JP3901629B2 - アニュラ型渦巻き拡散火炎燃焼器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はガスタービン用の低NOx燃焼器に係り、更に詳しくは、螺旋火炎を用いたアニュラ型渦巻き拡散火炎燃焼器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年では環境保護のため、ガスタービンや焼却炉の燃焼排ガス中のNOx(窒素酸化物)の低減が義務付けられている。そのため、従来のガスタービン等の燃焼器では希薄予混合燃焼を行わせることでNOxの低減を図っているものが多い。
【0003】
図6は従来の希薄予混合燃焼方式の低NOx燃焼器の一例を示す図である。
この燃焼器60では、大量の空気が流れる主流ガス流路61内にスワールベーン62を設け、これにより燃焼器の軸方向に流れる空気を螺旋流として燃焼室63内に導入する一方、燃料ガスを燃焼室内に向けて軸方向に噴出し、螺旋流となった大量の空気と燃料ガスとを混合して、これに着火することでその燃焼を行っている。
すなわち、この例では大量の空気と燃料ガスとを混合して希薄燃料ガスを生成することで火炎のホットスポットをなくして高温燃焼時に主に発生するNOxの低減を図っている。
【0004】
ここで燃料ガスの濃度が希薄になるとその着火が困難となるため、従来の希薄予混合燃焼を行う燃焼器では保炎を行うパイロットバーナを燃焼室内に設け、これにより火炎基部を形成して希薄予混合燃焼ガスの連続燃焼の確保を図っていた。
【0005】
しかし希薄予混合燃焼方式の低NOx燃焼器は、希薄燃料ガスの安定燃焼が困難であり、逆火(flashback)や振動燃焼が発生しやすい問題点がある。また、希薄予混合燃焼により低NOx化が得られるものの、火炎温度が低いためCO濃度が高くなりやすい問題点がある。
【0006】
このような希薄予混合燃焼方式の問題点を回避するために、旋回火炎を用いた拡散燃焼方式の低NOx燃焼器が提案されている(例えば[非特許文献1])。
【0007】
【非特許文献1】
H.C.Gabler,et al."Asymmetric Whirl Combustion: A New Approach for Non-Premixed Low Nox Gas Turbine Combustor Design", AIAA-98-3530
【0008】
このAsymmetric Whirl Combustion(非対称旋回燃焼)では、図7に示すように、内部に燃焼空間を有する円筒形状のフレームチューブ71の一端近傍の側面に連結した空気噴出管72から空気をフレームチューブの接線方向に噴出して旋回流とするとともに、フレームチューブの一端面に連結した燃料ガス供給管73から燃料ガスをフレームチューブの軸方向に噴出することによって、空気と燃料ガスとの混合を促進し燃焼排ガス中のNOxの低減を図るものである。
【0009】
この非対称旋回燃焼器70では、空気流が軸方向成分を持たない点で、軸方向の流速が大きい従来のスワール(旋回器)と相違する。そのため、形成される旋回火炎が一種の排ガス循環作用を示し、低NOx化が達成できるとともに、保炎性が高く安定燃焼が可能である特徴を有する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の非対称旋回燃焼器は、単缶型の燃焼筒内部の強旋回流を用いて非対称渦巻き火炎を発生させることによって、低NOx性と火炎の安定の両立を図ることが可能であるが、以下の問題点があった。
(1)火炎が非対称であるため、内部温度および燃焼器出口温度が周方向に均一でない。
(2)負荷(空気流量)を増減させると強旋回領域の厚さが変化し、燃料噴射の最適位置が変化してしまうために、低NOx性もしくは燃焼効率が低下する。
(3)燃焼器サイズを大きくしていくと、噴流速度の減衰などから理想的な強旋回流を発生させることが困難になる。
(4)上記(2)(3)の不具合は粘性の影響によるものであるが、このため燃焼負荷を増大させるために小さい燃焼器を多数配列する必要が生じ、特にアニュラ型燃焼器の場合に、システムの複雑化・コストの増大につながる。さらにこの形態では小さい燃焼器の一部のみが燃焼領域であるため、アニュラ型燃焼器の場合に、燃焼器体積の全体を有効な燃焼領域として使用できず、実質的な燃焼負荷率が見掛け上の燃焼負荷率より大きくなってしまう。
【0011】
本発明はかかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、(1)逆火や振動燃焼が本質的に発生しない拡散燃焼方式であって、NOxとCOの発生量を低減でき、かつ(2)内部温度および燃焼器出口温度を周方向に均一化でき、(3)負荷を増減させても強旋回領域の厚さがほとんど変化せず低NOx性及び燃焼効率を保持でき、(4)燃焼器サイズを大きくしても容易に強旋回流を発生させることができ、これにより単一の燃焼器で高い燃焼負荷率を得ることができ、(5)燃焼器体積の大部分を有効な燃焼領域として使用して実質的な燃焼負荷率を低減することができるアニュラ型渦巻き拡散火炎燃焼器を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、閉じたリング状閉端面(12a)、開口したリング状開端面(12b)、前記リング状閉端面とリング状開端面のそれぞれ外縁を結び軸方向に延びる円筒形のアウタライナ(12c)、及び前記リング状閉端面とリング状開端面のそれぞれ内縁を結び軸方向に延びる円筒形のインナライナ(12d)を有する中空リング形の渦巻き火炎燃焼ライナ(12)と、該火炎燃焼ライナの閉端面近傍の外周部に燃焼用空気を接線方向内方に噴射し内部に旋回噴流を形成する複数の空気導入ポート(14)と、リング状閉端面から燃料を軸方向下流側に噴射する複数の主燃料噴射孔(16)とを備え、前記インナライナ(12d)の下流側端部に連結された内側ライナ(20c)、及び、前記アウタライナ(12c)の下流側端部に連結された外側ライナ(20b)を有する調節ライナ(20)をさらに備え、前記火炎燃焼ライナは、前記インナライナ(12d)とアウタライナ(12c)とにより形成される、軸方向と垂直な仮想平面において中空リング形となる第1の流路を有し、該流路内には燃焼領域(11)が含まれており、前記調節ライナ(20)は、前記内側ライナ(20c)と外側ライナ(20b)とにより形成される、軸方向と垂直な仮想平面において中空リング形となる第2の流路を有し、第1の流路の下流側端部に第2の流路が連結されているとともに、第2の流路は、第1の流路よりも、軸方向と垂直な仮想平面における断面積が大きくなっており、第2の流路は、稀釈空気が内側ライナ(20c)又は外側ライナ(20b)の空気流入口から第2の流路へ導入されることで温度分布と速度成分の調整を行うようになっている、ことを特徴とするアニュラ型渦巻き拡散火炎燃焼器が提供される。
【0013】
上記本発明の構成によれば、燃焼器内側にインナライナ(12d)を設置することにより、中空リング形の渦巻き火炎燃焼ライナ(12)内に接線方向から導入した燃焼用空気により、中空リング形の燃焼領域(アニュラス部)全体に均一な厚さの強い旋回流を形成することができる。またこの中空リング形燃焼領域内に形成された強旋回流中の自由渦領域および強制渦領域はそれぞれ火炎冷却と火炎保持に寄与するので、それぞれの領域に燃料をバランスよく噴出させることによって、アニュラス部全体に低温の青色火炎(渦巻き火炎)を形成させることができる。
【0014】
この旋回火炎内の燃焼は燃料が空気中に拡散し急速に混合しながら燃焼する拡散燃焼であるため、逆火や振動燃焼の発生を本質的に防止できる。また旋回噴流中の自由渦領域では、空気噴流がその領域に噴射された燃料と激しく混合することにより部分的に希薄な予混合気を形成し、燃焼温度を低下させるとともに、この領域内で生成された火炎には、火炎伸張が生じ火炎が短時間に冷却されるので、NOxの発生量を低減できる。また、燃料量は空気量に比べて少ないため、旋回火炎の角速度は大きく、軸速度は小さくなるので、形成される旋回火炎が一種の排ガス循環作用を示し、低NOx化とCO発生量の低減が達成できるとともに、保炎性が高く安定燃焼が可能である。
【0015】
また、インナライナ(12d)を設けたことにより、低NOx化に有効な低温の渦巻き火炎を生成させるための強旋回流を、燃焼器サイズや燃焼用空気流量によらず、一定の厚さで形成することができる。これにより、自由渦および強制渦領域を一定にコントロールすることができ、燃焼器サイズや負荷等によらず、最適な渦巻き火炎を形成させることができる。
【0016】
また、中空リング形の燃焼領域(アニュラス部)全体を燃焼領域として使えるため、マルチキャン状の渦巻き燃焼器、或いは、燃焼ノズルごとに分離した燃焼領域を持つ一般的なアニュラス燃焼器と比較して燃焼領域が大きく、実質的な燃焼負荷率向上に対して有利である。すなわち、燃焼器体積の大部分を有効な燃焼領域として使用して実質的な燃焼負荷率を低減することができる。
【0017】
また、空気ポートおよび燃料噴射孔を複数化し、均等配列することによって周方向温度分布を均一化できる。さらにアニュラス全体で旋回流を形成することによって火炎が外壁近傍に形成されると共にインナからの希釈空気の導入が可能であるため、半径方向温度分布の制御もでき、例えば、タービン翼に対して理想的な温度分布を形成することができる。
【0018】
また、燃焼領域全体が、中空リング形であるため、燃焼器全体の構造が簡素化できる。さらに、中空リング形の燃焼領域(アニュラス部)の中央部を貫通して軸等(例えば圧縮機とタービンの連結軸)の配置が可能な形態であるため、システム全体として飛躍的にシンプルな構造にすることができる。
前記調整ライナ(20)は、アニュラライナまたは缶状ライナである。かかる調整ライナ(20)により、流路面積の拡大による旋回速度の低減、希釈空気の導入による温度分布の均一化、等を行うことにより、燃焼排ガスをタービン等にそのまま供給することができる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記複数の空気ポート及び主燃料噴射孔を、リング状燃焼領域(アニュラス部)に形成される火炎(反応帯)の大きさを考慮して周方向に均等に配置する。
アニュラス部(リング状燃焼領域)に形成される渦巻き火炎は、それぞれの燃料噴射位置を起点としてアニュラス部内部で燃焼器中心軸に対して非対称に形成されるが、複数の空気ポート及び主燃料噴射孔を、火炎(反応帯)の大きさを考慮して周方向に均等に配置することにより、内部温度および燃焼器出口温度を周方向に均一化できる。
【0020】
前記複数の空気導入ポート(14)から噴射される空気量は、複数の主燃料噴射孔(16)から噴射される燃料量の理論空気量よりも十分大きく、これにより内部に形成される旋回噴流は角運動量が大きく、軸方向の運動量が小さく、強旋回流れとなるように設定されている。
この構成により、強旋回流では強い旋回領域がライナ壁面近傍に片寄るため下流からの強い循環流は生じず、中心から強旋回流領域直前までは角速度一定のラグランジェ的な視点では相対流速の非常に小さい静かな流れとなっていることにより、そこでの燃焼の安定性が非常に高くなる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付して使用する。
【0023】
図1は、壁面に沿った噴流の発達状態を示す模式図である。この図において、壁面に沿ってノズルから流出した直後の噴流中央部の速度分布は一様であるが、この一様速度部分は、両側から発達する境界層によって浸食されて減少し、ある距離のところで消滅する。この部分はくさび状であって、ポテンシャルコアと呼ばれる。またポテンシャルコアが消失したあとの完全発達領域でも速度および乱れの分布は変化し、十分下流ではこれらの分布形状は相似となる。ポテンシャルコアの長さは、ノズルの高さ又は直径をdとした場合、5〜8d程度である。
【0024】
強旋回流中のポテンシャルコア領域または完全発達領域では、速度最大のピークを境として自由渦的性質を有する領域と強制渦的性質を有する領域とに分けられ、そのうち自由渦領域ではせん断によって混合が著しく促進される。従って、この領域に燃料を噴射して燃焼させると、旋回火炎を維持したまま、火炎伸張が生じ火炎が短時間に冷却されるので、NOxの発生量を低減することができる。また、燃料量は空気量に比べて少ないため、旋回火炎の角速度は大きく、軸速度は小さくなるので、未燃ガスと燃焼ガスが近接して存在し、形成される旋回火炎が一種の排ガス循環作用を示し、低NOx化とCO発生量の低減の両方が達成できるとともに、保炎性が高く安定燃焼が可能となる。
【0025】
図2は、本発明の第1実施形態を示す図であり、(A)は側面断面図、(B)はそのA-A矢視図である。この図に示すように、本発明のアニュラ型渦巻き拡散火炎燃焼器は、渦巻き火炎燃焼ライナ12、空気導入ポート14、及び主燃料噴射孔16を備える。これらの構成機器は、燃焼器のケーシング(図示せず)内に収容され、渦巻き火炎燃焼ライナ12のまわりに空気が流入し、渦巻き火炎燃焼ライナ12の内部で燃焼した燃焼ガスがリング状開端面12bから図示しないガスタービン等に供給される。また、主燃料噴射孔16には外部から燃料が供給されるようになっている。さらに渦巻き火炎燃焼ライナ12には、イグナイタ(図示せず)が取付けられ、始動時に内部の可燃ガスに着火できるようになっている。
【0026】
本発明において、渦巻き火炎燃焼ライナ12は中心軸Z-Zを中心とする中空リング形であり、閉じたリング状閉端面12a、開口したリング状開端面12b、円筒形のアウタライナ12c及び円筒形のインナライナ12dを有する。円筒形のアウタライナ12cは、リング状閉端面12aとリング状開端面12bのそれぞれ外縁を結び軸方向に延びる。円筒形のインナライナ12dは、リング状閉端面12aとリング状開端面12bのそれぞれ内縁を結び軸方向に延びる。アウタライナ12cとインナライナ12dは、この例では中心軸Z-Zを中心とする完全な円筒形であるが、本発明はこれに限定されず、中心軸Z-Zに対してわずかに傾斜した切頭円錐面であってもよい。
【0027】
本発明において、中空リング形の渦巻き火炎燃焼ライナ12の内側、すなわちリング状閉端面12a、リング状開端面12b、アウタライナ12c及びインナライナ12dで囲まれる空間が燃焼領域11である。以下、この燃焼領域11をリング状燃焼領域又はアニュラス部と呼ぶ。
【0028】
空気導入ポート14は、火炎燃焼ライナ12のリング状閉端面近傍の外周部に周方向に一定の間隔で複数(この例では4本)が設けられる。すなわち複数の空気導入ポート14は、渦巻き火炎燃焼ライナ12の外部と内部を連通して接線方向に延び、燃焼用空気を接線方向内方に導入/噴射し内部に旋回噴流を形成するようになっている。複数の空気導入ポート14は、リング状燃焼領域11(アニュラス部)に形成される火炎(反応帯)の大きさを考慮して周方向に均等に配置するのがよい。
【0029】
主燃料噴射孔16は、複数(この例では4本)の空気導入ポート14から噴射された空気噴流の上述したポテンシャルコア領域または完全発達領域に複数(この例で5つ)設けられ、渦巻き火炎燃焼ライナ12のリング状閉端面12aから燃料を軸方向内方に噴射するようになっている。複数の主燃料噴射孔16は、リング状燃焼領域11(アニュラス部)に形成される火炎(反応帯)の大きさを考慮して周方向に均等に配置する。またリング状燃焼領域11に形成される強旋回流中の自由渦領域および強制渦領域に燃料をバランスよく噴出させるように、主燃料噴射孔16を配置する。
【0030】
各空気導入ポート14から噴射される空気量は、渦巻き火炎燃焼ライナ12の内部に強い旋回噴流及び旋回火炎を形成し、下流ガス(火炎、燃料、空気)が強く再循環しないような強旋回流になるように設定する。
すなわち合計空気量は、複数の主燃料噴射孔16から噴射される燃料量の理論空気量よりも十分大きく設定し、これにより内部に形成される旋回噴流は角運動量が大きく、軸方向の運動量が小さく、スワール比SをS=角運動量流量/(並進運動量流量×管路半径)と定義した場合に、一般的なガスタービンの燃焼器における旋回流のスワール比Sが通常S=0.6程度で、高くても1程度であることに対して、スワール比Sが3を超え、強旋回流れとなるように設定されている。
【0031】
図3は、本発明の第2実施形態を示す図であり、(A)は側面断面図、(B)はそのA-A矢視図である。この例では、空気導入ポート14の噴出し口14aが周方向に密接して配置され、実質的に全周から空気が流入するように、空気導入ポート14がリング状閉端面近傍の外周部に周方向に隣接した複数(この例では10本)設けられている。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
この構成により、渦巻き火炎燃焼ライナ12が大型である場合でも、複数の空気導入ポート14から大量の空気を接線方向内方に噴射し、スワール比Sの大きい強旋回噴流を内部に形成することができる。
【0032】
上述した本発明の構成によれば、燃焼器内側にインナライナ12dを設置することにより、中空リング形の渦巻き火炎燃焼ライナ12内に接線方向から導入した燃焼用空気により、中空リング形の燃焼領域(アニュラス部)全体に均一な厚さの強い旋回流を形成することができる。またこの中空リング形燃焼領域内に形成された強旋回流中の自由渦領域および強制渦領域はそれぞれ火炎冷却と火炎保持に寄与するので、それぞれの領域に燃料をバランスよく噴出させることによって、アニュラス部全体に低温の青色火炎(渦巻き火炎17)を形成させることができる。
【0033】
この旋回火炎内の燃焼は燃料が空気中に拡散し急速に混合しながら燃焼する拡散燃焼であるため、逆火や振動燃焼の発生を本質的に防止できる。また旋回噴流中の強制渦領域では、空気噴流がその領域に噴射された燃料と激しく混合することにより部分的に希薄な予混合気を形成し、燃焼温度を低下させるとともに、この領域内で生成された火炎には、火炎伸張が生じ火炎が短時間に冷却されるので、NOxの発生量を低減できる。また、燃料量は空気量に比べて少ないため、旋回火炎の角速度は大きく、軸速度は小さくなるので、形成される旋回火炎が一種の排ガス循環作用を示し、低NOx化とCO発生量の低減が達成できるとともに、保炎性が高く安定燃焼が可能である。
【0034】
また、インナライナ12dを設けたことにより、低NOx化に有効な低温の渦巻き火炎17を生成させるための強旋回流を、燃焼器サイズや燃焼用空気流量によらず、一定の厚さで形成することができる。これにより、自由渦および強制渦領域を一定にコントロールすることができ、燃焼器サイズや負荷等によらず、最適な渦巻き火炎17を形成させることができる。
【0035】
また、中空リング形の燃焼領域11(アニュラス部)全体を燃焼領域として使えるため、マルチキャン状の渦巻き燃焼器、或いは、燃焼ノズルごとに分離した燃焼領域を持つ一般的なアニュラス燃焼器と比較して燃焼領域が大きく、実質的な燃焼負荷率向上に対して有利である。すなわち、燃焼器体積の大部分を有効な燃焼領域として使用して実質的な燃焼負荷率を低減することができる。
【0036】
また、空気ポートおよび燃料噴射孔を複数化し、均等配列することによって周方向温度分布を均一化できる。さらにアニュラス全体で旋回流を形成することによって火炎が外壁近傍に形成されると共にインナからの冷却空気の導入が可能であるため、半径方向温度分布の制御もでき、例えば、タービン翼に対して理想的な温度分布を形成することができる。
【0037】
また、燃焼領域全体が、中空リング形であるため、燃焼器全体の構造が簡素化できる。さらに、中空リング形の燃焼領域(アニュラス部)の中央部を貫通して軸等(例えば圧縮機とタービンの連結軸)の配置が可能な形態であるため、システム全体として飛躍的にシンプルな構造にすることができる。
【0038】
図4は、本発明の第3実施形態を示す側面断面図である。この例では、渦巻き火炎燃焼ライナ12のリング状開端面12bに連結された調整ライナ20を備える。調整ライナ20は、温度分布と速度成分の調整を行う機能を有する。
【0039】
図4において、調整ライナ20は、単一の渦巻き火炎燃焼ライナ12の軸方向下流側に取付けられた単一のアニュラ形である。この調整ライナ20は、中空リング形の渦巻き火炎燃焼ライナ12の外縁と内縁に連結された外側ライナ20bと内側ライナ20cを有する。外側ライナ20bと内側ライナ20cの間に形成される中空円筒形空間は、渦巻き火炎燃焼ライナ12よりも断面積が大きい。また、外側ライナ20bと内側ライナ20cには複数の空気流入口が設けられアニュラライナ20を囲む外側から希釈空気が流入するようになっている。更に、内側ライナ20cの下流側はコーン状に広がっている。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0040】
この構成により、調整ライナ20において、渦巻き火炎燃焼ライナ12から流出した旋回速度火炎の燃焼反応を収束させ、流路面積の拡大により旋回速度を低減し、かつ希釈空気の導入により温度分布を均一化して、燃焼排ガスを下流側に位置するタービン等にそのまま供給できる。
【0041】
図5は、本発明の第4実施形態を示す側面断面図である。この例では、渦巻き火炎燃焼ライナ12のリング状開端面12bに連結された調整ライナ20を備える。この調整ライナ20は、渦巻き火炎燃焼ライナ12のリング状開端面12bの内側を閉じる円形閉鎖板20aと外側ライナ20bからなる。円形閉鎖板20aと外側ライナ20bの間に形成される円筒形空間は、渦巻き火炎燃焼ライナ12に比較した断面積が大きく、渦巻き火炎燃焼ライナ12から流出した旋回速度火炎の燃焼反応を収束させ、流路面積の拡大により旋回速度を低減し、かつ希釈空気の導入による温度分布の均一化して、燃焼排ガスを下流側に位置するタービン等にそのまま供給できるようになっている。
【0042】
なお、本発明は上述した実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更できることは勿論である。例えばボイラーや炉に用いられる燃焼器に本発明の燃焼器を適用することもできる。
【0043】
【発明の効果】
上述したように、本発明は、燃焼器の根本的な低NOx原理が、Asymmetric性(非対称性)よりもむしろ燃焼器内部への空気導入方法による強い旋回流のフローパターンと燃料噴射位置との相対的な関係に支配されていることを解明したことに基づくものである。これより、新規な構成の燃焼器を提案し、従来の本質的な問題点であった燃焼器(燃焼部)の圧力損失を解消した。
これにより、Asymmetric Whirl Combustion(非対称旋回燃焼)と同様の低NOx性/安定燃焼性を維持しつつ、ガスタービン燃焼器とした十分な高負荷燃焼を可能にした。
【0044】
従って、本発明のアニュラ型渦巻き拡散火炎燃焼器は、(1)逆火や振動燃焼が本質的に発生しない拡散燃焼方式であって、NOxとCOの発生量を低減でき、かつ(2)内部温度および燃焼器出口温度を周方向に均一化でき、(3)負荷を増減させても強旋回領域の厚さがほとんど変化せず低NOx性及び燃焼効率を保持でき、(4)燃焼器サイズを大きくしても容易に強旋回流を発生させることができ、これにより単一の燃焼器で高い燃焼負荷率を得ることができ、(5)燃焼器体積の大部分を有効な燃焼領域として使用して実質的な燃焼負荷率を低減することができる、等の優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】壁面に沿った噴流の発達状態を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態を示す図である。
【図4】本発明の第3実施形態を示す図である。
【図5】本発明の第4実施形態を示す図である。
【図6】従来の希薄予混合燃焼方式の低NOx燃焼器の模式的構成図である。
【図7】従来の非対称旋回燃焼方式の低NOx燃焼器の模式的構成図である。
【符号の説明】
11 燃焼領域、12 渦巻き火炎燃焼ライナ、
12a リング状閉端面、12b リング状開端面、
12c アウタライナ、12d インナライナ、
14 空気導入ポート、16 主燃料噴射孔、
17 渦巻き火炎、20 調整ライナ、
20a 円形閉鎖板、20b 外側ライナ、
20c 内側ライナ
Claims (3)
- 閉じたリング状閉端面(12a)、開口したリング状開端面(12b)、前記リング状閉端面とリング状開端面のそれぞれ外縁を結び軸方向に延びる円筒形のアウタライナ(12c)、及び前記リング状閉端面とリング状開端面のそれぞれ内縁を結び軸方向に延びる円筒形のインナライナ(12d)を有する中空リング形の渦巻き火炎燃焼ライナ(12)と、該火炎燃焼ライナの閉端面近傍の外周部に燃焼用空気を接線方向内方に噴射し内部に旋回噴流を形成する複数の空気導入ポート(14)と、リング状閉端面から燃料を軸方向下流側に噴射する複数の主燃料噴射孔(16)とを備え、
前記インナライナ(12d)の下流側端部に連結された内側ライナ(20c)、及び、前記アウタライナ(12c)の下流側端部に連結された外側ライナ(20b)を有する調節ライナ(20)をさらに備え、
前記火炎燃焼ライナは、前記インナライナ(12d)とアウタライナ(12c)とにより形成される、軸方向と垂直な仮想平面において中空リング形となる第1の流路を有し、該流路内には燃焼領域(11)が含まれており、
前記調節ライナ(20)は、前記内側ライナ(20c)と外側ライナ(20b)とにより形成される、軸方向と垂直な仮想平面において中空リング形となる第2の流路を有し、
第1の流路の下流側端部に第2の流路が連結されているとともに、第2の流路は、第1の流路よりも、軸方向と垂直な仮想平面における断面積が大きくなっており、
第2の流路は、稀釈空気が内側ライナ(20c)又は外側ライナ(20b)の空気流入口から第2の流路へ導入されることで温度分布と速度成分の調整を行うようになっている、ことを特徴とするアニュラ型渦巻き拡散火炎燃焼器。 - 前記複数の空気ポート及び主燃料噴射孔を、リング状燃焼領域(アニュラス部)に形成される火炎(反応帯)の大きさを考慮して周方向に均等に配置する、ことを特徴とする請求項1に記載のアニュラ型渦巻き拡散火炎燃焼器。
- 前記複数の空気導入ポート(14)から噴射される空気量は、複数の主燃料噴射孔(16)から噴射される燃料量の理論空気量よりも十分大きく、これにより内部に形成される旋回噴流は角運動量が大きく、軸方向の運動量が小さく、強旋回流れとなるように設定されている、ことを特徴とする請求項1に記載のアニュラ型渦巻き拡散火炎燃焼器。
Priority Applications (1)
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