JP3896439B2 - 酸化銀電池用陽極材料とその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、酸化銀電池用陽極材料とその製造方法および該陽極材料を用いた酸化銀電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
AgNiO2 は、特開昭57−849によればアルカリ電池用の導電性を有する正極活物質である。この化合物は、アルカリ水溶液の存在下でAg2 OとNiOOHとを反応させることによって得られる。生成機構を示す反応式としては、AgO- +NiOOH→AgO−NiO+OH- が示されている。溶解度の高い一価酸化銀イオンと三価のNiの化合物との反応で合成されるとしているが、単純にはNi化合物によるAg酸化物の酸化とも考えられる。その具体的な製法としては特開昭57−849の実施例の中で次のような方法が示されている。
【0003】
(I)いったんNiOOH粉末を作製し、これを懸濁させたアルカリ溶液に硝酸銀を添加する。
【0004】
(II)アルカリと酸化剤でニッケル塩を反応させた後に硝酸銀を添加する。
【0005】
(III )アルカリ共存下のAgO粉末の懸濁液にニッケル塩溶液を添加する。
【0006】
(IV)Ni塩とAg塩の混合溶液をアルカリ液に添加し、酸化剤K2 S2 O8 を定期的に添加する。
【0007】
上記方法で合成された沈澱物を80℃で乾燥する。得られた粉末はAgNiO2 単相であるとされた。しかし実際に上記の方法でAgNiO2 を合成して評価すると、生成物は二次相を含み易く、電池の容量を安定して発現できないことが分かった。また(IV)の方法では80℃で沈澱物を乾燥してもその後の加熱重量減少が100℃で5%に及んだ。重量減少はほとんどが水分であるが、特開昭57−849では水酸基が理想的に離脱するものと考えたためか乾燥温度を例示するのみである。
【0008】
この水分はAgNiO2 の合成完成度を示す指標と考えられ、水分が多ければ合成が不完全となり電池容量を低下させてしまうと考えられる。
【0009】
AgNiO2 中の不純物が電池としての特性に与える影響については公知情報がなく不明である。AgNiO2 は、Ag2 Oに対して理論容量が15%程高く、263mAh/gとされているが、AgNiO2 のみを正極物質とする電池は実用化されておらず、実施例1〜4に示すように実際の容量は、一部の条件を除いて一酸化銀電池と同等である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
電池容量を安定発現できない原因としては、反応経路と含有水分(または水酸基)が考えられる。反応経路が不適切な場合、次のような原因が推測される。
【0011】
前記(I)と(III )の方法では、反応すべきAgかNiのいずれか一方の化合物をいったん乾燥粉末とするのでこれが溶液中で凝集してしまい反応性が低下する。(II)の方法では、ニッケル化合物は元々分散性が低いため、後で生成する酸化銀と十分に反応できない。(IV)の方法では、Ag塩とNi塩が同時に添加されるためAgとNiの望ましい価数の化合物が生成されない(ここでは一価の酸化銀と二価である水酸化ニッケルが初期に生成され、期待するようにはオキシ水酸化物が生成されないと推測する。AgNiO2 の生成が一価の酸化銀イオンと三価のNiの化合物との反応によるとも断定できない)。したがってこの場合水分(水酸基)が多く残留すると考えられる。また、(I)〜(IV)のいずれもにおいてもAg(OH)2 -イオンの生成を伴う経路が考えられるので、反応が不十分であれば水分が多く残留することになる。
【0012】
このように従来の方法で製造されたAgNiO2 を陽極材料とした酸化銀電池には高い電池容量を安定して発現し難いという課題があった。
【0013】
本発明の目的は、高い電池容量を安定発現できる酸化銀電池用陽極材料とその製法を提供することにある。
【0014】
本発明の今一つの目的は、AgNiO2を陽極材料とした酸化銀電池の容量をさらに高め得る酸化銀電池用陽極材料とその製造方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
発明者は、多くの試行錯誤を重ねて鋭意研究した結果、その物質の製法として反応性の高い経路を見いだし、また活物質としての望ましい水分上限値を見いだすことによって前記の課題を解決することができた。
【0016】
すなわち本発明は第1に、平均価数が一価より高い酸化銀を合成する第1段階と、価数が主として三価であるニッケル化合物を合成する第2段階と、該酸化銀と該ニッケル化合物とを反応させてAgNiO2の沈殿物を生成する第3段階と、該沈殿物を分離して350℃以下の温度で加熱乾燥する第4段階とからなり、かつ前記第1〜第3段階の反応がアルカリと酸化剤の共存下で行われることを特徴とする電池用AgおよびNiの複合酸化物粉末の製造方法を提供するものである。
【0017】
さらに本発明者らは、AgNiO2が含む不純物量に注目し、その残留量の上限を求めた。ここで対象とする不純物は、出発原料である銀とニッケルの塩類の酸根、酸化剤の酸根、中和剤としての苛性アルカリ由来のアルカリイオン、酸化剤のアルカリイオンおよび炭素である。出発原料、中和剤、酸化剤に由来する根イオンは、澱物の洗浄に十分な量の精製水を使用することによって除去される。不純物間で生成する塩類はいずれも水溶性であるため、洗浄操作のみでこれらを除去することが可能である。対象となる元素はCl、S、N、NaおよびKである。SはSO4 2-、NはNO3-等のイオンとして存在し、炭素は炭酸としてAgNiO2中に含まれる。本発明に示す製法においては炭酸塩を使用しないので、炭酸はAgNiO2合成後の乾燥工程か電池を組み立てるまでのハンドリング時に大気中から吸収されるものと推定される。したがって洗浄ではこれを除去できないので他の手段が必要であった。炭酸は電解質のNaOHおよびまたはKOHと反応して電解質の効率を下げてしまうため結果として電池の容量が低下してしまう。本発明ではAgNiO2の比表面積を低下させることによって粉体表面での炭酸の吸着を防止することを考えた。また、比表面積を低下させるための方法として、▲1▼AgNiO2の微粒子間の空隙をAg2Oで充填する、▲2▼主として3価であるニッケル水酸化物をオートクレーブ処理(加圧熱水処理)して板状に成長させた後に1価以上の酸化銀と反応させて比表面積の低いAgNiO2とする、▲3▼AgNiO2の合成時または合成後にオートクレーブ処理を行う、ことによって前記第14に示す方法で製造される粉体の炭酸吸着を抑えることができた。
【0018】
すなわち、本発明は第2に、第2段階においてニッケル化合物の合成時または合成後に加圧熱水処理を行うことを特徴とする上記第1に記載の電池用AgおよびNiの複合酸化物粉末の製造方法;第3に、第3段階においてAgNiO2の沈殿物を生成させた後に酸化銀を添加または生成させてAgをNiに対して過剰にすることを特徴とする上記第1記載の電池用AgおよびNiの複合酸化物粉末の製造方法;第4に、第3段階においてAgNiO2沈殿物の生成時または生成後に加圧熱水処理を行うことを特徴とする上記第1に記載の電池用AgおよびNiの複合酸化物粉末の製造方法;第5に、上記第1〜4のいずれかに記載の方法で得られた電池用AgおよびNiの複合酸化物粉末を陽極材料として含むことを特徴とする酸化銀電池;第6に、AgNiO2で示される組成を含む電池用AgおよびNiの複合酸化物であって、比表面積が30m2/g〜0.1m2/gであり、かつ炭素含有量が0.03重量%以下であることを特徴とする電池用AgおよびNiの複合酸化物粉末;第7に、AgNiO2で示される組成を含む電池用AgおよびNiの複合酸化物であって、原子数換算によるAg/Ni比が1.1より大きく、AgNiO2またはAgNiO2固溶体とAg2Oとからなる複合材料であり、炭素含有量が0.03重量%以下かつ比表面積が30m2/g〜0.1m2/gであることを特徴とする電池用AgおよびNiの複合酸化物粉末;第8に、AgNiO2で示される組成を含む電池用AgおよびNiの複合酸化物であって、原子数換算によるAg/Ni比が1以上であり、加圧熱水処理を行うことによって炭素含有量が0.03重量%以下かつ比表面積を30m2/g〜0.1m2/gとしたことを特徴とする電池用AgおよびNiの複合酸化物粉末;第9に、上記第6〜8のいずれかに記載の電池用AgおよびNiの複合酸化物粉末を陽極材料として含むことを特徴とする酸化銀電池を提供するものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
正極活物質は放電に伴い還元される。放電で生じる電気量は還元に要するエネルギーと考えられる。電気量を高めるには例えばAgNiO3 のように金属イオンの価数が高くなるような化合物が望ましいのであるが、物質としてはAgNiO2 の形で安定なためその目的を果たせない。したがって二酸化物の結晶構造において、Niの価数かスピン状態を高く保つかあるいはAgを二価に保つことを期待した。そのためにAgとNiとは共に高い価数の化合物として生成させてから反応させる。反応順序としては、銀酸化物の合成に引き続いてNi化合物を合成し、その後に銀酸化物とNi化合物とを撹拌混合しながら反応させる方法をとった。反応液中には終始水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリとK2 S2O8 、Na2 S2O8 、NaOCl、KMnO4 等の酸化剤を共存させてAgとNiの価数を高く保つようにした。
【0020】
上記の反応が水溶液反応でありかつ水酸基含有化合物を経由するので、反応の際に水分が取り込まれるものと推定されるが、水分がどのような状態で存在するのかは不明である。反応性が高ければ水酸基が離脱して加熱減量は少なくなる。電気量を高めるためには水分がより少ないことが望ましいく、更なる水分除去が必要になる。この水分除去操作は加熱乾燥でよい。これは、減圧雰囲気下で乾燥を行えば100℃以下での乾燥でも達成可能である。AgNiO2の場合であっても350℃を超える温度では銀への還元が予想されるので、還元温度以下で行なう必要がある。水分を除くための加熱によって結晶子が成長するために比表面積が低下していく。比表面積はBET法で測定した。
【0021】
製法としては、まず第1段階として苛性アルカリと酸化剤の共存液中に硝酸銀を添加し、平均価数が一よりも大きな酸化銀を得る。全てが二価酸化銀になることが望ましいが、実際には二価酸化銀の含有比率の高い一価酸化銀と二価酸化銀の混晶が析出した溶液を得ることが多い。第2段階としては、この混晶存在下の溶液中に硝酸銀と等モルの硝酸ニッケルを添加する。ここで主にニッケルオキシ水酸化物が生成する。この時に酸化銀の還元と混晶比率の変化は生じない。この段階の終了pHは10以上であることが望ましい。第3段階では、このアルカリ溶液中で酸化銀とNiOOHとが反応してAgNiO2 を生成する。反応途中での一価酸化銀の明瞭な増加は見られなかった。第1段階から第3段階までの反応はアルカリと酸化剤の共存下で行われる。
【0022】
沈澱生成物を湿潤撹拌した後、十分洗浄し、350℃以下の温度で乾燥して黒色粉末を得る。酸化銀成分の価数が正常な状態であれば粉末の色は黒色であるが、加熱処理温度が350℃を超えると低価数成分の生成により粉末は黒褐色に変色する。これらは金属銀の生成によるものと考えられ、その場合当然電池容量は低下する。日本電色工業(株)製測色色差計(Z1001DD型)にてアルミナを標準試料とすればその明るさが96.6である。本法で得られたAgNiO2 の350℃での乾燥品は16.0、300℃以下での乾燥品は15未満であった。360℃での乾燥品は16.6であり、350℃以下で乾燥したものは明るさが16以下であることが望ましい。
【0023】
反応生成物は、X線回折により銀とニッケルの複合酸化物AgNiO2であることが確認された。参考例1で得られたX線回折ピーク(CuKα)の代表例を図1に示す。同図に見られるように、得られた生成物のX線回折ピークは文献に例示されているものよりもブロードな形状となる。例えば2θ=29°付近に見られる(006)面のピークにおける半価巾は1.0〜1.6°であった。文献で示される方法で試作したものは半価巾が0.5°未満であった[Journal of Solid State Chemistry 107, 303-313 (1993), Y.J.SHIN 他 "Influence of the Preparation Method and Doping on the Magnetic and Electrical Properties of AgNiO2"]。これは結晶子が成長していることを示すがAg化合物とNi化合物とが適切かつ十分に反応させた結果としては、半価巾は1〜1.6°の範囲であることが望ましい。
【0024】
風乾物と各温度で加熱乾燥処理した粉末をカールフィッシャー水分計にて水分測定し、加熱減量が水分であることを確認した。電池特性は次のような方法で評価した(図2)。
【0025】
実施例で得られた粉末を5トン/cm2 の圧力で成形し直径11mm、厚み0.9mmのペレットを作製し、これを正極材1として正極缶2に入れる。セロハンと綿不織布からなるセパレーター3を正極材1の上に置く。亜鉛アマルガムと微量のアクリル酸系のゲル化剤とKOH液とを混合して負極剤5とした。負極剤5を負極缶6に充填し、正極缶2とはナイロンガスケット4を介してかしめ機によって結合した。正極缶2にはステンレスにニッケルメッキをしたものを用い、負極缶6には外側がニッケル、内側が銅、中間がステンレスであるような複合材を用いた。電池の大きさは、直径が11.6mm、高さが約3mmである。これは公称容量80mAhの一酸化銀電池に近似する。容量は15kΩの抵抗を用いて放電させて測定した。終了電圧は1.2Vとした。
【0028】
(比表面積が30〜0.1m2/gのAgNiO2の場合)
比表面積 効率を90%以上に保ち、且つ大気中で作業できる時間を十分に確保するには30m2 /g以下とする必要がある。
【0029】
本発明で0.1m2 /g未満とすることは困難であった。その時に炭素量含量としては0.03wt%以下とすることが望ましい。
(1) 前記第1の製造方法に従えば、1価以上の酸化銀を合成し、3価のニッケル化合物を合成し、酸化銀とニッケル化合物とを反応させてAgNiO2の沈澱物を生成させる。その後にさらに酸化銀を合成してAgNiO2と酸化銀との複合相からなる澱物とする。その詳細を以下の実施例1に例示する。
(2) (1)と同様にAgNiO2の澱物を生成し、同時またはその後にオートクレーブ処理する。酸化銀はイオンの溶解度が高いが、Ni水酸化物は溶解度が低く、室温付近でのAgNiO2の成長が困難なため、加圧熱水処理を行うことによって溶解度を高める必要があった。溶解度を高めて温度、圧力を制御することによってAgNiO2が成長し、結果として比表面積が低下する。その詳細を以下の実施例2に例示する。
(3) (2)と同様の理由により、予めNi水酸化物を加圧熱水処理によって板状に成長させた後に酸化銀と反応させて比表面積を低下させる。その詳細を以下の実施例3に例示する。
【0030】
比表面積と炭素含有量との関係についても以下に示す。
【0031】
【参考例1】
1モルのK2S2O8を含む濃度10モル/lのNaOH溶液1.0lに濃度1モル/lの硝酸銀溶液を200cc添加し、10分間撹拌保持した。その後同様に撹拌しながら濃度1モル/lの硝酸ニッケル溶液200ccを添加した。この酸化銀とニッケル化合物を含む液を40℃で10時間温調撹拌した後、生成沈澱物を溶液から分離し、十分洗浄して35℃で風乾した。更に300℃以下の温度で加熱乾燥して黒色粉末を得た。70℃で加熱乾燥したものについてのX線回折図を図1に示す。加熱減量は、100℃で3時間加熱保持し加熱前後の重量変化を加熱前の重量に対する比率として求めた。
【0032】
加熱減量=(W0 −W1 )/W0 、W0 :加熱前重量、W1 :加熱後重量
その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
これに対し、前記(IV)の従来法で合成し80℃で加熱乾燥した粉末の水分は4.10%であり、放電特性は72mAhであり安定しなかった。
【0034】
50〜300℃で加熱処理した粉末の水分は4%以下であり、200℃前後で電池容量は最大となった。これは200℃以上では酸化銀成分の還元が生じ、温度が上がるにつれてその量が増し、これに反比例して電気的なエネルギー量が減少することによる。
【0035】
360℃で加熱処理した粉末の水分は0.63%であるが、粉末は黒褐色に変色し、AgとNiOの発生が見られた。したがって電池容量は62mAhと低かった。またAg/Ni組成比の変動による電池容量の変化を確認するために±3%(原子数換算によるAg/Ni=1/1±0.03)の組成幅にて同様に試験したところ特性が1/1の比率における容量と同等であった。
【0051】
【実施例1】
二つの方法で複合酸化物を作成した。すなわち、参考例1に示す製法と同様の条件でAgNiO2の澱物を合成する方法(方法I)としては、第1段階で原子数換算によるAg/Ni比を1以上としてAg過剰としておき、澱物を生成した後に加温およびまたはpHを弱アルカリに調整して澱物を熟成する。別法(方法II)としては、第3段階のAgNiO2合成時または合成後にAg過剰とするため酸化銀または酸化銀となる原料を加える。pHは弱アルカリ〜強アルカリ域とする。いずれの場合も原子数換算によるAg/Ni比が1.1まではAgNiO2の結晶構造の固溶体であり、この場合には比表面積を低下させることが困難であり、原子数換算によるAg/Ni比が1.1より大きくなるにつれて酸化銀とAgNiO2 の複相からなる澱物となる。原子数換算によるAg/Ni比が大きくなるにつれて比表面積は低下する。但し、比表面積を1m2/g以下とすることは困難であった。乾燥はCaOでCO2を吸着除去した空気を用いて行った。CO2吸着量を比較するため5時間の大気暴露テストを行い変化を比較した。
【0052】
【表8】
但し、Cl、S、N、Na、Kは各々100重量ppm以下であった。
【0053】
【実施例2】
参考例1と同様にAgNiO2を合成したが、酸化銀とニッケル化合物を反応させてAgNiO2の沈澱物を生成する段階では加圧熱水処理を行った。いったんAgNiO2を合成し粉末とした後で加圧熱水処理を行ってもよい。実施例1と同様に原子数換算によるAg/Ni比が1以上であってもよい。洗浄は乾燥AgNiO2 1kg当たり30 lの精製水で行い、乾燥は150℃で、大気中で行った。
【0054】
【表9】
但し、Cl、S、N、Na、Kは各々100重量ppm以下であった。
【0055】
実施例中の暴露試験でC量が0.03wt%を超える場合、実際の電池への組み込みまでに要する時間を短くすることで、容量を保つことはできる。
【0056】
本発明の実施例で電池容量測定に用いたコイン缶では正極合材の占める容積はほぼ一定である。
【0057】
本発明に用いた活物質はピクノメーターによって真比重を測定した。
酸化銀の真比重は7であり、 231×7=1617mAh/cc
AgNiO2の真比重は5.5であり、263×5.5=1446.5mAh/cc
に比例する容量となる。しかしながら、以下に示す理由により、容量は計算通りとはならない。
【0058】
活物質の充てん量は成形性(相対密度)によって変化する。また、比表面積の影響を受け、比表面積が低ければ成形密度が高くなって充填量が増えて、電池容量は高くなる。
【0059】
15kΩでの放電であり、酸化銀の100%の放電効率は得られない。
【0060】
また、酸化銀には黒鉛を5%添加するため、15%程活物質の充てん量は減少してしまう。
【0061】
【実施例3】
主に3価であるニッケル水酸化物は、加圧熱水処理によって比表面積を低下させることができる。その時に得られる形状が薄い板状であるためAgを拡散させてAgNiO2とすることができる。したがって第2段階として加圧熱水処理してニッケル水酸化物を合成して、これを1価以上の銀化合物の液と合わせる。加圧熱水処理しない場合にはニッケル水酸化物が凝集し、Agイオンを拡散させられず、AgNiO2化合物とすることができないため、合成順序が重要であったが、加圧熱水処理ニッケル水酸化物を用いる場合は、銀化合物の合成液にニッケル水酸化物を投入してもよいし、ニッケル水酸化物に銀化合物の合成液を投入してもよい。両者を同時に別の容器に投入してもよい。加温は反応を促進する。原子数換算によるAg/Ni比は1以上であってもよい。
【0062】
【表10】
但し、Cl、S、N、アルカリは各々100重量ppm以下であった。
【0063】
実施例1、2、3に示すように、本発明の製法によって比表面積を30〜0.1m2/gとすることによって大気中の作業であってもCO2の吸着が少なく0.03wt%以下にできまた大気中の作業時間が十分に確保できる。
【0064】
【発明の効果】
本発明の複合酸化物粉末を陽極材料として使用することにより、高い電池容量を安定して発現できる酸化銀電池を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例1で得られた反応生成物のX線回折図である。
【図2】 電池特性の評価方法を示す電池の断面図である。
【符号の説明】
1 正極材
2 正極缶
3 セパレーター
4 ガスケット
5 負極剤
6 負極缶
Claims (9)
- AgNiO2で示される組成を含む電池用AgおよびNiの複合酸化物であって、比表面積が30m2/g〜0.1m2/gであり、かつ炭素含有量が0.03重量%以下であることを特徴とする電池用AgおよびNiの複合酸化物粉末。
- AgNiO2で示される組成を含む電池用AgおよびNiの複合酸化物であって、原子数換算によるAg/Ni比が1.1より大きく、AgNiO2またはAgNiO2固溶体とAg2Oとからなる複合材料であり、炭素含有量が0.03重量%以下かつ比表面積が30m2/g〜0.1m2/gであることを特徴とする電池用AgおよびNiの複合酸化物粉末。
- AgNiO2で示される組成を含む電池用AgおよびNiの複合酸化物であって、原子数換算によるAg/Ni比が1以上であり、加圧熱水処理を行うことによって炭素含有量が0.03重量%以下かつ比表面積を30m2/g〜0.1m2/gとしたことを特徴とする電池用AgおよびNiの複合酸化物粉末。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の電池用AgおよびNiの複合酸化物粉末を陽極材料として含むことを特徴とする酸化銀電池。
- 平均価数が一価より高い酸化銀を合成する第1段階と、価数が主として三価であるニッケル化合物を合成する第2段階と、該酸化銀と該ニッケル化合物とを反応させてAgNiO2の沈殿物を生成する第3段階と、該沈殿物を分離して350℃以下の温度で加熱乾燥する第4段階とからなり、かつ前記第1〜第3段階の反応がアルカリと酸化剤の共存下で行われることを特徴とする電池用AgおよびNiの複合酸化物粉末の製造方法。
- 第2段階においてニッケル化合物の合成時または合成後に加圧熱水処理を行うことを特徴とする請求項5に記載の電池用AgおよびNiの複合酸化物粉末の製造方法。
- 第3段階においてAgNiO2の沈殿物を生成させた後に酸化銀を添加または生成させてAgをNiに対して過剰にすることを特徴とする請求項5記載の電池用AgおよびNiの複合酸化物粉末の製造方法。
- 第3段階においてAgNiO2沈殿物の生成時または生成後に加圧熱水処理を行うことを特徴とする請求項5に記載の電池用AgおよびNiの複合酸化物粉末の製造方法。
- 請求項5〜8のいずれかに記載の方法で得られた電池用AgおよびNiの複合酸化物粉末を陽極材料として含むことを特徴とする酸化銀電池。
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