JP3896272B2 - 天然皮革製品の判定法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然皮革製品が由来する動物種を判定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
革を製品の全部または一部に用いたかばん、手袋、上衣、ズボン、スカート、ドレス、コート及びプルオーバー、カーディガン、その他セーターについては家庭用品品質表示法に天然皮革の種類もしくは材料の種類についての表示方法が記載されている。皮革の種類によって価値が異なるために、正しい表示を求める消費者だけではなく、生産、流通に関係する者からも皮革の種類を科学的に証明できる方法が求められている。しかしながら、現在主に行われている同定方法は光学顕微鏡もしくは電子顕微鏡による表面および断面の観察が殆どであり、その他の方法として有効な同定方法はないのが現状である。
【0003】
現在皮革の判定法として日本、海外共に規格化されているものはない。また、同定方法として明文化されているものも少なく、殆どが動物種によって異なる皮革の構造的特徴や、皮革の性質が記載されているだけである。
【0004】
皮革の顕微鏡による外観観察は、元々皮自体に外観的特徴が少ないこともあり、熟練した専門家でなければ同定する事は難しい。皮革の同定は光学顕微鏡や電子顕微鏡によって毛穴の大きさ、数、形状、配列の仕方、また銀面の凹凸、断面構造、物理的性質(硬さや手触り)を総合的にとらえ、専門家が経験を元に判断する。しかし、製品となっている革は、通常鞣や染色などの強い処理を受けるために外観や色つやが変化し、同定をより困難なものとする。人工皮革や合成皮革などの人工的に天然皮革に似せて生産されているものから、型押し革と呼ばれる牛床革や豚皮などの表面を加熱加圧することによって他の革に似せる技術もある。このようなものになると専門家でさえも材料となっている動物種を同定することは難しい。国内には専門家が少ないことと、外観観察による同定は人間の感覚と経験に基づく判断となることから、科学的な方法が求められている。
【0005】
近年、様々な分野で生物種を同定することを目的として、DNAを用いる同定方法が利用されている。これは生物種ごとに特異的であるDNA配列を利用するものであり、この特異的な配列を確認することは生物種を同定する方法として充分な科学的な根拠があると認知されている。
【0006】
微量試料中の目的とする配列を簡易的に確認する方法として、PCR反応にて所望の配列を増幅させ、これを電気泳動法にて確認する方法が採用されている。しかしながら、DNAはDNAseの働きや熱によって分解されやすく、また物理的にも弱く剪断されやすい。このため高感度の測定のためには、試料中に保存されている比較的分解されづらい塩基配列を選ぶこと、出来るだけDNAに影響を与えずに試料からDNAを抽出することが重要になる。
【0007】
皮革材料や製品は、製品となるまで様々な処理を受けることから、試料中のDNA量が非常に少なくなり、また損傷を受けることも多い。皮革処理の例として、一般的な銀付きクロム革の処理工程を挙げると以下のごとくなる。
1.原料となる皮は、通常塩漬けされている。
2.水漬けし生皮の状態に戻す。
3.フレッシング(皮の裏面の肉や脂肪を取り除く)。
4.石灰漬け・脱毛。
5.分割(厚さを調節するため2層に分割する)。
6.脱灰。
7.ピックリング(皮をなめしに適した酸性にする)。
8.クロム鞣し
9.シェービング(裏面を削って厚さを均一にする)。
10.中和(酸性のクロム鞣し皮を染色・加脂に適するよう中和する)。
11.染色。
12.加脂(目的に応じた柔らかさを与えるため油剤を加える)。
13.水絞り・セッティング(革を延ばす)。
14.乾燥(一旦乾かして染料、加脂剤を革に固着させる)。
15.味入れ(ステーキングしやすいよう適度に水分を与える)。
16.ステーキング(革を揉みほぐし柔らかくする)。
17.張り革・乾燥(革を平らに乾燥させる)。
18.塗装・つや出し。
【0008】
さらに仕上げの段階では、皮革表面上にコーティングを行う。コーティング処理としては、ベースコート、ミドルコートによって、皮革を被覆し、傷を隠す。また、トップコート剤の浸透を抑える。トップコートは表面の色落ちを防止し、感触、光沢などを調整する。
【0009】
かかる過酷な処理のため天然皮革製品中のDNAの判定可能な量を抽出するのは非常に困難なものとなっている。またDNAを少量抽出したとしても、変性を受けたものであることが多く、一般の試料に使用されるような強い処理を受けていない試料、例えば肉種判定等のDNA同定法に用いるプライマーを使用しても、強い処理を受けている皮革を同定する際には使用できない。例えば、DNA解析による肉種判定法(松永孝光ら,平成9年度畜産物需要開発調査研究事業報告書,p131-137,農畜産業振興事業団)に使用されているプライマーは、皮革のDNAによる同定法では使用できなかった。
上記のような事情から、現在までDNA配列を利用した皮革材料の判定方法は全く知られていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、天然皮革製品を科学的に高精度で同定するための方法を提供することを目的とする。より詳しくは、本発明は天然皮革製品から操作可能な量のDNAを抽出する方法、および抽出されたDNAに基づき天然皮革製品が由来する動物種を判定する方法、および該方法に有用な、動物種に特異的なプライマーを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、天然皮革製品試験片の表面皮膜を、物理的処理により除去する工程、
該試験片を細切する工程、
細切した試験片へ、コラゲナーゼを作用させる工程、
試験片からDNAを抽出する工程
を含む、天然皮革製品からDNAを抽出する方法を提供する。
本発明の方法によって、従来不可能であるとされていた天然皮革製品から、PCR反応等の従来公知の方法により操作可能な量のDNAの抽出が可能となった。
【0012】
本発明はさらに天然皮革製品試験片の表面皮膜を、物理的処理により除去する工程、
該試験片を細切する工程、
細切した試験片へ、コラゲナーゼを作用させる工程、
試験片からDNAを抽出する工程、
抽出したDNAを鋳型として、予測される動物種由来の種特異的プライマーを用いたPCR反応により種特異的DNA断片を増幅する工程、
増幅されたDNAを分析する工程
を含む、天然皮革製品の判定方法を提供する。
【0013】
本発明の方法によって、適当なプライマーを用いればウシ、ブタ革製品のみならず、ヒツジ、ヤギ、ウマ、シカ、オーストリッチ、ヘビ、ワニ、トカゲ等、様々な動物種由来の天然皮革製品の判定を行うことが可能となった。
種特異的プライマーとしては、以下に説明する本発明のウシ種判定用プライマーおよびブタ種判定用プライマーが特に好適に用いられる。本発明の方法において、用いるプライマーは特に種特異性が高くかつ配列がよく保存されている部位に由来するものである必要がある。例えば公知のヒツジ種用プライマーやヤギ種用プライマーを用いることができる。
【0014】
ここで「天然皮革製品」とは、なめし処理を施された天然皮全てを含み、染色処理、表面コーティング処理の有無を問わない。また、最終製品の形に縫製されたものおよび最終製品製造のための材料として供給される皮革の両方を含むものとする。
【0015】
本発明はさらに、ウシ種判定用プライマーとして有用なusi F284(配列番号1)および usi R457(配列番号2)を提供する。本発明のウシ種判定用プライマーで増幅される増幅産物のサイズは175bpである。本発明はさらにブタ種判定用プライマーとしてbutaF284(配列番号3)およびbutaR457(配列番号4)を提供する。本発明のブタ種判定用プライマーで増幅される増幅産物のサイズは174bpである。
【0016】
本発明のプライマーは、DNAの保存性が比較的良いとされているミトコンドリアDNA中において、変異率が高く、生物種ごとに特有の配列を持っているとされるチトクロムb遺伝子の配列を利用して、独自に設計したものであり、非常に高い種特異性を示す。
【0017】
本発明のプライマーは本発明の天然皮革製品の判定方法のごとき、非常に高い種特異性の要求される判定において特に好適に用いられるが、その他、例えば生肉の判定等、比較的損傷を受けない状態にてDNA試料を採取でき、したがってさほど高い種特異性が要求されないDNA判定においても、好適に用いることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の方法において、判定対象の天然皮革製品の試験片の表面皮膜を物理的処理により除去する。ここで表面皮膜とは、皮革製品のいわゆるトップコートをいい、感触、光沢などを調整するために皮革製品の最も付与される層である。革製品にはその用途、目的により様々な材質のトップコートが施されているが、本発明の方法においては、トップコートの材質、厚みにかかわらず、最初にこれを除去する。
【0019】
本明細書において「物理的処理により除去する」とは、薬品等を使用せずに表面皮膜を除去することを言い、具体的には皮膜が容易に剥がせる場合には、適当な大きさに裁断した試験片の表面皮膜を例えばピンセット等によりつまみ、これを剥がせばよい。表面皮膜が容易に剥がすことのできないものである場合には、やすり等で削り取ってもよい。
【0020】
次いで試験片を細切する。細切はハサミ、ナイフ等、常套の手段により行えばよい。細切片の大きさは限定的ではないが、例えばハサミで約2×2cm、約200mg程度の試験片を細切する場合に、15〜30分間程度切断操作を行えばよい。
【0021】
得られた細切試験片から、DNAを抽出する。DNA抽出操作において、細切試験片をまず界面活性剤等を含有するDNA抽出用液中へ分散させる。ここで用いるDNA抽出液としてはタンパク質分解酵素が含有されていないものであれば特に限定的ではないが、界面活性剤であるSDSやポリエチレングリコール、およびEDTA、DTTを含有するものが例示され、市販のものがいずれも好適に用いられる。
【0022】
判定対象である天然皮革製品の種類や、染色等の施された処理により、DNA抽出液が染料で濃色に汚染される場合がある。かかる場合にはDNA抽出液を投入した後遠心分離し、上清を交換して再度細切試験片を分散させる操作を抽出液の色が充分薄いものとなるまで繰り返した後に次の操作へ移せば良い。
【0023】
DNA抽出液中へ分散させた細切試験片へ、コラゲナーゼを作用させる。コラゲナーゼとしては、市販のものがいずれも好適に用いられ、例えば、カニ由来のコラゲナーゼ(C-C Biotech Corporation製)などが好適に用いられる。
【0024】
コラゲナーゼによる処理は、これに限定されないがコラゲナーゼを投入した後37℃で10〜20時間、ゆっくり攪拌しながらインキュベーションする。作用させるコラゲナーゼ量は限定的ではなく、試験片の種類や状態によって適宜選択すればよい。例えば50mgの細切試験片に対してコラゲナーゼ10ユニットを10〜20時間作用させればよい。コラゲナーゼを作用させた後、細切試験片が溶解しているかどうかを目視確認する。コラゲナーゼ10ユニットによる処理によって試験片が溶解していない場合には、さらに10ユニットのコラゲナーゼを追加して同様の処理を繰り返せばよい。
【0025】
コラゲナーゼ処理により、目視で細切試験片がDNA抽出液中へ1/3程度溶解したことが確認されたら、試料を攪拌し、遠心分離により不溶物を沈殿させる。得られる上清から、常套の方法、例えば当業者によく知られたフェノールとクロロホルムを用いた方法によりDNAを単離、精製する。
【0026】
こうして天然皮革製品試験片より単離したDNAを鋳型とし、種特異的プライマーを用い、PCR反応により種特異的DNA断片を増幅させる。
ウシ種由来の天然皮革製品の判定のためには、配列番号1および2の本発明のウシ種判定用プライマーが、そしてブタ種由来の天然皮革製品の判定のためには、配列番号3および4のブタ用プライマーが特に好適に用いられる。
【0027】
PCR反応は、当業者には良く知られている方法であり、DNAの目的とする一部分のみを大量に増幅させる方法である。種特異的プライマーを用いてPCR反応を行えば、使用したプライマーがハイブリダイズし得る配列を有する鋳型DNAのみが増幅され、他の種由来の鋳型DNAは増幅されない。したがって、種特異的プライマーを用いてPCR反応を行い、得られるPCR増幅物を解析することによって、試験片が由来する種の判定が可能となる。
【0028】
PCR反応の一般的手法については当業者には良く知られており、一般的な教科書等にも記載されている。PCR反応としては以下の実施例1に記載した方法のみならず、いずれの公知の方法、あるいはそのいかなる改変方法を用いて行ってもよい。
【0029】
PCR反応により得られるDNA増幅物を次いで解析する。DNA断片の解析は公知のいずれの方法によって行ってもよく、例えば当業者に良く知られたアガロースゲル電気泳動法を用いて、蛍光物質で標識したDNA増幅物の電気泳動を行い、紫外線照射によってこれを検出すればよい。
【0030】
本発明の方法は、従来経験に基づいて行われていた天然皮革製品の同定にあたって科学的手法を導入することが可能とするものである。本発明の方法は、誰が行っても同一の結果が得られる、客観的な判定方法である。本明細書ではウシ種判定用、ブタ種判定用の2種類のプライマーのみを示したが、他の適当な種特異的プライマーを用いれば、その他の皮革の判定も可能となる。以下実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
本発明のプライマーの種特異性を確認するために、DNAの抽出が比較的簡単な生肉(豚肉と牛肉)からDNAを抽出し、これらを鋳型とし、本発明のプライマーを用いてPCR反応を行った。
【0031】
生肉からのDNA抽出
試薬等は生化学用もしくは特級を使用した。また、使用試薬、水、容器及び器具については全て滅菌済みのものを使用した。
1.豚肉および牛肉試料をそれぞれ200mg取り、エッペンドルフテストチューブ2.0mlに投入した。
2.DNA extraction buffer(DEB)(400mM Tris-HCl pH8.0, 60mM EDTA, 1% SDS, 0.1% PEG-400, 5mM DTT)を1mlと、10U プロテイナーゼ Kを投入し、50℃で3時間以上インキュベーションした。
3.インキュベーション後の試料を撹拌し、12000rpm, 5分間遠心分離した。上清を別のチューブに移し、300μlのフェノールを加え、15分間混合した。
4.ここへ300μlのクロロホルムを加え、さらに5分間混合した。
5.2000rpm, 1分間遠心分離した。上清を別のチューブに移し、0℃で15分間保冷した。
6.次いで13000rpm, 5分間遠心分離し、上清をDNA回収用フィルター、Microcon-100を用いて精製した。
得られたDNA試料を30μlの10mM Tris-HCl(pH8.0)に溶解して、PCR反応に供した。
【0032】
PCR反応
・プライマーの特異性の確認
本発明の各プライマー、即ちウシ種用プライマーusiF276及びusiR459(配列番号1および2)およびブタ種用プライマーbutaF284及びbutaR459(配列番号3および4)を用いた。増幅産物のサイズはウシ種 175bp、ブタ種 174bpである。上記で得られた各DNA試料を鋳型とし、以下のPCR反応プロトコルにて各プライマーを用いて増幅させた。
PCR反応液
滅菌水 38.2μl
10×PCR緩衝液 5μl
10mM dNTP混合物 1.5μl
プライマー 各1μl
50mM MgCl2 1.5μl
Tween 20(1%w/v) 0.5μl
DNA試料 1μl
PLATINUM Taq DNA ポリメラーゼ 0.5μl(2.5ユニット)
PCR反応には、インビトロジェン(株)のポリメラーゼおよびその付属試薬を使用した。また、ネガティブコントロールとして、DNA試料の代わりに1μlの10mM Tris-HCl(pH8.0)を投入したものを用いて同様に以下のPCRサイクルに供した。
【0033】
PCR反応条件
94℃ 5分間
94℃ 30秒間,64℃ 30秒間,72℃ 30秒間 35サイクル
94℃ 30秒間
64℃ 30秒間
72℃ 7分間
PCR反応は、HYBAID PCR SPRINT temperature cycling systemを使用して上記温度サイクルを実施した。
【0034】
PCR反応終了後、得られたPCR産物を1.8%アガロースS((株)ニッポンジーン)のゲルを用いた電気泳動により分析した。電気泳動条件は、100V、25分間とした。分子量マーカーとして、Ready-Load 100bp DNA ladderを同時に電気泳動にかけた。電気泳動後、常套法により各バンドの位置を観察した。結果を図1に示す。
【0035】
図1において、左より
1.分子量マーカー
2.牛肉由来DNA×ウシ種判定用プライマー
3.豚肉由来DNA×ブタ種判定用プライマー
4.豚肉由来DNA×ウシ種判定用プライマー
5.牛肉由来DNA×ブタ種判定用プライマー
6.ネガティブコントロール×ウシ種判定用プライマー
7.ネガティブコントロール×ウシ種判定用プライマー
8.分子量マーカー
を示す。
【0036】
図1より、牛肉より抽出したDNA試料は、ウシ種判定用プライマーを用いた場合にのみ増幅物が検出され、ブタ種判定用プライマーを用いた場合は増幅されなかったことがわかる。同様に、豚肉より抽出したDNA試料では、ブタ種判定用プライマーを用いた場合にのみ増幅物が検出され、ウシ種のプライマーを用いた場合は増幅されなかった。
これらのことより、本発明のプライマーを用いて試料DNAを鋳型としてPCR反応を行い、得られるPCR産物を解析すれば、試料の由来がウシ種およびブタ種のいずれであるかを特異的に区別し得ることを確認した。
【0037】
【実施例2】
上記本発明のプライマーを用いて、本発明の方法により天然皮革製品のDNAを判定した。試薬等は生化学用もしくは特級を使用した。また、使用する試薬や水、使用するチューブ、チップ、容器は可能なものについては全て滅菌済みを使用した。
牛革および豚革製品の2×2cmの試験片を用いた。
1.各試験片表面の表面皮膜であるトップコート層を剥がし、残渣をやすりで削り取った。
2.各試験片をそれぞれハサミで15分間程度切り刻み、細切した。
3.試料をそれぞれ50mg取り、2.0ml容のエッペンドルフテストチューブへ投入した。
4.DNA extraction buffer(DEB)(400mM Tris-HCl pH8.0, 60mM EDTA, 1% SDS, 0.1% PEG-400, 5mM DTT)を1ml投入した。室温で数回振到攪拌したところ、液中へ染料が溶け出したため、12000rpm, 5分間遠心分離し、上清を500μl捨てた後、再度DEBを500μl投入し、室温で数回振到攪拌した。
5.コラゲナーゼ(Crab hepatpancreas由来、C-Cバイオテク社 CCB301-1)10ユニットを投入し、37℃で12時間、ゆっくり攪拌しながらインキュベーションした。インキュベーション後に試料を観察したところ、全体が溶けていなかったため再度10ユニットのコラゲナーゼを追加し、12時間インキュベーションした。
【0038】
6.目視判定にて試料のおよそ1/3が溶解したことを確認し、次いで試料を撹拌し、12000rpm, 5分間遠心分離した。上清を別のチューブに移し、300μlのフェノールを加え、15分間混合した。
7.300μlのクロロホルムを加え、5分間混合した。
8.2000rpm, 1分間遠心分離した。上清を別のチューブに移し、0℃で15分間保冷した。
9.13000rpm, 5分間遠心分離し、上清をMicrocon-100(宝酒造(株))を用いて精製してDNAを得た。
DNAを30μlの10mM Tris-HCl(pH8.0)へ懸濁して、PCR反応に供した。
【0039】
・ウシ及びブタの革の同定
ウシ革及びブタ革から上記の方法でDNAを抽出したものを鋳型として、PCRによりDNAを増幅した。PCR反応は実施例1と同様にして行った。また、ネガティブコントロールとしてDNA抽出物に代えてTris-HClバッファーを投入した。得られたPCR産物を次いで実施例1と同様にして電気泳動によって分離した。結果を図2に示す。
図2は、左のレーンより順に
1. 分子量マーカー
2.牛革由来DNA×ウシ種判定用プライマー
3.豚革由来DNA×ブタ種判定用プライマー
4.豚革由来DNA×ウシ種判定用プライマー
5.牛革由来DNA×ブタ種判定用プライマー
6.ネガティブコントロール×ウシ種判定用プライマー
7.ネガティブコントロール×ブタ種判定用プライマー
8.分子量マーカー
である。
【0040】
図2から明かなように、ウシ革試験片より抽出したDNAは、ウシ種判定用プライマーを用いた場合にのみ増幅され、ブタ種判定用プライマーでは増幅されなかった。一方、ブタ革試験片より抽出したDNAは、ブタ種判定用プライマーを用いた場合にのみ増幅され、ウシ種判定用プライマーでは増幅されなかった。
【0041】
【比較例1】
皮革を肉からのDNA抽出方法と同様の操作で処理してDNAを抽出した。即ち、実施例2と同じ牛及び豚革試験片をそれぞれ200mg取り、2.0ml容のエッペンドルフテストチューブ2.0mlに投入した。次いでDNA extraction buffer(DEB)(400mM Tris-HCl pH8.0, 60mM EDTA, 1% SDS, 0.1% PEG-400, 5mM DTT)を1mlと、10U プロテイナーゼ Kを投入し、50℃で3時間以上インキュベーションした。インキュベーション後、実施例1と同様にしてDNAを抽出し、抽出したDNAを本発明のプライマーを用いたPCR反応に供し、これを電気泳動にかけた。
電気泳動の結果、ブタ、ウシともに生肉のDNAは抽出され、測定可能であったが、ウシ、ブタ共に皮革由来のDNAは検出されなかった。
【0042】
【配列表】
Figure 0003896272

【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1の結果を示す、電気泳動結果の写真である。
【図2】 本発明の実施例2の結果を示す、電気泳動結果の写真である。

Claims (5)

  1. 天然皮革製品試験片の表面皮膜を、物理的処理により除去する工程、
    該試験片を細切する工程、
    細切した試験片へ、コラゲナーゼを作用させる工程、
    試験片からDNAを抽出する工程を含む、天然皮革製品からDNAを抽出する方法、但し天然皮革製品は脱毛処理を経て得られたものである
  2. 天然皮革製品試験片の表面皮膜を、物理的処理により除去する工程、
    該試験片を細切する工程、
    細切した試験片へ、コラゲナーゼを作用させる工程、
    試験片からDNAを抽出する工程、
    抽出したDNAを鋳型として、予測される動物種由来の種特異的プライマーを用いたポリメラーゼチェインリアクションにより種特異的DNA断片を増幅する工程、
    増幅されたDNAを分析する工程を含む、天然皮革製品の判定方法、但し天然皮革製品は脱毛処理を経て得られたものである。
  3. 天然皮革製品が、ウシ、ブタ、ヒツジまたはヤギ由来のものである、請求項1または2記載の方法。
  4. 種特異的プライマーが、usiF276(配列番号1)およびusiR459(配列番号2)であり、ウシ由来天然皮革製品を判定するための方法である、請求項2記載の方法。
  5. 種特異的プライマーが、butaF284(配列番号3)およびbutaR457(配列番号4)であり、ブタ由来天然皮革製品を判定するための方法である、請求項2記載の方法。
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JP2016224007A (ja) * 2015-06-03 2016-12-28 一般財団法人日本皮革研究所 皮革の動物種を判定する方法

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