JP3907261B2 - Vベルト式無段変速機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、Vベルトを円錐プーリに巻き掛けて動力を伝達するVベルト式無段変速機に係り、特に、プーリの推力制御を行うことができるVベルト式無段変速機に関する。
【0002】
【従来の技術】
Vベルトを適用した無段変速機構としては、例えば、本出願人が先に提案した特公昭63−42147号公報に示されているような技術等が従来から知られている。
【0003】
この従来の無段変速機構は、図5および図6に示すように、Vベルト5との接触プーリ幅が、油圧により可変制御可能な入力プーリ16と出力プーリ26の一対の可変プーリを備えて構成されており、入力プーリ16側では、図5に示すように、対向面を円錐状に形成した固定プーリ22と可動プーリ18とを備え、軸方向へ変位可能な可動プーリ18に加える油圧に応じて、V字状のプーリ溝幅を連続的に変更することにより、Vベルト5の走行半径、即ち、変速比を変更するように構成されている。尚、特に図示はしないが、上記出力プーリ26側にも同様に固定プーリと可動プーリが備えられている。
【0004】
ここで、Vベルト5の伝達トルク容量は、Vベルト5と円錐プーリ間の摩擦力によって決定され、この伝達トルク容量Tは、
T=2×Q×μ×r÷cosα …(数1)
で表現される。尚、同式において、
T;伝達トルク容量
Q;プーリ推力(図5参照)
μ;Vベルト5とプーリ間の摩擦係数
r;Vベルト5の走行半径(図5参照)
α;プーリ溝の頂角(図5参照)
である。
【0005】
従って、Vベルト5がプーリに対して滑らずにトルクTを伝達するために必要な最低限のプーリ推力Qは、
Q=T×cosα÷(2×μ×r) …(数2)
で決定される。
【0006】
このように、伝達トルクTに対して常に必要最低限のプーリ推力QでVベルト5を挟持すれば、Vベルト5の滑りを抑制して耐久性と伝達効率を維持することができるので、従来の無段変速機構の多くは、上記プーリ推力Qを求める式に基づいて、変速比と伝達トルクTに応じた必要最低限のプーリ推力Qを算出し、さらに、このプーリ推力Qに2〜3割の安全率を乗じて可動プーリ18を固定プーリ22へ向けて付勢して構成している。
【0007】
そして、この安全率を加味したプーリ推力Qは、
Q=T×cosα÷(2×μ×r)×Sf …(数3)
で決定される。但し、同式中、Sfは安全率でSf≒1.2〜1.3の一定値である。
【0008】
また、上記入力プーリ16と出力プーリ26との間に巻き掛けられたVベルト5としては、例えば、特開昭55−100443号公報に開示されているものが知られている。
【0009】
この従来のVベルト5は、図7と図8に示すように、複数の無端リングを積層した積層リング9と、この積層リング9の周方向へ相互に隣接して配列された多数のエレメント8と、から構成されている。
【0010】
これら各エレメント8の幅方向(図7の左右方向)の両端面には、上記入力プーリ16および出力プーリ26のV字状プーリ溝内周と摩擦接触する傾斜端面8a,8aが形成されていると共に、各エレメント8の内周側前面には、内周へ向けてエレメント8の板厚が徐々に減少するテーパ面8bが形成されており、隣り合うエレメント8,8同士は屈曲可能に構成されている。尚、このテーパ面8bは、図8に示すように、積層リング9の最内周面からVベルト5の内周側へ所定距離のテーパ開始点8cから形成されている。
【0011】
そして、相互に当接するエレメント8,8には、図7と図8に示すように、突起部10と、この突起部10と係合する穴部11と、が形成されており、隣り合うエレメント8,8同士の位置は所定位置に維持される。
【0012】
次に、上記のように構成された無段変速機構を備え、車両に搭載される無段変速機の基本的な構成を図1に基づき説明する。
【0013】
即ち、この図1に示す無段変速機構17は、トルクコンバータ40及び正逆転切換機構41とを介してエンジン(図示せず)に連結される入力プーリ16と、車軸に連結された出力プーリ26と、を備え、これら可変プーリ16,26はVベルト5によって連結されている。尚、これら入力プーリ16と出力プーリ26およびVベルト5は、前記従来例の図5乃至図8に示されたものと同様に構成されているので、図面には、同一のものに同一の符号を付して、その詳細な説明をここでは省略する。
【0014】
入力プーリ16は、上記エンジンに結合された軸と一体に回転する固定プーリ22と、この固定プーリ22と対向配置されてV字状のプーリ溝を形成する可動プーリ18と、から構成されており、該可動プーリ18は、変速制御弁2から入力プーリピストン室20へ作用する油圧に応じて軸方向へ変位可能に構成されている。
【0015】
一方、上記出力プーリ26は、車軸に連結された軸と一体に回転する固定プーリ30と、この固定プーリ30に対向配置されてV字状のプーリ溝を形成する可動プーリ34と、から構成されており、該可動プーリ34は、出力プーリピストン室32に作用する油圧コントロールユニット3からのライン圧に応じて軸方向へ変位可能に構成されている。
【0016】
このような入力プーリ16と出力プーリ26とで形成されるV字状のプーリ溝幅を変化させる制御は、入力プーリピストン室20への作動油の給排を調整する変速制御弁2によって行なわれる。
【0017】
即ち、CVTコントロールユニット1からの指令に応動するアクチェータとしてのソレノイド4と、このソレノイド4に駆動される変速制御弁2からなる油圧コントロールユニット3によって、上記プーリ溝幅は制御される。
【0018】
尚、上記油圧コントロールユニット3には、ライン圧供給手段(図示せず)が配設されており、該ライン圧供給手段を通じて出力プーリピストン室32と変速制御弁2へと所定のライン圧が供給される。
【0019】
マイクロコンピユータを主体に構成されたCVTコントロールユニット1は、車両の運転状態に基づいて演算した目標変速比を、実際の変速比へと一致させるように、目標値と実際の値の偏差に応じて上記ソレノイド4を駆動するように構成されている。
【0020】
このように構成されたVベルト式無段変速機においては、前記したように、無段変速機構17の前にVベルト5の回転方向を切り換える正逆転切換機構41が配設されており、車両の前進時と後退時ではVベルトの回転方向が逆転するように構成されている。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のVベルト式無段変速機にあっては、Vベルト5を逆回転(図8の左方向)させた場合、入力トルクと変速比およびプーリ推力(ライン圧)を同一としてでVベルト5を正回転(図8の右方向)させた場合と比較して、プーリとの間で発生する微少な滑りが増大するという問題を有していた。
【0022】
ここで、上記問題をより詳細に説明する。図4は、無段変速機構の最大入カトルクをT1とし、このトルクを伝達するために必要なプーリ推力Qを前記数3から求めて可動プーリ側に押圧した場合で入力トルクに対するスリップ率(=出力プーリ回転数の低下率)を測定した結果を示している。尚、入力プーリ回転数とプーリ比は一定としている。
【0023】
この図4からも明らかなように、上記構成のVベルト5にあっては、伝達トルクの増大に伴って数%程度の微少な滑りを発生するが、変速比とライン圧および入力トルク等の運転条件を全く同一にしても、Vベルト5を逆回転させた場合には、Vベルト5を正回転させた場合と比較して、スリップ率(Vベルトとプーリとの微少滑り)が増大する特性を有することが分かる。
【0024】
この発明は、かかる現状に鑑み創案されたものであって、その目的とするとことは、Vベルトの回転方向が逆回転となる後退時においても、Vベルトとプーリとの間で発生する微少な滑りを確実に抑制できるVベルト式無段変速機を提供しようとするものである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、エンジンと、該エンジンの回転を正転または逆転させて出力する正逆転切換機構と、入力プーリおよび出力プーリのV字状の溝間隔を油圧等で制御することにより前記正逆転切換機構からの回転を無段階に変速して車軸側に出力可能なVベルト式の無段変速機構と、を備え、後退時には前記Vベルトが逆転するように構成されたVベルト式無段変速機において、前記 V ベルトはエンジントルク、変速比およびプーリ推力を同一としたときに正転時に比べ逆転時の方が前記 V ベルトと前記入出力プーリ間のすべり率が大きくなる特性を有し、前記無段変速機構は、エンジントルクと変速比に応じて決定される可動プーリ推力を、同一のエンジントルクと同一の変速比条件において、車両が後退している間には前進している間よりも大きくなるように補正するプーリ推力制御手段を有して構成されていることを特徴とするものである。
【0026】
また、請求項2に記載された発明では、前記プーリ推力制御手段は、後退時の可動プーリ推力を、同一のエンジントルクと同一の変速比条件において、前進時に決定される可動プーリ推力の1.3倍以上に設定するように構成したことを特徴とするものである。
【0027】
さらに、請求項3に記載された発明では、前記プーリ推力制御手段は、後退時の可動プーリ推力を、無段変速機構の最大プーリ推力に設定するように構成されていることを特徴とするものである。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に示す実施の形態例に基づき、この発明を詳細に説明する。
【0029】
この形態例にかかるVベルト式無段変速機の概略的な構成は図1に示されており、その詳細な構成説明は、前記したのでここでは省略するが、本形態例では、無段変速機構17の前にVベルトの回転方向を切り替える正逆転切換機構41が配設されているから、車両の前進時と後退時ではVベルト5の回転方向が逆転する。このため、本形態例では、Vベルト5の回転方向に応じて、以下に示すようなプーリ推力制御を、図2のフローチャートで示すように、CVTコントロールユニット1で行なう。
【0030】
即ち、ステップS1では、車両の運転状態として、無段変速機構17から入力回転数Ninおよび出力回転数Nout(=車速VSP)と、運転者の操作に応じたスロットル開度TVO並びにインヒビタスイッチ8からの信号(変速モード等)を読み込むとともに、図示しないエンジンコントロールユニットからエンジン回転数Neを読み込む。
【0031】
ステップS2では、上記ステップS1で読み込んだ車両の運転状態に応じた目標変速比を演算する一方、無段変速機構17の実変速比を求めてから、実変速比と目標変速比の偏差に基づいてソレノイド4を駆動して変速制御弁2の制御を行なう。尚、目標変速比の演算は、例えば、車速VSPとスロットル開度TVOまたはアクセルペダル開度に応じて予め設定された変速マップ等に基づいて行なわれる。
【0032】
次に、ステップS3では、上記ステップS2で求めた目標変速比に応じて、入力プーリ16および出力プーリ26がVベルト5を挟持し押圧するプーリ推力Qの安全率Sfの演算を行なう。
【0033】
ここで、プーリ推力Qの安全率Sfは、車両後退時(Vベルト逆回転時)には車両前進時(Vベルト正回転時)よりも増加するように予め設定されたもので、ステップS2で求めた目標変速比に応じた安全率Sfに基づいて前記従来例に示す数3により、プーリ推力Qを演算する(ステップ4)。但し、ここでは、伝達トルク容量Tと摩擦係数μ及びプーリ頂角αは所定の値であり、Vベルト5の走行半径rは、変速比に応じて予め設定された値である。
【0034】
次に、ステップS5では、Vベルト5の回転方向に応じて2つの異なる値を取る安全率Sfに基づいて求めたプーリ推力Qとなるように、入力プーリ16および出力プーリ26へ供給するライン圧を制御する。このライン圧の制御は、油圧コントロールユニット3の図示しないライン圧制御手段によって行なわれ、図1に示した入力プーリ16および出力プーリ26の各ピストン室20,32へと供給されるライン圧に応じて、上記可動プーリ18,34は上記プーリ推力QでVベルト5を挟持し押圧する。
【0035】
このように、上記ステップS1乃至S5の処理を所定時間毎に繰り返すことにより、プーリ推力Qは、Vベルト5が逆回転する車両後退時には、Vベルト5が正回転する車両前進時よりも大きくなるように補正されるので、Vベルトとプーリ間で発生するスリップ率を低減して、Vベルト式無段変速機の耐久性と伝達効率を向上することができる。
【0036】
図3には、一定トルクを負荷した状態でライン圧(プーリ推力)だけを変化させた場合のスリップ率の変化が示されている。尚、このときの入力トルクは、図4に示したトルクT1(一定)とし、入力プーリ回転数とプーリ比およびライン圧の値は全て図3の測定時の条件と合わせてあり、このときのライン圧の値をPと定義する。
【0037】
図3において、Vベルトのスリップ率はライン圧の増加に伴い低下するから、車両後退時(Vベルト逆回転時)に発生する3.8%のスリップ率を、車両前進時(Vベルト正回転時)に発生する2.6%程度に低減するためには、ライン圧を前進時の1.35倍にすれば良く、この実験例のように、車両後退時(Vベルト逆回転時)には、エンジントルクと変速比に応じて決定される可動プーリ推力を、同一のエンジントルクおよび同一の変速比条件において、車両前進時に決定される可動プーリ推力の1.3倍以上に設定することにより、Vベルトとプーリ間で発生するスリップ率を効果的に低減させることができ、Vベルト式無段変速機の耐久性と伝達効率を向上させることができる。
【0038】
また、車両後退時(Vベルト逆回転時)には、エンジントルクと変速比に応じて決定される可動プーリ推力を、ベルト式無段変速機構の最大プーリ推力に設定しても、Vベルトとプーリ間で発生するスリップ率を容易に低減することができ、Vベルト式無段変速機の耐久性と伝達効率を向上させることができる。
【0039】
【発明の効果】
請求項1に記載された発明によれば、Vベルトとプーリ間のスリップ率が増大する車両後退時(Vベルト逆回転時)には、エンジントルクと変速比に応じて決定される可動プーリ推力を、車両前進時(Vベルト正回転時)よりも大きくなるように補正することにより、Vベルトとプーリ間で発生するスリップ率を低減して、Vベルト式無段変速機の耐久性と伝達効率を向上させることができる。
【0040】
また、請求項2に記載された発明によれば、Vベルトとプーリ間のスリップ率が増大する車両後退時(Vベルト逆回転時)には、同一のエンジントルクおよび同一の変速比条件において、エンジントルクと変速比に応じて決定される可動プーリ推力を、車両前進時に決定される可動プーリ推力の1.3倍以上に設定することにより、Vベルトとプーリ間で発生するスリップ率を効果的に低減して、Vベルト式無段変速機の耐久性と伝達効率を向上することができる。
【0041】
さらに、請求項3に記載された発明によれば、Vベルトとプーリ間のスリップ率が増大する車両後退時(Vベルト逆回転時)には、エンジントルクと変速比に応じて決定される可動プーリ推力を、ベルト式無段変速機構の最大プーリ推力に設定することにより、Vベルトとプーリ間で発生するスリップ率を容易に低減して、Vベルト式無段変速機の耐久性と伝達効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の一形態例が適用されるVベルト式無段変速機の基本的な構成を示す説明図である。
【図2】同無段変速機のCVTコントロールユニットで行なわれる制御例を示すフローチャートである。
【図3】同無段変速機で発生するスリップ率とライン圧の関係を示すグラフである。
【図4】従来のVベルト式無段変速機のプーリ推力制御により発生するスリップ率を示すグラフで、灰線は車両前進時(Vベルト正回転時)を、黒線は車両後退時(Vベルト逆回転時)を示す。
【図5】従来のVベルト式無段変速機における可変溝プーリとVベルトを示す概略断面図である。
【図6】同無段変速機構を示す概略側面図である。
【図7】従来のVベルトの構成を示す断面図である。
【図8】同Vベルトの拡大側面図である。
【符号の説明】
1 CVTコントロールユニット(プーリ推力制御手段)
5 Vベルト
16 入力プーリ
17 無段変速機構
26 出力プーリ
41 正逆転切換機構
Claims (3)
- エンジンと、該エンジンの回転を正転または逆転させて出力する正逆転切換機構と、入力プーリおよび出力プーリのV字状の溝間隔を油圧等で制御することにより前記正逆転切換機構からの回転を無段階に変速して車軸側に出力可能なVベルト式の無段変速機構と、を備え、車両後退時には前記Vベルトが逆転するように構成されたVベルト式無段変速機において、前記 V ベルトはエンジントルク、変速比およびプーリ推力を同一としたときに正転時に比べ逆転時の方が前記 V ベルトと前記入出力プーリ間のすべり率が大きくなる特性を有し、前記無段変速機構は、同一のエンジントルクと同一の変速比の条件下で、エンジントルクと変速比に応じて決定されるプーリ推力を、車両が後退している間には前進している間よりも大きくなるように補正するプーリ推力制御手段を有して構成されていることを特徴とするVベルト式無段変速機。
- 前記プーリ推力制御手段は、後退時の可動プーリ推力を、同一のエンジントルクと同一の変速比条件において、前進時に決定される可動プーリ推力の1.3倍以上に設定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のVベルト式無段変速機。
- 前記プーリ推力制御手段は、後退時の可動プーリ推力を、無段変速機構の最大プーリ推力に設定するように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のVベルト式無段変速機。
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| JP7669697A JP3907261B2 (ja) | 1997-03-13 | 1997-03-13 | Vベルト式無段変速機 |
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|---|---|---|---|
| JP7669697A JP3907261B2 (ja) | 1997-03-13 | 1997-03-13 | Vベルト式無段変速機 |
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Family Applications (1)
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| JP7669697A Expired - Lifetime JP3907261B2 (ja) | 1997-03-13 | 1997-03-13 | Vベルト式無段変速機 |
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