JP3899862B2 - 医用x線撮影装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、病院等で使用される医療用のX線撮影装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線透視撮影は、従来より検診や診断を行うために非常に広く行われている。一般的な医用X線透視撮影ではその目的に応じて、被検者が直立した状態にある立位姿勢での撮影と被検者がベッドに臥した状態での臥位撮影とのいずれか又は両方が行われることが多い。外来の被検者が医療機関へ赴いてX線撮影を含む診断を受ける場合の、従来の一般的な手順は次の通りである。
【0003】
まず、被検者は内科、外科、整形外科等、担当の医師に診断を受け、医師がX線撮影が必要であると判断すると撮影条件(撮影姿勢や撮影部位など)を記載した処方箋を作成する。被検者は医師の指示を受けて放射線科へ出向き、一方、処方箋は看護婦等の手により放射線科へ運ばれる。放射線科のX線撮影室内には立位撮影用の装置と臥位撮影用の装置とが設置されており、担当の技師が上記処方箋の記載内容に従って被検者に対し立位又は臥位姿勢を指示するとともに、そのいずれかの装置において撮影部位等の条件の設定を手動で行う。そして、X線透視撮影を行って撮影画像をフィルムに焼き付ける。こうして得られた撮影画像は、看護婦等の手により医師の居る診察室まで届けられる。医師は診察室において、この撮影画像を見ながら診察を行う。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来のX線撮影方法では、次のような様々な不具合点がある。
(1) 医療機関では立位撮影用、臥位撮影用の両方のX線撮影装置を配備しなければならず、コスト的な負担が大きい。
(2) X線撮影を行う際の位置合わせ等の撮影条件の設定は担当技師が手動で行わなければならず、面倒で作業効率が悪い。また、撮影技師の技量や経験が不足している場合には撮影ミスが生じるおそれもあり、撮影し直し等の時間的、費用的な無駄、更には被検者にとっては被爆線量の増加といった問題が生じる。
(3) 医師が記載した処方箋や撮影したフィルムを放射線科と診察担当医師との間でやりとりする手間が面倒である。また、特にフィルムに被検者の名前の記載が不明瞭であると他の被検者のものと混同する、或いは搬送途中で紛失する等のおそれも考えられる。
【0005】
もちろん、医療現場においては特に人為的ミスが患者の生命に関わることがあるため、こうしたミスを防止すべく各種の手順や取り決めが定められていることは言うまでもない。しかしながら、医用装置や医療システムにおいても、こうした人為的ミスや個人の技量の相違をカバーすることが求められており、両者が相まって医療の信頼性を一層高めることができる。本発明の目的の一つは、人為的ミスや技量の不足等を補って高い信頼性を確保することができる医用X線撮影装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、医療機関において設備に要するコストを低減することができる医用X線撮影装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本願発明に係る医用X線撮影装置は、a)被検者が横たわるための天板と、b)前記被検者にX線を照射するX線照射手段と、c)前記被検者を通過したX線を検出するために、微小のX線検出素子が二次元状に配列されてなるX線検出手段と、d)該X線検出手段を水平姿勢と垂直姿勢との間で回動可能に保持するとともに、該X線検出手段が前記天板の下方に挿入される臥位撮影位置と該天板と干渉しない所定の立位撮影位置との間で移動可能である第1保持手段と、e)前記X線照射手段からのX線の出射方向が下方向と横方向とに変更可能であるように該X線照射手段を保持するとともに、該X線照射手段が前記天板の上方に来る臥位撮影位置と前記X線検出手段が立位撮影位置にあるときに被検者を挟んで該X線検出手段と対向するような立位撮影位置との間で移動可能である第2保持手段と、を備え、前記被検者が天板上に横たわった臥位姿勢と床面上の所定位置に起立した立位姿勢とで選択的にX線透視撮影を行うに際し、前記X線検出手段が水平姿勢にある場合にその中心基準とし、垂直姿勢にある場合にその上端を基準とするよう該X線検出手段におけるX線検出素子の読み出し領域の位置を変更するようにしたことを特徴とする。
【0007】
すなわち、天板上に横たわった被検者に対してX線透視撮影を行う場合には、X線照射手段は第2保持手段により天板の上方、つまり被検者の上方に配置され、X線照射方向は下向きにされる。一方、X線検出手段は第1保持手段により水平姿勢に維持され、天板の下方に挿入される。これにより、天板上で臥位姿勢をとる被検者を挟んで上にX線照射手段、下にX線検出手段が対向して配置される。また、立位姿勢をとる被検者に対してX線透視撮影を行う場合には、X線検出手段は第1保持手段により垂直姿勢に維持され、天板と干渉しない所定の立位撮影位置まで移動される。例えば胸部撮影を行う場合であれば、被検者はこのX線検出手段の検出面に胸部を押し当てるような状態で起立する。一方、X線照射手段は第2保持手段により上記被検者を挟んでX線検出手段と対向する立位撮影位置まで移動され、X線照射方向は被検者に向くように横向きにされる。これにより、立位姿勢をとる被検者を挟んでほぼ横方向にX線照射手段とX線検出手段とが対向して配置される。
【0008】
このように本発明に係る医用X線撮影装置によれば、立位撮影と臥位撮影とで装置の主要部であるX線照射手段及びX線検出手段が共用化されるので、装置が安価になる。したがって、医療機関が装置を導入する際のコストが大幅に削減できるとともに、メンテナンス等の保守に掛かるコストも少なくてすむ。
また、一般に、臥位撮影では撮影面の中心に対して上下左右対称に撮影領域を設定する中央基準の撮影であるのに対し、立位撮影では撮影面の上縁端の中央の垂直軸に対する左右対称に撮影領域を設定する上基準の撮影であるが、本発明に係る医用X線撮影装置によれば、X線検出手段の水平又は垂直の姿勢に応じて該X線検出手段におけるX線検出素子の読み出し領域の位置を変更するようにしているので、それぞれの撮影において所望の部位を確実に撮影することができる。
【0009】
更にまた、本発明に係る医用X線撮影装置は、上記構成に加えて、被検者に関する撮影情報を外部より取り込む撮影情報取込み手段と、該取り込んだ撮影情報に基づいて前記X線照射手段及びX線検出手段が所定位置に来るように前記第1及び第2保持手段を制御する制御手段と、を備える構成とすると好ましい。ここで、撮影情報取込み手段は、LANなどの通信ネットワークを介して外部より撮影情報を取り込む構成とすることができる。
【0010】
この構成によれば、医師等が指示した撮影条件に基づいて、立位撮影又は臥位撮影のいずれかが行える状態にX線照射手段及びX線検出手段が自動的にセットされる。したがって、撮影担当者による面倒な操作や作業が軽減され、作業効率も改善される。また、自動的に撮影位置やそのほかの撮影に関する条件が設定されれば、撮影担当者の人為的ミスによる不適切な撮影も解消される。また、撮影情報が通信ネットワークを経て送られることにより、処方箋を手で運ぶといった手間も不要になり、紛失等のミスも解消できる。
【0011】
更にまた、上述したように、本発明に係る医用X線撮影装置がLANなどの通信ネットワークに接続されている場合には、撮影されたX線透視画像を構成するデータを該通信ネットワーク上に送出可能な形式に変換するデータ形式変換手段を備える構成とすると一層好ましい。
【0012】
この構成によれば、当該医用X線撮影装置により撮影したX線透視画像をフィルムに焼き付けたり或いはリムーバブル記憶媒体に格納したりすることなく、通信ネットワークを介して直接医師の手元のコンピュータへ送信してそのモニタ画面上に表示させたり、或いはホストコンピュータに構築されているデータベースに登録・保管させたりすることができる。したがって、フィルムやリムーバブル記憶媒体を手で運ぶ手間が省け、紛失や他人のものとの混同が防止できるほか、撮影直後に医師が撮影画像を見ることが可能となるので、診断や治療の効率も改善できる。
【0013】
また、通信ネットワークを介して外部より撮影情報を取り込んで第1、第2保持手段の動作を制御する構成にあっては、前記通信ネットワークを介して撮影情報を外部より取り込んだことを報知する報知手段と、操作者による動作開始の指示を受け付ける動作開始受付手段と、前記報知手段による報知後に該動作開始の指示を受け付けるまでの間、前記X線照射手段及びX線検出手段を元の位置に待機させる待機手段と、を更に備え、前記制御手段は前記動作開始受付手段による動作開始の指示を受けて前記第1及び第2保持手段の制御を開始する構成とすることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、撮影情報取込み手段が撮影情報を取り込んだ後にすぐに動作を開始するのではなく、報知手段により第1、第2保持手段が撮影情報を取り込んだことを操作者に知らせた後、待機手段により第1、第2保持手段はX線照射手段及びX線検出手段を元の位置に待機せしめ、操作者による動作開始の指示があったならば初めて第1、第2保持手段の動作を開始させる。そのため、操作者は周囲に障害物がない等の安全性を充分に確認した後に、X線照射手段及びX線検出手段が所定位置に来るように移動を行わせることができる。なお、報知手段としては、表示等の視覚的な注意、警告音等の聴覚的な注意を発するものとすることができる。
【0015】
また同様に安全性を確保するために好ましい構成としては、前記第1保持手段及び/又は第2保持手段の移動に際して障害物を検知する障害物検知手段と、該障害物の検知によって前記第1保持手段及び/又は第2保持手段の移動を停止する移動停止手段とを更に備える構成としてもよい。
【0016】
この構成によれば、第1、第2保持手段が移動を開始した後に移動経路に人(被検者など)や物などの障害物が存在した場合やその障害物に近接した場合に、その移動が自動的に停止して衝突を免れる。したがって、仮に操作者の見落としや操作ミス等によって不安全な状態で第1、第2保持手段の移動が開始された場合であっても、或いは、不意に人が装置に近づいて不安全な状態が発生した場合であっても、第1、第2保持手段が障害物に衝突することを回避できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例による医用X線撮影装置について図面を参照しつつ説明する。図1は本実施例による医用X線撮影装置の全体構成図、図2は臥位撮影時の要部の正面図、図3は立位撮影時の要部の正面図である。
【0019】
図1において、Aに示す点線で囲んだ範囲は臥位撮影時の各部の位置を示しており、Bに示す点線で囲んだ範囲は立位撮影時の各部の位置を示している。すなわち、撮影室Rの床面Fには、被検者Pを載置するための縦断面コ字形状の載置台10を上部に有し、図1、図2中の矢印M1の方向に昇降自在の昇降台11が設置されている。その横には、二次元X線センサ(フラットパネル型X線センサであるので以下「FPD」と記す)12aを内装するFPDユニット12を保持する保持台13が、床面Fに敷設されたレール14に沿って図1中の矢印M2の方向に移動自在に設けられている。
【0020】
FPDユニット12は保持台13から側方に突出したアーム13aに取り付けられており、アーム13aが図2、図3中の矢印M3の方向に上下動することによりFPD12aの高さが変更自在であるとともに、アーム13aが図2,図3中の矢印M4の方向に回転することによりFPD12aは水平状態又は垂直状態に切り替わる。FPDユニット12には移動方向に対して障害物が存在していることを検知するための障害物センサ12bが内蔵されている。障害物センサ12bは赤外線センサなど従来知られているものを利用することができる。また、保持台13の上部には表示灯13bが設けられている。
【0021】
FPD12aは平面内で縦・横方向にそれぞれ所定個数の微小なX線検出素子を配列した構成を有し、各X線検出素子がそれぞれTFTを介して縦横に走る読み出し配線に接続されるとともに、読み出し配線はそれぞれ横読み出し駆動部又は縦読み出し駆動部に接続されており、横、縦読み出し駆動部へ読み出し用駆動信号が供給される。各X線検出素子にはその行・列に応じたアドレスが割り振られており、そのアドレスを指定することによって特定のX線検出素子の信号を読み出すことが可能となる。ここでは、例えば、画素数(素子数)が2700×2700程度のFPDが利用される。なお、FPDの具体的な構成は本出願人が既に特願平9-324430号(特開平11-155851号公報)に記載のものとすることができる。
【0022】
撮影室Rの天井CにはX線管15を移動させるためのレール16が設けられており、X線管15は図1〜図3中の矢印M7の方向に伸縮自在の懸垂アーム15aにより吊り下げ支持され、レール16に沿って図1中の矢印M5の方向に往復動自在に設けられている。更にまた、X線管15は懸垂アーム15aに対し軸を中心にして図2,図3中の矢印M6の方向に回動自在であり、これによりX線を真下又は真横のいずれかの方向に切り替えて照射することができるようになっている。なお、実際にはその回転の途中で停止させ、或る角度を持たせてX線を照射することも可能である。
【0023】
この医用X線撮影装置では、臥位撮影時と立位撮影時とにおいて、X線照射手段であるX線管15とX線検出手段であるFPD12aとが共用されるようになっている。すなわち、臥位撮影時には図1中のAの範囲及び図2に示すように、FPD12aは水平状態になって載置台10の天板の下方に挿入され、これによって天井Cに位置するX線管15との間に被検者Pを配置させる。一方、立位撮影時には図1中のBの範囲及び図3に示すように、FPD12aが垂直状態になるとともに昇降台11から離れた位置まで移動し、またX線管15もFPD12aとの間に被検者Pを挟む位置まで移動して懸垂アーム15aが伸長し、更にX線管15が90°回転して被検者P’の背中に向く。本医用X線撮影装置では、このように装置全体の中でコストに占める割合の大きいX線管15及びFPD12aが共用化されているため、臥位撮影用と立位撮影用とで別々に装置を用意した場合に比べて大幅なコストの削減が可能である。
【0024】
上記各部の制御の中心には処理・制御部20が据えられており、処理・制御部20から制御信号を受けた移動制御部23は上記各部の位置(つまり移動や回転)の制御を統括的に行う。また、照射制御部24はX線管15からのX線照射を制御する。一方、FPD12aの各X線検出素子の出力はデータ収集部21を介してA/D変換部22でデジタル値に変換され、処理・制御部20へと入力される。また、障害物センサ12bの検知信号は障害物検知部35により判定され、その結果が処理・制御部20へと入力される。
【0025】
処理・制御部20はこのX線撮影装置専用の装置として構成することもできるが、通常のコンピュータに所定のソフトウエアをインストールして実行させることによって同様の機能を実現することができる。この処理・制御部20には、撮影したX線透視画像データを格納するための大容量の記憶装置25、撮影したX線透視画像をフィルムに焼き付けるためのフィルム記録部26、X線透視画像やそのほかの情報を表示するためのモニタ27、キーボードやマウス等のポインティングデバイスを含む入力部28などが接続されている。
【0026】
更に、処理・制御部20はモデム等の通信機能を備えた通信制御部29を介して院内ネットワーク32に接続されている。院内ネットワーク32は例えば当該X線撮影装置が設置された医療機関内に敷設されたLAN等の閉じた通信回線網であって、各担当医師や部局に配備された個別のコンピュータ34、患者の病歴等を含む各種情報をデータベースとして保有するホストコンピュータ33なども接続されている。また、処理・制御部20には被検者毎に手渡されるカード31を読み取り可能なカードリーダ30も接続されている。カード31は例えば磁気カードやICカードであり、少なくともそのカードの持ち主である被検者の識別情報(IDコードなど)が保持されている。
【0027】
なお、ICカード等の記憶容量の大きなカードであれば、医師の診断を受けた時点等においてこのカードに撮影情報を書き込むことも可能である。その場合には、院内ネットワーク32を経ることなく撮影情報がこのX線撮影装置へと渡されることになる。但し、カードからの個人情報の漏洩等を防止する観点からみれば、カードには識別情報等の最低限必要な情報のみを記憶させ、撮影情報は院内ネットワークを介して送るほうが好ましい。
【0028】
なお、上記データ収集部21は予め決められた順序で決められたアドレスのX線検出素子の信号を読み出すように構成されているが、臥位撮影時と立位撮影時とではFPD12aの全領域のうちの読み出し領域が異なっている。この点について図4を参照して説明する。図4はFPD12a上の読み出し領域を示す図であり、(a)は立位撮影時、(b)は臥位撮影時の様子である。
【0029】
立位撮影時には被検者はFPDユニット12の上縁部に顎を載せて撮影を行う。このため、FPD12aの上端を基準とし、その中央の垂直線に対し左右対称に読み出し領域を設定する。一方、臥位撮影時にはFPD12aの中心を基準とし、上下左右対称に読み出し領域を設定する。このように読み出し領域を変更することによって、撮影したい部位を確実に捕捉することができる。
【0030】
次に、本医用X線撮影装置の動作の一例を撮影手順に従って説明する。まず、被検者Pは内科、外科等の所望の診察部門に赴き診察を受ける。X線透視撮影が必要であると医師が判断すると、当該医師は、後記のような撮影情報を手元のコンピュータ34から入力する。もちろん、このような作業は医師自らが行うとは限らず、医師の記載した処方箋に従って他の者が入力することもある。このように入力された撮影情報は被検者Pの識別情報に対応付けられて院内ネットワーク32へと送出され、ホストコンピュータ33の記憶装置に格納される。医師から指示を受けた被検者Pは、その被検者の識別情報が記憶されているカード31を携えて放射線科へと赴く。
【0031】
放射線科の担当者は被検者Pよりカード31を受け取ってカードリーダ30に装着し、入力部28から所定の操作を行う。すると、カードリーダ30はカード31から上記識別情報を読み出して処理・制御部20へと与える。処理・制御部20はその識別情報を付与された被検者Pの撮影情報を取得するために、通信制御部29から院内ネットワーク32を介してホストコンピュータ33又は他のコンピュータ34に識別番号を照会し、最新の、つまりこれから行おうとする撮影に関する撮影情報を受け取る。撮影情報には少なくとも立位撮影又は臥位撮影の選択情報(両方ということもあり得る)が含まれる。そのほかには、撮影部位(例えば頭部、胸部、腹部等)や更に撮影角度などの細かい撮影条件を含むようにしてもよい。
【0032】
処理・制御部20は通信制御部29から撮影情報を受け取ると、まず表示灯13bを点灯させる。すなわち、この表示灯13bの点灯は、処理・制御部20が既に撮影情報を受け取っており、FPD12a及びX線管15を所定の撮影位置に移動できる準備が整っていることを示している。この表示灯13bの点灯・非点灯は担当者がすぐに視認できるようになっているため、担当者は表示灯13bの点灯により装置が待機状態にあることを認識し、装置周囲の安全を確認する。つまり、FPD12a及びX線管15が移動した際にこれに接触する位置に被検者Pが居ないかどうか、或いは他の障害物が移動経路上に放置されていないかどうかなどを確認する。安全を確認したならば、入力28により所定の操作を行って動作の開始を指示する。この指示を受けて、処理・制御部20は撮影情報に基づいた制御信号を移動制御部23へと送る。これにより移動制御部23はまずX線管15及びFPDユニット12を臥位撮影(図1中のAの範囲)又は立位撮影(図1中のBの範囲)のいずれかに移動させる。そして、撮影部位が設定されている場合には、上記範囲内において設定部位の撮影が可能な位置に移動させる。但し、被検者Pの体格等に依り一定の位置で必ずしも同一の撮影部位となるとは限らないから、自動的な撮影部位の設定は粗調整であって、後述するように担当者が手動で微調整を行うことが望ましい。
【0033】
移動制御部23が動作制御を行っている間、障害物検知部35は障害物センサ12bによる検知信号を判定し、移動方向に障害物がないかどうかを確認する。先に担当者が充分に周囲の安全を確認した場合であっても、急に被検者Pが装置に近づくと安全を損なうおそれがある。そこで、障害物検知部35により障害物があると判定されると、処理・制御部20は移動制御部23に対して移動動作の一時停止を指示し、例えば図示しない警告ブザーを鳴動させる等によって担当者や被検者の注意を喚起する。このように移動動作が一時停止した場合には、担当者が入力部28から動作の再開を指示するまではその状態で待機するため、非常に高い安全性を確保することができる。もちろん、入力部28等の適宜の箇所に、上記のような装置の移動を緊急に停止するためのスイッチを設けておくと更に好ましい。
【0034】
担当者は上記の如き装置の移動が完了したのを確認して、被検者Pに所定位置での姿勢の保持を指示する。例えば医師より立位での胸部撮影が指示されていたとすると、X線管及びFPDユニットは図1中のBの範囲、つまりX線管15’及びFPDユニット12’に位置している。そこで被検者Pに対し、FPDユニット12’に胸部を密着する状態で直立するように指示を与える。これに応じて被検者は図1中のP'で示すような姿勢をとる。担当者は適宜撮影部位の微調整を行った後、入力部28から所定の操作を行って撮影動作の開始を指示する。この指示を受けて照射制御部24はX線管15を駆動し、被検者P’に向けて所定の時間だけX線を照射する。
【0035】
X線が照射されている期間にFPD12a’から出力される信号はデータ収集部21を経てA/D変換部22へ入力され、各X線検出素子による検出信号毎にデジタル値に変換されて処理・制御部20へと送られる。そして、1枚のX線透視画像を構成するデータとして記憶装置25に格納される。また同時に、処理・制御部20において所定の画像信号処理が行われ、その結果がX線透視画像としてモニタ27の画面上に表示される。したがって、担当者はこの画像を見て確実に撮影が行われたか否かを確認することができる。もし、特に撮影上の不具合がなければ、担当者は入力部28で所定の操作を行う。これにより、先に撮影された透視画像が当該被検者Pに対する撮影画像として確定する。
【0036】
記憶装置25に格納された画像データは、被検者Pの識別情報や撮影情報等と共に即座に院内ネットワーク32を介してホストコンピュータ33に送出され、ホストコンピュータ33の記憶装置に格納される。したがって、その後、担当医師は手元のコンピュータ34からその被検者Pの識別情報を検索し、先に撮影されたX線透視画像を取り出してモニタ画面上に表示することができる。なお、例えば、ホストコンピュータ33に画像データを格納する際に同時に担当医師の手元のコンピュータ34へも画像データを送出するか、或いはホストコンピュータ33に画像データを格納したことを上記コンピュータ34へ知らせるように設定しておけば、担当医師は撮影後すぐにそのX線透視画像をコンピュータ34のモニタ上で見ることができる。なお、従来通り、X線撮影装置において、記憶装置25に格納された画像データを基にしてフィルム記録部26によりX線透視画像をフィルムに焼き付けることも可能である。
【0037】
このようにして、本実施例に係るX線撮影装置によれば、始めの医師による撮影の指示から撮影されたX線透視画像を見るまでの一連の作業をきわめて効率的に、且つ人為的なミスが生じにくいように実行することができる。
【0038】
なお、当然のことながら、上記実施例は単に本発明の一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜変更や修正を行えることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例による医用X線撮影装置の全体構成図。
【図2】 本実施例の医用X線撮影装置における臥位撮影時の要部の正面図。
【図3】 本実施例の医用X線撮影装置における立位撮影時の要部の正面図。
【図4】 本実施例の医用X線撮影装置における立位撮影時と臥位撮影時とのFPDの読み出し領域を示す模式図。
【符号の説明】
10…載置台
11…昇降台
12,12’…FPDユニット
12a,12a’…FPD(二次元X線センサ)
12b…障害物センサ
13,13’…保持台
13a…アーム
13b…表示灯
14,16…レール
15,15’…X線管
15a…懸垂アーム
20…処理・制御部
21…データ収集部
22…A/D変換部
23…移動制御部
24…照射制御部
25…記憶装置
26…フィルム記録部
27…モニタ
28…入力部
29…通信制御部
30…カードリーダ
31…カード
32…院内ネットワーク
33…ホストコンピュータ
34…コンピュータ
35…障害物検知部
C…天井
F…床面
P,P’…被検者
R…撮影室
Claims (1)
- a)被検者が横たわるための天板と、b)前記被検者にX線を照射するX線照射手段と、c)前記被検者を通過したX線を検出するために、微小のX線検出素子が二次元状に配列されてなるX線検出手段と、d)該X線検出手段を水平姿勢と垂直姿勢との間で回動可能に保持するとともに、該X線検出手段が前記天板の下方に挿入される臥位撮影位置と該天板と干渉しない所定の立位撮影位置との間で移動可能である第1保持手段と、e)前記X線照射手段からのX線の出射方向が下方向と横方向とに変更可能であるように該X線照射手段を保持するとともに、該X線照射手段が前記天板の上方に来る臥位撮影位置と前記X線検出手段が立位撮影位置にあるときに被検者を挟んで該X線検出手段と対向するような立位撮影位置との間で移動可能である第2保持手段と、を備え、前記被検者が天板上に横たわった臥位姿勢と床面上の所定位置に起立した立位姿勢とで選択的にX線透視撮影を行うに際し、前記X線検出手段が水平姿勢にある場合にその中心を基準とし、垂直姿勢にある場合にその上端を基準とするよう該X線検出手段におけるX線検出素子の読み出し領域の位置を変更するようにしたことを特徴とする医用X線撮影装置。
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