JP3909107B2 - 蛍光赤色及びマゼンタ耐水性インキジェット用インキ - Google Patents

蛍光赤色及びマゼンタ耐水性インキジェット用インキ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般にインキ、更に詳細に述べるとインキジェットプリンターにおいて使用されるインキに関する。
【0002】
【従来の技術】
郵便料金メーター又は料金別納郵便物の証印の押印のための料金別納印刷機において、赤色蛍光インキが使用されている。米国において料金別納郵便物の証印の印刷に使用されるインキは、米国郵政公社で使用される自動検索装置が使用できるように、赤色蛍光でなければならない。典型的な赤色蛍光インキの励起波長は254nm であり、発光は580 〜640nm である。この赤色蛍光インキで得られた像は、永久的、すなわち良好な耐水性、耐汚れ性及び耐光性、つまりこれらが95%以上でなければならない。更に、様々な支持体上のこれらの像は、増強されたコントラスト特性を示さなければならない。
料金別納郵便物の証印又は料金別納印刷機は、この証印の様々な情報を活用することができ、かつより正確な印刷及び証印の印刷品質が得られるように、デジタル印刷技術を使用するように開発されている。この増強された印刷物品質は、光学式文字読取装置(OCR) 、バーコード読取装置及び他の技術による、料金別納郵便物の証印のより容易な読み取りを可能にするであろう。
【0003】
デジタル印刷及び料金別納印刷の導入は、料金別納印刷に適したインキの存在によって、条件づけられているが、同時に特定のインキジェト技術によって機能を果たしている。現在、前述の基準に最も合致するインキは、インキジェットプリンターで使用されているマゼンタインキである。マゼンタ染料の選択の幅は非常に狭く、かつ入手できる最も鮮明なマゼンタ染料は蛍光性であるが、前述のマゼンタインキは偶然にも蛍光性である。数少ない入手可能な水溶性マゼンタ染料の1種として、酸性レッド52(Acid Red 52)がある。酸性レッド52は、満足できる水への溶解度を有しているが、耐水性は非常に低い。従って、マゼンタ酸性レッド52インキの欠点は、水に晒された際のインキブリードである。現在使用されているマゼンタインキの別の欠点は、これらのインキによって得られた印刷物が、水に晒された際に、隣接する封筒の裏側に裏移りすること、並びにこの裏移りした印刷物が、蛍光シグナルの増強を示すことである。この蛍光インキを希釈すると、濃度消光作用の低下により、前述の欠点を引き起こす。従って、現在のマゼンタインキは、バックグラウンドの裏移りの蛍光を示す。これにより、封筒に印刷された実際の証印として現れた証印ではないものを生じることになる。これにより、郵政公社の装置が、料金別納郵便物の証印を誤って拒否することを生じることになる。従ってこの作用は、郵政公社の経費を増大する。
【0004】
従来の耐水性があるピエゾ電気インキジェット用インキの別の欠点は、これらのインキが、水の代わりに様々な有機溶媒を使用していることである。様々な有機溶媒、例えばトリプロピレングリコールメチルエーテル又は他のグリコールエーテル類が、耐水性を高めるために使用されている。これらを使用する理由は、これらの溶媒が水に不溶な着色剤を溶解又は分散するからである。しかし、安全性及び相溶性の必要要件のために、インキジェットの印刷ヘッドに使用されている様々なプラスチック材料について、主な溶媒として水が望ましい。プラスチック材を使用する場合に溶媒として水が望ましいのは、水が前述の有機溶媒よりも攻撃性が非常に低いからである。インキジェットプリンターの部品に広範に使用されるプラスチック材は、インキローラー泡(inker foam)、カートリッジ材料、接着剤、印刷機基材などである。これらの部品は、例えば、アクリロニトリルスチレン(AS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、及びアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS) 製とすることができる。従って、有機溶媒を使用する際の欠点は、溶媒がプラスチック材を攻撃することである。一旦プラスチック材が攻撃されると、印刷機は適正に作動しなくなる。水をベースにしたインキは、ほとんどのインキジェットプリンターの構成部品に対し不活性であるので、主な溶媒として望ましい。
【0005】
インキジェットプリンターにおいて蛍光インキが使用される場合は、この蛍光インキは、一定の粘度及び規定された表面張力のような、一定の物理特性を有さなければならない。現在のピエゾ電気インキジェットプリンターにおいて使用される液体インキの粘度は、1.5 〜20cps であり、かつ熱式(thermal) インキジェットプリンターにおいては、非常に低い(1〜5cps) 。液体インキジェットプリンターのインキの所望の表面張力は、30〜45dyn/cmでなければならない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
現在の水をベースにしたインキジェット用インキの欠点は、このインキが、印刷機の作動時及び印刷機の作動の合間に、印刷機のノズル部で乾燥しやすいことである。
インキジェットプリンターにおいて使用されるインキの特性のひとつは、デキャップ(decap) 時間であり、これはインキが、開いたノズルにおいて空気に晒される間に液体であり続け、かつ液滴の発射が可能である時間の長さである。このインキ中の固体の沈殿は、インキの劣悪化又は目詰まりを生じ、かつしばしばその溶媒の蒸発のために、気/液面での固形物の沈殿又は晶出を引き起こす。
水をベースにしたインキの別の欠点は、これらが、良好な溶解度を実現するために、樹脂を含有しない“裸の”(純粋な)染料を使用しなければならないことである。これらの染料は、直接染料、酸性、塩基性又は反応性であることが好ましい。
この溶媒中の着色剤物質の溶解度が十分でない場合には、その液滴安定性及び印刷物品質は劣る。保存期限に影響を与える長期間の溶解度は、温度及び湿度の様々な環境条件下での、該溶媒中の着色剤の溶解度によって決まる。水への溶解度が高い染料は、作製された印刷物の耐水性及び耐汚れ性を欠くことになる。印刷物の水への再溶解によって、これらは生じる。
【0007】
染料をベースにしたインキの別の欠点は、これらが、へりが荒く、かつにじみとも称される輪郭のはっきりしない文字を伴う印刷物を作製することである。前述の欠点は、ドットの間の重なりが少ない、240dpiのような低い解像度において、より明らかである。
従って、染料に代わって、水に不溶性の顔料が好ましい。但し、顔料の分散が沈降及びゲル化に対して安定化するという条件下である。
顔料を使用する問題点は、これらの分散平衡が崩れやすいことである。この分散は、温度、湿度及び不純物の変化によって、容易に不安定化される。
別の典型的液体インキの特性は、紙に浸透し、かつ吸収によって迅速に乾燥するインキの能力である。迅速に浸透するインキの別の問題は、インキの浸透に伴って、光学濃度が減少することである。この作用は、良好な印刷物品質を実現するために、補償されなければならない。良好な印刷物品質は、吸光度が高い染料を用いて実現することができる。これは、消光のために、印刷物の蛍光シグナルに悪影響(シグナルの低下)を及ぼすことがある。
【0008】
先行技術のインキの別の問題点は、非常に多様な支持体上において、これらが一貫した印刷物品質をもたらさないことである。郵便料金メーターのインキは、非常に多様な紙の封筒において使用されなければならない。この紙の構成成分は、蛍光を阻害するか、もしくはこれらの印刷物の光学濃度に悪影響を及ぼす。ホットメルトインキのようなワックスをベースにしたインキは、液体インキと同じように、紙と相互作用しない。従って、紙と相互作用する場合、液状料金別納印刷用インキは、非常に多様な封筒において、一貫した蛍光及び光学濃度を持つことが求められる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、インキジェットプリンターで使用することができ、米国郵政公社の料金別納印刷機及び/又は自動化適合性の必要要件を満たす、液体蛍光インキを提供することによって、先行技術の欠点を克服する。本発明のインキは、料金別納郵便物の証印の走査光に、スペクトルの緑の領域を使用する場合、現在の米国郵政公社の光学式文字読取装置及び/又はバーコード読取システムによって、判読することができる。本発明のインキは、職場環境において使用する際に安全である。更にこのインキは、無毒であり、かつ現在のインキジェットプリンターの印刷ヘッドにおいて使用される範囲の材料に対して不活性である。インキジェット用印刷ヘッドの材料の一部は、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)及びポリフェニレンオキシドである。本発明のインキの利点のひとつは、このインキが、非常に多様な支持体上で、永久的な像(耐水性及び耐光性がある像)を提供することである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本願明細書において明らかにされたインキは、水/補助溶剤系を溶媒とする可溶性トナー溶液をベースにしている。本発明のインキによって得られた印刷物は、放水又は水への浸漬のいずれかによる水暴露に対し抵抗性がある。更に、これらのインキは、水に晒されている間、及びこれらが他の紙片に押し付けられている時に、裏移りしない。本発明のインキは、主な溶媒(35%を越える)として水、及び他の水溶性の補助溶剤をベースにしている。この水溶性有機溶媒は、湿気の保持(吸湿性)により、ノズルの目詰まりの防止をもたらし、及び同時にそのインキ安定性を改善するのに役立つ。この有機溶媒の別の役割は、該インキの表面張力を減少し、かつ紙での広がり及び乾燥時間を増大することである。この補助溶剤の最後の役割は、その担体と相溶性がある様々な種類のトナーの範囲において、トナーの溶解度を改善することである。このトナーは、水に溶解するかもしくは一部溶解する樹脂、又は水溶性有機溶媒の中の、染料の固溶体である。
【0011】
この水溶性溶媒は極性を有す。溶媒の極性は、溶媒と溶質の間の相互作用をもたらす全ての分子特性の和によって、順に決定された溶媒の全溶媒和の能力である。これらの分子間力は、クーロン力、指向性、誘起力、分散力、電荷移動力及び水素結合力である。この溶媒の極性は、物理的パラメーターによって定量的に決定される:εは誘電率、及びμは永久双極子モーメントである。誘電率は、電荷を分離し、かつその双極性分子を配向させる溶媒の能力を示す。分子の永久双極子モーメントは、双極子ユニットの電荷の発生及び2個の双極子電荷の離れている距離によってもたらされる。全体の溶媒極性を決定するために使用される別の経験的パラメーターは、様々な溶液中の有機化合物のλmax によって測定される有機化合物の標準吸光度(Et ) である。蒸気圧の低い水溶性有機溶媒の例は、グリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレン及びポリプロピレングリコールである。
これらの水溶性有機補助溶剤は、単独、又はこれらを2種以上組み合わせて使用することができる。前述のインキ配合において使用された補助溶剤は、全般的に水と混和性であり、広範な種類の極性樹脂に対し良好な溶媒であり、不揮発性(室温での蒸気圧が0.1mm/Hg未満)で、かつ通常使用されるプラスチック材に対し不活性である。更に、印刷物の迅速な乾燥及び定着を改善するという観点から、本発明のインキ組成物は、他に、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールのような、非常に揮発性の一価のアルコール類を含むことが好ましい。
【0012】
本発明のインキ組成物において、水溶性有機溶媒単独で使用する場合、使用する水溶性有機溶媒のヒルデブランド溶解パラメーター(SP 値)は、12cal/cm3 以上が好ましい。更にこの水溶性有機溶媒を2種以上の溶媒を組み合わせて使用する場合には、この混合された有機溶媒のSP値は、12cal/cm3 以上が好ましい。混合された溶媒のSP値は、下記式で決定される。
δMIX =(X1V1δ1+X2V2δ2+X3V3δ3+・・・+Xn V nδn ) /(X1V1+X2V2+X3V3+・・・+Xn V n )
(式中、δは各溶媒のSP値を表し、X は混合された溶媒中の各溶媒のモル分率、V は各溶媒のモル体積、及びn は溶媒の種類を表す数字で、2以上の整数である。)。使用することができる他の溶媒は、2-ピロリドン、N-メチルピロリドン、スルホラン、γブチルラクトンなどである。
【0013】
このインキ配合物において使用する有機補助溶剤の吸湿性は、インキジェット用ノズルでの乾燥を防止し、その結果印刷ヘッドでのインキの信頼性を高める。
本発明のインキの更なる利点は、インキの保存期限を延長するような可溶性トナーの水及び補助溶媒への高い溶解度である。部分的にハンセン(Hansen)溶解パラメーター(δ δ (分散)、δp (極性)、δh (水素結合))で表わされるこれらの溶媒の一般的特性は、下記のものである。低い分散溶解パラメーターδ δ (7〜8.3)の溶媒については、これらはδh >8.0 、δp >5.0 でなければならない。例えば、ジエチレングリコール(δ δ が7.9 )、トリエチレングリコール(δ δ が7.8 )である。高い分散溶解パラメーターδ δ (8.4〜10.0) の溶媒については、これらはδh >5.0 、δp >8.0 〜8.7 でなければならない。このいくつかの例は、2-ピロリドン、N-メチルピロリドン、スルホラン、γブチルラクトンなどである。
【0014】
使用された水又は溶媒系における本発明のインキの着色剤の溶解度の増加により、このインキを非常に有効にし;かつ効果的噴射能をもたらす。従って、良好な印刷物品質が得られる。補助溶剤混合物である水/補助溶剤溶液に対しては、グリコールエーテルが添加される。このグリコールエーテルは、染料の安定剤、湿潤剤及びカップリング剤として役立つ。これらのグリコールエーテルは、分子内で水素結合している。従ってこれらは、橋かけ溶媒として作用し、かつそれらの周辺環境の極性又は非極性の性質を確かなものとする。これらのグリコールエーテルは、極性樹脂と共に極性溶媒として作用することができ、極性の少ない樹脂と共に、非極性溶媒として作用する。従って、これらは、比較的非極性の樹脂の水への溶解に役立つ。グリコールエーテルの例は:ジエチレングリコールエチルエーテル;テトラエチレングリコールジメチルエーテル;トリプロピレングリコールイソプロピルエーテル;トリプロピレングリコールエーテル;ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル;トリエチレングリコールエチルエーテル;ジエチレングリコールブチルエーテル;ジエチレングリコールプロピルエーテル;及びプロピレングリコールブチルエーテルである。これらのグリコールエーテルは全て、粘度が20cps未満でなければならない。このグリコールエーテルの別の非常に重要な役割は、これらが強力に紙に浸透することである。
【0015】
本発明のインキ配合物は、水性担体媒質、“水様”有機極性溶媒、樹脂マトリックス中にカプセル封入された蛍光染料を含有する水溶性トナー、及びプロピレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコール又はトリエチレングリコールブチルエーテルなどの補助溶剤浸透剤からなる。
酸性樹脂をベースにしたトナーを溶解するためには、非イオン性界面活性剤を添加しなければならない。この非イオン性界面活性剤は、HLB 値が8〜15である。これらの界面活性剤は、ノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エトキシレート、又はデシル及びトリデシルアルコールエトキシレートのクラスに属する。
ジメチルヒダントインのような他の添加剤を、優れたデキャップ性能をもたらすために、使用することができる。得られるインキは、蛍光であり、色が鮮明であり、非常に多様な支持体/封筒において、耐水性である。更にこれらは、無毒であり、かつほとんどの印刷ヘッドに使用された材料に対して、不活性である。
これらのインキは、速乾性を示し、保存が安定であり、かつ優れた印刷物品質及び永久性を有する画像を生じる。本質的には、本発明のインキ配合物は、染料の代わりに、樹脂マトリックスにカプセル封入された染料を含有するトナー類を使用する、水/補助溶剤をベースにしたインキである。これにより、このインキ配合物の主な溶媒は水であると同時に、この樹脂によって保護された染料は、水に晒された場合及び水性環境において、ブリードを生じない。従って、得られる印刷物は耐水性がある。
【0016】
水をベースにしたインキは、水を30〜60%含有するように、配合することができ、更にグリセロール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール(比較的粘度が低い)のような、水溶性及び水様の追加の補助溶剤類、及び/又は2- ピロリドン又はN-メチルピロリドン又はγブチルラクトン又はスルホランのような、他の極性溶媒と共に、使用することができる。前述の溶媒は、全て不揮発性であり、吸湿性であり、かつ同時に水に易溶であり、このことは粘度を上昇する。前述の溶媒類は、2.3 以上という、高い双極子モーメントを有し、好ましくは3 以上であるが、かつ5 以上である高い水素結合溶解パラメーターを有する。トナー、水/補助溶剤及び浸透剤の組み合わせは、所望の粘度に調節しなければならない。
前述の溶媒類は、該当する法令及び規制によって定められた、政府の定めた全ての安全基準に合致しなければならない。従って、安全な溶媒を、軽度又は中等度の皮膚及び目の刺激指数、及び1g/kg 以上の半減期致死量を示す溶媒と定義することができる。
【0017】
このインキ配合物の別の特徴は、プロピレングリコール、n-ブチルエーテル又はトリエチレングリコールブチルエーテルなどの、グリコールエーテルのような添加剤の使用が、耐水性及びインキの紙への浸透速度を改善することである。更に、前述の溶媒は、該染料の安定化に強力に作用する。この浸透剤は、トナーの、紙繊維のより深部への染み込みを助け、その結果該樹脂から染料が離れることを阻止するという事実によって、耐水性が改善される。
トナー、すなわち樹脂にカプセル封入された染料の使用は、溶液に可溶性染料に類似の溶解性能、及び紙の上の顔料を生じる。
この着色剤の溶解度は、十分に高いので、保存期限、又は噴射安定性において問題を引き起こすことはない。同時に、このインキが紙に衝突すると、水に不溶であるか、もしくはコーヒー、漂白剤又は印刷物に晒すことができる他の液体など、紙と接触するかもしれない他の材料に不溶性とならなければならない。1年以上の所望の保存期限は、ジメチルヒダントイン/ホルムアルデヒドのような非常に易溶性のトナーを用いて、もしくは非イオン性界面活性剤酸性樹脂(ポリエステルポリアミド)を添加することによって達成される。この非イオン性界面活性剤は、濃度が微量から3%の、HBL が8〜13である、トリデシルアルコールアルコキシレート又はノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールに属する。
【0018】
染料の代わりにトナーを利用する別の利点は、トナーが不動化され、かつ樹脂によって保護されるために、その蛍光シグナルを失わず、かつ純粋な染料のような濃度消光作用がないことである。これは、染料間で相互作用又は衝突が生じないためであり、従って発光が再吸収される。従って、このトナーが紙に載せられた後、溶媒が蒸発及び/又は吸収された後、このトナーの特性は、樹脂による保護のために、染料よりも顔料に似たものとなる。更に、印刷された像のトナーの可溶化は、該染料が樹脂によって保護されるという事実のために妨げられる。従って、蛍光トナーの使用により、二重の効果、すなわちそのカートリッジ及び印刷ヘッドの中のインキ溶液における染料としての機能、並びに紙に印刷した際の顔料としての機能を得ることができる。着色したインキに似た他の作用は、増強されたコントラスト、高い透明度、像の永久性及び優れた縁端の鮮明度を含む。更に、このトナー/溶媒混合物には、“遊離”染料が、そのコントラストを増強するために添加される。蛍光インキの場合は、これらの染料は、蛍光又は非蛍光であることができるイエローダイの群から、主に選択される。いくつかの例は、C.I.ダイレクトイエロー86、C.I.酸性イエロー210 、C.I.塩基性イエロー40、C.I.塩基性イエロー51、C.I.塩基性イエロー2 などである。このインキに添加された純粋な染料は、前述の溶媒混合物に可溶性であり、かつ溶媒、酸性、直接染料、又は塩基性染料の範疇に属する。使用される濃度は、0.1 〜3.0 %である。
【0019】
本発明のインキ配合物は、インキジェットプリンターにおいて使用することができ、かつその印刷機に使用された材料に対し不活性であるような、蛍光インキを提供する。本発明のインキ配合物において使用することができるインキジェットプリンターのある例は、郵便料金メーターシステムのインキジェットプリンターである。これらのシステムは、しばしば郵便料金証明装置、郵便料金印刷とも称される。ひとつの郵便料金メーターシステムは、郵便料金メーターシステムで分配されたあらゆる郵便料金の記録を保持するための、上昇レジスター(ascending register)、並びに客がそのメーターシステムから購入した郵便料金の量を記録を保持するための、下降レジスター(descending register) を具備している。他の郵便料金証明システムも、世界中で広く使用されている。これらの様々なシステムにおいて、このインクジェットプリンターは、郵便料金の証印を印刷するために使用される。
【0020】
本発明にしたがったインキ組成物は、下記を含む:蛍光トナー又はその混合物を5 〜15%;水を35〜55%;水溶性有機溶媒である補助溶剤を15〜50%;又はそれら及びグリコールエーテルの混合物を添加剤として3 〜15%である。可溶化又はpH安定性のために使用することができる他の薬剤は、pHの変更のための食品グレード又は化粧品の、揮発性が低いアルカリ成分、又は酸性成分である。不揮発性アルカリ成分の特に好ましい例は、アルカノールアミンを含み、例えばモノエタノールアミン、N-N-ジメチルエタノールアミン、N-N-ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-N-ブチルジエタノールアミン及びトリイソプロパノールアミンである。
本発明のインキ組成物は、ドロップオンデマンド方式のインキジェット技術に関する、いずれかのインキジェットプリンターでの使用に適している。しかし、ピエゾ電気式インキジェット技術において、特に有用である。
【0021】
蛍光トナーは、極性樹脂マトリックス中の染料の固溶体と定義される。この蛍光染料は、キサンテン、トリアリールカルボニウム、シアニンなどの各種染料群に属することができる。更にこの染料の範疇は、直接染料、溶剤染料、酸性染料又は塩基性染料を含む。このトナー中の染料の濃度は1〜8%である。適当な染料の例は、酸性レッド52、塩基性レッド1 、塩基性バイオレット11、ローダミン101 、ダイレクトレッド9 、酸性レッド249 、酸性イエロー23、溶剤イエロー44、溶剤イエロー43、溶剤イエロー135 、塩基性イエロー40などである。他の適当な多くの染料を使用することができる。インキジェットプリンター用インキのために現在使用されている染料のいずれかを、本発明のインキ配合物の中の染料として使用しうることが意図されている。これらの染料のいずれかを溶解するために使用される樹脂は、トリアジンホルムアルデヒドスルホンアミドの種類に属し、かつパラトルエンスルホンアミドと架橋結合している、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド又はベンゾグアナミンホルムアルデヒドのいずれかであることができる。使用することができる他の樹脂は、ポリエステル/ポリアミドである。前述の樹脂は、重量平均分子量(Mw) 1000 未満と小さく、かつ酸価が高い(90〜150 )。別の樹脂マトリックスは、水への溶解度が良いジメチルヒダントインホルムアルデヒドである。一般に、これらの樹脂は、非常に分子量が低く、好ましくは1000未満である。トリアジンアミノホルムアルデヒドは、ポリエステル/ポリアミド樹脂であっても、帯電していない。ポリエステル/ポリアミド樹脂の酸価は50以上であり、かつ最後の2種の樹脂は、トリアジンアミノホルムアルデヒドよりも水への溶解度が勝っている。
【0022】
使用することができる水溶性溶媒は、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコールのグリコール、及びグリセロールを含む群に属す。エーテルのグリコール族及びそれらの混合物のいずれかも、使用することができる。他の使用することができる、粘度が低く、安全な“水様”溶媒は、2- ピロリドン、γブチルラクトンである。
前述の種類の水様溶媒の吸湿性は、該インキジェットプリンターの印刷ヘッドの孔の中のインキの柔らかい詰まり(soft plug) の形成を助長する。この柔らかい詰まりは、その印刷ヘッドの発射によって容易に破壊されるような、前述の孔の中に非常に薄い層が形成されたことを意味する。このインキ配合物に加えられた添加剤は、強力な浸透剤である、プロピレングリコール、n-ブチルエーテルトリエチレングリコールブチルエーテル、又はジエチレングリコールエーテルであり、その結果、紙への浸透速度、更にこの印刷物の耐水性が、改善される。長期の保存期限(12ヶ月以上)に必要なこの溶媒系の着色剤の長期にわたる溶解は、非イオン性界面活性剤の添加によってもたらされる。この非イオン性界面活性剤は、ポリエステル/ポリアミドトナーの可溶化を達成するために、HLB は8〜13である。更に、このHLB が8よりも大きい非イオン性界面活性剤は、印刷ヘッドで使用されるプラスチック材料に与える損傷が少ない。
【0023】
前述のインキの一般的な組成を下記に記す:
成分 (重量%)
1.蛍光トナー 5〜15
a.マゼンタ又はイエローの混合物のステリング(Sterling)410 シリーズ、もしくはダイグロ(Day-Glo) HMS シリーズで製造された、尿素ホルムアルデヒドトルエンスルホンアミド。
b.マゼンタ及びイエローのラジアント(Radiant) STシリーズで製造された、ポリエステルポリアミド(ホルムアルデヒドを含まず)。
c.マゼンタ、レッド又はイエローのローター(Lawter) HVWT シリーズで製造された、ジメチルヒダントインホルムアルデヒド。
2.染料 微量〜1.5
a.ダイワ又はアーカッシュで製造された、C.I.ダイレクトイエロー86。
b.BASFで製造された、酸性イエロー194 。
c.この溶媒系において可溶性の他のイエロー染料のいずれか、すなわち塩基性イエロー40を使用しうる。
3.水 35〜55
【0024】
4.補助溶剤又は混合物又は個々の溶媒 15〜50
a.2-ピロリドン
b.N-メチルピロリドン
c.スルホラン
d.ジエチレングリコール
e.γブチルラクトン
f.本願明細書に記載された定義に合致した水のような他の溶媒
5.浸透剤(グリコールエーテル) 5 〜15
a.トリエチレングリコールn- ブチルエーテル
b.ジエチレングリコールn- ブチルエーテル
c.プロピレングリコールイソプロピルエーテル
下記の実施態様は、本発明を例証するが、限定するものではない。
下記の実施態様全てにおいて、L 、a 、b 値は、ほぼL=60±10、a=35±10、b=5 ±10の範囲であった(L 、a 、b は、ハンター色差)。
【0025】
【実施例】
【実施例1】
組成物
水 47.6重量%
2-ピロリドン 17重量%
ポリエチレングリコール#200 10重量%
トリエチレングリコールn-ブチルエーテル 10重量%
ローターインターナショナルの蛍光トナー HV WT 54 15重量%
C.I.塩基性イエロー40 0.4 重量%
ドローダウンによるゼロックス 4024 紙上での特性
発光スペクトルのピーク(nm) 608
蛍光強度(相対数) 5976
蛍光強度(蛍光体測定ユニット) >99
(米国郵政公社が所有する装置で測定)
光学濃度 0.73
耐水性(浸漬試験後)
発光スペクトルのピーク(nm) 597
蛍光強度(後の相対数) 9167
蛍光強度(蛍光体測定ユニット) >99
光学濃度 0.71
光学濃度(ブリード部分) 0.11
【0026】
【表1】
Figure 0003909107
【0027】
【実施例2】
組成物
水 48.5重量%
2-ピロリドン 10重量%
トリエチレングリコール 19重量%
トリエチレングリコールn-ブチルエーテル 10重量%
ローターインターナショナルの蛍光トナーHVWT10 12重量%
C.I.塩基性イエロー40 0.5 重量%
ドローダウンによるゼロックス 4024 紙上での特性
発光スペクトルのピーク(nm) 606
蛍光強度(相対数) 5651
蛍光強度(蛍光体測定ユニット) 92
光学濃度 0.70
耐水性(浸漬試験後)
発光スペクトルのピーク(nm) 598
蛍光強度(相対数) 5876
蛍光強度(蛍光体測定ユニット) 93
光学濃度 0.69
光学濃度(ブリード部分) 0.10
【0028】
【実施例3】
組成物
水 45重量%
ジエチレングリコール 40重量%
トリエチレングリコールn-ブチルエーテル 10重量%
ローターインターナショナルの蛍光トナーHVWT36 5重量%
ドローダウンによるゼロックス 4024 紙上での特性
発光スペクトルのピーク(nm) 593
蛍光強度(相対数) >10000
蛍光強度(蛍光体測定ユニット) >99
光学濃度 0.39
耐水性(浸漬試験後)
発光スペクトルのピーク(nm) 591
蛍光強度(相対数) >10000
蛍光強度(蛍光体測定ユニット) >99
光学濃度 0.36
光学濃度(ブリード部分) 0.10
【0029】
【実施例4】
組成物
水 42重量%
2-ピロリドン 25重量%
N-メチレンピロリドン 10重量%
トリエチレングリコールn-ブチルエーテル 10重量%
スターリングの蛍光トナーフレア410 マゼンタ37 12重量%
C.I.ダイレクトイエロー86 1 重量%
ドローダウンによるゼロックス 4024 紙上での特性
発光スペクトルのピーク(nm) 601
蛍光強度(相対数) 5524
蛍光強度(蛍光体測定ユニット) 91
光学濃度 0.75
耐水性(浸漬試験後)
発光スペクトルのピーク(nm) 606
蛍光強度(相対数) 5120
蛍光強度(蛍光体測定ユニット) 82
光学濃度 0.75
光学濃度(ブリード部分) 0.10
【0030】
【実施例5】
組成物
水 37 重量%
2-ピロリドン 30 重量%
N-メチルピロリドン 10 重量%
トリエチレングリコールn-ブチルエーテル 10 重量%
ダイグロの蛍光トナーHMS30 12 重量%
C.I.ダイレクトイエロー86 1 重量%
ドローダウンによるゼロックス 4024 紙上での特性
発光スペクトルのピーク(nm) 595
蛍光強度(相対数) 5315
蛍光強度(蛍光体測定ユニット) 89
光学濃度 0.77
耐水性(浸漬試験後)
発光スペクトルのピーク(nm) 599
蛍光強度(相対数) 5150
蛍光強度(蛍光体測定ユニット) 83
光学濃度 0.77
光学濃度(ブリード部分) 0.10
【0031】
【実施例6】
組成物
水 37 重量%
2-ピロリドン 30 重量%
N-メチルピロリドン 10 重量%
トリエチレングリコールn-ブチルエーテル 10 重量%
ラジアントの蛍光トナーSTマゼンタ 12 重量%
C.I.ダイレクトイエロー86 1 重量%
ドローダウンによるゼロックス 4024 紙上での特性
発光スペクトルのピーク(nm) 604
蛍光強度(相対数) 5919
蛍光強度(蛍光体測定ユニット) 95
光学濃度 0.78
耐水性(浸漬試験後)
発光スペクトルのピーク(nm) 604
蛍光強度(相対数) 6253
蛍光強度(蛍光体測定ユニット) 98
光学濃度 0.78
光学濃度(ブリード部分) 0.10
【0032】
【実施例7】
組成物
水 38.9重量%
2-ピロリドン 39.6重量%
トリエチレングリコールn-ブチルエーテル 10 重量%
ラジアントの蛍光トナーSTマゼンタ 9 重量%
C.I.塩基性イエロー40 0.5 重量%
ノニルフェノキシポリオキシエチレングリコールエーテル 2.0重量%
ドローダウンによるゼロックス 4024 紙上での特性
発光スペクトルのピーク(nm) 601
蛍光強度(相対数) 4920
蛍光強度(蛍光体測定ユニット) 76
光学濃度 0.59
耐水性(浸漬試験後)
発光スペクトルのピーク(nm) 603
蛍光強度(相対数) 4820
蛍光強度(蛍光体測定ユニット) 72
光学濃度 0.60
光学濃度(ブリード部分) 0.10
前述の実施態様は、詳細に説明するためにのみ提供するものであって、この詳細な説明を考慮することにより、本発明の他の実施例が、当業者に明らかになるであろう。従って、本発明はクレームによってのみ限定される。

Claims (8)

  1. 切手印刷のための印刷機構を具備する郵便料金メーターシステムにおいて使用するための赤色水性マゼンタ耐水性蛍光インキ組成物であって、水、水溶性有機溶媒、赤色蛍光染料が樹脂にカプセル封入されているトナー及び補助用剤浸透剤としてのグリコールエーテルを含有する赤色水性マゼンタ耐水性蛍光インキ組成物。
  2. 前記インキ組成物が、
    a.水35〜55重量%;
    b.水素結合溶解パラメーター(δh)が8.0を越え、極性溶解パラメーター(δp)が5.0を越え、かつ分散パラメーター(δδ)が7〜8.3である前記水溶性有機溶媒15〜50重量%;
    c.重量平均分子量が200〜1,000である前記トナー5〜15重量%;及び
    d.補助溶剤浸透剤としての前記グリコールエーテル5〜15重量%
    から本質的になる請求項1記載の組成物
  3. 前記インキ組成物が、
    a.水35〜55重量%;
    b.水素結合溶解パラメーター(δh)が5.0を越え、極性溶解パラメーター(δp)が8.0〜8.7で、かつ分散パラメーター(δδ)が8.4〜10.0である前記水溶性有機溶媒15〜50重量%;
    c.分子量が200〜1,000である前記トナー5〜15重量%;及び
    d.補助溶剤浸透剤としての前記グリコールエーテル5〜15重量%
    から本質的になる請求項1記載の組成物
  4. 前記グリコールエーテルが、トリエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールエーテル、トリプロピレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、又はジエチレングリコールモノヘキシルエーテルからなる群から選択される請求項2又は3記載の組成物。
  5. 前記グリコールエーテルが、粘度20cps 未満である請求項4記載の組成物。
  6. 前記トナーが、尿素ホルムアルデヒドトルエンスルホンアミド、ポリエステルポリアミド、又はジメチルヒダントインホルムアルデヒドからなる群から選択される請求項2又は3記載の組成物。
  7. 前記トナーが、50を越える酸価を有するポリエステルポリアミドである、請求項6記載の組成物。
  8. 前記印刷機構が、インキジェットプリンターである請求項1記載の組成物
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