JP3895047B2 - 盗聴器検知装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、室内や電話回線等に仕掛けられた無線送信方式の盗聴器の有無及びその位置を検知する盗聴器検知装置に関し、特に検知の自動化、精度の向上、位置探索作業の効率化を可能とする盗聴器検知装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
盗聴した音声を無線により盗聴者へ送信する従来の電波式盗聴器の存在を検知する装置としては、第1に、簡単なものとして、盗聴器が発する電磁波を検知し、その電磁波の有無又は電磁波強度に応じ、音、メータ表示といった手段により盗聴器が存在する可能性を警告するものがあった。また、第2に、音声、純音などをスピーカより送出しつつ、広帯域受信機の受信周波数をスキャンしながら、スピーカ送出信号と受信信号とを比較し、同一の信号を持つ電波が受信された場合に、盗聴器が仕掛けられているとして警告を出すものもあった。この第2の従来技術は、例えば、特公昭57−6066号公報、特開昭49−24089号公報、特開平9−139768号公報、特開平9−275446号公報に開示されるものである。
【0003】
また上記第1、第2の従来の盗聴器検知装置は、盗聴器位置を探索するための装置としても利用されている。例えば、第1の従来技術に係る装置で盗聴器位置を探索するために用いられる方法は、その受信感度を順次下げていくことにより、盗聴器の設置位置を絞り込んでいくというものである。一方、第2の従来技術に係る装置で用いられる方法は、スピーカより発生する音量を順次下げていくことにより、盗聴器の設置位置を絞り込んでいくものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、例えば、通常の室内環境を考えてみると、テレビ、ラジオ、蛍光灯、電子レンジなど、盗聴器以外にも微弱電波を発生する機器が多数存在する。よって、上記第1の従来技術には、電波が存在することにより、単純に盗聴器が存在すると結論づけることはできないという問題があった。そのため第1の従来技術によって盗聴器を確実に検出するためには、訓練を積んだ、経験・知識の豊富なオペレータによる操作が必須であり、人手を煩わせずに自動的に盗聴器を検出することには適していないという問題があった。
【0005】
また第2の従来技術には、次に挙げる理由から、スピーカからの送出信号と受信信号との比較結果が不安定になる場合があり、盗聴器有無の判定誤りが生じるという問題があった。比較結果が不安定となる第1の理由は、盗聴器からの電波のS/N比が良くない場合があるということである。例えば、電話盗聴器など電話回線上に盗聴器が仕掛けられており、盗聴器(電波発信源)が盗聴器検知装置のある場所(電話受話器前など)から離れた場所に存在する場合や、盗聴器からの送出電波が非常に微弱である場合や、盗聴器検知装置の設置場所がたまたま受信状態の悪い場所であった場合などがそのような場合に該当する。また第2の理由は、テレビ・ラジオ、その他業務、アマチュア無線電波などの一般放送電波には、音声信号が必ずと言えるほど含まれており、スピーカより送出した音声信号と類似した信号を持つ合法的な電波が絶えず飛び交っているということである。
【0006】
これら2つの理由のうち、第1の理由に関しては、スピーカから送出する純音の近傍周波数のみを通過帯域とするバンドパスフィルタを広帯域受信機の後段に設けることにより、ノイズ成分がカットされるので多少の改善が期待される。しかし、第2の理由に対しては、一般放送電波の信号は音声、音楽など広帯域信号であり、前記送出純音と同じ周波数成分の信号も含んでいるため、前記バンドパスフィルタを設けても、これら一般放送電波の信号から絶えず純音出力が得られる結果となる。すなわち、バンドパスフィルタを設けるという方法では、判定誤りを回避することはできない。
【0007】
また、盗聴器位置を探索することに関しては、第1、第2の従来技術に関する上述の方法は、装置から盗聴器までの距離がある程度まで絞られていれば、第1の従来技術に関しては電波、第2の従来技術に関しては音波の強度の変化を検知することが期待できる。しかし、電波又は音波は平面波としての性格が強いため、装置から盗聴器までの距離が絞り込まれていない状態では、盗聴器からの距離が多少増減しただけでは、電波、音波の強度は大きくは変化しない。また、電波、音波の強度は、反射等の影響により環境によっては必ずしも距離に反比例して変化しない。よって、いずれの従来技術についても、盗聴器の位置を絞り込むためにはかなりの距離を移動しなければならず、数多くの試行回数が必要となり、探索作業の効率が低いという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、電波式盗聴器の有無を精度良く検知でき、また自動的な検知を可能とする盗聴器検知装置を提供し、また盗聴器の位置の探索作業を効率良く行うことができる盗聴器検知装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る盗聴器検知装置は、パルス継続時間中に周波数が推移するパルスであって所定の時間圧縮処理により圧縮パルスに変換可能な音波パルスを発する音波発生手段と、電波を受信して音声信号を復調する無線受信手段と、復調された前記音声信号に対し、前記音波パルスに応じた前記時間圧縮処理を行うパルス圧縮手段と、前記パルス圧縮手段での時間圧縮処理結果における前記圧縮パルスの有無に基づいて前記盗聴器の有無を判断する判断手段とを有し、前記音波発生手段は、複数の前記音波パルスをランダムな時間間隔で発生し、前記判断手段は、複数の前記音波パルスに応じた複数の前記圧縮パルスに基づいて前記盗聴器の有無を判断することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、音波発生手段は、パルス継続時間中に周波数が推移するパルスであって所定の時間圧縮処理により圧縮パルスに変換可能な音波パルスを発する。例えば、そのような音波パルスは、周波数が線形に増加、又は減少する時間引き伸しパルス(Time-Stretched Pulses)であり、これはチャープパルスとも呼ばれている。時間引き伸しパルスとは、瞬時周波数が低周波数から高周波数へ、或いは高周波数から低周波数へと有限の時間をかけて順次推移するものである。この時間引き伸しパルスに対する前記時間圧縮処理は、当該パルスに対して、当該パルスの時間波形を時間軸上で反転した波形をインパルスレスポンスとして持つフィルタ(以下、マッチドフィルタと呼ぶ)を掛けるという処理であり、当該時間圧縮処理により、パワーが時間軸上の1点に集中したパルス(圧縮パルス)に変換されることが知られている。盗聴器検知の精度・信頼性を向上させ、また自動検知を可能とするため、本発明に係る盗聴器検知装置は、盗聴器に受信させるための音として、上記時間引き伸しパルスのような音波パルスを用いる。そして、パルス圧縮手段が、受信された音声信号に対してマッチドフィルタリング処理といった時間圧縮処理を施す。時間圧縮処理により、パルス継続時間長にわたって分散していた音波パルスのエネルギは時間軸上の1点に集中され、得られる圧縮パルスの振幅は相対的に非常に大きなものとなる。一方、前記音波パルスではない一般の放送電波信号や、ノイズ信号は、前記音波パルスのようなパワーの時間軸上の1点への集中は起きない。また前記音波パルスは、周波数が所定の規則で推移する特殊な信号であるため、類似信号が一般放送電波中に存在する確率は極めて低い。従って、受信された音声信号にノイズ成分が多く重畳している場合であっても、時間圧縮処理を施すことにより、著しくS/N比が改善される。つまり、圧縮パルスの有無は正確かつ容易に検知される。判断手段は、従来技術のように音波発生手段から出力した音声・純音などを表す音声信号と無線受信手段により受信され復調された音声・純音などを表す音声信号とを単純に比較するのではなく、この圧縮パルスが得られるか否かを判定基準として盗聴器の有無を精度良く判断する。
【0012】
上述したように前記音波信号は特殊な信号であり、類似信号が一般放送電波やノイズ中に存在する確率は低い。しかし本発明によれば、さらに前記音波パルスを複数個、順次送出し、時間圧縮処理の結果、それらの全部、又は所定複数個数以上について圧縮パルスが得られたことをもって、盗聴器の有無を判断することにより確実に誤検出を除去し、盗聴器検出精度を更に高めることができる。
【0013】
本発明は、前記音波発生手段がランダムな時間間隔で前記複数の音波パルスを発生することを特徴とするものである。もし、何らかの人工的な、又は自然現象により音波パルスと類似信号を生じる電波又は音波の信号源があったとした場合、それが周期的に類似信号を発生する可能性は比較的高い。もし、音波発生手段が周期的に音波パルスを発生するとした場合、たまたまそのような信号源の周期と一致すると、類似信号によって判断手段での判定基準の個数の圧縮パルスが生じ、誤検出となる可能性がある。本発明によれば、複数の音波パルスをランダムな間隔で発することにより、類似信号により判定基準以上の多数の圧縮パルスが偶発的に生じる可能性が一層低減される。
【0014】
また、本発明は、盗聴した音を無線送信する盗聴器を検知する盗聴器検知装置であって、パルス継続時間中に周波数が推移するパルスであって所定の時間圧縮処理により圧縮パルスに変換可能な音波パルスを発する音波発生手段と、電波を受信して音声信号を復調する無線受信手段と、復調された前記音声信号に対し、前記音波パルスに応じた前記時間圧縮処理を行うパルス圧縮手段と、前記パルス圧縮手段での時間圧縮処理結果における前記圧縮パルスの有無に基づいて前記盗聴器の有無を判断する判断手段と、を有し、前記音波発生手段は、周波数の推移率が互いに異なる複数の前記音波パルスを順次発生し、前記判断手段は、複数の前記音波パルスに応じた複数の前記圧縮パルスに基づいて前記盗聴器の有無を判断すること、を特徴とする。同様にもし、何らかの繰り返し類似信号を発生する信号源があったとした場合、それが毎回ほぼ同一の周波数推移率(スイープ率)を伴うパルスを発生する可能性は比較的高い。よってもし、たまたまそのような信号源のパルス波形と一致すると、類似信号によって判断手段での判定基準の個数の圧縮パルスが生じ、誤検出となる可能性がある。本発明によれば、複数の音波パルスの周波数推移率をパルス間で異ならせることにより、類似信号により判定基準以上の多数の圧縮パルスが偶発的に生じる可能性が一層低減される。例えば、スイープ率はランダムに変化させられる。
【0015】
また、本発明は、盗聴した音を無線送信する盗聴器を検知する盗聴器検知装置であって、パルス継続時間中に周波数が推移するパルスであって所定の時間圧縮処理により圧縮パルスに変換可能な音波パルスを発する音波発生手段と、電波を受信して音声信号を復調する無線受信手段と、復調された前記音声信号に対し、前記音波パルスに応じた前記時間圧縮処理を行うパルス圧縮手段と、前記パルス圧縮手段での時間圧縮処理結果における前記圧縮パルスの有無に基づいて前記盗聴器の有無を判断する判断手段と、を有し、前記盗聴器に受信される音波パルスが受けたドップラ効果を、前記無線受信手段により受信された音波パルスから検出し、当該ドップラ効果から求められる前記盗聴器と前記音波発生手段との相対運動情報に基づいて当該盗聴器の位置情報を取得する位置情報取得手段を有することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、静止した盗聴器に対して音波発生手段を移動させることにより、音波発生手段から発せられた音波パルスと、盗聴器で受信された音波パルスとの間にはドップラ効果に伴う時間軸の差異が生じうる。例えば、音波発生手段が盗聴器に近づくような向きに移動する場合には、盗聴器で受信される音波の時間軸は、音波発生手段から発せられる音波の時間軸に比べて圧縮される。逆に、遠ざかる場合には、伸長される。よって、位置情報取得手段は、例えばその圧縮・伸長の違いに基づいて、音波発生手段が盗聴器に近づいているのか、盗聴器から遠ざかっているのかを判断することができ、盗聴器が音波発生手段の位置からその進行方向側の領域にあるのか、後方側の領域にあるのかといった位置情報を取得する。また、一定の方向に音波発生手段を移動させて圧縮・伸長が反転した場合には、その反転位置を通り音波発生手段の進行方向と直交する平面近傍に盗聴器が存在するという位置情報が得られる。
【0017】
本発明の好適な態様においては、前記音波発生手段が複数の前記音波パルスを順次、発生し、前記位置情報取得手段が前記音波パルスの前記無線受信手段による受信間隔と前記音波発生手段による発生間隔との相違に基づいて前記ドップラ効果を検出することを特徴とする。この態様においては、ドップラ効果は、受信手段により受信された音波パルス(これは、盗聴器で受信された音波パルスに相当する)の時間間隔が、音波発生手段から発せられた当初の音波パルスの時間間隔より短いか長いかに基づいて検出される。つまり、時間間隔が当初より短くなるときは、音波発生手段は盗聴器に近づいており、時間間隔が当初より長くなるときは、音波発生手段は盗聴器から遠ざかっていると判断することができる。
【0018】
また別の本発明の好適な態様においては、前記位置情報取得手段が前記音波パルスの前記無線受信手段による受信時の周波数と前記音波発生手段による発生時の周波数との相違に基づいて前記ドップラ効果を検出することを特徴とする。この態様においては、ドップラ効果は、受信手段により受信された音波パルスの周波数が、音波発生手段から発せられた当初の音波パルスの周波数より高い方にシフトしているか低い方にシフトしているかに基づいて検出される。つまり、周波数が当初より高くなるときは、音波発生手段は盗聴器に近づいており、周波数が当初より低くなるときは、音波発生手段は盗聴器から遠ざかっていると判断することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態である盗聴器検知装置について図面を参照して説明する。
【0020】
図1は本発明を適用した盗聴器検知装置の概略の構成を示すブロック図である。本装置は、大きくは音波発生手段2と無線受信手段4と表示装置6と、それらの制御及び得られたデータの処理を行う中央処理装置(Central Processing Unit、以下CPU)8とを含んで構成される。音波発生手段2は、空間に音響波である音波パルスを送出するため手段で、メモリ10、D/A変換器12、低域通過フィルタ(Low Pass Filter、以下LPF)14、アンプ16、スピーカ18を含んで構成される。D/A変換器12は、CPU8から命令を受け、メモリ10にディジタル信号として予め記憶された時間引き伸しパルスデータ20をアナログ信号へ変換する。アナログ化された信号はLPF14により高周波数成分がカットされ、アンプ16にて増幅された後、スピーカ18により空中に音響信号として送出される。ここで、送出しようとする音響信号の最高周波数をfHとすると、D/A変換器12は、最低でもfHの2倍の周波数でサンプリングできるものである必要がある。またLPF14はD/A変換器12のサンプリング周波数の1/2のカットオフ周波数をもつアンチエイリアシングフィルタであり、スピーカ18は所望の送出信号の持つ最高周波数fHまで出来るだけフラットな出力特性を持つものが望ましい。
【0021】
無線受信手段4は、盗聴器から空間に送出された電磁波を受信するための手段で、空中線30、広帯域受信機32、LPF34、A/D変換器36、メモリ38を含んで構成される。空中線30、広帯域受信機32により、所望の周波数の電磁波が選択受信、復調され、可聴周波数の電気的信号(以下、音声信号と記す)へと変換される。復調により得られた音声信号はLPF34を通過後、CPU8からの命令を受けA/D変換器36によりデジタル信号へと変換されメモリ38に保持される。なお、A/D変換器36は前記スピーカ18より送出した時間引き伸しパルスの持つ最高周波数fHの最低2倍の周波数でサンプリングできる必要がある。またLPF34はA/D変換器36のサンプリング周波数の1/2のカットオフ周波数をもつアンチエイリアシングフィルタである。
【0022】
CPU8は、例えばパルス圧縮処理40、盗聴器有無判断処理42、位置情報取得処理44などの処理を行う。このうちパルス圧縮処理40では、無線受信手段4により受信されメモリ38に保持された音声信号に、音波発生手段2からの送出の際に用いたメモリ10に保持されている時間引き伸しパルスデータ20を時間軸上で反転したデータを用いてマッチドフィルタリング処理を施す。すなわち、CPU8はパルス圧縮手段として機能する。
【0023】
ここでマッチドフィルタリング処理について簡単に説明する。一般に時間的に瞬時周波数の上昇する時間引き伸しパルスをN点FFTした信号は、(1)式、(2)式で表現される。
【0024】
【数1】
ここで X*はXの複素共役を表す。n=N/2においてX(n)が実数であるという条件から次式で表される関係が得られる(鈴木陽一他、時間引き延ばしパルスの設計法に関する考察、信学技法EA92−86)。
【0025】
【数2】
また、この式においてkは瞬時周波数の推移率(以下、スイープ率と称す)に対応する定数で、kの逆数に比例してスイープ率は大きくなる、すなわち急激に周波数が変化する。また、この時間引き伸しパルスのマッチドフィルタは位相の回転を巻き戻すフィルタであるため
【数3】
となる。一般に(1)式、(2)式で表現される時間引き伸しパルスは、音波発生手段2と盗聴器との相対運動によりドップラ効果を受けるので、ここではそのドップラ効果を受ける場合を考える。一般に、発信周波数f0の発信源が速度vで受信源に向けて移動した場合、受信源でのドップラ効果を受けた周波数fは次式で表される。なお、cは音速を表している。
【0026】
【数4】
例えば、vが正の場合、受信された音波パルスの周波数fは音波発生手段での当初周波数f0より高い周波数にシフトし、逆にvが負の場合、fはf0より低い周波数にシフトする。
【0027】
また、(4)式、(5)式におけるnは、サンプリング周波数をfsとした場合、周波数fとの間に、f=fs・n/Nという比例関係がある。従って(4)式、(5)式におけるnに関しても、(6)式におけるfと同様なドップラ効果の影響を受ける。従って、音波発生手段2から送出される音波パルスが時間引き伸しパルスであった場合、ドップラ効果を受けた受信信号を周波数軸で表現すると(1)、(2)及び(6)式より
【数5】
となる。すなわち、ドップラ効果を受けた時間引き伸しパルスはスイープ率に対応する定数kが 、k((c−v)/c)2≡k'へと変化した時間引き伸しパルスとなる。ここでドップラ効果の影響を受けた(7)、(8)式で表される信号に、(4)、(5)式で表される送出した時間引き伸しパルスのマッチドフィルタを畳み込むと、周波数軸では掛け算となり、
【数6】
と表される。マッチドフィルタリング処理されたX(n)は、音源の移動速度vが0の場合にはk'=kとなることから、時間軸上の一点に圧縮されたパルスを意味する。一方、vが0でない場合は(9)、(10)式が表す波形は圧縮のされ方が不完全なパルス状波形となる。しかし、スピーカの移動速度vが十分に遅い場合にはk'はkに近い値をとり、完全な鋭いパルスとはならないまでも充分にパワーが集中したパルス状波形となる(実際にはスイープ率の極めて高い時間引き伸しパルスになる)。
【0028】
単に盗聴器の有無を調べる際には、スピーカ18は基本的に移動せずに音波パルスが発せられる。また盗聴器も一般には動かないので、無線受信手段4が音波パルスを受信した盗聴器からの無線電波を検知した場合には、CPU8でのマッチドフィルタリング処理(パルス圧縮処理40)にて、完全な圧縮パルス信号が得られるはずである。また、スピーカ18と盗聴器が相対運動している場合でも、パワーが集中したほぼ完全に近い圧縮パルス信号波形が得られるはずである。よって、CPU8はそれらの圧縮パルス信号が得られた場合には、盗聴器有無判断処理42により盗聴器が存在すると判定し、結果を表示装置6に表示する。すなわち、CPU8はここで盗聴器の有無を判断する判断手段として機能している。
【0029】
表示装置6は例えば画面表示可能な装置であるが、盗聴器の有無の判断結果を通知する目的にはその他、警告灯であるランプ、警告音を出すスピーカなど注意を引くあらゆる手段を用いることができる。また表示装置6は盗聴器検知装置の本体の近傍にある必要はなく、電話線を介し、離れた場所に設置されていてもよい。これにより、検知装置本体を一又は複数のユーザの各監視対象室内に配置し、無人で自動的に盗聴器の有無を検知する動作を行わせしめ、遠隔にいる管理者が表示装置6上でその結果を集中的に監視し、警告が発せられた場合にのみ、現地に赴いて、後述する盗聴器の探索、除去作業を行うことができ、盗聴器に対する警備作業が極めて効率的に行われる。
【0030】
なお、本装置は、広帯域受信機32が、盗聴器により使用される可能性がある電波の周波数帯を例えば順次、受信周波数を変えながら受信し、CPU8が各周波数において上述のマッチドフィルタリング処理、及び圧縮パルスの検知を行って盗聴器の検知を試みる。また、ここでは広帯域受信機32は、例えば多くの盗聴器が使用するFM変調方式に対応しているが、その他のAM変調、SSB変調等の変調方式に対応していてもよく、また盗聴器により使用される可能性がある複数の変調方式にも対応していることが好ましい。また、盗聴器がスクランブルを掛けていることを想定して、予想されるスクランブルを解除できるように備えることも盗聴器検知の信頼性を向上させるのに有効である。なお、表示装置6には、盗聴器が検知された時の電波の周波数、変調方式などの条件を同時に示すようにしてもよい。
【0031】
ちなみに、上述した時間引き伸しパルスを音波パルスとして発信し、マッチドフィルタリング処理といった時間圧縮処理を行う本発明の方法は、高いS/N比を得ることができる。しかし、より検出精度、信頼性を高めるためには、1個の時間引き伸しパルスだけでの検知ではなく、複数個の時間引き伸しパルスによる検知とすることができる。例えば、スピーカ18より送出する時間引き伸しパルスを複数発ランダムな間隔で送出する、或いはスイープ率(前記、瞬時周波数の推移率)をランダムに変化させるなどして、それら送出信号に対応するマッチドフィルタ処理を施すことにより、一層の盗聴器検知精度の向上をはかることが可能である。
【0032】
本装置は、盗聴器の有無を容易に、かつ精度良く検知できるだけでなく、その位置を探索するのにも有効である。次に、この本装置による盗聴器の位置探索について説明する。この探索処理は、一般に無線式盗聴器の存在が確認された後に行われる。よって、ここでは、本装置により無線式盗聴器の存在が確認され、さらにその無線式盗聴器の送信周波数が既知であるものとする。
【0033】
探索作業においては、音波発生手段2は探索領域内で移動しながら音波パルスを発する。例えば、スピーカ18と音波発生手段2の他の部分とが分離可能とされ、音波パルス発信位置が容易に移動可能に構成される。そのために例えばスピーカ18とアンプ16との間を、ある程度の長さを有するケーブル、或いは無線手段により接続することができる。もちろんこの無線手段は、検知された盗聴器と異なる周波数などを用いて無線受信手段4側の動作に影響を与えないように構成される。なお、ここでスピーカ18の移動手段は、オペレータがスピーカを携帯して徒歩移動するという方法が最も簡単であろうが、必ずしもこれに限られるものではなく、その他、レールなどを設置し当該レールに沿ってモータなどで自動的に移動させるといった方法などでも構わない。音波発生手段2は、CPU8から命令を受け、メモリ10に予め記憶された時間引き伸しパルスデータ20を周期t0で繰り返しアナログ信号へと変換し、時間引き伸しパルス列をスピーカ18から発する。
【0034】
無線受信手段4においては、既知である盗聴器の送信周波数の電磁波が選択受信、復調され、音声信号へと変換される。
【0035】
またCPU8は、上述の盗聴器有無の検知動作と同様、無線受信手段4により受信されメモリ38に保持された受信信号に対し、マッチドフィルタリング処理を行う。ここでスピーカ18の移動方向が盗聴器に近づく方向の場合には、ドップラ効果によりマッチドフィルタリング処理結果のパルス間隔は送出された時間引き伸しパルス間隔よりも短くなり、逆に盗聴器から遠ざかる方向の場合にはパルス間隔は長くなる。従って、当該パルス間隔と送出した時間引き伸しパルスの間隔との関係より、スピーカ18が盗聴器に近づいているか、遠ざかっているか、つまり、盗聴器がスピーカ18の移動方向前方領域に存在するか、後方領域に存在するかの判断が可能となり、この盗聴器の位置に関する情報を表示装置6に表示することにより、オペレータが盗聴器を探索することが可能となる。この盗聴器の位置情報を取得する処理はCPU8の位置情報取得処理44によって行われる。
【0036】
また盗聴器に近づいている時(v>0)には(9)式における(k−k')は正に、逆に遠ざかっている時には(k−k')は負になり、これらの場合に(9)式はそれぞれ瞬時周波数が時間とともに下降あるいは上昇する時間引き伸しパルスを意味する。従って、マッチドフィルタリング処理結果のパルス列の間隔をモニタリングする代りに、パルス単体の特性、つまり瞬時周波数が下降する時間引き伸しパルスか、上昇する時間引き伸しパルスかを調べることによっても盗聴器位置の探索ができる。
【0037】
なお、本装置では、パルス単体の特性情報よりも安定に抽出することができるパルス間隔の情報を利用して探索を行っており、以下その具体的な内容を説明する。
【0038】
まず、実際の処理上の問題として、第1に、移動しながら時間引き伸しパルスを送出すると、上述したように受信された時間引き伸しパルス自体もドップラ効果の影響を受けているため、マッチドフィルタ処理を施しても完全なパルス形状が得られず、各パルスの正確な位置を求めることが難しくなる。第2に、音の反射が存在するような実際の室内環境においては、室内音響特性に応じたインパルス応答の尾を引いた特性が受信信号に更に重畳する。これらの理由で、パルス間隔を安定して求めるのが難しい場合がある。本装置では、以下に説明するように、パワー重心処理、移動平均処理、パワー演算処理、反転位置決定処理手段などの適切な信号処理手段により正確な盗聴器位置の探索を可能としている。
【0039】
図2は、本装置の位置情報取得処理44における各機能の関連を表す機能ブロック図である。上述したように、位置情報取得処理44は、マッチドフィルタリング処理データを基に、パワー重心処理部50、移動平均処理部52、パワー演算処理部54、反転位置決定処理部56の各部により実行される。
【0040】
図3は、位置情報取得処理44を説明するための模式図である。以下、この図を参照しつつ、各処理部50〜56について順に説明する。マッチドフィルタリング処理データは、パワー重心処理部50に入力される。図4は、パワー重心処理部50での概略の処理の流れを説明するためのブロック図である。マッチドフィルタリング処理の結果、図3(a)に示すパルス列データの波形S1(t)が得られる。図3(a)において、パルス状波形60-1〜60-3がそれぞれ時間引き伸しパルスに対応してマッチドフィルタリング処理により得られる圧縮パルスである。
【0041】
パワー重心処理部50では、まずパルス列データS1(t)に対し、その振幅を自乗し時間軸方向に積分することにより、振幅自乗の累積S2(t)を求める。図3(b)にS2(t)が示されている。振幅自乗の累積は各パルス状波形ごとに行われ、各パルス状波形60-1〜60-3のそれぞれに対応して、振幅自乗値を累積した曲線62-1〜62-3が得られる(S64)。
【0042】
次にS2(t)から、その傾き関数(微分)S3(t)≡dS2(t)/dtが計算される。図3(c)にS3(t)が示されている。S2(t)の各曲線62-1〜62-3のそれぞれに対応して、累積自乗の傾きの曲線66-1〜66-3が得られる(S68)。
【0043】
次の信号区間決定処理S70では、まずS3(t)が予め設定されたしきい値 Pthよりも大きな値を取るか否かが調べられ、Pthを超えた場合にはそこにピークが存在すると判断される。そして例えば、そのしきい値を超える時間範囲におけるS3(t)の極大点がピークの位置とされる。その極大点は、S3(t)の1次導関数が0となることなどに基づいて決定される。このようにして例えば曲線66-1〜66-3それぞれのピーク値p(1)、p(2)、p(3)が検出される。信号区間決定処理S70では、そのピーク値p(n)の所定の割合(x%とする)を超える区間[ts(n),te(n)]を切り出し、その区間が信号区間と定義される。なお、ここでnは各パルス状波形を区別するためのインデックスであり、例えば先頭からの順番を表す数字である。
【0044】
処理S64、S68、S70は、「マッチドフィルタリング処理により得られるデータは不完全ながらもパルス列データであるため、各パルス位置で急激な振幅(自乗値)の上昇、すなわち累積自乗値の傾きの増加が観られる。」という考えに基づいたものである。
【0045】
次にパワー重心処理部50は、S70で決定された信号区間[ts(n),te(n)]に基づいて各パルス状波形60のパワー重心を算出する。パワー重心は、次の(11)式を満たすtg(n)として定義される時間軸方向の位置であり、パワー重心処理部50はこのパワー重心を算出して、この位置をn番目のパルス位置と定義する(S72)。ちなみに、(11)式が意味するところは、図3(b)において、S2(t)がts(n)におけるS2(t)の値と、te(n)におけるS2(t)の値との平均値をとる時刻がパワー重心であるということである。
【0046】
【数7】
パワー重心処理部50で定義された信号区間は、パワー演算処理部54に提供され使用される。これについては後述する。
【0047】
さて、パワー重心処理部50で計算されたパワー重心は移動平均処理部52に渡される。図5は、移動平均処理部52及び反転位置決定処理部56での概略の処理の流れを説明するためのブロック図である。移動平均処理部52においては、まずパルス間隔の算出が行われる(S80)。このパルス間隔は、パワー重心処理部50にて得られたn番目、(n+1)番目のパルス位置の差を計算することにより求められる。すなわちn番目のパルスと(n+1)番目のパルスとのパルス間隔をdt(n)と表すと、dt(n)≡tg(n+1)−tg(n)である。
【0048】
原理的には、ここで算出されたパルス間隔dt(n)が、送出した時間引き伸しパルスの間隔t0に比して短いか長いかにより、スピーカ18が盗聴器に近付いているか、遠ざかっているかが分かる。しかし、上述した理由により、dt(n)は必ずしも安定した結果とはならない場合がある。そこで全体の傾向を抽出するため、dt(n)に移動平均処理を施す。移動平均は、2種類のウィンドウ幅を用いて計算される。一つの移動平均パルス間隔dta1(n)は、パルス間隔dt(n)に対し、a1点移動平均を計算したものであり、もう一つの移動平均パルス間隔dta2(n)は、a2点移動平均を計算したものである。具体的にはdta1(n)、dta2(n)は、それぞれ次の(12)、(13)式に基づいて計算される(S82,S84)。
【0049】
【数8】
なお、ここでa2はa1より大きく、dt(n)の局所的な不安定を取り除き、全体の傾向を抽出するのに必要十分な長さであるものとする。よって、dt(n)は平滑化されていないオリジナルのパルス間隔であり、一方、dta1(n)は平滑化がなされ、またdta2(n)は一層の平滑化がされている。
【0050】
また、(12)(13)式においてwa1(m)、wa2(m)はそれぞれ次式を満たす適切な移動平均重み係数である。
【0051】
【数9】
このようにして求められた3つのパルス間隔情報 dt(n)、dta1(n)、dta2(n)は、後述する反転位置決定処理部56での盗聴器位置検出のための処理において利用される。図6は、本装置における盗聴器位置検出処理に用いられるパルス間隔情報と後述するパワー情報とのパルス列に応じた変化の一例を示す説明図であり、図6(a)はパルス間隔データ dt(n)、dta1(n)、dta2(n)のパルス間での変化を示している。図において、横軸はパルスの順序nに対応する。なお、nは軸右向きに増加する、つまり右側ほど新しく観測されるパルスに対応する。図に表されるように、dt(n)よりもdta1(n)の方が滑らかに変化し、またdta1(n)よりもdta2(n)の方がさらに平滑化の度合いが高い。
【0052】
なお、ここで(12)、(13)式、及び(14)、(15)式はそれぞれ、移動平均処理を行うウィンドウ幅a1、a2が奇数であるという前提での表現となっているが、平均区間[−(a1−1)/2,(a1−1)/2]及び[−(a2−1)/2, (a2−1)/2]の区間最大点(a1−1)/2、(a2−1)/2または区間最小点{−(a1−1)/2}、{−(a2−1)/2}を除いた区間にて偶数点での移動平均処理を行っても良い。また偶数点での移動平均処理を行う場合には、平均区間の中心点はデータdt(n)の取り得る離散点nよりも1/2だけずれるため、移動平均後のデータの取り得る離散点も1/2ずれることになる。よって、この場合、以降の処理において必要に応じて前記データのずれを考慮する。
【0053】
次にパワー演算処理部54について説明する。本発明の盗聴器検知装置は、例えばスピーカを持って探索対象室内を歩き回ることにより盗聴器位置を探索するものである。ここで一般にスピーカの音響波の放射指向性は、スピーカ前方に比べ、スピーカ後方では劣化する。従って、原理的にはスピーカが盗聴器の位置を通過した時点でスピーカから盗聴器に到達する音のパワーは急激に減少し、それに伴い盗聴器からの電波の復調信号のパワーも、その時点で急激に減少する。この現象は本装置での盗聴器位置の検知に利用される。
【0054】
パワー演算処理部54ではパワー重心処理部50が決定した信号区間[ts(n),te(n)]において次式で計算されるパワー累積によりパルスパワーP(n)が決定される。
【0055】
【数10】
次に、パルスパワーP(n)のパルス間差分dP(n)=P(n+1)−P(n)が算出される。図6(b)は、これらパルスパワーP(n)、パワーのパルス間差分dP(n)のパルスごとの変化を示している。図において、横軸は同図(a)に対応しており、パルスの順序nを表している。また縦軸はdB単位でのパワーに対応している。
【0056】
ちなみに、実際に盗聴器が仕掛けられる場所は、かなり入り組んだ場所である場合もあり、音の複雑な反射の結果、必ずしも盗聴器を通り越した瞬間にパワーは下がらず、通り越してしばらく進んでからパワーが下がる場合がある。そのため、本装置ではパワー減少の情報は、直接的に盗聴器位置を推定されるのではなく、次に述べる反転位置決定処理部56によって補助的に利用される。
【0057】
次に、反転位置決定処理部56について説明する。反転位置決定処理部56は、移動平均処理部52が算出した3つのパルス間隔データ dt(n)、dta1(n)、dta2(n)と、パワー演算処理部54が算出したパワー差分データdP(n)とを得て、以下に述べる処理により盗聴器位置に関する情報を求める。
【0058】
パルス間隔の送出時と受信時とでの差は、ドップラ効果により原理的には、盗聴器を通り越した時点で符号が負から正へ反転するはずである。但し、スピーカ18の移動速度のばらつきなどの影響でもその反転は生じる可能性がある。そこで、本装置では上述したように、処理S84においてパルス間隔データdt(n)を十分滑らかに平滑化したデータであって局所的なパルス間隔変化の影響が少ないa2点移動平均データdta2(n)を求め、反転位置決定処理部56はこのdta2(n)と時間引き伸しパルス送出間隔t0との差分を求め、その値の負から正への反転位置を盗聴器位置の第1次候補とする(S86)。
【0059】
次に反転位置決定処理部56は、このようにして決定された第1次候補の妥当性を、パワー演算処理部54で得られたパワー差分データdP(n)に基づいて検討する(S88)。上述したようにパワーは盗聴器位置を通り越した近傍で減少する。そこで第1次候補とされた位置Qに対して適切に設定された区間[Q−Δ,Q+Δ]において、予め設定されたしきい値dPth(<0)に達するような激しいパワーの減少を伴うか否かを判定し、第1次候補が妥当なものであるかどうかが判断される。具体的にはその区間に含まれる各nに対してdP(n)>dPthである場合、すなわちパワーの急激な落ち込みが存在しない場合は、第1次候補である位置Qにおいて盗聴器は存在しないと判断し、その反転を無視する。一方、パルス間隔に基づく第1次候補と、前記区間内でのパワーの急激な落ち込み現象とが共に確認された場合には、反転位置決定処理部56は次に述べる、より詳細な盗聴器位置の推定を行う。
【0060】
a2点移動平均データdta2(n)は平滑化が進んでいるため、全体の変化の傾向は表してはいるものの、その一方でそれに基づく反転位置(すなわち第1次候補とした位置)と、実際に盗聴器とスピーカ18との相対速度の向きが反転する位置(すなわち正確な盗聴器位置)とのずれが大きくなるおそれがある。逆に、例えば平滑化を行わないパルス間隔データdt(n)は、局所的な不安定な反転(擬イベント)を生じる可能性があるものの、盗聴器の存在により生じる反転(真イベント)はより正確にその盗聴器位置を示している場合が多い。このように、平滑化に関して、反転の安定性の向上と、反転位置の精度とはトレードオフの関係にある。
【0061】
そこで、反転位置決定処理部56では、上述のS86、S88にてパルス間隔データdta2(n)に関する反転と、パワー差分dP(n)の落ち込みとの加重要件により、安定したイベントを選択する。そして反転位置決定処理部56はさらに、この安定したイベントに対し、より正確な盗聴器位置を示すことが期待される他のパルス間隔データdt(n)、dta1(n)の反転位置が得られるかどうかを調べる。そして、それらについて反転精度の高いことが期待される順に応じて、dt(n)→dta1(n)→dta2(n)の優先順位で、いずれかの反転位置を盗聴器の最終的な安定した推定位置として採用する(S90)。例えば、dta2(n)の反転位置Qに対し適切に設定された近傍区間[Q−k1,Q+k2]において、dt(n)の反転位置をまずサーチし、それが発見されれば当該位置情報を盗聴器の近傍と推定される位置情報として選択する。もし、当該範囲にdt(n)の反転位置が発見されなかった場合には、次に同範囲においてdta1(n)の反転位置をサーチし、それが発見されれば当該位置情報を盗聴器の推定位置情報として選択する。また、もし、当該範囲にdta1(n)の反転位置も発見されなかった場合には、既に発見されている第1次候補を盗聴器の推定位置情報として選択する。
【0062】
これら、dt(n)、dta1(n)における反転を決定するための手順の具体例を次に説明する。この手順は、できるだけ“安定した”反転を見出すように配慮されている。まず、dt(n)、dta1(n)を送信時のパルス間隔t0との大小に基づいてそれぞれ2値化した次式で表される数列DT(n)、DTa1(n)を導入する。
【0063】
【数11】
ここで、適切な設定i,j及びk1,k2において、
【数12】
を満たすkが存在する場合、DT(Q+k)は安定した反転であるとし、Q+kを盗聴器位置とする。上記条件を満たすkが存在しない場合には、同様に
【数13】
を満たすkの存在を調べ、存在する場合にはDTa1(Q+k)が安定した反転であるとしQ+kを盗聴器位置と判定する。
【0064】
例えば、DT(n)に対しては、i=j=2とし、位置Qを中心とした所定の範囲[Q−k1−2,Q+k2+1]内において、DT(n)の“0011”というパターンが現れるかどうかが調べるようにすることができる。これにより、[Q−k1,Q+k2]内におけるdt(n)の反転位置が探索される。
【0065】
また例えば、DTa1(n)に対しては、i=j=3とし、位置Qを中心とした所定の範囲[Q−k1−3,Q+k2+2]内において、DT(n)の“000111”というパターンが現れるかどうかが調べるようにすることができる。これにより、[Q−k1,Q+k2]内におけるdta1(n)の反転位置が探索される。
【0066】
このように、反転位置の前において所定数の0が連続し、後において所定数の1が連続するという条件で、反転位置を決定することにより、安定した反転位置を決定することができる。
【0067】
例えば、反転位置決定処理部56は決定された盗聴器位置の探索結果を出力し、例えば、表示装置6がこれを画面上に表示出力する。
【0068】
【発明の効果】
本発明の盗聴器検知装置によれば、時間圧縮処理によりS/N比の高い圧縮パルスに変換可能な音波パルスを用いて無線式盗聴器の検知が行われる。そのような特徴を有する音波パルスを用いることで、その音波パルスを拾った盗聴器が発する電波信号を、他の発生源に起因する電波信号から容易に区別することができ、盗聴器検知を確実に行うことができるという効果が得られる。また、このS/Nの改善や圧縮パルスの識別容易性により、盗聴器の有無を検知する作業を自動化することができ、盗聴器検知作業の効率化が図られるという効果も得られる。
【0069】
また、本発明の盗聴器検知装置によれば、音波発生手段と盗聴器との相対運動により生じる音波パルスのドップラ効果に基づいて、例えば音波発生手段を移動させる場合、それが向かっている領域に盗聴器があるのか、遠ざかっている領域にあるのかという情報や接近から退避への切り替わりのポイント位置といった盗聴器の位置を良好に特定する位置情報を容易・確実に取得することができるので、盗聴器の探索作業の効率が向上するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態である盗聴器検知装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図2】 本装置の位置情報取得処理における各機能の関連を表す機能ブロック図である。
【図3】 本装置の位置情報取得処理での処理を説明するための模式図である。
【図4】 パワー重心処理部での概略の処理の流れを説明するためのブロック図である。
【図5】 移動平均処理部及び反転位置決定処理部での概略の処理の流れを説明するためのブロック図である。
【図6】 本装置における位置情報取得処理に用いられるパルス間隔情報とパワー情報とのパルス列に応じた変化の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
2 音波発生手段、4 無線受信手段、6 表示装置、8 CPU、10,38 メモリ、12 D/A変換器、14,34 LPF、16 アンプ、18 スピーカ、30 空中線、32 広帯域受信機、36 A/D変換器、40 パルス圧縮処理、42 盗聴器有無判断処理、44 位置情報取得処理、50 パワー重心処理部、52 移動平均処理部、54 パワー演算処理部、56 反転位置決定処理部。
Claims (5)
- 盗聴した音を無線送信する盗聴器を検知する盗聴器検知装置であって、
パルス継続時間中に周波数が推移するパルスであって所定の時間圧縮処理により圧縮パルスに変換可能な音波パルスを発する音波発生手段と、
電波を受信して音声信号を復調する無線受信手段と、
復調された前記音声信号に対し、前記音波パルスに応じた前記時間圧縮処理を行うパルス圧縮手段と、
前記パルス圧縮手段での時間圧縮処理結果における前記圧縮パルスの有無に基づいて前記盗聴器の有無を判断する判断手段と、
を有し、
前記音波発生手段は、複数の前記音波パルスをランダムな時間間隔で発生し、
前記判断手段は、複数の前記音波パルスに応じた複数の前記圧縮パルスに基づいて前記盗聴器の有無を判断すること、
を特徴とする盗聴器検知装置。 - 盗聴した音を無線送信する盗聴器を検知する盗聴器検知装置であって、
パルス継続時間中に周波数が推移するパルスであって所定の時間圧縮処理により圧縮パルスに変換可能な音波パルスを発する音波発生手段と、
電波を受信して音声信号を復調する無線受信手段と、
復調された前記音声信号に対し、前記音波パルスに応じた前記時間圧縮処理を行うパルス圧縮手段と、
前記パルス圧縮手段での時間圧縮処理結果における前記圧縮パルスの有無に基づいて前記盗聴器の有無を判断する判断手段と、
を有し、
前記音波発生手段は、周波数の推移率が互いに異なる複数の前記音波パルスを順次発生し、
前記判断手段は、複数の前記音波パルスに応じた複数の前記圧縮パルスに基づいて前記盗聴器の有無を判断すること、
を特徴とする盗聴器検知装置。 - 盗聴した音を無線送信する盗聴器を検知する盗聴器検知装置であって、
パルス継続時間中に周波数が推移するパルスであって所定の時間圧縮処理により圧縮パルスに変換可能な音波パルスを発する音波発生手段と、
電波を受信して音声信号を復調する無線受信手段と、
復調された前記音声信号に対し、前記音波パルスに応じた前記時間圧縮処理を行うパルス圧縮手段と、
前記パルス圧縮手段での時間圧縮処理結果における前記圧縮パルスの有無に基づいて前記盗聴器の有無を判断する判断手段と、
を有し、
前記盗聴器に受信される音波パルスが受けたドップラ効果を、前記無線受信手段により受信された音波パルスから検出し、当該ドップラ効果から求められる前記盗聴器と前記音波発生手段との相対運動情報に基づいて当該盗聴器の位置情報を取得する位置情報取得手段を有すること、を特徴とする盗聴器検知装置。 - 請求項3記載の盗聴器検知装置において、
前記音波発生手段は、複数の前記音波パルスを順次、発生し、
前記位置情報取得手段は、前記音波パルスの前記無線受信手段による受信間隔と前記音波発生手段による発生間隔との相違に基づいて前記ドップラ効果を検出すること、
を特徴とする盗聴器検知装置。 - 請求項3記載の盗聴器検知装置において、
前記位置情報取得手段は、前記音波パルスの前記無線受信手段による受信時の周波数と前記音波発生手段による発生時の周波数との相違に基づいて前記ドップラ効果を検出すること、を特徴とする盗聴器検知装置。
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