JP3907782B2 - 窯炉棚板用支柱 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミック製品の焼成に使用される棚板を多段に積層する場合に、棚板間の空間を形成するために使用される支柱に関し、さらに詳しくは、積層された支柱どうしが焼成時に固着しない窯炉棚板用支柱に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、セラミック製品を焼成する場合には、焼成用窯炉の容積の有効利用を目的として、一回の焼成にあたって処理する製品数を多くするために、製品の均一な焼成に必要とする空間を形成するブロック状の支柱を棚板の隅に複数箇所載置して、棚板と支柱とを交互に複数段に積み上げる方法が採られている。
【0003】
このような従来からの生産効率の向上手段のみならず、近年では、セラミック製品の焼成、製造ラインにあっても、自動化、省力化が図られ、上述のような棚組と製品の載置についての作業にも自動化が進んでいる。特に、タイルや瓦といった平板状もしくは平板形状に近い製品の製造においては、棚板と製品の移動を同じ機構、装置で行うことが可能と考えられる。
【0004】
しかし、棚板と支柱とを交互に積み上げる方法では、棚板の隅に載置した支柱は、四角柱や円柱といった棚板とは全く異なる形状と大きさを有し、しかもそれらが一枚の棚板について複数個配置されることから、棚板と製品を処理する機構とは別の機構を支柱の設置と除去のために装備する必要がある。このような場合、装置が複雑となり、必ずしも作業性が良くはならないので、この問題を解決するために、近年では棚板に支柱を固着した支柱一体型の棚板が供されるようになってきている。
【0005】
この種の棚板としては、たとえば、特開平4−366389号公報には、図2に示すように、棚板10を挟むように嵌合した断面略コ字型の支柱11を接着剤により固着した支柱一体型棚板20、が開示されており、棚板10として炭化珪素、支柱11としてムライトが使用されている。このような支柱一体型棚板20を用いた場合には、例えば、真空吸引等のような吸引機構によって棚板の平面部を吸着して持ち上げ、所定の位置に移動して載置し、次に、製品であるタイルや瓦といった製品を同じ吸引機構によって持ち上げ、棚板とは別の位置に載置したり、ベルトコンベア上に載置して、次工程へ流すことが可能となる。あるいは、上述のような吸引機構を用いて、棚板を処理する工程と、製品を処理する工程とを一つの生産ラインの中で分割するといった方法も採られ得る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような支柱一体型棚板を使用する場合においても、例えば、瓦の焼成においては、瓦に塗布される釉薬に揮発成分である酸化鉛が含まれるため、焼成中に揮発した酸化鉛がムライト支柱の主成分の一つであるシリカと低融点のガラスを形成し、焼成終了後に支柱どうしが固着される問題が生ずる場合がある。このような支柱どうしの固着が生じた場合、先に述べた自動化ラインにおいては、一枚の棚板を持ち上げた場合に、持ち上げた棚板の下にある製品と棚板も持ち上がってしまい、棚板と製品の分離ができず、ラインの可動を一時停止せざるを得なくなる。あるいは、支柱の密着によって同時に持ち上げられた製品と棚板とが、逆に自重や支柱の固着強度が中途半端に弱かったために、持ち上げられ後に支柱間の固着部が離れて落下し、落下した製品と棚板が破損したり、または、落下した場所の下にあった製品が破損するといった事態が生ずる。したがって、このような支柱の固着は、生産ラインの稼動率、製品歩留まり、生産コストの点から好ましくない。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、すなわち、本発明によれば、棚板本体の周縁部に、該棚板本体を挾持するように嵌合する断面略コ字形のムライトからなり、揮発成分として酸化鉛を含む被焼成物に用いられる窯炉棚板用支柱であって、該支柱を取り付けた棚板を該支柱の上下面どうしが重なるように多段に積層した場合の該支柱の上下両外表面または上下外表面の少なくとも一面に、該支柱どうしが被焼成物からの揮発成分である酸化鉛に起因して固着することを防止するアルミナ膜を形成したことを特徴とする窯炉棚板用支柱、が提供される。
【0008】
また、本発明の窯炉棚板用支柱の外表面に形成されるアルミナ膜としては、スラリー化したアルミナ原材料を前記支柱の外表面への塗布と乾燥を繰り返すことにより形成されてなるものが好適に使用される。
【0009】
【発明の実施の形態】
上記のように、本発明の窯炉棚板用支柱によれば、支柱どうしが接触する面にアルミナ膜が予め形成されているので、支柱どうしが高温で焼結固着せず、被焼成物からの揮発物質、たとえば酸化鉛等とも反応しないため、支柱どうしの固着が防止され、自動生産ラインにおける支柱の固着による生産ライン停止の防止、製品破損の低減、および棚板自体の使用寿命の長期化に効果がある。
以下、本発明を図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0010】
まず、図1は、本発明の窯炉棚板用支柱1の構造を示しており、図2に示す従来技術と同様の棚板への取り付け方法及び使用方法が採られる。支柱1には、棚板を嵌挿するためのコ字型の切欠部2が設けられており、支柱1は棚板の外周のどの位置に取り付けてもよいが、一般的には、被焼成体と棚板が安定して載置できるように、棚板の角端部、あるいは外周辺の一部に、合計3〜4箇所程度に取り付けられて接着剤等で固定される。そして、実際の使用に当たっては、このような支柱一体型棚板は支柱1で重なるように複数段積層されて焼成に付される。
【0011】
支柱1の基体は、安価で高温強度に優れるムライトが用いられる。支柱1は一般に角部を有するが、一般的にセラミック焼成治具は、使用中の接触等によって欠損が起こりやすく、欠損によって生じた破片が製品を傷つけるような事態をまねく可能性も危惧されるので、このような角部の欠損が起こり難いように面取り処理が施されていることが好ましい。
【0012】
次に、本発明においては、支柱一体型棚板を複数段積層する場合に接触する支柱1の上下面3あるいは上下面3の少なくとも一面に支柱どうしの固着を防止するセラミックス膜が形成される。この支柱1の上下面3に形成されたセラミックス膜は、そのもの自体の性質、例えば、支柱1の最高使用温度以下の温度において溶融する、あるいは支柱1の基体材料と反応する等によって支柱1どうしを固着することがないことは言うまでもない。また、形成したセラミックス膜が、被焼成物からの揮発物質と反応して新たな物質を生成し、その生成物質によって支柱1どうしが固着することも回避されるべきである。したがって、被焼成物からの揮発物質が、セラミックス膜と直接に反応するか、あるいは拡散などしてセラミックス膜自体の性質、例えば、強度等が変化しても、結果的に支柱1どうしの固着が起こらない材料であればよい。
【0013】
このようなセラミックス膜材料として、アルミナがあげられる。ムライトからなる支柱の表面にアルミナ膜を形成した支柱を用いて瓦の焼成を行うと、瓦に塗布される釉薬に含まれる揮発成分の酸化鉛が焼成中に蒸発して、支柱のムライトの主成分の一つであるシリカと低融点のガラスを形成し、焼成終了後に支柱どうしが固着するといった現象を回避できる。なお、アルミナ膜は支柱1の基体どうしが直接には接触しないようにする役割を果たせばよいので、アルミナ膜にはピンホールや小領域の剥離等があっても差し支えなく、支柱1の上下外表面3を完全に被覆しなければならない性質のものではない。
【0014】
また、支柱の基体の材料とセラミックス膜材料とは熱膨張係数が異なる場合が多く、しかも多数段積層して使用されるために高温条件下で大きな機械的負荷を受ける。したがって、使用中にセラミックス膜が剥離することも起こり得る。そのような場合には、最初に支柱1の基体にセラミックス膜を形成した手法と同様の手法によって膜を再形成して使用に供することができる。たとえば、セラミックス膜が薄い場合には、一部剥離による段差の発生は実用上の問題とはならず、反対にセラミックス膜が厚くてもその一部が剥離した程度では、積層した支柱1の基体表面どうしは直接には接触しないので、支柱1どうしの接触面全体が剥離した状態、あるいは支柱1どうしの接触面が安定に積層できない状態となった時点でセラミックス膜の再形成を行えばよい。このとき、既存のセラミックス膜を除去した後に、あるいは剥離した部分にのみセラミックス膜を形成してもよい。
【0015】
上述した支柱1の基体の作製と外表面セラミックス膜の形成は、次のような手法を用いて行われる。まず、支柱1の基体は、その原料粉に水、可塑剤、バインダー等を添加して混練して作製した粘土を、押出成形法によって棒状に作製し、所定長さに切断することで容易に支柱1の成形体を作製することができ、その他、プレス成形法、鋳込み成形法などによっても簡便に作製することができる。そして、作製した成形体については、焼成前であれば、角部の面取り作業を容易に行うことができる。
【0016】
次に、作製した成形体を脱脂し、仮焼して多孔質体ではあるが、適度な作業上必要な強度のある仮焼体とするか、あるいは完全に焼成を行って焼成体を作製してもよい。一方、セラミックス膜の原料粉末を、水あるいはアルコール等の有機溶媒と、分散剤、可塑剤、粘結剤とを混合した溶液に懸濁させたスラリーを作製し、このスラリーを種々の方法、例えば、スプレー塗布、はけ塗り等により支柱1の仮焼体または焼成体の必要部分に塗布する。あるいはセラミックス膜の形成の不要な部分をマスクした仮焼体または焼成体をスラリーに浸漬して乾燥した後に、マスク部を取り除く方法によってもセラミックス膜の形成が可能である。さらには、セラミックス膜の原料粉末と、有機溶媒、分散剤、可塑剤、粘結剤とを混練してペースト状とし、スクリーン印刷法によって仮焼体または焼成体に塗布することも可能である。上述の全ての方法において、塗布と乾燥を繰り返すことにより所望の膜厚を得ることができる。
【0017】
このようにして得られたセラミックス膜材料を塗布した仮焼体または焼成体を、仮焼体については支柱本体を本焼成することで、焼成体についてはセラミックス膜を焼結することで、本発明のセラミックス膜を形成した支柱1を作製することができる。
【0018】
なお、セラミックス膜材料の支柱1の基体への塗布前までの支柱1の基体の焼成工程の選択については、支柱1の基体とセラミックス膜とが同程度の焼成温度で焼結可能なときは、支柱1の基体の仮焼体にセラミックス膜材料を塗布して一体焼成する方法が好適に用いられ、支柱1とセラミックス膜材料の焼成温度が大きく異なり、セラミックス膜材料の焼成温度が支柱の基体の焼成温度よりも低い場合には、逐次焼成する方法が好ましい。一方、セラミックス膜材料の焼成温度が支柱1の基体の焼成温度よりも高い場合には、セラミックス膜材料の焼結温度に合わせると、支柱1の基体の組織が粒成長を起こして強度低下を起こすので好ましくなく、逆に支柱1の焼結温度に合わせるとセラミックス膜が完全には焼結しないという状況をまねく。したがって、このような材料の組み合わせは基本的には設定すべきではないが、必要な場合には、セラミックス膜材料粉末に焼結活性を制御したものを用いるか、あるいはセラミックス膜原料としてゾルやアルコキシドなどの低温焼結性材料を用いるなどの手法を用いることができる。
【0019】
その他のセラミックス膜の形成方法としては、完全に焼結させた支柱の基体に、CVD、スパッタ、レーザーアブレーション等の既知の薄膜形成法を適用する例があげられるが、これら方法の設備および原料は一般的に高価であることから、コスト高となる欠点がある。
【0020】
このようにして作製された支柱1に、前述したように、棚板が嵌挿されるが、作業の繰り返しによる支柱1と棚板とのずれを防止するために、支柱1と棚板とは、支柱1の切欠部2において固着される。このときの接着剤としては、支柱1と棚板との材質及び熱膨張率を考慮して、両材料と固着し易い材料であって、熱膨張率が両材料の中間程度にあるものが好ましいが、棚板として主にムライトや炭化珪素が頻繁に利用されることから、炭化珪素系モルタルやムライト系モルタル、あるいはアルミナガラス系高温接着剤等が好適に使用される。
【0021】
なお、たとえば、特開平4−366389号公報には、図3に示すように、切欠部2において、棚板の嵌挿方向と直行する方向に延びる溝部4の形成した支柱30が開示されている。支柱30と棚板との間隙および溝部4に充填されて接着剤が固化することで、溝部4で固化した接着剤が抜き止めピンの役割を果たし、切欠部2での支柱の脱離を防止する工夫であるが、本発明においても、このような溝部4を有していることが望ましい。
【0022】
また、本発明の支柱と同時に使用される棚板については、特に制限はなく、被焼成物に合わせて任意の材質からなる棚板を使用することができる。
【0023】
【発明の効果】
上述の通り、本発明の窯炉棚板用支柱によれば、支柱を取り付けた棚板が複数積層された場合に、支柱どうしの接触する面にアルミナ膜が予め形成されており、しかも、これらの膜は酸化鉛などの被焼成物からの揮発物質との反応を生じないため、支柱どうしの固着が防止され、自動生産ラインにおける支柱の固着による生産ライン停止の防止、製品破損の低減、および棚板自体の使用寿命の長期化に効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による窯炉焼成用支柱の一実施形態の構造を示す斜視図である。
【図2】 本発明および従来法における支柱一体型棚板の構成を示す斜視図である。
【図3】 本発明における窯炉焼成用支柱の別の実施形態の構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…支柱、2…切欠部、3…支柱1の上下外表面、4…溝部、10…棚板、11…支柱、20…支柱一体型棚板、30…支柱。
Claims (2)
- 棚板本体の周縁部に、該棚板本体を挾持するように嵌合する断面略コ字形のムライトからなり、揮発成分として酸化鉛を含む被焼成物に用いられる窯炉棚板用支柱であって、該支柱を取り付けた棚板を該支柱の上下面どうしが重なるように多段に積層した場合の該支柱の上下両外表面または上下外表面の少なくとも一面に、該支柱どうしが被焼成物からの揮発成分である酸化鉛に起因して固着することを防止するアルミナ膜を形成したことを特徴とする窯炉棚板用支柱。
- 該支柱の外表面に形成されるアルミナ膜は、スラリー化したアルミナ原材料を前記支柱の外表面への塗布と乾燥を繰り返すことにより形成されてなる請求項1に記載の窯炉棚板用支柱。
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