上記した従来の基板製造ラインは、多数の基板を効率良く製造することを目的とするもので、通常、複数枚のプリント基板が連結されたマルチ基板を処理対象としている。しかも、ライン上に配備される各装置は、あらゆる種類の基板に対応できるように設計されるため、各装置とも大型となり、製造ライン全体の規模も大きなものとなる。
ところが、近年の国内市場では、多品種少量生産が求められるようになり、マルチ基板にして製造するほどの数の基板を必要としない場合が多くなっている。また、上記のような基板製造ラインで多種類の基板の製造に対応しようとすると、製造する基板の種類が変更される都度、各装置の器具やデータの設定などを変更しなければならないため、この変更処理の頻度が増すと、生産効率が低下する、という問題がある。
このような問題を解決するものとして、下記の特許文献1に開示されているような基板組立装置が提案されている。この装置は、プリント基板を保持する基板保持部の上方に、組み立て作業用のワークカセットを配備し、このワークカセットを交換することにより、基板の製造にかかる各種工程を1台の装置で実行できるようにしたものである。
特開2003−37393号 公報 (段落[0010],[0040]〜[0058],図1、2参照。)
しかしながら、上記の装置では、複数のワークカセットを収容するための収容部が必要となる。また、基板保持部に新たな基板が供給される都度、ワークカセットの交換を複数回行わなければならない。しかも、基板保持部上の基板の処理を完了するまで、後続の基板の処理にかかることができないから、作業効率が悪い。したがって、複数種の基板を次々に搬入して、高速で処理を行うのは困難である。
また、両面に部品が実装された基板(以下、「両面実装基板」という。)を製造する場合、従来の製造ラインでは、同じ基板を2回流して、片面ずつ処理を行うことが多いが、このようにすると、処理時間が長くなり、流れ生産を行うのが困難になる。これを解決するために、同じ規模のラインをもう1つ連結して、各面を連続的に処理する方法もあるが、この場合には、ラインの全長がますます長くなる、という問題が生じる。
さらに、上記特許文献1の装置により両面実装基板を製造する場合には、各面毎に、ワークカセットの交換を複数回行わなければならなくなり、作業効率がますます低下する、という問題が発生する。
この発明は上記問題に着目してなされたもので、多品種少量生産の用途に適し、かつはんだ塗布、部品実装、はんだ付けの各工程を、高速で進めることができる基板製造装置および方法を提供することを目的とする。
この発明にかかる基板製造装置は、個片基板が搭載されたプラテンの搬送路が基台の上面に配備されるとともに、これら搬送路の進行方向に沿って、はんだ塗布部、部品実装部、およびリフロー炉を含むはんだ付け部が順に配備されたものである。
上記において、個片基板は、前記したマルチ基板を分割して得られる一片の基板である。プラテンは、この個片基板を支持する支持台として機能するほか、後記するように、リフローはんだ付け処理の際に、実装部品を保護し、はんだの溶融のために基板に熱を伝導する役割を果たすことができる。
はんだ塗布部、部品実装部、リフロー炉は、従来、専用装置として独立に設けられていた構成を、個片基板に合わせて小規模化したものとすることができる。したがって、これらの機構が搭載される基台の面積を、従来の製造ラインと比較すると、きわめて小さなものとすることができる。
上記構成の装置によれば、個片基板が搭載されたプラテンを搬送路に送り込むと、このプラテンが搬送される間に、はんだの塗布、部品実装、はんだの加熱の各処理が順に実行され、前記個片基板の上面への部品搭載処理が完了することになる。ここで、3つの機構は並列に動かすことができるから、はんだ塗布部や部品実装部では、基板が後工程に搬出されると、すぐにつぎの基板を取り込んで処理することができ、個片基板に対する部品実装処理を高速で行うことができる。
さらに上記の基板製造装置では、前記搬送路には、前記プラテンの搬送経路が2列設定されるとともに、この搬送路の始端と終端とは、前記基台の同一端面側に設けられる。
上記の構成によれば、両面実装基板を製造する場合、まず、処理対象の個片基板をプラテンに搭載した後に一方の搬送経路に送り込むと、その時点での上面に対し、はんだ塗布、部品実装、はんだ付けの各工程が順に実行される。これらの工程を経た個片基板が搬送路の終端に到着すると、この個片基板を反転してプラテンに再度搭載し、他方の搬送経路に送り込むことにより、新たな上面に対し、上記と同様の3段階の工程が実行され、個片基板の両面に対する部品実装処理が完了することになる。しかも、2列の搬送経路のそれぞれにプラテンを送り込むことができるから、個片基板の表面に対する部品実装処理と、既に表面側の部品実装処理が完了した個片基板の裏面に対する部品実装処理とを同時進行させることができ、両面実装基板の製造を効率良く進めることができる。
さらに、搬送路の始端と終端とは、基台の同一端面側に設けられているから、作業者は、場所を移動することなく、プラテンを送り込む作業、返却されたプラテンを受け取る作業、プラテン上の個片基板を反転させる作業などを行うことができ、一人の作業者でも効率良く作業をすることが可能となる。また、はんだ塗布部、部品実装部、はんだ付け部のそれぞれにおいて、作業に必要な設定データやプログラムを搬送経路毎に管理するとともに、いずれの搬送経路でも、複数枚の基板を各工程に順送りに流すようにすれば、基板の各面に対する処理を高速で行うことが可能となる。特に、部品実装部において、各搬送路から供給される2枚の基板に対し、これら基板間に共通する部品を種毎にまとめて実装するようにすれば、部品実装用の器具(吸着ノズルなど)を交換する回数を減らすことができ、処理効率を向上することができる。
上記構成のより好ましい態様では、前記搬送路には、リフロー炉内において、加熱処理後の個片基板を支持するプラテンを下方に移動させるための昇降機構が含まれており、この昇降機構より後方の搬送路は、昇降機構より前方の搬送路の下方に配備される。
上記の構成によれば、はんだ塗布、部品実装、はんだ付けの各工程を終えた個片基板は、リフロー炉内を下降した後、それまでの搬送路の下方を通って終端に導かれるようになる。このように、3つの工程に個片基板を導く経路と、各工程を経た個片基板を終端に導く経路とが上下に配備されるので、搬送路の設置に必要なスペースを削減することができ、装置を小型化することができる。
つぎに、この発明の好ましい態様の基板製造装置では、はんだ塗布部は、ディスペンス法によりはんだ塗布を行うように構成される。たとえば、シルクスクリーン印刷によるはんだ塗布を行うと、処理対象の基板が替わる毎に、そのはんだの印刷パターンに応じたマスクをセットする必要があるため、多品種少量生産を行う場合には、頻繁にマスクを交換しなければならなくなる。これに対し、ディスペンス法では、はんだ付け部位毎に、ディスペンサーと呼ばれる細いノズルからクリームはんだを吐出するので、処理対象の基板が替わっても、はんだの塗布位置を示すデータを切り替えるソフト処理だけで対応することができ、器具を交換する必要をなくして処理効率を向上することができる。
他の好ましい態様の基板製造装置では、前記プラテンは、前記個片基板を、その部品が実装されない部分に接触し、かつ前記個片基板の下面を前記プラテンの内底面から所定距離だけ上方で支持するように構成される。また、リフロー炉は、前記プラテンを下方から加熱するための第1の加熱装置と、前記プラテンに支持される個片基板の上面を上方から加熱するための第2の加熱装置とを含む。なお、プラテンには、熱吸収性を高めるため、たとえば黒色アルマイト処理を行うのが望ましい。
プラテンを接触させる「基板の部品が実装されない部分」は、基板の端面や端縁部など、いずれの種類の基板においても電子部品が搭載されることがない部分とするのが望ましい。なお、基板の端面とは、上面と下面との間の基板の厚みを形成する面である。また端縁部は、下面の周縁近傍の領域であり、周縁に沿って所定幅の枠状の領域として設定されるのが望ましい。また、プラテンは、その内底面に対する個片基板の下面の高さが、その基板に搭載される部品の高さよりも高くなる状態で、前記個片基板を支持するのが望ましい。
上記のプラテンによれば、特に、両面実装基板を処理対象とする場合に、部品実装処理が完了した側の面を下面として設置すると、この下面側の部品を、下方の加熱装置から遠ざけた状態で個片基板を支持することができる。また、各種個片基板に共通して部品が搭載されない部分をプラテンに接触させるようにすれば、基板によって部品配置が変わっても、同じプラテンを使用することができる。
上記の構成のリフロー炉で両面実装基板を処理する場合には、下方側の加熱装置からの熱をプラテンを介して基板に伝搬させ、基板の温度を上昇させるとともに、上方側の加熱装置からの熱により、上面側のはんだを溶融することができる。この場合、下方側の加熱装置からの熱だけでは、はんだの溶融は起こらないように、その加熱強度を調整すれば、既に部品が搭載されている下面側のはんだが再溶融するのを防止することができる。また、下面側の部品を、プラテンに接触しない状態で、プラテンの内底面より上方に位置させることができるので、加熱装置からの熱による影響を小さくできるとともに、プラテンから部品への直接の熱の伝搬を防いで、部品が損傷するのを回避することができる。また、下面側からプラテンを介して伝搬する熱により、基板の温度を上昇させるので、この処理が行われない場合よりも、上面側の加熱装置の加熱強度を低くすることができ、上面側の部品の損傷も防止することができる。
特に、融点の高い鉛フリーはんだが使用される場合には、はんだが溶融してから部品が損傷する温度までの余裕が小さいため、上記態様を適用するのが望ましい。
つぎに、他の好ましい態様にかかる基板製造装置では、前記プラテンには、個片基板をエア吸着させるための吸引孔が形成されるとともに、前記はんだ塗布部、部品実装部には、それぞれ前記吸引孔を介したエア吸引を行う装置が配備される。この構成によれば、はんだ塗布や部品実装を行う際には、個片基板をプラテンにエア吸着して固定することができるので、精度の高い処理を行うことが可能となる。
また、他の好ましい態様にかかる基板製造装置では、前記はんだ塗布部および部品実装部には、それぞれその工程を終了した後の個片基板に対する検査を行うための手段が設けられる。この検査のための手段は、プラテン上の個片基板を撮像するカメラと、カメラにより得た画像を処理するコンピュータにより構成することができる。はんだ塗布部の検査では、たとえば、各はんだの塗布位置の画像を切り出して、その画像中に正しいはんだの形状を示す特徴パターンが含まれているかどうかを判別する。また、部品実装部の検査では、たとえば、各部品実装位置毎の画像を切り出し、部品に印刷されている文字列や部品の形状などを抽出し、これらを、あらかじめ登録されたモデルデータと比較する処理を実行する。
上記の構成によれば、はんだ塗布状態や部品実装状態のために別体の装置を用意する必要がなくなる。また、仮に検査において不良が検出された場合には、その不良が発生した個片基板を後工程に流さないようにすることができる。
なお、この発明では、リフロー炉からの出口にも、同様に、はんだ付け部位の状態を検査するための手段を配備することができる。
この発明にかかる基板製造方法は、始端と終端とが同じ方角に配備され、かつ個片基板が搭載されたプラテンの搬送経路が2列設定された搬送路に対し、前記プラテンを搬送経路の一方に送り込んだ後、搬送路の終端に到着したプラテンを、前記個片基板を反転させた状態で他方の搬送路に送り込む。また、前記搬送路の各搬送経路を前記プラテンが進行する間に、前記プラテン上の個片基板の上面に対し、はんだを塗布するステップと、部品を実装するステップと、はんだの加熱処理を行うステップとを、順に実行するようにしている。
上記方法によれば、プラテンに搭載された個片基板が一方の搬送経路に送り込まれ、この経路を進行する間に、その時点での上面に対し、はんだ塗布、部品実装、はんだ付けの各工程が実行される。この後、終端に到着した個片基板を反転させてプラテンに搭載し、他方の搬送経路に送り込むことにより、先程とは反対の面に対し、同様に、はんだ塗布、部品実装、はんだ付けの各工程が実行され、両面実装基板が完成することになる。
なお、上記の方法では、搬送路の始端と終端とが同じ方角にあるので、個片基板をプラテンに搭載して搬送路に送り込んだり、プラテンを回収したり、プラテン上の個片基板を反転させる処理を、一人の作業者が行う場合にも、効率の良い作業を行うことが可能となる。なお、これらの作業を行うのは、人間に限らず、ロボットにより行うことも可能であるが、この場合にも、ロボットの配置スペースを一箇所にまとめることができ、作業効率の向上や設置スペースの削減などの効果を得ることができる。
この発明によれば、個片基板を搭載したプラテンが搬送路を通過する間に、前記個片基板の上面に対し、はんだ塗布、部品実装、はんだ付けの各工程を順に実行するので、部品実装基板の流れ生産を効率良く進めることができ、多品種少量生産の用途に対応することが可能となる。また、両面実装基板を製造する場合には、搬送路に前記プラテンの搬送経路を2列設定し、基板の表面に対する部品実装処理と、裏面に対する部品実装処理とを同時に進行させることができるので、両面実装基板の生産効率を向上することができる。
図1は、この発明にかかる基板製造装置の外観を概略化して示す。この基板製造装置100は、平坦な支持面45を有する基台4の前記支持面45に、はんだ塗布部1、部品実装部2、はんだ付け部3が、一方向(図では基台4の横幅方向)に沿って順に配備された構成のものである。なお、この基板製造装置は、1〜数人の作業者により作業を行う、いわゆるセル生産方式の装置であり、必要に応じて設置場所を変更できるように、基台4の下面の四隅にキャスター41が取り付けられている。
この基板製造装置100には、前記はんだ塗布部1、部品実装部2、はんだ付け部3(以下、これら3つの機構を、必要に応じて「処理部」と総称する。)に個片基板(マルチ基板の一片であり、初期状態では配線パターンが形成されただけのベア基板である。以下、単に「基板」という。)を順に送り込むための第1搬送路5と、各処理部1,2,3を経た後の基板を回収するための第2搬送路6とが設けられる。これらの搬送路5,6は、後記するように、はんだ付け部3のリフロー炉32内の昇降機構323(図12に示す。)を介して連絡する。また、第2搬送路6は、第1搬送路5の下方に配備されるとともに、第1搬送路5の始端と、第2搬送路6の終端とが、前記基台4の同一端面側(図示例では向かって左側)に位置するように設定される。
この基板製造装置100では、詳細は後記するが、前記基板を支持用の治具8(以下、「プラテン8」と呼ぶ。)に搭載し、このプラテン8を第1搬送路5に送り込んで、前記各処理部1,2,3を順に通過させることにより、前記プラテン8上の基板の上面に対し、はんだ塗布、部品実装、はんだ付けの各工程を実行するようにしている。第1搬送路5、第2搬送路6は、いずれも、プラテン8の搬送経路が2列設定されており、各処理部1,2,3は、前記第1搬送路5の各経路に送り込まれる2枚の基板をまとめて処理するように設定されている。
前記第1搬送路5は、はんだ塗布部1、部品実装部2にそれぞれ配備される一対のコンベア51,52(以下、はんだ塗布部1,部品実装部2のコンベアを個別に示す際には、それぞれa,bの識別符号を付す。)と、はんだ付け部3のリフロー炉32にプラテン8を搬入するための搬入用コンベア53とを連続させたものである。一方、第2搬送路6は、はんだ付け部3のリフロー炉32からプラテン8を搬出するための搬出用コンベア63と、この搬出用コンベア63から前記受け皿43までの間に配備される一対のコンベア61,62とを含む。
さらに、はんだ塗布部1および部品実装部2には、それぞれCCDカメラ10,20(以下、単に「カメラ10,20」という。)が配備される。これらのカメラ10,20は、対応する処理部にプラテン8が搬入されたとき、そのプラテン8に支持される基板の姿勢の適否やずれ量などを認識したり、処理対象の基板の切り替わりを示す識別用プラテン(図示せず。ただし、詳細は後述する。)を認識する目的で使用される。さらに、はんだ塗布部1や部品実装部2では、それぞれ、はんだ塗布後や部品実装後に、前記カメラ10,20を用いての検査が実行される。
なお、図中の42は、前記カメラ10,20により生成された画像を表示するためのモニタ装置であり、43は、第2搬送路6の終端に到着したプラテン8を受けるための受け皿である。また、この図1には図示しないが、基台4の下部には、後記する主制御装置9や、エア吸着ユニット15,25のエアータンクなどを収容する収容スペースが設けられる。
図2は、上記基板製造装置100により、両面実装基板を製造する場合の基板の流れを、模式的に示す。なお、図中、実線で示す経路は、前記第1搬送路5による基板の流れに、点線で示す経路は、前記第2搬送路6による基板の流れに、それぞれ対応する。なお、図中の「前工程」は、プリント基板の組立工程であり、「次工程」は、完成した両面実装基板を、所定の装置に組み付ける工程である。
以下では、便宜上、基板の一方の面を「表面」、他方の面を「裏面」と呼ぶ。この実施例では、両面実装基板を製造する場合には、前記第1搬送路5の一方のコンベア51(以下、「第1コンベア51」という。)を表面専用とし、もう一方のコンベア52(以下、「第2コンベア52」という。)を裏面専用とする。この場合、まず、前段のプリント基板の組立工程から供給されたベア基板を、その表面を上に向けた状態で前記プラテン8に搭載し、第1コンベア51に送り込んで各処理部1,2,3による処理を行わせる。つぎに、このプラテン8が第2搬送路6の終端に到着すると、前記基板を反転して再びプラテン8に搭載し、第1搬送路5の第2コンベア52に送り込む。この結果、前記プラテン8が各搬送路5,6を通過して戻ってきたときに、両面実装基板の完成品が得られることになる。
なお、第1搬送路5を構成する各コンベア51,52,53は、それぞれ、対応する処理部1,2,3において、作業位置への基板の位置決めや、搬入および搬出のために、個別に制御される。また、前記したように、各処理部1,2,3では、2個のプラテン8を同時に受け付けて処理するので、基板の表面に対する部品実装処理と、既に表面側の部品実装処理が完了した基板の裏面に対する部品実装処理とを、同時進行させることができる。また、はんだ塗布部1および部品実装部2では、後段の処理部にプラテン8を搬出すると、すぐにつぎのプラテン8を取り込むことができ、はんだ付け部3でも、部品実装部2から搬出されたプラテン8を順にリフロー炉32内に取り込むことができるから、基板の流れ生産が可能となり、処理を高速化することができる。
図3は、前記プラテン8の構成例を示す。図示例のプラテン8は、金属の成型品の表面を黒色アルマイト処理したもので、上面が開口されたケース体81を本体として、このケース体81の内底面82の適所から突出させた枠体83の内部に、大きさの異なる2個の矩形状の段部84,85を形成した構成のものである。各段部84,85は、それぞれ所定サイズの個片基板に応じた形状および大きさを持ち、内底面82からの高さが、基板面から部品までの高さよりも高くなるように形成される。また、各段部の84,85の幅は、それぞれ対応する基板の端縁部に対応する大きさに設定される(基板の端縁部とは、個片基板の端縁に沿う一定幅の枠状領域であり、処理対象となるいずれの個片基板にも部品が実装されない領域に相当する。)。さらに、内底面82の各段部84,85の内部に対応する位置には、それぞれ基板をエア吸着するための吸引孔86,87が形成される。
上記構成のプラテン8を使用する場合、作業者は、図4に示すように、処理対象の基板7の大きさに応じていずれかの段部84,85を選択し、その内部空間に上方から基板7を嵌め込むようにしている。これにより、基板7は、図5に示すように、その下面の端縁部を前記段部84,85の上面に、また端面の下部を段部84,85と枠体83の上端縁との間の内周面に、それぞれ接触させた状態で枠体83内に固定支持される。また、このとき、基板7の下面側の前記端縁部以外の部分(下面側に部品が実装されている場合は、その部品も含む。)は、前記段部84,85の下方に形成される空間88内に収容される。なお、図5において、71は、基板7の表面側に実装された部品を、72は、基板7の裏面側に実装された部品を、それぞれ示す。
前記はんだ塗布部1や部品実装部2のコンベア51,52には、後記する作業位置(図10(2)のA2,B2、図11(2)のA4,B4)に孔部が形成されている。図6は、前記基板7を載せたプラテン8が部品実装部1の作業位置に位置決めされた状態を示す。前記プラテン8の吸引孔86(87)をコンベア51(52)側の孔部91に位置合わせした状態で、コンベア51の下方から吸引処理を行うことにより、前記基板7はプラテン8上に吸着固定される。
なお、基板7を固定する方法は、エア吸引に限定されるものではなく、たとえば図7に示すようにしてもよい。
この図7の例では、プラテン8には前記吸引孔が形成されておらず、コンベア51(52)の下方に、昇降機構94が配備される。この昇降機構94は、水平板93の上面に一対の支持板92a,92bを垂直起立させた構成のものであり、コンベア51(52)には、各支持板92a,92bを出没させるための一対の孔部91a、91bが形成される。また、コンベア51(52)の両側には、それぞれ2本の支柱97a,97bが設けられる。これらの支柱97a,97bにより、コンベア51(52)の上方には、所定大きさの押さえ板95が板面を水平にした状態で固定支持される。
前記押さえ板95には、基板7の部品実装領域に対応する大きさの開口部96が形成されている。基板7を載せたプラテン8が前記昇降機構94の配置位置に到着すると、図示しない駆動機構によって前記昇降機構94が上昇し、各孔部91a,91bから突出した支持板92a,92bにより前記プラテン8が持ち上げられ、図示のように、基板7の上面の端縁部が押さえ板95に接した状態になる。
上記構成によれば、基板7は、上面の部品実装領域を露出させた状態で、前記昇降機構94による下方からの押圧力によって押さえ板95に押しつけられた状態になって固定されることになる。
図8は、前記基板製造装置の電気構成を示す。
前記はんだ塗布部1、部品実装部2、はんだ付け部3には、それぞれ個別の制御部11,21,31や、前記コンベア51,52,53の動作を調整するための位置決めユニット14,24,34が配備される。また、はんだ塗布部1および部品実装部2には、作業位置の基板7をプラテン8に吸着固定するためのエア吸着ユニット15,25が設けられる。
各処理部1,2,3の制御部11,21,31は、いずれも、CPUやメモリを含むものであり、上位装置としての主制御装置9に接続される。この主制御装置9も、CPUやメモリを具備するもので、周辺装置として、各種設定データなどを入力するための入力装置92(キーボード、コンソールなど)や、モニタ装置91などが接続される。
はんだ塗布部1には、前記したカメラ10、位置決めユニット14、エア吸着ユニット15のほか、ディスペンサヘッド13、3軸ロボット12、レーザーユニット16などが配備される。ディスペンサヘッド13は、はんだ塗布用のノズルを支持するためのものであり、3軸ロボット12は、このディスペンサヘッド13の位置を、左右、前後、上下の各軸方向(以下、それぞれX軸、Y軸、Z軸とする。)を基準に調整するためのものである。レーザーユニット16は、処理対象の基板7までの距離を計測するもので、基板7の上方からレーザー光を照射するとともに、その照射光に対する基板7からの反射光を受光するように構成される。
なお、カメラ10、3軸ロボット12、ディスペンサヘッド13には、それぞれ専用のコントローラ17,18,19が配備される。これらのコントローラ17,18,19は、いずれも、前記制御部11からのコマンドに基づき、対応する機構の動作を制御する。
部品実装部2には、前記カメラ20、位置決めユニット24、エア吸着ユニット25のほか、装着ヘッド23を具備する4軸ロボット22などが配備される。前記4軸ロボット22は、前記第1コンベア51bおよび第2コンベア52b上の2枚の基板に対する部品実装処理を並列して行うためのもので、X,Y,Zの3軸方向と、ヘッドの回転角度とに基づき、装着ヘッド23の動作を制御する。なお、装着ヘッド23には、径の異なる複数の部品吸着ノズルを着脱することができる。また、カメラ20および4軸ロボット22は、それぞれ専用のコントローラ26,27による制御を受ける。
はんだ付け部3には、前記したリフロー炉32が含まれる。このリフロー炉32には、詳細は後記するが、前記搬入用、搬出用のコンベア53,63のほか、上下のヒータ324,325、冷却ファン326、昇降機構323などが設けられている。
上記構成において、主制御装置9内のメモリには、あらかじめ、複数種の基板7毎に、各処理部1,2,3がその基板7を処理するのに必要なデータ(以下、「設定データ」という。なお、この設定データには、処理用のプログラムを含むこともできる。)が格納される。たとえば、はんだ塗布部1については、基板上の各はんだ塗布位置にディスペンサヘッド13を位置決めするための制御データとして、X,Y,Zの各軸毎の座標データなどが格納される。また、部品実装部2については、実装される各部品の種類、使用される部品吸着ノズルの種類、装着ヘッド23の位置決め制御のための軸毎の座標データなどが、格納される。また、はんだ付け部3についても、必要に応じて、加熱強度やコンベアの搬送速度にかかるデータなどを格納することができる。さらに、はんだ塗布部1および部品実装部2については、前記した検査を実行するために必要なデータも格納される。
また、主制御装置9は、前記入力部92より第1搬送路5の各コンベア51,52に供給される基板7の種類を示すデータの入力を受け付け、その基板7に対応する設定データを各処理部1,2,3に転送して、供給される基板7に適した処理を行わせることができる。さらに、この実施例では、第1搬送路5に送り込む基板7の種類を変更する際に、基板7が搭載されない空のプラテン8を流すようにしている。このプラテン8には、特定のマークが付されており、前記した識別用プラテンとして機能する。
はんだ塗布部1および部品実装部2では、プラテン8を受け付ける都度、前記カメラ10,20による撮影を行い、得られた画像に対して前記特定マークの抽出処理を行うことで,識別用プラテンの有無を判別するようにしている。また、この識別用プラテンを認識すると、主制御装置9にアクセスして、つぎの処理対象の設定データの転送を受け、以後に受け付ける基板7に対する処理を切り替えるようにしている。一方、はんだ付け部3では、リフロー炉32に、各種基板に共通に適用できる加熱条件を設定しているため、基板7の種類に関わらず、同一内容の処理を実行する。
なお、基板7の種類を変更する場合の識別方法は、上記に限定されるものではない。たとえば、実装時に用いるプラテン8と比べて高さの高いプラテンを識別用プラテンとし、光電センサなどでプラテンの高さを検出する方法により、識別用プラテンを認識するようにしてもよい。
前記はんだ塗布部1、部品実装部2の各カメラ10,20の下方には、それぞれ照明用の光源が配備される。図9(1)(2)は、各カメラ10,20や光源110,210による基板7の観測状態を示す。なお、図9(1)の74は基板7上のはんだである。図9(2)の71は、図5,6と同様の部品であって、部品実装部2において前記はんだ74上に装着されたものである。
各光源110,210は、下面が開口された筒状の筐体112,212に複数個のLED113,213を収容した構成のものである。はんだ塗布部1のカメラ10用の光源110では、前記筐体112内の上部にカメラ10の覗き穴111が設けられ、その下端にパラソル状の拡散板114を連続させてある。この拡散板114の下方には、多数のLED113aが光軸を斜め方向に向けて配備される。また、拡散板114の上方にも、複数のLED113bが、光軸を水平にして円環状に配列される。なお、下方のLED113aは、はんだ74の観測用のもので、はんだ74を高さ方向に沿って観測する都合上、光軸が斜めに設定されている。一方、上方のLED113bは、基板本体の観測に使用されるもので、その光は、前記拡散板114を介して基板7に導かれる。
部品実装部2のカメラ20用の光源210では、カメラ20の覗き穴211の下端に、この覗き穴211よりも径の大きな筒状体214が設けられ、その周面に沿って、LED113が複数列にわたって配列される。筒状体214の周面は拡散板により形成されており、この拡散板を介したLED213からの光によって、基板7を照明するようにしている。
つぎに、各処理部1,2,3毎に、その構成および搬入されたプラテン8の流れを説明する。なお、以下では、前記図2に示した流れに沿って両面実装基板が製造されるものとして、表面を上にした状態の基板7が搭載されるプラテン8を「表側プラテン8A」、裏面を上にした状態の基板7が搭載されるプラテン8を「裏側プラテン8B」と、区別して示す。また、図示はしないが、これらのプラテン8A,8Bに搭載される基板については、それぞれ7A,7Bの符号を付けて説明する。
まず、図10(1)は、はんだ塗布部1の概略構成を示す。このはんだ塗布部1では、所定大きさの支持板101上に、前記第1搬送路5の各コンベア51a,52aが支持されるとともに、これらコンベア51a,52aを挟むように、一対の支柱105,105が配備される。これらの支柱105,105間には、Y軸方向に沿う固定レール103が配備されており、さらにこの固定レール103に、X軸方向に沿う可動レール102が往復動可能に取り付けられる。前記ディスペンサヘッド13は、可動レール102に往復動可能に取り付けられるとともに、Z軸方向に沿って変位できるように設定されている。なお、固定レール103、可動レール102、および可動レール102やディスペンサヘッド13の位置決め機構などにより、前記3軸ロボット12が構成される。
このはんだ塗布部1では、図10(2)に示すように、各プラテン8A,8Bを、それぞれ3箇所で停止させる。最初の停止位置A1,B1はプラテン8A,8Bの搬入位置であり、つぎのコンベア51a,52aの中央部に設けられた停止位置A2,B2が作業位置である。なお、この実施例では、前記搬入位置A1,B1で各プラテン8A,8Bを位置合わせした後、これらを同時に作業位置A2,B2に送り、両方の基板7A,7Bに対するはんだの塗布処理が完了するまで、この作業位置A2,B2に留めるようにしている。
3番目の停止位置A3,B3はプラテン8A,8Bの搬出位置である。この搬出位置A3,B3では、つぎの工程である部品実装部2から1段階前に送り込まれたプラテン8A,8Bがまだ搬出されていない場合に、その処理が終了するまで、各プラテン8A,8Bを待機させることができる。
図11(1)は、前記部品実装部2の概略構成を示す。
この部品実装部2では、支持台201の上面に前記第1搬送路5の各コンベア51b,52bが支持される。また、この支持台201の両側には、それぞれ2本の支柱204が配備されるとともに、これらの支柱204,204間に、それぞれY軸方向に沿う固定レール203が配備される。これらの固定レール203,203間には、X軸方向に沿う可動レール202が取り付けられる。この稼働レール202は、前記固定レールに支持された状態でY軸方向に沿って往復動する。また、前記装着ヘッド23は、この可動レール202に往復動可能に取り付けられるとともに、Z軸および回転軸方向に変位可能に設定される。なお、固定レール203、可動レール202、および可動レール202や装着ヘッド23の位置決め機構により、前記4軸ロボット22が構成される。
図11(2)は、部品実装部2におけるプラテン8A,8Bの流れを示す。この実施例では、部品実装部2内の中央部において、各プラテン8Aよりプラテン8Bを、若干下流側に位置ずれさせて停止させ、これらの停止位置A4,B4を部品実装処理の作業位置としている。各作業位置A4,B4での部品実装処理が完了すると、各プラテン8A,8Bは、つぎのはんだ付け部3への連絡位置A5,B5へと搬送される。
なお、前記連絡位置A5,B5は、それぞれ各コンベア51b,52cにおいて、前記支持台201から所定長さだけ突出した部分51c,52cに設けられる。この実施例では、前記はんだ付け部3の搬入用コンベア53を、この突出部51c,52cに直交する方向に配備しているため、この搬入用コンベア53において、表側プラテン8Aの経路と裏側プラテン8Bの経路とが重ならないように、第1コンベア51bの突出部51cを第2コンベア52bの突出部52cよりも短く形成している。
図12(1)(2)は、前記はんだ付け部3の概略構成を示す。このはんだ付け部3の主要部となるリフロー炉32は、その長さ方向を、前記はんだ塗布部1および部品実装部2における第1搬送路5の方向とは直交する方向に向けて配備される。また、リフロー炉32の前面には、中央部に、前記搬入用コンベア53を挿通させる搬入口321が、その下方に、搬出用コンベア63を挿通させる搬出口322が、それぞれ設けられる。なお、上方の搬入用コンベア53は、金属メッシュ製の搬送ベルト531を具備し、下方の搬出用コンベア63は、テフロン(登録商標)製の平ベルト631を具備する。これらの搬送ベルト531,631は、前記表側プラテン8Aと裏側プラテン8Bとを幅方向に並べることが可能な大きさに設定される。
搬入用、搬出用の各コンベア53,63は、それぞれ搬入口321,搬出口322より手前からリフロー炉32の奥部に至るまでの範囲にわたって、搬送面を水平にして配備される。リフロー炉32の内部には、奥部に、2個のプラテン8A,8Bを載せることが可能な昇降機構323が配備される。また、搬入用コンベア53の上方および下方には、それぞれ複数の赤外線ヒータ324,325がコンベア53の進行方向に沿って配備される。さらに、搬出用コンベア63の上方には、複数の冷却ファン326が、同じくコンベア63の進行方向に沿って配備される。
図12(3)は、前記はんだ付け部3におけるプラテン8A,8Bの流れを示す。なお、この図では、搬入用コンベア53上のプラテン8A,8Bを黒く塗りつぶした矩形により示すとともに、搬出用コンベア63上の最終位置におけるプラテン8を点線の矩形により示す。
前記部品実装部2から搬出された2個のプラテン8A,8Bは、前記第1,第2のコンベア51b,52bの突出部51c,52cから搬入用コンベア53に供給される。ここで搬入用コンベア53は部品実装部2の突出部51c,52cに直交しているので、後方に配備される第1コンベア51bから供給される表側プラテン8Aは、前方の第2コンベア52bからの裏側プラテン8Bの送り出し位置よりも奥方向に進んだ位置A6に送り出される。また、前記したように、第1コンベア51bの突出部51cは、第2コンベア52bの突出部52cよりも短く形成されているので、搬入コンベア53の幅方向においても、各プラテン8の送り出し位置が切り分けられる。図示例では、表側プラテン8の送り出し位置A6は部品実装部2に近い左側に、裏側プラテン8の送り出し位置B6は右側に、それぞれ切り分けられている。
各プラテン8A,8Bおよびこれに搭載された基板7A,7Bは、搬入用コンベア53を搬送される間に、上下のヒータ324,325による加熱処理を受ける。そして、搬入用コンベア53の終端に到着すると、昇降機構323により下方の搬出用コンベア63側に移送され、さらに搬出用コンベア63により搬出口322側に搬送される。
なお、搬入、搬出の各コンベア53,63とも、表側プラテン8Aと裏側プラテン8Bとを、同じ1枚の搬送ベルトにより搬送するので、各プラテン8A,8Bの位置関係は、最初に搬入用コンベア53に送り込まれたときの状態に保たれる。よって、昇降機構323での表側プラテン8Aは、裏側プラテン8Bの停止位置B7よりも奥側の位置A7に停止する。また、搬出コンベア63における各プラテン8A,8Bの最終位置A8,B8についても、表側プラテン8Aは、裏側プラテン8Bよりも奥側に位置する。これらの位置A8,B8には、それぞれ前記第2搬送路6のコンベア61,62が、搬出用コンベア63に直交した状態で連絡している。これらのコンベア61,62は、それぞれ搬出されたプラテン8A,8Bを受けて、これを終端まで搬送する。
図13は、前記リフロー炉32内における加熱処理の具体例を示す。この実施例の基板7は、プラテン8に支持された状態で、搬入用コンベア53により矢印Pの方向に搬送されながら、上下各方向からの加熱処理を受ける。
下方のヒータ325からの赤外線は、搬入用コンベア53の金属メッシュを通過してプラテン8に作用する。これによりプラテン8が加熱され、さらに、その熱が前記段部84,85や枠体83の上端部から基板7に伝搬して、基板7の温度が上昇する。この基板7の温度上昇に伴い、はんだの温度も上昇する。また、基板7の上面は、上方のヒータ324による加熱処理を受けるので、図示例のように、既に基板7の下面に部品72が実装されている場合でも、上面のはんだ(図示せず。)の温度は、下面の溶着済みのはんだ(図示せず。)よりも、高い温度にまで上昇するようになる。
この実施例では、下方のヒータ325によりプラテン82を加熱する処理だけでは、はんだが溶融しないようにして、上方のヒータ324の補助的な加熱処理により、上面のはんだ7のみを溶融するようにしている。たとえば、鉛フリーはんだが使用される場合には、プラテン8が前記搬入用コンベア53の終端に到着するまでの間に、下方からの加熱処理によって、基板7の表面温度を150°C付近にまで上昇させるとともに、上方からの加熱処理により、上面側のはんだをその融点に対応する温度(220〜230°C)まで上昇させるように、各ヒータ324,325の加熱強度を設定する。このような設定によれば、下面側の溶着済みのはんだを再溶融させることなく、上面側のはんだのみを溶融することができる。
また、基板7の下面の部品72は、プラテン8により、ヒーター325から遠ざけられるとともに、プラテン8に接触しないように設定されているので、部品72の温度上昇を抑えることができる。加えて、上方からの加熱は、プラテン8の加熱処理で足らない熱を補う目的で行われるので、上方のヒータ324の加熱強度を、部品71の損傷のおそれがない強度に設定することができ、上方の部品71についても、温度上昇を抑えることができる。
よって、上面、下面のいずれの部品71,72も損傷温度にまで上昇させることなく、上面のはんだを十分に加熱して、適正なはんだ付けを行うことができる。
つぎに、図14〜16を用いて、前記各処理部1,2,3において実行される手順を説明する。なお、これらの図におけるステップ(ST)については、図14のはんだ付け部1の処理手順では100番台、図15に示す部品実装部2の処理手順では200番台、図16に示すはんだ付け部3の処理手順では300番台と、処理部1,2,3毎に切り分けて示す。
まず、図14のはんだ付け部1における手順では、1組の基板7A,7Bを処理する都度、前記識別用プラテンが送り込まれていないかどうかをチェックしながら、同じ手順を繰り返すようにしている。
ここで、前記した画像処理により識別用プラテンを認識すると、ST101が「YES」となってST102に進み、前記主制御装置9から新しい基板の処理に必要な設定データの転送を受け、これをメモリ内に格納する。なお、識別用プラテンは、装置の立ち上がり直後などを除けば、第1,第2のコンベア51a,51b毎に個別に流される可能性が高いので、ST102では、識別用プラテン8を認識した方のコンベアに対応する設定データのみを、新規のものに切り替えることで対応するようにしている(部品実装部2においても、同様である。)。
この後、各コンベア毎のプラテン8A,8Bが前記図7に示した搬入位置A1,B1に揃ったとき、これらのプラテン8A,8Bを前記作業位置A2,B2まで同時搬送する(ST103)。つぎに、ST104では、前記エア吸着ユニット15を駆動して、各プラテン8A,8B上に基板7A,7Bを吸着固定する。なお、この吸着状態は、各基板7A,7Bに対する一連の処理が完了するまで維持される。
つぎのST105〜108は、第1コンベア51a上の表側プラテン8Aに搭載された基板7Aに対する処理である。ST105、106は、前記ディスペンサヘッド13の位置決めにかかる制御データを補正するためのもので、ST105では、前記基板7Aをカメラ10により撮像し、得られた画像から基板7Aの位置ずれ量を抽出し、そのずれ量に応じてX,Yの各座標の補正を行う。なお、ST105において、基板7Aの位置ずれ量を抽出するには、たとえば、あらかじめ、基板7Aの適所に認識用のマークを付けておき、前記画像からそのマークを抽出して、その抽出位置をあらかじめ登録された基準の位置と比較する処理を行うようにすればよい。この場合、前記認識用マークの基準の位置は、前記ST102で読み込まれる設定データ内に含ませることができる。
この実施例では、あらかじめ、全はんだの塗布点の中から計測用として所定数の塗布点を抽出し、これら計測用の塗布点(以下、「計測点」という。)の位置を前記設定データに含めるようにしている。ST106では、前記レーザユニット16から各計測点にレーザー光を照射して、計測点毎に基板7の表面までの距離を測定する。さらに、各計測点での測定結果を基準の距離と比較し、これらの比較結果に基づき、各はんだ塗布点におけるディスペンサヘッド13のZ座標を補正する。この補正は、基板の傾きおよび表面の歪みに対して、はんだ塗布用のノズルと基板面との距離を一定に保つことを目的とするものである。なお、基準の距離についても、ST102で読み込まれる設定データ内に含ませることができる。
さらに、つぎのST107では、前記ST105,106で補正された座標に基づき、ディスペンサヘッド13の位置を制御しつつ,各塗布点に順次はんだを供給する。
はんだの塗布処理が終了すると、ST108では、再びカメラ10により基板7Aを撮像し、得られた画像を用いて、各塗布点にはんだが正しく塗布されたかどうかの検査を実行する。
このようにして、表側プラテン8Aに搭載された基板7Aに対する処理が終了すると、ST109〜112では、第2コンベア51aの裏側プラテン8Bに搭載された基板7Bに対し、前記ST105〜108と同様の処理を実行する。この処理が終了すると、ST113において、各基板7A,7Bに対する吸着固定を解除した後、続くST114で、各プラテン8A,8Bを搬出位置A3,B3まで搬送する。
なお、上記手順には図示していないが、ST106やST110の高さ補正において、前記複数の計測点における距離の計測値に所定のしきい値を超える差が抽出された場合には、前記基板7が傾きまたは歪みの大きい補正不可能な異常基板であると判断し、警報などによるエラー出力を実行する。このようなエラー出力がなされると、作業員は、該当するプラテン8を取り出して、基板7の設置をやり直す必要がある。この基板の再設置がなされたプラテン8が第1または第2のコンベア51a,52aに送り込まれた場合には、そのプラテン8は、作業位置まで搬送されて、再度、基板の吸着固定以降の処理が行われる。この間、他方のコンベア側のプラテン8は、基板の吸着固定を維持したまま、作業位置で保留される。
また、ST108やST112において、はんだ不良が検出された場合にも、同様にエラー出力処理が行われる。この場合も、作業員は、不良判定がなされた基板7をプラテン8ごと取り出す必要がある。取り出された基板7には、不良の内容に応じた処理を施す必要があるので、ST113,114では、良品とみなされた基板が搭載されたプラテン8のみを処理することになる。
つぎに、図15に示す部品実装部2の手順では、ST202,203において、はんだ塗布部1と同様に、プラテン8を受け付ける都度、画像認識処理により識別用プラテンの有無を判断し、識別用プラテンを認識した場合には、新規の設定データの読み込みを行うようにしている。つぎのST204では、前記はんだ塗布部1から搬出された表側、裏側の各プラテン8A、8Bを、前記作業位置A4,B4まで搬送する。さらにST205では、前記エア吸着ユニット25を駆動して、各プラテン8A,8B上に基板7A,7Bを吸着固定する。
この後、ST206では、表側プラテン8Aに搭載された基板7Aに対し、ST207では、裏側プラテン8Bに搭載された基板7Bに対し、それぞれ画像処理により装着ヘッド23の位置決め制御用の座標データを補正する処理を行う。ここで具体的に補正対象とするのは、X,Y軸における装着ヘッド23の座標位置であり、基板の位置ずれによる部品実装位置のずれを修正するためのものである。ST206,207の各ステップでは、前記図14のST105やST109と同様に、対応する基板7A,7Bをカメラ20により撮像し、得られた画像から認識用のマークを抽出するなどして基板の位置ずれ量を抽出し、その位置ずれ量に基づきX,Yの各座標を補正するようにしている。
各基板7A,7Bに対する座標の補正処理が完了すると、ST208では、これらの基板7A,7Bに対する部品実装処理を行う。なお、この図15では、詳細な手順の図示を省略するが、この部品実装処理では、基板7A,7Bを順次処理するのではなく、基板7Aと7Bとに共通する部品を種毎にとりまとめ、同種の部品を一括で実装するようにしている。このように、2枚の基板7A,7B間に共通する部品を一括で実装することにより、部品吸着ノズルの交換回数を削減することができ、処理時間を短縮することが可能となる。
部品実装処理が終了すると、ST209では、表側プラテン8Aに搭載された基板7Aを撮像し、得られた画像を用いて、各部品が適正に実装されたかどうかの検査を実行する。さらにST210では、裏側プラテン8Bに搭載された基板7Bを撮像し、同様の検査を実行する。この後は、ST211において、各基板7A,7Bの吸着固定を解除する。さらに、つぎのST212では、各プラテン8A,8Bを、つぎのはんだ付け部3に搬出する。
ただし、ST209またはST210の検査において、いずれかの基板が不良と判断された場合には、プラテン8A,8Bを搬出せずに、警報などのエラー出力を行う。このエラー出力に対し、作業者が該当する基板7が搭載されたプラテン8を取り除き、再起動操作などを行うと、他方の良品判定が得られた基板7が搭載されたプラテン8のみ、はんだ付け部3に搬出される。
つぎに、前記はんだ付け部3では、図16のST301において、前記部品実装部2から搬出されたプラテン8A,8Bを搬入用コンベア53に受け入れ、リフロー炉32への搬送を開始する。つぎのST302では、各プラテン8A,8Bを搬送しつつ、上下のヒータ324,325による加熱処理を実行する。そして、各プラテン8A,8Bが搬入用コンベア53の終端に到着すると、ST303では、前記昇降機構323により、これらプラテン8A,8Bを下降させ、搬出用コンベア63に送り込む。
この後は、ST304において、搬出用コンベア63により各プラテン8A,8Bを搬送しつつ、冷却ファン326による冷却処理を行う。そして、ST305では、前記プラテン8A,8Bを搬出口322より搬出し、前記第2搬送路6の各コンベア61,62に送り込む。
なお、図16では、便宜上、表面側、裏面側の各プラテン8を1組ずつ処理するものとした流れを示しているが、実際のリフロー炉32では、複数組のプラテン8A,8Bを並列処理することが可能である。また、この実施例では、リフロー炉32には、各種基板に共通に適用できる加熱条件を設定したものとして、他の処理部1,2のように、基板7の切り替えに応じて設定データを読み込む処理を行わないようにしたが、これに限らず、他の処理部1,2と同様に、画像処理により基板7の切り替えを認識して、ヒータ324,325の加熱強度やコンベア53,63の搬送速度を変更するなど、基板7の種類毎に異なる条件による加熱処理を行うようにしてもよい。また、リフロー炉32を出た基板7A,7Bを搬出する前に、これら基板7A,7Bを撮像し、はんだ付け部位にかかる検査を行うようにしてもよい。