以下、本発明のインク等の液滴を吐出する液体吐出ヘッドの具体的な実施の形態について、図面を参照して説明する。
まず、本実施の形態に係る液体吐出ヘッドの概略を説明する。本実施の形態の液体吐出ヘッドは、インクジェット記録方式の中でも特に、液体のインクを吐出するために利用されるエネルギとして熱エネルギを発生する手段を備え、その熱エネルギによってインクの状態変化を生起させる方式が採用された液体吐出ヘッドである。この方式が用いられることにより、記録される文字や画像等の高密度化および高精細化が達成されている。特に本実施の形態では、熱エネルギを発生する手段として発熱抵抗素子を用い、この発熱抵抗素子によりインクを加熱して膜沸騰させたときに発生する気泡による圧力を利用してインクを吐出している。
(第1の実施の形態)
図1に示すように、第1の実施の形態の液体吐出ヘッド1は、発熱抵抗素子である複数のヒータのそれぞれのヒータごとに、インクの流路であるノズルを個別に独立して形成するための隔離壁が、吐出口から供給口近傍まで延設された構成となっている。この構成の詳細については後述する。このような液体吐出ヘッド1は、特開平4−10940号公報、特開平4−10941号公報に開示されたインクジェット記録方法が適用されたインク吐出手段を有しており、インクの吐出時に発生する気泡が吐出口を介して外気に通気されている。
そして、液体吐出ヘッド1は、複数のヒータおよび複数のノズルを有し各ノズルの長手方向が平行に配列された第1のノズル列16と、供給室を挟んで第1のノズル列に対向する位置に配列された第2のノズル列17とを備えている。第1および第2のノズル列16、17は、いずれも隣接する各ノズルの間隔が600dpiピッチに形成されている。また、第2のノズル列の各ノズル17は、第1のノズル列16の各ノズルに対して、隣接する各ノズルのピッチが互いに1/2ピッチずれて配列されている。
ここで、複数のヒータおよび複数のノズルが高密度に配列されている第1および第2のノズル列16、17を備える液体吐出ヘッド1を最適化する概念について簡単に説明する。
一般に、液体吐出ヘッドの吐出特性に影響を及ぼす物理量としては、複数設けられたノズル内におけるイナータンス(慣性力)とレジスタンス(粘性抵抗)が大きく作用している。任意の形状の流路内を移動する非圧縮性流体の運動方程式は、以下に示す2式によって表される。
Δ・v=0 (連続の式) ・・・式1
(∂v/∂t)+(v・Δ)v=−Δ(P/ρ)+(μ/ρ)Δ2v+f
(ナビエ・ストークスの式) ・・・式2
式1および式2を、対流項および粘性項が充分に小さく、外力がないものとして近似すると、
Δ2P=0 ・・・式3
となり、圧力が調和関数を用いて表される。
そして、液体吐出ヘッドの場合には、図2に示すような3開口モデル、および図3に示すような等価回路によって表現される。
イナータンスは、静止流体が急に動き出す時の「動き難さ」として定義される。電気的に表現すると、電流の変化を阻害するインダクタンスLと似た働きをする。機械的なバネマスモデルでは、重さ(mass)に相当する。
イナータンスを式で表すと、開口に圧力差を与えたときの、流体体積Vの2階時間微分、すなわち流量F(=ΔV/Δt)の時間微分との比で表される。
(Δ2V/Δt2)=(ΔF/Δt)=(1/A)×P ・・・式4
なお、A:イナータンスとする。
例えば、擬似的に、密度ρ、長さL、断面積Soとされたパイプ型の管流路を仮定すると、この擬似的な1次元流管路のイナータンスAoは、
Ao=ρ×L/So
で表され、流路の長さに比例し、断面積に反比例することが分かる。
図3に示したような等価回路に基づいて、液体吐出ヘッドの吐出特性をモデル的に予測、解析することができる。
本発明の液体吐出ヘッドにおいて、吐出現象は、慣性流から粘性流に移行する現象とされている。特に、ヒータによる発泡室内での発泡初期においては、慣性流が主であり、逆に、吐出後期においては粘性流が主となる。ここで、吐出後期とは、吐出口に生じたメニスカスがインク流路側に移動を開始したときから、毛細管現象によってインクが吐出口の開口端面まで充填されて復帰するまでの時間である。その際、上述した関係式から、発泡初期には、イナータンス量の関係により、吐出特性、特に、吐出体積および吐出速度への寄与が大きくなり、吐出後期には、レジスタンス(粘性抵抗)量が、吐出特性、特に、インクのリフィルに要する時間への寄与が大きくなる。以下では、インクのリフィルに要する時間をリフィル時間と称する。
ここで、レジスタンス(粘性抵抗)は、式1と、
ΔP=ηΔ2μ ・・・式5
となる定常ストークス流で記述され、粘性抵抗Bを求めることができる。また、吐出後期では、図2に示したモデルにおいて、吐出口近傍にメニスカスが生じて、主に毛細管力による吸引力により、インクの流動が生じるため、2開口モデル(1次元流モデル)で近似することができる。
すなわち、粘性流体を記述したポアズイユの式6から求めることができる。
(ΔV/Δt)=(1/G)×(1/η){(ΔP/Δx)×S(x)}・・・式6
ここで、G:形状因子である。また、粘性抵抗Bは、任意の圧力差に従って流れる流体に起因するため、
B=∫0 L{(G×η)/S(x)}Δx ・・・式7
により、求められる。
上述した式7により、レジスタンス(粘性抵抗)は、密度ρ、長さL、断面積Soであるようなパイプ型の管流路を仮定すると、
B=8η×L/(π×So2) ・・・式8
となり、近似的にノズルの長さに比例し、かつ、ノズルの断面積の2乗に反比例する。
このように、液体吐出ヘッドの吐出特性、特に、吐出速度、インク滴の吐出体積、リフィル時間のいずれをも向上させるためには、以下が必要充分条件を満たす必要がある。すなわち、イナータンスの関係から、ヒータから吐出口側へのイナータンス量を、ヒータから供給口側へのイナータンス量と比較して可能な限り大きくし、かつ、ノズル内のレジスタンスを小さくすることが必要である。
本発明に係る液体吐出ヘッドは、上述した観点と、さらに、複数のヒータおよび複数のノズルを高密度に配設するという命題に対して、両方を満足させることを可能とする。
次に、実施の形態に係る液体吐出ヘッドについて、具体的な構成を図面を参照して説明する。
図4から図7に示すように、液体吐出ヘッドは、発熱抵抗素子である複数の吐出エネルギ発生素子としてのヒータ20が設けられた素子基板11を備えている。液体吐出ヘッドはさらに、この素子基板11の主面に積層されて接合されて複数のインクの流路を構成するオリフィス基板12を備えている。
素子基板11は、例えば、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等によって形成されており、一般にはSiによって形成されている。
素子基板11の主面上には、各インクの流路ごとに、ヒータ20と、このヒータ20に電圧を印加する電極(図示せず)と、この電極に接続された配線(図示せず)が所定の配線パターンでそれぞれ設けられている。
また、素子基板11の主面上には、蓄熱の発散性を向上させる絶縁膜21が、ヒータ20を被覆するように設けられている(図8参照)。また、素子基板11の主面上には、気泡が消泡した際に生じるキャビテーションから主面を保護するための保護膜22が、絶縁膜21を被覆するように設けられている(図8参照)。
オリフィス基板12は、樹脂材料によって厚さが30μm程度に形成されている。オリフィス基板12は、図4、図5に示すように、インク滴を吐出する複数の吐出口部26を備え、内部をインクが流動する複数のノズル27と、これら各ノズル27にインクを供給する供給室28とを有している。
ノズル27は、液滴を吐出する吐出口26aを有する吐出口部26、吐出エネルギ発生素子であるヒータ20によって内部の液体に気泡を発生させる発泡室31、および発泡室31に液体を供給するための供給路32を有する。
発泡室31は、素子基板11の主面を底面とし供給路32と連通していてヒータ20によって内部の液体に気泡が発生する第1の発泡室31aを含んでいる。発泡室31はさらに、第1の発泡室31aの素子基板11の主面に平行な上面の開口に連通して設けられて第1の発泡室31aで発生した気泡が成長する第2の発泡室31bを含んでいる。吐出口部26は、第2の発泡室31bの上面の開口に連通して設けられ、吐出口部26の側壁面と第2の発泡室31bの側壁面との間には段差がある。
吐出口部26の吐出口26aは、素子基板11上に設けられたヒータ20に対向する位置に形成されており、ここでは直径が例えば15μm程度の丸孔とされている。なお、吐出口26aは、吐出特性上の必要に応じて放射状のほぼ星形に形成されてもよい。
第2の発泡室31bは円錐台形の形状となっており、その側壁が、素子基板の主面に直交する平面に対し、10〜45°の傾斜で吐出口方向に縮小しており、その上面は段差をもって吐出口部26の開口と連通している。
第1の発泡室31aは供給路32の延長上にあり、吐出口26に対向する底面がほぼ矩形状をなすように形成されている。
ここで、ノズル27は素子基板11の主面に平行なヒータ20の主面と吐出口26aとの最短距離HOが30μm以下となるように形成されている。
ノズル27では、主面に平行な第1の発泡室31aの上面および発泡室31に隣接する供給路32の主面に平行な上面は同一平面で連続している。それよりも高い供給路32の供給室28側の素子基板の主面に平行な上面とは、主面に対して傾斜を持って設けられた段差によって接続されている。段差から第2の発泡室31の底面の開口に至る間が制御部33を形成しており、制御部33は気泡によって流動される発泡室31内のインクを制御する。素子基板11の主面から供給路32の上面までの最大高さが、素子基板11の主面から第2の発泡室31bの上面までの高さよりも低く設けられている。
供給路32は、一端が発泡室31に連通されるとともに他端が供給室28に連通されて形成されている。
このようにノズル27では、制御部33によって、第1の発泡室31aに隣接する供給路32の一端部から第1の発泡室31aにわたる部分の、素子基板11の主面に対する高さが供給室28に隣接する供給路32の他の端部の高さに比較して低く形成されている。したがって、ノズル27では、制御部33によって、第1の発泡室31aに隣接する供給路32の一端部から第1の発泡室31aにわたってのインクの流路の断面積が他の流路の断面積よりも小なくなるように形成されている。
また、ノズル27は、図4および図7に示すように、流路の素子基板11の主面に平行な面におけるインクの流動方向に直交する幅が、供給室28から発泡室31にわたってほぼ等しいストレート状に形成されている。また、ノズル27は、素子基板11の主面に対向する各内壁面が、供給室28から発泡室31にわたって、素子基板11の主面に平行になるようにそれぞれ形成されている。
ここでは、ノズル27は、素子基板11の主面に対する制御部33の対向面の高さが、例えば14μm程度になるように形成されており、素子基板11の主面に対する供給室28の対向面の高さが、例えば25μm程度になるように形成されている。また、ノズル27は、インクの流動方向に平行な制御部33の長さが、例えば10μm程度に形成されている。
また、素子基板11には、オリフィス基板12に隣接する主面の裏面に、この裏面側から供給室28にインクを供給するための供給口36が設けられている。
また、図4、図5において、供給室28内には供給口36に隣接する位置に、各ノズル27ごとにインク内の塵を濾過して除去するための円柱状のノズルフィルタ38が、素子基板11とオリフィス基板12とに跨ってそれぞれ立設されている。ノズルフィルタ38は、供給口から例えば20μm程度離れた位置に設けられている。また、供給室28内の各ノズルフィルタ38の間隔は、例えば10μm程度とされている。このノズルフィルタ38によって、供給路32および吐出口26に塵が詰まることが防止されて、良好な吐出動作が確保される。
以上のように構成された液体吐出ヘッド1について、インク滴を吐出口26から吐出する動作を説明する。
まず、液体吐出ヘッド1では、供給口36から供給室28内に供給されたインクが、第1および第2のノズル列16、17の各ノズル27にそれぞれ供給される。各ノズル27に供給されたインクは、供給路32に沿って流動して発泡室31内に充填される。発泡室31内に充填されたインクは、ヒータ20により膜沸騰されて発生する気泡の成長圧力によって、素子基板11の主面に対してほぼ直交する方向に飛翔させられて、吐出口部26の吐出口26aからインク滴として吐出される。
発泡室31内に充填されたインクが、第1の発泡室31a内でヒータ20により膜沸騰されて発生する気泡の成長圧力によって第2の発泡室32bを経由して吐出される際、第2の発泡室31bが円錐台形の形状となっている。その側壁が、素子基板の主面に直交する平面に対し、10〜40°の傾斜で吐出口方向に縮小しており、その上面は段差をもって吐出口部26の開口と連通している。そのため、素子基板11から吐出口26aに至る方向に、徐々にインク体積が減少しながら整流され、吐出口26a付近では、液滴が飛翔する際に、飛翔する液滴が、基板に対して垂直に飛翔する。
発泡室31内に充填されたインクが吐出される際、発泡室31内のインクの一部は、発泡室31内に発生する気泡の圧力によって供給路32側に流動することになる。液体吐出ヘッド1では、発泡室31内のインクの一部が供給路32側に流動する際、制御部33によって供給路32の流路が狭められている。そのため、制御部33が、発泡室31側から供給路32を介して供給室28側に向かって流動するインクに対して流体抵抗として作用する。したがって、液体吐出ヘッド1では、発泡室31内に充填されたインクが、制御部33によって供給路32側に流動することが抑制される。そのため、発泡室31内のインクが減少することが防止されて、インクの吐出体積が良好に確保され、吐出口から吐出される液滴の吐出体積にバラツキが生じることが抑制されて、吐出体積が適正に確保される。
この液体吐出ヘッド1において、ヒータ20から吐出口26までのイナータンスA1、ヒータ20から供給口36までのイナータンスA2、ノズル27全体のイナータンスA0とすると、ヘッドの吐出口26側へのエネルギ配分比ηは、
η=(A1/A0)={A2/(A1+A2)} ・・・式9
によって表される。また、各イナータンスの値は、例えば3次元の有限要素法ソルバを用いて、ラプラス方程式を解くことによって求められる。
上述した式により、液体吐出ヘッド1は、ヘッドの吐出口26側へのエネルギ配分比ηが0.59とされている。液体吐出ヘッド1は、エネルギ配分比ηを従来の液体吐出ヘッドにほぼ等しい値にすることで、吐出速度と吐出体積の値を従来と同じ程度に維持することできる。また、エネルギ配分比ηは、0.5<η<0.8を満たすことが望ましい。液体吐出ヘッド1は、エネルギ配分比ηが0.5以下の場合、良好な吐出速度と吐出体積が確保されず、0.8以上となった場合、インクが良好に流動されなくなり、リフィルを行うことができなくなる。
また、液体吐出ヘッド1は、インクとして例えば染料系の黒色インク(表面張力47.8×10―3N/m、粘度1.8cp、pH9.8)が用いられた場合、従来の液体吐出ヘッドに比較して、ノズル27内の粘性抵抗値Bを約40%程度低減することができる。粘性抵抗値Bは、例えば3次元の有限要素法ソルバによっても算出することが可能であって、ノズル27の長さ、ノズル27の断面積を定めることにより容易に算出することができる。
即ち、イナータンスAは、ノズルの長さ(l)に比例し、平均断面積(SAV)に反比例することが知られている。
本発明では、ヒータから吐出口に至るまでの平均断面積を低減することにより、ヒータで発生した気泡によって、ノズル内のインクが吐出口から吐出する液滴としてより安定的に、かつ効率よく飛翔することを目指している。
したがって、本実施の形態の液体吐出ヘッド1は、従来の液体吐出ヘッドに比較して、吐出速度を約40%程度高速化することが可能となって、約25〜30kHz程度の吐出周波数応答性を実現することができる。
以上のように構成された液体吐出ヘッド1の製造方法について図8、図9および図10を参照して簡単に説明する。
液体吐出ヘッド1の製造方法は、素子基板11を形成する第1の工程と、素子基板11上にインクの流路を構成する上樹脂層42および下樹脂層41をそれぞれ形成する第2の工程と、上樹脂層41に所望のノズルパターンを形成する第3の工程とを含んでいる。さらに、その樹脂層の側面に傾斜を形成する第4の工程と、下樹脂層42に所望のノズルパターンを形成する第5の工程とを含んでいる。
さらに、液体吐出ヘッド1の製造方法は、上下樹脂層41、42上にオリフィス基板12となる被覆樹脂層43を形成する第6の工程と、被覆樹脂層43に吐出口部26を形成する第7の工程と、素子基板11に供給口36を形成する第8の工程とを含んでいる。最後に、上下樹脂層41、42を溶出する第9の工程を経て液体吐出ヘッド1が製造される。
第1の工程は基板形成工程であり、図8(a)および図9(a)に示すように、例えばSiチップの主面上にパターニング処理等により複数のヒータ20およびこれらヒータ20に電圧を印加するための所定の配線を設ける。さらに、ヒータ20を被覆するように蓄熱の発散性を向上させる絶縁膜21を設ける。さらに、絶縁膜21を被覆するように気泡が消泡した際に生じるキャビテーションから主面を保護するための保護膜22を設けることにより素子基板11を形成する。
第2の工程は塗布工程でり、図8(b)、図9(b)、図9(c)に示すように、素子基板11上に、波長が300nm以下の紫外光であるDeep−UV光(以下、DUV光と称する。)を照射する。これによって、分子中の結合が破壊されて溶解可能な下樹脂層42および上樹脂層41を連続して、スピンコート法によりそれぞれ塗布する。この塗布工程は、下樹脂層42として、脱水縮合反応による熱架橋型の樹脂材を用いることで、上樹脂層41をスピンコート法によって塗布する際に、下樹脂層42と上層樹脂41の各樹脂層間で相互に溶融することが防止されている。下樹脂層42としては、例えばメタクリル酸メチル(MMA)とメタクリル酸(MAA)をラジカル重合させて、ポリマー化させた2元共重合体(P(MMA−MAA)=90:10)をシクロヘキサノン溶媒で溶解した液を使用した。また、上樹脂層41としては、例えばポリメチルイソプロペニルケトン(PMIPK)をシクロヘキサノン溶媒で溶解した液を使用した。下樹脂層42として使用した2元共重合体(P(MMA−MAA))の脱水縮合反応による熱架橋膜を形成する科学反応式を図11に示している。この脱水縮合反応は、180〜200℃で30分〜2時間加熱することにより、より強固な架橋膜を形成することができる。なお、この架橋膜は、溶媒不溶型になっているが、DUV光などの電子線を照射することで、図11に記載したような分解反応が起こり、低分子化が進み、電子線が照射された部分のみ、溶媒可溶性となる。
第3の工程はパターン形成工程であり、図8(b)および図9(d)に示すように、DUV光を照射する露光装置を用いて、この露光装置に波長選択手段として波長260nm未満のDUV光を遮断するフィルターを装着する。これにより、260nm以上のみを透過させ、波長が260〜330nm付近のNear−UV光(以下、NUV光と称する。)を照射させて、上樹脂層41を露光および現像することによって、上樹脂層41に所望のノズルパターンを形成する。この第3の工程では、上樹脂層にノズルパターンを形成する際、上樹脂層41と下樹脂層42とでは、波長260〜330nm付近のNUV光に対する感度比が約40:1以上の差である。そのため、下樹脂層42が感光されることなく、下樹脂層42のP(MMA−MAA)が分解されることはない。また、下樹脂層42は、熱架橋膜であるために、上樹脂層を現像時の現像液に溶解することもない。下樹脂層42と上樹脂層41との210〜330nm領域における材料の吸収スペクトル曲線を図12に示す。
第4の工程は、図8(b)および図9(d)に示すように、パターン形成を行った上樹脂層41を140℃で5〜20分加熱することで、その上樹脂層の側面に10〜40°の傾斜を形成することができる。この傾斜角度は、上記のパターン体積(形状・膜厚)と、加熱温度・時間とに相関があり、上記の角度範囲内で指定の角度に制御することができる。
第5の工程は、図8(b)および図9(e)に示すように、上述した露光装置で波長210〜330nmのDUV光を照射させて、下樹脂層を露光および現像することによって、下樹脂層42に所望のノズルパターンを形成するパターン形成工程である。さらに、下樹脂層42に使用したP(MMA−MAA)材料は、解像力が高く、5〜20μm程度の厚さでも、側壁の傾斜角は、0〜5°程度のトレンチ構造に形成することが可能である。また、必要であれば、パターニング後の樹脂層42を、120〜140℃程度で、加熱することで、その下樹脂層42の側壁にも更なる傾斜を形成することが可能である。
第6の工程は、ノズルパターンが形成されていて、DUV光によって分子中の架橋結合が破壊されて溶解可能となった上樹脂層41および下樹脂層42上に、図10(a)に示すように、オリフィス基板12となる透明な被覆樹脂層43を塗布する塗布工程である。
第7の工程は、図8(c)および図10(b)に示すように、この被覆樹脂層43に、露光装置でUV光を照射させて、吐出口部26に相当する部分を露光および現像して除去することにより、オリフィス基板12を形成する。そのオリフィス基板12に形成する吐出口部26の側壁の傾斜は、素子基板の主面に直交する平面に対し、なるべく0°付近で形成することが望ましい。しかし、0〜10°程度であれば、液滴の吐出特性について、大きな問題は発生しない。
第8の工程は、図8(d)および図10(c)に示すように、素子基板11の裏面に化学的なエッチング処理等を行うことによって、素子基板11に供給口36を形成する。化学的なエッチング処理としては、例えば、強アルカリ溶液(KOH、NaOH、TMAH)を用いた異方性エッチング処理が適用される。
第9の工程は、図8(e)および図10(d)に示すように、素子基板11の主面側から被覆樹脂層43を透過させて波長330nm以下のDUV光を照射する。これにより、素子基板11とオリフィス基板12との間に位置するノズル型材である上下樹脂層41、42を供給口36を経由してそれぞれ溶出させる。
これによって、吐出口26aおよび供給口36と、これらを連通する供給路32に段差状に形成された制御部33を有するノズル27を備えるチップが得られる。このチップをヒータ20を駆動するための配線基板(図示せず)等と電気的な接続を行うことにより、液体吐出ヘッドが得られる。
なお、上述した液体吐出ヘッド1の製造方法によれば、DUV光によって分子中の架橋結合が破壊されて溶解可能である上樹脂層41および下樹脂層42を、素子基板11の厚み方向に対してさらに階層構造にしてもよい。これにより、ノズル27内に3段以上の段差状に形成された制御部を設けることが可能である。例えば、上樹脂層のさらに上層側に、波長400nm以上の光に感度を有する樹脂材料を用いて、多段階のノズル構造を形成することができる。
本実施の形態に係る液体吐出ヘッド1の製造方法は、基本的に特開平4−10940号公報、特開平4−10941号公報に開示されたインクジェット記録方法をインク吐出手段とする液体吐出ヘッドの製造方法に準ずることが好ましい。これら各公報は、ヒータによって生じた気泡を外気に通気させる構成におけるインク滴吐出方法であり、例えば50pl以下の微少量のインク滴を吐出することができる液体吐出ヘッドを提供している。
液体吐出ヘッド1は、気泡が外気に通気されているため、吐出口26から吐出されるインク滴の体積が、ヒータ20と吐出口26との間に位置するインクの体積、すなわち発泡室31内に充填されたインクの体積に大きく依存する。換言すれば、吐出されるインク滴の体積は、液体吐出ヘッド1のノズル27の発泡室31部分の構造によってほぼ決定される。
したがって、液体吐出ヘッド1は、インクムラのない高品位な画像を出力することができる。本発明に係る液体吐出ヘッドは、構造として、気泡を外気に通気させるために、ヒータと吐出口との間の最短距離が30μm以下とされる液体吐出ヘッドに適用することにより最大の効果を奏する。ただし、ヒータが設けられた素子基板の主面に直交する方向にインク滴を飛翔させる液体吐出ヘッドであれば、いずれも有効に作用させることができる。
上述したように、液体吐出ヘッド1は、円錐台形の第2の発泡室31bを設けることによって、素子基板11から吐出口26aに至る方向に、徐々にインク体積が減少しながら整流される。吐出口26a付近では、液滴が飛翔する際に、飛翔する液滴が、素子基板11に対して垂直に飛翔する。また、発泡室31内のインクの流れを制御する制御部33が設けられることによって、吐出されるインク滴の体積の安定化が図られて、インク滴の吐出効率が向上される。
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、第1の発泡室31a上に、円錐台形の第2の発泡室31bを形成し、その第2の発泡室31bの側壁の傾斜が、素子基板11の主面に直交する平面に対して、10〜45°の傾斜で吐出口部26方向に縮小した構成となっている。これに対し、第2の実施の形態の液体吐出ヘッド2では、発泡室内に充填されたインクが、吐出口へさらに流動しやすい構成を説明する。なお、この液体吐出ヘッド2において、上述した液体吐出ヘッド1と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
第2の実施の形態の液体吐出ヘッド2は、第1の実施の形態と同様に、発泡室56はヒータ20によって気泡が発生する第1の発泡室56aと、その第1の発泡室56aから吐出口部53に至る途中に配置された第2の発泡室56bとを有している。その第2の発泡室56bの側壁の傾斜が、素子基板11の主面に直交する平面に対して、10〜45°の傾斜で吐出口部26方向に縮小した構成となっている。さらに、第1の発泡室56aでは、複数配列された第1の発泡室56aを個々に区別するために設けられた壁面が、素子基板11の主面に直交する平面に対し、0〜10°までの傾斜で吐出口方向に縮小している。吐出口部53では、素子基板11の主面に直交する平面に対し、0〜5°の傾斜で吐出口53aの方向に縮小している。
図13および図14に示すように、液体吐出ヘッド2を備えるオリフィス基板52は、樹脂材料によって厚さが30μm程度に形成されている。オリフィス基板52は、先に図1を参照して説明したように、インク滴を吐出する複数の吐出口53aと、インクが流動する複数のノズル54と、これら各ノズル54にインクを供給する供給室55とを有している。
ノズル54は、液滴を吐出する吐出口53aを有する吐出口部53、吐出エネルギ発生素子であるヒータ20によって内部の液体に気泡を発生させる発泡室56、および発泡室56に液体を供給するための供給路57を有する。
発泡室56は、素子基板11の主面を底面とし供給路57と連通していてヒータ20によって内部の液体に気泡が発生する第1の発泡室56aを含んでいる。発泡室56はさらに、第1の発泡室56aの素子基板11の主面に平行な上面の開口に連通して設けられて第1の発泡室56aで発生した気泡が成長する第2の発泡室56bを含んでいる。吐出口部53は、第2の発泡室56bの上面の開口に連通して設けられ、吐出口部53の側壁面と第2の発泡室56bの側壁面との間には段差がある。
吐出口53aは、素子基板11上のヒータ20に対向する位置に形成されており、直径が例えば15μm程度の丸孔となっている。なお、吐出口53aは、吐出特性上の必要に応じて放射状のほぼ星形に形成されてもよい。
第1の発泡室56aは、吐出口53aに対向する底面がほぼ矩形状をなすように形成されている。また、第1の発泡室56aは、素子基板11の主面に平行なヒータ20の主面と吐出口53aとの最短距離OHが30μm以下となるように形成されている。ヒータ20は、先に図1を参照して説明したように素子基板11上に複数配列されており、配列密度が、600dpiの場合、各ヒータのピッチは、約42.5μmになる。そして、第1の発泡室56aのヒータ配列方向の幅が、35μmで形成されると、各ヒータ間を遮蔽するノズル壁の幅が約7.5μmになる。第1の発泡室56aの素子基板11の表面からの高さは10μmである。第1の発泡室56a上に形成される第2の発泡室56bの高さが15μmであり、オリフィス基板52に形成される吐出口部53の高さが5μmである。吐出口53aの形状は丸形状であり、直径は15μmである。第2の発泡室56bの形状は円錐台形となっており、第1の発泡室56aと連接する底面の直径が30μmである場合、第2の発泡室の側壁に20°の傾斜を作成すると、吐出口部53側の上面の直径は、19μmとなる。そして、約2μmの段差を有して、直径15μmの吐出口部53と連結される。
この段差は、第2の発泡室の上面に対して吐出口部を形成する場合、製法上の公差が発生するため、第2の発泡室と吐出口部とを安定的に連通するために設けられた設計寸法である。そのため、吐出口部の中心軸と、第2の発泡室の上面の中心軸とは、必ずしも一致することはない。
第1の発泡室56aで発生した気泡は、第2の発泡室56bおよび、供給路57に向けて成長し、ノズル54内に充填されていたインクが、吐出口部53で整流されて、オリフィス基板に配置された吐出口53aから飛翔される。
供給路57は、一端が発泡室56に連通されるとともに他端が供給室55に連通されて形成されている。
ここで、第2の発泡室56bの側壁に、より大きな傾斜を設け、第1の発泡室56aにも傾斜を設けることで、第1の発泡室56aで発生した気泡により、ノズル内に充填されていたインクを、より効率良く、吐出口部53へ移動させることができる。しかし、第1の発泡室56a、第2の発泡室56b、および吐出口部53は、すべてフォトリソグラフィプロセスで、精度良く形成されているが、完全にずれ無く形成できるわけではなくて、サブミクロンレベルでのアライメント誤差が生じる。そのために、インクを素子基板11の主面に直交する方向に、まっすぐ飛翔させるためには、吐出口部53において、インクの飛翔方向を正しく整流することが必要である。そのために、吐出口部53の側壁の傾斜は、素子基板11の主面に直交する方向になるべく平行、すなわち、0°に近い値であることが望ましい。
ただ、飛翔するインク滴をより小さくするためには、吐出口の開口面積を、より小さくする必要がある。その結果、吐出口部53の高さ(長さ)が開口に比べて大きくなると、その部分でのインクの粘性抵抗が非常に増加するために、飛翔するインクの吐出特性を悪化することにつながる。そこで、第2の実施の形態の液体吐出ヘッド2では、第1の発泡室で発生した気泡を、第2の発泡室にまでより成長しやすくし、かつ、ノズル内に充填されたインクの第2の発泡室での流動性も良くする構成となっている。さらに、飛翔するインクの吐出方向の整流作用をするための構成となっている。ここで、素子基板11の表面から吐出口53aまでの距離にもよるが、第2の発泡室の高さは3〜25μm程度が望ましく、より望ましくは、5〜15μm程度である。また、吐出口部53の長さは1〜10μm程度が望ましく、より望ましくは、1〜3μm程度である。
また、ノズル54は、図13に示すように、インクの流動方向に直交するとともに素子基板11の主面に平行な流路の幅が、供給室55から発泡室56にわたってほぼ等しいストレート状に形成されている。また、ノズル54は、素子基板11の主面に対向する各内壁面が、供給室55から発泡室56にわたって、素子基板11の主面に平行にそれぞれ形成されている。
以上のように構成された液体吐出ヘッド2について、インクを吐出口53aから吐出する動作を説明する。
まず、液体吐出ヘッド2では、供給口36から供給室55内に供給されたインクが、第1および第2のノズル列の各ノズル54にそれぞれ供給される。各ノズル54に供給されたインクは、供給路57に沿って流動して発泡室56内に充填される。発泡室56内に充填されたインクは、ヒータ20により膜沸騰されて発生する気泡の成長圧力によって、素子基板11の主面に対してほぼ直交する方向に飛翔されて、吐出口53aからインク滴として吐出される。
発泡室56内に充填されたインクが吐出される際、発泡室56内のインクの一部は、発泡室56内に発生する気泡の圧力によって供給路57側に流動することになる。液体吐出ヘッド2では、第1の発泡室56aで発生した気泡の圧力は、第2の発泡室56bにも即座に伝わり、第1および、第2の発泡室56a、56bに充填されていたインクは、第2の発泡室内56bを移動していく。その際、内壁が傾斜しているので第1および第2の発泡室56a、56b内を成長していく気泡は、内壁に当接して圧力損失することが少なく、吐出口53aに向かって、良好に成長していく。そして、吐出口部53で整流されたインクは、オリフィス基板52に配置された吐出口53aから、素子基板11の主面に直交する方向に飛翔される。また、インク滴の吐出体積も良好に確保される。したがって、液体吐出ヘッド2は、吐出口53aから吐出されるインク滴の吐出速度の高速化を図ることができる。
したがって、液体吐出ヘッド2は、従来の液体吐出ヘッドに比較して、吐出速度および吐出体積から算出されるインク滴の運動エネルギが向上する。そのため、吐出効率を向上することができるとともに、上述した液体吐出ヘッド1と同様に吐出周波数特性を高速化することができる。
以上のように構成された液体吐出ヘッド2の製造方法について簡単に説明する。液体吐出ヘッド2の製造方法は、上述した液体吐出ヘッド1の製造方法とほぼ同一であるため、同一部材に同一符号を付すとともに同一工程については説明を省略する。
液体吐出ヘッド2の製造方法は、上述した液体吐出ヘッド1の製造方法に準じており、
第1の工程は、図8(a)および図9(a)に示すように、例えばSiチップ上にパターニング処理等により複数のヒータ20およびこれらヒータ20に電圧を印加するための所定の配線を設けることにより素子基板11を形成する基板形成工程である。
第2の工程は塗布工程であり、図8(b)、図9(b)、図9(c)に示すように、素子基板11上に、波長が330nm以下の紫外光であるDUV光を照射する。これによって分子中の結合が破壊されて溶解可能なる、下樹脂層42および上樹脂層41を連続して、スピンコート法によりそれぞれ塗布する。下樹脂層42の膜厚は、10μm、上樹脂層41の膜厚は、15μmである。
第3の工程はパターン形成工程であり、図8(b)および図9(d)に示すように、DUV光を照射する露光装置を用いて、この露光装置に、260nm以上のみを透過させる波長選択手段として、波長260nm未満のDUV光を遮断するフィルターを装着する。これにより、波長が260〜330nm付近のNUV光を照射させて、上樹脂層41を露光および現像することによって、上樹脂層41に所望のノズルパターンを形成する。
第4の工程では、図8(b)および図9(d)に示すように、パターン形成を行った上樹脂層41を140℃で10分加熱することで、その上樹脂層41の側面に20°の傾斜を形成した。
第5の工程は、図8(b)および図9(e)に示すように、上述した露光装置で波長210〜330nmのDUV光を照射させて、下樹脂層42を露光および現像することによって、下樹脂層42に所望のノズルパターンを形成するパターン形成工程である。
第6の工程は、ノズルパターンが形成されていて、DUV光によって分子中の架橋結合が破壊されて溶解可能となった上樹脂層41および下樹脂層42上に、図10(a)に示すように、オリフィス基板52となる透明な被覆樹脂層43を塗布する塗布工程である。被覆樹脂層43の膜厚は、30μmである。
第7の工程は、図8(c)および図10(b)に示すように、この被覆樹脂層43に、露光装置でUV光を照射させて、吐出口部53に相当する部分を露光および現像して除去することにより、オリフィス基板52を形成する。吐出口部53の長さは5μmである。
第7の工程は、図8(d)および図10(c)に示すように、素子基板11の裏面に化学的なエッチング処理等を行うことによって、素子基板11に供給口36を形成する。化学的なエッチング処理としては、例えば、強アルカリ溶液(KOH、NaOH、TMAH)を用いた異方性エッチング処理が適用される。
第8の工程は、図8(e)および図10(d)に示すように、波長330nm以下のDUV光を素子基板11の主面側から被覆樹脂層43を透過させて照射する。これにより、素子基板11とオリフィス基板52との間に位置するノズル型材である上下樹脂層41、42をそれぞれ溶出させる。
これによって、吐出口53aおよび供給口36と、これらを連通する供給路57に段差状に形成された制御部58を有するノズル54を備えるチップが得られる。このチップをヒータ20を駆動するための配線基板(図示せず)等と電気的な接続を行うことにより、液体吐出ヘッド2が得られる。
上述したように、液体吐出ヘッド2は、円錐台形の第2の発泡室56bを設け、第1の発泡室56aの壁面に傾斜を設けることによって、素子基板11から吐出口53aに至る方向に、徐々にインク体積が減少しながら整流される。吐出口53a付近では、液滴が飛翔する際に、飛翔する液滴が、素子基板11に対して垂直に飛翔する。また、発泡室56内のインクの流れを制御する制御部58が設けられることによって、吐出されるインク滴の体積の安定化が図られて、インク滴の吐出効率が向上される。
(参考形態)
なお、上述した液体吐出ヘッド2の第1の発泡室の高さをさらに小さくし、かつ、第2の発泡室を高くした参考形態の液体吐出ヘッド3について図面を参照して簡単に説明する。なお、この液体吐出ヘッド3において、上述した液体吐出ヘッド1、2と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
参考形態の液体吐出ヘッド3では、第1の実施の形態と同様に、発泡室66はヒータ20によって気泡が発生する第1の発泡室66aと、その第1の発泡室66aから吐出口部63に至る途中に配置された第2の発泡室66bとを有している。その第2の発泡室66bの側壁の傾斜が、素子基板11の主面に直交する平面に対して、10〜45°の傾斜で吐出口部26方向に縮小した構成となっている。さらに、第1の発泡室56aでは、複数配列された第1の発泡室56aを個々に区別するために設けられた壁面が、素子基板11の主面に直交する平面に対し、0〜10°までの傾斜で吐出口方向に縮小している。吐出口部53では、素子基板11の主面に直交する平面に対し、0〜5°の傾斜で吐出口53aの方向に縮小している。
図15、図16に示すように、液体吐出ヘッド3を備えるオリフィス基板62は、樹脂材料によって厚さが30μm程度に形成されている。オリフィス基板62は、先に図1を参照して説明したように、インク滴を吐出する複数の吐出口63と、インクが流動する複数のノズル64と、これら各ノズル64にインクを供給する供給室65とを有している。
吐出口63aは、素子基板11上のヒータ20に対向する位置に形成されており、直径が例えば15μm程度の丸孔となっている。なお、吐出口63aは、吐出特性上の必要に応じて放射状のほぼ星形に形成されてもよい。
第1の発泡室66aは、吐出口63aに対向する底面がほぼ矩形状をなすように形成されている。また、第1の発泡室66aは、素子基板11の主面に平行なヒータ20の主面と吐出口63aとの最短距離OHが30μm以下となるように形成されている。第1の発泡室66aの上面の素子基板11の表面からの高さが、例えば8μmに形成されており、第1の発泡室66a上に形成される第2の発泡室66bの高さが18μmに形成されている。第2の発泡室66bは四角錐台形の形状となっており、第1の発泡室66a側の1辺の長さが28μmであり、角には2μmのRが形成されている。そして、第2の発泡室66bの側壁は、吐出口部63側に向けて縮小するように、素子基板11の主面に直交する平面に対し、15°の傾斜を有している。そして、第2の発泡室66bの上面と直径が15μmの吐出口部63とは、最少が約1.7μmの段差をもって、連通している。
オリフィス基板62に形成される吐出口部63の高さは4μmである。吐出口63aの形状は丸形状であり、直径は15μmである。
第1の発泡室66aで発生した気泡は、第2の発泡室66bおよび、供給路67に向けて成長し、ノズル64内に充填されていたインクが、吐出口部63で整流されて、オリフィス基板62に配置された吐出口63aから飛翔される。
供給路67は、一端が発泡室66に連通されるとともに他端が供給室65に連通されて形成されている。
第1の発泡室66aは、素子基板上に形成される。この高さを小さくすることで、第1の発泡室66aに隣接する供給路67の一端部から第1の発泡室66aにわたってインクの流路の断面積が小さくなるように形成され、第2の実施の形態の液体吐出ヘッド2のノズル54に比してさらに断面積が小さくなっている。
一方、第2の発泡室66bの高さを高くすることで、第1の発泡室66aで発生した気泡の圧力は、第2の発泡室66bに伝わりやすくなる。そして、第1の発泡室66aから一端が連通している供給路67には伝わりにくくなり、吐出口部63へのインクの移動を、素早く、効率良くおこなうことができる。
また、ノズル64は、インクの流動方向に直交するとともに素子基板11の主面に平行な流路の幅が、供給室65から発泡室66にわたってほぼ等しい、ストレート状に形成されている。また、ノズル64は、素子基板11の主面に対向する各内壁面が、供給室65から発泡室66にわたって、素子基板11の主面に平行にそれぞれ形成されている。
以上のように構成された液体吐出ヘッド3について、吐出口63からインクを吐出する動作を説明する。
まず、液体吐出ヘッド3では、供給口36から供給室65内に供給されたインクが、第1および第2のノズル列の各ノズル64にそれぞれ供給される。各ノズル64に供給されたインクは、供給路67に沿って流動して発泡室66内に充填される。発泡室66内に充填されたインクは、ヒータ20により膜沸騰されて発生する気泡の成長圧力によって、素子基板11の主面に対してほぼ直交する方向に飛翔されて、吐出口63からインク滴として吐出される。
発泡室66内に充填されたインクが吐出される際、発泡室66内のインクの一部は、第1の発泡室66a内に発生する気泡の圧力によって供給路67側に流動することになる。液体吐出ヘッド3は、第1の発泡室66a内のインクの一部が供給路67側に流動する際、第1の発泡室66aの高さが小さくなっている。そのため、供給路67の流路が狭められているため、第1の発泡室66a側から供給路67を介して供給室65側に向かって流動するインクに対して供給路67の流路の流体抵抗値が増す。したがって、液体吐出ヘッド3は、発泡室66内に充填されたインクが、供給路67側に流動することがさらに抑制される。そのため、第1の発泡室66aから第2の発泡室66bへの気泡の成長がより増長され、インクの流動性が、吐出口側へ移動しやすくなって、インクの吐出体積がさらに良好に確保される。
また、液体吐出ヘッド3は、第1の発泡室66aから第2の発泡室66bに伝わる気泡の圧力が、さらに効率良くなり、かつ、第1の発泡室66aならびに第2の発泡室66bの壁面が傾斜している。そのため、第1の発泡室66aおよび第2の発泡室66b内に成長する気泡が、発泡室66内の内壁に当接して圧力を損失することが抑制されるため、気泡が良好に成長される。したがって、液体吐出ヘッド3は、吐出口63から吐出されるインクの吐出速度が向上される。
上述した液体吐出ヘッド3によれば、第1の発泡室66aおよび第2の発泡室66b内でのインクの移動がより素早く、より抵抗なく行うことができる。さらに、吐出口部の長さが短くなることで、液体吐出ヘッド1、2に比較してインクの整流作用がより迅速に行えるため、インク滴の吐出効率をさらに向上することができる。
(第3の実施の形態)
最後に、上述した液体吐出ヘッド1ないし3では、第1のノズル列16と第2のノズル列17の各ノズルが等しく形成された。第1のノズル列と第2のノズル列の形状およびヒータの面積が互いに異なる第3の実施の形態の液体吐出ヘッド4について図面を参照して説明する。
図17(a)、(b)に示すように、液体吐出ヘッド4が備える素子基板96には、素子基板の主面に平行な面積が互いに異なる第1および第2のヒータ98、99がそれぞれ配設されている。
また、液体吐出ヘッド4が備えるオリフィス基板97には、第1および第2のノズル列101、102の各吐出口106、107の開口面積および各ノズルの形状が互いに異なるように形成されている。第1のノズル列101の各吐出口106は、丸孔に形成されている。この第1のノズル列101の各ノズルは、上述した液体吐出ヘッド2と構成が同一であるため、説明を省略するが、発泡室内のインクの流動をよくするために、第1の発泡室上に、第2の発泡室109が形成されている。また、第2のノズル列102の各吐出口107は、放射状に略星型に形成されている。この第2のノズル列102の各ノズルは、発泡室から吐出口にわたってインクの流路の断面積が変化しないでストレート状に形成されている。
また、素子基板96には、第1および第2のノズル列101、102にインクを供給するための供給口104が設けられている。
ところで、ノズル内のインクの流れは、吐出口から飛翔されるインク滴の体積Vdによって生じており、インク滴が飛翔された後にメニスカスが復帰する作用が、吐出口の開口面積に応じて発生する毛細管力によって行われる。ここで、吐出口の開口面積S0、吐出口の開口縁の外周L1、インクの表面張力γ、インクとノズルの内壁との接触角θとすると、毛細管力pは、
p=γcosθ×L1/S0
によって表される。また、メニスカスは、飛翔されたインク滴の体積Vdのみによって発生されて、吐出周波数時間t(リフィル時間t)後に復帰すると仮定すると、
p=B×(Vd/t)
の関係が成り立つ。
液体吐出ヘッド4によれば、第1および第2のノズル列101、102が、第1および第2のヒータ98、99の面積、および吐出口106、107の開口面積が互いに異なる。これによって、単一の液体吐出ヘッド4から異なる吐出体積のインク滴を飛翔させることができる。
また、液体吐出ヘッド4は、第1および第2のノズル列101、102から吐出されるインクの物性値である表面張力、粘度、pHが同一である。各ノズルの構造に対応して、イナータンスAおよび粘性抵抗Bである物理量を、各吐出口106、107から吐出されるインク滴の吐出体積に応じて設定することで、第1及び第2のノズル列101、102の吐出周波数応答性をほぼ等しくすることが可能となる。
すなわち、液体吐出ヘッド4において、第1および第2のノズル列101、102ごとにそれぞれ吐出させる各インク滴の吐出量を例えば4.0(pl)と1.0(pl)とした場合について考える。この場合、各ノズル列101、102のリフィル時間tをほぼ等しくすることは、吐出口106、107の開口縁の外周L1と吐出口106、107の開口面積S0との比であるL1/S0と、粘性抵抗Bをほぼ等しくすることと同義である。
以上のように構成された液体吐出ヘッド4の製造方法について図面を参照して説明する。
液体吐出ヘッド4の製造方法は、上述した液体吐出ヘッド1、2の製造方法に準じており、上下樹脂層41、42にノズルパターンをそれぞれ形成する各パターン形成工程を除く他の工程が同一とされている。液体吐出ヘッド4の製造方法は、パターン形成工程において、図18(a)〜(c)に示すように、素子基板96上に上下樹脂層41、42をそれぞれ形成する。その後に、図18(d)及び(e)に示すように、第1および第2のノズル列101、102ごとに所望の各ノズルパターンがそれぞれ形成される。すなわち、第1および第2のノズル列101、102の各ノズルパターンは、供給口104に対して非対称にそれぞれ形成される。すなわち、液体吐出ヘッド4の製造方法は、上下樹脂層41、42のノズルパターンの形状を部分的に変更するだけで、液体吐出ヘッド4を容易に形成することできる。図19に示されるそれ以降の工程は第1の実施の形態で説明した工程と同じなので説明を省略する。
上述した液体吐出ヘッド4によれば、第1及び第2のノズル列101、102の各ノズルの構造を互いに異なるように形成される。これにより、各ノズル列101、102ごとに吐出体積が異なる各インク滴をそれぞれ吐出することが可能とされて、高速化が図られた最適な吐出周波数で安定的にインク滴を飛翔させることが容易に可能とされる。
また、液体吐出ヘッド4によれば、毛細管力による流動抵抗の釣り合いを調整することによって、回復機構によって回復動作を行う際にインクを均一かつ迅速に吸引することが可能とされるとともに、回復機構を簡素に構成にすることができる。そのため、液体吐出ヘッド4の吐出特性の信頼性を向上することができ、記録動作の信頼性が向上された記録装置を提供することが可能とされる。