。
【0013】
すなわち、本発明は、洗濯を行う洗濯槽と、洗濯槽に給水する給水手段と、洗濯槽内の水を排水する排水手段と、給水手段の給水経路の途中に設けられ給水される水に含まれるイオンを除去するための、イオン交換樹脂を充填した樹脂容器とイオン交換樹脂のイオン除去能力を再生させる再生剤を収容する再生剤容器とからなるイオン除去手段とを備え、洗い工程で給水される水に含まれるイオンを除去する洗濯機において、イオン交換樹脂を洗い工程における洗濯槽への給水終了後に再生剤で再生処理し、再生終了後のイオン交換樹脂を通してすすぎ水の給水を行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、洗濯槽に給水する第1の給水手段と、給水手段の給水経路の途中にイオン除去手段と、洗い、すすぎ及び脱水の各工程の制御を行う制御手段とを備え、洗い工程で給水される水に含まれるイオンを除去する洗濯機において、イオン除去手段は、イオン交換樹脂を充填した樹脂容器と、底面及び側面がメッシュフィルタとで作られ、イオン交換樹脂のイオン除去能力を再生させる再生剤を収容する再生剤容器と、樹脂容器の上部に配置されかつ再生剤容器を内部に配置し、第2の給水手段から洗い、すすぎ毎に給水される水に再生剤容器から略規定量の再生剤が溶解して生成された略規定濃度の再生水を貯蔵する再生水容器と、再生水容器底部に樹脂容器と連通して設けられ貯水した再生水を樹脂容器内に流下させるサイホンと、樹脂容器底部と排水手段とを接続する再生水排水路を有し、制御手段は、まず洗い工程及びすすぎ工程の給水後に第2の給水手段を動作させ再生水容器に一回目の給水を行い、次に洗い工程及びすすぎ工程終了後排水手段を動作させて洗濯槽内の水の排水を開始すると同時に第2の給水手段を動作させて再生水容器内に二回目の給水を行いイオン交換樹脂を再生し、その後第1の給水手段を動作させ樹脂容器内が水で満たされる量を給水し再生水排水路から排水する工程を複数回行い、その後第1の給水手段を動作させてすすぎ工程の給水を行うことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、洗濯を行う洗濯槽と、洗濯槽に給水する第1の給水手段と、洗濯槽内の水を排水する排水手段と、給水手段の給水経路の途中に設けられ給水される水に含まれるイオンを除去するイオン除去手段と、洗い、すすぎ及び脱水の各工程の制御を行う制御手段とを備え、洗い工程で給水される水に含まれるイオンを除去する洗濯機において、イオン除去手段は、イオン交換樹脂を充填した樹脂容器と、底面及び側面がメッシュフィルタで作られイオン交換樹脂のイオン除去能力を再生させる再生剤を収容する再生剤容器と、樹脂容器の上部に配置されかつ再生剤容器を内部に配置し、第2の給水手段から洗い、すすぎ毎に給水される水に再生剤容器から略規定量の再生剤が溶解して生成された略規定濃度の再生水を貯蔵する再生水容器と、再生水容器底部に樹脂容器と連通して設けられ貯水した再生水を樹脂容器内に流下させるサイホンと、樹脂容器底部と排水手段とを接続する再生水排水路と、再生水排水路の開閉を行う再生水排出弁とを有し、制御手段は、まず洗い工程及びすすぎ工程の給水後に第2の給水手段を動作させ再生水容器に一回目の給水を行い、次に第2の給水手段による一回目の給水終了後規定時間が経過した後で再生水排出弁を開くと共に第2の給水手段を動作させて再生水容器内に二回目の給水を行いイオン交換樹脂を再生し、その後第1の給水手段を動作させ樹脂容器内が水で満たされる量を給水し再生水排水路から排水する工程を複数回行い、その後前記第1の給水手段を動作させてすすぎ工程の給水を行うことを特徴とする。
【0016】
また、イオン交換樹脂を再生した後の再生水は、洗濯槽内の水及び洗濯槽内の洗濯物に触れないよう制御される。従って、硬度成分を多く含む再生後の再生水と洗濯槽内の水あるいは洗濯物とが触れ、金属石鹸を生成することがない。
【0017】
好ましくは、洗い工程の給水量に応じて洗い工程の給水後にイオン交換樹脂の再生を行うか否かを決定する。すなわち、給水量が少ない場合は給水後の再生を行わない。これにより、再生剤を無用に消費することがなく、再生剤の補充間隔を延ばすことができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例に係る洗濯機を、図面を用いて説明する。
【0019】
図1は本発明の一実施例に係る全自動洗濯機の外観図であり、図2は、図1AA線に沿う縦断面図である。
【0020】
全自動洗濯機は、鋼鈑製の外枠1内に吊り棒2およびコイルバネや弾性ゴムからなる防振装置3によって合成樹脂製の外槽4を吊架する構成となっている。外槽4は4組の吊り棒2および防振装置3で外枠1の上部4隅から吊り下げ支持されている。洗濯する水を溜める外槽4内には、ステンレス製の洗濯兼脱水槽5(以下、洗濯槽と呼ぶ)を回転自在に設ける。洗濯槽5には多数の脱水孔5aを設け、中央底部には回転翼6を回転可能に設ける。洗いおよびすすぎ工程時には洗濯槽5を静止させ、回転翼6を時計方向(正)および反時計方向(逆)に回転させる。また脱水工程時には洗濯槽5及び回転翼6を一体にして一方向に回転させる。回転翼6および洗濯槽5の回転は駆動装置により行われる。
【0021】
駆動装置は電動機7とこの電動機7の回転を、回転翼6あるいは洗濯槽5に伝達するためのプーリ8aやベルト8bからなる伝達手段8と、洗いおよびすすぎ工程時に回転翼6のみを回転させたり、あるいは脱水工程時に洗濯槽5を回転させたりするクラッチ装置9とその切り替えを行うクラッチソレノイド9aからなる。これら駆動装置は外槽4の底面に鋼鈑製の支持板10を用いて固定される。
【0022】
また外槽4には外槽内の水圧を水位センサ11に伝達する水位センサチューブ12と外槽4内の洗濯用水の排水を行う排水装置13が設けてある。排水装置13は外槽4底面の排水口14の直後に設けられ、排水装置13には排水ホース15が接続されている。洗濯用水は排水装置13を閉じることで外槽4内に溜められ、排水装置13を開くことで排水ホース15を通り洗濯機外に排出される。
【0023】
外枠1の上部にはトップカバー17が設けてある。トップカバー17は、洗濯物を投入する投入口17aと給水電磁弁水道栓口26、イオン除去手段29、風呂水給水ポンプ45等の給水経路用部品を収納する後部収納箱17bと、マイコン等の電気部品を収納する前部操作箱17cと、投入口17aを覆うように取り付けた開閉可能な合成樹脂製の蓋18とで構成されている。
【0024】
前部操作箱17cの上面には図3に示す操作パネル19aが取りつけてあり、その下には制御部であるマイコン等を内蔵した制御回路19bが設けてある。また前部操作箱17c内には、外槽4内の水圧を検出することにより、規定水位まで水が溜まったかを判定する水位センサ11が設けてある。操作パネル19aには、電源スイッチ20、各種表示器21、各種操作ボタン22、ブザー23等が配置されており、使用者が操作ボタン22で洗濯機を操作し、またその動作状態を表示器21、ブザー23で確認できるようになっている。またイオン除去手段29の再生に使用する塩の補充を催告表示する発光ダイオードからなる塩補充表示24と、塩の補充が完了し、塩補充表示24を消灯させる投入完了ボタン25がある。
【0025】
図4は洗濯用水の給水経路用部品を納めた後部収納箱17bの上蓋をはずした時の背面側部分の平面図(図1中にBB線で示す断面)である(前面側を省略している)。後部収納箱17bには水道栓等からのホースが接続される水道栓口26、これに続いて給水電磁弁27及び塩給水電磁弁28、イオン除去手段29、風呂水を吸水し洗濯槽へ給水する風呂水給水ポンプ45、洗濯槽5内に洗濯水を流下させる傾斜流路46等が収納されている。傾斜流路46の上流側には流路46に開口する部屋A47、部屋B48が設けられる。
【0026】
図5、図6にイオン除去手段29の詳細を示す。図5はイオン除去手段29の全体斜視図、図6はその縦断面図である。イオン除去手段29は円筒容器30とその上部に設けた塩水容器31、塩水容器内に設けた塩容器32とで構成される。円筒容器30には、樹脂ケース33が円筒容器30に対し上部空間39a、下部空間39bを有するように設けられ、樹脂ケース33は外周部に設けたねじ33bで円筒容器30に固定されている。下部空間39bの高さは、イオン除去手段29の高さを抑えるために、3mm〜5mmとなっている。樹脂ケース33の外周面にはシール部材A34aが設けてあり、円筒容器30と樹脂ケース33との隙間を水が流れるのを防止している。また、樹脂ケース33の上面には上蓋34が設けてあり、樹脂ケース33に接着あるいは溶着で固定されている。
【0027】
樹脂ケース33のほぼ中央と下面はメッシュフィルタ33aが設けられており、上下のメッシュフィルタ33a間で樹脂室33cを形成している。樹脂室33cにはナトリウム型強酸性陽イオン交換樹脂43(以下、イオン交換樹脂と呼ぶ)が充填されている。
【0028】
イオン交換樹脂について簡単に説明する。ナトリウム型強酸性陽イオン交換樹脂43は、周知のように架橋した3次元の高分子基体に、スルホン酸基のようなイオン交換基を化学結合で結合させた合成樹脂である。カルシウム、マグネシウム等の2価の陽イオンを含んだ水道水が陽イオン交換樹脂間を流れると、陽イオン交換樹脂のイオン交換基であるスルホン酸基と水道水中の陽イオンがイオン交換され、結果水道水中の陽イオンが除去される。
【0029】
化1、化2にナトリウム型強酸性イオン交換樹脂のイオン交換反応式を示す。
【0030】
【化1】
【0031】
【化2】
【0032】
ナトリウム型陽イオン交換樹脂は−SO3の陰イオンを固定イオン、Naの陽イオンを対イオンとする交換樹脂で、イオンの選択性を利用して水中に含まれるカルシウム、マグネシウム等の多価陽イオンを除去するものである。イオン交換樹脂を通過する水中のカルシウム、マグネシウムイオンは化1、化2の左辺から右辺への反応で、イオン交換樹脂のナトリウムイオンとイオン交換されて除去される。イオン交換樹脂中の全てのナトリウムイオンがカルシウム、マグネシウムイオンと交換すると、イオン交換樹脂はイオン除去能力を失い、再生を行う必要がある。ナトリウム型陽イオン交換樹脂の場合、再生には塩水を使用する。カルシウム、マグネシウムイオンを吸着したイオン交換樹脂樹脂に高濃度塩水を流すと、化1、化2の右辺から左辺への反応で樹脂のカルシウム、マグネシウムイオンがナトリウムイオンとイオン交換されて脱着し、イオン交換樹脂が再生される。再生に使用する塩水の濃度は、約10%程度が最も再生効率が良いことが知られている。
【0033】
メッシュフィルタ33aは、イオン交換樹脂43の樹脂室33cからの流出や、樹脂室33cへの異物の侵入を防いでいる。イオン交換樹脂43は、一般に広く用いられているビーズ状のものの他、繊維状にしたものであってもよい。本実施例ではイオン交換樹脂43の粒径は0.2mm、樹脂量は100mLである。この粒径、樹脂量のイオン交換樹脂を使用することで、洗濯容量8kgの洗濯機において高水位(68L)まで給水した場合に、硬度100ppm(炭酸カルシウム換算)の水道水を硬度35ppmまで下げることができる。
【0034】
本実施例では、樹脂ケース33の内径dは95mmになっており、イオン交換樹脂層の厚さLは約14mmである。このようにイオン交換樹脂層を扁平化することで、イオン交換樹脂層の流路面積が大きくなり、流路長さが短くなるため、イオン交換樹脂部を通過する流速が小さくなり、イオン交換樹脂部での圧力損失が小さくなる。このことで、最も低い水道水圧0.029MPaの場合でも毎分5L以上の給水流量を確保できる。
【0035】
円筒容器30の下部空間39bには給水電磁弁27に通じるスリット状の入水口30aが、下部空間39b底部には再生水排出口30cが設けられている。再生水排出口30cには排水チューブ41が取り付けられており、排水チューブ41の他端は外槽4底部の排水口14に接続されている。また、上部空間39aと樹脂ケース33の外周面に設けられた円周溝34bとは樹脂ケース33に設けた複数個の孔34cで連通しており、円周溝34bと通じるように吐出口30bが円筒容器30に設けられている。吐出口30bは部屋A47に接続されている。
【0036】
上部空間39aの上方には逆止弁35が設けられている。逆止弁35は、ボール35aと弁座35bとで構成されている。ボール35aは密度が1以下の材質、例えばポリプロピレン製である。これは、水道水圧が低く流量が非常に少ない(水の流速が低い)場合でも上部空間39aに水があるとボール35aは浮き上がり、弁座35bに密着するため、給水中に水が上部へ侵入するのを確実に防ぐことができるからである。弁座35bは上蓋34の下面に設けた凹状の窪み部34dに装着されている。弁座35bはゴム製であり、中心部に設けた孔は、後述するサイホン37の孔37aと通じている。また、窪み部34dはボール35aが逆止弁から脱落するのを防ぐ役目も有している。
【0037】
水は、入水口30aから下部空間39bに入り、下部空間39bを満たした後イオン交換樹脂43層内を均一に上昇し、上部空間39aへ出て上部空間39aを満たして孔34c、円周溝34bを通り、吐出口30bから流出する。この時、逆止弁35はボール35aが浮上し孔37aを塞いでいる。
【0038】
円筒容器30の上部には、角形の塩水容器31が設けられており、塩水容器31の上部にはふた40がある。塩水容器31は、上面が開口しており、底面中央部にはサイホン37が設けられ、底部に設けた突起部31cは上蓋34の上面の凹状窪み34eに勘合している。勘合部にはシール部材B31dが設けられている。サイホンの中心部には孔37aがあり、逆止弁35を介し円筒容器30の上部空間39aに連通している。また、塩水容器31の底面は、サイホン37部が最も低いすり鉢状になっている。これは、塩水容器内の水がサイホン37に集めるためである。実際には、塩水容器31底面外縁部とサイホン37部との高さの差は2mm程度で十分である。本実施例では、2mmとして説明する。
【0039】
塩水容器31の一側面には、塩給水電磁弁28からの給水管31aが設けてある。塩水容器31の一側面には、オーバフロー流路31bがあり、オーバーフロー流路31bは流路46に開口している。オーバーフロー流路31bは、規定量以上の水が塩水容器31に入ったり、サイホン37の孔37aが目詰まりしたりすることにより塩水容器31から後部収納箱17b内へ水が溢れることを防止するためにある。後部収納箱17bに水が入ると、給水電磁弁27、塩給水電磁弁28や風呂水給水ポンプ45のモータなどの電気部品が水に浸かることによる漏電や感電の発生や、洗濯機外への水の流出の危険性がある。
【0040】
塩水容器31の内部には着脱可能な角形の塩容器32がある。図7、図8に塩容器32の詳細を示す。図7は塩容器の斜め下方から見た鳥瞰図、図8は、図7のA−A線で切断した断面図である。塩容器32は枠32dで形成されており、上面が開口している。底面の枠32d以外の部分にはメッシュフィルタ32cが、側面の枠32d以外の部分にはメッシュフィルタ32gが設けてあり、底面の枠の四隅には下面突起32bが、側面上方の枠には側面突起32fある。下面突起32bと側面突起32fは、塩水容器31に対する塩容器32の位置決めの作用をする。側面突起32fは側面下方の枠にあってもよい。塩容器32の側面と塩水容器31の側面とは隙間36aを、塩容器32の底面と塩水容器31とは隙間36bを有する。隙間36aは2mm〜5mm程度、隙間36bは、3mm〜4mm程度が好ましい。この理由については後で述べる。底面中央部には内部に空間32eを有する円筒状突起32aがある。これは、塩水容器31のサイホン37との干渉を防ぐためである。
【0041】
塩容器32内には、予め使用者により塩42が投入されている。塩容器32は、洗濯機の上面後ろ側にあるが、塩水容器31から取り外しができるため、塩の投入は使用者が作業しやすい場所、姿勢で行えるため、作業中に塩をこぼして飛散させる心配がない。なお、図示していないが、塩容器32は使用者が扱いやすいよう、取手を設けたり持ちやすい形状にすることはもちろんである。使用する塩は、安価な精製塩が不純物(一般に言うカルシウム、マグネシウムなどのミネラル分)が少なく最も適している。塩容器32のメッシュフィルタ32c、32gは、塩粒の流出を防止すると共に、塩投入作業中に乾燥した塩が外部にこぼれることを防止する。従って、メッシュフィルタ32c、32gの網目の大きさは、精製塩の粒径が約0.2mm〜0.8mmであるから、網目の大きさを0.1mm〜0.15mmにすればよい。
【0042】
塩の投入量は複数回分の再生に必要な量であり、本実施例では約500gである。これは、後で述べるイオン交換樹脂43の再生処理1回当たりに必要な塩量15gの33回分に相当し、1日1回洗濯を行うとすると使用者は1ヶ月に一度塩42を投入すればよいことになる。塩容器32の容積は、乾燥した塩500g分を収容できるよう500mL〜550mLである。本実施例では、塩容器32のサイズを幅125mm、奥行き80mm、高さ55mm(容積550mL)として、塩水容器31は幅135mm、奥行き90mm、高さ60mmとして説明する。なお、イオン交換樹脂層を扁平化し円筒容器30の直径を110mm、高さを55mm抑えてあるため、塩500gを収容できる塩容器32及び塩水容器31を円筒容器30上に設けても、イオン除去手段29全体の高さを約110mmに抑えることができ、後部収納箱17b内に納めることができる。
【0043】
水道栓からのホースは水道栓口26に接続される。水道水は給水電磁弁27の開閉により円筒容器30の入水口30aに導かれ、下部空間39bを満たしてからイオン交換樹脂43を充填した樹脂室33c内を上昇しながら通過する。水道水はここで軟水化つまりカルシウムイオン、マグネシウムイオンが除去されて上部空間39aを満たし樹脂ケース33の孔34c、円周溝34bを通り吐出口30bから流出する。そして部屋A47から傾斜流路46に流下して洗濯槽5(外槽4)に給水される。
【0044】
風呂からの水は、風呂水吸水口45aに接続されるホースで汲み出される。まず水道栓口26からの水道水を給水電磁弁27を開きイオン除去手段29を通し、部屋A47に噴出する。部屋A47に噴出した水道水の速度エネルギを利用し、一部を呼び水チューブ45dから呼び水口45bに導き風呂水給水ポンプ45に呼び水する。その後ポンプモータを回転させて風呂水を風呂水吸水口45aから自吸し、吐出口45cから部屋B48に吐出し、傾斜流路46から洗濯槽5に給水する。この時、水道水圧が低いと、イオン除去手段29を通過するときの圧力損失で部屋A47へ噴出する水道水の速度エネルギが非常に小さくなり、呼び水チューブ45dを通して風呂水給水ポンプへ呼び水を供給することが困難になる。
【0045】
しかし、本発明では、イオン交換樹脂層を扁平化することで流路抵抗を低減してあるため、最低水道水圧0.029MPa時に毎分5Lの流量を確保でき、呼び水の供給は十分できる。なお、イオン除去手段29を水道栓口26が設置される後部収納箱17bに設置するのは、呼び水チューブ45dの長さが傾斜流路46を横切るだけの長さでよく、部屋A47に噴出する水道水の速度エネルギで風呂水給水ポンプ45への呼び水を効果的に行えるからである。
【0046】
図9はマイクロコンピュータ50を中心に構成される洗濯機制御部のブロック図である。マイクロコンピュータ50は、操作ボタン入力回路51や水位センサ11とも接続され使用者のボタン操作、洗濯槽内の洗濯用水水位の情報信号を受ける。マイクロコンピュータ50からの出力は、双方向性3端子サイリスタ等で構成される駆動回路52に接続され、前記電動機7や給水電磁弁27、塩給水電磁弁28、排水装置13等に商用電源を供給して、これらの開閉あるいは回転を制御する。また使用者に洗濯機の動作を知らせるため、ブザー23や表示器21などの報知手段にも接続される。電源回路53は商用電源を整流平滑してマイクロコンピュータ50に必要な直流電源を作る。55は点灯して塩補充を表示する発光ダイオードである。発光ダイオード55は前部操作箱17cに装着され、塩容器32への塩補充がが必要な時に点灯して、塩補充表示24で使用者に知らせる。操作ボタン25は、塩の補充が完了したときに使用者が押すボタンで、前部操作箱17cに装着される。操作ボタン25を押すことでマイクロコンピュータ50は、発光ダイオード55を消灯し、塩補充表示24を消す。
【0047】
次に本発明によるイオン除去手段29の動作を説明する。図10に概略の動作フローを示す。まず、通常の動作フロー(塩容器32内に塩が十分ある場合)を説明する。使用者が洗濯物を洗濯槽5に入れ、電源スイッチ19を押す(ステップ101)。この時塩容器32には塩が十分あるため塩補充表示24は消灯している(ステップ102)。そして使用者がスタートボタンを操作すると(ステップ103)、マイクロコンピュータ50は布量センサにより洗濯物の量を測定し、測定結果に応じた水量、洗剤量を表示器21に表示し、使用者に知らせる。使用者は、表示を参考に適量の洗剤を洗濯槽5に投入する。その後、マイクロコンピュータ50は、給水電磁弁27を開とする(ステップ104)。水道水は水道栓26から給水電磁弁27を通過してスリット状の入水口30aから円筒容器30の下部空間39bに流入する。流入した水道水は流れ方向を上向きに変え、樹脂室33c内を上昇し、樹脂室33c内に充填されたナトリウム型強酸性陽イオン交換樹脂43の間を通過して、硬度成分を除去され、上部空間39aを満たしながら、樹脂ケース33の孔34c、円周溝34bを通り、吐出口30bから流れ出し、部屋A47、傾斜路46を通り外槽4(洗濯槽5)に溜まる。
【0048】
イオン交換樹脂43は、消毒のために水道水中に含まれる残留塩素で酸化し、樹脂が膨潤(樹脂の粒径が大きくなる)する。このため、樹脂室33cの容積は新品時のイオン交換樹脂43の量に対して余裕を設ける必要がある。通常の水道水の残留塩素濃度はほぼ1ppm以下であり、この水を洗濯機の耐用年数である7年間分通水(1日2回毎日洗濯)した場合のイオン交換樹脂43の膨潤は約5%である。このことから、イオン交換樹脂の膨潤により樹脂ケース33やメッシュフィルタ33aが破損することを防止するためには、樹脂室33cの容積はイオン交換樹脂量に対し5%以上大きくする必要がある。すなわち、樹脂室33cにはすき間ができることになる。
【0049】
このすき間は、イオン交換樹脂43の硬度除去性能に対しては悪影響を及ぼす。すなわち、樹脂室33c内でイオン交換樹脂43が偏り、樹脂層の厚さが不均一になる可能性がある。極端な片寄りが発生するとイオン交換樹脂層が非常に薄い部分ができ(この部分は流路抵抗が少ない)、ここを水が多く流れ硬度除去性能が低下する。しかし、樹脂室33cの容積をイオン交換樹脂量に対して10%以内に設定すれば、イオン除去能力の低下を非常に少なくすることができる。
【0050】
但し、上記すき間は、イオン交換樹脂43の目詰まり防止に対しては有効に作用する。給水中、水道水はイオン交換樹脂層内を下から上に向かって流れる。この時、上述のように樹脂室33cにすき間があるため、給水中イオン交換樹脂43は樹脂室33cの上部に移動する。給水が停止するとイオン交換樹脂43は樹脂室33cの下部に落下する。このように、給水の開始、停止時にイオン交換樹脂43は樹脂室33c内で撹拌されるため、メッシュフィルタ33aを通過できるような小さいゴミ(配管の鉄錆が大部分)がイオン交換樹脂層内に溜まることがなく、目詰まりが発生することを防止できるという作用がある。
【0051】
下部空間39bへ流入した水道水の一部はイオン交換樹脂43を通らずに、再生水排出口30cに接続された排水チューブ41を通り排水口14から外槽4に流入する。このため、全部がイオン交換樹脂43を通った場合に比べ、外槽4に溜まった水の硬度が上昇する。しかし、再生水排出口30c及び排水チューブ14と外槽4との接続部の内径を2mmとすれば、給水流量毎分15Lの時排水チューブ41を通る流量は約毎分0.9Lとなる。この量は、給水流量の6%程度であり、給水した水の硬度が100ppmの場合で、硬度の上昇は約3ppm程度と影響は少ない。
【0052】
水道水はイオン交換樹脂43を通過する間にイオン交換作用で中に含まれるカルシウム、マグネシウムイオンが除去される。給水中は、上部空間39aは水で満たされ、この圧力で逆止弁35のボール35aが上昇し弁座35bと密着し孔37aを塞いでいる。このため、給水中に水道水が塩水容器31に流入することはない。また、ボール35aの密度は1以下であるため、水道水圧が非常に低く上部空間39aの圧力がほとんど大気圧でもボール35aの浮力でボール35aと弁座35bは密着し、孔37aは塞がれる。給水時以外は上部空間39aに水はないためボール35aは自重で落ち、孔37aは開いた状態となる。
【0053】
以後の動作については図11を用いて説明する。水位センサ11で規定量の洗濯水が洗濯槽5(外槽4)内に給水されてことを知ったマイクロコンピュータ50は、給水電磁弁27を閉じて給水を停止させる(ステップ121)。そして回転翼6を正逆回転させて、洗濯物を撹拌し(ステップ123)洗い工程を開始する。洗濯槽5内に給水された洗濯用水はカルシウム、マグネシウム等の陽イオンを含まない。
【0054】
図12は、硬度と洗浄力の関係を示した図である。硬度が低いほど洗浄力は上昇する。硬度が高いと、水中の硬度成分は、投入された洗剤中の界面活性剤と反応して不溶性の金属せっけんを生成し、洗浄に寄与する界面活性剤量を減少させる。このため、洗浄力が低下する。本発明のように、給水中に硬度成分を除去することで、投入された洗剤の働きを阻害することがなくなり、洗剤は汚れに有効に作用するため洗浄力が高くなる。
【0055】
給水水量が高水位の場合、イオン交換樹脂43の硬度除去能力は、ほぼ飽和しており、以後の給水を軟水化するためには再生が必要である。
【0056】
回転翼6で撹拌を開始したら(ステップ123)、マイクロコンピュータ50は塩給水電磁弁28を短時間開き、塩水容器31内へ第1の注水を行う(ステップ124)。注水量は30mL〜50mLである。注水量は、水道水圧を考慮して塩給水電磁弁28の開時間を制御することで調整する。水道水圧と、給水流量(実際には給水時の水位1から水位2まで溜まる時間T)の関係は予めマイクロコンピュータ50のメモリに記憶されており、洗濯給水時に時間Tを測定することで水道水圧を求め、水道水圧に対応した開時間塩給水電磁弁28を開くことで注水の制御が行える。
【0057】
注水された水44aは塩水容器31の底に溜まり、その水面は塩水容器の底面からh1となる。これは塩水容器31底部にあるサイホン37の排水パイプ37bの高さがh1より高く設定してあるからである。本実施例の塩水容器31及び塩容器32の寸法では、前記注水量でh1は3mm〜8mmとなる。塩水容器31底面と塩容器32底面のメッシュフィルタ32cとの間隔は前述のように3mm〜4mmに設定してあり、水面h1はメッシュフィルタ32cと同じか高いため、メッシュフィルタ32cを通して塩が溶け出し、注水した水の塩分濃度が上昇してゆく。
【0058】
撹拌(ステップ123)は、通常5〜10分程度行う。この間に樹脂ケース33の上部空間39aと下部空間39b内の水は、塩水排出孔30cから排水チューブ41を通り外槽4内に排水され、上部空間39a、下部空間39b、排水チューブ41内の水はなくなり、空気が侵入している。排水は、樹脂ケース33内の水位と外槽4に溜まった洗濯水との水位差により行われる。従って、洗濯水の水位が低いほど樹脂ケース33内の水の排水は短時間で完了するが、その時間は、最低水位の場合で約40秒、最高水位の場合で約60秒程度であり、撹拌中に樹脂ケース33内の水は必ず排出されている。
【0059】
撹拌の終了が近づくと(終了の20秒から30秒前)、マイクロコンピュータ50は給水電磁弁27を短時間開き(ステップ125)、給水を行い樹脂ケース33内を水で満たす(給水量は、0.5Lから1Lで十分である)。この時、排水チューブ41内も水で満たされる。給水電磁弁27を閉じると、樹脂ケース33内の水は排水チューブ41から排水され始める。そして、上部空間39aの水がなくなるとほぼ同時に、排水装置13を開き(ステップ126)外槽4内の洗濯水の排水を開始する。上部空間39aの水がなくなるまでの時間は20秒から30秒である(外槽4内の洗濯水の水位が高いほど時間は長い)。すなわち、上部空間39aの水がなくなるのとほぼ同時に、撹拌が終了し、洗濯水の排水が開始する。
【0060】
一方、排水装置13を開くとほぼ同時に、塩給水電磁弁28を開き、塩水容器31内へ第2の注水を行う(ステップ127)。注水量は、110mL〜120mLである。塩給水電磁弁28を注水量の制御は、前述と同様塩給水電磁弁28の開時間で行う。塩水容器31内にはステップ124の第1の注水による水が既に溜まっている。この水にはステップ123の撹拌中に約10gの塩が溶け、濃度が約15〜20%の塩水となっている。この塩水に、110mL〜120mLの第2の注水を行うと、この水でさらに約5gの塩が溶け、先に生成した塩水と合わせ、合計約15gの塩が溶けた濃度約8%〜10%の塩水ができる。
【0061】
ステップ127の注水で、塩水容器31内の水面はh2まで上昇してゆくが、サイホン37の排水パイプ37bの高さを超えるため、サイホン37が通じ孔37aから流れ出す。なお、塩水容器31塩容器32側面との隙間36aが小さすぎると、水面h2が上昇しすぎオーバフロー流路31bから流れ出てしまう。このため、隙間36aを2mm〜5mm程度にすることが好ましい。孔37aからの塩水は逆止弁35が開いているため、円筒容器30の上部空間39a内に流下し、イオン交換樹脂43の再生(ステップ128)が始まる。塩水容器31内の塩水は、サイホン37の作用でほぼ全て上部空間39aに流下する(残る水量は10mL以下)。この時、塩水容器31底面と塩容器32との隙間36bが狭すぎると、塩水の表面張力による力がサイホン37の水力学的ヘッドによる力に勝り、隙間36bに空気が侵入せず隙間36bに多くの塩水が残留し、全ての塩水を流下させることができない。隙間36bを大きくするとサイホン37で塩水容器31内の水を全て排出可能となる。しかし、隙間36bが大きすぎると洗い工程給水時に注水する30mL〜50mLの水では水面h1が塩容器32底面のメッシュフィルタ32cより低くなり、飽和塩水の生成ができなくなる。従って、隙間36bは水面h1より低く、かつ塩水の排出が確実に行える3mm〜4mmが最適である。
【0062】
上部空間39aに塩水が流下した時、下部空間39bと排水チューブ41内はステップ125で給水した水で満たされている。このため、洗濯槽4内の洗濯水の水面と上部空間39a内の塩水の水面との水位差で、塩水はイオン交換樹脂43層内を容易に通過できる。塩水がイオン交換樹脂43内を流れることで、化1、化2の右辺から左辺への反応が起き、給水時に水道水の通過でイオン交換されたカルシウムイオン、マグネシウムイオンなどの硬度成分と塩水中のナトリウムイオンが置換され、イオン交換樹脂を再生する(ステップ128)。これで、イオン交換樹脂43のイオン交換能力が復活し、次回給水時に利用できるようになる。
【0063】
硬度成分を多く含んだ再生排水は、下部空間39bに出て、再生水排出口30cから排水チューブ41を通り、排水口14に入り、排水中の洗濯水と一緒に排水装置13から排水ホース15を通り、洗濯機外へ排出される。従って、硬度成分を多く含んだ再生排水は、洗濯槽5内に流入することがなく、洗濯物に再生排水が触れ、洗濯物に吸着している洗剤の界面活性剤と硬度成分とが結合し、金属石鹸を作ることがない。
【0064】
ステップ128の再生が終了すると(塩水が上部空間39aへ流下開始してから45秒から60秒後)、給水電磁弁27を短時間開き約100mLの水を樹脂ケース33内に供給する(ステップ129)。100mLの給水で樹脂ケース33の上部空間39aの中間部分まで水が入るが、吐出口30bからは出ない。この水は、再生水排出口30cを通り排水チューブ41から排水口14へ排出される。排出が終了するのを20秒から30秒待ち(ステップ131)、再度給水電磁弁27を短時間開き約100mLの水を樹脂ケース33内に供給する(ステップ129)。約100mLの給水を3から5回行う(ステップ130)。この動作は、イオン交換樹脂43層内に残っている再生排水を排除するためのクリーニング工程である。再生直後のイオン交換樹脂間には、高硬度(数千ppm)の再生残水が残っている。この残水が次回給水時に洗濯槽内に入ると、硬度を数ppm上昇させてしまうため、クリーニング工程が必要である。図13は、クリーニング回数と排水チューブ41から出てきた排水の硬度の関係である。クリーニング回数3回でクリーニング水硬度以下となっており、通常は3回のクリーニングで十分である。
【0065】
クリーニング工程が終了したら、次の工程、脱水(ステップ107)へ進む。なお、クリーニング回数が3回の場合、約90秒の時間が必要である。この時間以内で外槽4からの排水が終了した場合、クリーニング工程の終了を待たずに脱水(ステップ107)を開始してもかまわない。
【0066】
上記の再生で塩容器32内の塩42は約15gずつ消費され、徐々に減少する。本実施例では、約500gの塩があるため、再生33回分は塩の補充をせずにイオン交換樹脂の再生が行える。
【0067】
脱水(ステップ107)を終了し、続いてすすぎ工程に移行する。すすぎ工程は、その方法にもよるが通常1回から2回行う。まず、洗濯槽5に水を溜めて行う、所謂ためすすぎを2回行う場合について説明する。1回目のためすすぎ(ステップ109)と2回目のためすすぎ(ステップ112)は、同一であるので、1回目のためすすぎについてのみ説明する。
【0068】
給水電磁弁27を開き(ステップ108)、洗い給水と同様に洗濯槽5内にすすぎ水を供給する。この時、イオン交換樹脂43は既に再生が終了しているため、給水中にイオン交換樹脂43で硬度成分が除去され、軟水が供給される。従って、衣類に残留している洗剤中の界面活性剤と硬度成分が結合し、金属石鹸を生成することがない。
【0069】
以後の動作(ステップ109)は、ステップ106の洗い工程と同様であり、その詳細は図11のフローの通りである。簡単に説明すると、規定の水量になったら給水電磁弁27を閉じ給水を止め(ステップ121)、回転翼6を回転させ撹拌を行い(ステップ123)、衣類に残留した洗剤を洗い出し希釈する。給水を停止したら、塩給水電磁弁28を短時間開き、塩水容器31内へ第1の注水(30mLから50mL)を行う。すすぎ撹拌時間は、通常2分から3分程度であるが、この間に、塩水容器31内の第1の注水には、塩容器32の底面のメッシュフィルタ32cから塩が溶け出し、高濃度の塩水ができる。
【0070】
そして、撹拌の終了が近づくと、給水電磁弁27を短時間開き(ステップ125)、樹脂ケース33内を水で満たす。給水電磁弁27を閉じると、樹脂ケース33内の水は排水チューブから排水され始め、上部空間39aの水がなくなる。
【0071】
水がなくなるとほぼ同時に、排水装置13を開き(ステップ126)外槽4内のすすぎ水の排水を開始する。すすぎ水の排水が開始されるとほぼ同時に、塩給水電磁弁28を開き、塩容器31内へ第2の注水(110mLから120mL)をする(ステップ127)。第2の注水で、第1の注水で生成した塩水を希釈し、8%から10%濃度の塩水となる。
【0072】
この塩水は、サイホン37から上部空間39aに流下し、イオン交換樹脂43層を流れイオン交換樹脂を再生(ステップ128)する。再生排水は、下部空間39bに出て、塩水排出工30cから排水チューブ41をとおり、排水口14に入り、排水中のすすぎ水と一緒に排水装置13から排水ホース15を通り、洗濯機外へ排出される。従って、硬度成分を多く含んだ再生排水は、洗濯槽5内に流入することがなく、洗濯物に残留している洗剤の界面活性剤と硬度成分とが結合し、金属石鹸を作ることがない。再生(ステップ128)が終了すると、イオン交換樹脂43層内に残っている再生排水を排除するクリーニング工程を行う。
【0073】
すすぎ方法が、洗濯槽5を低速で回転させながら衣類に水をかけ、衣類内に水を通過させ洗剤を除去する、いわゆるシャワーすすぎの場合についてその動作フローを説明する。シャワーすすぎは、洗濯槽へ水を溜めずに撹拌も行わないため、使用する水量が5Lから15Lと少なく、節水と時間短縮に有効である。すなわち、図11のフローで示した給水終了(ステップ121)後、撹拌の工程がない。従って、攪拌中に再生用の塩水を生成する時間がない。そこで、シャワーすすぎの場合(ステップ122)は、塩水生成及び再生の工程(ステップ123からステップ131)を行わずに、次の工程、脱水工程へ移行する。もちろん、シャワーすすぎの場合もステップ124からステップ131を行うようにしてもよいが、この場合、塩水生成、再生、クリーニングと約3分程度余計に時間がかかることになる。
【0074】
以上のように、本発明ではすすぎ水に軟水を使用する。ところで、すすぎは、洗い工程で除去した汚れの排除と、衣類に残留する洗剤を少なくするために行う。従来、すすぎは、すすぎ水による洗剤の希釈で議論されており、すすぎ水での洗剤希釈率を重要視していた。しかし、重要なのは実際に衣類に残留する洗剤である。そこで、すすぎ後に衣類に残留している洗剤量(界面活性剤量)について説明する。
【0075】
図14は、すすぎ水の硬度とすすぎ後に衣類に残留した界面活性剤の量の関係である。衣類の材質は木綿で、すすぎ回数は1回である。図から明らかなように、すすぎ水硬度と界面活性剤残留量はほぼ比例し、硬度が低いほど界面活性剤残留量が減少する。この理由は次の通りである。洗い時には衣類に界面活性剤が吸着している。すすぎは、水でこの界面活性剤を希釈し衣類から取り除くことであるが、水の硬度が高いと衣類に吸着している界面活性剤と硬度成分が結合し金属石鹸を生成する(界面活性剤の親水基と硬度成分が結合する)。この金属石鹸は、疎水性で水に不溶な物質であり、すすぎ水中に溶け出すことができずに、衣類に付着したままとなるため、衣類への界面活性剤残留量が多いのである。
【0076】
実際には、撹拌による機械力やすすぎ回数を増やすことで、界面活性剤の残留量を減らすことができる。一例として図14中に、ためすすぎを4回行った場合の界面活性剤残留量を丸印で示す。界面活性剤残留量は軟水でためすすぎを1回行った場合と同程度まで減少する。しかし、水や時間が多く必要で、最近の省エネルギーの要請に反してしまう。さらに、すすぎ回数を増やすことは、衣類の布傷みが増加し好ましくない。このように、すすぎ水に軟水を使用することで、衣類から効率よく界面活性剤を取り除くことができる。
【0077】
また、衣類への界面活性剤残留量を少なくするために、洗いで使用する洗剤量を少なくすることも有効である。しかし、洗剤量を減らすことは、洗浄力の低下につながる。本発明のように洗濯水を軟水で行うと、図12で示したように硬度成分に洗剤の働きを阻害されることがなく、洗浄力が向上する。最近は、「汚れたら洗う」から「使ったら洗う」というように洗濯習慣が変化しており、汚れが少ない洗濯物も少なくない。汚れの少ない洗濯物では高い洗浄力は必要なく、従来(軟水ではない水で洗った場合)と同等の洗浄力で十分である。すなわち、図12中に示したように、硬度50ppmを12ppmまで軟水化するすると、洗剤量を40%少なくしても硬度50ppmと同じ洗浄力が得られる。このように、軟水で洗うことで洗浄力を向上させるのではなく、洗浄力は従来と同等で、洗剤量を減らすことが可能となる。以上のように軟水で洗い、すすぎを行うことで、洗浄力を低下させずに、すすぎ後の衣類への界面活性剤残留量をさらに少なくすることができる。
【0078】
更に、すすぎに軟水を使用すると、次のような効果もある。それは、衣類への界面活性剤の蓄積である。図15は、洗濯(洗い、すすぎ、脱水、乾燥)の繰り返し回数と乾燥後の衣類への界面活性剤残留量との関係である。硬度が高い場合(実線)、洗濯の繰り返し数の増加につれて界面活性剤残留量が増えて行き、衣類に蓄積して行くのがわかる。これに対し、軟水(破線)では、ほとんど増加が見られない。硬度成分が水に含まれている場合、図14で説明したように、衣類への界面活性剤残留量が増加する。この残留量は、洗い時に衣類に吸着している界面活性剤の一部であり、残り(硬度成分と結合しなかった界面活性剤)はすすぎ水で衣類から排除される。次の洗濯でも同様に界面活性剤が残留し、前回の洗濯で残留した界面活性剤に付加された形となり、洗濯の繰り返しで界面活性剤の蓄積が発生する。ただし、衣類に吸着できる界面活性剤の量は、衣類の材質により決定され、その量は有限である。例えば、木綿は多く、ポリエステルは小さい。このため、界面活性剤の蓄積量が無限に増えることはなく、ある洗濯回数で飽和する。洗剤量を少なくした場合でも、蓄積を考えると軟水を使用したほうがよい。洗剤量が少ない場合の衣類への界面活性剤残留量は、図15中、二点鎖線で示すようになる。洗濯1回毎の蓄積量は洗剤量が少ないほうが少ないが、繰り返し数の増加とともに残留量が増加し、通常の洗剤量との差が小さくなる。これは、上述のように、衣類への界面活性剤吸着量が有限であり、洗剤量が少なくても、いずれこの量まで界面活性剤が吸着するためである。このように、軟水を使用することで、洗濯の繰り返しによる界面活性剤残留量の蓄積を防ぐことができる。
【0079】
以上のように、すすぎに軟水を使用することは、衣類から界面活性剤を効率よく除去するのに非常に有用である。衣類に残留する界面活性剤が少なくできると、アレルギー体質で肌が弱い人にとっても、アレルギーの原因となりうる要因を少しでも少なくすることができる。また、硬度が高い水ですすいだ場合は、前述のように衣類の残留した界面活性剤は金属石鹸化している。これは、乾燥後も衣類に付着しているため、衣類のゴワゴワ感につながり、着心地や風合いを損ねるという問題がある。しかし、軟水で洗い、すすぎを行うことで、衣類が柔らかな仕上がりとなるという効果もある。また、衣類に残留した界面活性剤は黄ばみの原因の一つであるが(特に天然石鹸の場合)、黄ばみの防止にも効果がある。
【0080】
2回のすすぎ工程(ステップ109、ステップ112)が終了すると、最後の脱水工程(ステップ113)を行い、電源を切断し洗濯工程を終了する(ステップ114)。
【0081】
なお、本実施例のようにイオン交換樹脂層が扁平で薄い場合、再生に要する時間が重要である。これは、塩水がイオン交換樹脂を通過する時間をある程度確保しないと再生効率が悪いからである。本実施例(イオン交換樹脂径0.2mm、樹脂量100mL、樹脂層厚さ14mm)の場合は、再生時間として45秒以上必要である。再生塩水の排出時間は、再生水排出口30cの内径と外槽4内に溜まった水の量(上部空間39aに溜まった塩水と外槽水面との水位差)で決定される。従って、設定可能な最低水位でも上記時間を確保するためには、再生水排出口30cの内径を1.5mm〜2mmにすれば良い。こうすることで、どのような水量でも45秒以上の再生時間を確保できる。
【0082】
なお、ここまでの説明は通常の動作フローで、塩が水を含んでいる場合でる。塩補充直後で塩が乾燥している場合は、ステップ124の注水量では水は全て塩が吸水し水は塩水容器31内に溜まらない。従って、塩補充直後は、塩に水を含ませるための含水動作が必要であるので、これについて説明する。電源スイッチ20を入れた時に塩補充表示24が点いていると(ステップ102)、塩補充工程を行う。使用者は塩容器32へ塩を補充する(ステップ115)。塩の補充が完了すると、使用者は塩補充完了の操作ボタン25を押す(ステップ116)。操作ボタン25が押されたことを検知したマイクロコンピュータ50は、発光ダイオード55を消灯し塩補充表示24を消す(ステップ117)。
【0083】
その後使用者がスタートボタン22を操作する(ステップ103)と、マイクロコンピュータ50は給水電磁弁27を開き(ステップ104)給水を開始する。水道水は入水口30aをから円筒容器30の下部空間39bに入り下部空間39bを満たしてイオン交換樹脂43が充填された樹脂室33c内を上昇し上部空間39aに流出する。そして、樹脂ケース33の孔34c、円周溝34bを通り吐出口30bから流路46へ出て洗濯槽5へ溜まる。塩補充直後の場合(ステップ105)、ここで、塩へ水を含ませる含水工程を行う。給水電磁弁27が開き(ステップ104)給水を開始すると上部空間39bは水に満たされ、逆止弁35のボール35aが浮上し弁座35bと密着し孔37aを閉じる。逆止弁35が閉じるまでの時間は、給水電磁弁27が開いてから概略1秒程度である。逆止弁35が閉じたら、すなわち給水電磁弁27が開いてから約1秒後に、マイクロコンピュータ50は塩給水電磁弁28を開き(ステップ118)、120mL〜130mLの水を塩水容器31に注水する。注水量の制御は、塩給水電磁弁28の開時間で行うことは、前述の場合と同様である。注水された水は塩水ボックス31内に溜まり、その水位はサイホン37の排水パイプ37aより一時的に高くなるが、逆止弁35が閉じているため、円筒容器30の上部空間39aに漏れることはない。
【0084】
注水された水は、同時にメッシュフィルタ32c、32gを通して乾燥した塩42に吸収される。注水する水量は、塩500gが吸水できる最大量に設定してある。従って、これ以上の量の注水を行うと、塩は吸水しきれずに塩水容器底部に水が残る。なお、塩容器32の底面メッシュフィルタ32cと塩水容器31底面とは間隔があいているが、この部分の水も表面張力で塩に吸収される。塩へ水が全て吸収される時間は塩水容器31への注水完了後1分以内であるため、ステップ118の後1分の放置時間を設ける(ステップ119)。以上で塩への含水動作が完了する。含水動作が終了すると、通常の動作フローに戻る。
【0085】
ここで、塩容器32側面のメッシュフィルタ32gの効果について述べる。既に説明したように、塩容器32内の塩42は、通常水を含んだ状態である。吸水した塩42は、時間が経過すると表面から固まっていく。この時、塩容器32側面が水の通過しない壁状であれば、塩と壁は固着する。塩は、塩容器32底面のメッシュフィルタ32cを通して溶け出し量が減少していく。しかし、塩と壁面が固着していると塩が下に落ちることができずにメッシュフィルタ32cと塩との間に空間が形成され、成長していく。最終的には、メッシュフィルタ32cに接する塩が非常に少なくなってしまい、飽和塩水の生成ができなくなる。
【0086】
しかし、本実施例のように塩容器32の側面にメッシュフィルタ32gを設け、かつ塩水容器側面との間に隙間36aを設けると、ステップ010の塩給水電磁弁28による給水で塩水容器31内の水面がh2まで上昇した場合、隙間36aから塩容器32側面のメッシュフィルタ32gを通して水が侵入し、塩容器32側面メッシュフィルタ32gに接した塩が少量溶け出し、メッシュフィルタ32gと塩42間に隙間が形成される。このため、塩42と塩容器32の側面との固着が発生せず、塩が溶けた分だけ塩は下方に落ち、常に底面のメッシュフィルタ32cと接した状態を維持でき、飽和塩水を安定して生成することが可能となる。なお、隙間36aは装置の小型化のためには極力小さくした方がよいが、塩容器32の塩水容器31への着脱のし易さを考えると2〜4mm程度が好ましい。
【0087】
次に、塩水容器31からの塩水の排出にサイホン37を使用する利点について説明する。サイホン37を使用することで、再生時に塩水容器31内の水は全て排出されるため、再生終了後は塩水容器31内には水がない。従って、塩容器32も水に浸かっていない。塩残量が少なくなり、塩を補充する場合、使用者は塩容器32を塩水容器31から取り外し、作業しやすい場所まで移動する。この時塩容器32に水が残っていると、塩容器の運搬中に水が落ちる水ダレが発生してし、洗濯機や床などを汚してしまう。しかし、水はメッシュフィルタ32cの編み目内に残っている以外ほとんど残っていない。さらに本実施例では、塩容器32底部の枠の形状を図8に示すような円弧状32h、または傾斜面とすることで、枠部分への水の残留を防止する様になっており、故意に塩容器32を振り回すようなことをしない限り水ダレの可能性は非常に小さい。
【0088】
次に、本発明の一実施の形態例に係る洗濯機を、図面を用いて説明する。
【0089】
図16は、本発明の一実施例の形態例に係る全自動洗濯機の洗濯用水の給水経路用部品を納めた後部収納箱17bの上蓋をはずした時の背面側部分の平面図(図1中にBB線で示す断面)であり(前面側を省略している)、図17は図1AA線に沿う縦断面図である。図18は、洗濯機制御部のブロック図である。図中、図2、図4または図9と同一符号は同一部分を示す。また、イオン除去手段29は、前述の実施例と同一である。
【0090】
後部収納箱17bには、再生水排出弁60が設けられている。円筒容器30の下部空間39b底部にある再生水排出口30cには、再生水排出路61が取り付けられており、他端は再生水排出弁60の入口60aに接続されている。再生水排出弁60の出口60bには、塩水排出チューブ62が取り付けられており、他端は排水装置13の下方に接続されている。
【0091】
マイクロコンピュータ50からの出力は、駆動回路52に接続され、再生水排出弁60、給水電磁弁27、塩給水電磁弁28、排水装置13、電動機7等に商用電源を供給して、これらの開閉あるいは回転を制御する。
【0092】
本発明による全自動洗濯機の概略の動作フローチャートを図19に示す。基本的な動作は、図10で説明した前述の実施例と同様である。ここでは、本実施例で特有なステップ106の洗い工程、ステップ109のすすぎ1工程、ステップ112のすすぎ2工程について説明する。
【0093】
マイクロコンピュータ50は、給水電磁弁27を開き(ステップ104)給水を開始する。水道水は、入水口30aから円筒容器30に入り、イオン交換樹脂43が充填された樹脂ケース33内を上昇し、硬度成分を除去され、吐出口30bから流路46へ出て、洗濯槽5に溜まる。この時、再生水排出弁60は閉じているため、給水された水道水は全てイオン交換樹脂43を通過する。このため、水道水の一部が排水チューブ41を通り、直接外槽4に流入した前述の実施例より、洗濯水の硬度を下げることができる。
【0094】
水位センサ11で着て衣料の洗濯水が洗濯槽5内に給水されたことを知ったマイクロコンピュータ50は、給水電磁弁27を閉じて給水を停止させる(ステップ142)。そして、回転翼6を正逆回転させて、洗濯物を撹拌し(ステップ143)洗い工程を開始する。
【0095】
そして、マイクロコンピュータ50は、塩給水電磁弁28を短時間開き、塩水容器31内へ第1の注水を行う(ステップ144)。注水量は30mLから50mLである。注水された水44aは、塩水容器31の底に溜まる。その水面h1は塩容器32底面のメッシュフィルタ32cと同じか高いため、メッシュフィルタ32cろ通して塩が溶け出し、注水した水の塩分濃度が上昇して行く。高濃度の塩水を生成するために、ステップ144の第1の注水後最低でも1分間放置する(ステップ145)。
【0096】
その後、マイクロコンピュータ50は、再生水排出弁60を開き(ステップ146)、ほぼ同時に給水電磁弁27を短時間開き(ステップ147)給水を行い、樹脂ケース33内を水で満たす(給水量は0.5Lから1L)。この時、再生水排出路61、排水チューブ62内も水で満たされる。給水電磁弁27を閉じると、樹脂ケース33内の水は排水チューブ62から排水され始める。そして、上部空間39aの水がなくなるとほぼ同時(給水電磁弁27を閉じてから約20秒後)に、塩給水電磁弁28を開き、塩水容器31内へ第2の注水を行う(ステップ148)。注水量は、110mLから120mLである。塩水容器31内にはステップ144の第1の注水による水が既に溜まっている。この水にはステップ145中に約10gの塩が溶け、濃度が約15〜20%の塩水となっている。この塩水に、110mL〜120mLの第2の注水を行うと、この水でさらに約5gの塩が溶け、先に生成した塩水と合わせ、合計約15gの塩が溶けた濃度約8%〜10%の塩水ができる。
【0097】
ステップ148の注水で、塩水容器31内の水面はh2まで上昇し、サイホン37の排水パイプ37bの高さを超えるため、サイホン37が通じ孔37aから塩水が流れ出す。孔37aからの塩水は逆止弁35が開いているため、円筒容器30の上部空間39a内に流下し、イオン交換樹脂43の再生(ステップ149)が始まる。塩水容器31内の塩水は、サイホン37の作用でほぼ全て上部空間39aに流下する(残る水量は10mL以下)。
【0098】
上部空間39aに塩水が流下した時、下部空間39bと再生水排出路61、再生水排出弁60、排水チューブ62内はステップ147で給水した水で満たされている。このため、排水チューブ62出口と上部空間39a内の塩水の水面との水位差で、塩水はイオン交換樹脂43層内を容易に通過できる。塩水がイオン交換樹脂43内を流れることで、化1、化2の右辺から左辺への反応が起き、給水時に水道水の通過でイオン交換されたカルシウムイオン、マグネシウムイオンなどの硬度成分と塩水中のナトリウムイオンが置換され、イオン交換樹脂を再生する(ステップ128)。これで、イオン交換樹脂43のイオン交換能力が復活し、次回給水時に利用できるようになる。
【0099】
硬度成分を多く含んだ再生排水は、下部空間39bに出て、再生水排出口30cから再生水排出路61、再生水排出弁60、排水チューブ62を通り、排水ホース15から洗濯機外へ排出される。この時、洗濯物は撹拌中であるが、硬度成分を多く含んだ再生排水は、洗濯槽5内に流入することがないため、洗濯水と再生排水が触れ、洗剤の界面活性剤と硬度成分が結合し、金属石鹸を作ることがない。
【0100】
ステップ149の再生が終了すると(塩水が上部空間39aへ流下開始してから45秒から60秒後)、給水電磁弁27を短時間開き約100mLの水を樹脂ケース33内に供給する(ステップ150)。100mLの給水で樹脂ケース33の上部空間39aの中間部分まで水が入るが、吐出口30bからは出ない。この水は、再生水排出口30cを通り排水チューブ62から排水ホース15へ排出される。排出が終了するのを20秒から30秒待ち(ステップ152)、再度給水電磁弁27を短時間開き約100mLの水を樹脂ケース33内に供給する(ステップ150)。約100mLの給水を3から5回行う(ステップ151)。この動作は、イオン交換樹脂43層内に残っている高濃度の硬度成分を含む再生排水を排除するためのクリーニング工程である。
【0101】
クリーニング工程が終了し、かつ洗い工程が終了したら、次の工程、脱水(ステップ107)へ進む。
【0102】
上記の再生で塩容器32内の塩42は約15gずつ消費され、徐々に減少する。本実施例では、約500gの塩があるため、再生33回分は塩の補充をせずにイオン交換樹脂の再生が行える。
【0103】
脱水(ステップ107)を終了し、続いてすすぎ工程に移行する。洗濯槽5に水を溜めて行う、所謂ためすすぎの場合は、上述の洗い工程の動作フロー図19と全く同様であるので、説明を省略する。
【0104】
以上のように、本発明では、洗濯水とすすぎ水を軟水にすることができる。このため、洗剤の界面活性剤と水中の硬度成分とが結合して金属石鹸を生成することがなく、洗浄力の向上や、すすぎの後衣類への界面活性剤の残留量を低減できる効果があるのは、前述の実施例と同様である。更に、本発明では、再生水排出弁60を設けたため、硬度成分を多量に含む再生排水が洗濯槽5内に流入するのを完全に防止できる。また、再生工程を洗いやすすぎ撹拌中にも行うことができ、洗濯工程全体の時間を再生工程のために延ばす必要がない。
【0105】
以上説明してきた実施例では、再生を洗い工程、すすぎ工程毎に行っている例を説明してきた。図20は、本発明の硬度除去手段を使用した場合の給水量と硬度の関係を表した図である。丸印は吐出口30bにおける水の硬度を、三角印は洗濯槽5内に溜まった水の硬度を示す。給水量の増加とともに硬度は上昇し、高水位(68L)まで給水すると、吐出口では約74ppmとなり、イオン交換樹脂43の硬度除去能力はほとんど残っていない。洗濯槽5内の水硬度は38ppmとなり、原水の硬度100ppmから約60%の硬度成分が除去されている。従って、高水位まで給水した場合は、給水毎に再生を行わないと、次回給水時に高硬度の水が洗濯槽へ供給されることになりる。すなわち、給水毎に再生することにより、洗い、すすぎ共、38ppmの水で行うことが可能となる。
【0106】
一方、図21に示すように給水が低水位(図では30L)の場合、再生を行わないとすると、硬度は洗いで約20ppm、すすぎ1(ためすすぎ)で約40ppm、すすぎ2(ためすすぎ)で約84ppmとなる。すすぎ1の硬度は40ppmで高水位の場合とほぼ同硬度であり、洗い給水後の再生を省略することも可能である。そして、すすぎ1の給水後に再生を行えばよい。こうすることで、すすぎ2の硬度は20ppmとなる。すすぎ2給水後の再生は、次回の洗濯用に行うものであり、これは給水量によらず行ったほうがよい。これは、次回の洗濯の使用水量がどうなるかは分からないからである。
【0107】
このように、給水量により再生回数を減らすことが可能である。これにより、塩の無駄な消費を防ぐことができ、塩の補給間隔を延ばすことができる。
【0108】
以上の説明のように、本実施の形態例は、洗い給水、すすぎ給水の後にイオン交換樹脂を再生し、再生排水が洗い水やすすぎ水と混じることのないよう、排水中に再生を行うようにしたことで、洗い、すすぎを軟水で行うことができ、洗浄力の向上と共に、衣類に残留する洗剤(界面活性剤)を少なくすることができる。
【0109】
また、再生水排出弁を設けることで、再生排水が洗い水やすすぎ水と混じることがなく、かつ洗い工程やすすぎ工程中の任意のタイミングで再生を行うことができる。
【0110】
【発明の効果】
本発明によれば、洗い水、すすぎ水を軟水化することができるため、洗浄力の向上と共に、衣類に残留している洗剤中の界面活性剤と硬度成分が結合して金属石鹸を生成することがなくなるので洗剤の残留量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による全自動洗濯機の外観斜視図である。
【図2】本発明による全自動洗濯機の縦断面図である。
【図3】本発明による全自動洗濯機の操作パネル図である。
【図4】本発明による後部収納箱内部の平面図である。
【図5】本発明によるイオン除去手段の斜視図である。
【図6】本発明によるイオン除去手段の縦断面図である。
【図7】本発明によるイオン除去手段の塩容器の斜視図である。
【図8】本発明によるイオン除去手段の塩容器断面図である。
【図9】本発明による全自動洗濯機の電気接続ブロック図である。
【図10】本発明による全自動洗濯機の概略動作フローである。
【図11】本発明による全自動洗濯機の洗い工程、またはすすぎ工程中の動作フローである。
【図12】硬度、洗剤量と洗浄力の関係を示す図である。
【図13】クリーニング回数と排水硬度の関係を示す図である
【図14】すすぎ水硬度と布への界面活性剤残留量の関係を示す図である。
【図15】洗濯繰り返し回数と衣類への界面活性剤残留量の関係を示す図である。
【図16】本発明による別の全自動洗濯機の後部収納箱内部の平面図である。
【図17】本発明による別の全自動洗濯機の縦断面図である。
【図18】本発明による別の全自動洗濯機の電気接続ブロック図である。
【図19】本発明による別の全自動洗濯機の洗い工程、またはすすぎ工程中の動作フローである。
【図20】高水位まで給水した場合の給水量と硬度の関係を示す図である。
【図21】低水位まで給水した場合の給水量と硬度の関係を示す図である。
【符号の説明】
4…外槽、5…洗濯兼脱水槽、13…排水装置、14…排水口、15…排水ホース、17b…後部収納箱、24…塩補充表示、25…塩補充完了操作ボタン、26…水道栓口、27…給水電磁弁、28…塩給水電磁弁29…イオン除去手段、30…円筒容器、30a…入水口、30b…吐出口、30c…再生水排出口、31…塩水容器、32…塩容器、32c、32g…メッシュフィルタ、33…樹脂ケース、33a…メッシュフィルタ、33c…樹脂室、35…逆止弁、37…サイホン、39a…上部空間、39b…下部空間、41…排水チューブ、43…イオン交換樹脂、50…マイクロコンピュータ、55…発光ダイオード、60…再生水排出弁、62…排水チューブ。
Claims (5)
- 洗濯物を入れる洗濯槽と、該洗濯槽に給水する給水手段と、前記洗濯槽内の水を排水する排水手段と、前記給水手段の給水経路の途中に設けられ給水される水に含まれるイオンを除去するための、イオン交換樹脂を充填した樹脂容器と前記イオン交換樹脂のイオン除去能力を再生させる再生剤を収容する再生剤容器とからなるイオン除去手段とを備え、洗い工程で給水される水に含まれるイオンを除去する洗濯機において、
洗い工程における前記洗濯槽への給水終了後に前記イオン交換樹脂を前記再生剤で再生処理し、再生終了後のイオン交換樹脂を通してすすぎ水の給水を行うことを特徴とする洗濯機。 - 洗濯物を入れる洗濯槽と、該洗濯槽に給水する第1の給水手段と、前記洗濯槽内の水を排水する排水手段と、前記給水手段の給水経路の途中に設けられ給水される水に含まれるイオンを除去するイオン除去手段と、洗い、すすぎ及び脱水の各工程の制御を行う制御手段とを備え、洗い工程で給水される水に含まれるイオンを除去する洗濯機において、
前記イオン除去手段は、イオン交換樹脂を充填した樹脂容器と、底面及び側面がメッシュフィルタで作られ前記イオン交換樹脂のイオン除去能力を再生させる再生剤を収容する再生剤容器と、前記樹脂容器の上部に配置されかつ前記再生剤容器を内部に配置し、第2の給水手段から洗い、すすぎ毎に給水される水に前記再生剤容器から略規定量の再生剤が溶解して生成された略規定濃度の再生水を貯蔵する再生水容器と、前記再生水容器底部に前記樹脂容器と連通して設けられ前記貯水した再生水を前記樹脂容器内に流下させるサイホンと、前記樹脂容器底部と前記排水手段とを接続する再生水排水路を有し、
前記制御手段は、まず前記洗い工程及びすすぎ工程の給水後に前記第2の給水手段を動作させ前記再生水容器に一回目の給水を行い、次に前記洗い工程及びすすぎ工程終了後前記排水手段を動作させて前記洗濯槽内の水の排水を開始すると同時に前記第2の給水手段を動作させて前記再生水容器内に二回目の給水を行い前記イオン交換樹脂を再生し、その後前記第1の給水手段を動作させ前記樹脂容器内が水で満たされる量を給水し前記再生水排水路から排水する工程を複数回行い、その後前記第1の給水手段を動作させてすすぎ工程の給水を行うことを特徴とする洗濯機。 - 洗濯物を入れる洗濯槽と、該洗濯槽に給水する第1の給水手段と、前記洗濯槽内の水を排水する排水手段と、前記給水手段の給水経路の途中に設けられ給水される水に含まれるイオンを除去するイオン除去手段と、洗い、すすぎ及び脱水の各工程の制御を行う制御手段とを備え、洗い工程で給水される水に含まれるイオンを除去する洗濯機において、
前記イオン除去手段は、イオン交換樹脂を充填した樹脂容器と、底面及び側面がメッシュフィルタで作られ前記イオン交換樹脂のイオン除去能力を再生させる再生剤を収容する再生剤容器と、前記樹脂容器の上部に配置されかつ前記再生剤容器を内部に配置し、第2の給水手段から洗い、すすぎ毎に給水される水に前記再生剤容器から略規定量の再生剤が溶解して生成された略規定濃度の再生水を貯蔵する再生水容器と、前記再生水容器底部に前記樹脂容器と連通して設けられ前記貯水した再生水を前記樹脂容器内に流下させるサイホンと、前記樹脂容器底部と前記排水手段とを接続する再生水排水路と、該再生水排水路の開閉を行う再生水排出弁とを有し、
前記制御手段は、まず前記洗い工程及びすすぎ工程の給水後に前記第2の給水手段を動作させ前記再生水容器に一回目の給水を行い、次に前記第2の給水手段による一回目の給水終了後規定時間が経過した後で前記再生水排出弁を開くと共に前記第2の給水手段を動作させて前記再生水容器内に二回目の給水を行い前記イオン交換樹脂を再生し、その後前記第1の給水手段を動作させ前記樹脂容器内が水で満たされる量を給水し前記再生水排水路から排水する工程を複数回行い、その後前記第1の給水手段を動作させてすすぎ工程の給水を行うことを特徴とする洗濯機。 - 請求項1乃至3のいずれかに記載の洗濯機において、前記イオン交換樹脂を再生した後の再生水は、前記洗濯槽内の水及び前記洗濯槽内の洗濯物に触れないことを特徴とする洗濯機。
- 請求項2又は3に記載の洗濯機において、洗い工程の給水量に応じて洗い工程の給水後に前記イオン交換樹脂の再生を行うか否かを決定することを特徴とする洗濯機。
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