JP3904666B2 - 防振装置の製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は自動車のエンジンを車体へ防振的に取付けるためのエンジンマウント等に使用する防振装置の製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンマウントとして、側面視略円錐台形状の弾性部材と、その上底部が連結される第1の取付金具と、下底部側が連結される第2の取付金具と、第1の取付金具から弾性部材の側面略半周部分と当接可能に側方へ突出するストッパ突起と、このストッパ突起の外方を通って第2の取付金具から弾性部材の側面略半周部分を覆うように第1の取付金具側へ延出するとともに先端部がストッパ突起の上へ所定間隔をもって重なるように折り曲げてストッパ受け部が形成されたストッパ金具とを備えたものは公知である(例えば、特開平8−177959号,同270716号,同320048号,同338471号)。
【0003】
このエンジンマウントを製造するには、まず、ストッパ突起を取付けてない第1の取付金具とストッパ受け部が形成されていない第2の取付金具を弾性部材であるゴムと焼き付け一体化し、その後、第1の取付金具にストッパ突起を取付けるとともに、このストッパ突起にストッパ受け部が弾性部材の中心線方向において所定間隔で重なるようにストッパ金具を第2の取付金具へ取付けていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ストッパ金具を弾性部材成形後の別工程で取付けると、溶接もしくはボルト止め等の手段によるため、第1金具とストッパ受け部間の寸法出しに関する精度管理が難しくなる。
【0005】
したがって、弾性部材の成形時にストッパ金具を予め第2の金具側へ一体化しておき、弾性部材を成形してから、カシメ等によりストッパ受け部を形成加工し、また、ストッパ突起はこのストッパ受け部の加工を邪魔しないよう、ストッパ受け部の加工後に弾性部材とストッパ受け部を含むストッパ金具の間に形成されたストッパ空間へ入れることが望ましい。
【0006】
しかし、このような方法を採用しようとすれば、ストッパ受け部加工後の治具取り出しができなくなり、かつストッパ突起をストッパ空間へ入れることができなくなるので、これまでは実現されていなかった。本願発明は係る問題点の解決を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本願発明に係る防振装置の製法は、側面視略円錐台形状の弾性部材と、その上底部が連結される第1の取付金具と、下底部側が連結される第2の取付金具と、弾性部材の中心線に沿って第1の取付金具に設けられた取付軸を中心に回動可能な略円形をなす回動プレートに設けられて第1の取付金具から弾性部材の側面略半周部分と当接可能に側方へ突出するストッパ突起と、このストッパ突起の外方を通って第2の取付金具から弾性部材の側面略半周部分を覆うように第1の取付金具側へ延出するとともに先端部がストッパ突起の上へ所定間隔をもって重なるように折り曲げてストッパ受け部が形成されたストッパ金具とを備えた防振装置の製法において、
前記回動プレートを取付けてない第1の取付金具とストッパ受け部が形成されていない第2の取付金具を弾性部材と一体化し、
続いて、治具を第1の取付金具上に被せ、治具の一部に形成されたストッパ受け部成形用の側方張り出し部を弾性部材とストッパ金具の間へ入れてからストッパ金具の先端部を側方張り出し部上へ折り曲げ加工し、
その後、治具を弾性部材の中心線の回りに略半回転させ、側方張り出し部をストッパ金具の設けれていない場所へ移動させることにより、治具を取り外すことを特徴とする。
【0008】
このとき、ストッパ受け部に余肉を集合させたビード部を形成することができる。
【0009】
また、回動プレートを、弾性部材のストッパ金具が設けられていない側にストッパ突起が位置するように取付軸へ取付け、続いて、この取付軸の回りに回動プレートを略半回転させてストッパ突起をストッパ空間へ入れ、その後、回動プレートを第1の取付金具に対して回り止めすることもできる。
【0010】
【発明の効果】
本願発明は、弾性部材の側面略半分を覆うようにストッパ金具を設け、これに対応する治具の側方張り出し部も略半円状で足りるから、ストッパ受け部の加工後に略半回転させることにより治具の取り出しが可能になる。
【0011】
したがって、弾性部材の成形時にストッパ金具を予め第2の金具側へ一体化しておき、弾性部材を成形してから、カシメ等によりストッパ受け部を形成加工できるようになり、ストッパ受け部の精度管理が容易になる。
【0012】
このとき、ストッパ受け部は弾性部材の中心線方向すなわち内側へ折り曲げられるから、縮径されることになって余肉が生じるので、この余肉を一部に集合させてビード部を形成すれば、このビード部によりストッパ受け部の剛性を上げることができる。
【0013】
また、治具の取り出し後、略半周部分にストッパ突起を設けた回動プレートを第1の金具の取付軸に取付け、ストッパ突起を弾性部材のストッパ金具が設けられていない側へ位置させ、続いて回動プレートを略半回転させれば、ストッパ突起を弾性部材とストッパ受け部の間へ入れることができ、その後の回り止めによりこの位置へ固定できる。
【0014】
したがって、ストッパ受け部の加工を邪魔しないよう、ストッパ受け部の加工後にストッパ突起を弾性部材とストッパ受け部の間へ入れることが可能になる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本願発明の一実施形態を説明する。図1は自動車用エンジンマウントとして構成された液封マウントの主たる振動入力方向に沿う全断面図(図2の1−1線に沿う断面図)、図2はその平面図、図3は回動プレートの平面図である。
【0016】
まず、図1は乃至図3に基づいて液封マウントの概要構造を説明する。図1に示すようにこの液封マウントは振動源であるエンジン側へ取付けられる第1の取付金具1と、振動受け側である車体側へ取付けられる第2の取付金具2と、これらを連結する弾性部材3とを備えている。
【0017】
第1の取付金具1は略逆円錐型の本体部4と、この中心から突出するボルト形状の取付軸5とを備える。この取付軸5の回りには回動自在に取付けられる回動プレート6を設ける。回動プレート6は本体部4から突出するピン7により回動規制されている。
【0018】
回動プレート6は、図3に示すように、中央部に取付軸5が嵌合する中心穴8とその径方向外方にピン7が嵌合するピン穴9を有し、その周縁部10は傘状に傾斜してゴム等の弾性層11で被覆されるとともに、そのうちの略半周部分はより長く径方向へ延出し、この延出部両面に弾性層11と一体に形成された第1ストッパ突起12と第2ストッパ突起13が上下に逆方向へ突出している。
【0019】
第2の取付金具2は金属製の円筒部20を備え、その上部は弾性部材3を支持する外筒部30(後述)の下端部及び内側の仕切部材40と一緒にカシメにより連結されている。
【0020】
円筒部20の下部は半径方向外方へ張り出す車体側取付用のブラケット部21をなし、このブラケット部21の中央部側である円筒部20の下部開口部には、バルブ組立体22で取付けられて円筒部20の内部空間へ収容されている。
【0021】
バルブ組立体22は内部に負圧室23が形成され、この負圧室23は底部中央に設けられた傾斜ノズル24を介して図示省略の負圧源へ連通されている。
【0022】
予め円筒部20の内部空間へその内壁に沿うように収容されている仕切部材40とバルブ組立体22は、仕切部材40に沿って配設されているダイヤフラム25で分離されている。
【0023】
バルブ組立体22の上部は負圧室23に対する負圧制御により伸縮する弾性変形自在の弾性壁部を有し、その一部がバルブ26をなしてダイヤフラム25の中央部を仕切部材40の中央部側へ押し付けるようになっている。
【0024】
このバルブ26は負圧室23内に配設されたスプリング27で上方移動するように付勢され、負圧室23に負圧をかけることによりスプリング27に抗して下方移動するようになっている。
【0025】
仕切部材40は弾性部材3の内部空間とダイヤフラム25の間に形成された液室を、弾性部材3側の主室41とダイヤフラム25側の副室42に区画する部材であり、円形プレート43及びゴム等からなる略カップ状部44並びに支持プレート45からなる。
【0026】
仕切部材40の中央部には第1オリフィス46が形成され、通常時はダイヤフラム25を介してバルブ26で閉じられ、エンジンがアイドル状態のときのみ開放されて、主室41と副室42を連通するようになっている。
【0027】
仕切部材40の外周側には第2オリフィス47が略カップ状部44の肉厚内を略螺旋状に形成され、図では明らでないが、円形プレート43に形成された開口部とバルブ26の側方となるダイヤフラム25の外周部近傍に形成された開口部48を介して主室41と副室42を常時連通するようになっている。
【0028】
弾性部材3はゴムや適当なエラストマー等で第1の取付金具1及び外筒部30と一体に形成され、第1の取付金具1と外筒部30の上部間をテーパー状に連通する中空円錐部31と外筒部30の内側へ形成される円筒部32とが一体に形成されている。
【0029】
図4は外筒部30の単体形状に関する平面図であり、図5は図4の5−5線に沿う断面図、図6はビード部を図4中の矢A方向から示す図、図7はその断面図(図4の7−7線に沿う断面図)である。
【0030】
これらの図に示すように、外筒部30は上下に分割された上部33の下端部と下部34の上端部とを相互に圧入して一体化してあり、上部33の略半周部分は上方へ一体に突出する半円弧状をなして中空円錐部31の側面を略半周を覆う壁部であるストッパ金具35が設けられている。
【0031】
このストッパ金具35の先端部は中空円錐部31の外面斜面に略平行するストッパ受け部36が形成され、その一部には山形に上方へ突出するビード部37が形成されている。
【0032】
次に、ストッパ受け部36の形成方法を説明する。図8はストッパ受け部形成前の外筒部30単体の平面図、図9は図8の9−9線に沿う断面図であり、これらの図に明らかなように、ストッパ受け部を形成する前のストッパ金具35は液封マウントの中心線C(図1)と略平行になっている。
【0033】
図10乃至図13はストッパ受け部をカシメ加工する工程を説明するための図であり、まず、図10に示すように、カシメ用の治具50は、取付軸5が嵌合する嵌合軸51とストッパ受け部36を形成するための側方張り出し部52が一体に設けられている。
【0034】
側方張り出し部52はストッパ金具35と同様に嵌合軸51に対して平面視で略半円状に設けられ、その成形面53はストッパ受け部36と同一傾斜にされ、かつ外周部下部には中空円錐部31の一部がストッパ金具35の隅部に形成された隅ゴム38を逃げるための切り欠き部54が形成されている。
【0035】
そこで、この治具50の嵌合軸51を取付軸5に取付け、側方張り出し部52を中空円錐部31の外表面とストッパ金具35の間へ入れる。このとき嵌合軸51の下部はピン7の頭部に当接して本体部4の表面からある程度浮いている。
【0036】
この状態でストッパ金具35の上部を側方張り出し部52の成形面53へ向かってカシメると、図11に示すようにストッパ受け部36が形成される。同時にその一部には図6及び7に明らかなように、余肉によるビード部37が山形に形成される。
【0037】
続いて、図12に示すように取付軸5を中心に治具50を略180゜回転させると、側方張り出し部52が、中空円錐部31とストッパ受け部36及びストッパ金具35に囲まれたストッパ空間39から脱出するので、図13に示すように、取付軸5の軸方向へ抜き取ることができる。
【0038】
次に、回動プレート6の取付け工程を示す図14乃至図16に基づいて、ストッパ突起をストッパ空間39内へ配設する方法を説明する。まず図14において、ストッパ受け部36が形成されかつ治具50が取り去られた後の本体部4上方に回動プレート6を置き、その中心穴8を取付軸5と一致させる。
【0039】
このとき、取付軸5を挟んでストッパ金具35と反対側すなわちストッパ金具35が設けられていない位置に第1ストッパ突起12及び第2ストッパ突起13を配置する。
【0040】
この状態で図15に示すように、回動プレート6の中心穴8に取付軸5を通してをピン7の頭部へ当接して本体部4上に浮いた状態とし、続いて回動プレート6を取付軸5を中心に略180゜回転させると、図16に示すように第1ストッパ突起12及び第2ストッパ突起13がストッパ空間39内へ入る。
【0041】
この状態でピン穴9へピン7を嵌合すると回動プレート6が所定位置で回り止めされて、第1ストッパ突起12及び第2ストッパ突起13がストッパ空間39内へ固定された図1の完成状態になる。
【0042】
このように、ストッパ金具35を略半周分だけに形成すると、第1の取付金具1と第2の取付金具2を弾性部材3と焼き付け等により一体化した後で、略半円状に形成された側方張り出し部52を有する治具50を用いてストッパ受け部36を成形でき、その後治具50を回動させて取り外すことができる。
【0043】
このため、予めストッパ金具35を第2の取付金具2へ一体化しておき、弾性部材3と一体化した後でストッパ受け部36の加工が可能になるので、ストッパ受け部36の精度管理が容易になる。
【0044】
また、ストッパ受け部36の形成時に、内側へ折り曲げられて縮径されることにより生じる余肉を利用してビード部37を形成したので、このビード部37によりストッパ受け部36の剛性を高めることができる。
【0045】
また、回動プレート6の略半周部分に第1ストッパ突起12及び第2ストッパ突起13を設けたので、治具50を取り出した後から、回動プレート6を略半回転させることにより第1ストッパ突起12及び第2ストッパ突起13をストッパ空間39内へ配設できる。
【0046】
したがって、ストッパ受け部36の加工時に第1ストッパ突起12及び第2ストッパ突起13を予めストッパ空間39内へ配設しないで済むので、ストッパ受け部36の加工を邪魔しないようにできる。
【0047】
なお、本願発明は上記の実施形態に限定されず種々に変形可能であり、例えば、第1及び第2ストッパ突起12、13はいずれか一方であってもよく、かつこれらストッパ突起及びストッパ金具35を設ける範囲は半周以下であれば1/3、1/4周等任意にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】液封マウントの全断面図(図2の1−1線に沿う断面図)
【図2】その平面図
【図3】回動プレートの平面図
【図4】外筒部30の単体形状に関する平面図
【図5】図4の5−5線に沿う断面図
【図6】ビード部を図4中の矢A方向から示す図
【図7】その断面図(図4の7−7線に沿う断面図)
【図8】ストッパ受け部形成前の外筒部単体の平面図
【図9】図8の9−9線に沿う断面図
【図10】ストッパ受け部をカシメ加工する工程を説明する図
【図11】同上
【図12】同上
【図13】同上
【図14】回動プレートの取付け工程を示す図
【図15】同上
【図16】同上
【符号の説明】
1:第1の取付金具、2:第2の取付金具、3:弾性部材、5:取付軸、6:回動プレート、12:第1ストッパ突起、13:第2ストッパ突起、35:ストッパ金具、36:ストッパ受け部、37:ビード部、50:治具、52:側方張り出し部
Claims (3)
- 側面視略円錐台形状の弾性部材と、その上底部が連結される第1の取付金具と、下底部側が連結される第2の取付金具と、弾性部材の中心線に沿って第1の取付金具に設けられた取付軸を中心に回動可能な略円形をなす回動プレートに設けられて第1の取付金具から弾性部材の側面略半周部分と当接可能に側方へ突出するストッパ突起と、このストッパ突起の外方を通って第2の取付金具から弾性部材の側面略半周部分を覆うように第1の取付金具側へ延出するとともに先端部がストッパ突起の上へ所定間隔をもって重なるように折り曲げてストッパ受け部が形成されたストッパ金具とを備えた防振装置の製法において、
前記回動プレートを取付けてない第1の取付金具とストッパ受け部が形成されていない第2の取付金具を弾性部材と一体化し、続いて、治具を第1の取付金具上に被せ、治具の一部に形成されたストッパ受け部成形用の側方張り出し部を弾性部材とストッパ金具の間へ入れてからストッパ金具の先端部を側方張り出し部上へ折り曲げ加工し、その後、治具を弾性部材の中心線の回りに略半回転させ、側方張り出し部をストッパ金具の設けれらていない場所へ移動させることにより、治具を取り外すことを特徴とする防振装置の製法。 - 上記ストッパ受け部に余肉を集合させたビード部を形成したことを特徴とする請求項1に記載した防振装置の製法。
- 前記回動プレートを、弾性部材のストッパ金具が設けられていない側にストッパ突起が位置するように取付軸へ取付け、
続いて、この取付軸の回りに回動プレートを略半回転させてストッパ突起をストッパ金具と弾性部材の間に形成されたストッパ空間へ入れ、
その後、回動プレートを第1の取付金具に対して回り止めすることを特徴とする請求項1に記載した防振装置の製法。
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