JP3896738B2 - 画像形成装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複合機等の電子写真方式を用いた画像形成装置に関し、より詳しくは、複数の画像形成部を備える画像形成装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
フルカラー画像を形成する画像形成装置において、画像形成の高速化の要求により、各色のトナー画像をそれぞれ独立した画像形成部で形成し、その後中間転写体や記録シートに順次重ねるの画像形成装置が広く知られている。図13は、従来のの画像形成装置の構成を示すものである。同図に示すように、複数の画像形成部100を並列配置すると共に、各画像形成部100の配列方向に沿って中間転写ベルト102又はシート搬送ベルト103を回転移動可能に配設している。
【0003】
各画像形成部100は、各感光体ドラム101の周囲に各種の作像用装置が配設される。作像用装置としては、感光体ドラム101表面を一様に帯電する帯電装置、帯電された感光体ドラム101表面に各色に対応する静電潜像を形成する露光装置、その感光体ドラム101表面に形成された静電潜像を対応する色のトナーにて可視像化する現像装置、感光体ドラム101表面のトナー像を中間転ベルト102若しくはシート搬送ベルト103上の記録シートに静電気力により転写させる転写ロール107、転写後の感光体ドラム101表面の残留トナーを除去するクリーニング装置などが存在する。
【0004】
図13に示す画像形成装置において、カラー画像を形成する場合は、各画像形成部の各感光体ドラム101上に形成された各色(例えばブラックBk、イエローY、マゼンタM、シアンCの4色)のトナー像を、並び順(例えばブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの順)に中間転写ベルト102上に順次一次転写し、さらに中間転写ベルト102上に積層されたフルカラートナー像を記録シートに一括して二次転写し、記録シート上にフルカラートナー像を得る。あるいは、シート搬送ベルト103上に保持される記録シートに、各色のトナー像を順次直接転写して記録シート上にフルカラートナー像を得る(例えば、特開平4−149492号公報、特開平7−287455号公報,特開平8−160839号公報)。
【0005】
このような画像形成装置において従来から、中間転写ベルト102やシート搬送ベルト103の上流側の画像形成部100で一次転写されたトナーの一部が、より下流側の画像形成部100の感光体ドラム101に転移してしまう、いわゆる逆転写の問題が存在していた。このような逆転写は、下流側の画像形成部の転写ロール107に、トナーが感光体ドラム101からベルト102、103へと転写されるような転写バイアスを印加している場合であっても発生してしまう。
【0006】
逆転写してしまうトナーの量は、条件にもよるが、トナー像全体のおよそ3〜10%にも及び、そのトナーはクリーニング装置により除去され、回収ボックスに収容され、最終的には廃棄される。したがって、逆転写されるトナーは無駄になってしまい、画像形成のコストを押し上げる。さらに、細線の画像形成時には、逆転写によりその細線がかすれてしまうという問題も生じる。
【0007】
逆転写が発生するメカニズムは、次のように考えられている。感光体ドラム101表面は、帯電装置によりトナーと同極性に帯電されている(例えば、トナーがマイナス帯電されている場合、感光体ドラム表面はー700〔V〕程度に帯電される)。一方、ベルト102、103の表面電位はトナーと逆極性えある(例えば+800〔V〕程度)。よって、感光体ドラム101表面とベルト102、103表面との電位差は非常に大きく、(一次)転写部近傍で両者が接近したときに放電が発生し、この時に発生する電離イオンにより、ベルト102、103に担持されているトナーの一部の帯電極性が反転する(例えば、マイナスからプラスへ)。その結果、(一次)転写部分において極性が反転したトナーは、感光体ドラム101側へ向かう静電気力を受け、感光体ドラム101側へと転移してしまう。
【0008】
このような逆転写の問題に対して、従来からいくつかの対策が提案されている。特開平8−15947号公報は、逆転写するトナーは本来の帯電極性とは逆に帯電しているという点に鑑み、画像形成装置の各画像形成部間にトナーの電荷調整手段を設け、トナーの帯電量を増加させることで、(一次)転写時に極性反転するトナーの絶対量を小さくすることにより逆転写を低減させる方法を開示している。
【0009】
また、特開平5−165383号公報は、(一次)転写部近傍で放電が発生することにより逆転写するトナーの帯電極性が逆転するという逆転写のメカニズムに鑑み、各画像形成部100における現像後(一次)転写前の感光体ドラム101表面を除電し、感光体ドラム101とベルト102、103との電位差を減少させることで放電を抑制し、逆転写を低減させる方法を開示している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの技術はいずれも逆転写を低減させるという点ではある程度の効果が期待できるものであるが、それぞれ次のような新たな問題が生じてしまう。
【0011】
特開平8−15947号公報に提案されている技術を中間転写体方式の画像形成装置に適用すると、二次転写不良を招くおそれがある。例えば、4つの画像形成部100を用いてフルカラー画像形成を行なう際に、最上流側の画像形成部100で中間点写ベルト102上に形成されたトナー像は合計3ヶ所の電荷調整手段によりその帯電量が増加されるのに対し、最下流の画像形成部100で中間点写ベルト102上に形成されたトナー像は一度もその帯電量が増加されることがない。よって、積層されたトナー像は、各層毎にその帯電量が異なり、それぞれに最適な二次転写バイアスが異なる。その結果、二次転写の際に転写されないトナーや転写像の濃度が低下するなどの画像欠陥が生じてしまう。
【0012】
一方、特開平5−165383号公報に提案されている技術を反転現像方式の画像形成装置に適用すると、特に細線などの再現性に欠ける画像欠陥を招くおそれがある。これは除電の際に、感光体ドラム101表面のうち、背景部分の方が画像部分よりもより効果的に除電され、結果として背景部分と画像部分との電位差が縮小されるからである。すると、画像部分に保持されていたトナーの一部が周囲に飛び散り、特に細線や文字画像においてシャープさに欠け、滲んでしまうなどの画像欠陥が生じてしまう。
【0013】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、逆転写の低減と画像欠陥の防止とを両立することができる画像形成装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
すなわち発明は、回転駆動される第二像担持体と、その第二像担持体の移動方向の上流側から下流側にかけて配設される複数の画像形成部(1、2、…、N)とを備え、各画像形成部(1、2、…、N)は回転駆動される第一像担持体(1、2、…、N)と、その第一像担持体の表面にトナー画像を形成する画像形成手段(1、2、…、N)と、そのトナー画像を第一像担持体の表面から第二像担持体側へ転写させる転写手段(1、2、…、N)を備える画像形成装置において、各画像形成部(1、2、…、N)の作像状況に基づいて各第一像担持体(1、2、…、N)と第二像担持体との各転写部(1、2、…、N)における電位差を制御する制御手段を有するものである()。
【0015】
図1は、この発明の概念を説明するものである。なお、同図において各画像形成部(1、2、…、N)の画像形成手段(1、2、…、N)及び転写手段(1、2、…、N)は省略されている。各画像形成部(1、2、…、N)の作像状況によっては、ある画像形成部(i)においる逆転写の生じやすさが変化する。本発明では、各画像形成部(1、2、…、N)の作像状況に基づいて各画像形成部(1、2、…、N)における逆転写の生じやすさをそれぞれ判断し、各第一像担持体(1、2、…、N)と第二像担持体との各転写部(1、2、…、N)における電位差(ΔV1、ΔV2、…、ΔVN)を適切に制御する。
【0016】
【表1】
Figure 0003896738
表1は、ある画像形成部(i)の適切な電位差(ΔVi)を決定する際の判断基準をまとめたものである。ここでは作像状況の一例として、その画像形成部の作像の有無と、より上流の画像形成部の作像の有無とに基づいて判断している。このような作像状況を考えると、ある画像形成部(i)の適切な電位差(ΔVi)を決定する際の判断基準は次の4種類の場合に分類することができる。
【0017】
すなわち、▲1▼画像形成部(i)の上流側の画像形成部(i−1、…、1)ではまったく作像を行なっていない場合であって、画像形成部(i)でも作像を行なっていない場合、▲2▼画像形成部(i)の上流側の画像形成部(i−1、…、1)ではまったく作像を行なっていない場合であって、画像形成部(i)は作像を行なっている場合、▲3▼画像形成部(i)の上流側の画像形成部(i−1、…、1)で作像を行なっている場合であって、画像形成部(i)は作像を行なっていない場合、▲4▼画像形成部(i)の上流側の画像形成部(i−1、…、1)で作像を行なっている場合であって、画像形成部(i)でも作像を行なっている場合、の4種類である。
【0018】
▲1▼の場合には、第二像担持体から第一像担持体(i)への逆転写が発生することも第一像担持体(i)上での画像欠陥が発生こともないため、これらのいずれも考慮することなくその転写部(i)における適切な電位差(ΔVi)を決定する。▲2▼の場合には、逆転写が発生することはないが画像欠陥が発生することはありえるので、画像欠陥の防止のみを考慮して適切な電位差(ΔVi)を決定する。▲3▼の場合には、逆に、画像欠陥が発生することはないが逆転写が発生することはありえるので、逆転写の防止のみを考慮して適切な電位差(ΔVi)を決定する。▲4▼の場合には、逆転写が発生も画像欠陥の発生もありえるため、これらのいずれも考慮して適切な電位差(ΔVi)を決定する。
【0019】
画像形成装置をこのように構成すれば、第二像担持体から第一像担持体への逆転写が生じ得る場合にはそれを軽減するように、第一像担持体上での画像欠陥が生じ得る場合にはそれを防止するように各転写部(1、2、…、N)における電位差(ΔV1、ΔV2、…、ΔVN)を制御するため、逆転写の低減と画像欠陥の防止とを両立することができる。なお、一般に各転写部(1、2、…、N)における電位差(ΔV1、ΔV2、…、ΔVN)が小さい方が、逆転写は発生しにくくなる。
【0020】
ここでは各画像形成部の作像状況として、ある画像形成部(i)が作像を行なっているか、それよりも上流側の画像形成部(i−1、…、1)が作像を行なっているかに基づいて適切な電位差(ΔVi)を決定しているが、勿論これら以外の作像状況に基づいて電位差(ΔVi)を決定してもよい。
【0021】
例えば、ある画像形成部(i)が作像を行なうため、第一像担持体(i)での画像欠陥の防止を考慮してその電位差(ΔVi)を決定する場合、さらにその画像欠陥の生じやすさをも考慮して適切な電位差(ΔVi)を決定してもよい。ここで画像欠陥の生じやすさの目安としては、具体的に、第一像担持体(i)上に形成されるトナー像のカバレッジインプット(CIN)、トナー像の高さ、トナーの帯電電荷量、第一像担持体(i)の背景部と画像部との表面電位(差)等を挙げることができる。
【0022】
その他にも、ある画像形成部(i)よりも上流側の画像形成部(i−1、…、1)が作像を行なうため、第二像担持体から第一像担持(i)への逆転写の防止を考慮してその電位差(ΔVi)を決定する場合、さらにその逆転写の生じやすさをも考慮して適切な電位差(ΔVi)を決定してもよい。ここで逆転写の生じやすさの目安としては、具体的に、上流側の画像形成部(i−1、…、1)の幾つが実際に作像しているか、その画像形成部(i)の転写部(i)に搬送されるトナー像の量(カバレッジインプット(CIN)、トナー像の高さ等)、そのトナー像を構成するトナーの帯電電荷量とその分布、第一像担持体(i)の背景部と画像部との表面電位(差)、転写部(第二像担持体、転写手段、転写媒体等を含む)の電気抵抗等を挙げることができる。
【0023】
画像形成装置をこのように構成すれば、第二像担持体から第一像担持体への逆転写が生じやすい場合にはそれを軽減するように、第一像担持体上での画像欠陥が生じやすい場合にはそれを防止するように各転写部(1、2、…、N)における電位差(ΔV1、ΔV2、…、ΔVN)を制御するため、逆転写の低減と画像欠陥の防止とをより効果的に両立することができる。
【0024】
図2は、ある画像形成部(i)の転写部(i)における第一像担持体の表面電位VPiと第二像担持体の表面電位VBi、さらにその電位差ΔVi(=VBi−VPi)を説明するものである。ところで、各転写部各転写部(1、2、…、N)における電位差(ΔV1、ΔV2、…、ΔVN)を制御する方法を大別すると、▲1▼各転写部(1、2、…、N)における各第一像担持体(1、2、…、N)の表面電位(VP1、VP2、…、VPN)を変更することにより制御する方法と、▲2▼各転写部(1、2、…、N)における第ニ像担持体の表面電位(VB1、VB2、…、VBN)を変更することにより制御する方法とがある。以下、それぞれについて説明する。
【0025】
まず、各転写部(1、2、…、N)における各第一像担持体(1、2、…、N)の表面電位(VP1、VP2、…、VPN)を変更することにより制御する方法としては、画像形成後かつ転写前の第一像担持体表面の除電を制御する方法がある。すなわち、に記載の画像形成装置を前提として、上記画像形成装置の少なくとも最上流側以外の画像形成部は、画像形成後かつ転写前の第一像担持体表面を除電する除電手段を備え、上記制御手段は、各除電手段の除電量を制御するものである()。
【0026】
図3は、この発明の概念を説明するものである。なお、同図において点線で囲まれている最上流側の画像形成部(1)の除電手段は任意である。上述のように、一般に、各電位差(ΔV1、ΔV2、…、ΔVN)が小さい方が、逆転写は発生しにくくなる。一方、除電量を制御することにより各第一像担持体(1、2、…、N)の表面電位(VP1、VP2、…、VPN)を変更して各電位差(ΔV1、ΔV2、…、ΔVN)を必要以上に小さくすると(図2参照)、次のような理由によりトナーの飛散りという現象が生じて画像欠陥が発生してしまうおそれがある。
【0027】
図4は、トナーの飛散りの発生メカニズムを説明するものである。図4(a)は除電前の、図4(b)は除電後の第一像担持体表面の様子とその表面電位をそれぞれ示すものである。除電前では、第一像担持体の表面電位は背景部分においてVb、画像部分においてViであり、その電位差ΔVimageが十分大きいため、帯電しているトナーをしっかりと保持することができる。一方除電後では、第一像担持体の表面電位は背景部分においてVb'、画像部分においてVi'であり、Vi'よりVb'の方が高くなり、負に帯電しているトナーは、より表面電位の高い背景部分に向かう静電気力を受けるため、その一部が周囲に飛散してしまっている。
【0028】
なお、除電により第一像担持体の背景部分と画像部分との表面電位の高低が逆転してしまうのは、第一像担持体の表面の画像部分はトナーにより覆われているため、背景部分よりも除電されにくいからと考えられる。
【0029】
したがって、除電量を制御することにより逆転写の発生を防止する本発明では、逆転写の発生の防止とトナーの飛散りの防止とを両立させることが重要である。
【0030】
【表2】
Figure 0003896738
表2は、ある画像形成部(i)の適切な電位差(ΔVi)を決定する際の判断基準をまとめたものである。ここでは作像状況の一例として、表1と同様にその画像形成部の作像の有無と、より上流の画像形成部の作像の有無とに基づいて判断している。このような作像状況を考えると、ある画像形成部(i)の適切な電位差(ΔVi)を決定する際の判断基準は上述の▲1▼〜▲4▼の4種類の場合に分類することができる。
【0031】
▲1▼の場合には、第二像担持体から第一像担持体(i)への逆転写が発生することも第一像担持体(i)上でのトナーの飛散が発生こともないため、これらのいずれも考慮することなくその転写部(i)における適切な電位差(ΔVi)を決定する。▲2▼の場合には、逆転写が発生することはないがトナーの飛散が発生することはありえるので、トナーの飛散の防止のみを考慮して適切な電位差(ΔVi)を決定する。▲3▼の場合には、逆に、トナーの飛散が発生することはないが逆転写が発生することはありえるので、逆転写の防止のみを考慮して適切な電位差(ΔVi)を決定する。▲4▼の場合には、逆転写が発生もトナーの飛散の発生もありえるため、これらのいずれも考慮して適切な電位差(ΔVi)を決定する。
【0032】
ここで、これら▲1▼〜▲4▼の場合の除電量の大きさをそれぞれ除電量L(▲1▼)〜除電量L(▲4▼)としてこの制御を言い換える。まず、除電量L(▲1▼)は任意である。
【0033】
次に、除電量L((3))と除電量L((4))とを比較すると、除電量L((3))>除電量L((4))である。すなわち、本発明はに記載の画像形成装置を前提として、一の画像形成部よりも上流側の他の画像形成部が作像する際における当該一の画像形成部の除電手段の除電量は、当該一の画像形成部が作像しない場合には、当該一の画像形成部が作像する場合よりも高く制御されるものである(請求項)。
【0034】
さらに、除電量L((2))と除電量L((4))とを比較すると、除電量L((2))<除電量L((4))である。すなわち、本発明は請求項に記載の画像形成装置を前提として、一の画像形成部が作像する際におけるその除電手段の除電量は、当該一の画像形成部よりも上流側の他の画像形成部が作像しない場合には、当該他の画像形成部が作像する場合よりも低く制御されるものである(請求項)。
【0035】
これらをまとめると、除電量L(▲2▼)<除電量L(▲4▼)<除電量L(▲3▼)である。
【0036】
ところで、上述のように第一像担持体上でトナーの飛散が発生する原因は、除電後の背景部分の電位が、画像部分の電位よりも高くなってしまうためであると考えられる。ここで本発明者らは後述する実験により、第一像担持体上の背景部分の表面電位をVb、画像部分の表面電位をViとして、(|Vi|−|Vb|)の値が150〔V〕より高ければトナーの発散が発生することを確認した。したがって、除電量L(▲2▼)、除電量L(▲4▼)はいずれも(|Vi|−|Vb|)の値が150〔V〕以下、より好ましくは100〔V〕以下となるように設定することが望ましい。
【0037】
次に、各転写部(1、2、…、N)における第ニ像担持体の表面電位(VB1、VB2、…、VBN)を変更することにより各転写部各転写部(1、2、…、N)における電位差(ΔV1、ΔV2、…、ΔVN)を制御する方法としては、各転写手段(1、2、…、N)の転写バイアスを制御する方法がある。すなわち本発明は、請求項1又は2に記載の画像形成装置を前提とし、上記制御手段は、各転写手段の転写バイアスを制御するものである(請求項)。
【0038】
図5は、この発明の概念を説明するものである。上述のように、一般に、各電位差(ΔV1、ΔV2、…、ΔVN)が小さい方が、逆転写は発生しにくくなる。一方、転写バイアスを制御することにより各転写部(1、2、…、N)における第二像担持体の表面電位(VB1、VB2、…、VBN)を変更して各電位差(ΔV1、ΔV2、…、ΔVN)を必要以上に小さくすると(図2参照)、(一次)転写不良による画像欠陥が発生してしまうおそれがある。
【0039】
すなわち、転写バイアスを制御することにより逆転写の発生を防止する本発明では、逆転写の発生の防止と(一次)転写不良の防止とを両立させることが重要である。
【0040】
【表3】
Figure 0003896738
表3は、ある画像形成部(i)の適切な電位差(ΔVi)を決定する際の判断基準をまとめたものである。ここでは作像状況の一例として、表1、表2と同様にその画像形成部の作像の有無と、より上流の画像形成部の作像の有無とに基づいて判断している。このような作像状況を考えると、ある画像形成部(i)の適切な電位差(ΔVi)を決定する際の判断基準は上述の▲1▼〜▲4▼の4種類の場合に分類することができる。
【0041】
▲1▼の場合には、第二像担持体から第一像担持体(i)への逆転写が発生することも第一像担持体(i)上での(一次)転写不良が発生こともないため、これらのいずれも考慮することなくその転写部(i)における適切な電位差(ΔVi)を決定する。▲2▼の場合には、逆転写が発生することはないが(一次)転写不良が発生することはありえるので、(一次)転写不良の防止のみを考慮して適切な電位差(ΔVi)を決定する。▲3▼の場合には、逆に、(一次)転写不良が発生することはないが逆転写が発生することはありえるので、逆転写の防止のみを考慮して適切な電位差(ΔVi)を決定する。▲4▼の場合には、逆転写が発生も(一次)転写不良の発生もありえるため、これらのいずれも考慮して適切な電位差(ΔVi)を決定する。
【0042】
ここで、これら▲1▼〜▲4▼の場合の転写バイアスの大きさをそれぞれ転写バイアスI(▲1▼)〜転写バイアスI(▲4▼)としてこの制御を言い換える。まず、転写バイアスI(▲1▼)は任意である。
【0043】
次に、転写バイアスI((3))と転写バイアスI((4))とを比較すると、転写バイアスI((3))<転写バイアスI((4))である。すなわち、本発明は請求項に記載の画像形成装置を前提として、一の画像形成部よりも上流側の他の画像形成部が作像する際における当該一の画像形成部の転写手段の転写バイアスは、当該一の画像形成部が作像しない場合には、当該一の画像形成部が作像する場合よりも低く制御されるものである(請求項)。
【0044】
さらに、転写バイアスI(▲2▼)と転写バイアスI(▲4▼)とを比較すると、転写バイアスI(▲2▼)> 転写バイアスI(▲4▼)である。これらをまとめると、転写バイアスI(▲3▼)<転写バイアスI(▲4▼)<転写バイアスI(▲2▼)である。
【0045】
これらの発明において、第一像担持体は感光体であっても誘電体であっても良い。第二像担持体は中間転写体であってもシート搬送体であってもよい。さらに、これらの第一及び第二像担持体の形状は、ドラム状のものであってもよいし、複数のロールにより張架される無端ベルト状のものでもよい。また除電手段は、例えばコロトロン帯電器トナーに交流電圧を印加するものであってもよいが、帯電量変化やオゾンなどの放電生成物の発生がないことから、光除電装置を採用することが好ましい。
【0046】
【発明の実施による態様】
以下、添付図面に基づいて本発明の画像形成装置を詳細に説明する。
【0047】
図6は本発明が適用されたカラーレーザビームプリンタ(画像形成装置)の構成を示す概略図である。このレーザビームプリンタはブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色毎にトナー像を形成する4基のプロセスユニット(画像形成部)10Bk、10Y、10M、10Cを備えると共に、各プロセスユニットからトナー像が一次転写される中間転写ベルト(第二像担持体)20を備え、かかる中間転写ベルト20に多重転写されたトナー像を記録シートPに二次転写してフルカラー画像を形成するように構成されている。
【0048】
上記中間転写ベルト20は無端状に形成されると共に一対のベルト搬送ロール21, 22にかけ回されており、矢線方向に回動しながら各色プロセスユニット10Bk、10Y、10M、10Cで形成されたトナー像の一次転写を受けるように構成されている。なお、この中間転写ベルト20の材質はポリイミドであり、カーボンブラックを適当量含有させることで導電性を付与しており、その体積抵抗率は約1010〔Ω・cm〕である。そのサイズは、最大プリント画像サイズよりも大きいことが必要で、かつその周長は各色トナー像の色ずれを防止する観点からは感光体ドラム11の周長の整数倍であることが望ましく、本実施例では幅320〔mm〕、周長471〔mm〕(感光体ドラム11周長の5倍)である。
【0049】
また、中間転写ベルト20を挟んで一方のベルト搬送ロール21と対向する位置には二次転写ロール30が配設されており、記録シートPは互いに圧接する転写ロール30と中間転写ベルト20との間に挿通されて、かかる中間転写ベルト20からトナー像の二次転写を受けるようになっている。すなわち、上記ベルト搬送ロール21は転写ロール30のパックアップロールとして機能している。なお、このベルト搬送ロール21には転写バイアスとして、−2.3〔kV〕の定電圧が印加されている。
【0050】
一方、反対側に位置するベルト搬送ロール22と対向する位置には中間転写ベルト30のクリーナ23が配設され、二次転写後に中間転写ベルト20に残留付着したトナーを該中間転写ベルト20上から除去するように構成されている。
【0051】
この中間転写ベルト20の下側には前述した4基のプロセスユニット10Bk、10Y、10M、10Cが並列的に配設されており、各色の画情報に応じて形成したトナー像を中間転写ベルト20に一次転写するようになっている。これら4基のプロセスユニットは中間転写ベルト20の回動方向に沿ってブラック10Bk、イエロー10Y、マゼンタ10M及びシアン10Cの順に配設されている。
【0052】
また、これらプロセスユニット10Bk、10Y、10M、10Cの下方には、各プロセスユニットに具備された感光体ドラム11を画情報に応じて露光するラスタ走査ユニット(画像形成手段)40が配設されている。このラスタ走査ユニット40は全てのプロセスユニット10Bk、10Y、10M、10Cに共用されており、各色の画情報に応じて変調されたレーザ光Bmを発する4基の半導体レーザ(図示せず)と、高速回転してこれら4本のレーザ光Bmを感光体ドラム11の軸方向に沿って走査する1基のポリゴンミラー41とを備えている。
【0053】
そして、ポリゴンミラー41によって走査された各レーザ光Bmはミラー(図示せず)によって反射されながら所定の経路を進んだ後、ラスタ走査ユニット40の上部に設けられた走査窓42を通して各プロセスユニット10Y、10M、10C、10Bkの感光体ドラム11を露光するようになっている。なお、この例ではレーザ光Bmにより感光体ドラム11表面の電位を−700〔V〕から−300〔V〕に変更する。
【0054】
図7はプロセスユニット10の構成を示す概略図である。各プロセスユニット10Bk、10Y、10M、10Cは、感光体ドラム(第一像担持体)11と、この感光体ドラム11を一様な背景部電位にまで帯電させる帯電ロール(画像形成手段)12と、上記レーザ光Bmの露光によって感光体ドラム11上に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する(画像形成手段)現像装置13と、トナー像を記録シートPに転写した後の感光体ドラム11の表面から残留トナーや紙粉を除去するクリーナ14を備えており、感光体ドラム11上に各色の画情報に応じたトナー像を形成し得るように構成されている。
【0055】
感光体ドラム11は金属の肉薄の円筒形ドラム上に有機感光層が形成されているものであり、そのドラム径は30〔mm〕である。帯電ロール12は金属シャフトに導電性の発泡ゴムを被覆して構成されており、感光ドラム11表面を均一に−700〔V〕に帯電させる。なお、帯電ロール12のほかにもスコロトロン帯電器やピンスコロトロン帯電器などを使用してもよい。各現像装置13はそれぞれブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色のトナーと、磁性体を半導電性材料コートしてなるキャリアとが混合されたものが充填されている。これらトナーとキャリアとが摩擦されることでトナーをマイナス極性に帯電させる。
【0056】
各プロセスユニット10Bk、10Y、10M、10Cの感光体ドラム11と対向する位置には、中間転写ベルト20を挟むようにして一次転写ロール(転写手段)15Bk、15Y、15M、15Cが配設されており、これら転写ロール15Bk、15Y、15M、15Cに対して所定(ここでは30〔μA〕の定電流)の転写バイアス電流を印加することにより、感光体ドラム11と転写ロール15Bk、15Y、15M、15Cとの間に電界が形成され、感光体ドラム11上で電荷を帯びているトナー像がクーロン力で中間転写ベルト20に転写されるようになっている。なお、この各一次転写ロール15Bk、15Y、15M、15Cはいずれも金属シャフトに導電性発泡ゴムが被覆されて構成されている。
【0057】
そして感光体ドラム11の回転方向、現像装置13よりも下流側かつ転写ロール15との対峙位置よりも上流側には、感光体ドラム11表面を除電する除電ランプ(除電手段)16が設けられている。この除電ランプ16は、赤色LEDアレイを複数個並列させたものであり、後述するように印加される電圧によりその光量が制御されたり、オンオフ制御なされる。
【0058】
一方、記録シートPはプリンタ筐体1の下部に収納される給紙カセット2からプリンタの内部、具体的には中間転写ベルト20と二次転写ロール30とが接する二次転写位置へ供給される。上記給紙カセット2はプリンタ筐体のフロント側(図1の紙面右側)からプリンタ筐体1の下部に押し込んでセットするように構成されており、セットされた給紙カセット2の上部には該カセット2内に収容された記録シートPを引き出すためのピックアップロール24及び給紙ロール251が並設されている。また、給紙ロール25と対向する位置には記録シートPの重送を防止するリタードロール26が配設されている。
【0059】
プリンタの内部における記録シートPの搬送経路27はプリンタ筐体1の背面に沿って略垂直に設けられており、プリンタ筐体1の底部に位置する給紙カセット2から引き出された記録シートPはこのシート搬送経路27を上昇し、前述の二次転写位置においてトナー像の転写を受けた後、かかる二次転写位置の真上に設けられた定着器3へと送られる。そして、定着器3によってトナー像の定着がなされた記録シートPは排出ロール28を経て、プリンタ筐体1の上部に設けられた排紙トレイ1aにフェイスダウン状態で排出される。尚、図6中において、符号29は二次転写位置に対する記録シートPの突入タイミングを制御するレジストレーションロールである。
【0060】
そして、このように構成されたカラーレーザビームプリンタによるフルカラー画像の形成に当たっては、先ず、各色の画情報に応じてラスタ走査ユニット40が各プロセスユニット10Bk、10Y、10M、10Cの感光体ドラム11を所定のタイミングで露光し、これによって各プロセスユニット10Bk、10Y、10M、10Cの感光体ドラム11上には画情報に応じたトナー像が形成される。
【0061】
各プロセスユニット10Bk、10Y、10M、10Cで形成されたトナー像は回動する中間転写ベルト20に対して順次転写され、かかる中間転写ベルト20上には各色トナー像が重なり合った多重トナー像が形成される。
【0062】
一方、記録シートPは所定のタイミングで給紙カセット2から送り出され、中間転写ベルト20上に一次転写されたトナー像が二次転写位置に達するタイミングを見計らって、二次転写ロール30と中間転写ベルト20との間に挿通される。これにより、中間転写ベルト20上の多重トナー像は記録シートPに二次転写される。そして、二次転写がなされた記録シートPは定着器3によってトナー像の定着がなされ、これによって記録シートP上にフルカラー画像が完成する。
【0063】
ところで、本発明は各プロセスユニット10Bk、10Y、10M、10Cの作像状況に基づいて各感光体ドラム11と中間転写ベルト20との転写部における電位差を制御するものであるが、以下、各プロセスユニット10Bk、10Y、10M、10Cの除電ランプ16の除電量を制御することによりその電位差を制御するものを実施例1、除電ランプ16の除電量の他に各プロセスユニット10Bk、10Y、10M、10Cの一次転写ロール15への転写バイアスをも制御することによりその電位差を制御するものを実施例2とし、それぞれ実験例を交えながら説明する。
【0064】
◎実施例1
図8は、実施例1に係る画像形成装置の除電量制御系をブロック図を用いて説明するものである。同図において、符号16Bk、Y、M、Cは上述のようにそれぞれ各プロセスユニット10Bk、10Y、10M、10Cの除電ランプである。そして、これら各除電ランプ16Bk、Y、M、Cにはそれぞれ電源装置を備えた電圧制御部91(制御手段)Bk、Y、M、Cが接続されており、所定電圧が印加されている。さらにこの電圧制御部91Bk、Y、M、Cにはそれらが各除電ランプ16Bk、Y、M、Cに印加する電圧値を制御する制御部(制御手段)90が設けられている。制御部90はこの画像形成装置の主制御装置(制御手段)9から各プロセスユニット10Bk、10Y、10M、10Cの作像状況を受信し、その作像状況に基づいて各除電ランプ16Bk、Y、M、Cに印加する電圧値を決定している。
【0065】
【表4】
Figure 0003896738
表4は、あるプロセスユニット10(i)の除電ランプ16(i)に印加する電圧値をまとめたものである。この実施例では作像状況として、そのプロセスユニット10(i)の作像の有無と、より上流のプロセスユニット10(i−1、…、1)の作像の有無とに基づいて印加する電圧値を決定している。以下、これらの作像条件による場合わけとその際の印加する電圧値を説明する。
【0066】
▲1▼プロセスユニット10(i)の上流側のプロセスユニット10(i−1、…、1)ではまったく作像を行なっていない場合であって、プロセスユニット10(i)でも作像を行なっていない場合、中間転写ベルト20から感光体ドラム11(i)への逆転写が発生することも感光体ドラム11(i)上での画像欠陥が発生こともないため、これらのいずれも考慮することなく除電ランプ16(i)への印加電圧を決定することができ、この実施例では0〔V〕とする。
【0067】
▲2▼プロセスユニット10(i)の上流側のプロセスユニット10(i−1、…、1)ではまったく作像を行なっていない場合であって、プロセスユニット10(i)は作像を行なっている場合、逆転写が発生することはないが画像欠陥が発生することはありえるので、画像欠陥の防止のみを考慮して適切な除電ランプ16(i)への印加電圧を決定する。この実施例では0〔V〕とする。
【0068】
▲3▼プロセスユニット10(i)の上流側のプロセスユニット10(i−1、…、1)で作像を行なっている場合であって、プロセスユニット10(i)は作像を行なっていない場合、画像欠陥が発生することはないが逆転写が発生することはありえるので、逆転写の防止のみを考慮して適切な除電ランプ16(i)への印加電圧を決定する。この実施例では除電ランプ16の最大許容電圧である30〔V〕である。
【0069】
▲4▼プロセスユニット10(i)の上流側のプロセスユニット10(i−1、…、1)で作像を行なっている場合であって、プロセスユニット10(i)でも作像を行なってる場合、逆転写が発生も画像欠陥の発生もありえるため、これらのいずれも考慮して適切な除電ランプ16(i)への印加電圧を決定する。この実施例では12〔V〕である。
【0070】
【表5】
Figure 0003896738
表5は、表4で示した作像状況とその際の印加電圧との関係を、より具体的に説明するものであり、具体的な画像形成条件(黒画像出力、赤画像出力、フルカラー+黒出力)において各プロセスユニット10Bk、10Y、10M、10Cの除電ランプ16Bk、Y、M、Cに印加する電圧値をまとめたものである。以下、これら具体的な画像形成条件と印加する電圧値について説明する。
【0071】
最初に、この画像形成装置により黒画像出力を行う場合を説明する。この場合、作像するプロセスユニットは10Bkのみである。それを示す信号を主制御装置9から受信した制御部90は、除電ランプ16Bkが上述の場合▲2▼に該当すると判断し、0〔V〕の電圧を印加するように電圧制御部91Bkに命令する。その制御命令を受けた電圧制御部91Bkは、除電ランプ16Bkに0〔V〕の電圧を印加する(電圧を印加しない)。
【0072】
一方、制御部90は、除電ランプ16Y、M、Cは上述の場合▲3▼に該当すると判断し、30〔V〕の電圧を印加するように電圧制御部91Y、M、Cに命令する。その制御命令を受けた電圧制御部91Y、M、Cは、除電ランプ16Y、M、Cに30〔V〕の電圧を印加する。
【0073】
次に、この画像形成装置により赤画像出力を行う場合を説明する。この場合、作像するプロセスユニットは10Y、10Mの二つである。それを示す信号を主制御装置9から受信した制御部90は、除電ランプ16Bkが上述の場合▲1▼に該当すると判断し、0〔V〕の電圧を印加するように電圧制御部91Bkに命令する。その制御命令を受けた電圧制御部91Bkは、除電ランプ16Bkに0〔V〕の電圧を印加する(電圧を印加しない)。
【0074】
同様に制御部90は、除電ランプ16Yは上述の場合▲2▼に該当すると判断し、0〔V〕の電圧を印加するように電圧制御部91Yに命令する。その制御命令を受けた電圧制御部91Yは、除電ランプ16Yに0〔V〕の電圧を印加する(電圧を印加しない)。同様に制御部90は、除電ランプ16Mは上述の場合▲4▼に該当すると判断し、12〔V〕の電圧を印加するように電圧制御部91Mに命令する。その制御命令を受けた電圧制御部91Mは、除電ランプ16Mに12〔V〕の電圧を印加する。同様に制御部90は、除電ランプ16Cは上述の場合▲3▼に該当すると判断し、30〔V〕の電圧を印加するように電圧制御部91Cに命令する。その制御命令を受けた電圧制御部91Cは、除電ランプ16Cに30〔V〕の電圧を印加する。
【0075】
最後に、この画像形成装置によりフルカラー+黒画像出力を行う場合を説明する。この場合、すべてもプロセスユニット10Bk、10Y、10M、10Cが作像する。それを示す信号を主制御装置9から受信した制御部90は、除電ランプ16Bkが上述の場合▲2▼に該当すると判断し、0〔V〕の電圧を印加するように電圧制御部91Bkに命令する。その制御命令を受けた電圧制御部91Bkは、除電ランプ16Bkに0〔V〕の電圧を印加する(電圧を印加しない)。
【0076】
一方、制御部90は、除電ランプ16Y、M、Cは上述の場合▲4▼に該当すると判断し、12〔V〕の電圧を印加するように電圧制御部91Y、M、Cに命令する。その制御命令を受けた電圧制御部91Y、M、Cは、除電ランプ16Y、M、Cに12〔V〕の電圧を印加する。
【0077】
このように除電量の制御を行なうことで、感光体ドラム11のクリーナ14、中間転写ベルト20のクリーナ23に回収された廃トナーの量は、除電ランプ16Bk、Y、M、Cを設けない場合に比べて、各画像形成モードで平均し、同一画像形成枚数時において約35%減少した。
【0078】
なお、本実施例では結果的にブラックに対応するプロセスユニット10Bk内の除電ランプ16Bkには電圧が印加されることがないため、この除電ランプ16Bkは特に設けなくてもよい。
【0079】
ところで、この実施例1に係る画像形成装置を完成するために、本発明者らは数々の実験を行なってきたが、ここではその一部として、感光体ドラム11への逆転写の発生率と感光体ドラム11の表面電位との関係を確認するための実験を実験例1として、感光体ドラム11上でのトナーの飛散り現象の発生と感光体ドラム11の表面電位の電位差|Vi|−|Vb|(Vb:背景部分の表面電位、Vi:画像部分の表面電位)との関係を確認するための実験を実験例2として説明する。
【0080】
○実験例1
感光体ドラム11への逆転写の発生率と感光体ドラム11の表面電位との関係を確認するため、感光体ドラム11の表面電位を変更しつつ、その際の逆転写トナーの発生率を記録した。ここで、感光体ドラム11の表面電位の変更はは除電ランプ16への印加電圧を変更して、その光量を変更することにより行なった。その電位は、高電圧フィードバック型振動容量型表面電位計を除電ランプ16と一次転写部との間に設置して測定し、一次転写部直前の感光体ドラムの表面電位の値を得た。逆転写率は、中間転写ベルト20上に静電転写した画像密度0.4〔mg/cm2〕のトナー画像密度が、下流側の一次転写部を通過した際に逆転写したトナーの割合を百分率で示した。なお、一次転写ロール15には30〔μA〕の定電流転写バイアスを印加した。
【0081】
図9は、この実験をまとめたものであり、縦軸に逆転写率を、横軸に感光体ドラム11の表面電位をそれぞれ示したグラフである。同図が示すように、逆転写は、感光体ドラム11の表面電位が0〔V〕に近づくにつれて徐々に減少し、逆転写を防止する観点からは感光体ドラム11の表面電位は高いほうが好ましいことが分かる。ここで、除電ランプ16による除電をまったく行なっていない場合には、感光体ドラム11の表面電位は−700〔V〕であり、その際の逆転写率は5.4%であった。一方、除電ランプ16へその最大許容電圧である30〔V〕の電圧を印可した場合には、感光体ドラム11の表面電位は−50〔V〕であり、その際の逆転写率は1.2%であった。
【0082】
○実験例2
感光体ドラム11上でのトナーの飛散り現象の発生と感光体ドラム11の表面電位の電位差|Vi|−|Vb|(Vb:背景部分の表面電位、Vi:画像部分の表面電位)との関係を確認するため、その電位差|Vi|−|Vb|を変更しながら飛散り現象を顕微鏡により確認した。その電位は、高電圧フィードバック型振動容量型表面電位計を除電ランプ16と一次転写部との間に設置して測定し、一次転写部直前の感光体ドラムの表面電位の値を得た。画像部分には2×2〔cm〕の正方形のトナー像(インプットカバレッジ100%)を形成した。なお、電位差|Vi|−|Vb|の変更は、光量を変更しながら除電ランプ16で感光体ドラム11の表面を除電することにより行なった。飛散り現象の確認は、線幅300〔μm〕の細線を感光体ドラム11上に現像し、飛散りが発生しているかいないかを2段階で評価した。
【0083】
【表6】
Figure 0003896738
表6は、この実験の結果をまとめたものである。除電ランプ16での除電を行なわない場合には、感光体ドラム11の背景部分の表面電位Vbは−700〔V〕、画像部分の表面電位Viは(トナー濃度にもよるが)現像量0.45〔mg/cm2〕で−524〔V〕となり、|Vi|−|Vb|=−176〔V〕であった。この際、飛散り現象は確認されなかった。除電ランプ16の印加電圧を徐々に上げると、背景部分は遮蔽物(トナー)がないため画像部分よりもより多く除電され、その表面電位の差が縮まり(|Vi|−|Vb|が増加し)、その後正負が逆転する(|Vi|−|Vb|がプラスになる)。そして、|Vi|−|Vb|の値が97〔V〕から147〔V〕になる間で、飛散り現象が発生するようになる。なお、|Vi|−|Vb|の値が97〔V〕の際の除電ランプ16への印加電圧は12〔V〕であった。
【0084】
よって、作像されるプロセスユニット10の感光体ドラム11表面の電位差|Vi|−|Vb|は、およそ150〔V〕以下、より好ましくは100〔V〕以下に設定することが好ましい。また、作像されるプロセスユニット10の除電ランプ16への印加電圧は12〔V〕以下であることが好ましい。
【0085】
なお、図10は感光体ドラム11上に現像された線幅300〔μm〕の細線を示すものであり、図10(a)は飛散りが発生していない状態を、図10(b)は飛散りが発生している状態をそれぞれ示している。
【0086】
◎実施例2
図11は、実施例2に係る画像形成装置の除電量制御系をブロック図を用いて説明するものである。以下、実施例1に係るものと同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。図11において、符号15Bk、Y、M、Cは上述のようにそれぞれ各プロセスユニット10Bk、10Y、10M、10Cの一次転写ロールである。そして、これら各一次転写ロール15Bk、Y、M、Cにはそれぞれ電源装置を備えたバイアス電流制御部(制御手段)92Bk、Y、M、Cが接続されており、変更可能なバイアス電流が印加されている。さらにこのバイアス電流制御部92Bk、Y、M、Cにはそれらが各一次転写ロール15Bk、Y、M、Cに印加する電流値を制御する制御部90が設けられている。制御部90はこの画像形成装置の主制御装置9から各プロセスユニット10Bk、10Y、10M、10Cの作像状況を受信し、その作像状況に基づいて各一次転写ロール15Bk、Y、M、Cに印加する電圧値を決定している。
【0087】
【表7】
Figure 0003896738
表7は、あるプロセスユニット10(i)の一次転写ロール15(i)に印加する電流値をまとめたものである。この実施例では作像状況として、そのプロセスユニット10(i)の作像の有無と、より上流のプロセスユニット10(i−1、…、1)の作像の有無とに基づいて印加する電流値を決定している。以下、これらの作像条件による場合わけとその際の印加する電流値を説明する。
【0088】
▲1▼プロセスユニット10(i)の上流側のプロセスユニット10(i−1、…、1)ではまったく作像を行なっていない場合であって、プロセスユニット10(i)でも作像を行なっていない場合、中間転写ベルト20から感光体ドラム11(i)への逆転写が発生することも感光体ドラム11(i)上での画像欠陥が発生こともないため、これらのいずれも考慮することなく一次転写ロール15(i)への印加電流を決定することができ、この実施例では30〔μA〕とする。
【0089】
▲2▼プロセスユニット10(i)の上流側のプロセスユニット10(i−1、…、1)ではまったく作像を行なっていない場合であって、プロセスユニット10(i)は作像を行なっている場合、逆転写が発生することはないが画像欠陥が発生することはありえるので、画像欠陥の防止のみを考慮して適切な一次転写ロール15(i)への印加電流を決定する。この実施例では30〔μA〕とする。
【0090】
▲3▼プロセスユニット10(i)の上流側のプロセスユニット10(i−1、…、1)で作像を行なっている場合であって、プロセスユニット10(i)は作像を行なっていない場合、画像欠陥が発生することはないが逆転写が発生することはありえるので、逆転写の防止のみを考慮して適切な一次転写ロール15(i)への印加電流を決定する。この実施例では10〔μA〕である。
【0091】
▲4▼プロセスユニット10(i)の上流側のプロセスユニット10(i−1、…、1)で作像を行なっている場合であって、プロセスユニット10(i)でも作像を行なってる場合、逆転写が発生も画像欠陥の発生もありえるため、これらのいずれも考慮して適切な一次転写ロール15(i)への印加電流を決定する。この実施例では20〔μA〕である。
【0092】
【表8】
Figure 0003896738
表8は、表7で示した作像状況とその際の印加電流との関係を、より具体的に説明するものであり、具体的な画像形成条件(黒画像出力、赤画像出力、フルカラー+黒出力)において各プロセスユニット10Bk、10Y、10M、10Cの一次転写ロール15Bk、Y、M、Cに印加する電流値をまとめたものである。以下、これら具体的な画像形成条件と印加する電流値について説明する。
【0093】
最初に、この画像形成装置により黒画像出力を行う場合を説明する。この場合、作像するプロセスユニットは10Bkのみである。それを示す信号を主制御装置9から受信した制御部90は、一次転写ロール15Bkが上述の場合▲2▼に該当すると判断し、30〔μA〕の電流を印加するようにバイアス電流制御部92Bkに命令する。その制御命令を受けたバイアス電流制御部92Bkは、一次転写ロール15Bkに30〔μA〕の電流を印加する。
【0094】
一方、制御部90は、一次転写ロール15Y、M、Cは上述の場合▲3▼に該当すると判断し、10〔μA〕の電流を印加するようにバイアス電流制御部92Y、M、Cに命令する。その制御命令を受けたバイアス電流制御部92Y、M、Cは、一次転写ロール15Y、M、Cに10〔μA〕の電流を印加する。
【0095】
次に、この画像形成装置により赤画像出力を行う場合を説明する。この場合、作像するプロセスユニットは10Y、10Mの二つである。それを示す信号を主制御装置9から受信した制御部90は、一次転写ロール15Bkが上述の場合▲1▼に該当すると判断し、30〔μA〕の電流を印加するようにバイアス電流制御部92Bkに命令する。その制御命令を受けたバイアス電流制御部92Bkは、一次転写ロール15Bkに30〔μA〕の電流を印加する
【0096】
同様に制御部90は、一次転写ロール15Yは上述の場合▲2▼に該当すると判断し、30〔μA〕の電流を印加するようにバイアス電流制御部92Yに命令する。その制御命令を受けたバイアス電流制御部92Yは、一次転写ロール15Yに30〔μA〕の電流を印加する。同様に制御部90は、一次転写ロール15Mは上述の場合▲4▼に該当すると判断し、30〔μA〕の電流を印加するようにバイアス電流制御部92Mに命令する。その制御命令を受けたバイアス電流制御部92Mは、一次転写ロール15Mに30〔μA〕の電流を印加する。同様に制御部90は、一次転写ロール15Cは上述の場合▲3▼に該当すると判断し、10〔μA〕の電流を印加するようにバイアス電流制御部92Cに命令する。その制御命令を受けたバイアス電流制御部92Cは、一次転写ロール15Cに10〔μA〕の電流を印加する。
【0097】
最後に、この画像形成装置によりフルカラー+黒画像出力を行う場合を説明する。この場合、すべてもプロセスユニット10Bk、10Y、10M、10Cが作像する。それを示す信号を主制御装置9から受信した制御部90は、一次転写ロール15Bkが上述の場合▲2▼に該当すると判断し、30〔μA〕の電流を印加するようにバイアス電流制御部92Bkに命令する。その制御命令を受けたバイアス電流制御部92Bkは、一次転写ロール15Bkに30〔μA〕の電流を印加する。
【0098】
一方、制御部90は、一次転写ロール15Y、M、Cは上述の場合▲4▼に該当すると判断し、20〔μA〕の電流を印加するようにバイアス電流制御部92Y、M、Cに命令する。その制御命令を受けたバイアス電流制御部92Y、M、Cは、一次転写ロール15Y、M、Cに20〔μA〕の電流を印加する。
【0099】
このように除電量の制御と共にバイアス電流の制御を行なうことで、特に上述の場合▲4▼においてバイアス電流を30〔μA〕から20〔μA〕へ下げたため、逆転写トナーは目視ではではほとんど確認不可能なレベルまで減少した。
【0100】
なお、本実施例では結果的にブラックに対応するプロセスユニット10Bk内の一次転写ロール15Bkのバイアス電流は変化しないため、バイアス電流制御部92Bkは特に設けなくてもよい。
【0101】
○実験例3
本実施例では、転写バイアスI(▲2▼)(=30〔μA〕)> 転写バイアスI(▲4▼)(=20〔μA〕)としているが、これは次のような実験結果に基づくものである。この実験では、上述の▲2▼の場合と▲4▼の場合において、それぞれ転写バイアス電流値を変化させ、一次転写後に感光体ドラム11上に残存するトナーの量を計測した。
【0102】
ここで、▲2▼の場合とは、画像形成部(i)の上流側の画像形成部(i−1、…、1)ではまったく作像を行なっていない場合であって、画像形成部(i)は作像を行なっている場合であるため、一次転写後に感光体ドラム11上に残存するトナーの量は未転写トナーのみの量である。一方、▲4▼の場合とは、画像形成部(i)の上流側の画像形成部(i−1、…、1)で作像を行なっている場合であって、画像形成部(i)でも作像を行なってる場合、一次転写後に感光体ドラム11上に残存するトナーの量は未転写トナーの量と逆転写されたトナーの量との総和である。
【0103】
図12は、この実験結果をまとめたものである。同図のグラフにおいて、横軸は印加される転写バイアス電流を、縦軸は一次転写後に感光体ドラム11上に残存するトナーの量をそれぞれ示している。そして、▲4▼の場合は同図中、四角点を通る折れ線グラフとして表され、▲2▼の場合は同図中、丸点を通る折れ線グラフとして表される。この折れ線グラフから明らかなように、▲2▼の場合の折れ線グラフは単調減少である一方、▲4▼の場合の折れ線グラフは転写バイアス電流が20〔μA〕の時に最小値を採る略V字状となっている。
【0104】
したがって、本実施例では、一次転写後に感光体ドラム11上に残存し、最終的にクリーナ14により除去される(無駄になる)トナーの量を少なくする観点から、転写バイアスI(▲2▼)=30〔μA〕、転写バイアスI(▲4▼)=20〔μA〕としている。
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、逆転写の低減と画像欠陥の防止とを両立することができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、請求項1に係る発明の概念を説明するものである。
【図2】図2は、第一像担持体と第二像担持体との電位差とその変更方法とを説明するものである。
【図3】図3は、請求項2に係る発明の概念を説明するものである。
【図4】図4は、除電により飛散り現象が発生するメカニズムを説明するものである。
【図5】図5は、請求項5に係る発明の概念を説明するものである。
【図6】図6は、実施態様に係る画像形成装置の断面概略図である。
【図7】図7は、実施態様に係る画像形成装置のプロセスユニットの断面概略図である。
【図8】図8は、実施例1に係る画像形成装置の除電量制御系をブロック図により説明するものである。
【図9】図9は、感光体ドラムの表面電位と逆転写との関係を示すグラフである。
【図10】図10は、飛散り現象を説明するものである。
【図11】図11は、実施例2に係る画像形成装置の除電量及びバイアス電流制御系をブロック図により説明するものである。
【図12】図12は、一次転写バイアス電流と未転写トナー量及び逆転写トナー量との関係を示すグラフである。
【図13】図13は、従来の画像形成装置を説明するものである。
【符号の説明】
1…画像形成装置、10…プロセスユニット、11…感光体ドラム、15…一次転写ロール、16…除電ランプ、20…中間転写ベルト、90…制御部、91…電圧制御部、92…バイアス電流制御部

Claims (4)

  1. 回転駆動される第二像担持体と、その第二像担持体の移動方向の上流側から下流側にかけて配設される複数の画像形成部とを備え、各画像形成部は回転駆動される第一像担持体と、その第一像担持体の表面にトナー画像を形成する画像形成手段と、そのトナー画像を第一像担持体の表面から第二像担持体へ転写させる転写手段を備える画像形成装置において、
    各画像形成部の作像の有無に応じて各第一像担持体と第二像担持体との転写部における電位差を制御する制御手段を有し、
    上記画像形成装置の少なくとも最上流側以外の画像形成部は、画像形成後かつ転写前の第一像担持体表面を除電する除電手段を備え、
    上記制御手段は、各除電手段の除電量を制御し、
    一の画像形成部よりも上流側の他の画像形成部が作像する際における当該一の画像形成部の除電手段の除電量は、当該一の画像形成部が作像しない場合には、当該一の画像形成部が作像する場合よりも高く制御されることを特徴とする画像形成装置。
  2. 一の画像形成部が作像する際におけるその除電手段の除電量は、当該一の画像形成部よりも上流側の他の全ての画像形成部が作像しない場合には、当該他の画像形成部が作像する場合よりも低く制御される請求項に記載の画像形成装置。
  3. 上記制御手段は、各転写手段の転写バイアスを制御する請求項1又は2に記載の画像形成装置。
  4. 一の画像形成部よりも上流側の他の画像形成部が作像する際における当該一の画像形成部の転写手段の転写バイアスは、当該一の画像形成部が作像しない場合には、当該一の画像形成部が作像する場合よりも低く制御される請求項に記載の画像形成装置。
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