JP3899710B2 - ダンパ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はピストンに加わる負荷に応じてピストンの動作特性(ダンパ特性)を制御するダンパ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ピストンの動作を制御するダンパ装置は、図6に示すような構造のものが一般的であった。すなわち、シリンダ1内にピストン2を配設し、ピストン2と連結した軸体の連係部材3は、シリンダ1の外部に突出して設けられている。また、オイル等の作動流体4をシリンダ1内に封入しており、シリンダ1とピストン2の間はシール部材5によりシールされている。また、ピストン2には、ピストン2の移動に伴って作動流体4の通過するオリフィス孔6が設置されており、一般的には金属材料等の剛体に形成されている。
【0003】
上記構成において、連係部材3を介してピストン2に力がAの方向に作用すると、ピストン2に設けたオリフィス孔6を通過して作動流体4は4a側から4b側へ流れ、ピストン2はAの方向に移動する。作動流体4がオリフィス孔6を流れる際の抵抗力によってピストン2はAとは逆の方向への抵抗力を受け、動作速度はゆっくりとなる。これによりダンパ効果が得られる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のダンパ装置では、オリフィス孔は剛体に設けられており、変形しないため、どの荷重においてもその面積は一定である。このため、ダンパ装置に作用する負荷に応じてオリフィス孔の面積を変化させ、ダンパ装置の動作特性を制御することはできなかった。
【0005】
例えば、図7に示すラック昇降式の収納装置(例えば特開平9−238756号公報)のように、収納ラック7を引き降ろす際に収納ラック7がゆっくりと降下するようにダンパ装置8は作用する。しかし、収納装置では、収納物の重量が一定していないため、上記従来の技術として説明したような特性のダンパ装置8を用いた場合には、収納物の重量が重い時には収納ラックの降下速度が速くなり、危険に感じる恐れがあり、逆に収納物の重量が軽い場合には収納ラックの降下速度が遅く、じれったく感じたりするという課題があった。
【0006】
また、上記のような収納装置に使用するような場合には、ダンパ効果は一方向に動作する時のみ必要であり、他方へ動作する際には不要である。このため、上記課題の解決に加え、一方向の動作にのみダンパ効果を発揮するダンパ装置を得る必要がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、円筒形状のシリンダと、前記シリンダ内に配したピストンと、前記シリンダ内に封入した作動流体と、前記ピストンの移動に伴って前記作動流体が流れるオリフィス孔を設けた弾性体とで構成され、前記弾性体を装着するための弾性体装着部を前記ピストンに設け、前記オリフィス孔は、ストレート部と上流側広がりのテーパ部とで構成し、前記弾性体は円柱形状とし、その外周の一部に凸部を設けたものである。
【0008】
上記発明によれば、ピストンに力が作用すると作動流体の圧力が増加することから弾性体が変形し、その弾性体に設けたオリフィス孔の形状や面積も自動的に変化する。また、ピストンに加わる力が変化すれば、オリフィス孔の形状や面積も変化することになる。つまり、ピストンに作用する力に応じてオリフィス孔の面積、すなわちダンパ特性を変化させることができる。たとえば、ピストンに作用する力の大きさが変化しても、ピストンの動作速度を略一定に保つこともできる。
【0009】
また、弾性体を装着する弾性体装着部はピストンに設けており、弾性体つまりオリフィス孔はピストンの移動とともに移動する構成であり、二重シリンダ構造などの複雑な構成を用いる必要がなく、ダンパ装置全体の構成を簡素化できる。また、オリフィス孔は、ストレート部と上流側広がりのテーパ部とで構成したものである。オリフィス孔の形状によっては、弾性体が加圧されオリフィス孔が変形する際に、過度に変形してオリフィス孔を閉塞してしまったり、弾性体が小刻みに伸縮を繰り返すびびり現象を生じたりすることがある。しかし、その発生部分に上流側広がりのテーパ部を設けることによりこれらの現象を回避し、正常に動作させることができる。また、オリフィス孔の最小面積部分をストレート孔で形成することにより、その孔の寸法精度を高めることが容易であり、特性にばらつきの少ないダンパ装置を得ることができる。さらに、弾性体は、円柱形状とし、その外周の一部に凸部を設けたものである。弾性体の外径はいかなる形状であってもよいが、円筒形状とすることにより、弾性体に均等に圧力が作用し、オリフィス孔も変形も均一になり、びびり現象などを発生する可能性が少なくなる。ただし、オリフィス孔にテーパ部を用いた場合などは特にその設置方向が重要となり、組み立て時に逆挿入した場合には、所定のダンパ特性を得ることはできない。このため、オリフィス孔の変形に影響しない程度の凸部を弾性体外周の一部に設けることにより、弾性体の装着方向を組み立て者は容易に判定することができる。また、逆挿入不可能な構成にすることも可能である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は請求項1に記載のように、円筒形状のシリンダと、前記シリンダ内に配したピストンと、前記シリンダ内に封入した作動流体と、前記ピストンの移動に伴って前記作動流体が流れるオリフィス孔を設けた弾性体とで構成され、前記弾性体を装着するための弾性体装着部を前記ピストンに設け、前記オリフィス孔は、ストレート部と上流側広がりのテーパ部とで構成し、前記弾性体は円柱形状とし、その外周の一部に凸部を設けたものである。
【0011】
ピストンに力が作用すると作動流体の圧力が増加することから弾性体が変形し、その弾性体に設けたオリフィス孔の形状や面積も自動的に変化する。ピストンに加わる力が変れば、オリフィス孔の形状や面積も変化する。ダンパ装置の特性は主にオリフィス孔の形状や断面積に依存していることから、本発明のダンパ装置ではピストンに作用する力に応じてダンパ作用そのもの特性を変化させることができる。しかも構成は弾性体にオリフィス孔を設けるという非常に簡単なものであり、容易に上記効果を得ることができる。たとえば、ピストンに作用する力の大きさが変化しても、ピストンの動作速度を略一定に保つこともできる。
【0012】
また、弾性体を装着する弾性体装着部はピストンに設けており、弾性体つまりオリフィス孔はピストンの移動とともに移動する構成であり、二重シリンダ構造などの複雑な構成を用いる必要がなく、ダンパ装置全体の構成を簡素化できる。また、オリフィス孔は、ストレート部と上流側広がりのテーパ部とで構成したものである。オリフィス孔の形状によっては、弾性体が加圧されオリフィス孔が変形する際に、過度に変形してオリフィス孔を閉塞してしまったり、弾性体が小刻みに伸縮を繰り返すびびり現象を生じたりすることがある。しかし、その発生部分に上流側広がりのテーパ部を設けることによりこれらの現象を回避し、正常に動作させることができる。また、オリフィス孔の最小面積部分をストレート孔で形成することにより、その孔の寸法精度を高めることが容易であり、特性にばらつきの少ないダンパ装置を得ることができる。さらに、弾性体は、円柱形状とし、その外周の一部に凸部を設けたものである。弾性体の外径はいかなる形状であってもよいが、円筒形状とすることにより、弾性体に均等に圧力が作用し、オリフィス孔も変形も均一になり、びびり現象などを発生する可能性が少なくなる。ただし、オリフィス孔にテーパ部を用いた場合などは特にその設置方向が重要となり、組み立て時に逆挿入した場合には、所定のダンパ特性を得ることはできない。このため、オリフィス孔の変形に影響しない程度の凸部を弾性体外周の一部に設けることにより、弾性体の装着方向を組み立て者は容易に判定することができる。また、逆挿入不可能な構成にすることも可能である。
【0021】
また、請求項2のダンパ装置は、弾性体装着部は、弾性体に設けた凸部を避ける段付形状としたものである。弾性体に設けた凸部が弾性体装着部に接触したり、あるいはそれによって変形することを防止し、その変形等によってダンパ特性も変化することを防止する。
【0023】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0024】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1のダンパ装置の断面図、図2(a)は同ダンパ装置部分拡大断面図、図2(b)は同ダンパ装置の弾性体装着部周辺の拡大断面斜視図である。
【0025】
図1、図2において、円筒状のシリンダ1の内部には、そのシリンダ1の内側に沿って動く樹脂や金属等の剛体からなるピストン2があり、ピストン2にはシリンダ1の一部を貫通した軸体である連係部材3が連結してある。シリンダ1内にはオイル等の作動流体4が封入されており、OリングやXリング等のシール部材5はシリンダ1の内面とピストン2の外面との隙間をシールしている。なお、ピストン2の両側の作動流体4は4a(上流側)、4b(下流側)としている。シール部材5は、シール部材設置部9に設置しており、シール部材設置部9はシール部材5の内周方向とは接触しない構成としている。また、ピストン2に設けた弾性体装着部10にはゴム等の弾性体11が装着してあり、この弾性体11を貫通してオリフィス孔12が設けられている。また、ピストン2に弾性体11の脱落を防止する保持部材13を設置している。また、シール部材設置部9と連通したシール部流路14をピストン2に設けている。また、弾性体装着部10にもオリフィス孔12と連通して作動流体4を通過させるための装着部流路15を形成しており、弾性体11と接する装着部流路15入り口側には角アール16を設けている。また、弾性体装着部10は、弾性体11が少なくともオリフィス孔12の軸方向に遊びを有する構成としている。なお、遊びとは、弾性体11がわずかに移動できる程度のすき間Xのことである。また、弾性体装着部10は、弾性体11の外径よりも大きい形状であり、弾性体装着部10の内側面には弾性体11の外径と接する突起部17を設けている。なお、突起部17の形状や個数は特に限定するものではない。また、弾性体11は略円柱形状としており、その外周の一部に凸部18を設けている。なお、この凸部18の形状や個数は特に限定するものではない。また、オリフィス孔12は、ストレート部19と上流側広がりのテーパ部20とで構成されており、弾性体装着部10はこの凸部18を避けるように段付形状21としている。
【0026】
次に動作、作用について説明すると、図3(a)に示すように軸体である連係部材3をシリンダ1に押し込む力(Bの方向に作用する力)が加わると、その力は連係部材3を介してピストン2に加わり、作動流体4aを圧縮する。弾性体11に設けたオリフィス孔12および装着部流路15を通過して作動流体4は4a側から4b側へ流れる。この流れに伴ってピストン2はBの方向に移動するが、作動流体4がオリフィス孔12を流れる際の抵抗力によってピストン2はBと反対の方向への抵抗力を受け、動作速度はゆっくりとなる。これがダンパ効果である。なお、ピストン2の移動速度はオリフィス孔12の形状や断面積などに依存する。
【0027】
ピストン2により作動流体4aが圧縮されると、弾性体11にもこの作動流体4の圧力が作用する。このため、力が作用した時には、図3(a)に示すように弾性体11は圧縮され、この弾性体11に設けられているオリフィス孔12の形状や面積も変化する。また、ピストン2に加わる力が変化すれば、弾性体11に加わる圧力も変化することから、荷重に応じてオリフィス孔12の面積を自動的に変化することができ、ダンパ特性も自動的に荷重に応じて変化させることがでいる。
【0028】
この構成では、ピストン2に作用する力が増加すれば、弾性体11の圧縮量つまりオリフィス孔12の変形量も増加し、オリフィス孔12の断面積は減少する傾向にある。つまり、ダンパの特性を示すダンパ負荷(ピストンに作用する力)とピストン2の動作速度との関係は、一般の剛体に設けた固定オリフィスでは図4のDのような関係であるのに対して、本開発のダンパ装置ではEの方向に移動した特性が得られる。したがって、負荷が大きくなった場合でもピストンの移動速度を抑えるように作用し、ピストン2の動作速度を一定の安全な速度以下に安定して保つことができる。
【0029】
なお、図4のEに示したようなダンパ装置の特性は、弾性体11の変形特性やオリフィス孔12の形状、断面積等のさまざまな要素によって決まるため、条件の変更により任意の特性を得ることができる。例えば、図4のFに示すような特性、つまりある値以上の負荷であれば、負荷が変動してもピストンの移動速度を略一定に保つことも可能である。
【0030】
また、保持部材13は、弾性体11がピストン2から脱落することを防止するものである。ピストン2と保持部材13は一体で形成することも可能であるが、本発明では保持部材13とピストン2とは分割して設けており、図5に示すように弾性体11を弾性体装着部10に挿入した後に保持部材13を取付けるものである。図5に示す方向に弾性体11を挿入する構成であるため、弾性体11の径方向の位置決めを正確に行うことができる。本ダンパ装置では弾性体11の位置決めがダンパ特性に与える影響は大きく、精度ある位置決めが必要である。突起部17は、弾性体11の外形と接するように設けており、図の方向に弾性体11を挿入するとこにより、常に一定の位置に弾性体11を装着することができる。ピストン2と保持部材13を一体で形成した場合にはこのような状態での装着は不可能であり、ピストン2と保持部材13を分割して設けることにより、安定したダンパ特性を得ることができる。また、保持部材13の形状は任意であることから、弾性体11の抜け防止にも優れている。さらに、図5のように保持部材13はその係合片13aをピストンの溝部2aはスライド嵌入ピンにワンタッチで装着可能とした場合には、容易に組み立てることができる
また、シール部材設置部9はシール部材5の内面とは接触しない構成としている。このため、図3(a)に示すように、ダンパ装置に力が作用し、作動流体4の内圧が上昇した際に、シール部材5の内側にも作動流体4の圧力が作用する。この力によってシール部材5はシリンダ2の内面に押し付けられるため、シール部材5が摩耗してもそのシール性能が低下することを防止できる。また、高荷重が作用すれば、作動流体4の圧力も高まり、シール部材5がシリンダ内面に押し付けられる力も増加するため、高負荷時におけるシール性を容易に確保することができる。
【0031】
また、シール部材設置部9と連通して設けたシール部流路14は、シール部材5によって、ダンパ作用を成すピストン2の正動時には作動流体4は通過せず、正動時と逆方向に動作するピストン2の逆動時には作動流体4が通過するバイパス流路22となる。正動時には図3(a)のように、ピストン2は図の左側へ押されるため、シール部材5はシール部材設置部9の右端面に押し付けられる。このため、シール部流路14は袋小路のようになり作動流体4は流れない。一方、逆動時には、図3(b)のように、ピストン2は右側に移動するため、シール部材5はシール部材設置部9の左端面に押し付けられる。すると、シール部流路14と作動流体4b側のシリンダ1とピストン2との隙間とは連通され、4bから4aに流れる流路が形成され、これがバイパス流路22となる。オリフィス孔12の変形は、作用する圧力や部材の形状のなどによって決まるため正動時と逆動時で異なる挙動を示し、従来の固定オリフィス孔の場合と異なり、正動時と逆動時で異なるダンパ特性を示す。このため、逆動時にはオリフィス孔12が閉塞したり、弾性体11が小刻みに伸縮を繰り返すびびり現象などの異常現象を発生し、正常に動作しない可能性がある。そこで、ダンパ作用を成すピストン2の正動時には作動流体は通過せず、逆動時には作動流体が通過するバイパス流路22を設けることにより、正動時には正常なダンパ作用が得られ、かつ逆動時に上記異常現象などによりダンパが正常に動作しないことを防止できる。また、十分な大きさのバイパス流路22を設けることにより、逆流時にはダンパ作用を成さず、一方向の動作に対してのみ作用するダンパ装置を得ることができる。
【0032】
また、弾性体装着部10は、弾性体11が少なくともオリフィス孔12の軸方向に遊びXを有する構成であり、正動時には図3(a)のように弾性体11は弾性体装着部10の右側に押し付けられるため、弾性体11の正面11aと保持部材13は接触しておらず、弾性体11の正面11aの全面に作動流体4の圧力が作用する。さらに、弾性体装着部10は弾性体の外形よりも大きい形状であることから、弾性体の側面11bも作動流体は接しており、弾性体11の側面11bの全体に作動流体4の圧力が作用する。したがって、作動流体4の圧力は常に弾性体11の正面11aおよび側面11bから作用し、弾性体11およびオリフィス孔12の変形状態が常に一定となり、安定したダンパ特性を得ることができる。また、弾性体11のまわりに空間が存在するため、弾性体11の外径や弾性体装着部10の多少の寸法誤差はダンパ特性に影響を与えない。また、弾性体装着部10の内側面には弾性体11の外形と接する突起部17を設けており、弾性体11の径方向の位置決めを行うものであるが、突起部17は突起形状であるため、弾性体11との接触面積は小さく、弾性体11の側面11bに作用する圧力にほとんど影響を与えない。
【0033】
また、弾性体11は、装着部流路15の入り口側と接触するため、圧力が作用した際に、弾性体11に亀裂等の損傷が生じる恐れがある。特に、入り口部が角張っている場合には、破損しやすい。この損傷により、ダンパ特性は影響を受け、またダンパの破損につながる恐れもある。装着部流路15の入り口側に設けた角アール16は、弾性体11に大きなせん断応力が作用することを抑制し、破損の発生を防止し、特性変動を抑え、耐久性の高いダンパ装置を得ることができる。また、角アール16の大きさが変わると、オリフィス孔12の変形特性も変化することから、角アール16を設けることによりダンパ特性変更を行うことができる。しかし、角アール16が小さすぎると、充分な効果が得られず、弾性体11に破損を与える恐れがあるので、角アール14は、0.5mm以上、好ましくは1mm以上であることがが望ましい。
【0034】
また、オリフィス孔12の形状によっては、弾性体11が加圧されオリフィス孔12が変形する際に、過度に変形してオリフィス孔12を閉塞してしまったり、弾性体11が小刻みに伸縮を繰り返すびびり現象を生じたりすることがある。しかし、その発生部分に上流側広がりのテーパ部20を設けることによりこれらの現象を回避し、正常に動作させることができる。オリフィス孔12は、ストレート部19と上流側広がりのテーパ部20とで構成したものであり、びびり現象の発生しやすいオリフィス孔12の入り口部に上流側広がりのテーパ部20を設けることにより、これら異常現象を防止するとができる。また、オリフィス孔12の最小面積部分をストレート部19で形成することにより、その孔の寸法精度を高めることが容易となり、特性にばらつきの少ないダンパ装置を得ることができる。
【0035】
また、弾性体11は、略円柱形状とし、その外周の一部に凸部18を設けたものである。弾性体11の外径はいかなる形状であってもよいが、本発明では円柱形状としている。円柱形状の場合には外周方向から均等な圧力が作用するため、オリフィス孔12も均等に変形し、びびり現象などが発生する可能性は少なくなる。なお、オリフィス孔12にテーパ部を設けた場合などは特にその設置方向が重要となり、組み立て時に逆挿入した場合には、所定のダンパ特性を得ることはできない。このため、オリフィス孔12の変形に影響しない程度の凸部18を弾性体外周の一部に設けることにより、弾性体12の装着方向を組み立て者は容易に判定することができる。また、逆挿入不可能な構成にすることも可能である。
【0036】
また、弾性体装着部10は、段付形状21としたものであり、弾性体に設けた凸部18が弾性体装着部10に接触したり、あるいはそれによって弾性体11が変形することを防止でき、その変形等によってダンパ特性に影響を与えることはない。
【0037】
また、シリンダ1内径とピストン2外形との隙間は直径で0.6mm以下としたものである。シリンダ1とピストン2との隙間にシール部材5がかみ込む恐れがあり、大きな隙間のあることは望ましくない。特に、シール部材5の内側からも作動流体4の圧力が作用する構成である場合には、シール部材5のかみ込みの可能性は高まる。シリンダ内径とピストン外形との隙間は直径で0.6mm以下とすることにより、かみ込みの発生を防止し、ダンパ装置の耐久性と安全性を向上することができる。
【0038】
また、軸体である連係部材3はシリンダ1の内外に出入りする構成であるため、その出入りする連係部材3の体積分の逃げ場所が必要であり、一般には空気層23をシリンダ2内に設ける場合が多い。ダンパの設置方向によってはこの空気がオリフィス孔に噛み込む恐れがあり、その場合はダンパ作用が得られないため、空気の噛み込まない条件で使用する必要がある。また、シリンダ内の作動流体4と空気層23を隔離する空気層隔離手段を用いた場合には、どの設置方向で使用することも可能となる。また、独立発泡ゴムなどのアキュムレーターを上記空気層23の代わりに封入した場合にも同様である。
【0039】
なお、シリンダ1内面とピストン2外面とのシールやシリンダ1と係合部材3とのシールにはOリングやXリング等のシール部材5を用いたが、ピストンシールやVパッキン等の他のシール手段であってもよい。
【0040】
また、この例では、ピストン2が直線上を移動する形態のダンパ装置についての例を示したが回転軸の回動に対して抵抗力を作用するロータリー式のダンパ装置であってもかまわないし、それ以外の軌道であってもよい。
【0041】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、弾性体にオリフィス孔を形成したものであり、可動体に作用する力に応じてオリフィス孔の形状や面積が自動的に変化し、ダンパ特性そのものを変化させることができる。たとえば、荷重が変化しても略一定の速度で動作するダンパ装置を得ることも可能である。また、弾性体を装着する弾性体装着部はピストンに設けており、弾性体つまりオリフィス孔はピストンの移動とともに移動する構成であり、二重シリンダ構造などの複雑な構成を用いる必要がなく、ダンパ装置全体の構成を簡素化できる。
【0048】
また、オリフィス孔は、ストレート部と上流側広がりのテーパ部とで構成した場合には、オリフィス孔が変形する際に、過度に変形してオリフィス孔を閉塞してしまったり、弾性体が小刻みに伸縮を繰り返すびびり現象を生じたりすることを防止し、ダンパ装置を正常に動作させることができる。また、オリフィス孔の最小面積部分をストレート孔で形成することにより、その孔の寸法精度を高めることが容易であり、特性にばらつきの少ないダンパ装置を得ることができる。
【0049】
また、弾性体は円柱形状とし、その外周の一部に凸部を設けた場合には、円筒形状とすることにより、弾性体に均等に圧力が作用し、オリフィス孔も変形も均一になり、びびり現象などを発生する可能性が少なくなる。オリフィス孔の変形に影響しない程度の凸部を弾性体外周の一部に設けることにより、弾性体の装着方向を組み立て者は容易に判定することができる。また、逆挿入不可能な構成にすることも可能である。
【0050】
また、弾性体装着部は、弾性体に設けた凸部を避ける段付形状とした場合には、弾性体に設けた凸部が弾性体装着部に接触したり、あるいはそれによって変形することを防止し、その変形等によってダンパ特性も変化することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1のダンパ装置の断面図
【図2】(a)同ダンパ装置の部分拡大断面図
(b)同ダンパ装置の弾性体装着部周辺の拡大断面斜視図
【図3】(a)同ダンパ装置の正動時の状態を示す部分拡大断面図
(b)同ダンパ装置の逆動時の状態を示す部分拡大断面図
【図4】同ダンパ装置の負荷とピストンの動作速度の関係を表す特性図
【図5】同ダンパ装置のピストン、弾性体、保持部材の分解状態を示す斜視図
【図6】従来のダンパ装置の概略図
【図7】ダンパ装置の使用例を示す装置の概略図
【符号の説明】
1 シリンダ
2 ピストン
3 連係手段
4 作動流体
9 シール部材設置部
10 弾性体装着部
11 弾性体
12 オリフィス孔
13 保持部材
14 シール部流路
15 装着部流路
16 角アール
17 突起部
18 凸部
19 ストレート部
20 上流側広がりのテーパ部
21 段付形状
Claims (2)
- 円筒形状のシリンダと、前記シリンダ内に配したピストンと、前記シリンダ内に封入した作動流体と、前記ピストンの移動に伴って前記作動流体が流れるオリフィス孔を設けた弾性体とで構成され、前記弾性体を装着するための弾性体装着部を前記ピストンに設け、前記オリフィス孔は、ストレート部と上流側広がりのテーパ部とで構成し、前記弾性体は円柱形状とし、その外周の一部に凸部を設けたダンパ装置。
- 弾性体装着部は、弾性体に設けた凸部を避ける段付形状とした請求項1記載のダンパ装置。
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