JP3898251B2 - 人工呼吸器のダイヤフラム中立位置制御装置 - Google Patents
人工呼吸器のダイヤフラム中立位置制御装置 Download PDFInfo
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自発呼吸の困難な患者に対して強制的に空気を供給するとともに、患者の自発呼吸があったときは患者の負荷をなるべく減少させるように動作する人工呼吸器に関し、詳しくは、人工呼吸器に用いられるダイヤフラム中立位置制御装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
図４は、従来の人工呼吸器及びダイヤフラム中立位置制御装置を示す構成図である。以下、この図面に基づき説明する。
【０００３】
従来の人工呼吸器５０は、陽圧Ａｐ及び陰圧Ａｎの両方の空気圧を同時に発生するブロワ５２と、ブロワ５２で発生した陽圧Ａｐ又は陰圧Ａｎを交互に選択して所定の振動空気圧Ａpnに変換するロータリバルブ機構５４と、ロータリバルブ機構５４からの振動空気圧Ａpnに付勢されて作動し患者Ｐに空気を供給するダイヤフラム機構５６と、ダイヤフラム機構５６のダイヤフラム５６１の中立位置を一定に保つ従来のダイヤフラム中立位置制御装置６０と、吸気を導入する吸気導入部６２とを備えている。
【０００４】
ブロワ５２は、陽圧管５２１及び陰圧管５２２を有し、陰圧管５２２から空気を吸入し、その空気を陽圧管５２１から吐出する。陰圧管５２２には、外気と連通するオリフィス管５２３が接続されている。
【０００５】
ロータリバルブ機構５４は、ポート５４１，５４２，５４３を有するロータリバルブ５４４と、ロータリバルブ５４４を回転させる駆動部５４５とから構成されている。駆動部５４５は、図示しない電動機及び減速機からなり、ロータリバルブ５４４を例えば900rpmで回転させる。ロータリバルブ５４４は、一回転するごとに、ポート５４１とポート５４３とのみを一回連通させ、続いてポート５４２とポート５４３とのみを一回連通させる。ポート５４３には、振動空気圧Ａpnをダイヤフラム機構５６へ伝達する振動空気圧管５４６が接続されている。振動空気圧管５４６には、流量制御バルブ５４７が挿入されている。
【０００６】
ダイヤフラム機構５６は、加圧室５６２及び被加圧室５６３と、加圧室５６２と被加圧室５６３との間を仕切るとともに伸縮自在の部材で形成されたダイヤフラム５６１とを備えている。加圧室５６２は振動空気圧管５４６に接続されている。
【０００７】
吸気導入部６２は、外気と予め準備された酸素とを吸入し混合するブレンダ６２１と、ブレンダ６２１から送り出される空気を加湿する加湿器６２２とから構成されている。加湿器６２２には、加湿器６２２を経た吸気Ａｉを患者Ｐへ供給する吸気管６２３が接続されている。吸気管６２３には、被加圧室５６３が連通されるとともに、患者Ｐの近傍に圧力センサ６２４が取り付けられている。
【０００８】
ダイヤフラム中立位置制御装置６０は、ダイヤフラム５６１の位置を検出するダイヤフラム位置センサ６０１と、陽圧管５２１と振動空気圧管５４６とをオリフィス６０２を介して連通する連通管６０３と、吸気管６２３と振動空気圧管５４６とを連通する連通管６０４と、連通管６０３と外気とを連通する流量制御バルブ６０５と、ダイヤフラム位置センサ６０１で検出されたダイヤフラム５６１の位置に基づき流量制御バルブ６０５を制御する制御部６０６とを備えている。また、制御部６０６は、圧力センサ６２４で検出された吸気管６２３内の圧力に基づき、連通管６０４と外気とを連通する流量制御バルブ６０７を制御する機能も有している。
【０００９】
次に、人工呼吸器５０及びダイヤフラム中立位置制御装置６０の動作を説明する。
【００１０】
ロータリバルブ機構５４で発生した振動空気圧Ａpnは、ダイヤフラム機構５６に伝達される。ダイヤフラム機構５６では、振動空気圧Ａpnの周期によってダイヤフラム５６１が振動し、ダイヤフラム５６１の振動が吸気管６２３内の圧力を変化させる。また、常時、患者Ｐに吸気Ａｉが供給されている。患者Ｐの呼気は流量制御弁６０７から排出される。常時の流量制御弁６０７は、呼気が流れ出る程度に開いている。
【００１１】
ダイヤフラム５６１の凹凸動作は、ダイヤフラム位置センサ６０１よって検出され、ダイヤフラム５６１の動作情報として制御部６０６へ常時出力されている。ここで、自発呼吸に起因してダイヤフラム５６１の凹凸動作が乱れると、この情報は直ちに制御部６０６へ出力される。すると、制御部６０６は、流量制御バルブ６０５，６０７を制御して、吸気管６２３内の圧力を制御する。これにより、自発呼吸に際しての患者Ｐの負担を軽減するようになっている。
【００１２】
ダイヤフラム５６１の中立位置が中心からずれると、ダイヤフラム５６１の往復運動が制限されるため、人工呼吸器５０の呼吸動作が不完全となる。そのため、連通管６０４は、ダイヤフラム機構５６の動作を妨げない範囲で、加圧室５６２と被加圧室５６３との圧力差を小さくすることにより、ダイヤフラム５６１の中立位置を中心に保つように作用する。この連通管６０４の作用だけでは不十分な場合に、制御部６０６は次のように動作する。
【００１３】
制御部６０６は、ダイヤフラム５６１の動作情報に基づき、ダイヤフラム５６１の中立位置のずれを常に判断している。そして、ダイヤフラム５６１の中立位置が患者Ｐ側（図面で右側）にずれると、流量制御バルブ６０５を開く方に制御して、振動空気圧Ａpnを低くする。逆に、ダイヤフラム５６１の中立位置がブロワ５２側（図面で左側）にずれると、流量制御バルブ６０５を閉じる方に制御して、振動空気圧Ａpnを高くする。
【００１４】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のダイヤフラム中立位置制御装置６０では、次のような問題があった。
【００１５】
▲１▼．ダイヤフラム５６１の中立位置を制御する際の応答性が劣っていた。この問題は、ダイヤフラム５６１の位置で自発呼吸を検出していることから、その検出精度を落とす原因にもなっていた。▲２▼．連通管６０４を介してブロワ５２側の空気に患者Ｐ側の空気が混入するおそれがあるので、衛生上好ましくなかった。
【００１６】
【発明の目的】
本発明の目的は、ダイヤフラムの中立位置を制御する際の応答性を向上できるとともに、ブロワ側の空気に患者側の空気が混入することを防止できる、ダイヤフラム中立位置制御装置を提供することにある。
【００１７】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の目的を達成するために研究を重ねた結果、次のことを見い出した。
【００１８】
従来技術において、ダイヤフラム５６１の中立位置の制御すなわち振動空気圧Ａpnの制御は、振動空気圧Ａpnの陽圧Ａｐ成分を大気に開放させる度合いを調整しているに過ぎない。そこで、陽圧Ａｐ成分の他に陰圧Ａｎ成分も制御すれば、それだけ応答性を向上できる。さらに、振動空気圧Ａpnを大気ではなく陰圧Ａｎ側又は陽圧Ａｐ側に開放すれば、より圧力差が大きくなるので、より応答性を向上できる。その結果、連通管６０４も不要となる。
【００１９】
本発明は、この知見に基づきなされたものである。すなわち、本発明に係るダイヤフラム中立位置制御装置は、陽圧及び陰圧の両方の空気圧を同時に発生する空気圧発生源と、この空気圧発生源で発生した前記陽圧又は陰圧を交互に選択して所定の振動空気圧に変換する振動空気圧発生機構と、この振動空気圧発生機構からの振動空気圧に付勢されて作動し患者の口元に空気を供給するダイヤフラム機構とを備えた人工呼吸器に用いられるものである。そして、前記ダイヤフラム機構のダイヤフラムの位置を検出するダイヤフラム位置センサと、前記陽圧、前記陰圧又は前記振動空気圧を制御する圧力制御機構と、前記ダイヤフラム位置センサで検出されたダイヤフラムの位置に基づき前記圧力制御機構を制御する制御部とを備えている。
【００２０】
前記圧力制御機構は、次の三通りの構成を採ることができる。（１）前記空気圧発生源で発生した陽圧の絶対値を低下させる陽圧低下流路と、前記空気圧発生源で発生した陰圧の絶対値を低下させる陰圧低下流路と、この陰圧低下流路又は前記陽圧低下流路のどちらか一方に切り換えるアクチュエータとを備えたもの。（２）前記ダイヤフラムを付勢する前記振動空気圧に前記空気圧発生源で発生した陽圧を印加する陽圧印加流路と、前記ダイヤフラムを付勢する前記振動空気圧に前記空気圧発生源で発生した陰圧を印加する陰圧印加流路と、この陰圧印加流路又は前記陽圧印加流路のどちらか一方に切り換えるアクチュエータとを備えたもの。（３）前記空気圧発生源で発生した陽圧の絶対値を低下させる陽圧低下流路と、前記ダイヤフラムを付勢する前記振動空気圧に前記空気圧発生源で発生した陰圧を印加する陰圧印加流路と、前記空気圧発生源で発生した陰圧の絶対値を低下させる陰圧低下流路と、前記ダイヤフラムを付勢する前記振動空気圧に前記空気圧発生源で発生した陽圧を印加する陽圧印加流路と、前記陽圧低下流路及び陰圧印加流路又は前記陰圧低下流路及び陽圧印加流路のどちらか一方に切り換えるアクチュエータとを備えたもの。
【００２１】
【発明の実施の形態】
図１は、本発明に係る人工呼吸器及びダイヤフラム中立位置制御装置の一実施形態を示す構成図である。以下、この図面に基づき説明する。ただし、図４と同一部分は同一符号を付すことにより重複説明を省略する。
【００２２】
本実施形態のダイヤフラム中立位置制御装置１０は、陽圧Ａｐ及び陰圧Ａｎの両方の空気圧を同時に発生するブロワ５２（空気圧発生源）と、ブロワ５２で発生した陽圧Ａｐ又は陰圧Ａｎを交互に選択して所定の振動空気圧Ａpnに変換するロータリバルブ機構５４（振動空気圧発生機構）と、ロータリバルブ機構５４からの振動空気圧Ａpnに付勢されて作動し患者Ｐに空気を供給するダイヤフラム機構５６とを備えた人工呼吸器１２に用いられるものである。そして、ダイヤフラム中立位置制御装置１０は、ダイヤフラム機構５６のダイヤフラム５６１の位置を検出するダイヤフラム位置センサ６０１と、陽圧Ａｐ、陰圧Ａｎ又は振動空気圧Ａpnを制御する圧力制御バルブ１４（圧力制御機構）と、ダイヤフラム位置センサ６０１で検出されたダイヤフラム５６１の位置に基づき圧力制御バルブ１４を制御する制御部１６とを備えている。
【００２３】
圧力制御バルブ１４は、構造的にはロータリバルブに類似しており、ポート１４１〜１４５を有する本体１４６と、本体１４６の一部を正逆方向に回動させるアクチュエータ１４７とから構成されている。アクチュエータ１４７は、図示しない電動機及び減速機からなり、本体１４６の一部を所望の角度に回動させることができる。制御部１６は、例えばＣＰＵ、ＲＯＭ、ＲＡＭ、入出力インタフェース等からなるマイクロコンピュータである。陽圧管５２１には、外気と連通するオリフィス管５２４が接続されている。
【００２４】
図２及び図３は、圧力制御バルブ１４の本体１４６の一例を示す断面図である。以下、図１乃至図３に基づき説明する。
【００２５】
本体１４６は、外筒状の固定体１４８と、固定体１４８に内接する内筒状の回動体１４９とから構成されている。固定体１４８には、ポート１４１〜１４５が設けられている。回動体１４９には、透孔１４９ａ，１４９ｂ，１４９ｃ，１４９ｄと、仕切り板１４９ｅと、開口端１４９ｆ，１４９ｇが設けられている。
【００２６】
ポート１４１には、陽圧管５２１と連通する陽圧バイパス管１８１が接続されている。ポート１４２には、陰圧管５２２と連通する陰圧バイパス管１８２が接続されている。ポート１４３には、振動空気圧管５４６と連通する振動空気圧バイパス管１８３が接続されている。ポート１４４，１４５には、それぞれ大気開放ポート１８４，１８５が接続されている。
【００２７】
回動体１４９は、アクチュエータ１４７によって回動する。回動体１４９は、その回動角度に応じて、陽圧低下流路２０１及び陰圧印加流路２０２（図２）又は陰圧低下流路２０３及び陽圧印加流路２０４（図３）の、どちらか一方を選択できる。陽圧低下流路２０１は、陽圧バイパス管１８１→ポート１４１→開口端１４９ｆ→透孔１４９ａ→ポート１４４→オリフィス管１８４と空気が進む流路であり、ブロワ５２で発生した陽圧Ａｐの絶対値を低下させる。陰圧印加流路２０２は、振動空気圧バイパス管１８３→ポート１４３→透孔１４９ｄ→開口端１４９ｇ→ポート１４２→陰圧バイパス管１８２と空気が進む流路であり、ダイヤフラム５６１を付勢する振動空気圧Ａpnにブロワ５２で発生した陰圧Ａｎを印加する。陰圧低下流路２０３は、オリフィス管１８５→ポート１４５→開口端１４９ｇ→ポート１４２→陰圧バイパス管１８２と空気が進む流路であり、ブロワ５２で発生した陰圧Ａｎの絶対値を低下させる。陽圧印加流路２０４は、陽圧バイパス管１８１→ポート１４１→開口端１４９ｆ→透孔１４９ｃ→ポート１４３→振動空気圧バイパス管１８３と空気が進む流路であり、ダイヤフラム５６１を付勢する振動空気圧Ａpnにブロワ５２で発生した陽圧Ａｐを印加する。各流路を流れる空気の量は、アクチュエータ１４７によって回動体１４９を微小角度づつ回動させることにより、連続的に変化させることができる。また、回動体１４９の角度によっては、全ての流路を選択しないことも可能である。
【００２８】
次に、ダイヤフラム中立位置制御装置１０の動作を説明する。
【００２９】
制御部１６は、ダイヤフラム位置センサ６０１から得られるダイヤフラム５６１の動作情報に基づき、ダイヤフラム５６１の平均中立位置のずれを常に判断している。そして、ダイヤフラム５６１の平均中立位置がずれると、制御部は次のように動作する。
【００３０】
ダイヤフラム５６１の中立位置が患者Ｐ側（図面で右側）にずれると、圧力制御バルブ１４の陽圧低下流路２０１及び陰圧印加流路２０２を選択する。すると、ブロワ５２で発生した陽圧Ａｐの絶対値が陽圧低下流路２０１によって低下するとともに、ブロワ５２で発生した陰圧Ａｎが陰圧印加流路２０２によって振動空気圧Ａpnに印加されることにより、振動空気圧Ａpnが低下する。これにより、ダイヤフラム５６１の中立位置が中心へ（図面で左側へ）戻る。
【００３１】
逆に、ダイヤフラム５６１の中立位置がブロワ５２側（図面で左側）にずれると、陰圧低下流路２０３及び陽圧印加流路２０４を選択する。すると、ブロワ５２で発生した陰圧Ａｎの絶対値が陰圧低下流路２０３によって低下するとともに、ブロワ５２で発生した陽圧Ａｐが陽圧印加流路２０４によって振動空気圧Ａpnに印加されることにより、振動空気圧Ａpnが上昇する。これにより、ダイヤフラム５６１の中立位置が中心へ（図面で右側へ）戻る。
【００３２】
ダイヤフラム５６１を中立位置へ戻すことに要する時間は、陽圧Ａｐのみならず陰圧Ａｎも制御しているので従来より短縮できるとともに、振動空気圧Ａpnを大気ではなく陰圧Ａｎ側又は陽圧Ａｐ側に開放することにより、大きい圧力差を利用できるので、従来よりさらに短縮できる。
【００３３】
なお、本発明は、いうまでもなく、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、回動体１４９は、陽圧低下流路２０１若しくは陰圧低下流路２０３のどちらか一方を選択できるもの、又は陰圧印加流路２０２若しくは陽圧印加流路２０４のどちらか一方を選択できるものとしてもよい。
【００３４】
【発明の効果】
本発明に係るダイヤフラム中立位置制御装置によれば、陽圧低下流路及び陰圧低下流路を設けたことにより、振動空気圧の制御に陽圧のみならず陰圧も利用できるので、それだけ応答性を向上できる。また、陰圧印加流路及び陽圧印加流路を設けたことにより、振動空気圧を大気ではなく陽圧側又は陰圧側に開放できるので、より大きい圧力差を利用でき、これによりさらに応答性を向上できる。
【００３５】
この応答性の向上に伴いダイヤフラムが速やかに中立位置に保たれるので、ダイヤフラムの位置検出精度を向上でき、これにより自発呼吸の検出精度も向上できる。
【００３６】
従来ダイヤフラムの中立位置制御に必要であった、ブロワ側の空気と患者側の空気とを連通させる連通管を除去できる。したがって、ブロワ側の空気と患者側の空気とをダイヤフラムによって完全に遮断できるので、衛生面での向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る人工呼吸器及びダイヤフラム中立位置制御装置の一実施形態を示す構成図である。
【図２】図１のダイヤフラム中立位置制御装置における圧力制御バルブの本体の一例を示す断面図であり、陽圧低下流路及び陰圧印加流路を選択した状態である。
【図３】図１のダイヤフラム中立位置制御装置における圧力制御バルブの本体の一例を示す断面図であり、陰圧低下流路及び陽圧印加流路を選択した状態である。
【図４】従来の人工呼吸器及びダイヤフラム中立位置制御装置を示す構成図である。
【符号の説明】
１０ ダイヤフラム中立位置制御装置
１２ 人工呼吸器
１４ 圧力制御バルブ（圧力制御機構）
１４７ アクチュエータ
１６ 制御部
２０１ 陽圧低下流路
２０２ 陰圧印加流路
２０３ 陰圧低下流路
２０４ 陽圧印加流路
５２ ブロワ（空気圧発生源）
５４ ロータリバルブ機構（振動空気圧発生機構）
５６ ダイヤフラム機構
５６１ ダイヤフラム
６０１ ダイヤフラム位置センサ
Ａｐ 陽圧
Ａｎ 陰圧
Ａpn 振動空気圧
Ｐ 患者
【発明の属する技術分野】
本発明は、自発呼吸の困難な患者に対して強制的に空気を供給するとともに、患者の自発呼吸があったときは患者の負荷をなるべく減少させるように動作する人工呼吸器に関し、詳しくは、人工呼吸器に用いられるダイヤフラム中立位置制御装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
図４は、従来の人工呼吸器及びダイヤフラム中立位置制御装置を示す構成図である。以下、この図面に基づき説明する。
【０００３】
従来の人工呼吸器５０は、陽圧Ａｐ及び陰圧Ａｎの両方の空気圧を同時に発生するブロワ５２と、ブロワ５２で発生した陽圧Ａｐ又は陰圧Ａｎを交互に選択して所定の振動空気圧Ａpnに変換するロータリバルブ機構５４と、ロータリバルブ機構５４からの振動空気圧Ａpnに付勢されて作動し患者Ｐに空気を供給するダイヤフラム機構５６と、ダイヤフラム機構５６のダイヤフラム５６１の中立位置を一定に保つ従来のダイヤフラム中立位置制御装置６０と、吸気を導入する吸気導入部６２とを備えている。
【０００４】
ブロワ５２は、陽圧管５２１及び陰圧管５２２を有し、陰圧管５２２から空気を吸入し、その空気を陽圧管５２１から吐出する。陰圧管５２２には、外気と連通するオリフィス管５２３が接続されている。
【０００５】
ロータリバルブ機構５４は、ポート５４１，５４２，５４３を有するロータリバルブ５４４と、ロータリバルブ５４４を回転させる駆動部５４５とから構成されている。駆動部５４５は、図示しない電動機及び減速機からなり、ロータリバルブ５４４を例えば900rpmで回転させる。ロータリバルブ５４４は、一回転するごとに、ポート５４１とポート５４３とのみを一回連通させ、続いてポート５４２とポート５４３とのみを一回連通させる。ポート５４３には、振動空気圧Ａpnをダイヤフラム機構５６へ伝達する振動空気圧管５４６が接続されている。振動空気圧管５４６には、流量制御バルブ５４７が挿入されている。
【０００６】
ダイヤフラム機構５６は、加圧室５６２及び被加圧室５６３と、加圧室５６２と被加圧室５６３との間を仕切るとともに伸縮自在の部材で形成されたダイヤフラム５６１とを備えている。加圧室５６２は振動空気圧管５４６に接続されている。
【０００７】
吸気導入部６２は、外気と予め準備された酸素とを吸入し混合するブレンダ６２１と、ブレンダ６２１から送り出される空気を加湿する加湿器６２２とから構成されている。加湿器６２２には、加湿器６２２を経た吸気Ａｉを患者Ｐへ供給する吸気管６２３が接続されている。吸気管６２３には、被加圧室５６３が連通されるとともに、患者Ｐの近傍に圧力センサ６２４が取り付けられている。
【０００８】
ダイヤフラム中立位置制御装置６０は、ダイヤフラム５６１の位置を検出するダイヤフラム位置センサ６０１と、陽圧管５２１と振動空気圧管５４６とをオリフィス６０２を介して連通する連通管６０３と、吸気管６２３と振動空気圧管５４６とを連通する連通管６０４と、連通管６０３と外気とを連通する流量制御バルブ６０５と、ダイヤフラム位置センサ６０１で検出されたダイヤフラム５６１の位置に基づき流量制御バルブ６０５を制御する制御部６０６とを備えている。また、制御部６０６は、圧力センサ６２４で検出された吸気管６２３内の圧力に基づき、連通管６０４と外気とを連通する流量制御バルブ６０７を制御する機能も有している。
【０００９】
次に、人工呼吸器５０及びダイヤフラム中立位置制御装置６０の動作を説明する。
【００１０】
ロータリバルブ機構５４で発生した振動空気圧Ａpnは、ダイヤフラム機構５６に伝達される。ダイヤフラム機構５６では、振動空気圧Ａpnの周期によってダイヤフラム５６１が振動し、ダイヤフラム５６１の振動が吸気管６２３内の圧力を変化させる。また、常時、患者Ｐに吸気Ａｉが供給されている。患者Ｐの呼気は流量制御弁６０７から排出される。常時の流量制御弁６０７は、呼気が流れ出る程度に開いている。
【００１１】
ダイヤフラム５６１の凹凸動作は、ダイヤフラム位置センサ６０１よって検出され、ダイヤフラム５６１の動作情報として制御部６０６へ常時出力されている。ここで、自発呼吸に起因してダイヤフラム５６１の凹凸動作が乱れると、この情報は直ちに制御部６０６へ出力される。すると、制御部６０６は、流量制御バルブ６０５，６０７を制御して、吸気管６２３内の圧力を制御する。これにより、自発呼吸に際しての患者Ｐの負担を軽減するようになっている。
【００１２】
ダイヤフラム５６１の中立位置が中心からずれると、ダイヤフラム５６１の往復運動が制限されるため、人工呼吸器５０の呼吸動作が不完全となる。そのため、連通管６０４は、ダイヤフラム機構５６の動作を妨げない範囲で、加圧室５６２と被加圧室５６３との圧力差を小さくすることにより、ダイヤフラム５６１の中立位置を中心に保つように作用する。この連通管６０４の作用だけでは不十分な場合に、制御部６０６は次のように動作する。
【００１３】
制御部６０６は、ダイヤフラム５６１の動作情報に基づき、ダイヤフラム５６１の中立位置のずれを常に判断している。そして、ダイヤフラム５６１の中立位置が患者Ｐ側（図面で右側）にずれると、流量制御バルブ６０５を開く方に制御して、振動空気圧Ａpnを低くする。逆に、ダイヤフラム５６１の中立位置がブロワ５２側（図面で左側）にずれると、流量制御バルブ６０５を閉じる方に制御して、振動空気圧Ａpnを高くする。
【００１４】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のダイヤフラム中立位置制御装置６０では、次のような問題があった。
【００１５】
▲１▼．ダイヤフラム５６１の中立位置を制御する際の応答性が劣っていた。この問題は、ダイヤフラム５６１の位置で自発呼吸を検出していることから、その検出精度を落とす原因にもなっていた。▲２▼．連通管６０４を介してブロワ５２側の空気に患者Ｐ側の空気が混入するおそれがあるので、衛生上好ましくなかった。
【００１６】
【発明の目的】
本発明の目的は、ダイヤフラムの中立位置を制御する際の応答性を向上できるとともに、ブロワ側の空気に患者側の空気が混入することを防止できる、ダイヤフラム中立位置制御装置を提供することにある。
【００１７】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の目的を達成するために研究を重ねた結果、次のことを見い出した。
【００１８】
従来技術において、ダイヤフラム５６１の中立位置の制御すなわち振動空気圧Ａpnの制御は、振動空気圧Ａpnの陽圧Ａｐ成分を大気に開放させる度合いを調整しているに過ぎない。そこで、陽圧Ａｐ成分の他に陰圧Ａｎ成分も制御すれば、それだけ応答性を向上できる。さらに、振動空気圧Ａpnを大気ではなく陰圧Ａｎ側又は陽圧Ａｐ側に開放すれば、より圧力差が大きくなるので、より応答性を向上できる。その結果、連通管６０４も不要となる。
【００１９】
本発明は、この知見に基づきなされたものである。すなわち、本発明に係るダイヤフラム中立位置制御装置は、陽圧及び陰圧の両方の空気圧を同時に発生する空気圧発生源と、この空気圧発生源で発生した前記陽圧又は陰圧を交互に選択して所定の振動空気圧に変換する振動空気圧発生機構と、この振動空気圧発生機構からの振動空気圧に付勢されて作動し患者の口元に空気を供給するダイヤフラム機構とを備えた人工呼吸器に用いられるものである。そして、前記ダイヤフラム機構のダイヤフラムの位置を検出するダイヤフラム位置センサと、前記陽圧、前記陰圧又は前記振動空気圧を制御する圧力制御機構と、前記ダイヤフラム位置センサで検出されたダイヤフラムの位置に基づき前記圧力制御機構を制御する制御部とを備えている。
【００２０】
前記圧力制御機構は、次の三通りの構成を採ることができる。（１）前記空気圧発生源で発生した陽圧の絶対値を低下させる陽圧低下流路と、前記空気圧発生源で発生した陰圧の絶対値を低下させる陰圧低下流路と、この陰圧低下流路又は前記陽圧低下流路のどちらか一方に切り換えるアクチュエータとを備えたもの。（２）前記ダイヤフラムを付勢する前記振動空気圧に前記空気圧発生源で発生した陽圧を印加する陽圧印加流路と、前記ダイヤフラムを付勢する前記振動空気圧に前記空気圧発生源で発生した陰圧を印加する陰圧印加流路と、この陰圧印加流路又は前記陽圧印加流路のどちらか一方に切り換えるアクチュエータとを備えたもの。（３）前記空気圧発生源で発生した陽圧の絶対値を低下させる陽圧低下流路と、前記ダイヤフラムを付勢する前記振動空気圧に前記空気圧発生源で発生した陰圧を印加する陰圧印加流路と、前記空気圧発生源で発生した陰圧の絶対値を低下させる陰圧低下流路と、前記ダイヤフラムを付勢する前記振動空気圧に前記空気圧発生源で発生した陽圧を印加する陽圧印加流路と、前記陽圧低下流路及び陰圧印加流路又は前記陰圧低下流路及び陽圧印加流路のどちらか一方に切り換えるアクチュエータとを備えたもの。
【００２１】
【発明の実施の形態】
図１は、本発明に係る人工呼吸器及びダイヤフラム中立位置制御装置の一実施形態を示す構成図である。以下、この図面に基づき説明する。ただし、図４と同一部分は同一符号を付すことにより重複説明を省略する。
【００２２】
本実施形態のダイヤフラム中立位置制御装置１０は、陽圧Ａｐ及び陰圧Ａｎの両方の空気圧を同時に発生するブロワ５２（空気圧発生源）と、ブロワ５２で発生した陽圧Ａｐ又は陰圧Ａｎを交互に選択して所定の振動空気圧Ａpnに変換するロータリバルブ機構５４（振動空気圧発生機構）と、ロータリバルブ機構５４からの振動空気圧Ａpnに付勢されて作動し患者Ｐに空気を供給するダイヤフラム機構５６とを備えた人工呼吸器１２に用いられるものである。そして、ダイヤフラム中立位置制御装置１０は、ダイヤフラム機構５６のダイヤフラム５６１の位置を検出するダイヤフラム位置センサ６０１と、陽圧Ａｐ、陰圧Ａｎ又は振動空気圧Ａpnを制御する圧力制御バルブ１４（圧力制御機構）と、ダイヤフラム位置センサ６０１で検出されたダイヤフラム５６１の位置に基づき圧力制御バルブ１４を制御する制御部１６とを備えている。
【００２３】
圧力制御バルブ１４は、構造的にはロータリバルブに類似しており、ポート１４１〜１４５を有する本体１４６と、本体１４６の一部を正逆方向に回動させるアクチュエータ１４７とから構成されている。アクチュエータ１４７は、図示しない電動機及び減速機からなり、本体１４６の一部を所望の角度に回動させることができる。制御部１６は、例えばＣＰＵ、ＲＯＭ、ＲＡＭ、入出力インタフェース等からなるマイクロコンピュータである。陽圧管５２１には、外気と連通するオリフィス管５２４が接続されている。
【００２４】
図２及び図３は、圧力制御バルブ１４の本体１４６の一例を示す断面図である。以下、図１乃至図３に基づき説明する。
【００２５】
本体１４６は、外筒状の固定体１４８と、固定体１４８に内接する内筒状の回動体１４９とから構成されている。固定体１４８には、ポート１４１〜１４５が設けられている。回動体１４９には、透孔１４９ａ，１４９ｂ，１４９ｃ，１４９ｄと、仕切り板１４９ｅと、開口端１４９ｆ，１４９ｇが設けられている。
【００２６】
ポート１４１には、陽圧管５２１と連通する陽圧バイパス管１８１が接続されている。ポート１４２には、陰圧管５２２と連通する陰圧バイパス管１８２が接続されている。ポート１４３には、振動空気圧管５４６と連通する振動空気圧バイパス管１８３が接続されている。ポート１４４，１４５には、それぞれ大気開放ポート１８４，１８５が接続されている。
【００２７】
回動体１４９は、アクチュエータ１４７によって回動する。回動体１４９は、その回動角度に応じて、陽圧低下流路２０１及び陰圧印加流路２０２（図２）又は陰圧低下流路２０３及び陽圧印加流路２０４（図３）の、どちらか一方を選択できる。陽圧低下流路２０１は、陽圧バイパス管１８１→ポート１４１→開口端１４９ｆ→透孔１４９ａ→ポート１４４→オリフィス管１８４と空気が進む流路であり、ブロワ５２で発生した陽圧Ａｐの絶対値を低下させる。陰圧印加流路２０２は、振動空気圧バイパス管１８３→ポート１４３→透孔１４９ｄ→開口端１４９ｇ→ポート１４２→陰圧バイパス管１８２と空気が進む流路であり、ダイヤフラム５６１を付勢する振動空気圧Ａpnにブロワ５２で発生した陰圧Ａｎを印加する。陰圧低下流路２０３は、オリフィス管１８５→ポート１４５→開口端１４９ｇ→ポート１４２→陰圧バイパス管１８２と空気が進む流路であり、ブロワ５２で発生した陰圧Ａｎの絶対値を低下させる。陽圧印加流路２０４は、陽圧バイパス管１８１→ポート１４１→開口端１４９ｆ→透孔１４９ｃ→ポート１４３→振動空気圧バイパス管１８３と空気が進む流路であり、ダイヤフラム５６１を付勢する振動空気圧Ａpnにブロワ５２で発生した陽圧Ａｐを印加する。各流路を流れる空気の量は、アクチュエータ１４７によって回動体１４９を微小角度づつ回動させることにより、連続的に変化させることができる。また、回動体１４９の角度によっては、全ての流路を選択しないことも可能である。
【００２８】
次に、ダイヤフラム中立位置制御装置１０の動作を説明する。
【００２９】
制御部１６は、ダイヤフラム位置センサ６０１から得られるダイヤフラム５６１の動作情報に基づき、ダイヤフラム５６１の平均中立位置のずれを常に判断している。そして、ダイヤフラム５６１の平均中立位置がずれると、制御部は次のように動作する。
【００３０】
ダイヤフラム５６１の中立位置が患者Ｐ側（図面で右側）にずれると、圧力制御バルブ１４の陽圧低下流路２０１及び陰圧印加流路２０２を選択する。すると、ブロワ５２で発生した陽圧Ａｐの絶対値が陽圧低下流路２０１によって低下するとともに、ブロワ５２で発生した陰圧Ａｎが陰圧印加流路２０２によって振動空気圧Ａpnに印加されることにより、振動空気圧Ａpnが低下する。これにより、ダイヤフラム５６１の中立位置が中心へ（図面で左側へ）戻る。
【００３１】
逆に、ダイヤフラム５６１の中立位置がブロワ５２側（図面で左側）にずれると、陰圧低下流路２０３及び陽圧印加流路２０４を選択する。すると、ブロワ５２で発生した陰圧Ａｎの絶対値が陰圧低下流路２０３によって低下するとともに、ブロワ５２で発生した陽圧Ａｐが陽圧印加流路２０４によって振動空気圧Ａpnに印加されることにより、振動空気圧Ａpnが上昇する。これにより、ダイヤフラム５６１の中立位置が中心へ（図面で右側へ）戻る。
【００３２】
ダイヤフラム５６１を中立位置へ戻すことに要する時間は、陽圧Ａｐのみならず陰圧Ａｎも制御しているので従来より短縮できるとともに、振動空気圧Ａpnを大気ではなく陰圧Ａｎ側又は陽圧Ａｐ側に開放することにより、大きい圧力差を利用できるので、従来よりさらに短縮できる。
【００３３】
なお、本発明は、いうまでもなく、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、回動体１４９は、陽圧低下流路２０１若しくは陰圧低下流路２０３のどちらか一方を選択できるもの、又は陰圧印加流路２０２若しくは陽圧印加流路２０４のどちらか一方を選択できるものとしてもよい。
【００３４】
【発明の効果】
本発明に係るダイヤフラム中立位置制御装置によれば、陽圧低下流路及び陰圧低下流路を設けたことにより、振動空気圧の制御に陽圧のみならず陰圧も利用できるので、それだけ応答性を向上できる。また、陰圧印加流路及び陽圧印加流路を設けたことにより、振動空気圧を大気ではなく陽圧側又は陰圧側に開放できるので、より大きい圧力差を利用でき、これによりさらに応答性を向上できる。
【００３５】
この応答性の向上に伴いダイヤフラムが速やかに中立位置に保たれるので、ダイヤフラムの位置検出精度を向上でき、これにより自発呼吸の検出精度も向上できる。
【００３６】
従来ダイヤフラムの中立位置制御に必要であった、ブロワ側の空気と患者側の空気とを連通させる連通管を除去できる。したがって、ブロワ側の空気と患者側の空気とをダイヤフラムによって完全に遮断できるので、衛生面での向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る人工呼吸器及びダイヤフラム中立位置制御装置の一実施形態を示す構成図である。
【図２】図１のダイヤフラム中立位置制御装置における圧力制御バルブの本体の一例を示す断面図であり、陽圧低下流路及び陰圧印加流路を選択した状態である。
【図３】図１のダイヤフラム中立位置制御装置における圧力制御バルブの本体の一例を示す断面図であり、陰圧低下流路及び陽圧印加流路を選択した状態である。
【図４】従来の人工呼吸器及びダイヤフラム中立位置制御装置を示す構成図である。
【符号の説明】
１０ ダイヤフラム中立位置制御装置
１２ 人工呼吸器
１４ 圧力制御バルブ（圧力制御機構）
１４７ アクチュエータ
１６ 制御部
２０１ 陽圧低下流路
２０２ 陰圧印加流路
２０３ 陰圧低下流路
２０４ 陽圧印加流路
５２ ブロワ（空気圧発生源）
５４ ロータリバルブ機構（振動空気圧発生機構）
５６ ダイヤフラム機構
５６１ ダイヤフラム
６０１ ダイヤフラム位置センサ
Ａｐ 陽圧
Ａｎ 陰圧
Ａpn 振動空気圧
Ｐ 患者
Claims (4)
- 陽圧及び陰圧の両方の空気圧を同時に発生する空気圧発生源と、この空気圧発生源で発生した前記陽圧又は陰圧を交互に選択して所定の振動空気圧に変換する振動空気圧発生機構と、この振動空気圧発生機構からの振動空気圧に付勢されて作動し患者の口元に空気を供給するダイヤフラム機構とを備えた人工呼吸器に用いられ、
前記ダイヤフラム機構のダイヤフラムの位置を検出するダイヤフラム位置センサと、前記陽圧、前記陰圧又は前記振動空気圧を制御する圧力制御機構と、前記ダイヤフラム位置センサで検出されたダイヤフラムの位置に基づき前記圧力制御機構を制御する制御部とを備えた、人工呼吸器のダイヤフラム中立位置制御装置。 - 前記圧力制御機構は、
前記空気圧発生源で発生した陽圧の絶対値を低下させる陽圧低下流路と、前記空気圧発生源で発生した陰圧の絶対値を低下させる陰圧低下流路と、この陰圧低下流路又は前記陽圧低下流路のどちらか一方に切り換えるアクチュエータとを備えた、
請求項１記載の人工呼吸器のダイヤフラム中立位置制御装置。 - 前記圧力制御機構は、
前記ダイヤフラムを付勢する前記振動空気圧に前記空気圧発生源で発生した陽圧を印加する陽圧印加流路と、前記ダイヤフラムを付勢する前記振動空気圧に前記空気圧発生源で発生した陰圧を印加する陰圧印加流路と、この陰圧印加流路又は前記陽圧印加流路のどちらか一方に切り換えるアクチュエータとを備えた、
請求項１記載の人工呼吸器のダイヤフラム中立位置制御装置。 - 前記圧力制御機構は、
前記空気圧発生源で発生した陽圧の絶対値を低下させる陽圧低下流路と、前記ダイヤフラムを付勢する前記振動空気圧に前記空気圧発生源で発生した陰圧を印加する陰圧印加流路と、前記空気圧発生源で発生した陰圧の絶対値を低下させる陰圧低下流路と、前記ダイヤフラムを付勢する前記振動空気圧に前記空気圧発生源で発生した陽圧を印加する陽圧印加流路と、前記陽圧低下流路及び陰圧印加流路又は前記陰圧低下流路及び陽圧印加流路のどちらか一方に切り換えるアクチュエータとを備えた、
請求項１記載の人工呼吸器のダイヤフラム中立位置制御装置。
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