JP3910023B2 - 気体ばね式除振装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば半導体製造装置や精密計測装置等を床振動から略絶縁した状態で設置するために、それらの荷重を気体ばねを介して支持するようにした除振装置に関し、特に、上下方向だけでなく水平方向についても優れた除振性能が得られるよう、気体ばねのピストンにジンバル機構を組み込んだもの(以下、ジンバルピストンともいう)において、そのジンバルピストンに固有の共振現象に起因する不具合の対策に係る。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の除振装置として、例えば特公昭62−7409号公報に開示されるように、ダイヤフラム形の空気ばねを使用した除振装置のピストンにジンバル機構を組み込んで、被支持体と床との間の水平方向変位をピストンの揺動に変換することにより、水平方向のばね特性を非常に柔らかくできるようにしたものが知られている。このような除振装置では、図14に概略構成を示すように、空気ばねのピストンaを円盤状のロードディスクb(荷重受部材)とその下方に位置する円筒状のピストン本体cとに分割し、このピストン本体cの外周をゴムのダイヤフラムd(可撓性部材)により保持するとともに、そのピストン本体cの底部に下方に延出する延出部c1を設けて、前記ロードディスクbから下方に垂下するサポートロッドe(支持柱)をダイヤフラムdよりも下方に位置するピストン本体cの延出部c1の底部においてピボット支持するようにしている。
【0003】
この構造により、前記除振装置では、ロードディスクb、サポートロッドe及びピストン本体cが一体的に空気ばねにより支持されていて、その上下方向振動の固有振動数(系に固有の共振周波数)が例えば約1Hzくらいと極めて低いことから、広い周波数領域に亘って優れた除振効果が得られるとともに、水平方向の振動に対しては、ピストン本体cを保持するダイヤフラムdが該ピストン本体cを挟んでそれぞれ上下にうねるように撓むことで、同図に矢印で示すようにピストン本体cが揺動し、これにより振動の吸収がなされる。この際、前記したように、サポートロッドeを介してのロードディスクbの支持点がピストン本体cのダイヤフラムdによる保持位置よりもずっと低い位置にあることで、ロードディスクbの水平方向変位に対するダイヤフラムdのばね特性は非常に柔らかなものとなり、その固有振動数が上下方向と同様に十分に低くなることで、広い周波数領域に亘って優れた除振効果が得られるものである(図5参照)。
【0004】
さらに、一般的に、気体ばね式除振装置において、ピストンの実際の振動状態をセンサにより検出し、この検出値に応じて気体ばねの気体圧を変更して、ピストンにその振動を打ち消すような逆位相の制御振動を付加することにより、共振のない理想的な除振を実現するとともに、被支持体から発生する振動も抑制できるようにした、いわゆるアクティブ制振機能を有するものがある(例えば、特開平3−219141号公報を参照)。そして、そのようなアクティブ制振制御は、通常、気体ばねの応答特性や床振動の周波数成分等を考慮して、概ね200Hz以下の周波数の振動に対して行われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記従来例のようなジンバルピストンを使用した除振装置において、周波数毎の水平方向振動の伝達率を従来よりも精密に計測したところ、前記の如く極めて低い周波数の共振点以外に、相対的に高い周波数域(60〜100Hzくらい)にもピークの低い別の共振点が現れ、この共振点付近の周波数で除振性能がやや劣化していることが見出された(図9に示す共振点R2を参照)。
【0006】
この共振現象はジンバルピストンに特有のものと考えられ、被支持体をマスとする主振動系に対してばね上でもばね下でもない中間マスとなるピストンの振動に起因すると推定される。すなわち、前記主振動系の水平方向変位は主としてピストンの揺動によるものであって、その場合のダイヤフラムのばね特性は、半導体製造装置や搭載盤等の主振動系のマスに対しては十分に柔らかいものとなる。しかし、該主振動系のマスに比べて格段に軽いピストンに対してはダイヤフラムのバネ特性はあまり柔らかなものとはいえないから、このピストンとダイヤフラムとによって構成される振動系の共振点が前記したように比較的高い周波数域に現れることになるのである。
【0007】
このような共振現象は、前記したようにピストンが軽量であることから、ピークの低いものとなり、その上に、通常は周囲の空気を媒介して直接的に伝達される振動(環境騒音)の周波数域に含まれることから、それだけで問題となることはない。しかし、前記のアクティブ制振制御を行うようにしたものの場合、共振点付近では機器の振動を打ち消すための制御振動により却って振動が増幅されることがあり、これにより制御の安定性が損なわれる虞れがある。
【0008】
また、アクティブ制振制御を行わない場合でも、将来的に無振動化の要求が現在よりも一層、厳しくなることが考えられ、このときには前記したようなピークの低い共振点であっても、その共振による除振性能の劣化が問題になることがあると予想される。
【0009】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、気体ばね式除振装置においてジンバルピストンに固有の共振現象に起因する除振性能の劣化を抑制し、特に、アクティブ制振制御への悪影響を解消することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の第1の解決手段では、ジンバルピストンを介して気体ばねにより被支持体の荷重を支持するようにした気体ばね式除振装置において、ピストン本体部材の外周側を保持する可撓性部材を所定の高減衰材料により構成するものとした。
【0011】
具体的に、請求項1の発明では、被支持体の荷重を支持するピストンをケース部材上面の開口部に内挿して、該ピストンの下端面をケース部材の内部の気体室に臨ませるとともに、該ピストンの外周から前記開口部の周縁まで環状の可撓性部材により閉塞して、前記被支持体の荷重を弾性的に支持する気体ばねを構成した気体ばね式除振装置を対象とする。そして、前記ピストンを、被支持体の荷重を受ける荷重受部材と、この荷重受部材の下方に離間して前記可撓性部材が連結された筒状のピストン本体部材とからなるものとし、そのうちの荷重受部材には、その下部から前記ピストン本体部材の中心孔を貫通するように略鉛直下方に向かって延びる支持柱を設ける一方、ピストン本体部材には、その下端部における内周側から前記支持柱を囲むように略鉛直下方に向かって延びる有底筒状の下方延出部を設けて、この下方延出部の底部において前記支持柱の下端部を枢支させるようにする。そして、前記可撓性部材を、前記ピストン本体部材をケース部材に対して揺動可能に弾性的に保持する、繊維材料で補強したゴム弾性膜のダイヤフラムとするとともに、このゴム弾性膜は、前記ピストン本体部材の揺動運動の減衰率が所定以上に高くなるような高減衰材料、具体的にはニトリルゴム、ブチルゴム、ポリノルボルネンゴム、エポキシ化天然ゴム、フッ素ゴム、シリコンゴムのうちの少なくとも1つを主材料とし、かつ、そのゴム材料の加硫後の損失係数が0.5〜2.0の範囲の値になるものとする。
【0012】
前記の構成により、本発明に係る気体ばね式除振装置では、まず、従来例のものと同様に、ピストンが気体ばねにより支持されていることで、上下方向振動について広い周波数領域に亘る優れた除振効果が得られるとともに、水平方向の振動に対してはピストン本体部材の揺動によって、ばね特性が非常に柔らかなものになり、これにより、上下方向と同様の優れた除振効果が得られる。
【0013】
さらに、本発明の特徴として、前記ピストン本体部材を揺動可能に弾性保持するゴム弾性膜のダイヤフラム(可撓性部材が所定の高減衰材料により構成されているので、該ピストン本体部材の揺動運動の減衰率が高くなり、このことで、そのピストン本体部材とゴムダイヤフラムとによって構成される中間振動系の共振倍率を効果的に低下させることができる。これにより、共振のピークを従来よりもさらに低下させて、斯かる共振現象に起因する除振性能の劣化を実質的に解消することができる。また、そのようにゴムダイヤフラムの減衰率を高くしても、そのことはマスの大きい主振動系の除振性能にはあまり影響を及ぼさない。
【0014】
請求項2の発明では、前記請求項1の発明と同じ前提構成の気体ばね式除振装置を対象とし、該請求項1の発明と同じく、気体ばねのピストンを、被支持体の荷重を受ける荷重受部材と、この荷重受部材の下方に離間して前記可撓性部材が連結された筒状のピストン本体部材とからなるものとし、そのうちの荷重受部材には、その下部から前記ピストン本体部材の中心孔を貫通するように略鉛直下方に向かって延びる支持柱を設ける一方、ピストン本体部材には、その下端部における内周側から前記支持柱を囲むように略鉛直下方に向かって延びる有底筒状の下方延出部を設けて、この下方延出部の底部において前記支持柱の下端部を枢支させるようにする。
【0015】
そして、前記可撓性部材を、前記ピストン本体部材をケース部材に対して揺動可能に弾性的に保持する、繊維材料で補強したゴム弾性膜からなるダイヤフラムと、これと並列に該ピストン本体部材を弾性的に保持するゴムのシート部材と、からなるものとし、該シート部材は、ニトリルゴム、ブチルゴム、ポリノルボルネンゴム、エポキシ化天然ゴム、フッ素ゴム、シリコンゴムのうちの少なくとも1つを主材料とし、かつ、そのゴム材料の加硫後の損失係数を0.5〜2.0の範囲の値になるものとする。
【0016】
前記の構成では、ピストン本体部材の揺動に対してシート部材が弾性変形することにより、高い減衰力が得られることになるので、ダイヤフラム自体は従来までと同じく例えばクロロプレンゴムのものとしても、前記請求項1の発明と同様の作用効果が得られる。
【0017】
次に、本発明の第2の解決手段では、ジンバルピストンを介して気体ばねにより被支持体の荷重を支持するようにした気体ばね式除振装置において、ピストン本体部材の外周側を保持するゴムのダイヤフラム(可撓性部材)と並列に、ピストン本体部材の揺動を規制するように板ばねを配設した。
【0018】
具体的に、請求項3の発明では、被支持体の荷重を支持するピストンをケース部材上面の開口部に内挿して、該ピストンの下端面をケース部材の内部の気体室に臨ませるとともに、該ピストンの外周から前記開口部の周縁まで環状の可撓性部材により閉塞して、前記被支持体の荷重を弾性的に支持する気体ばねを構成した気体ばね式除振装置を対象とする。そして、前記ピストンを、被支持体の荷重を受ける荷重受部材と、この荷重受部材の下方に離間して前記可撓性部材が連結された筒状のピストン本体部材とからなるものとし、そのうちの荷重受部材には、その下部から前記ピストン本体部材の中心孔を貫通するように略鉛直下方に向かって延びる支持柱を設ける一方、ピストン本体部材には、その下端部における内周側から前記支持柱を囲むように略鉛直下方に向かって延びる有底筒状の下方延出部を設けて、この下方延出部の底部において前記支持柱の下端部を枢支させるようにする。そして、前記可撓性部材を、前記ピストン本体部材をケース部材に対して揺動可能に保持するゴムのダイヤフラムとし、かつ、該ゴムダイヤフラムと並列に、これよりも剛性の高い板ばねを前記ピストン本体部材の揺動を規制するように配設する構成とする。
【0019】
前記の構成により、本発明に係る気体ばね式除振装置では、まず、従来例や前記請求項1、2の発明のものと同様に、ジンバルピストンと気体ばねとによって上下及び水平の両方向の振動に対し広い周波数領域に亘って優れた除振性能を得ることができる。
【0020】
また、本発明の特徴として、ゴムのダイヤフラムにより保持されたピストン本体部材の揺動運動が、該ダイヤフラムと並列に配置された板ばねによって規制されるので、その揺動運動のばね特性が相対的に硬いものとなり、このことで、中間振動系の共振点が周波数の高い側へ移動することになる。これにより、自ずと共振ピークが低下するとともに、その共振点を、床振動の問題となり易い所定の周波数域よりも高い領域へ移行させることが可能となり、もって、斯かる共振現象に起因する除振性能の劣化を実質的に解消することができる。しかも、前記板ばねをピストン本体部材の揺動を規制するものであっても、該ピストン本体部材の上下運動のばね特性にはあまり影響を及ぼさないものとすれば、被支持体の除振性能への悪影響は最小限に抑制できる。
【0021】
請求項4の発明では、前記請求項1〜3の何れか1に係る気体ばね式除振装置において、さらに、荷重受部材のケース部材に対する水平方向の加速度を検出する検出手段と、前記荷重受部材を前記水平方向に変位させるアクチュエータと、前記検出手段による検出値に基づいて、前記荷重受部材の振動を抑制するようにアクチュエータを作動させる制御手段とを設ける構成とする。
【0022】
すなわち、アクチュエータの駆動制御によって被支持体の水平方向振動を能動的に制振するようにした場合(アクティブ制振制御)には、その制御領域に共振点が存在すると、抑制すべき振動が付加される制御振動によって増幅されてしまい、制御の安定性を損なう虞れがある。これに対し、前記請求項1、2の発明のようにその共振のピークを大幅に低下させるか、或いは、前記請求項3の発明のように共振点を制御領域よりも高周波側に移行させるようにすれば、斯かる共振現象がアクティブ制振制御へ実質的に悪影響を及ぼさないようにすることができる。つまり、前記請求項1〜3の発明は、アクティブ制振制御を行うようにした気体ばね式除振装置において特に優れた作用効果を奏する。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。
【0024】
(実施形態1)
図1は、本発明に係る気体ばね式除振装置を使用した精密除振台Aの一例を示し、この精密除振台Aは、例えば、図示しない半導体検査装置や電子顕微鏡、光学式計測装置等の精密機器を搭載して、それらの機器を床からの振動と殆ど絶縁した状態で設置するためのものである。すなわち、前記精密除振台Aの概略構成は、図示の如く、床面に設置される下側構造部1と、その下側構造部1の上面の4隅にそれぞれ配設された空気ばね式のアイソレータ2,2,…(除振装置)と、該4つのアイソレータ2,2,…の上部に搭載された搭載盤3とからなる。
【0025】
前記下側構造部1は、鋼製角パイプの構造部材を概ね直方体形状となるように櫓組みしたものであり、それぞれ上下方向に延びる4本の脚部4,4,…と、その隣接する2本の脚部4,4同士を下端側で連結するように水平方向に延びる下梁部5,5,…と、それら4本の脚部4,4,…の上端側外周を囲んで平面視で略矩形の枠状となるように配置され、それぞれ内側面が脚部4,4,…の外側面に接合されるとともに、上面が該脚部4,4,…の上端面と同一平面上に位置付けられた上梁部6,6,…とからなる。そして、前記各脚部4の上端面からその外側を囲む上梁部6,6の上面に亘って、水平板7,7,…が配設されていて、この各水平板7上にそれぞれアイソレータ2が配設されている。また、下側構造部1の長手方向に延びる2つの下梁部5,5の下面には、移動用のキャスター8,8,…が2つずつ配設されるとともに、各脚部4の下端面にはそれぞれ高さ調整用のレベラー9,9,…が配設されている。
【0026】
(アイソレータの構成)
前記アイソレータ2は、図2に詳細を示すように、上下方向の空気ばねについては従来例(特公昭62−7409号公報)のものと同様の構成を有し、ダイヤフラム形空気ばねのピストンにジンバル機構を組み込んで、水平方向のばね特性を上下方向と同様に非常に柔らかくしたものである。詳しくは、アイソレータ2は、ベースプレート10の上面に固定されるインナケーシング11と、このインナケーシング11に対して空気ばねを介して取り付けられたアウタケーシング20とからなる。前記インナケーシング11(ケース部材)は、全体として高さ寸法が横幅よりも大きい四角筒状とされ、鋼製の周壁部11aの下端が同じく鋼製の前記ベースプレート10の上面に接合される一方、該周壁部11aの上端に接合された鋼製の天板11bの略中央部には、鉛直方向の軸線Zと略直交するように円形の開口部12が形成されている。
【0027】
また、前記インナケーシング11上面の開口部12には、ドーナツ状のピストン本体13が内挿されている。このピストン本体13はアルミニウム合金製であり、断面円形の中心孔13aが軸線Zに沿って上下方向に貫通する一方、外周の下側約半分には下端側に向かって僅かに縮径するテーパ面13bが形成されている。そして、該ピストン本体13の下端面13cから外周側のテーパ面13bを覆ってさらに外周側に延び、そこから開口部12の周縁までを閉塞するように、環状のダイヤフラム14が配設されている。すなわち、前記ダイヤフラム14及びピストン本体13によりインナケーシング11の上端開口部12が閉塞されて、空気室15が区画されており、該ピストン本体13の下端面13cが該空気室15に臨んでその空気圧を受けることで、主に上下方向の荷重を支持する空気ばねが構成されている。
【0028】
前記ダイヤフラム14は、ポリエステル繊維の織物を補強材として埋設したゴム弾性膜からなり、図3に仮想線で示すように一旦、中心部分に丸穴が空いたハット状に形成した後に、帽子の周壁部分を途中で湾曲させて下方に折り返すようにして、同図に実線で示す深皿形状としたものである。すなわち、ダイヤフラム14は、帽子の鍔の部分に相当する外周フランジ部14aの内周端縁に連続して、上方に凸に湾曲する環状ロール部14bが形成され、このロール部14bの内周端縁部が前記外周フランジ部14aよりも下方まで延びていて、そこからさらに内周側に向かって、前記の丸穴を囲むように内周フランジ部14cが形成されている。
【0029】
そして、同図に示すように、前記ダイヤフラム14の内周フランジ部14cがピストン本体13の下端面13cに接着されて、その下方からワッシャ16によりピストン本体13に対して強固に圧着されている。一方、ダイヤフラム14の外周フランジ部14aは、インナケーシング11の天板11cの上面に接着されて、その上部に配設された締付けリング17が図示しないボルトにより該天板11cに締結されることにより、該締付けリング17の下面と天板11cの上面との間に強固に挟持されている。
【0030】
そうして、そのように配設されたダイヤフラム14は、環状ロール部14bがピストン本体13と締付けリング17との間で上下にうねるようにかつ全周に亘って略均等に大きく撓むことで、ピストン本体13の上下方向の変位に対して大きな可撓性を有し、また、該ダイヤフラム14がピストン本体13を挟む左右両側のロール部14bにおいて反対向きに撓むことによって、ピストン本体13が水平方向の任意の軸の周りに容易に揺動する(図6参照)。一方、ダイヤフラム14はピストン本体13の水平方向の変位に対しては可撓性が極めて小さく、このため、該ピストン13は水平方向には殆ど変位しないことになる。
【0031】
前記ピストン本体13の下端面13cには、その内周側から略鉛直下方に向かって延びるように、円筒状のピストンウエル18(下方延出部)が取付けられている。このピストンウエル18は、ピストン本体13と同じアルミ合金製であり、その上端部がやや縮径されて、ピストン本体13の中心孔13aに螺入される縮径部18aとされている。そして、この縮径部18aの外周に螺設された雄ネジが中心孔13bの内周に螺設された雌ねじと螺合することにより、ピストンウエル18の上端側がワッシャ16と共にピストン本体13に対して強固に締結されている。また、前記ピストンウエル18の中空部18bの上端はピストン本体13の中心孔13aに連通し、一方、該中空部18bの下端は円盤状の鋼製キャップ19により閉止されており、このキャップ19の上面には、後述の如くサポートロッド24の下端部を支持するために、表面硬度を高める熱処理加工が施されたウエルスラグ19aが形成されている。
【0032】
一方、前記ピストン本体13の上方には、被支持体である搭載盤3及び搭載機器の荷重を上方から受けるように、略矩形板状のトッププレート21(加重受部材)がピストン本体13から離間して配置されている。このトッププレート21は、アイソレータ2のアウタケーシング20の天井部に相当し、その外周縁にはそれぞれ下方に垂下するように4枚のサイドプレート22,22,…の上縁が結合されている。この各サイドプレート22の下端縁はそれぞれベースプレート10の上面付近まで延びていて、アウタケーシング20全体としては、下方に開口する箱状になっている。
【0033】
また、前記トッププレート21の下面略中央部には、上下方向に延びるサポートロッド24(支持柱)の上端部が締結され、このサポートロッド24がピストン本体13の中心孔13a及びピストンウエル18の中空部18bを貫通して略鉛直下方に延びていて、その下端部に配設された鋼球25が前記ウエルスラグ19aに転動自在に当接するとともに、該サポートロッド24の下端側には、芯体26aの埋設されたゴム弾性リング26が外挿されて、サポートロッド24の下端部を常に軸線Z上に位置付けるようになっている。つまり、前記トッププレート21は、サポートロッド24を介してピストンウエル19の底部に枢支され、ピストン本体13に対し水平方向の任意の軸の周りに回動自在になっている。
【0034】
そして、前記図2に示すように空気室15に適正な空気圧が供給されている状態では、前記トッププレート21の下面がその下方の締付けリング17の上面から離間して上下方向に対向した状態になる一方、例えば空気室15の空気が抜けて、空気圧が大幅に低下したときには、トッププレート21の下面が締付けリング17の上面に当接して、該締付けリング17を介してインナケーシング11により支持される状態となる。
【0035】
尚、図示の符号27,27は、後述する空気圧の制御によってトッププレート21の水平方向の振動を抑制するために、それぞれアウタケーシング20のサイドプレート22,22とインナケーシング11の周壁部11aとの間に配設された空気圧アクチュエータであり、ここでは例えばベローズを用いればよい。また、図示しないが、前記インナケーシング11の周壁部11aには、前記空気室15と左右のベローズ27,27とに個別に連通するように空気通路が設けられている。
【0036】
上述の構成により、前記アイソレータ2は、トッププレート21やピストン本体13等からなるジンバルピストンが空気ばねにより支持されて、搭載盤3上の機器に対する床からの上下方向振動を略絶縁するとともに、ジンバルピストンの働きによって床からの水平方向振動も同様に略絶縁することができるようになっている。このアイソレータ2における上下方向の振動伝達率は、図4に一例を示すように、空気ばねの特性として固有振動数が略0.7〜1.5Hzと極めて低い周波数域に現れるものとなり、同図のグラフから、広い周波数領域に亘り優れた除振性能の得られることが分かる。
【0037】
また、水平方向の振動に対しては、図6に示すように、アウタケーシング20及びサポートロッド24が水平方向に変位すると、ピストン本体13がダイヤフラム14により保持されつつ、水平方向の任意の軸の周りに揺動し、これにより振動が吸収されることになる。この際、そのピストン本体13のダイヤフラム14による保持位置よりも、サポートロッド24の下端部がウエルスラグ19aに枢支されている位置の方がずっと低い位置にあることから、ダイヤフラム14のばね特性は非常に柔らかなものとなり、このことで、アイソレータ2による水平方向の除振性能が、図5に一例を示すように、上下方向と同様の非常に優れたものになる。
【0038】
(空気圧の制御)
この実施形態に係る精密除振台Aは、前記の如く4つのアイソレータ2,2,…によって床からの振動を上下及び水平方向の両方について殆ど絶縁することができるとともに、その各アイソレータ2,2,…における空気室15及びベローズ27,27の空気圧をコントローラ30により制御して、搭載盤3に対し上下方向及び水平方向の制御振動を積極的に付加することにより、該搭載盤3上の機器から発生する振動をも抑制できるようにした、いわゆるアクティブ制振機能を有するものである。
【0039】
すなわち、前記各アイソレータ2には、図7に模式的に示すように、トッププレート21の上下方向の変位及び加速度をそれぞれ検出する非接触式変位センサ31及び加速度センサ32と、同じく水平方向の変位及び加速度をそれぞれ検出する変位センサ33及び加速度センサ34とが配設されていて、該各センサ31〜34からの出力信号がそれぞれコントローラ30に入力される。一方、各アイソレータ2毎の空気室15等への空気通路には図示しないホースを介して個別にサーボ弁35,35,…が接続されていて、この各サーボ弁35が前記コントローラ30からの制御信号を受けて作動することにより、各アイソレータ2毎の空気室15やベローズ27,27に対する空気の給排流量がそれぞれ調整されて、当該空気室15及びベローズ27,27の空気圧が速やかに変更されるようになっている。
【0040】
尚、図示しないが、前記サーボ弁35は、圧搾空気を貯留するリザーバタンクに接続されており、同様に該リザーバタンクに接続された電動ポンプが前記コントローラ30からの制御信号を受けて作動することにより、リザーバタンク内の空気圧が所定値に維持されるようになっている。
【0041】
前記コントローラ30によるサーボ弁35の制御の内容は、例えば水平方向の制御について各アイソレータ2毎に概ね図8のブロック図に示すようになっていて、コントローラ30は、予め設定した基準位置の情報と、水平方向の変位センサ33及び加速度センサ34からの信号とに基づいてサーボ弁35のデューティ比を演算して、制御信号を出力する。この制御信号を受けたサーボ弁35によりアイソレータ2のベローズ27の空気圧が調整されるとともに、床からの振動と搭載盤3上の機器が発生する振動とが外乱fとなって、該アイソレータ2のトッププレート21が振動する。このとき、図に仮想線で囲んだ制御対象である前記トッププレート21の水平方向加速度(X″)が加速度センサ34により検出されて、コントローラ30にフィードバックされるとともに、この加速度(X″)の2乗に相当するトッププレート21の水平方向変位(X−X0)が変位センサ33により検出されて、コントローラ30にフィードバックされる。
【0042】
そして、前記加速度センサ32からの信号に基づいて、トッププレート21の水平方向振動をキャンセルするように、即ち、トッププレート21に対してその水平方向振動と略同じ振幅で逆位相の水平方向の制御振動を付与するような、ベローズ27の空気圧の変化状態が求められるとともに、変位センサ33からの信号に基づいて、トッププレート21の基準位置からの偏差が小さくなるようなベローズ27の空気圧が演算され、それら2つの条件をできるだけ満足する空気圧となるように、サーボ弁35のデューティ比が演算される。
【0043】
尚、そのような空気圧の制御は、その応答性が限界となって、あまり高い周波数の振動には追従できないから、前記のアクティブ制振制御は概ね200Hz以下の周波数の振動に対応して行われることになる。また、前記サーボ弁35のデューティ比の演算については従来周知の種々の手法を用いればよく、ここでは具体的な記載は省略するが、例えばPID制御を適用することができる。或いは、トッププレート21の上下方向の加速度、速度及び位置の情報を状態変数とする状態フィードバック制御を適用することもでき、さらに、搭載盤3上の機器が発生する振動が既知のものであれば、これをリファレンス信号としてフィードフォワード制御を行うようにしてもよい。
【0044】
そうして、前記のアクティブ制振制御によって、この実施形態の精密除振台Aによれば、搭載盤3上の機器の制振を行えるだけでなく、前記図4、5に示すような極く低い周波数域でのアイソレータ2の共振現象をなくして、例えば図9に一例を示すように、除振性能を一層、向上することができる。すなわち、同図に破線で示すグラフ(P)は、アクティブ制振制御を行わないもの(以下、パッシブタイプという)の水平方向振動の伝達特性を対数目盛で表示したもので、前記図5に示すものと同じく、極めて低い周波数域に共振点R1が現れている。一方、アクティブ制振制御を行った場合には、図に実線で示すのグラフ(A)のように共振点R1がなくなって、パッシブタイプのものよりもさらに優れた除振性能が得られることが分かる。
【0045】
ところが、斯かるアクティブ制振制御をこの実施形態のものと同様の構成を有する従来の精密除振台に適用したときに、アクティブ制振の制御領域である比較的高い特定の周波数域(約60〜100Hzくらい)において一時的に水平方向の振動が大きくなったり、除振効果が低下したりするというという新しい問題が発生した。そして、その原因を解明するために本願発明者らが鋭意、研究を行ったところ、アクティブ制振制御を行わない状態でも、前記図9のグラフに仮想線で示すように、ちょうど前記した特定の周波数域においてピークの低い別の共振点R2が現れ、これにより、除振性能がやや劣化していることを見出した。
【0046】
斯かる共振点R2は、前記したようにピークの低いものであり、しかも、通常は周囲の空気を媒介して搭載盤3上の機器に直接的に伝達されるいわゆる環境騒音の周波数域に含まれることから、この環境騒音によりマスクされて、何ら問題とはならないものであった。しかし、アクティブ制振制御を行うようにした場合、その制御領域に共振点があると、機器及び搭載盤3からの振動の位相と該振動を打ち消すために付加する制御振動の位相とが僅かにずれただけで、却って振動が増幅されることになり、このことで、前記の如き問題が生じていると考えられる。
【0047】
そして、そのような共振点R2は、各アイソレータ2におけるジンバルピストンの揺動運動に起因するものであると推定される。すなわち、前記したような精密除振台Aにおいては搭載盤3やその上の機器をマスとする主振動系に対して、各アイソレータ2のピストン本体13及びピストンウエル18が中間的なマスとなり、この中間マスとダイヤフラム14とによって中間振動系が構成されることになるが、この中間マスは前記主振動系のマスに比べて格段に軽量である。
【0048】
ここで、上述したように、前記主振動系の水平方向変位は主としてジンバルピストンの揺動によって得られるものであるが、その場合のダイヤフラム14のばね特性は前記の如く質量の大きい主振動系のマスに対しては十分に柔らかいものであり、このことで、共振点R1が前記の如く極めて低い周波数域に現れるものである。一方、前記中間振動系のマスは主振動系と比較すると格段に軽量であるから、同じダイヤフラム14のばね特性がその中間振動系においてはあまり柔らかなものとはいえず、結果的に該中間振動系の共振点R2が前記したように比較的高い周波数域に現れることになるのである。
【0049】
このような問題点に対し、本願発明者らは、共振点Rがジンバルピストンの揺動運動によるものであることに着目し、この実施形態1のアイソレータ2では、本願発明の特徴として、ピストン本体13を保持するダイヤフラム14のゴム材料を所定の高減衰材料からなるものとして、該ダイヤフラム14によって直接的に振動の減衰を図ることにより、共振倍率を低下させるようにした。すなわち、従来までのジンバルピストンを用いたアイソレータでは、通常、ダイヤフラムのゴム材料として主にクロロプレンゴムを用いており、その場合のゴム材料の特性は、例えば加硫後の硬度が50度くらいであり、また、損失係数が0.2くらいのものであった。
【0050】
これに対し、この実施形態のアイソレータ2では、ダイヤフラム14のゴム材料として、例えば、加硫後の硬度が60度〜80度になるよう、フッ素ゴムを主成分として用いており、このときのゴムの損失係数は約0.〜1.0くらいになる。そして、この場合には、ピストン本体13の揺動運動によるトッププレート21の水平方向変位に対しては何ら悪影響を及ぼすことがなく、一方、該ピストン本体13の揺動運動の共振倍率を極めて効果的に低下させることができる。この結果、前記図9に実線で示すように、共振点R2のピークが大幅に低下して、斯かる共振現象によって引き起こされるアクティブ制振制御への悪影響が実質的に解消できるのである。
【0051】
尚、前記ダイヤフラム14のゴム材料としては、前記フッ素ゴム以外にも、例えば、ブチルゴムを主成分とするもの(硬度は30度〜70度)、エポキシ化天然ゴムを主成分とするもの(硬度は50度〜70度)、ニトリルゴムを主成分とするもの(硬度は30度〜60度)、ポリノルボルネンゴムを主成分とするもの(硬度は30度〜60度)、シリコンゴムを主成分とするもの(硬度は30度〜70度)等とすればよく、いずれの場合も、ゴム材料の損失係数が0.5〜2.0の範囲の値になることが好ましく、また、ゴム材料の硬度は、30〜50度の範囲の値とすることがさらに好ましい。
【0052】
また、ピストン本体13を保持するダイヤフラム14としては、前記実施形態1のもののように繊維補強をしたものでなくてもよいが、この場合には、例えば、ブチルゴム等のゴム材料を用いるとともに、そのゴム材料の加硫後の硬度を約70度とし、かつ損失係数を約1.0とすることが望ましい。
【0053】
したがって、この実施形態1に係る精密除振台Aによれば、まず、空気ばね式アイソレータ2,2,…のピストンにジンバル機構を組み込んだ構成により、従来までのものと同様に上下方向及び水平方向の両方向について広い周波数領域に亘る優れた除振効果が得られる。
【0054】
また、アイソレータ2の空気圧のアクティブ制御によって、上下方向及び水平方向の極低周波域での共振点R1をなくし、除振性能をさらに向上させるとともに、搭載機器事態から発生される振動をも抑制することができる。
【0055】
そして、本願発明の特徴として、前記アイソレータ2における上下方向空気ばねのダイヤフラム14のゴム材料として、従来までのクロロプレンゴムに比べて高い減衰特性を有するフッ素ゴムを用いることで、該ダイヤフラム14及びピストン本体13等からなる中間振動系の共振点R2のピークを大幅に低下させて、斯かる共振現象に起因する前記アクティブ制振制御への悪影響を実質的に解消することができる。
【0056】
尚、前記したように共振点R2のピークを大幅に低下できることは、この実施形態のようなアクティブタイプの除振台Aだけでなく、いわゆるパッシブタイプの除振台においても有効であり、これにより、無振動化の要求が現在よりもさらに厳しくなったとしても、十分に対応することが可能になる。
【0057】
(変形例)
前記実施形態1では、各アイソレータ2においてピストン本体13を保持するダイヤフラム14自体を高減衰材料からなるものとしているが、これに限らず、例えば図10に示すように、ダイヤフラム14と並列にピストン本体13を弾性的に保持する別の可撓性部材として、高減衰材料のシート部材を追加するようにしてもよい。例えば、図10に示す変形例のアイソレータ2′は、前記実施形態1のものとは異なり、水平方向の空気圧アクチュエータのないパッシブタイプのものである。この変形例のものはいわゆるアウタケーシング20を有さず、搭載盤3を支持する荷重受部材として円盤状のロードディスク36を備えているが、それ以外の構成については前記実施形態1のアイソレータ1と同じである。
【0058】
そして、前記変形例のアイソレータ2′では、ピストン本体13の上面の外周側からその外側に位置する締付けリング17の上面に跨るように、フッ素ゴム等の高減衰ゴム材料からなる環状のシート部材37が全周に亘って貼着されている。また、該シート部材37の上面の外周側及び内周側にはそれぞれ環状の押さえ板38,39が配設されて、図示しないボルトにより締付けリング17及びピストン本体13に締結されており、これにより、前記シート部材37は、その外周側が締付けリング17と環状の押さえ板38とにより挟持される一方、内周側がピストン本体13と環状の押さえ板39とにより挟持されていて、その中間に、下方に凸に湾曲する環状ロール部が形成される。このロール部には、図示しないが、周方向に等間隔を空けて上下に貫通する空気抜きの穴が形成されている。
【0059】
この変形例のアイソレータ2′の場合、ジンバルピストンの揺動に対してシート部材37が弾性変形することにより、高い減衰力が得られることになるので、ダイヤフラム14自体は従来までと同じクロロプレンゴムのものであっても、前記実施形態1と同様の作用効果が得られる。尚、前記変形例の如くシート部材37を全周に亘って設けることは必ずしも必要ではなく、ピストン本体13の上面から締付けリング17の上面に跨るような矩形状のゴムシート部材を複数、用意して、このゴムシート部材を周方向に所定の間隔を空けて、放射状に配設するようにしてもよい。
【0060】
(実施形態2)
図11〜13は、本願発明の実施形態2に係るアイソレータ2の構成を示し、このアイソレータ2の構造は前記実施形態1のものと同様であるから、以下、同一部材には同一の符号を付して、その説明は省略する。そして、この実施形態2のアイソレータ2の特徴は、ピストン本体13を保持するダイヤフラム14を、従来までのものと同じく相対的に減衰率の低いクロロプレンゴムからなるものとしておいて、その代わりに、該ダイヤフラム14と並列にピストン本体13の揺動を規制する板ばね40を配設したことにある。
【0061】
すなわち、この実施形態2のアイソレータ2の場合、図12に示すような円環状の板ばね40をピストン本体13の上面の外周側から、その外側に位置する締付けリング17の上面に跨るように取り付けている。この板ばね40は、鋼製の薄板をプレス加工してなるものであり、締付けリング17の上面に重ね合わされる外周側部40aに周方向に等間隔を空けて8個のボルト孔41,41,…が形成されるとともに、ピストン本体13の上面に重ね合わされる内周側部40bにも同様に8個のボルト穴41,41,…が形成されていて、図示しないが、それらの各ボルト孔41を貫通するボルトによって、前記締付けリング17及びピストン本体13に締結固定されるようになっている。
【0062】
前記外周側部40aと内周側部40bとに挟まれた板ばね40の中間部40cには、周方向に延びる複数の円弧状スリット42、42,…が形成されていて、その中間部40cの剛性が該板ばね40に直交する上下方向について相対的に低下せしめられている。詳しくは、前記スリット42,42,…は、軸線Zの周囲に同心状に配置され、その最外周側から最内周側まで互いに径方向に離間した6つのグループに分けられるとともに、その最外周側の第1グループから最内周側の第6グループまでの各グループが、それぞれ、周方向に互いに等間隔を空けて配置された4つのスリット42,42,…からなるものである。
【0063】
また、前記スリット42,42,…のうち、第1、第3及び第5グループの各スリット42は、異なるグループのスリット同士が周方向について同じ位置にあり、第2、第4及び第6グループの各スリット42も同様である。そして、径方向に隣接する2つのグループのスリット42,42,…は、そのうちの一方のグループの各スリット42の周方向両端側が他方のグループのスリット42,42と径方向に互いに重なるように、すなわち、周方向に千鳥状に配置されている。
【0064】
このような構成の板ばね40は、その外周側部40aと内周側部40bとが軸方向に相対変位する場合に、中間部40cが全周に亘って略均等に変位するのであれば極めて大きな可撓性を有するものなので、該板ばね40をピストン本体13及び締付けリング17に取り付けた状態で、該ピストン本体13の上下方向の変位におけるばね特性は殆ど硬くなることがない。一方、該ピストン本体13が揺動して、例えばピストン本体の左側が沈む一方、右側が浮き上がったような状態では(図6参照)、板ばね40の外周側部40aに対して内周側部40bの左側が下方に沈む一方、右側が浮き上がるように変位し、このときに中間部40cの一部がねじられて強く反発することになるから、該板ばね40により、ピストン本体13の揺動運動が規制されることになる。
【0065】
言い換えると、前記板ばね40を配設したことで、ジンバルピストンの揺動運動のばね特性が硬くなるから、そのピストン及びダイヤフラム14に板ばね40を加えた中間振動系の共振点R2は、図13に示すように振動数の高い側に移動することになる。
【0066】
したがって、この実施形態2に係る精密除振台Aによれば、前記実施形態1のものと同様に上下方向及び水平方向の両方向について広い周波数領域に亘る優れた除振効果が得られるとともに、各アイソレータ2のダイヤフラム14と並列にピストン本体13の揺動を規制する板ばね40を配設したことで、高周波側の共振点R2をさらに周波数の高い側へ移動させることができる。このことで、自ずと共振のピークが低下するとともに、板ばね40のばね特性の設定によって前記共振点R2を例えば200Hz以上のアクティブ制御領域外にまで移行させるようにすれば、その共振に起因するアクティブ制振制御への悪影響を解消することができる。
【0067】
しかも、前記板ばね40がピストン本体13の揺動を規制する一方、該ピストン本体13の上下方向の変位については殆ど影響を与えないものなので、該板ばね40の追加によってアイソレータ2の上下方向の除振性能に及ぼす悪影響は最小限に抑制できる。
【0068】
尚、前記実施形態1、2等においては、アウタケーシング20をインナケーシング11に対して水平方向に変位させる空気圧アクチュエータとして、例えばベローズ27,27を設けているが、これ以外に、ダイヤフラム型の空気ばねを設けるようにしてもよく、或いは、例えば圧電素子等のような空気圧を用いないアクチュエータを設けることもできる。また、変形例のように水平方向のアクチュエータを設けないものであっても、本願発明を適用可能である。
【0069】
また、前記各実施形態において、上下方向の空気ばねの代わりに、例えば窒素ガス等を充填した気体ばねを用いることも可能である。
【0070】
さらに、前記各実施形態においては、本願発明の空気バネ式除振装置を用いて精密除振台Aを構成しているが、これに限らず、例えば、半導体製造装置等の防振支持のために、それらの装置に合わせて専用に設計した搭載盤を3〜4本のアイソレータ(除振装置)により支持する構成としたり、或いは、クリーンルームのグレーチング床へ埋め込む可動床を同様にアイソレータ(除振装置)により支持する構成とすることもできる。
【0071】
【発明の効果】
以上、説明したように、請求項1、2の発明に係る気体ばね式除振装置によると、空気ばねのピストンにジンバル機構を組み込んで、上下方向だけでなく水平方向についても固有振動数を十分に低周波側に設定し、このことで、広い周波数領域に亘って優れた除振性能を得られるようにする場合に、前記ピストンの本体部材を揺動可能に保持する可撓性部材を所定の高減衰材料により構成することで、該ピストン本体部材の揺動運動における共振のピークを低下させて、斯かる共振現象に起因する不具合を実質的に解消することができる
【0072】
また、請求項3の発明に係る気体ばね式除振装置によると、前記請求項1の発明と同様に空気ばねのピストンにジンバル機構を組み込む場合に、そのピストンの本体部材を保持するゴムのダイヤフラムと並列に、該ピストン本体部材の揺動を規制するように板ばねを配設することで、その揺動運動における共振点を周波数の高い側へ移動させて、斯かる共振現象に起因する不具合を実質的に解消することができる。
【0073】
請求項4の発明によると、アクティブ制振制御を行うようにした空気ばね式除振装置において、前記請求項1〜3の発明により、ジンバルピストンに固有のピストン本体部材の揺動による共振現象を実質的に解消できることが特に優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る精密除振台Aの全体構成を示す斜視図である。
【図2】 アイソレータ(空気ばね式除振装置)の縦断面図である。
【図3】 ピストン本体及びダイヤフラムのケーシングに対する取付け構造を示す分解斜視図である。
【図4】 アイソレータによる上下方向の除振性能の一例を示すグラフ図である。
【図5】 アイソレータによる水平方向の除振性能の一例を示すグラフ図である。
【図6】 アウタケーシングが水平方向に変位した状態の図2相当である。
【図7】 アイソレータのアクティブ制振制御システムの概略構成図である。
【図8】 アクティブ制振制御のブロック図である。
【図9】 アクティブ制振制御による水平方向の除振性能をパッシブタイプと対比して示すグラフ図である。
【図10】 変形例に係るパッシブタイプのアイソレータの構成を示す図2相当図である。
【図11】 実施形態2のアイソレータの構成を示す図2相当図である。
【図12】 板ばねの部品図である。
【図13】 実施形態2に係る図9相当図である。
【図14】 ジンバルピストンを有する従来例のアイソレータの模式図である。
【符号の説明】
A 精密除振台
Z 鉛直方向軸線
2 アイソレータ(除振装置)
3 搭載盤(被支持体)
10 ベースプレート(ケース部材)
11 インナケーシング(ケース部材)
12 開口部
13 ピストン本体(ピストン本体部材)
14 ダイヤフラム(可撓性部材)
15 空気室
18 ピストンウエル(下方延出部)
18b 中空部
21、36 トッププレート(荷重受部材)
24 サポートロッド(支持柱)
27 ベローズ(アクチュエータ)
30 コントローラ(制御手段)
31,33 変位センサ(検出手段)
32,34 加速度センサ(検出手段)
35 サーボ弁(空気圧調整手段)
37 ゴムシート部材(可撓性部材)
40 板ば

Claims (4)

  1. 被支持体の荷重を支持するピストンをケース部材上面の開口部に内挿して、該ピストンの下端面をケース部材の内部の気体室に臨ませるとともに、該ピストンの外周から前記開口部の周縁まで環状の可撓性部材により閉塞して、前記被支持体の荷重を弾性的に支持する気体ばねを構成した気体ばね式除振装置であって、
    前記ピストンは、被支持体の荷重を受ける荷重受部材と、この荷重受部材の下方に離間して前記可撓性部材が連結された筒状のピストン本体部材とからなり、
    前記荷重受部材には、その下部から前記ピストン本体部材の中心孔を貫通するように略鉛直下方に向かって延びる支持柱が設けられている一方、
    前記ピストン本体部材には、その下端部における内周側から前記支持柱を囲むように略鉛直下方に向かって延びる有底筒状の下方延出部が設けられていて、この下方延出部の底部において前記支持柱の下端部が枢支されており、
    前記可撓性部材が、前記ピストン本体部材をケース部材に対して揺動可能に弾性的に保持する、繊維材料で補強したゴム弾性膜のダイヤフラムであり、
    前記ゴム弾性膜は、前記ピストン本体部材の揺動運動の減衰率が所定以上に高くなるよう、ニトリルゴム、ブチルゴム、ポリノルボルネンゴム、エポキシ化天然ゴム、フッ素ゴム、シリコンゴムのうちの少なくとも1つを主材料とし、かつ、そのゴム材料の加硫後の損失係数が0.5〜2.0の範囲の値になるものとされていることを特徴とする気体ばね式除振装置。
  2. 被支持体の荷重を支持するピストンをケース部材上面の開口部に内挿して、該ピストンの下端面をケース部材の内部の気体室に臨ませるとともに、該ピストンの外周から前記開口部の周縁まで環状の可撓性部材により閉塞して、前記被支持体の荷重を弾性的に支持する気体ばねを構成した気体ばね式除振装置であって、
    前記ピストンは、被支持体の荷重を受ける荷重受部材と、この荷重受部材の下方に離間して前記可撓性部材が連結された筒状のピストン本体部材とからなり、
    前記荷重受部材には、その下部から前記ピストン本体部材の中心孔を貫通するように略鉛直下方に向かって延びる支持柱が設けられている一方、
    前記ピストン本体部材には、その下端部における内周側から前記支持柱を囲むように略鉛直下方に向かって延びる有底筒状の下方延出部が設けられていて、この下方延出部の底部において前記支持柱の下端部が枢支されており、
    前記可撓性部材は、前記ピストン本体部材をケース部材に対して揺動可能に弾性的に保持する、繊維材料で補強したゴム弾性膜のダイヤフラムと、これと並列に該ピストン本体部材を弾性的に保持するゴムのシート部材と、からなり、
    前記シート部材は、ニトリルゴム、ブチルゴム、ポリノルボルネンゴム、エポキシ化天然ゴム、フッ素ゴム、シリコンゴムのうちの少なくとも1つを主材料とし、かつ、そのゴム材料の加硫後の損失係数が0.5〜2.0の範囲の値になるものであることを特徴とする気体ばね式除振装置。
  3. 被支持体の荷重を支持するピストンをケース部材上面の開口部に内挿して、該ピストンの下端面をケース部材の内部の気体室に臨ませるとともに、該ピストンの外周から前記開口部の周縁まで環状の可撓性部材により閉塞して、前記被支持体の荷重を弾性的に支持する気体ばねを構成した気体ばね式除振装置であって、
    前記ピストンは、被支持体の荷重を受ける荷重受部材と、この荷重受部材の下方に離間して前記可撓性部材が連結された筒状のピストン本体部材とからなり、
    前記荷重受部材には、その下部から前記ピストン本体部材の中心孔を貫通するように略鉛直下方に向かって延びる支持柱が設けられている一方、
    前記ピストン本体部材には、その下端部における内周側から前記支持柱を囲むように略鉛直下方に向かって延びる有底筒状の下方延出部が設けられていて、この下方延出部の底部に前記支持柱の下端部が枢支されており、
    前記可撓性部材が、前記ピストン本体部材をケース部材に対して揺動可能に保持するゴムのダイヤフラムであり、かつ、該ゴムダイヤフラムと並列に、これよりも剛性の高い板ばねが前記ピストン本体部材の揺動を規制するように配設されていることを特徴とする気体ばね式除振装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1つにおいて、
    荷重受部材のケース部材に対する水平方向の加速度を検出する検出手段と、
    前記荷重受部材を前記水平方向に変位させるアクチュエータと、
    前記検出手段による検出値に基づいて、前記荷重受部材の振動を抑制するようにアクチュエータを作動させる制御手段とが設けられていることを特徴とする気体ばね式除振装置。
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