JP3898982B2 - ストリップの冷間圧延方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タンデム圧延機を用いたストリップの冷間圧延方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
後工程でめっきが施されるめっき用鋼板などは、表面が完全な平滑面であるとめっき工程やその後の加工工程において鋼板表面に付いた傷が目立ち易くなる。このため、タンデム圧延機の最終スタンドにダルロールと呼ばれる圧延ロールをセットし、鋼板表面に微細な凹凸を形成している。このような鋼板はダル鋼板と呼ばれる。
【0003】
このようにして鋼板表面に凹凸を形成した場合、めっき後の鮮映性は悪化するが凹凸を微細化することで鮮映性を改善することができる。鮮映性とは鋼板表面が鏡のように光を均等に反射する性質を意味する。またこの微細な凹凸は加工工程では油溜まりとしても機能するため、加工時の摺動性を向上させる効果も発揮する。
【0004】
これらの鮮映性及び加工時の摺動性を十分に得るためには、鋼板表面に形成される凹凸の高さがあるレベルで揃っており、しかもできるだけ凹凸のピッチが小さい方がよい。凹凸の高さは表面粗度Raで表され、凹凸のピッチはPPIで表される。PPIはピークスパーインチの頭文字であり、鋼板断面1インチあたりの凹凸の山数を意味する数値である。自動車用のめっき用鋼板では表面粗度Raが1μm前後が好ましいとされている。
【0005】
そこで従来は、表面粗度Raが3.4〜3.6μmのダルロールを用いることにより表面粗度Raが0.7〜1.2μmのダル鋼板を圧延していた。しかしその断面は図2(B)に示すように凹凸のピッチが大きく、PPIを60〜120程度とするのが限界であった。最近ではユーザーからの要求が更に高まり、鮮映性及び加工時の摺動性を更に向上させるために、PPIをより大きくすることが求められていた。
【0006】
なお、単にダルロールの表面に形成する凹凸のピッチを細かくしても、この目的は達成できない。その理由は、ロール表面の凹凸のピッチを細かくするほど圧延抵抗が急激に増加し、ダルロールの表面の凹凸が鋼板表面に転写されにくくなるためである。仮に上記のダルロールの凹凸のピッチを半分にすると、鋼板の表面粗度Raが0.7μm以下になってしまい、ダル鋼板としての本来の機能が失われてしまうこととなる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記した従来の問題点を解決し、従来品よりも鮮映性及び加工時の摺動性に優れたダル鋼板を製造することができるストリップの冷間圧延方法を提供するためになされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、タンデム冷間圧延機の最終スタンドの直前スタンドに表面粗度Raを3.4〜3.6μmとしたダルロールをセットし、また最終スタンドに表面粗度Raを2.2〜2.5μmとしたダルロールをセットし、ダル圧延をこれらの2スタンドで行い、鋼板表面粗度Raを0 . 7〜1 . 2μmに維持しながら、PPIの値を100〜250とすることを特徴とするものである。
【0009】
本発明によれば、最終スタンドの直前スタンドにセットされた表面粗度Raを3.4〜3.6μmとしたダルロールによって鋼板表面に従来と同様の凹凸を形成したうえ、最終スタンドにセットされた表面粗度Raを2.2〜2.5μmとしたダルロールによって、その凹凸の上から更に凹凸を形成する。この方法によって、鋼板表面の表面粗度Raを従来レベルに維持しつつ、PPIの値を従来品よりも大幅に向上させ、鮮映性及び加工時の摺動性に優れたダル鋼板を製造することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を示す。
図1に示すように、本発明ではタンデム圧延機を用いてストリップの冷間圧延を行なう。この実施形態では図1に示すように、第1スタンド1から第6スタンド6までの6つのスタンド1,2,3,4,5,6からなるタンデム圧延機を用いている。本発明において用いるタンデム圧延機のスタンド数は特に限定されるものではないが、スタンド数があまり少なくなると前段側スタンドの圧延負荷が大きくなり過ぎるおそれがあるので、4スタンド以上のものを用いることが好ましい。
【0011】
この実施形態では、第1スタンド1から第4スタンド4までは主としてストリップの形状を決定するためのスタンドであり、従来と同様の圧延ロールが用いられている。しかし本発明では、最終スタンドである第6スタンド6にダルロール8をセットするとともに、その直前スタンドである第5スタンド5にもダルロール7をセットしておく。このように2つのスタンドにダルロール7,8をセットすることは従来行われていない。
【0012】
前記したように、鮮映性をより高めるためには、最終スタンドにセットされるダルロール8の表面粗度を、直前スタンドにセットされるダルロール7の表面粗度よりもやや小さくしておくことが好ましく、本発明ではダルロール7の表面粗度Raを3.4〜3.6μmとし、ダルロール8の表面粗度Raを2.2〜2.5μmとしてある。
【0013】
この結果、第5スタンド5において鋼板表面に形成された凹凸の上に、更に最終スタンドにおいて別の凹凸が重ねて形成されることとなり、得られたダル鋼板の断面は図2(A)に示すようになる。この図2(A)を同一倍率の図2(B)と比較すれば明らかなように、本発明の方法で製造されたダル鋼板は、必要な凹凸の高さを維持しながら、凹凸のピッチを従来法で製造されたダル鋼板よりも小さくすることができる。具体的には、表面粗度Raを従来と同じ0.7〜1.2μmに維持しながら、PPIの値を従来の「60〜120」から「100〜250」にまで大幅に高めることに成功した。
【0014】
このように本発明の方法により圧延されたダル鋼板は、PPIの値が大きいので光線の乱反射が抑制され、従来法により圧延されたダル鋼板よりも鮮映性が良化する。また必要な凹凸の高さを維持しながら凹凸のピッチを小さくしたので、加工時に鋼板表面に潤滑油が均一に分散保持されることとなり、従来法により圧延されたダル鋼板よりも摺動性を向上させることが可能となる。
【0015】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば最終スタンド及びその直前スタンドにそれぞれダルロールをセットし、ダル圧延をこれらの2スタンドで行うという従来にない圧延方法を採用したことによって、鋼板表面に形成された凹凸の高さを必要レベルに維持しながらPPIを大きくし、鮮映性と加工時の摺動性に優れたダル鋼板を得ることができる。このダル鋼板は特に、自動車用のめっき鋼板に適したものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧延方法の説明図である。
【図2】鋼板表面の断面図であり、(A)は本発明方法により圧延されたダル鋼板、(B)は従来法により圧延されたダル鋼板を示す。
【符号の説明】
1 第1スタンド
2 第2第1スタンド
3 第3スタンド
4 第4スタンド
5 第5スタンド(直前スタンド)
6 第6スタンド(最終スタンド)
7 ダルロール
8 ダルロール

Claims (1)

  1. タンデム冷間圧延機の最終スタンドの直前スタンドに表面粗度Raを3.4〜3.6μmとしたダルロールをセットし、また最終スタンドに表面粗度Raを2.2〜2.5μmとしたダルロールをセットし、ダル圧延をこれらの2スタンドで行い、鋼板表面粗度Raを0 . 7〜1 . 2μmに維持しながら、PPIの値を100〜250とすることを特徴とするストリップの冷間圧延方法。
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