JP2005127411A - ハイブリッド変速機のモード切り替え制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】最大駆動力発生状態での固定変速比モードから無段変速比モードへの切り替え時は、モード切り替え開始車速VSPcを走行抵抗トルクTRが大きいほど高くなるよう、また、車重が重い(車体慣性モーメントIVが大きい)ほど高くなるよう補正し、登坂路で走行抵抗が大きくなったり、車重が増大した場合のように走行負荷が増大して車両加速度が緩やかになっても、エンジンまたはモータ/ジェネレータの回転速度が許容上限に到達するのに調時してモード切り替えを終了させるようになす。これにより、エンジンまたはモータ/ジェネレータの過回転を起こすことなく、ぎりぎりまで固定変速比モードを用いて大きな駆動力を出力可能にする。
【選択図】図8
Description
エンジンの過回転はその耐久性を劣化させるばかりでなく、エンジンの過回転防止装置によりフューエルカット(燃料噴射の停止)が行われて駆動力の急減により違和感を与えるという問題を生じ、モータの過回転はその耐久性を著しく低下させてしまうという問題を生ずる。
このモード切り替え技術は、エンジンおよびモータの回転速度が過回転状態になることのないところを狙って定めた規定回転速度にモータの回転速度が達した時に固定変速比モードから無段変速比モードへのモード切り替えを行うというものである。
先ず、図11により車速VSPと、ハイブリッド変速機が出力する駆動力と、変速モードとの関係を説明する。
固定変速比モードでは変速のためのエネルギーが不要であるから、エンジンパワーとモータパワーのすべてを駆動力として出力できるから最大駆動力も図11に示すように大きい。
ここで、図11におけるEV走行での固定変速比モードは、エンジンを未だ始動させることができない低車速(VSP<VSPe)のため(VSPe未満の車速では、エンジンと変速機間のクラッチを締結しても車輪によるエンジンのクランキング回転数が始動可能な回転数にならない)、エンジンからの動力を用いずモータ/ジェネレータからの動力のみによる電力(EV)走行を行っている間の固定変速比モードを、また、HEV走行での固定変速比モードは、エンジンからの動力およびモータ/ジェネレータからの動力の双方を用いたハイブリッド(HEV)走行での固定変速比モードを意味する。
従って、エンジンやモータ/ジェネレータの回転速度が許容上限となる、例えば図11にVSPoで示すような或る車速以上では固定変速比モードを採用することができず、固定変速比モードは車速VSPo未満の領域でしか用い得ない。
よってハイブリッド変速機が出力する最大駆動力は図11に示すように、上記した或る車速VSPo未満の低車速領域では固定変速比モードの最大駆動力となり、車速がVSPo以上の高車速領域では無段変速比モードの最大駆動力となる。
このためには、エンジンを始動させ得ないVSPe未満の低車速ではモータ/ジェネレータのみを動力源とするEV固定変速比モードを用い、車速VSPがVSPe〜VSPo(モータ/ジェネレータまたはエンジンの回転速度が許容上限となる車速)である領域ではエンジンとモータ/ジェネレータを動力源とするHEV固定変速比モードを用い、VSPo以上の高車速領域では無段変速比モードを用いる必要がある。
そして、モータ/ジェネレータおよびエンジンの回転速度が過回転状態になることなく最大駆動力を発生させて要求通りの速やかな加速を達成する条件は、上記のモード切り替え(そのためのブレーキやクラッチの作動、非作動切り替え)を、車速VSPがVSPoになる(モータ/ジェネレータまたはエンジンの回転速度が許容上限となる)のに調時して行わせる(終了させる)ことである。
平坦路上で車両が、最大駆動力を得て車速を図11および図12のVSPoまで上昇される加速時について考える。
図12に実線で示す車速VSPの時系列変化を伴う加速の場合、モード切り替えが丁度VSP=VSPoの時に(エンジンまたはモータ/ジェネレータの回転速度が許容上限に達した時に)終了するようにするためには、モード切り替え(これを司るブレーキやクラッチ等のモード切り替え要素の動作)に要する時間をTとすると、車速VSPがVSPcになった時t3にモード切り替え(モード切り替え要素の動作)を開始させる必要がある。
従来のモード切り替え制御では、このような場合にも図12に示すように、車速VSPが固定のモード切り替え車速VSPcになった時刻t5にモード切り替え(モード切り替え要素の動作)を開始させるため、時刻t5からモード切り替え時間Tが経過した時刻t6にモード切り替えが終了する。
ところで時刻t6での車速VSPが未だVSPoよりも低いVSPmであり、エンジンまたはモータ/ジェネレータの回転速度が許容上限に達する(VSP=VSPoになる)前にモード切り替えが終了してしまうこととなる。
従来のモード切り替え制御では、このような場合にも図12に示すように、車速VSPが固定のモード切り替え車速VSPcになった時刻t1にモード切り替え(モード切り替え要素の動作)を開始させるため、時刻t1からモード切り替え時間Tが経過した時刻t2にモード切り替えが終了する。
この場合、エンジンまたはモータ/ジェネレータが過回転を強いられ、その耐久性を低下されるという問題を生ずる。
とりわけエンジンの過回転は、過回転防止装置によるフューエルカットが行われることから、急減速ショックを発生したり、その後のフューエルリカバーで急加速ショックを生じさせるという問題を伴う。
もって、アクセル全開加速時などのように要求動力が大きい状態で固定変速比モードから無段変速比モードへの切り替えを行う場合に、エンジンまたはモータ/ジェネレータの過回転を起こすことなく最も大きな駆動力を出力して要求通りの加速性能を発揮しながらのモード切り替えを実現し得るようになすことを目的とする。
先ず前提となるハイブリッド変速機は、エンジンと、出力軸と、2つのモータ/ジェネレータとの間を差動装置により相互に連結し、この差動装置を構成する回転要素のうち任意の回転要素を固定するよう作動するブレーキを具え、
該ブレーキの作動時は、エンジンと出力軸との間における回転速度比が固定された状態で、エンジン動力に少なくとも一方のモータ/ジェネレータの動力を加減して出力する固定変速比モードとなり、
前記ブレーキの非作動時は、エンジンと出力軸との間における回転速度比が自由に選択され得る状態で、エンジンと2つのモータ/ジェネレータとにより変速比および駆動力の双方を制御しながら出力を決定する無段変速比モードになるものとする。
モード切り替え車速設定手段は、前記固定変速比モードで、且つ、エンジン、バッテリ、モータ/ジェネレータの現状において実現可能な最大駆動力を出力している間、固定変速比モードから前記無段変速比モードへの切り替えに要する予定のモード切り替え所要時間を考慮して、固定変速比モードから無段変速比モードへの切り替えを開始すべき車速を設定する。
モード切り替え手段は、車速が、この手段により設定したモード切り替え車速に到達した時に固定変速比モードから無段変速比モードへの切り替えを開始させる。
走行条件推定手段は、車両の走行抵抗および車重を推定する。
モード切り替え車速補正手段は、当該走行条件推定手段により推定した走行抵抗および車重に応じ前記のモード切り替え車速を、走行抵抗が大きいほど高くなるよう、また、車重が重いほど高くなるよう補正する指令をモード切り替え車速設定手段に出力する。
逆に、降坂路により加速時の走行抵抗が小さくなったり、車重が低下した場合のように加速時の走行負荷が減少して車両加速度が図12の破線で例示するごとく急になることになっても、この場合はモード切り替え車速が逆に低くされることから、エンジンまたはモータ/ジェネレータの回転速度が許容上限に到達するのに調時して固定変速比モードから無段変速比モードへの切り替えを終了させることができる。
図1は、本発明の一実施例になるモード切り替え制御装置を具えたハイブリッド変速機1の制御システムを例示し、ハイブリッド変速機1を、本実施例においては後輪駆動車(FR車)用のトランスミッションとして用いるのに有用な、図2に示すごとき以下の構成となす。
ここで、フロント側遊星歯車組GF、中央の遊星歯車組GC、およびリヤ側遊星歯車組GRは、3自由度の差動装置3を構成するよう以下のごとくに相関させる。
そして、リングギヤRrおよびキャリアCcを相互に結合し、これらの結合体にエンジンクラッチCinを介して、エンジンENGの回転を入力される入力軸3(図3の共線図では入力Inとして示す)を結合し、出力軸4(図3の共線図では出力Outとして示す)にキャリアCrを結合する。
環状ステータ2sと外側ロータ2roとで外側のモータ/ジェネレータである第1のモータ/ジェネレータMG1を構成し、環状ステータ2sと内側ロータ2riとで内側のモータ/ジェネレータである第2のモータ/ジェネレータMG2を構成する。
ここでモータ/ジェネレータMG1,MG2はそれぞれ、複合電流をモータ側が負荷として供給される時は供給電流に応じた個々の方向と速度(停止を含む)の回転を出力するモータとして機能し、複合電流を発電機側が負荷として印加された時は外力による回転に応じた電力を発生する発電機として機能する。
キャリアCfおよびサンギヤSf間をハイクラッチChiにより結合可能とし、このキャリアCfをローブレーキBLOにより固定可能とし、リングギヤRfをサンギヤSrに結合する。
また、差動装置3の回転自由度は前記した通り3であるが、詳しくは後述するごとくローブレーキBLO、ハイクラッチChi、ロー&ハイブレーキBLHのうち必ず1つ以上を作動して締結させるため、差動装置3の回転自由度は2以下である。
従って差動装置3は、これを成す回転要素のうちのいずれか2つの回転速度が決まれば、全ての回転要素の回転速度が決まる。
そして、出力軸5を図1に示すように、ディファレンシャルギヤ装置6を介して左右後輪7L,7Rに駆動結合する。
21は、エンジンENGおよびハイブリッド変速機1(モータ/ジェネレータMG1,MG2や、エンジンクラッチCin、ローブレーキBLO、ハイクラッチChi、ロー&ハイブレーキBLH)の統合制御を司るハイブリッドコントローラである。
このハイブリッドコントローラ21はエンジンENGの目標エンジントルクTe*に関する指令をエンジンコントローラ22に供給し、エンジンコントローラ22はエンジンENGを当該指令値Te*が達成されるよう運転させる。
更にハイブリッドコントローラ21は、ハイブリッド変速機1内におけるエンジンクラッチCin、ローブレーキBLO、ハイクラッチChi、ロー&ハイブレーキBLHを締結、開放制御するための油圧指令を油圧制御装置26に供給し、油圧制御装置26はこれら油圧指令に応じた油圧を対応するエンジンクラッチCin、ローブレーキBLO、ハイクラッチChi、ロー&ハイブレーキBLHに供給してこれらを締結、開放制御する。
アクセルペダル踏み込み量(アクセル開度)APOを検出するアクセル開度センサ27からの信号と、
車速VSP(出力Outの回転数ωoに比例)を検出する車速センサ28からの信号と、
リングギヤRr(キャリアCc)への入力回転ωinを検出する入力回転センサ29からの信号とを入力する。
中間の遊星歯車組GCにおける回転速度順が中間のキャリアCcと、リヤ側遊星歯車組GRにおける回転速度順が第1位のリングギヤRrとを相互に結合し、リヤ側遊星歯車組GRにおける回転速度順が第3位のサンギヤSrと中間の遊星歯車組GCにおける回転速度順が第3位のサンギヤScとにそれぞれ、フロント側遊星歯車組GFにおけるリングギヤRfおよびサンギヤSfを結合する。
中間の遊星歯車組GCのリングギヤRcにモータ/ジェネレータMG1を結合し、中間の遊星歯車組GCのキャリアCcおよびリヤ側遊星歯車組GRにおけるリングギヤRrの結合体にエンジンENGからの入力Inを結合し、リヤ側遊星歯車組GRのキャリアCrに出力軸5(車輪駆動系への出力Out)を結合し、中間の遊星歯車組GCにおけるサンギヤSc(フロント側遊星歯車組GFのサンギヤSf)にモータ/ジェネレータMG2を結合する。
更に、中間の遊星歯車組GCにおけるリングギヤRcをロー&ハイブレーキBLHにより固定可能となす。
この場合、図3における遊星歯車組GRに係わるレバー(同符号GRで示す)が遊星歯車組GCに係わるレバー(同符号GCで示す)上に乗り、遊星歯車組GC,GRにより構成されるギヤ列が4要素2自由度の一直線状の共線図で表されることとなり、回転要素の回転速度順にモータ/ジェネレータMG1、エンジンENGからの入力In、車輪駆動系への出力Out、モータ/ジェネレータMG2の配列となる。
従って、キャリアCrに結合させた出力Outが図3から明かなように前記したHi-iVTモードの時よりも低くなり、このため当該変速モード(Low-iVTモード)は、サンギヤScとサンギヤSfの回転数が0となる変速比よりも、後進変速比を含めたロー側変速比の領域で使用する。
ここで入力Inの回転ωinを一定とすると、モータ/ジェネレータMG2によりサンギヤScの正回転を高くしてリングギヤRfの逆回転を上昇させることで、このリングギヤRfに結合されたサンギヤSrの逆回転が上昇して出力Outの回転ωoが低下し、変速比をロー側へ移行させることができ、さらにはロー側無限大(停車)の変速比から後進変速比へと移行させることができる。
かようにHi-iVTモードでロー&ハイモードブレーキBLHを締結させた変速モード(Hiモード)は上記の通り、入力回転ωinと出力回転ωoとの間における回転速度比が固定された状態で、エンジン動力に第2モータ/ジェネレータMG2の動力を加減して出力することができ、この変速モード(Hiモード)は固定変速比モードである。
なおこの場合、第2モータ/ジェネレータMG2をジェネレータとして作用させれば、エンジン出力をその分だけ低下させた出力による走行も可能である。
かようにLow-iVTモードでロー&ハイモードブレーキBLHを締結させた変速モード(Lowモード)は上記の通り、入力回転ωinと出力回転ωoとの間における回転速度比が固定された状態で、エンジン動力に第2モータ/ジェネレータMG2の動力を加減して出力することができ、この変速モード(Lowモード)も固定変速比モードである。
図3の共線図上において、レバーGRがレバーGCに重なって4要素2自由度の一直線状の共線図になると共に、サンギヤSr,Scが回転数の位置に固定される。
従って、変速比をハイモードとローモードとの間の中間的な2nd変速比に固定することができ、この固定した2nd変速比でエンジンENGの出力および/または第1モータ/ジェネレータMG1の出力による中速走行が可能である。
かようにローブレーキBLOおよびハイクラッチChiを共に締結作動させた変速モード(2ndモード)は上記の通り、入力回転ωinと出力回転ωoとの間における回転速度比が固定された状態で、エンジン動力に第1モータ/ジェネレータMG1の動力を加減して出力することができ、この変速モード(2ndモード)も固定変速比モードである。
なお図4において、○印は締結を示し、×印は解放を示す。
図5においても、○印は締結を示し、×印は解放を示す。
但し、図5におけるEV走行時の変速モードには、対応する変速モード名の冒頭に(EV-)を付して示した。
遊星歯車組GF,GC,GRで構成される差動装置3の回転自由度は前記した通り3であるが、無段変速比モード(Low-iVTとHi-iVT、およびEV-Low-iVTとEV-Hi-iVT)では図4および図5のごとくローブレーキBLOまたはハイクラッチChiを締結させるため、差動装置3の回転自由度は2となり、
固定変速比モード(LowとHiと2nd、およびEV-LowとEV-HiとEV-2nd)では図4および図5のごとくローブレーキBLOまたはハイクラッチChiと、ロー&ハイブレーキBLHとを締結させるため、差動装置3の回転自由度は1となる。
図6は、図11につき前述したように車両の走行開始からアクセル全開加速を行う場合の変速モードの遷移状態を示す。
発進時はS1において、先ずエンジンクラッチCinを解放した状態でEV走行を行わせるが、発進用の大トルクが必要であるから、固定変速比モード(EV-Lowモード)での発進となる。
そして車速VSPが、詳しくは後述するモード切り替え車速VSPc(図12に示すと同趣旨のものであるが、固定値ではなくて可変値)になったら、S3で、ロー&ハイブレーキBLHを解放して無段変速比モード(Low-iVTモード)に移行する。
かかるS2からS3への移行は、固定変速比モード(Lowモード)から無段変速比モード(Low-iVTモード)への切り替えを意味し、この処理が、本発明におけるモード切り替え手段に相当する。
エンジンENGまたはモータ/ジェネレータMG1,MG2の回転速度が許容上限に到達する前に上記のモード切り替えが終了するようなモード切り替え開始車速VSPcである場合、駆動力の大きな固定変速比モードを十分に使い切れていないため予定通りの速やかな加速を得られないし、
逆にエンジンENGまたはモータ/ジェネレータMG1,MG2の回転速度が許容上限に到達した後に上記のモード切り替えが終了するようなモード切り替え開始車速VSPcであると、エンジンENGまたはモータ/ジェネレータMG1,MG2の回転速度が許容上限を越えてこれらの耐久性を阻害することも前述した通りである。
走行条件が変化しても確実に、エンジンENGまたはモータ/ジェネレータMG1,MG2の回転速度が許容上限に到達するのに調時して上記のモード切り替えが終了するようモード切り替え開始車速VSPcを補正する処理(この処理が、本発明におけるモード切り替え車速補正手段に相当する)に際して用いる車重および走行抵抗の推定処理(この処理が、本発明における走行条件推定手段に相当する)を説明する。
Lowモードでの運動方程式は、以下の式(4)から式(6)により表される。
但し、
im1 :第1モータ/ジェネレータMG1の回転速度ω1とタイヤ回転速度ωoとの間の
変速比
im2 :第2モータ/ジェネレータMG2の回転速度ω2とタイヤ回転速度ωoとの間の
変速比
ie :エンジン回転速度ωinとタイヤ回転速度ωoとの間の変速比
Im1 :第1モータ/ジェネレータMG1の慣性モーメント
Im2 :第2モータ/ジェネレータMG2の慣性モーメント
Ie :エンジンの慣性モーメント
Iv :車体慣性のタイヤ慣性モーメント換算値とタイヤ慣性モーメントとの和
TR :走行抵抗トルク
ここで空気抵抗トルクTaは次式に示すように、車速VSPの2乗に比例して大きくなる。
但しkaは、CD値と車両前方投影面積Aと空気密度ρとで決まる定数である。
またTgは次式に示すように、斜面の水平面に対する角度θに応じて変化する。
ここでMは車重、gは重力加速度である。
先ず式(1)は、次式のように書き直される。
式(7)において走行抵抗トルクTRを一定値cTRとすると、次式が得られる。
この式(11)を用いて、少なくとも2つの異なる時刻におけるdωo/dtとToEVとから,IEVとcTRは演算される。
式(12)を変形した次式を用いて、IEVとcTRは演算される。
式(2)において、im1,im2,Im1,Im2は精度良く設計で得られるため、式(2)を用い、式(13)を解いて得られたIEVから、Ivは演算される。
またIvは、車重Mによる慣性モーメントなので、一旦発進すると停止するまで変化する可能性は少ない。
そこで、一旦Ivを推定した後は、EV-Lowモードでは式(1)を、また、Lowモードでは式(4)を直接用いるか、外乱オブザーバを用いるかして、dωo/dtとToEVもしくはToHEVとからTRのみを推定すればよい。
上述したように、Ivが車両発進後に変わる可能性は少ない。一方TRは、式(7),(8),(9)に示すように、車速と斜面の角度に応じて変化する。
従って、できるだけ車速によるTRの変化の小さい低車速で、且つ、斜面の角度が変化する可能性の少ない短時間のデータを用いてTRを推定したほうがよい。
上述したように,IvとTRの推定はEV-Lowモードで行うので、車速の低いところで推定できる。
式(1)と式(7)から次式が得られる。
式(8)と式(14)から次式が得られる。
式(15)で走行抵抗トルクTR’を一定値cTR’とすると、次式が得られる。
例えば、異なる時刻毎のXを行方向に並べた行列Xmと、異なる時刻毎のY’を行方向に並べた行ベクトルYm’との関係は次式で得られる.
式(17)を変形した次式を用いて、IEVとcTR’は演算される。
前記したモード切り替えを司るロー&ハイブレーキBLHの特性からモード切り替えに要する時間をTとすると、モード切り替えの間の車速変化量dVSPと、Tと、dωo/dtとの関係は次式で表される。
ここでkは、タイヤ半径で決まる定数である。モード切り替えの間はdωo/dtを一定値Δωoとすると、式(11)から次式が得られる.
従って、エンジンまたはモータジェネレータの許容上限回転速度に相当する車速VSPo(図12参照)よりdVSPだけ低い車速をVSPcとすれば、モード切り替え終了とほぼ同時に車速がVSPoに達する。
しかし、前記した通り、また、式(4),(5)に示すように、TRが大きいほど、またIvが大きいほど、同じ駆動力ToHEVに対する車両加速度dωo/dtは小さくなる。
そこで図8に示すように、TRが大きいほど、また、Ivが大きいほど、VSPcを高くする。
モード切り替え中にTRが小さくなると、dωo/dtはモード切り替え開始時の値Δωo0より大きくなる。
モード切り替え開始車速VSPcはΔωo0を考慮して設定したので、dωo/dtがモード切り替え開始時の値Δωo0より大きくなると、エンジンまたはモータジェネレータの回転速度が過回転状態になる可能性がある。
よって、モード切り替え中はdωo/dtがモード切り替え開始時の値Δωo0より大きくならないようにする。
ここでeTRは、走行抵抗トルクの推定値であり、例えば、式(1)を直接用いて、エンジントルクTeと、第1モータ/ジェネレータMG1のトルクTm1と、第2モータ/ジェネレータMG2のトルクTm2の実績値と、dωo/dtから推定される。
式(21)を用いると、eTRがモード切り替え開始時のeTRより大きいときに、To *はモード切り替え開始時より大きくなるが、モータジェネレータとエンジントルクは既に最大トルクを出力しているので、これ以上トルクを大きくすることができない。
よって、結果的にdωo/dtがモード切り替え開始時の値Δωo0より小さくなってしまう。
このときのモード切り替えが早く終わる時間は、本発明を用いないときよりも少なく、モード切り替え中にTRが変化する可能性も少ないので、本発明を用いない場合よりも車両加速度の低下や車両加減速ショックを抑えられる。
また、式(21)を用いてeTRの減少にあわせTo *は小さくなるので、dωo/dtがモード切り替え開始時の値Δωo0より大きくなることはない。
登坂路傾斜により加速時の走行抵抗が大きくなったり、車重が増大した場合のように加速時の走行負荷が増大して車両加速度が緩やかになることになっても、エンジンまたはモータ/ジェネレータの回転速度が許容上限に到達するのに調時して固定変速比モードから無段変速比モードへの切り替えを終了させることができ、
逆に、降坂路により加速時の走行抵抗が小さくなったり、車重が低下した場合のように加速時の走行負荷が減少して車両加速度が急になることになっても、エンジンまたはモータ/ジェネレータの回転速度が許容上限に到達するのに調時して固定変速比モードから無段変速比モードへの切り替えを終了させることができる。
(1)エンジントルクに比べて検出精度の良いモータジェネレータトルクを用いて車重と走行抵抗の推定を行うため推定精度が高くなる。
(2)走行抵抗には空気抵抗が含まれるので、車速が高いところでは走行抵抗の変化が大きい。
しかし本実施例では、アクセル全開でモータのみにより走行する時に車重と走行抵抗を同時に推定することから、車速が低く走行抵抗の変化が少ない時に当該推定を行うこととなり、これらの推定に際し走行抵抗を一定値と仮定でき、走行抵抗の変化が大きい走行状態で当該推定を行う場合のように推定精度が悪化するのを回避することができる。
(3)かように車重と走行抵抗を同時に精度良く推定できる状況は限られる。
しかし一旦走行を開始すると、途中で車重が急に大きく変わる可能性は少ない、そこで車重推定後は、この車重推定値を用いて走行抵抗のみを推定することから、計算負荷を低減できると共に、常時に精度の良い走行抵抗の推定が可能である。
走行抵抗推定値を一定値に近づけることができて推定精度が向上する。
モード切り替え中に段差を超えたり路面状況が変わったりして、タイヤ回転加速度がモード切り替え開始時に比べ上昇しても、エンジンやモータジェネレータの回転加速度の上昇により、モード切り替えに要する時間、およびモード切り替え開始時における車両加速度を考慮して設定したモード切り替え開始車速と、エンジンまたはモータ/ジェネレータの許容上限回転速度に相当する車速との関係が合わなくなって、モード切り替えが終了する前にエンジンまたはモータ/ジェネレータが過回転するのを防止することができる。
エンジンと、出力軸と、2つのモータ/ジェネレータとの間を差動装置により相互に連結し、
この差動装置を構成する回転要素のうち任意の回転要素を固定するよう作動するブレーキを具え、
該ブレーキの作動時は、エンジンと出力軸との間における回転速度比が固定された状態で、エンジン動力に少なくとも一方のモータ/ジェネレータの動力を加減して出力する固定変速比モードとなり、前記ブレーキの非作動時は、エンジンと出力軸との間における回転速度比が自由に選択され得る状態で、エンジンと2つのモータ/ジェネレータとにより変速比および駆動力の双方を制御しながら出力を決定する無段変速比モードとなるハイブリッド変速機であれば、任意の型式のハイブリッド変速機に本発明によるモード切り替え制御装置は用いることができる。
図9のハイブリッド変速機1は、前輪駆動車(FF車)用のトランスアクスルとして用いるのに有用な以下の構成とする。
なお図9において、図2におけると同様の部分には同一符号を付して示した。
このハイブリッド変速機1は、左側からエンジンENG、本発明における差動装置を構成するラビニョオ型プラネタリギヤセット31、および複合電流2層モータ2を同軸に配置する。
そして、ピニオンP1,P2を全て共通なキャリアCにより回転自在に支持し、ピニオンP2をロングピニオンとしてピニオンP1に噛合させて、2つのシングルピニオン遊星歯車組32,33を相関させることによりラビニョオ型プラネタリギヤセット31となす。
かかるラビニョオ型プラネタリギヤセット31に対し本実施例においては、図の左側に同軸に配置したエンジンENGからの回転がシングルピニオン遊星歯車組32のリングギヤR2に入力されるよう、このリングギヤR2に入力軸30(図10の共線図では入力Inとして示す)を結合し、この入力軸30にエンジンENGのクランクシャフトを結合する。
出力歯車34、カウンターギヤ35、カウンターシャフト36、ディファレンシャルギヤ装置37で車輪駆動系を構成し、この駆動系を図10の共線図ではOutとして示した。
かかる複合電流2層モータ2と、ラビニョオ型プラネタリギヤセット31との結合に当たっては、シングルピニオン遊星歯車組33のサンギヤS1に第1モータ/ジェネレータMG1(詳しくはインナーロータ2ri)を結合し、シングルピニオン遊星歯車組32のサンギヤS2に第2モータ/ジェネレータMG2(詳しくはアウターロータ2ro)を結合する。
本実施例では、シングルピニオン遊星歯車組33のリングギヤR1を変速機ケース11に固定可能なローブレーキL/Bを設け、該ローブレーキL/Bは、その締結時にラビニョオ型プラネタリギヤセット31の回転慣性系の自由度を1となしてハイブリッド変速機1を固定変速比モードで作動させ、ローブレーキL/Bは、その解放時にラビニョオ型プラネタリギヤセット31の回転慣性系の自由度を2となしてハイブリッド変速機1を無段変速比モードで作動させることができる。
1 ハイブリッド変速機
2 複合電流2層モータ
MG1 モータ/ジェネレータ
MG2 モータ/ジェネレータ
3 差動装置
4 入力軸
5 出力軸
6 ディファレンシャルギヤ装置
7L,7R 後輪
GF フロント側遊星歯車組
GC 中間の遊星歯車組
GR リヤ側遊星歯車組
Cin エンジンクラッチ
Chi ハイクラッチ
BLO ローブレーキ
BLH ロー&ハイブレーキ
11 変速機ケース
21 ハイブリッドコントローラ
22 エンジンコントローラ
23 モータコントローラ
24 インバータ
25 バッテリ
26 油圧制御装置
27 アクセル開度センサ
28 車速センサ
29 入力回転センサ
30 入力軸
31 ラビニョオ型プラネタリギヤセット(差動装置)
32 シングルピニオン遊星歯車組
33 シングルピニオン遊星歯車組
34 出力歯車
35 カウンターギヤ
36 カウンターシャフト
37 ディファレンシャルギヤ装置
38 後輪
Claims (4)
- エンジンと、出力軸と、2つのモータ/ジェネレータとの間を差動装置により相互に連結し、
この差動装置を構成する回転要素のうち任意の回転要素を固定するよう作動するブレーキを具え、
該ブレーキの作動時は、エンジンと出力軸との間における回転速度比が固定された状態で、エンジン動力に少なくとも一方のモータ/ジェネレータの動力を加減して出力する固定変速比モードとなり、前記ブレーキの非作動時は、エンジンと出力軸との間における回転速度比が自由に選択され得る状態で、エンジンと2つのモータ/ジェネレータとにより変速比および駆動力の双方を制御しながら出力を決定する無段変速比モードとなるハイブリッド変速機において、
前記固定変速比モードで、且つ、エンジン、バッテリ、モータ/ジェネレータの現状において実現可能な最大駆動力を出力している間、固定変速比モードから前記無段変速比モードへの切り替えに要する予定のモード切り替え所要時間を考慮して、固定変速比モードから無段変速比モードへの切り替えを開始すべき車速を設定するモード切り替え車速設定手段と、
車速が、この手段により設定したモード切り替え車速に到達した時に固定変速比モードから無段変速比モードへの切り替えを開始させるモード切り替え手段と、
車両の走行抵抗および車重を推定する走行条件推定手段と、
該手段により推定した走行抵抗および車重に応じ前記モード切り替え車速を、走行抵抗が大きいほど高くなるよう、また、車重が重いほど高くなるよう補正する指令を前記モード切り替え車速設定手段に出力するモード切り替え車速補正手段と
を設けたことを特徴とするハイブリッド変速機のモード切り替え制御装置。 - 請求項1に記載のモード切り替え制御装置において、
前記走行条件推定手段は、前記固定変速比モード、且つ、エンジン停止状態での走行中に車重と走行抵抗とを推定し、該車重の推定後は、車重推定値を用いて走行抵抗のみを推定するよう構成したことを特徴とするハイブリッド変速機のモード切り替え制御装置。 - 請求項2に記載のモード切り替え制御装置において、
前記走行条件推定手段は、車速から空気抵抗を推定する空気抵抗推定部を有し、走行抵抗および車重を推定するとき、走行抵抗の推定値を、空気抵抗推定部で推定した空気抵抗で補正するよう構成したことを特徴とするハイブリッド変速機のモード切り替え制御装置。 - 請求項2に記載のモード切り替え制御装置において、
前記走行条件推定手段は、モード切り替え中における車両加速度が、モード切り替え開始時における車両加速度より大きくならないよう、モータ/ジェネレータで加速度制御するよう構成したことを特徴とするハイブリッド変速機のモード切り替え制御装置。
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