JP3901930B2 - 多導体送電線用被接地金具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発・変電所や開閉所等で、主に500kV 以上の多導体送電線(多導体母線を含む)に取り付けられる被接地金具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
発・変電所等で機器の点検や改修等を行う場合には、機器に接続された送電線を停電させた後、送電線を接地してから作業を行う。多導体送電線の場合、接地は図6のようにして行われる。図において、10は発・変電所等に架設された多導体送電線(図示の例は3導体)、12は鉄構、14は懸垂碍子、16はGIS(ガス絶縁開閉装置)、18は多導体送電線10の導体間隔を保持するスペーサ、20は多導体送電線10の引き下げ部に取り付けられたスペーサ型の被接地金具である。多導体送電線10を接地するときは、接地車22を被接地金具20の真下に配置し、アウトリガー(図示せず)を張り出させた上で、上端に接地金具24を取り付けた絶縁棒26を上へ伸ばして行き、接地金具24で被接地金具20を挟みつける。接地金具24には予め接地線28が接続されているので、接地金具24で被接地金具20を挟みつけると、多導体送電線10を接地することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
接地をしようとする多導体送電線10には、活線状態にある隣の多導体送電線からの誘導電流が流れる。この誘導電流は 500kVの多導体送電線では 500A程度にもなり、接地金具24及び接地線28が過熱するという問題が生じている。過熱を防止するためには被接地金具20に接地金具24を2個取り付けることが考えられるが、被接地金具は多導体送電線の導体間隔で寸法が決まっているため、寸法上、接地金具を2個取り付けることはできない。
【0004】
このほか、1)スペーサ型の被接地金具は接地金具取付け部の幅が狭いため、接地金具を取り付けることが難しい、2)近くにGISのブッシング16aがあるため接地作業が慎重になり、時間がかかる、3)接地車のアウトリガーを張り出させようとするとGISの基礎にぶつかってしまい適正な作業環境が作れない、等の問題もあった。
【0005】
本発明の目的は、以上のような問題点を解決した多導体送電線用被接地金具を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の多導体送電線用被接地金具は、複数の接地金具を取り付けられる長さの棒状被接地導体と、この棒状被接地導体を長軸方向又は直径方向に向けて取り付けた長円形又は円形のコロナ防止リングと、このコロナ防止リングを、多導体送電線の外側に位置するように多導体送電線の二本の導体に一本ごとに取り付ける二組の取付け金具とを備えていることを特徴とするものである。
【0007】
このような被接地金具を用いれば、棒状被接地導体に複数の接地金具を取り付けることができるので、過熱の問題を解消できる。また棒状被接地導体は多導体送電線の外側に位置することになるが、コロナ防止リングに囲まれているので、通電時にコロナが発生するおそれは少ない。
【0008】
本発明の被接地金具は、二組の取付け金具のうち、傾斜した多導体送電線の上方を把持する取付け金具は、同じ多導体送電線の下方を把持する短い取付け金具より長さが長くなっており、
長い方の取付け金具は、コロナ防止リングに固定された二つの固定金具と、多導体送電線の二本の導体を一本ごとに把持する二つのクランプと、前記固定金具とクランプの間を連結する連結ロッドとからなり、固定金具と連結ロッドの接続部及びクランプと連結ロッドの接続部が折れ曲がり可能な関節部となっており、
短い方の取付け金具は、コロナ防止リングに固定された二つの固定金具と、多導体送電線の二本の導体を一本ごとに把持する二つのクランプとからなり、固定金具とクランプとの接続部が折れ曲がり可能な関節部となっている、構成とすることが好ましい。
【0009】
このような構成にすると、被接地金具を傾斜した多導体送電線に取り付ける場合に、多導体送電線の傾斜の度合いに関わらず、コロナ防止リングを多導体送電線の外側にほぼ水平に取り付けることができる。その結果、棒状被接地導体が多導体送電線から離れて配置されるため、接地作業を容易に短時間で行うことが可能となる。
【0010】
また本発明の被接地金具は、取付け金具の一部に、多導体送電線の通電時に、取付け金具とコロナ防止リングと取付け金具の間の多導体送電線とで構成されるループに循環電流が流れないようにする絶縁部を設けた構成とすることが好ましい。
このようにすれば被接地金具が循環電流で過熱するのを防止できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の被接地金具の一実施形態を示す。この被接地金具30は、長円形のコロナ防止リング32と、このコロナ防止リング32に図2に示すように長軸方向に向けて取り付けられた棒状被接地導体34と、この棒状被接地導体34の付いたコロナ防止リング32を図1のように傾斜した多導体送電線10の外側にほぼ水平に取り付ける二組の取付け金具36A、36Bとから構成されている。
【0012】
棒状被接地導体34は図1に示すように接地金具24を2個取り付けられるだけの長さを有している。棒状被接地導体34及びコロナ防止リング32はアルミ又はアルミ合金パイプにより形成することができる。
取付け金具36A、36Bのうち、傾斜した多導体送電線10の上方を把持する取付け金具36Aは、同じ多導体送電線10の下方を把持する取付け金具36Bより長さが長くなっている。長い方の取付け金具36Aは長円形のコロナ防止リング32の一方の直線部に2つ一組で取り付けられており、短い方の取付け金具36Bはコロナ防止リング32の他方の直線部に2つ一組で取り付けられている。
【0013】
長い方の取付け金具36Aは、コロナ防止リング32の一方の直線部に、そこから立ち上がるように固定された二つの固定金具38と、多導体送電線10の二本の導体を一本ごとに把持する二つのクランプ40と、その間を連結する二本の連結ロッド42とからなり、固定金具38と連結ロッド42の接続部及びクランプ40と連結ロッド42の接続部が折れ曲がり可能な関節部44A、44Bとなっているものである。
また短い方の取付け金具36Bは、コロナ防止リング32の他方の直線部に、そこから立ち上がるように固定された二つの固定金具45(固定金具38より短い)と、多導体送電線10の二本の導体を一本ごとに把持する二つのクランプ46とからなり、固定金具45とクランプ46との接続部が折れ曲がり可能な関節部48となっているものである。
【0014】
クランプ40及び46は同じ構造で、図3に示すように、導体把持部49の一方の部材をクランク形に延長して、端部に関節部用の穴あき接続部品50を形成したものである。
【0015】
長い方の取付け金具36Aの連結ロッド42は図4のような構造を有している。すなわち、アルミ又はアルミ合金等の金属パイプ52の一端に関節部用の穴あき接続部品54を、他端側に複数のボルト穴のあいた連結部品56を溶接してなる連結部材を2本用い、両部材の連結板56を絶縁板58を介して重ね合わせ、複数のボルトナット60で締付け接続したものである。なおボルトナット60は絶縁スリーブ62及び絶縁ワッシャ64により連結板56と絶縁されている。連結ロッド42をこのような構造にするのは、中間に電気的な絶縁部を設けるためである。
各関節部44A、44B、48は、隣り合う部材の穴あき接続部品を軸ピンで回動可能に接続することにより構成される。
【0016】
以上のように構成された多導体送電線用被接地金具30は、長い方の取付け金具36Aに2つの関節部44A、44Bを有し、短い方の取付け金具36Bに1つの関節部48を有しているため、クランプ40、46の取付け間隔を調整することにより、傾斜した多導体送電線10の外側にコロナ防止リング32を水平に取り付けることができる。コロナ防止リング32を水平に取り付ければ、棒状被接地導体34に接地金具24を最も取り付けやすい状態にすることができる。
【0017】
図1は多導体送電線10の傾斜の度合いが比較的きつい場合であるが、これより多導体送電線10の傾斜がゆるい場合は例えば図5のように取り付けることができる。つまりこの実施形態の被接地金具30は多導体送電線10の傾斜の度合いに関わらず、コロナ防止リング32を水平に取り付けることができる。
【0018】
また連結ロッド42の中間に絶縁部58が設けられているため、多導体送電線10が通電状態にあるときに、被接地金具30と多導体送電線10で構成されるループに循環電流が流れることがなく、被接地金具30の循環電流による過熱を防止することができる。
【0019】
以上の実施形態では、傾斜した多導体送電線10(多導体送電線の引き下げ部)に被接地金具30を取り付ける場合を説明したが、本発明の被接地金具は水平な又は垂直な多導体送電線に取り付けるようにすることもできる。水平な多導体送電線に取り付ける場合は取付け金具をすべて同じ長さにすればよく、垂直な多導体送電線に取り付ける場合はクランプ40、46が垂直配置となるように連結ロッドを湾曲させればよい。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、複数の接地金具を取り付けられる長さの棒状被接地導体を、コロナ防止リングによりコロナに発生を抑制した状態で、多導体送電線の外側に配置できるので、停電作業時に、棒状被接地導体に複数の接地金具を容易に取り付けることができる。このため誘導電流による接地金具及び接地線の過熱を防止でき、安全性の高い接地状態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る多導体送電線用被接地金具の一実施形態を、使用状態で示す、(A)は側面図、(B)は正面図。
【図2】図1の被接地金具を構成する棒状被接地導体付きコロナ防止リングの、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図。
【図3】図1の被接地金具を構成するクランプの、(A)は側面図、(B)は正面図。
【図4】図1の被接地金具を構成する連結ロッドの断面図。
【図5】図1の被接地金具を傾斜の異なる多導体送電線に取り付けた状態を示す、(A)は側面図、(B)は正面図。
【図6】多導体送電線の従来の接地作業を示す、(A)は全体説明図、(B)は(A)のB−B線矢視図。
【符号の説明】
10:多導体送電線
30:多導体送電線用被接地金具
32:コロナ防止リング
34:棒状被接地導体
36A:長い方の取付け金具
36B:短い方の取付け金具
38:固定金具
40:クランプ
42:連結ロッド
44A、44B:関節部
45:固定金具
46:クランプ
48:関節部
58:絶縁板
60:ボルトナット
62:絶縁スリーブ
64:絶縁ブッシュ
Claims (3)
- 複数の接地金具(24)を取り付けられる長さの棒状被接地導体(34)と、この棒状被接地導体(34)を長軸方向又は直径方向に向けて取り付けた長円形又は円形のコロナ防止リング(32)と、このコロナ防止リング(32)を、多導体送電線( 10 )の外側に位置するように多導体送電線(10)の二本の導体に一本ごとに取り付ける二組の取付け金具(36A、36B)とを備えていることを特徴とする多導体送電線用被接地金具。
- 二組の取付け金具(36A、36B)のうち、傾斜した多導体送電線(10)の上方を把持する取付け金具(36A)は、同じ多導体送電線(10)の下方を把持する短い取付け金具(36B)より長さが長くなっており、
長い方の取付け金具(36A)は、コロナ防止リング(32)に固定された二つの固定金具(38)と、多導体送電線(10)の二本の導体を一本ごとに把持する二つのクランプ(40)と、前記固定金具(38)とクランプ(40)の間を連結する連結ロッド(42)とからなり、固定金具(38)と連結ロッド(42)の接続部及びクランプ(40)と連結ロッド(42)の接続部が折れ曲がり可能な関節部(44A、44B)となっており、
短い方の取付け金具(36B)は、コロナ防止リング(32)に固定された二つの固定金具(45)と、多導体送電線(10)の二本の導体を一本ごとに把持する二つのクランプ(46)とからなり、固定金具(45)とクランプ(46)との接続部が折れ曲がり可能な関節部(48)となっている、
ことを特徴とする請求項1に記載の多導体送電線用被接地金具。 - 取付け金具(36 A、 36 B)の一部に、多導体送電線(10)の通電時に、取付け金具(36 A、 36 B)とコロナ防止リング(32)と多導体送電線(10)とで構成されるループに循環電流が流れないようにする絶縁部(58)を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の多導体送電線用被接地金具。
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