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拡散燃焼方式低NOx燃焼器

JP3959632B2

Japan

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English
Inventor
永兆 廣光
潤 細井

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2002 JP

Application JP2002258431A events
2007-08-15
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はガスタービン用の低NOx燃焼器に係り、更に詳しくは、螺旋火炎を用いた拡散燃焼方式低NOx燃焼器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年では環境保護のため、ガスタービンや焼却炉の燃焼排ガス中のNOx(窒素酸化物)の低減が義務付けられている。そのため、従来のガスタービン等の燃焼器では希薄予混合燃焼を行わせることでNOxの低減を図っているものが多い。
【0003】
図8に従来の希薄予混合燃焼方式の低NOx燃焼器の一例を示した。
この燃焼器60では、大量の空気が流れる主流ガス流路61内にスワールベーン62を設け、これにより燃焼器の軸方向に流れる空気を螺旋流として燃焼室63内に導入する一方、燃料ガスを燃焼室内に向けて軸方向に噴出し、螺旋流となった大量の空気と燃料ガスとを混合して、これに着火することでその燃焼を行っている。
すなわち、大量の空気と燃料ガスとを混合して希薄燃料ガスを生成することで火炎のホットスポットをなくして高温火炎の発生を回避し、高温燃焼時に主に発生するNOxの低減を図っている。
【0004】
ここで燃料ガスの濃度が希薄になるとその着火が困難となるため、従来の希薄予混合燃焼を行う燃焼器では保炎を行うパイロットバーナを燃焼室内に設け、これにより火炎基部を形成して希薄予混合燃焼ガスの連続燃焼の確保を図っていた。
【0005】
しかしながら希薄予混合燃焼方式の低NOx燃焼器は、希薄燃料ガスの安定燃焼が困難であり、逆火(flashback)や振動燃焼が発生しやすい問題点がある。また、希薄予混合燃焼により低NOx化が得られるものの、火炎温度が低いためCO濃度が高くなりやすい問題点がある。
【0006】
このような希薄予混合燃焼方式の問題点を回避するために、旋回火炎を用いた拡散燃焼方式の低NOx燃焼器が提案されている(例えば[非特許文献1])。
【0007】
【非特許文献1】
H.C.Gabler,et al. "Asymmetric WhirlCombustion: A New Approach for Non-Premixed Low Nox Gas Turbine Combustor Design", AIAA-98-3530
【0008】
このAsymmetric Whirl Combustion(非対称旋回燃焼)では、図9に示すように、内部に燃焼空間を有する円筒形状のフレームチューブ71の一端近傍の側面に連結した空気噴出管72から空気をフレームチューブの接線方向に噴出して旋回流とするとともに、フレームチューブの一端面に連結した燃料ガス供給管73から燃料ガスをフレームチューブの軸方向に噴出することによって、空気と燃料ガスとの混合を促進し燃焼排ガス中のNOxの低減を図るものである。
【0009】
この非対称旋回燃焼器70では、空気流が軸方向成分を持たない点で、軸方向の流速が大きい従来のスワール(旋回器)と相違する。そのため、形成される旋回火炎が一種の排ガス循環作用を示し、低NOx化が達成できるとともに、保炎性が高く安定燃焼が可能である特徴を有する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の非対称旋回燃焼器は、低NOx性を犠牲にすることがなく高い保炎性を保持することができる燃焼方式であるが、非対称性や高スワール比を維持するために、噴出口面積の小さい空気導入ポートを1つだけ設置する形態になっている。そのため、圧力損失が非常に高く、大きな燃焼負荷をかけられない問題点があった。また、非対称であるため、温度分布が不均一となり熱応力が高い問題点があった。さらに、燃焼器出口の温度分布および旋回速度成分が従来の燃焼器と大きく異なるため、燃焼排ガスをタービン等にそのまま供給できない問題点があった。
【0011】
本発明はかかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、逆火や振動燃焼が本質的に発生しない拡散燃焼方式であって、NOxとCOの発生量を低減でき、かつ高い安定燃焼が可能であり、さらに、圧力損失を低減し、燃焼負荷を高めることができる拡散燃焼方式低NOx燃焼器を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、温度分布を均一化でき、熱応力を低減でき、かつ燃焼排ガスをタービン等にそのまま供給できる拡散燃焼方式低NOx燃焼器を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、閉じた閉端面(12a)と開口した開端面(12b)を有する中空円筒形の渦巻き火炎燃焼ライナ(12)と、該火炎燃焼ライナの閉端面近傍の外周部に燃焼用空気を接線方向内方に噴射し内部に旋回噴流を形成する複数の空気導入ポート(14)と、閉端面から燃料を軸方向下流側に噴射する複数の主燃料噴射孔(16)とを備え、前記主燃料噴射孔(16)は、空気導入ポートから噴射された空気噴流のポテンシャルコア領域または完全発達領域に設けられ、さらに、前記渦巻き火炎燃焼ライナ(12)の、その軸方向下流側に位置する開端面(12b)に連結され、温度分布と速度成分の調整を行うための調整ライナ(20)を備え、火炎燃焼ライナ(12)と調節ライナ(20)との接合面は、火炎燃焼ライナ(12)の軸方向に対して傾斜しており、前記開端面(12b)は、前記接合面を含む仮想平面に含まれており、前記火炎燃焼ライナ(12)の軸方向と垂直な流路空間断面積は、前記火炎燃焼ライナ(12)と調整ライナ(20)との接合部付近において、火炎燃焼ライナ(12)から調整ライナ(20)に移行することで拡大しており、前記調節ライナ(20)は、アニュラライナまたは缶状ライナであり、その周方向に延びてその内部に形成される流路空間を囲むとともに、前記軸方向下流側へ延びているライナ内壁を有し、前記仮想平面に含まれる傾斜内壁面が、前記軸方向下流側を向きつつ前記軸方向に対して傾斜して設けられており、前記仮想平面内において、前記ライナ内壁が前記開端面(12b)の半径方向外側にて前記開端面(12b)を囲むように前記周方向に延びており、開端面(12b)と前記ライナ内壁との間は傾斜内壁面となっている、ことを特徴とする拡散燃焼方式低NOx燃焼器が提供される。
【0013】
上記本発明の構成によれば、中空円筒形の渦巻き火炎燃焼ライナ(12)の閉端面近傍の外周部に、複数の空気導入ポート(14)から燃焼用空気を接線方向内方に噴射するので、内部に強い旋回噴流を形成することができる。また、この旋回噴流のポテンシャルコア領域または完全発達領域に複数の主燃料噴射孔(16)から燃料を軸方向内方に噴射するので、着火により強い旋回火炎を内部に形成することができる。
【0014】
この燃焼は燃料が空気中に拡散し急速に混合しながら燃焼する拡散燃焼であるため、逆火や振動燃焼の発生を本質的に防止できる。また旋回噴流のポテンシャルコア領域または完全発達領域では、空気噴流がその領域に噴射された燃料と激しく混合することにより部分的に希薄な予混合気を形成し、燃焼温度を低下させるとともに、この領域内で生成された火炎には、火炎伸張が生じ火炎が短時間に冷却されるので、NOxの発生量を低減できる。また、燃料量は空気量に比べて少ないため、旋回火炎の角速度は大きく、軸速度は小さくなるので、形成される旋回火炎が一種の排ガス循環作用を示し、低NOx化とCO発生量の低減が達成できるとともに、保炎性が高く安定燃焼が可能である。
【0015】
さらに、複数の空気導入ポート(14)から燃焼用空気を接線方向内方に噴射するので、各ポートからの噴射流速を抑えて大量の空気を導入することができ、圧力損失を低減し、かつ高負荷燃焼(燃焼負荷を高める)が可能となる。
【0016】
また、複数の空気導入ポート(14)を渦巻き火炎燃焼ライナ(12)のまわりに均等(好ましくは軸対称)に配置し、かつ空気噴流と燃料噴流も均等(好ましくは軸対称)に配置することができ、これにより温度分布を均一化でき、熱応力を低減できる。
前記調整ライナ(20)は、アニュラライナまたは缶状ライナである。かかる調整ライナ(20)により、流路面積の拡大による旋回速度の低減、希釈空気の導入による温度分布の均一化、等を行うことにより、燃焼排ガスをタービン等にそのまま供給することができる。
【0017】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記複数の空気導入ポート(14)から噴射される空気量は、複数の主燃料噴射孔(16)から噴射される燃料量の理論空気量よりも十分大きく、これにより内部に形成される旋回噴流は角運動量が大きく、軸方向の運動量が小さく、強旋回流れとなるように設定されている。
この構成により、強旋回流では強い旋回領域がライナ壁面近傍に片寄るため下流からの強い循環流は生じず、中心から強旋回流領域直前までは角速度一定のラグランジェ的な視点では相対流速の非常に小さい静かな流れとなっていることにより、そこでの燃焼の安定性が非常に高くなる。
【0018】
渦巻き火炎燃焼ライナ(12)の内部に形成される旋回噴流は、空気噴流のポテンシャルコア領域または完全発達領域からなるポテンシャル渦と、その内側の剛体渦とからなり、該剛体渦に閉端面(12a)から燃料を軸方向内方に噴射する保炎用の補助燃料噴射孔(18)を備える。
この構成により、補助燃料噴射孔(18)からポテンシャル渦の内側の剛体渦に燃料を供給し、循環ガス(火炎、燃料、空気)と混合/燃焼することにより保炎性を高めることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付して使用する。
【0021】
図1は本発明の原理図である。この図において、(A)は壁面に沿った噴流の発達状態を示す模式図、(B)は円筒形内の旋回噴流の模式図である。
図1(A)において、壁面に沿ってノズルから流出した直後の噴流中央部の速度分布は一様であるが、この一様速度部分は、両側から発達する自由混合層によって浸食されて減少し、ある距離のところで消滅する。この部分はくさび状であって、ポテンシャルコアと呼ばれる。またポテンシャルコアが消失したあとの完全発達領域でも速度および乱れの分布は変化し、十分下流ではこれらの分布形状は相似となる。ポテンシャルコアの長さは、ノズルの高さ又は直径をdとした場合、5〜8d程度である。
【0022】
図1(B)において、中空円筒形のライナ12内に、複数(この図で10)のポート14から接線方向内方に噴流を噴射すると、ライナ12の内壁に沿って、噴流の速度分布は、図1(A)と同様に変化する。
すなわち、ライナ12の内壁面に沿ってポート14から流出した直後の噴流中央部の速度分布は一様であり、この一様速度の部分は、両側から発達する自由混合層によって浸食されて減少し、ある距離のところで消滅する。またポテンシャルコアが消失したあとの完全発達領域でも速度および乱れの分布は変化し、十分下流ではこれらの分布形状は相似となる。このポテンシャルコアの長さも、図1(A)と同様にポート14の直径dの5〜8倍程度である。
【0023】
ポテンシャルコア領域または完全発達領域では、空気噴流が内側の自由混合層と激しく混合する。従って、この領域に旋回噴流を乱さないように燃料を噴射して燃焼させると、旋回火炎を維持したまま、火炎伸張が生じ火炎が短時間に冷却されるので、NOxの発生量を低減することができる。
また、燃料量は空気量に比べて少ないため、旋回火炎の角速度は大きく、軸速度は小さくなるので、未燃ガスと燃焼ガスが近接して存在し、形成される旋回火炎が一種の排ガス循環作用を示し、低NOx化とCO発生量の低減の両方が達成できるとともに、保炎性が高く安定燃焼が可能となる。
【0024】
図2は、本発明の第1実施形態を示す図であり、(A)は側面断面図、(B)はそのA-A矢視図である。また、図3は、図2の部分拡大図であり、(A)は側面断面図、(B)はそのA-A矢視図である。
【0025】
図2及び図3に示すように、本発明の拡散燃焼方式低NOx燃焼器は、渦巻き火炎燃焼ライナ12、空気導入ポート14、主燃料噴射孔16、補助燃料噴射孔18及び調整ライナ20を備える。これらの構成機器は、燃焼器のケーシング11内に収容され、渦巻き火炎燃焼ライナ12及び調整ライナ20のまわりに空気が流入し、渦巻き火炎燃焼ライナ12の内部で燃焼した燃焼ガスが調整ライナ20から図示しないガスタービン等に供給される。また、主燃料噴射孔16及び補助燃料噴射孔18には外部から燃料が供給されるようになっている。さらに渦巻き火炎燃焼ライナ12には、イグナイタ15が取付けられ、始動時に内部の可燃ガスに着火できるようになっている。
【0026】
図3に示すように、本発明において、渦巻き火炎燃焼ライナ12は中空円筒形であり、閉じた閉端面12aと開口した開端面12bを有する。
また空気導入ポート14は、火炎燃焼ライナ12の閉端面近傍の外周部に周方向に一定の間隔で複数(この例では10本)が設けられる。すなわち複数の空気導入ポート14は、渦巻き火炎燃焼ライナ12の外部と内部を連通して接線方向に延び、燃焼用空気を接線方向内方に導入/噴射し内部に旋回噴流を形成するようになっている。複数の空気導入ポート14は、軸心を中心に軸対称に配置されているのがよい。
主燃料噴射孔16は、複数(この例では10本)の空気導入ポート14から噴射された空気噴流の上述したポテンシャルコア領域または完全発達領域に複数(この例で5つ)設けられ、渦巻き火炎燃焼ライナ12の閉端面12aから燃料を軸方向内方に噴射するようになっている。なお、この例では、10本の空気導入ポート14に対して1本おきに5つの主燃料噴射孔16を設けているが、本発明はこれに限定されず、各空気導入ポート14に対してそれぞれ主燃料噴射孔16を設けてもよい。
【0027】
各空気導入ポート14から噴射される空気量は、渦巻き火炎燃焼ライナ12の内部に強い旋回噴流及び旋回火炎を形成し、下流ガス(火炎、燃料、空気)が強く循環しないような強旋回流になるように設定する。
すなわち合計空気量は、複数の主燃料噴射孔16から噴射される燃料量の理論空気量よりも十分大きく設定し、これにより内部に形成される旋回噴流は角運動量が大きく、軸方向の運動量が小さく、スワール比SをS=角運動量流量/(並進運動量流量×管路半径)と定義した場合に、一般的なガスタービンの燃焼器における旋回流のスワール比Sが通常S=0.6程度で、高くても1程度であることに対して、スワール比Sが3を超え、強旋回流れとなるように設定されている。なおスワール比Sは、圧損の上昇を防止するため、10未満であるのがよい。
【0028】
また、ポテンシャル渦の内側の剛体渦に燃料を供給し、循環ガス(火炎、燃料、空気)と混合/燃焼することにより保炎性を高めることができるように、渦巻き火炎燃焼ライナ12の内部に形成される剛体渦に閉端面12aから燃料を軸方向内方に噴射する保炎用の補助燃料噴射孔18を備える。
この保炎用の補助燃料噴射孔18は、渦巻き火炎燃焼ライナ12の中心に1つ設けるのが最も効果的であるが、中心から外れた位置に1つ又は2つ以上設けてもよい。また、補助燃料噴射孔18からの燃料の燃焼は、後述する実施例から明らかなように、燃焼安定性は高いが、発生NOx量は主燃料噴射孔16から燃焼に比べて多いため、補助燃料噴射孔18を省略し、主燃料噴射孔16のみで保炎してもよい。
【0029】
調整ライナ20は、渦巻き火炎燃焼ライナ12の開端面12bに連結され、温度分布と速度成分の調整を行う機能を有する。図2、3の例において、調整ライナ20は、複数の渦巻き火炎燃焼ライナ12が軸方向に取付けられた単一のアニュラライナである。
【0030】
このアニュラライナ20は、渦巻き火炎燃焼ライナ12の軸心に垂直なドーナツ状平面20aを有し、ドーナツ状平面20aに複数の渦巻き火炎燃焼ライナ12の開端面12bが取り付けられている。アニュラライナ20は、ドーナツ状平面20aの外縁と内縁に連結された外側ライナ20bと内側ライナ20cを有する。また、外側ライナ20bと内側ライナ20cには複数の空気流入口が設けられアニュラライナ20を囲む外側から希釈空気が流入するようになっている。
【0031】
また調整ライナ20は、渦巻き火炎燃焼ライナ12から流出した旋回速度火炎の燃焼反応を収束させ、流路面積の拡大により旋回速度を低減し、かつ希釈空気の導入による温度分布の均一化して、燃焼排ガスを下流側に位置するタービン等にそのまま供給できるように構成されている。なお、本発明において調整ライナ20は、アニュラライナに限定されず缶状ライナであってもよい。
【0032】
図4は、本発明の第2実施形態を示す図3と同様の拡大図であり、(A)は側面断面図、(B)はそのA-A矢視図である。
図4の例では、主燃料噴射孔16は、異なる半径方向位置に2つずつ5箇所、合計10箇所に設けられている。このうち少なくとも外側の5つの主燃料噴射孔16は、複数の空気導入ポート14から噴射された空気噴流のポテンシャルコア領域または完全発達領域に設けられ、火炎燃焼ライナ12の閉端面12aから燃料を軸方向内方に噴射するようになっている。この構成により、外側と内側の主燃料噴射孔16により低NOx性と燃焼安定性のバランスを最適化することができる。
【0033】
また図4の例では、アニュラライナ20が、渦巻き火炎燃焼ライナ12の軸心に対して傾斜したドーナツ状平面20aを有し、ドーナツ状平面20aに複数の渦巻き火炎燃焼ライナ12の開端面12bが取り付けられている。従って、渦巻き火炎燃焼ライナ12とアニュラライナ20の接合面は、ライナ12の軸心に対して傾斜し、渦巻き火炎燃焼ライナ12から軸方向に流出した旋回速度火炎の流れをアニュラライナ20の軸心方向に転向することができる。燃焼状態は渦巻き火炎ライナ内でほぼ決定されてしまうため、この傾斜の角度、向きは自由に設定することが可能である。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0034】
上述した本発明の構成によれば、中空円筒形の渦巻き火炎燃焼ライナ12の閉端面近傍の外周部に、複数の空気導入ポート14から燃焼用空気を接線方向内方に噴射するので、内部に強い旋回噴流を形成することができる。また、この旋回噴流のポテンシャルコア領域または完全発達領域に複数の主燃料噴射孔16から燃料を軸方向内方に噴射するので、着火により強い旋回火炎を内部に形成することができる。
【0035】
この燃焼は燃料が空気中に拡散し混合しながら燃焼する拡散燃焼であるため、逆火や振動燃焼の発生を本質的に防止できる。また旋回噴流のポテンシャルコア領域または完全発達領域では、空気噴流が内側の自由混合層と激しく混合するので、火炎伸張が生じ火炎が短時間に冷却されるので、NOxの発生量を低減できる。また、燃料量は空気量に比べて少ないため、旋回火炎の角速度は大きく、軸速度は小さくなるので、形成される旋回火炎が一種の排ガス循環作用を示し、低NOx化とCO発生量の低減が達成できるとともに、保炎性が高く安定燃焼が可能である。
【0036】
さらに、複数の空気導入ポート14から燃焼用空気を接線方向内方に噴射するので、各ポートからの噴射流速を抑えて大量の空気を導入することができ、圧力損失を低減し、かつ高負荷燃焼(燃焼負荷を高める)が可能となる。
【0037】
また、複数の空気導入ポート14を渦巻き火炎燃焼ライナ12のまわりに均等(好ましくは軸対称)に配置し、かつ空気噴流と燃料噴流も均等(好ましくは軸対称)に配置することができ、これにより温度分布を均一化でき、熱応力を低減できる。
【0038】
すなわち、本発明では、渦巻き火炎発生用の渦巻き火炎燃焼ライナ12の内径の接線方向に燃焼用空気導入ポート14を放射状に設置し、流速を抑えて燃焼器内に導入可能な空気量を増加させることで、ガスタービン用燃焼器として十分な高負荷燃焼を可能にした。
【0039】
またポート14は、適正な圧損を有するように、導入口に対して最適化された長さを有するのがよい。また燃料噴射孔16、18も最適化された位置に設置することによって、最適な噴出速度範囲をステージングにより維持可能にした。
さらに、この渦巻き火炎燃焼ライナ12を、流路面積を適度に拡大させたアニュラライナ20に同心円状に接続し、そこで速度を一旦十分に落とし、さらに希釈空気を必要量、適切な方向に噴出することにより、温度分布、旋回速度成分の調整を行う。また缶状ライナの接続方向やアニュラライナの形状により温度分布と旋回速度成分の調整を行ってもよい。
【0040】
また、強い旋回状態が形成できない始動時等においては、保炎用の補助燃料噴射孔18から燃料を中央部(剛体渦)に噴射することによって、保炎性の高い剛体渦内で火炎を保持することができる。
ただし、本発明の低NOx燃焼器は、基本的には着火性も良いため、パイロットを必要としなくても始動から定格まで対応できる。さらに、主燃料噴射孔を同心円上に並列に配置することによって、低NOx性と高い燃焼効率のバランスを図ることもできる。
【0041】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
図5は、NOx生成特性を示す実施例である。この試験では、図3の装置において、補助燃料噴射孔18を用いずに主燃料噴射孔16の位置のみを半径方向に中心0から外端1まで変化させ、発生するNOx量を計測した。この図において、横軸は主燃料噴射孔16の位置であり、縦軸は最大NOx量に対する発生NOx量の比である。また、空気導入ポート14の位置を横軸に示している。
この図から、主燃料噴射孔16が空気導入ポート14の位置と重なる場合に、特にNOx量が低下しているのがわかる。また、主燃料噴射孔16は、空気導入ポート14の接線方向下流側に近接して設けており、図1に示した空気噴流のポテンシャルコア領域又は完全発達領域に設けるのが特に好ましい。
【0042】
図6は、燃焼安定性を示す実施例である。この図において、横軸は主燃料噴射孔16の位置であり、縦軸は最大当量比に対する安定燃焼に必要な当量比(空気過剰率の逆数)の比である。また、空気導入ポート14の位置を横軸に示している。
この図から、主燃料噴射孔16を内側にするほど、当量比が小さくでき、希薄燃焼が可能であり、燃焼安定性が高いことがわかる。また逆に主燃料噴射孔16が空気導入ポート14の位置と重なる場合には、当量比が大きくなり、低NOx化はできるが、相対的に濃い燃料を必要とすることがわかる。
【0043】
図7は、燃焼安定性とNOx生成の関係を示す実施例である。この図において、横軸は最大当量比に対する安定燃焼に必要な当量比(空気過剰率の逆数)の比であり、縦軸は最大NOx量に対する発生NOx量の比である。また、図中の実線は、主燃料噴射孔16による燃焼、破線は補助燃料噴射孔18による燃焼の場合である。
この図から、主燃料噴射孔16による燃焼の方が低NOx化できるが、補助燃料噴射孔18による燃焼の方が燃焼安定性は高いことがわかる。従って、燃料噴射孔として主燃料噴射孔16と補助燃料噴射孔18を併用することによって、低NOx性と高い燃焼安定性のバランスを図ることができることがわかる。
【0044】
なお、本発明は上述した実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更できることは勿論である。例えばボイラーや炉に用いられる燃焼器に本発明の燃焼器を適用することもできる。
【0045】
【発明の効果】
上述したように、本発明は、燃焼器の根本的な低NOx原理が、Asymmetric 性(非対称性)よりもむしろ燃焼器内部への空気導入方法による強い旋回流のフローパターンと燃料噴射位置との相対的な関係に支配されていることを解明したことに基づくものである。これより、新規な構成の燃焼器を提案し、従来の本質的な問題点であった燃焼器(燃焼部)の圧力損失を解消した。
これにより、Asymmetric Whirl Combustion(非対称旋回燃焼)と同様の低NOx性/安定燃焼性を維持しつつ、ガスタービン燃焼器とした十分な高負荷燃焼を可能にした。
【0046】
また燃焼器としての基本要素は各バーナ単体で完結しているため、形態の自由度が高く、目的、運用条件等に則した形態を採りやすいことも、附随する効果として挙げられる。例えば、第2実施形態で示したように、缶部(渦巻き火炎燃焼ライナ)からアニュラ部(調整ライナ)への接続角度によりアニュラス全体で旋回流を作り、温度分布等を最適化することもできる。
【0047】
従って、本発明の拡散燃焼方式低NOx燃焼器は、逆火や振動燃焼が本質的に発生しない拡散燃焼方式であって、NOxとCOの発生量を低減でき、かつ安定燃焼が可能であり、圧力損失を低減し、燃焼負荷を高めることができ、温度分布を均一化でき、熱応力を低減でき、かつ燃焼排ガスをタービン等にそのまま供給できる、等の優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の原理図である。
【図2】 本発明の第1実施形態を示す図である。
【図3】 図2の部分拡大図である。
【図4】 本発明の第2実施形態を示す図3と同様の拡大図である。
【図5】 NOx生成特性を示す実施例である。
【図6】 燃焼安定性を示す実施例である。
【図7】 燃焼安定性とNOx生成の関係を示す実施例である。
【図8】 従来の希薄予混合燃焼方式の低NOx燃焼器の模式的構成図である。
【図9】 従来の非対称旋回燃焼方式の低NOx燃焼器の模式的構成図である。
【符号の説明】
11 ケーシング、12a 閉端面、12b 開端面、
12 渦巻き火炎燃焼ライナ、14 空気導入ポート、
15 イグナイタ、16 主燃料噴射孔、
18 補助燃料噴射孔、20 調整ライナ、
20a ドーナツ状平面(傾斜内壁面)、20b 外側ライナ、
20c 内側ライナ

Claims (3)
Hide Dependent

  1. 閉じた閉端面(12a)と開口した開端面(12b)を有する中空円筒形の渦巻き火炎燃焼ライナ(12)と、該火炎燃焼ライナの閉端面近傍の外周部に燃焼用空気を接線方向内方に噴射し内部に旋回噴流を形成する複数の空気導入ポート(14)と、閉端面から燃料を軸方向下流側に噴射する複数の主燃料噴射孔(16)とを備え、
    前記主燃料噴射孔(16)は、空気導入ポートから噴射された空気噴流のポテンシャルコア領域または完全発達領域に設けられ、
    さらに、前記渦巻き火炎燃焼ライナ(12)の、その軸方向下流側に位置する開端面(12b)に連結され、温度分布と速度成分の調整を行うための調整ライナ(20)を備え、
    火炎燃焼ライナ(12)と調節ライナ(20)との接合面は、火炎燃焼ライナ(12)の軸方向に対して傾斜しており、
    前記開端面(12b)は、前記接合面を含む仮想平面に含まれており、
    前記火炎燃焼ライナ(12)の軸方向と垂直な流路空間断面積は、前記火炎燃焼ライナ(12)と調整ライナ(20)との接合部付近において、火炎燃焼ライナ(12)から調整ライナ(20)に移行することで拡大しており、
    前記調節ライナ(20)は、アニュラライナまたは缶状ライナであり、その周方向に延びてその内部に形成される流路空間を囲むとともに、前記軸方向下流側へ延びているライナ内壁を有し、
    前記仮想平面に含まれる傾斜内壁面が、前記軸方向下流側を向きつつ前記軸方向に対して傾斜して設けられており、
    前記仮想平面内において、前記ライナ内壁が前記開端面(12b)の半径方向外側にて前記開端面(12b)を囲むように前記周方向に延びており、開端面(12b)と前記ライナ内壁との間は傾斜内壁面となっている、ことを特徴とする拡散燃焼方式低NOx燃焼器。
  2. 前記複数の空気導入ポート(14)から噴射される空気量は、複数の主燃料噴射孔(16)から噴射される燃料量の理論空気量よりも十分大きく、これにより内部に形成される旋回噴流は角運動量が大きく、軸方向の運動量が小さく、強旋回流れとなるように設定されている、ことを特徴とする請求項1に記載の拡散燃焼方式低NOx燃焼器。
  3. 渦巻き火炎燃焼ライナ(12)の内部に形成される旋回噴流は、空気噴流のポテンシャルコア領域または完全発達領域からなるポテンシャル渦と、その内側の剛体渦とからなり、該剛体渦に閉端面(12a)から燃料を軸方向下流側に噴射する保炎用の補助燃料噴射孔(18)を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の拡散燃焼方式低NOx燃焼器。