JP2726574B2 - ステンレス冷延鋼帯の製造方法 - Google Patents

ステンレス冷延鋼帯の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ステンレス冷延鋼帯
の製造方法に係り、特に表面光沢の優れたステンレス冷
延鋼帯を製造する圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】通常、ステンレス冷延鋼帯を製造するに
は、焼鈍し、酸洗したステンレス熱延鋼帯に潤滑油を供
給しつつ冷間圧延を施し、次いでさらに焼鈍と酸洗また
は光輝焼鈍を施し、その後調質圧延を施して仕上げる。
【0003】ステンレス冷延鋼帯は、仕上調質圧延のま
まで製品として使用される場合が多いので、特に表面光
沢が優れていることを要求される。ステンレス冷延鋼帯
の表面の光沢を改善する方法として、例えば、特開平2
−169108号公報には、ステンレス熱延鋼帯に焼鈍と酸洗
を施し、次いで外表面に交差する溝を設けたワークロー
ルを使用して圧下率が5%以上の冷間圧延を施す方法が
開示されている。この方法は、外表面に交差する溝を設
けたワークロールで冷間圧延することにより、ワークロ
ールと鋼帯との間に存在する潤滑油をロールバイトの外
へ排出しようとするものである。ワークロールと鋼帯と
の間の鋼帯表面の凹みの中に潤滑油が多量に存在する
と、ロールバイトの中でワークロールと鋼帯が接触して
いる間、潤滑油の逃げ場がなくなる。このようにして封
じ込められた潤滑油があると、圧延後の鋼帯表面の凹み
は冷間圧延する前より多少小さくなるものの、結果的に
冷間圧延する前の鋼帯の表面粗さが冷間圧延した後にも
そのまま残留するからである。しかし、特開平2−1691
08号公報に開示された方法には、 (イ)ロールに交差した
溝加工を施す工程が煩瑣である、 (ロ)溝深さが深く、溝
の条数が少ない場合、被圧延材の表面に凸疵が形成さ
れ、その部分が次の冷間圧延時に高面圧となり潤滑不足
から焼付が発生する、 (ハ)交差した溝は圧延の進行とと
もに目詰まりや摩耗を生じ、潤滑油を排出する効果が減
少する、といった問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】仕上調質圧延のまま製
品として使用されるステンレス冷延鋼帯が増大し、しか
もそのステンレス冷延鋼帯は、特に表面の光沢が優れて
いることが要求されている。ステンレス冷延鋼帯の表面
光沢を改善するためには、ステンレス冷延鋼帯の表面粗
さを小さくすればよく、そのためには冷間圧延前の熱延
鋼帯の表面粗さを小さくするか、または冷間圧延の初期
の段階で鋼帯の表面粗さを小さくすればよいことが知ら
れている。しかし、前述の特開平2−169108号公報に記
載された方法は実用化が難しく、最近のステンレス冷延
鋼帯の表面光沢に対する客先の厳しい要求に対応するこ
とは困難である。
【0005】本発明の目的は、最近の厳しい要求にも応
えられるような優れた表面光沢をもつステンレス冷延鋼
帯を製造する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、後に詳しく説
明するように、ステンレス鋼の冷間圧延において、クロ
スロール圧延と平行ロール圧延とを適切に組み合わせて
行えば表面光沢のきわめて優れた冷延鋼帯が得られると
いう知見に基づいてなされたもので、『焼鈍し、酸洗し
たステンレス熱延鋼帯に、圧下率が5%以上のクロスロ
ール圧延による予備冷間圧延を施し、その後平行ロール
圧延、またはクロスロール圧延と平行ロール圧延の組合
せによる冷間圧延を施すことを特徴とするステンレス冷
延鋼帯の製造方法』を要旨とする。
【0007】本発明において、「クロスロール圧延」と
言うのは、図3に示すように、被圧延材(熱延鋼帯3)
の圧延方向(長手方向)に直角の方向に対して、上下の
ロール軸がそれぞれ逆の方向にある角度(α)を持って
圧延面に平行な面内で傾斜した状態で圧延することを意
味する。多段圧延機(4Hiミル、6Hiミル等) では、こ
の傾斜はワークロールのみに持たせてもよく、バックア
プロールも共に傾斜させてもよい。「平行ロール圧延」
とは、上下のロール軸を共に圧延方向(長手方向)に
にして圧延を行う通常の圧延を意味する。
【0008】図1および図2は、本発明方法の代表的な
実施態様を模式的に図示したものである。本発明方法は
専用の予備圧延機を使用して実施する場合と、これを使
用せず、通常の(既設の)圧延機を用いて実施する場合
に大別できる。いずれの場合も素材は熱間圧延後に、焼
鈍され酸洗された鋼帯(以下、単に「熱延鋼帯」とい
う)である。
【0009】 I 専用の予備圧延機を使用する場合 (図1) 予備冷間圧延を行う圧延機は、ロールクロス圧延が実施
できるものであればその種類は問わない。例えば、1ス
タンドの2Hiミル、4Hiミル、6Hiミル等が使用でき
る。
【0010】予備圧延機で、圧下率5%以上のクロスロ
ール圧延を行った後、もしくはの1スタンドの圧延
機(ゼンジミアミルのような小径ワークロールの圧延機
でもよい)によるリバース圧延、またはもしくはの
多段圧延機(多スタンドの圧延機)によるタンデム圧延
を行う。は、リバース圧延を全て平行圧延方式で行う
場合、は初期の少なくとも1パス(第1パスが望まし
いがこれに限らない)をロールクロス圧延方式で圧延
し、その後、平行圧延を行う場合である。
【0011】およびは複数のロールスタンドを持つ
タンデム圧延機で連続的に圧延する方法である。はこ
のタンデム圧延の全て(全スタンドでの圧延)を平行ロ
ール圧延方式で行う場合、は、入側の少なくとも1ス
タンド(第1のスタンドが望ましいがこれに限らない)
での圧延をクロスロール方式で行い、その後、平行ロー
ル方式で圧延する場合である。
【0012】、のように、予備圧延のみならずその
後の圧延(本圧延)においても、最初にクロスロール圧
延を行うと、後述するように製品鋼帯の表面光沢は一層
優れたものになる。
【0013】はタンデム圧延の後に更に、例えばゼン
ジミアミルで1回以上の平行圧延を行うものである。こ
のときのタンデム圧延も、全スタンドで平行圧延を行う
場合と、入側の少なくとも1スタンドでの圧延をクロス
ロール方式で行う場合とがあり後者が望ましい。
【0014】 II 専用の予備圧延機を使用しない場合 (図2) これは、通常の圧延機による初期の圧延を予備圧延とす
る方法である。これも1スタンドの圧延機によるリバー
ス圧延、タンデム圧延機による連続圧延のいずれででも
実施できる。
【0015】はリバース圧延の場合である。このとき
は、初期の1〜数パスはクロスロール方式の圧延を行わ
なければならない。このクロスロール圧延で5%以上の
圧下率で圧延を行えば、これが前述の予備圧延に相当す
る。その後は、平行ロール圧延を行って仕上げる。
【0016】はタンデム圧延の場合であり、このとき
は入側近くの1〜数スタンドでクロスロール方式の予備
圧延を行う。勿論、クロスロール圧延の圧下率は5%以
上でなければならない。その後、後続のスタンドで平行
圧延を行って仕上げる。なお、図示していないが、図2
のまたはの圧延の後、ゼンジミアミルによる圧延を
行ってよいことは言うまでもない。
【0017】
【作用】本発明の方法の特徴は、焼鈍し、酸洗したステ
ンレス熱延鋼帯に圧下率が5%以上のクロスロール圧延
方式による予備冷間圧延を施した後、通常の平行圧延方
式による冷間圧延を施すところにある。
【0018】図3は、予備圧延におけるクロスロール圧
延、即ち、上下のワークロールを圧延面に平行な面内で
交差角αで交差させて圧延している状態を示す図で、
(a) は平面図であり、(b) は側面図である。なお、圧延
前の被圧延材を熱延鋼帯3とし圧延後の鋼帯を冷延鋼帯
4としている。
【0019】熱延鋼帯3の上面では、熱延鋼帯3の進行
方向(X方向)と上ワークロール1の熱延鋼帯3に接触
している側の回転周速度の方向(Y方向)との角度が交
差角αと同じ角度になる。従って、熱延鋼帯3の上面に
は、上ワークロール1により板幅方向(Z方向)のすべ
り分力が発生し、熱延鋼帯3の上面の表層部が板幅方向
に剪断変形を受ける。また、ロール表面の研削目の凸部
が板幅方向に移動することになり、ロールと熱延鋼帯の
金属接触が増加する。これらの作用によって、鋼帯表面
は均一にならされて、被圧延材の表面粗さが小さくな
り、平滑で光沢に優れた冷延鋼板4が得られる。この現
象は、熱延鋼帯3の下面と下ワークロール2との間にお
いても同様に発生する。光沢に優れた冷延鋼帯を得るた
めに、ワークロールの交差角αを 0.2°以上とするのが
好ましい。交差角αが大きいほど光沢は改善されるが、
その一方で冷延鋼板の表面にメカニカルクラウンが発生
するので、交差角αを大きくする場合には、凹クラウン
形状を有する(ロール端部の径が中央部の径より大き
い)ワークロールを使用すればよい。
【0020】予備冷間圧延のクロスロール方式による圧
延の圧下率を5%以上にする理由は以下のとおりであ
る。
【0021】圧下率が5%に満たない場合には、ワーク
ロールにより熱延鋼帯の表層部に作用する板幅方向のす
べり分力が小さくなり、熱延鋼帯の表層部が受ける板幅
方向剪断変形が小さくなる。また、圧下率5%未満の軽
圧下ではロールバイトの中に導入される潤滑油が増加
し、熱延鋼帯とワークロールとの金属接触の割合が少な
くなる。その結果、冷延鋼板の表面粗さは小さくなら
ず、冷延鋼板の光沢も改善されない。なお、圧下率が高
いほど冷延鋼板の表面光沢は良くなるが、圧下率が約25
%以上になると、その向上効果はほぼ飽和する。
【0022】上記の予備圧延は1パスで行っても、複数
パスで行って圧下率の合計が5%以上になるようにして
もよい。通常の圧延条件で25%程度の圧下は1パスでも
可能である。
【0023】ステンレス熱延鋼板に圧下率が5%以上の
クロスロール方式による予備冷間圧延を施す方法は、前
述のように種々ある。その一つは、図1に示したよう
に、専用の圧延機を使用する方法である。即ち、ステン
レス熱延鋼帯を焼鈍し、酸洗した後に、専用の圧延機で
圧下率が5%以上のロールクロス圧延方式による冷間圧
延を施し、その後通常の冷間圧延機(タンデム圧延機も
しくはリバース圧延機、またはその組合せ)で仕上の冷
間圧延を施すのである。この専用の圧延機を酸洗ライン
の出側に設けた場合には、酸洗した直後に予備冷間圧延
を施すことになる。また、この専用の圧延機をオフライ
ンで独立に設けた場合には、酸洗後の熱延鋼帯を一旦コ
イルに巻き取ってから仕上の冷間圧延を施す前に予備冷
間圧延を行うことになる。専用の圧延機を使用する場合
には、設備新設のコストがかかるが、本来の冷間圧延機
での圧延スケジュールは全く影響されない。
【0024】予備圧延のもう一つの方法は、図2に示し
たように、通常の冷間圧延機(リバース圧延機またはタ
ンデム圧延機)の初期の少なくとも第1パス(リバース
圧延機の場合)または入側の少なくとも1スタンド(タ
ンデム圧延機の場合)を利用することである。この場合
には、専用の圧延機が不要になるので設備新設の問題は
ないが、本来の冷間圧延機での圧延スケジュールを変更
する必要が生じる場合もある。
【0025】予備圧延の後は、通常の冷間圧延 (本圧
延) を行うのであるが、ここでは図1のおよびに示
すように、全てを平行ロール方式で圧延してもよいし、
また同およびに示すように、クロスロール圧延と平
行ロール圧延を併用することもできる。さらに、のよ
うに、タンデム圧延機とンジミアミルのようなリバー
ス圧延機を併用してもよいことは前述のとおりである。
【0026】冷間圧延機がリバース圧延機の場合には、
初期の少なくとも1パス(第1パスが望ましい)をクロ
スロール圧延方式による冷間圧延とし、その後、通常の
平行圧延方式による冷間圧延を施す。冷間圧延機がタン
デム圧延機の場合には、入側の少なくとも1スタンド
(入側第1スタンドが望ましい)でクロスロール方式に
よる冷間圧延を施した後、通常の平行ロール方式による
冷間圧延を施すのである。このときのクロスロール圧延
の圧下率については特に制約はない。このように、圧下
率が5%以上のクロスロール圧延方式による予備冷間圧
延を施した後、更に本圧延においてもクロスロール圧延
方式による冷間圧延を併用した冷間圧延を行えば冷延鋼
板の光沢が飛躍的に改善される。
【0027】予備冷間圧延の後の本圧延でのクロスロー
ル方式による冷間圧延は、できるだけ初期のパスの(リ
バース圧延機の場合)または初期のスタンド(タンデム
圧延機の場合)で行うのがよい。望ましくは、3パス以
内(リバース圧延機の場合)または3スタンド以内(タ
ンデム圧延機の場合)で実施する。そして、後続する残
りのパス、または残りのスタンドでの圧延は平行ロール
方式で冷間圧延とする。即ち、冷間圧延の仕上げは必ず
平行ロール方式で行わなければならない。クロスロール
圧延を行うと幅方向の剪断力により鋼板にねじれが発生
するので、これを修正するために平行ロール方式の圧延
で仕上げを行うのである。
【0028】なお、予備圧延(または本圧延の初期に)
クロスロール圧延を行って表面光沢を向上させても、そ
の後の平行ロール圧延の回数が増えると圧延油の押し込
みによるオイルピット疵や微小クラックの発生によって
光沢が落ちてくることがある。このような場合は、本圧
延の過程で平行ロール圧延の間にクロスロール圧延を挟
んで圧延するのが望ましい。
【0029】本発明方法におけるクロスロール圧延に使
用する冷間圧延機のワークロールの表面粗さは、Ra で
0.1〜2.0 μm の範囲にすると効果が大きい。また、ワ
ークロールの外径については特に限定する必要はなく、
外径が 150mm以下の小径であっても、あるいは 450mm程
度の大径であっても全く問題はない。使用する潤滑油
は、ステンレス鋼や低炭素鋼の冷間圧延に通常使用され
ているもので差し支えない。
【0030】
【実施例1】焼鈍し、酸洗したフェライト系ステンレス
鋼(JIS SUS 430) の熱延鋼帯(厚み4.5 mm)を素材と
し、図1に示すライン構成の設備で下記のような冷間圧
延を行った。
【0031】使用した予備圧延機は、ワークロール径が
450mm、350 mmおよび250 mmの4Hiミルならびにワーク
ロール径が 120mmおよび80mmの6Hiミル(いずれも1ス
タンド)である。まず、これらの予備圧延機で、表1〜
表3に示す種々の条件でクロスロール方式での予備冷間
圧延を行い、その後、径 450mmのワークロールと径1420
mmのバックアプロールを備えた5スタンドのタンデム圧
延機、径70mmのワークロールを有するゼンジミアミルお
よびこれらの組合せにより、通常の平行圧延方式による
冷間圧延 (本圧延) を行った。
【0032】予備圧延で使用した圧延機のロール径、ロ
ール交差角 (α) 、ロール表面粗さRaおよび圧下率を
表1〜表3に示す。
【0033】本圧延での冷間圧延はすべて平行ロール方
式で行い、圧下率は予備圧延の圧下率との合計で 82 %
になるように (即ち、最終製品冷延鋼帯の厚みが 0.8mm
になるように) した。ゼンジミアミルでの圧延は8パス
とし、タンデム圧延とゼンジミアミル圧延の組合せの場
合は、タンデム圧延で 1.0mmまで圧下し、ゼンジミアミ
ルで1パスの圧延をして 0.8mmに仕上げた。
【0034】予備圧延および仕上げ圧延に使用した潤滑
油は合成エステル系のエマルジョン圧延油である。
【0035】表1〜表3に、得られた冷延鋼帯の表面光
沢度を併記した。この光沢度は目視により判定し、光沢
の良好な順にA〜Eの5段階で評価した。
【0036】本発明方法の効果を実証するために、酸洗
した熱延鋼帯に圧下率が5%の平行ロール方式による最
初の冷間圧延を施した後、即ち、予備の冷間圧延をクロ
スロール方式によらないで、圧下率が5%の冷間圧延を
施した後、通常の平行ロール方式による冷間圧延を行っ
た比較例と、さらに全く予備圧延を施すことなく、通常
の平行ロール方式による冷間圧延を行った比較例の結果
も表1〜表3に併記した。
【0037】表1は、予備冷間圧延を施した後の本圧延
をタンデム圧延機による通常の平行ロール圧延で行った
場合、表2は、それをゼンジミアミルによるリバース圧
延で行った場合、表3は、本圧延をまずタンデム圧延機
により厚み1.0 mmまで行い、その後ゼンジミアミルによ
る平行ロール圧延で厚み0.8mm まで行った場合である。
【0038】表1において試験No.1〜8は本発明例であ
る。本圧延をタンデム圧延機での平行ロール圧延のみと
したので、表面光沢度はBランクであるが、予備圧延な
し、または予備圧延を平行ロール方式で行った比較例
(No.9、10) に較べれば本発明方法の著しい効果が明ら
かである。
【0039】表2では、試験 No.11〜18が本発明例であ
る。本圧延をゼンジミアミルで行うこと自体に表面光沢
度の向上効果があるが、比較例のNo.19 および20と対比
すればここでも本発明方法の効果が明らかである。
【0040】表3は、量産に適するタンデム圧延と表面
光沢度向上の効果があるゼンジミアミルによる圧延との
組合せの例である。比較例のNo.29 および30ではタンデ
ム圧延の影響が解消できずに表面光沢が悪いが、本発明
例(No.21〜28) ではすべてAランクの光沢度になってい
る。
【0041】表1〜表3に見られるとおり、本発明方法
の冷間圧延を施すことにより、冷延鋼帯の表面光沢が極
めてよくなる。また、この表面光沢は、大径のワークロ
ールを有するタンデム圧延機よりも小径のワークロール
を有するゼンジミアミルを使用する圧延の方が1ランク
程度良好になることがわかる。しかし、タンデム圧延機
のみによる冷間圧延でも、本発明方法によれば、従来の
圧延方法による場合に比較して表面光沢が大きく改善さ
れ、従来ゼンジミアミルでの圧延でしか得られないとさ
れていた表面光沢度が得られている。このことは、表面
光沢のよいステンレス冷延鋼帯がタンデム圧延機で効率
的に製造できるということである。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【実施例2】予備冷間圧延の後の本圧延においてクロス
ロール方式と平行ロール方式の圧延を組み合わせて冷間
圧延した例である。被圧延材は、実施例1と同じく焼鈍
し、酸洗したフェライト系ステンレス鋼(JIS SUS 430)
の熱延鋼帯(厚み 4.5mm)である。予備圧延は実施例1
で使用した各種の圧延機を使用し、表4に示す〜の
条件で行った。表4の10は、これらの圧延機での予備圧
延を行わない場合である。
【0046】本圧延は、実施例1で使用したものと同じ
5スタンドからなるタンデム圧延機を使用し、その第1
〜第3スタンドの中の少なくとも1スタンドでクロスロ
ール方式による冷間圧延を施し、その後のスタンドで通
常の平行ロール方式による冷間圧延を施し、厚み 0.8mm
に仕上げた。予備圧延、本圧延とも使用した潤滑油は合
成エステル系エマルジョン圧延油である。
【0047】表5および表6に予備圧延の条件 (表4の
No. 〜10) と本圧延のクロスロール方式による冷間圧
延の諸条件を示す。また、このクロスロール圧延の後、
平行ロール方式の圧延で仕上げた冷延鋼板の光沢度を表
5および表6に併記する。光沢度の評価基準は実施例1
と同じである。
【0048】表5および表6において、試験No.1〜16
は、すべて本発明例である。試験No.13は、予備圧延機
では平行ロール方式で圧延しているが、その後タンデム
圧延機の第1スタンドを利用して25%の圧下率のクロス
ロール圧延を行っているので、これが予備圧延になって
いる。また、試験No. 14〜16は、予備圧延機での圧延を
せずに、直接タンデム圧延機の第1スタンド、第1およ
び第2スタンド、または第1〜第3スタンドでクロスロ
ール圧延方式による予備圧延を施し、その後同一のタン
デム圧延機を使用して平行圧延方式による冷間圧延を施
した場合である。
【0049】即ち、試験No. 14〜16では、タンデム圧延
での初期の圧延が予備圧延になっている。
【0050】表1の表面光沢度と、表5および表6のそ
れとを比較すると、クロスロール方式での予備冷間圧延
を施し、更に本圧延においてもはじめにクロスロール圧
延方式による冷間圧延を施し、その後通常の平行圧延方
式による冷間圧延を施すことにより、冷延鋼板の光沢が
飛躍的に向上することがわかる。表5および表6の試験
No.13および14は、クロスロール圧延を1回しか施して
いないから、実質的に実施例1と同じであるが、専用の
圧延機による予備圧延を施さずに、直接本来の圧延機で
予備圧延に相当する冷間圧延を施すことによっても同等
の効果が得られることがわかる。
【0051】以上、フェライト系ステンレス鋼について
の実施例を示したが、オーステナイト系ステンレス鋼の
例としてJIS SUS 304 鋼帯の熱延鋼帯を素材として本発
明の冷間圧延を施した場合も、同じく表面光沢の優れた
冷延鋼帯が製造できた。
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
【発明の効果】本発明の冷間圧延方法により、表面光沢
に優れたステンレス冷延鋼帯を得ることができる。特
に、従来タンデム圧延機等の大径ワークロールを用いた
冷間圧延では、ゼンジミアミル等の小径ワークロールを
用いた冷間圧延と同程度の光沢を確保することは全く不
可能であったが、タンデム圧延機による連続圧延におい
ても本発明の冷間圧延方法によればステンレス冷延鋼帯
の表面光沢を飛躍的に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】予備圧延機を使用する本発明方法の実施態様を
説明する圧延ラインの概略図である。
【図2】予備圧延機を使用しない本発明方法の実施態様
を説明する圧延ラインの概略図である。
【図3】クロスロール圧延の原理を説明する図で、(a)
は平面図、(b) は側面図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 富沢 淳 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平1−83307(JP,A) 特開 昭58−138505(JP,A) 特開 昭58−61902(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】焼鈍し、酸洗したステンレス熱延鋼帯に、
    圧下率が5%以上のクロスロール圧延による予備冷間圧
    延を施し、その後平行ロール圧延、またはクロスロール
    圧延と平行ロール圧延の組合せによる冷間圧延を施すこ
    とを特徴とするステンレス冷延鋼帯の製造方法。
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