JP3898846B2 - ハイブリッド型車両の駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハイブリッド型車両の駆動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、エンジン、モータ及び発電機モータを備えたハイブリッド型車両において、エンジンとモータとを一つの軸線上に配設するとともに、エンジン及び発電機モータをクラッチによって出力軸から切り離すことができるようにしたものが提供されている。この場合、クラッチを係合させるとパラレル式のハイブリッド型車両として、クラッチを解放するとシリーズ式のハイブリッド型車両として作動する。したがって、例えば、市街地走行においてはクラッチを解放し、高速走行においてはクラッチを係合させるような使い分けをすることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来のハイブリッド型車両においては、エンジンとモータとが一つの軸線上に配設されるので、駆動装置の軸方向寸法が大きくなり、該駆動装置をフロントドライブ・フロントアクスル式のハイブリッド型車両に搭載した場合、ステアリング角度を十分に採ることができず、ハイブリッド型車両の最小回転半径が大きくなってしまう。
【0004】
そこで、本特許出願人は、エンジンとモータとを異なる軸線上に配設したハイブリッド型車両を提案した(特開平8−183347号公報参照)。
該ハイブリッド型車両は、エンジン、発電機モータ、駆動モータ、及びプラネタリギヤユニットを備えた駆動装置を有し、前記プラネタリギヤユニットは、少なくとも3個の要素から成り、第1の要素が前記発電機モータと連結され、第2の要素がカウンタドライブギヤと連結され、第3の要素が前記エンジンと連結される。
【0005】
そして、前記駆動モータの出力軸に出力ギヤが配設され、前記カウンタドライブギヤ及び出力ギヤから出力された回転が、カウンタシャフトに配設されたカウンタドリブンギヤに伝達され、該カンウタドリブンギヤを介してディファレンシャル装置に伝達される。また、該ディファレンシャル装置において、伝達された回転が分配され、左右の駆動軸に伝達される。
【0006】
ところで、前記ハイブリッド型車両において、エンジンを駆動し、駆動モータを駆動することなくハイブリッド型車両を走行させる場合、前記駆動モータはエンジンの駆動に伴って引きずられて回転させられる。この場合、前記エンジンは、駆動に伴って振動しながら回転するので、振動を吸収するためのフライホイール、ダンパ装置等が配設されていても、エンジンと駆動軸との間に形成された駆動系は微小に振動しながら回転することになる。
【0007】
ところが、前記駆動モータは、慣性モーメントが大きいので、滑らかに回転しようとする。
したがって、前記駆動系と駆動モータとの間に、微小な振動に対応する分の回転数差が生じるので、駆動系と駆動モータとの連結部分、すなわち、前記出力ギヤとカウンタドリブンギヤとの噛(し)合部分に形成されたバックラッシによって前記駆動装置に振動、騒音等が発生してしまう。なお、該振動、騒音等は、停車中においてエンジンをアイドリングする際にも発生する。
【0008】
そこで、前記駆動装置に振動、騒音等が発生するのを防止するために、前記フライホイールを大型化したり、ダンパ装置を高性能化したりして、駆動系の慣性モーメントを大きくし、前記微小な振動を低減させることが考えられるが、駆動系の慣性モーメントを大きくする分だけ、駆動装置の寸法及び重量が大きくなるとともにコストが高くなってしまう。
【0009】
本発明は、前記従来のハイブリッド型車両の問題点を解決して、振動、騒音等が発生するのを防止することができ、寸法及び重量を小さくすることができ、コストを低くすることができるハイブリッド型車両の駆動装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そのために、本発明のハイブリッド型車両の駆動装置においては、電機装置と、駆動輪と、前記電機装置によって発生させられた電機装置トルクを前記駆動輪に伝達するために配設され、第1の連結部材を備えた電機装置トルク伝達系と、エンジンによって発生させられたエンジントルクを前記駆動輪に伝達するために配設され、前記第1の連結部材と連結される第2の連結部材を備えたエンジントルク伝達系と、制御手段とを有する。
【0011】
そして、該制御手段は、前記第1、第2の連結部材間において歯面の接離及び微動が常時なくなるように設定された設定値より大きいトルクが付勢されるように、前記電機装置トルクの目標値及びエンジントルクの目標値のうちの少なくとも一方を算出する目標値算出手段、並びに該目標値算出手段によって算出された目標値を達成することができるように前記エンジン及び電機装置のうちの少なくとも一方の制御を行う駆動装置制御手段を備える。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態におけるハイブリッド型車両の機能ブロック図である。
図において、11はエンジン、25は電機装置としての駆動モータ、41は駆動輪、H1は前記駆動モータ25によって発生させられた電機装置トルクとしての駆動モータトルクを前記駆動輪41に伝達するための電機装置トルク伝達系、27は該電機装置トルク伝達系H1に配設された第1の連結要素としての出力ギヤ、H2は前記エンジン11によって発生させられたエンジントルクを前記駆動輪41に伝達するためのエンジントルク伝達系、32は該エンジントルク伝達系H2に配設され、前記出力ギヤ27と連結される第2の連結要素としてのカウンタドリブンギヤ、100は制御手段、101は前記出力ギヤ27とカウンタドリブンギヤ32との間において設定値より大きいトルクが付勢されるように、前記駆動モータトルクの目標値及びエンジントルクの目標値のうちの少なくとも一方を算出する目標値算出手段、102は該目標値算出手段101によって算出された目標値を達成することができるように前記エンジン11及び駆動モータ25のうちの少なくとも一方の制御を行う駆動装置制御手段である。
【0015】
図2は本発明の第1の実施の形態におけるハイブリッド型車両の概念図である。
図において、11はエンジン(E/G)、12は該エンジン11を駆動することによって発生させられた回転を出力する出力軸、13はプラネタリギヤユニット、14は該プラネタリギヤユニット13においてトルクが分配された後の回転を出力する出力軸、15は該出力軸14に固定されたカウンタドライブギヤ、16は伝達軸17を介して前記プラネタリギヤユニット13と連結された発電機モータ(G)である。
【0016】
前記プラネタリギヤユニット13は、サンギヤS、該サンギヤSと噛合するピニオンP、該ピニオンPと噛合するリングギヤR、及び前記ピニオンPを回転自在に支持するキャリヤCRから成る。また、前記サンギヤSは前記伝達軸17を介して発電機モータ16と、リングギヤRは出力軸14を介してカウンタドライブギヤ15と、キャリヤCRは出力軸12を介してエンジン11と連結される。
【0017】
そして、前記発電機モータ16は前記伝達軸17に固定され、回転自在に配設されたロータ21、該ロータ21の周囲に配設されたステータ22、及び該ステータ22に巻装されたコイル23から成る。前記発電機モータ16は、伝達軸17を介して入力される回転によって電力を発生させる。前記コイル23は、蓄電部材としての図示されないバッテリに接続され、該バッテリに電流を供給して蓄電する。
【0018】
また、25は前記バッテリに接続され、該バッテリから電流が供給されて回転を発生させる駆動モータ(M)、26は該駆動モータ25の回転を出力する出力軸、27は該出力軸26に固定され、駆動モータトルクTMを出力する出力ギヤである。前記駆動モータ25は、前記出力軸26に固定され、回転自在に配設されたロータ37、該ロータ37の周囲に配設されたステータ38、及び該ステータ38に巻装されたコイル39から成る。
【0019】
そして、前記エンジン11の回転と同じ方向に駆動輪41(図1)を回転させるために、カウンタシャフト31が配設され、該カウンタシャフト31にカウンタドリブンギヤ32及びピニオンドライブギヤ33が固定される。また、前記カウンタドリブンギヤ32と前記カウンタドライブギヤ15とが、及びカウンタドリブンギヤ32と出力ギヤ27とが噛合させられ、前記カウンタドライブギヤ15の回転及び出力ギヤ27の回転が反転されてカウンタドリブンギヤ32に伝達されるようになっている。さらに、前記ピニオンドライブギヤ33と噛合させて大リングギヤ35が配設され、該大リングギヤ35にディファレンシャル装置36が固定され、大リングギヤ35に伝達された回転が前記ディファレンシャル装置36によって分配され、前記駆動輪41に伝達される。
【0020】
なお、前記プラネタリギヤユニット13、カウンタドライブギヤ15、駆動モータ25、ディファレンシャル装置36等によって駆動装置が構成される。また、前記カウンタドリブンギヤ32及び出力ギヤ27によって連結部材が構成される。
次に、前記構成のハイブリッド型車両の動作について説明する。
【0021】
図3は本発明の第1の実施の形態におけるハイブリッド型車両の制御回路のブロック図、図4は本発明の第1の実施の形態におけるハイブリッド型車両の動作を示すフローチャート、図5は本発明の第1の実施の形態における発電機モータ目標回転数マップを示す図、図6は本発明の第1の実施の形態における駆動モータ目標トルクマップを示す図、図7は本発明の第1の実施の形態におけるスロットル開度マップを示す図である。なお、図5において、横軸にアクセル開度αを、縦軸に発電機モータ目標回転数NG* を、図6において、横軸に車速Vを、縦軸に駆動モータ目標トルクTM* を、図7において、横軸にエンジン回転数NEを、縦軸にスロットル開度θを採ってある。
【0022】
図3において、11はエンジン、16は発電機モータ、25は駆動モータ、41は駆動輪、43は蓄電手段としてのバッテリ、44は該バッテリ43のバッテリ残量SOCを検出する蓄電残量検出手段としてのバッテリ残量検出装置である。なお、前記蓄電手段として、バッテリ43に代えて、キャパシタ、フライホイール、蓄圧器等を使用することもできる。
【0023】
また、46は前記エンジン11の制御を行うエンジン制御装置、47は前記発電機モータ16の制御を行う発電機モータ制御装置、49は前記駆動モータ25の制御を行う駆動モータ制御装置、51はハイブリッド型車両の全体の制御を行うCPU、52はアクセル開度αを検出するアクセルセンサ、53は車速Vを検出する車速検出手段としての車速センサ53である。前記エンジン制御装置46、発電機モータ制御装置47及び駆動モータ制御装置49によって駆動装置制御手段102(図1)が構成され、該駆動装置制御手段100及びCPU51によって制御手段100が構成される。
【0024】
なお、出力軸12(図2)と対向させて、エンジン回転数NEを検出する図示されないエンジン回転数センサが配設される。また、発電機モータ16には、発電機モータ回転数NGを検出する図示されない発電機モータ回転数センサが、駆動モータ25には、駆動モータ回転数NMを検出する図示されない駆動モータ回転数センサが配設される。そして、前記発電機モータ制御装置47は、発電機モータ回転数センサによって検出された発電機モータ回転数NGに基づいて発電機モータトルクTGを算出し、前記駆動モータ制御装置49は、駆動モータ回転数センサによって検出された駆動モータ回転数NMに基づいて駆動モータトルクTMを算出する。
【0025】
前記構成のハイブリッド型車両において、前記CPU51は、アクセルセンサ52によって検出されたアクセル開度α、車速センサ53によって検出された車速V、及び前記バッテリ残量検出装置44によって検出されたバッテリ残量SOCを読み込み、前記エンジン制御装置46、発電機モータ制御装置47及び駆動モータ制御装置49の制御を行う。
【0026】
すなわち、CPU51は、エンジン制御装置46に、エンジン11を駆動したり、停止させたりするためのオン・オフ信号を送る。また、CPU51は、前記アクセル開度α及び車速Vを発電機モータ制御装置47に送るとともに、図示されないメモリに格納された図5に示される発電機モータ目標回転数マップを参照し、前記アクセル開度α及びバッテリ残量SOCに対応する発電機モータ目標回転数NG* を算出し、該発電機モータ目標回転数NG* を発電機モータ制御装置47に送る。
【0027】
また、前記CPU51の目標値算出手段101(図1)は、前記アクセル開度α及び車速Vを駆動モータ制御装置49に送るとともに、前記メモリに格納された図6に示される駆動モータ目標トルクマップを参照し、前記アクセル開度α及び車速Vに対応する駆動モータトルクTMの目標値、すなわち、駆動モータ目標トルクTM* を算出するとともに、図示されないエンジン目標トルクマップを参照し、エンジントルクTEの目標値、すなわち、エンジン目標トルクTE* を算出する。
【0028】
そして、エンジン11及び発電機モータ16のいずれも駆動されていない場合、前記CPU51は前記駆動モータ目標トルクTM* を駆動モータ制御装置49に送る。
一方、エンジン11及び発電機モータ16のうちの少なくとも一方が駆動されている場合、エンジントルクTE及び発電機モータトルクTGのうちの少なくとも一方がリングギヤトルクTRとしてリングギヤRから出力される。したがって、前記リングギヤトルクTRが駆動輪41に伝達されると、走行フィーリングが低下してしまう。そこで、リングギヤトルクTRの分だけ駆動モータトルクTMを補正するようにしている。
【0029】
ところで、エンジントルクTEを求めるのは困難であるのに対して、発電機モータトルクTGは、発電機モータ回転数NGに基づいて算出することができるので、求めるのが容易である。そこで、CPU51は、前記発電機モータ制御装置47から送られた発電機モータトルクTG、及びサンギヤSの歯数に対する出力ギヤ27の歯数の比、すなわち、発電機モータ16と駆動モータ25との間のギヤ比γ1に基づいて、駆動モータトルクTMの補正量δTMを算出し、該補正量δTMを前記駆動モータ目標トルクTM* と共に駆動モータ制御装置49に送る。
【0030】
この場合、前記補正量δTMは次のように算出される。
すなわち、発電機モータ16のイナーシャをInGとし、発電機モータ16の角加速度(回転変化率)をαGとしたとき、サンギヤSに加わるサンギヤトルクTSは、
TS=TG+InG・αG
になる。なお、前記角加速度αGは極めて小さいので、
TS=TG
と近似することができる。そして、前記プラネタリギヤユニット13におけるリングギヤRの歯数がサンギヤSの歯数の2倍であるとすると、リングギヤトルクTRはサンギヤトルクTSの2倍になる。
【0031】
また、カウンタギヤ比、すなわち、カウンタドリブンギヤ32の歯数に対する出力ギヤ27の歯数の比をiとすると、補正量δTMは、
δTM=2・TS・i
=2・TG・i
になる。なお、前記ギヤ比γ1は、
γ1=2・i
であるので、補正量δTMは、
δTM=γ1・TG
になる。
【0032】
次に、前記駆動モータ制御装置49の図示されない駆動モータトルク算出手段は、駆動モータトルク算出処理を行い、検出された駆動モータ回転数NMに基づいて駆動モータトルクTMを算出する。
そして、前記エンジン制御装置46の図示されないスロットル開度算出手段は、スロットル開度算出処理を行い、前記メモリに格納された第1のスロットル開度マップを参照し、検出されたエンジン回転数NEに対応するスロットル開度θを算出する。
【0033】
続いて、駆動モータ制御装置49の図示されない駆動モータトルク補正手段は、駆動モータトルク補正処理を行い、CPU51から送られた前記駆動モータ目標トルクTM* 及び補正量δTMに基づいて、駆動モータ目標トルクTM* を次の式のように補正する。
RTM* =TM* −δTM
なお、RTM* は、駆動モータトルクTMの最終的な目標値としての、補正後の駆動モータ目標トルクである。
【0034】
ところで、前記ハイブリッド型車両において、エンジン11及び発電機モータ16の少なくとも一方を駆動し、駆動モータ25を所定の駆動モータトルクTM以下(0も含む。)で駆動してハイブリッド型車両を走行させる場合、前記駆動モータ25はエンジン11及び発電機モータ16の少なくとも一方の駆動に伴って引きずられて回転させられる。この場合、前記エンジン11は、駆動に伴って振動しながら回転するので、振動を吸収するための図示されないフライホイール、ダンパ装置等が配設されていても、エンジン11と駆動輪41との間に形成された駆動系は微小に振動しながら回転することになる。
【0035】
ところが、前記駆動モータ25は、慣性モーメントが大きいので、滑らかに回転しようとする。
したがって、前記駆動系と駆動モータ25との間に、微小な振動に対応する分の回転数差が生じるので、出力ギヤ27とカウンタドリブンギヤ32との噛合部分に形成されたバックラッシによって、出力ギヤ27の歯面とカウンタドリブンギヤ32の歯面とが繰り返し接離したり、微動したりし、前記駆動装置に振動、騒音等が発生してしまう。なお、該振動、騒音等は、停車中においてエンジン11をアイドリングする際にも発生する。
【0036】
そこで、駆動モータ制御装置49は、補正後の駆動モータ目標トルクRTM* の絶対値が設定値β(例えば、10〔Nm〕)より大きいかどうかを判断する。そして、絶対値が設定値βより大きい場合は、出力ギヤ27及びカウンタドリブンギヤ32の一方が他方を十分なトルクで付勢することになるので、前記出力ギヤ27とカウンタドリブンギヤ32との噛合部分において出力ギヤ27の歯面とカウンタドリブンギヤ32の歯面とが繰り返し接離したり、微動したりすることがなくなる。したがって、補正後の駆動モータ目標トルクRTM* を駆動モータトルク指令値として出力しても、前記駆動装置に振動、騒音等が発生するのを防止することができる。
【0037】
これに対して、前記絶対値が設定値β以下である場合、前記補正後の駆動モータ目標トルクRTM* を駆動モータトルク指令値として出力すると、出力ギヤ27及びカウンタドリブンギヤ32の一方が他方を十分なトルクで付勢することができなくなり、前記出力ギヤ27とカウンタドリブンギヤ32との噛合部分において出力ギヤ27の歯面とカウンタドリブンギヤ32の歯面とが繰り返し接離したり、微動したりしてしまう。
【0038】
そこで、駆動モータ制御装置49の図示されない第1の指令値算出手段は、前記補正後の駆動モータ目標トルクRTM* より大きい指令値としての駆動モータトルク指令値を算出して出力する。本実施の形態において、該駆動モータトルク指令値は、所定の正の値、例えば、前記設定値βと等しい値ρにされる。なお、前記駆動モータトルク指令値を設定値βと異なる値にしたり、負の値にしたりすることもできる。
【0039】
そして、駆動モータ制御装置49の図示されないエンジントルク補正手段は、駆動モータトルク指令値が値ρにされることによって、駆動輪41に伝達される駆動トルクが変化してしまうことがないように、エンジン目標トルクTE* を次の式のように補正する。
RTE* =TE* −δTE
なお、RTE* は補正後のエンジン目標トルク、δTEはエンジン目標トルクTE* の補正量である。
【0040】
また、出力ギヤ27の歯数に対するピニオンPの歯数の比、すなわち、駆動モータ25とエンジン11との間のギヤ比をγ2とし、値ρと補正後の駆動モータ目標トルクRTM* との差をΔTM* とすると、前記補正量δTEは、
δTE=ΔTM* ・γ2
となる。
【0041】
そして、エンジン制御装置46の図示されない第2の指令値算出手段は、補正後のエンジン目標トルクRTE* をエンジントルク指令値として出力する。
このように、駆動モータトルク指令値が大きくされる分だけ、エンジントルクTEが補正されるので、走行フィーリングが低下するのを防止することができる。
【0042】
続いて、前記駆動モータ制御装置49の図示されない駆動モータ制御手段は、算出された駆動モータトルクTMと出力された駆動モータトルク指令値との偏差ΔTMを算出して、該偏差ΔTMが0になるように、駆動モータ25に供給される電流をフィードバック制御する。
また、前記発電機モータ制御装置47の図示されない発電機モータ制御手段は、検出された発電機モータ回転数NGと前記CPU51から送られた発電機モータ目標回転数NG* との偏差ΔNGを算出して、該偏差ΔNGが0になるように、発電機モータ16に供給される電流をフィードバック制御する。
【0043】
そして、前記エンジン制御装置46の図示されないエンジン制御手段は、前記メモリに格納された図示されない第2のスロットル開度マップを参照し、出力されたエンジントルク指令値に対応するスロットル開度θを算出し、該スロットル開度θでエンジン11を駆動する。
なお、本実施の形態においては、図7の第1のスロットル開度マップに示されるように、スロットル開度θは、エンジン11を効率よく駆動するために高く設定される。したがって、出力ギヤ27及びカウンタドリブンギヤ32の一方が他方を十分なトルクで付勢することができるように、駆動モータトルクTMを高くし、エンジントルクTEを低くするのが好ましい。そこで、前記値ρを正の値にしている。
【0044】
このように、補正後の駆動モータ目標トルクRTM* より大きい駆動モータトルク指令値を出力することによって、出力ギヤ27及びカウンタドリブンギヤ32の一方が他方を十分なトルクで付勢することができるようになるので、前記出力ギヤ27とカウンタドリブンギヤ32との噛合部分において出力ギヤ27の歯面とカウンタドリブンギヤ32の歯面とが繰り返し接離したり、微動したりすることがなくなる。したがって、前記駆動装置に振動、騒音等が発生するのを防止することができる。
【0045】
また、フライホイールを大型化したり、ダンパ装置を高性能化したりして、駆動系の慣性モーメントを大きくする必要がないので、駆動装置の寸法及び重量を小さくすることができるだけでなくコストを低くすることができる。
なお、エンジン11が低回転域で駆動されているときに大きな振動、騒音等が発生するので、例えば、エンジン回転数NEが1500〔rpm〕以下になったときに、補正後の駆動モータ目標トルクRTM* より大きい駆動モータトルク指令値を出力することもできる。
【0046】
本実施の形態においては、第1の連結要素として出力ギヤ27が、第2の連結要素としてカウンタドリブンギヤ32が使用されるが、出力ギヤ27及びカウンタドリブンギヤ32に代えて、チェーン、スプライン等を使用することもできる。
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 アクセル開度α、車速V及びバッテリ残量SOCを読み込む。
ステップS2 駆動モータトルク算出処理を行う。
ステップS3 スロットル開度算出処理を行う。
ステップS4 駆動モータトルク補正処理を行う。
ステップS5 補正後の駆動モータ目標トルクRTM* の絶対値が設定値βより大きいかどうかを判断する。補正後の駆動モータ目標トルクRTM* の絶対値が設定値βより大きい場合はリターンし、補正後の駆動モータ目標トルクRTM* の絶対値が設定値β以下である場合はステップS6に進む。
ステップS6 駆動モータ目標トルクTM* に設定値βをセットするとともに、エンジン目標トルクTE* を補正量δTEだけ減算する。
【0047】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図8は本発明の第2の実施の形態におけるハイブリッド型車両の動作を示すフローチャートである。
この場合、駆動モータ制御装置49(図3)の図示されない駆動モータトルク補正手段は、駆動モータトルク補正処理を行い、CPU51から送られた駆動モータ目標トルクTM* 及び補正量δTMに基づいて、駆動モータ目標トルクTM* を次の式のように補正する。
【0048】
RTM* =TM* −δTM
なお、RTM* は補正後の駆動モータ目標トルクである。
続いて、エンジン制御装置46は、出力ギヤ27(図2)及びカウンタドリブンギヤ32の一方が他方を十分なトルクで付勢することができるように、エンジン目標トルクTE* の禁止領域を設定する。
【0049】
本実施の形態において、電機装置としての駆動モータ25とエンジン11との間のギヤ比をγ2としたとき、エンジン目標トルクTE* の禁止領域は、
(RTM* −η)・γ2<TE* <(RTM* +η)・γ2
になる。なお、ηはあらかじめ設定された正の値であり、本実施の形態においては、10〔Nm〕とする。
【0050】
そして、前記エンジン制御装置46の図示されないエンジントルク算出手段は、発電機モータ制御装置47によって算出された発電機モータトルクTGに基づいてエンジントルクTEを算出する。この場合、エンジントルクTEは、サンギヤSの歯数に対するリングギヤRの歯数の比、すなわち、発電機モータ16とエンジン11との間のギヤ比をγ3としたとき、
TE=TG・γ3
で表すことができる。そして、前記エンジン制御装置46の図示されないエンジン制御手段は、図示されないメモリに格納された第2のスロットル開度マップを参照し、エンジン目標トルクTE* が禁止領域に入らないように、スロットル開度θを選択し、出力する。
【0051】
なお、第2のスロットル開度マップにおいては、エンジン目標トルクTE* が禁止領域に入らないようにスロットル開度が選択されると、駆動モータトルクTMが設定値より大きくなるように設定されている。
したがって、出力ギヤ27及びカウンタドリブンギヤ32の一方が他方を十分なトルクで付勢することができるようになるので、前記出力ギヤ27とカウンタドリブンギヤ32との噛合部分において出力ギヤ27の歯面とカウンタドリブンギヤ32の歯面とが繰り返し接離したり、微動したりすることがなくなる。その結果、前記駆動装置に振動、騒音等が発生するのを防止することができる。
【0052】
なお、本実施の形態は、停車中にエンジン11を駆動して発電機モータ16によって発電を行う場合にも適用することができる。
この場合、駆動モータ目標トルクTM* が0にされると、エンジン目標トルクTE* の禁止領域は、
−η・γ2<TE* <η・γ2
になる。そして、実際の駆動モータ25によって発生させられる電機装置トルクとしての駆動モータトルクTMは所定値以上に維持され、エンジン11によって発生させられるエンジントルクTEと前記駆動モータトルクTMとの和は0になる。したがって、停車中に発電を行うことができる。
【0053】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS11 アクセル開度α、車速V及びバッテリ残量SOCを読み込む。ステップS12 駆動モータトルク算出処理を行う。
ステップS13 スロットル開度算出処理を行う。
ステップS14 駆動モータトルク補正処理を行う。
ステップS15 エンジントルク算出処理を行う。
【0054】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図9は本発明の第3の実施の形態におけるハイブリッド型車両の概念図である。
図において、11はエンジン、62はマニュアル式の変速装置であり、該変速装置62は、図示されない変速段選択装置、例えば、シフトレバーによって選択された変速段を達成する。また、63は前記変速装置62にエンジントルクTEを選択的に伝達するためのクラッチ装置である。
【0055】
該クラッチ装置63は前記エンジン11の出力軸(クランクシャフト)64と前記変速装置62の第1軸65の入力軸部との間に配設される。前記エンジン11の回転はクラッチ装置63を介して変速装置62に伝達され、該変速装置62において変速させられる。
また、該変速装置62は、互いに平行な第1軸65及び第2軸66上に配設された歯数比が異なる複数のギヤセットG1〜G4を有し、該ギヤセットG1〜G4のうちの一つを選択して噛合させることによって、特定のギヤ比を設定することができるようになっている。
【0056】
そして、前記第2軸66に出力ギヤ67が配設され、該出力ギヤ67から前記変速装置62において選択された変速段による回転が出力され、大リングギヤ69を介してディファレンシャル装置68に伝達される。
また、前記変速装置62の最も後方の端部には、3個のギヤ71〜73が配設され、該ギヤ71〜73を介して前記変速装置62と電機装置としての駆動モータ74とが連結される。そして、該駆動モータ74によって電機装置トルクとしての駆動モータトルクTMが発生させられ、該駆動モータトルクTMを、前記ギヤ71、72を介して前記第1軸65に伝達し、エンジン11を始動させたり、駆動モータトルクTMだけでハイブリッド型車両を走行させたり、駆動モータトルクTM及びエンジントルクTEによってハイブリッド型車両を走行させたりすることができる。なお、前記ギヤ71によって第1の連結要素が、ギヤ72によって第2の連結要素が構成される。
【0057】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、ハイブリッド型車両の駆動装置においては、電機装置と、駆動輪と、前記電機装置によって発生させられた電機装置トルクを前記駆動輪に伝達するために配設され、第1の連結部材を備えた電機装置トルク伝達系と、エンジンによって発生させられたエンジントルクを前記駆動輪に伝達するために配設され、前記第1の連結部材と連結される第2の連結部材を備えたエンジントルク伝達系と、制御手段とを有する。
【0058】
そして、該制御手段は、前記第1、第2の連結部材間において歯面の接離及び微動が常時なくなるように設定された設定値より大きいトルクが付勢されるように、前記電機装置トルクの目標値及びエンジントルクの目標値のうちの少なくとも一方を算出する目標値算出手段、並びに該目標値算出手段によって算出された目標値を達成することができるように前記エンジン及び電機装置のうちの少なくとも一方の制御を行う駆動装置制御手段を備える。
【0059】
この場合、前記第1、第2の連結部材間において歯面の接離及び微動が常時なくなるように設定された設定値より大きいトルクが付勢されるので、駆動装置に振動、騒音等が発生するのを防止することができる。
また、フライホイールを大型化したり、ダンパ装置を高性能化したりして、駆動系の慣性モーメントを大きくする必要がないので、駆動装置の寸法及び重量を小さくすることができるだけでなくコストを低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるハイブリッド型車両の機能ブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるハイブリッド型車両の概念図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるハイブリッド型車両の制御回路のブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるハイブリッド型車両の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態における発電機モータ目標回転数マップを示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における駆動モータ目標トルクマップを示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態におけるスロットル開度マップを示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態におけるハイブリッド型車両の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第3の実施の形態におけるハイブリッド型車両の概念図である。
【符号の説明】
11 エンジン
25、74 駆動モータ
27 出力ギヤ
32 カウンタドリブンギヤ
41 駆動輪
49 駆動モータ制御装置
71、72 ギヤ
101 目標値算出手段
102 駆動装置制御手段
H1 電機装置トルク伝達系
H2 エンジントルク伝達系
Claims (3)
- 電機装置と、駆動輪と、前記電機装置によって発生させられた電機装置トルクを前記駆動輪に伝達するために配設され、第1の連結部材を備えた電機装置トルク伝達系と、エンジンによって発生させられたエンジントルクを前記駆動輪に伝達するために配設され、前記第1の連結部材と連結される第2の連結部材を備えたエンジントルク伝達系と、制御手段とを有するとともに、該制御手段は、前記第1、第2の連結部材間において歯面の接離及び微動が常時なくなるように設定された設定値より大きいトルクが付勢されるように、前記電機装置トルクの目標値及びエンジントルクの目標値のうちの少なくとも一方を算出する目標値算出手段、並びに該目標値算出手段によって算出された目標値を達成することができるように前記エンジン及び電機装置のうちの少なくとも一方の制御を行う駆動装置制御手段を備えることを特徴とするハイブリッド型車両の駆動装置。
- 電機装置と、駆動輪と、前記電機装置によって発生させられた電機装置トルクを前記駆動輪に伝達するために配設され、第1の連結部材を備えた電機装置トルク伝達系と、エンジンによって発生させられたエンジントルクを前記駆動輪に伝達するために配設され、前記第1の連結部材と連結される第2の連結部材を備えたエンジントルク伝達系と、前記電機装置トルクの目標値を算出する目標値算出手段と、該目標値算出手段によって算出された電機装置トルクの目標値の絶対値が設定値以下である場合に、前記第1、第2の連結部材間において歯面の接離及び微動が常時なくなるように前記電機装置トルクの目標値を前記設定値より大きい値に変更し、変更された目標値を達成することができるように電機装置の制御を行う駆動装置制御手段とを有することを特徴とするハイブリッド型車両の駆動装置。
- 前記目標値算出手段は、電機装置トルクの目標値を算出するほかに、エンジントルクの目標値を算出するとともに、前記駆動装置制御手段は、変更された電機装置トルクの指令値に対応させて、エンジントルクの目標値を変更し、変更された目標値を達成することができるようにエンジンの制御を行う請求項2に記載のハイブリッド型車両の駆動装置。
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