JP3896608B2 - 新規蛋白質およびそれをコードするdna並びに該蛋白質の産生方法 - Google Patents

新規蛋白質およびそれをコードするdna並びに該蛋白質の産生方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な蛋白質およびそれをコードするDNAに関し、詳細には肝細胞増殖因子活性化因子(HGF活性化因子)のプロテアーゼ活性を阻害する活性を有する新規な蛋白質(以下、本蛋白質を「HAI−I」と称することもある)およびそれをコードする遺伝子、該遺伝子を含有してなる発現ベクター、該発現ベクターで形質転換された形質転換体、該形質転換体を用いたHAI−Iの産生方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
HGF活性化因子(特開平5-103670号、同6-141859号、同6-153946号、および同6-153966号各号公報参照;肝細胞増殖因子(HGF)を一本鎖から二本鎖へ変換する活性を有する因子)の正の活性制御としてその前駆体の活性化をトロンビンが担うことが既に報告されていたが、負の制御因子としてその生理活性を阻害する生体由来のプロテアーゼインヒビターは知られていなかった。そのため、HGF活性化因子が生体内でどのように制御されているかは不明であった。また、HGF活性化因子が作用する肝細胞増殖因子(HGF)の活性をも間接的に影響を及ぼす可能性があり、HGFのin vivoでの作用機構解析のためにも生体由来のプロテアーゼインヒビターの単離、同定が求められていた。
【0003】
このプロテアーゼインヒビター、並びにプロテアーゼインヒビターに対する抗体を用いることでHGF活性化因子のin vivoでの生理作用とその作用解析や、HGFの活性化の制御機構の解析等を従来と異なる面から行うことが可能となる。
【0004】
さらに、HAI−Iの生体における詳細な機能、あるいは肝障害時におけるHAI−Iの働き等を調べるためには多量のHAI−Iを必要とする。しかしながら、現在に至るまでHAI−Iを取得する方法としては、MKN45細胞、A549細胞等のヒト癌細胞株の培養上清を材料として、その中に微量に存在するHAI−Iを精製するしかなかった。この方法は、人的、時間的、価格的に必ずしも最良の方法ではなく、また、微量なHAI−Iのみを安定に取り出すことは困難を極める。そこで、HAI−Iの安定かつ大量取得のために、発現系の構築が望まれていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは、肝細胞増殖因子活性化因子のプロテアーゼ活性を阻害する活性を指標に種々の培養細胞株をスクリーニングし、ヒト癌細胞株(MKN45細胞、A549細胞等の上皮様細胞株)の培養上清中にその活性を持つ物質が存在することを見い出した。さらに、その阻害活性の本体を明らかにすべく、MKN45細胞の培養上清から種々のカラムクロマトグラフィーを用いてその精製を試みた。その結果、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)による分子量が約40,000ダルトン付近の新規の蛋白質を見い出し、これをプロテインシークエンサーで分析することにより、この蛋白質のアミノ末端アミノ酸配列を得た。またこの蛋白質を蛋白質分解酵素で分解し生成するペプチドを分離した後、各ペプチドを上記と同様にしてアミノ酸配列分析することにより部分アミノ酸配列を決定した。更に、この部分アミノ酸配列からDNA 塩基配列を推定し、そのオリゴヌクレオチドをプローブとしてcDNAライブラリーからスクリーニングすることにより、本蛋白質をコードする遺伝子をクローニングすることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0006】
また、本発明者らは、この蛋白質を組換えDNA技術により安定かつ大量に取得するため種々の検討をした結果、この目的に有用な、この蛋白質をコードする発現ベクターを新たに構築し、この蛋白質の発現を可能にした。すなわち、この蛋白質の一部または全部のアミノ酸配列をコードするDNA断片を、例えば、動物細胞発現ベクターpME18S等のプラスミドベクターあるいは酵母、大腸菌等における発現ベクターのプロモーターの下流に挿入した蛋白質発現用プラスミドを作製し、該プラスミドで宿主細胞を形質転換することにより得られる形質転換体が優れたHAI−I産生能を有することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち本発明の要旨は、下記の理化学的性質
(1)SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分子量が約40,000ダルトンであり、
(2)肝細胞増殖因子活性化因子のプロテアーゼ活性を阻害する活性を有し、
(3)配列表の配列番号1〜7のいずれかに記載のアミノ酸配列またはこれと実質的に同一のアミノ酸配列を有する
蛋白質;配列表の配列番号1〜7に記載のアミノ酸配列またはこれと実質的に同一のアミノ酸配列を有し、肝細胞増殖因子活性化因子のプロテアーゼ活性を阻害する活性を有する蛋白質;配列表の配列番号8に記載のアミノ酸配列またはこれと実質的に同一のアミノ酸配列を有する蛋白質;配列表の配列番号8に記載のアミノ酸配列において36番目のグリシンから513番目のロイシンまでの配列またはこれと実質的に同一のアミノ酸配列を有する蛋白質;それらの蛋白質をコ−ドするDNAおよび遺伝子;該DNAまたは遺伝子を含有してなる発現ベクター;該発現ベクターで宿主細胞を形質転換することにより得られる形質転換体;ならびに該形質転換体を培養することによる肝細胞増殖因子活性化因子のプロテアーゼ活性を阻害する活性を有する蛋白質の産生方法に存する。
【0008】
なお、配列表の配列番号8に示す塩基配列は他の相補的な塩基配列を省略し一本鎖のみを記載した。この遺伝子より組み換えDNA技術により、例えば配列表の配列番号8に示すアミノ酸配列を有する当該蛋白質を発現することができる。この時、当該蛋白質をコードするmRNAから翻訳される蛋白質はシグナル配列を含んでいるが、細胞から分泌される場合にはシグナル配列が切断され配列表の配列番号8に示すアミノ酸配列の36番目のグリシン残基以降のアミノ酸配列を有する当該蛋白質が産生される。シグナル配列として、他の蛋白質のシグナル配列を利用することもできる。また、宿主細胞内にシグナル配列のない成熟型蛋白質を発現させる場合は、当該蛋白質をコードする遺伝子として配列表の配列番号8に示す塩基配列のうち106番目のグアニン残基から以降の塩基配列を有する遺伝子をベクターのATGコドンにつなげて使用すればよい。さらに本発明においては、HGF活性化因子のプロテアーゼ活性を阻害する活性を損なわない範囲内で、一部のアミノ酸もしくは核酸を除去、変更あるいは追加する等の改変を行ったもの、即ち「実質的に同一なアミノ酸配列」および「実質的に同一な塩基配列」を有するものも本発明に含まれる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明をさらに詳細に説明するに、本発明のプロテアーゼインヒビター活性を有する新規な蛋白質は、以下のような精製段階を経ることにより得られる。例えば、ヒト癌細胞株(MKN45細胞、A549細胞(それぞれ財団法人がん研究振興財団(Japanese Cancer Research Resources Bank)に、登録番号JCRB0254、JCRB0076として登録)等の上皮様細胞株)を無血清培地で数日培養して、その培養上清を回収して細胞を除去後、濃縮して、ヘパリン−セファロースカラム(ファルマシア社製等)に供する。その素通り画分をConA−セファロースカラム(ファルマシア社製等)に供し、吸着画分と素通り画分に分離する。吸着画分をPhenyl−5PW(東ソー社製等)等の疎水クロマトグラフィーに供する。得られた当該タンパク質を含む画分をDEAEイオン交換カラムクロマトグラフィー(ポリマーラボラトリー社製等)に供し、その後、ハイドロキシアパタイトカラム(三井東圧化学社、生化学工業社等)に供す。その後、ゲル濾過カラムクロマトグラフィー(旭化成社製GS520等)に供し、当該蛋白質を得ることができる。必要に応じて、逆相カラムクロマトグラフィー等を精製のステップに組み込むこともできる。
【0010】
精製された本発明の蛋白質はSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分子量が約40,000ダルトンで、糖鎖、アミノ酸残基の修飾、C末端側の変異の相違と思われる数本のフラグメントもしくはスメアーなバンドとして泳動する。当該蛋白質はHGF活性化因子と反応させることで、HGF活性化因子のプロテアーゼ活性を阻害する活性を有する。また、本発明の蛋白質は下記実施例2の表1に記載のアミノ酸配列を含む。
【0011】
本発明の新規蛋白質をコードする遺伝子のDNA断片は次のようにして得ることができる。上記のようにして精製した新規蛋白質を気相プロテインシーケンサー(アプライド・バイオシステムズ社製等)で分析することにより、アミノ末端アミノ酸配列を決定することができる。更に、当該蛋白質をリジルエンドペプチダーゼ(アクロモバクタープロテアーゼI等)で分解し、生成するペプチド断片を逆相高速液体クロマトグラフィー(YMC社製等)で分離した後、各ペプチド断片を上記と同様にしてアミノ酸配列分析すれば、蛋白質内部のアミノ酸配列を知ることができる。
【0012】
こうして決定したアミノ酸配列からDNA塩基配列を推定し、オリゴヌクレオチドを合成してプローブとして使用する。当該蛋白質をコードする遺伝子をスクリーニングするcDNAライブラリーとしてはヒト由来の肝臓cDNAライブラリー、脾臓cDNAライブラリー、胎盤cDNAライブラリー等(クローンテック社製等)が利用できる。その他当該蛋白質を発現している細胞株および組織材料から常法に従ってcDNAライブラリーを作成してもよい。
【0013】
このようなcDNAが組み込まれたλファージを大腸菌に感染させ(Maniatisらの方法:「モレキュラークローニング」)、これを培養する。形成されたプラークを当該蛋白質の一部のアミノ酸配列から推定される塩基配列から作成したオリゴヌクレオチドをプローブとしてプラークハイブリダイゼイション法に従って選択することにより、容易に目的とする当該蛋白質のアミノ酸配列を有し、なおかつ当該蛋白質のアミノ酸配列のプローブ以外の領域に相当する塩基配列をも有する、異なるλファージクローンをいくつか得ることができる。
【0014】
更に、上記スクリーニング陽性のプラークからManiatisらの方法によりファージを増殖させ、そのものからグリセロールグラディエント法に従ってDNAを精製し適切な制限酵素で切断後、pUC18、pUC19等のプラスミドベクターあるいはM13mp18、M13mp19等の一本鎖ファージベクターにcDNAをサブクローニングし、Sangerらのジデオキシ法に従って目的cDNAフラグメントの塩基配列を決定することができる。得られたクローンの塩基配列を解析し、それらを統合することにより当該蛋白質の一部をコードするcDNA群によって配列表の配列番号8に示す当該蛋白質の全アミノ酸配列のすべてに対応する遺伝子を得ることができる。
【0015】
また、本cDNAの一部をプローブとして使用し、PCR法を用いることにより、各種cDNAライブラリーから、本cDNAの全てを含む遺伝子、本cDNAの一部の塩基配列が欠失した遺伝子、本cDNAに他の塩基配列が挿入された遺伝子もしくは本cDNAの一部の塩基配列が他の塩基配列に置換された遺伝子なども得ることができる。このような塩基配列の欠失、付加あるいは置換等の部位特異的変異は、Method in Enzymol., 217, 218-227(993)、同217, 270-279(1993)等に記載の方法により容易に行うことができる。
【0016】
このようにして得られるcDNA群をその塩基配列の順番が本蛋白質のアミノ酸配列に従う形でつなぎ、当該蛋白質の全領域を含むDNA断片とし、これをpCDL−SRα296等のプラスミドのプロモーターの下流に翻訳開始コドンATGとフェーズを合わせて、蛋白質発現用プラスミドを構築し、当該プラスミドで形質転換された動物細胞の宿主内等で当該蛋白質を発現させることができる。続いて常法に従い精製し、発現された当該蛋白質を得ることができる。
【0017】
すなわち、上記のようにして得られる各種cDNAをpME18S等のプラスミドのプロモーターの下流に挿入して、蛋白質発現用プラスミドを構築し、当該プラスミドで形質転換された動物細胞の宿主等で、当該蛋白質、当該蛋白質の一部のアミノ酸配列が欠失した蛋白質、当該蛋白質に他のアミノ酸配列が挿入された蛋白質もしくは当該蛋白質の一部のアミノ酸配列が他のアミノ酸配列に置換された蛋白質を発現させることができる。具体的には、動物細胞としてCHO細胞、COS細胞、マウスL細胞、マウスC127細胞、マウスFM3A細胞等を用いて発現させることが可能である。これらの動物細胞等を宿主とする場合は、シグナル配列として、配列表の配列番号8に示すDNA塩基配列、すなわち当該蛋白質の遺伝子の1から35番目の塩基配列もしくは既存のシグナル配列を使用することにより、当該蛋白質が細胞外に分泌生産、もしくは細胞膜表面上に生産されることが期待される。
【0018】
動物細胞を宿主とした発現用プラスミドは次のように構築される。
プロモーターとしては全ての既存のプロモーターが使用可能であるが、例えばSRαプロモーター、SV40プロモーター、またはメタルチオネイン遺伝子のプロモーターが使用できる。このプロモーター下流に上記シグナル様配列を含む当該蛋白質の遺伝子の全てを含むDNA、本遺伝子の一部の塩基配列が欠失したDNA、本遺伝子に塩基配列が挿入されたDNAもしくは本遺伝子の一部の塩基配列が別の塩基配列に置換されたDNAを転写方向にしたがって挿入する。
【0019】
また、当該蛋白質の発現ベクター構築の際には該プロモーターの下流に当該蛋白質をコードする遺伝子のDNA断片を2〜3個結合したものを挿入してもよい。また当該蛋白質をコードする遺伝子のDNA断片の5’上流側にSV40などのプロモーターを結合したDNA断片を単位としたものを転写方向を揃えて2〜3個結合してベクターに挿入してもよい。
【0020】
この当該蛋白質をコードする遺伝子の下流にはポリアデニル化部位を付加する。例えば、SV40 DNA、β−グロビン遺伝子またはメタルチオネイン遺伝子由来のポリアデニル化部位が当該蛋白質をコードする遺伝子の下流に付加することが可能である。また、プロモーターと当該蛋白質をコードする遺伝子を結合したDNA断片を2〜3個結合する場合には、各単位の当該蛋白質をコードする遺伝子の3’側にそれぞれポリアデニル化部位を存在させることもできる。この発現ベクターを用いて、動物細胞、例えばCHO細胞を形質転換する際に、薬剤耐性遺伝子を使用し、目的とする発現細胞を選択することが可能である。
【0021】
薬剤耐性遺伝子としては、メトトレキセート耐性を与えるDHFR遺伝子(ジャーナルオブモレキュラバイオロジー(J. Mol. Biol.)159巻601頁(1982))、抗生物質G−418耐性を与えるNeo遺伝子(ジャーナルオブモレキュラアプライドジェネティクス(J. Mol. Appl. Genet.)1巻327頁(1982))、ミコフェノール酸耐性を与える大腸菌由来のEcogpt遺伝子(プロシーディングオブナショナルアカデミーオブサイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.)78巻2072頁(1981))、抗生物質ハイグロマイシン耐性を与えるhph遺伝子(モレキュラセルバイオロジー(Mol. Cell. Biol.)5巻410頁(1985))等が挙げられ、各耐性遺伝子の5’上流側にはプロモーター、例えば前述のSV40由来のプロモーターが挿入されており、各耐性遺伝子の3’下流側には、前述のポリアデニル化部位が含まれる。
【0022】
当該蛋白質の発現ベクターにこれらの耐性遺伝子を挿入する場合、当該蛋白質をコードする遺伝子のポリアデニル化部位下流に順方向あるいは逆方向に挿入すればよい。これらの発現ベクターは、形質転換体を得る際に選択マーカー遺伝子を含む別のプラスミドを二重形質転換する必要がない。また当該蛋白質の発現ベクターにこれらの選択マーカー遺伝子が挿入されていない場合には、形質転換体の選択のマーカーを有するベクター、例えばpSV2neo(ジャーナルオブモレキュラアプライドジェネティクス(J. Mol. Appl. Genet.)1巻327頁(1982))、pMBG(ネイチャー(Nature)294巻228頁(1981))、pSV2gpt(プロシーディングオブナショナルアカデミーオブサイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.)78巻2072頁(1981))、pAd-D26-1(ジャーナルオブモレキュラバイオロジー(J. Mol. Biol.)159巻601頁(1982))などを当該蛋白質をコードする遺伝子の発現ベクターと共に形質転換し、薬剤耐性遺伝子の表現形質により形質転換体を容易に選択できる。
【0023】
発現ベクターの動物細胞への導入は、リン酸カルシウム法(ヴァイロロジー(Virology)52巻456頁(1973))、エレクトロポレーション法(ジャーナルオブメンブレンバイオロジー(J. Membr. Biol.)10巻279頁(1972))等により行うことができる。
【0024】
形質転換された動物細胞の培養は、常法により浮遊培養または付着培養で行うことができる。培地としては、MEM、RPMI1640などを用い、5〜10%血清の存在下もしくは適当量のインシュリン、トランスフェリン等の存在下、もしくは無血清下にて培養する。さらに当該蛋白質を、酵母や大腸菌、例えば、Saccharomyes cerevisiae株や Escherichia coli YA-21株等の微生物を使用して生産することも出来る。
【0025】
当該蛋白質を発現している細胞はその培養上清中、もしくは細胞表面上に当該蛋白質を発現することから、この組換え体の培養上清もしくは細胞を用いて当該蛋白質の分離精製を行うことが可能である。具体的には、生産された当該蛋白質を含む培養上清もしくは細胞抽出液を各種クロマトグラフィー、例えば、ヘパリン−セファロース、ConA−セファロース、ハイドロキシアパタイト等を組み合わせたクロマトグラフィーにて精製することにより当該蛋白質を単離精製することができる。
【0026】
【発明の効果】
本発明に関わるプロテアーゼインヒビター活性を有する蛋白質は、HGF活性化因子のプロテアーゼ活性を阻害する活性を持つため、in vivoまたはin vitroでのHGF活性化因子の調節因子として、また、間接的にはHGFの活性の調節因子として、さらにはそれら因子の機能解析の道具、手段として、当該蛋白質に対する抗体、当該蛋白質をコードする遺伝子も含めて使用される。
【0027】
また、当該蛋白質をコードする遺伝子が導入された発現ベクターを動物細胞に導入することにより今まで困難であった生物学的活性のある当該蛋白質の一部または全部あるいは当該蛋白質様蛋白質を、大量、安定かつ容易に生産することが可能となる。
【0028】
【実施例】
以下の実施例により、本発明をさらにより詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0029】
実施例1 MKN45細胞の培養上清を用いての当該蛋白質の精製
MKN45細胞[内藤ら、癌と化学療法、5、89(1978);免疫生物研究所から入手]をローラーボトル850の5%FBSを含むeRDF培地中に播種して、コンフルエントな状態になるまで増殖させた。増殖後、FBSを含む培養液を除去後、無血清eRDF培地で2度洗浄した。洗浄用培地を除去後、無血清eRDF培地500mlを加えて3〜6日間37℃でインキュベーションした。インキュベーション後、培養液を回収して、新しい無血清eRDF培地500mlを加えて再度インキュベーションした。これを数回繰り返して、回収した培養上清をYM30限外濾過膜(アミコン社製)にて約20倍にまで濃縮した。
【0030】
この濃縮液をヘパリン−セファロースカラム(PBSで平衡化)に供し、その素通り画分を回収した。このヘパリンカラム素通り画分を、ConA−セファロースカラム(PBSで平衡化)に供し、素通り画分と、200mM α−メチルD−マンノシドを含むPBS溶液での溶出画分に分離した。ConA吸着画分をYM30を用いて濃縮、1M硫酸アンモニウムを含む10mMリン酸緩衝液(pH6.8)溶液へ緩衝液置換を行い、Phenyl−5PW(東ソー社製;1M硫酸アンモニウムを含む10mMリン酸緩衝液(pH6.8)で平衡化)を用いたHPLCに供し、1M硫酸アンモニウムから0Mへの直線濃度勾配溶出を行い、目的のプロテアーゼインヒビター活性が存在する画分を回収した。
【0031】
当画分を0.05%CHAPSを含む20mMトリス/塩酸緩衝液(pH8)に透析後、DEAE(0.05%CHAPSを含む20mMトリス/塩酸緩衝液(pH8)で平衡化)を用いたHPLCに供し、0Mから500mM NaClへの直線濃度勾配溶出を行い、目的のプロテアーゼインヒビター活性が存在する画分を回収した。当画分を0.05%CHAPSを含む5mMリン酸緩衝液(pH 6.8)に透析して、HCA A−4007カラム(三井東圧化学社製)(0.05%CHAPSを含む5mM リン酸緩衝液(pH 6.8)で平衡化)を用いたHPLCに供し、その素通り画分を回収した。当画分をGS−520(0.05%CHAPSを含むPBSで平衡化)に供し、活性画分(約50〜30kDa付近の画分)を回収した。マイナーバンドを除去するため、当画分をYMC packC4カラム(YMC社製)に供し、0.1%TFAを含むアセトニトリル/イソプロピルアルコール(3/7)濃度10%から50%まで30分間の直線濃度勾配溶出を行い、活性画分を1Mトリス/塩酸緩衝液(pH8)にて中和後、減圧下で乾燥させた。乾燥後、0.05%CHAPSを含むPBSに溶解して、精製蛋白質を得た。
【0032】
実施例2 当該蛋白質のアミノ末端アミノ酸配列および部分アミノ酸配列の決定
実施例1に従って精製し、逆相HPLCで溶出させたプロテアーゼインヒビター活性を有する蛋白質を、中和せずに減圧下で乾燥させた。これを、50%TFA(トリフルオロ酢酸)60μlに溶解し、ポリブレン処理したグラスフィルターに添加し、Applied Biosystems社製470Aシークエンサーでエドマン分解し、N末端領域のアミノ酸配列を決定した。フェニルヒダントイン(PTH)アミノ酸の同定は、三菱化学社製MCI gel ODS IHU(0.46x15cm)カラムを用い、酢酸緩衝液(10mM酢酸緩衝液(pH4.7)、0.01%SDS、38%アセトニトリル)による単一溶媒溶出法を流速1.2ml/分、温度43℃で行い、PTHアミノ酸の検出は269nmの吸光度で行った。
【0033】
この結果、表1に示すN末端アミノ酸配列を同定した。
次に、同じく実施例1に従って精製し、逆相HPLCで溶出させたプロテアーゼインヒビター活性を有する蛋白質を、4M尿素を含む50mMトリス塩酸(pH9.0)100μlに溶解し、これにリジルエンドペプチダーゼ(アクロモバクタープロテアーゼI)を添加して37℃で8時間反応させた。生成したペプチド混合物はYMC pack C8カラム(YMC社)を用いた逆相HPLCにより分離して各ペプチド断片を得た。6つのペプチドについて気相プロテインシークエンサー(Applied Biosystems社製 model470A)を用いてアミノ酸配列分析を行ったところ、表1に示す配列が見い出された。
【0034】
【表1】
Figure 0003896608
【0035】
実施例3 A549細胞の培養上清を用いての当該蛋白質の精製とアミノ酸配列解析
A549細胞[財団法人がん研究振興財団(Japanese Cancer Research Resources Bank)から入手]を実施例1と同様に培養して培養上清を調製した。その培養上清を用いて実施例1と同じ操作によって、HGF活性化因子のプロテアーゼ活性を阻害する活性を持つ蛋白質を得た。この蛋白質はSDS−PAGE上、MKN45細胞由来のものと同じ分子量を示した。また、この蛋白質のN末端領域のアミノ酸配列を実施例1と同様の方法で決定した。この結果、その配列はMKN45細胞由来と同じであった。このことより、当該蛋白質はMKN45由来の蛋白質と同じである可能性が示された。
【0036】
実施例4 当該蛋白質のHGF活性化因子のプロテアーゼ活性を阻害する活性を測定する方法とその活性
測定しようとするサンプル1〜10μlを、2〜5ng血清由来HGF活性化因子を含むPBS、0.05%CHAPS溶液30〜40μlに添加した。37℃で30分間インキュベーション後、5〜10μgの一本鎖HGFを添加し、さらに2時間インキュベーションを継続した。この混合液を、還元条件下でSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した。電気泳動後、クマシーブリリアントブルーR250(CBB)で染色し、一本鎖HGFと二本鎖HGFの割合を比較することで、活性を検出した。
【0037】
精製した当該蛋白質数10ngと5ng血清由来HGF活性化因子をPBS、0.05%CHAPS溶液30〜40μl中で37℃で30分間インキュベーションした後、10μg一本鎖HGFを添加し、さらに2時間インキュベーションを継続した。この混合液を、還元条件下でSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、電気泳動後、CBBで染色した。結果を図1に示す。図中、1はHGF活性化因子と当該蛋白質を無添加の場合を、2はHGF活性化因子を添加、当該蛋白質無添加の場合を、3はHGF活性化因子と当該蛋白質を添加した場合の結果を表す。当該蛋白質の添加により、HGF活性化因子のHGFを一本鎖から二本鎖に変換する活性が抑制された。
【0038】
実施例5 SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動
MKN45細胞の培養上清とA549細胞の培養上清より実施例1と2に従って精製されたプロテアーゼインヒビター活性を持つ当該蛋白質の見かけ上の分子量を求めるため、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った。最終的に精製された当該蛋白質を12.5%のポリアクリルアミド・スラブゲルを用いたSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に、非還元下で供した。分子量マーカーとしては、分子量マーカー「第一」III Laemmli法用(第一化学薬品社製)を用いた。電気泳動後、銀染色試薬(関東化学社製)を用いて発色させた。当該蛋白質と標準分子量マーカーの蛋白質との泳動距離の相対的比較により、MKN45細胞の培養上清とA549細胞の培養上清から得られた当該蛋白質は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動上のみかけの分子量として約40,000ダルトン前後に糖鎖、アミノ酸残基の修飾または末端領域の相違によるものと思われる数本のフラグメントもしくはスメアーなバンドを示した。
【0039】
実施例6 当該蛋白質をコードする遺伝子のクローニングおよび塩基配列の決定
実施例2により得られた当該蛋白質のN末端アミノ酸配列(配列表の配列番号1)に含まれる、Gly-Ala-Asp-Cys-Leu-Asn および Gly-Phe-Val-Leu-Asp-Thr の配列を基に推定可能な二種類のオリゴヌクレオチドプライマー(プライマー1およびプライマー2)を作成した。また、当該蛋白質の部分アミノ酸配列(配列番号1)の中で、Ser-Phe-Val-Tyr-Gly-Gly (配列番号5)およびGln-Val-Glu-Leu-Trp-Gly (配列番号6)の配列を基に推定可能な二種類のオリゴヌクレオチドプライマー(プライマー3およびプライマー4)を作成した。これらプライマーの配列を以下に示す。
【0040】
【表2】
Figure 0003896608
【0041】
一方、胃癌細胞株であるMKN45細胞よりトータルRNAをアナリティカルバイオケミストリー(Anal. Biochem.)162卷156頁(1987)記載の方法に従って調製し、これをオリゴ(dT)カラムに供すことによりpoly−(A)+RNAを調製した。
【0042】
次に当該蛋白質のN末端アミノ酸配列に相当するcDNA断片の取得を試みた。 MKN45細胞より調製したpoly−(A)+RNAを鋳型とし、先に作成した二種類のオリゴヌクレオチドプライマー(プライマー1及びプライマー2)を用いてRT−PCR(reverse transcription-polymerase chain reaction、羊土社、林 件志 編、1995年2月5日発刊「PCR法の最新技術」p44-p52参照)を行った。このRT−PCRにて得られた反応液をポリアクリルアミドゲル電気泳動法にて解析した結果、約56bpのDNA断片が検出された。そこでこのDNA断片をポリアクリルアミドより抽出後、フェノールクロロホルム処理およびエタノール沈殿を行いDNA断片を回収後、ダイデオキシ法にて塩基配列を決定した。
【0043】
そこで、この塩基配列の一部を含むプライマーを5'-AACAGCTTTACCG-3'(プライマー5)(配列表の配列番号:16)を作成し、以下の当該cDNA取得に使用した。
先に調製したMKN45細胞株のpoly−(A)+RNAを鋳型とし、プライマー3及びプライマー5を使用してPCRを行った。更に、得られたPCR増幅DNA、プライマー4及びプライマー5を用いてPCRを行った結果、480bpの当該蛋白質特異的なDNAフラグメントを取得した。ここに得られた480bpのDNAフラグメントをモレキュラークローニング(コールドスプリングハーバーラボラトリー、1982年)に記載の方法に従って32P標識し、これをスクリーニング用プローブとした。
【0044】
全長の当該蛋白質cDNAを取得するためのライブラリーとして、ヒト胎盤cDNAライブラリー(クローンテック社製)を用いた。まず大腸菌Y−1090株に、約4x105プラークとなるようにヒト胎盤cDNAライブラリー(λgt11、クローンテック社製)として調製されているファージを感染させ、NZY培地中で42℃一晩培養した。次にジーンスクリーニングプラス(デュポン社製)にトランスファーさせた。そのメンブレンを0.1M水酸化ナトリウム/0.5Mトリス塩酸バッファー(pH7.5)が染み込んだ濾紙上に2分間静置し、続いて1.5M塩化ナトリウム/0.5Mトリス塩酸バッファー(pH7.5)が染み込んだ濾紙上で5分間静置した。この一連の処理を更に2回繰り返した後、2xSSC(2倍SSC)で洗浄し、乾いた濾紙上で風乾した。さらにこのメンブレンを20mJ/cm2でUV照射することにより、メンブレンに移したDNAの固定を行った。こうして処理したメンブレンを50mMトリス塩酸バッファー(pH7.5)、1M塩化ナトリウムおよび1%SDSよりなる溶液50mlに浸漬し、65℃で2時間保持した。
【0045】
次に、上記の32Pで標識したプローブ5ng/ml、鮭精子DNA100μg/ml、50mMトリス塩酸バッファー(pH7.5)、1M塩化ナトリウムおよび1%SDSよりなる溶液40mlに浸漬し、65℃で16時間保持した。その後、このメンブレンを2xSSCで室温5分間、0.1xSSCで室温30分間2回の順に洗浄した後、オートラジオグラフィーを行い、84個の当該蛋白質cDNAを含むと考えられるポジティブクローンを得た。
【0046】
得られた各クローンから、500μlのSMバッファー(50mMトリス塩酸バッファー(pH7.5)、100mM塩化ナトリウム、10mM硫酸マグネシウムおよび0.01%ゼラチン)と20μlのクロロホルムによりファージを抽出した。上記100μlのファージ抽出液と100μlの10mM硫酸マグネシウムに懸濁した大腸菌Y−1090株とを混合した後、9cmのLB寒天培地に、3mlの上層寒天培地とともにまき、37℃で一晩培養した。プラークの形成を確認した後、3mlのSMバッファーとクロロホルムを数滴加え、室温で1時間放置した。ファージを含むこのSMバッファーを回収し、8000rpm、10分間遠心し、上清を回収した。
【0047】
得られたファージ溶液10μlと大腸菌Y−1090株300μlを混合した後、10mM硫酸マグネシウムを含む10mlのLB培地に加え、37℃で振盪培養した。溶菌後、クロロホルムを数滴加え、更に10分間振盪し、10、000rpm、5分間遠心した。上清を回収し、終濃度5μg/mlのDNaseIおよび2μg/mlのRNaseAを加え、37℃で30分間静置した。続いて5gのNaClおよび1.1gのPEG6000を加え、4℃で1時間放置し、10、000rpmで15分間遠心して、沈殿を回収した。この沈殿をSMバッファー400μlに懸濁した。さらにフェノール/クロロホルム処理およびエタノール沈殿を行い、当該蛋白質cDNAを含むファージDNAを取得した。次に、このDNAを制限酵素EcoRIにて切断し、アガロースゲル電気泳動により、cDNA断片を解析した。
【0048】
このアガロースゲル電気泳動にて最長のcDNA断片を分離および抽出後、プラスミドベクターPUC19のEcoRIサイトに挿入し、当該蛋白質cDNAを含むプラスミドベクターpHAIを作成した。得られたプラスミドベクターpHAIに挿入されたcDNAの塩基配列を解析し、当該蛋白質をコードする全遺伝子の塩基配列を決定した(配列表の配列番号8)。
【0049】
実施例7 当該蛋白質発現プラスミドの調製
実施例6によって得られた当該蛋白質cDNAを含むプラスミド(pHAI)は制限酵素EcoRIで処理することにより、プラスミドベクターpUC19と全長の当該蛋白質cDNA断片(翻訳開始コドンである塩基配列ATGと終止コドンであるTGAを含む全長の当該蛋白質cDNA断片)を分離することが可能である。そこでManiatisらの方法(「モレキュラークローニング」、コールドスプリングハーバーラボラトリー、164頁(1982))に従い、アガロースゲル電気泳動を行い、当該蛋白質cDNAを含む約2.4kbのEcoRI−EcoRIDNA断片を分離および抽出した。得られた当該蛋白質cDNA断片の末端をT4DNAポリメラーゼにて平滑末端にした。この後、フェノールクロロホルム抽出およびエタノール沈澱を行い、10μlの水に溶解した。
【0050】
一方、発現ベクターpME18S(メディカルイミュノロジー、20卷27頁(1990))は制限酵素XhoIで切断後、末端をT4DNAポリメラーゼにて平滑末端にした。この後、フェノールクロロホルム抽出およびエタノール沈澱を行い、400μlの50mM Tris−HCl(pH8)、1mM MgCl2溶液に溶解した。さらにバクテリアルアルカリホスファターゼ(東洋紡、BAP−101)1unitを添加し、65℃下30分の反応を施し脱燐酸化処理を行った。次にこの反応液からフェノールクロロホルム抽出とエタノール沈澱により制限酵素XhoIで切断されたpME18Sベクターを精製し、10μlの水に溶解した。
【0051】
このpME18SベクターのDNA断片0.01μgと前述の平滑末端化された当該蛋白質cDNAのEcoRI断片0.1μgを含む溶液20μl(66mM Tris−HCl(pH7.6)、6.6mM MgCl2、10mMジチオトレイトール、66μM ATP)をT4DNAリガーゼ(東洋紡LGA−101)存在下で14℃で12時間反応させ、両DNA断片の結合反応を行った。
【0052】
次にこの反応液10μlを用いて大腸菌HB101株(宝酒造)を形質転換し、アンピシリンを50μg/mlの濃度で含む培地上で培養することにより数十個のアンピシリン耐性株を得た。これらの組換え体をManiatisらの方法(「モレキュラークローニング」、コールドスプリングハーバーラボラトリー、86頁〜96頁(1982))に従い解析することにより、発現ベクターpME18Sのプロモーターとポリアデニレーション部位の中間に存在する制限酵素XhoI切断部位に当該蛋白質をコードする遺伝子が挿入されたプラスミド、pME18S−HAIプラスミドを得た。その構造を図2に示す。
【0053】
実施例8 当該蛋白質を発現する細胞株の取得
実施例7で作製された発現ベクターpME18Sの制限酵素XhoI切断部位に当該蛋白質cDNAが挿入されたプラスミドpME18S−HAIを、Maniatisらの方法(「モレキュラークローニング」、コールドスプリングハーバーラボラトリー、86頁〜96頁(1982))に従い、組換え体の大腸菌から回収、精製し当該蛋白質発現プラスミドDNAを大量に得た。
【0054】
一方、COS細胞をFBS(牛胎児血清)が10%入ったeRDF培地中でセミコンフルエントな状態になるまで培養した。次にシャーレから培地を除きそこにDNA溶液を滴加するが、DNA溶液は予め次に示す手順に従って調製した。まず直径9cmのシャーレ一枚につき300μlの2xHEBS溶液(2xHEBS溶液;1.6%塩化ナトリウム、0.074%塩化カリウム、0.05%燐酸水素二ナトリウム12水塩、0.2%デキストロース、1%HEPES(pH7.05))と10μgのプラスミドDNAを加え、滅菌水で570μlに合わせた溶液を、エッペンドルフ遠心管中に準備する。次に該DNA溶液に30μlの2.5Mの塩化カルシウム溶液を滴加しながらボルテックスミキサーを用い数秒間激しく混和する。これを室温で30分間放置するが、その間およそ10分おきにボルテックスミキサーで混和する。
【0055】
この様にしてできたDNA溶液を前述の細胞にかけて室温で30分間静置した。その後FBSが10%入ったeRDF培地(極東製薬社製)9mlをシャーレに入れて37℃、5%CO2存在下で4〜5時間培養した。次にシャーレから培地を除き5mlの1xTBS++溶液(1xTBS++溶液;25mMトリス−塩酸(pH7.5)140mM塩化ナトリウム、5mM塩化カリウム、0.6mM燐酸水素二ナトリウム、0.08mM塩化カルシウム、0.08mM塩化マグネシウム)で細胞を洗浄し、1xTBS++溶液を除去した後、DMSO(ジメチルスルホキサイド)を10%含む1xHEBS溶液を、5ml細胞にかけて室温で1〜2分間静置した後上清を除去した。その後5mlの1xTBS++溶液で細胞を再び洗浄しFBSが10%入ったeRDF培地10mlをシャーレに入れて37℃、5%CO2存在下で培養し、48時間が経過した時点で培地を回収した。回収した培養上清を20倍に濃縮して、HGF活性化因子に対する阻害活性を上述の実施例4と同様にして測定したところ、阻害活性が確認された。
【0056】
【配列表】
Figure 0003896608
【0057】
Figure 0003896608
【0058】
Figure 0003896608
【0059】
Figure 0003896608
【0060】
Figure 0003896608
【0061】
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【0062】
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【0063】
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Figure 0003896608
Figure 0003896608
Figure 0003896608
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【0064】
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【0065】
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【0066】
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【0067】
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【0068】
Figure 0003896608
【0069】
Figure 0003896608
【0070】
Figure 0003896608
【0071】
Figure 0003896608
【0072】
Figure 0003896608

【図面の簡単な説明】
【図1】本願蛋白質のHGF活性化因子のプロテアーゼ活性を阻害する活性を測定した結果を表す図である。
【図2】プラスミドpME18S−HAIの構造を表す図である。

Claims (17)

  1. 下記の理化学的性質を有する蛋白質。
    (1)SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分子量が約40,000ダルトンであり、
    (2)肝細胞増殖因子活性化因子のプロテアーゼ活性を阻害する活性を有し、
    (3)配列表の配列番号1〜7のいずれかに記載のアミノ酸配列を有し、
    (4)MKN45又はA549細胞株を培養した時に、その培養上清に存在する。
  2. 配列表の配列番号1〜7に記載のアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1記載の蛋白質。
  3. 下記の(a)又は(b)の蛋白質。
    (a)配列表の配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質。
    (b)配列表の配列番号8において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、肝細胞増殖因子活性化因子のプロテアーゼ活性を阻害する活性を有する蛋白質。
  4. 下記の(a)又は(b)の蛋白質。
    (a)配列表の配列番号8に記載のアミノ酸配列の36番目のグリシンから513番目のロイシンまでの配列からなる蛋白質。
    (b)配列表の配列番号8に記載のアミノ酸配列の36番目のグリシンから513番目のロイシンまでの配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、肝細胞増殖因子活性化因子のプロテアーゼ活性を阻害する活性を有する蛋白質。
  5. 請求項3記載の蛋白質をコードするDNA。
  6. 配列表の配列番号8に記載の塩基配列で表わされることを特徴とする請求項記載のDNA。
  7. 請求項4記載の蛋白質をコードするDNA。
  8. 配列表の配列番号8に記載の塩基配列において106番目のグアニンから1542番目のアデニンまでの塩基配列で表わされることを特徴とする請求項記載のDNA。
  9. 請求項3記載の蛋白質をコードする遺伝子。
  10. 配列表の配列番号8に記載の塩基配列で表わされることを特徴とする請求項記載の遺伝子。
  11. 請求項4記載の蛋白質をコードする遺伝子。
  12. 配列表の配列番号8に記載の塩基配列において106番目のグアニンから1542番目のアデニンまでの塩基配列で表わされることを特徴とする請求項11記載の遺伝子。
  13. 請求項から12のいずれかに記載のDNAまたは遺伝子を含有してなる発現ベクター。
  14. 請求項13記載の発現ベクターで宿主細胞を形質転換することにより得られる形質転換体。
  15. 宿主細胞が動物細胞であることを特徴とする請求項14記載の形質転換体。
  16. 請求項14または15記載の形質転換体を培養して肝細胞増殖因子活性化因子のプロテアーゼ活性を阻害する活性を有する蛋白質を産生することを特徴とする肝細胞増殖因子活性化因子のプロテアーゼ活性を阻害する活性を有する蛋白質の産生方法。
  17. 蛋白質が請求項1から4のいずれかに記載の蛋白質であることを特徴とする請求項16記載の蛋白質の産生方法。
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