JP3894880B2 - ベローズ継手の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、医薬品、バイオ関連製品、半導体装置等の製造において、配管系統に組み込まれて用いられるベローズ継手に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
医薬品、バイオ関連製品、半導体装置等の製造には、腐蝕性の流動体を用いたり、金属イオンの微量の混入を避けなければならない処理が含まれる。このため、配管系統や攪拌などにおいて、内面にフッ素樹脂をコーティングした処理装置が提案されてきた(たとえば、特許文献1参照)。フッ素樹脂は酸やアルカリに侵されにくいため、フッ素樹脂をコーティングした装置を用いることにより、金属イオンの混入を防ぎ、また腐蝕に対するメンテナンス等を不要にすることができる。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−79070号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これまでのフッ素樹脂コーティングは金属製の装置をある程度加工した後に、行なわれてきた。このため、ベローズ継手のように入り組んだ構造が形成される部分に、均一なコーティングを行なうことは困難であった。すなわち、管径が細いベローズ継手の場合、ベローズ管部の中央部付近の管壁の凹凸に沿って均一にコーティングをすることは難しい。ここで、ベローズ管部において、ベローズ加工により外側に張り出された部分を「張り出し部」と称する。また、本発明の性質上、以後の説明において、ベローズ管内部における凹凸が問題になるので、内面側から見て、内面側に突き出している部分を「凸」部または「山」部と称し、内径側から見て窪んでいる部分を「凹」部または「谷」部と呼ぶことにする。この呼び方にならえば、上記張り出し部は、凹部または谷である。
【0005】
ミクロ的にベローズ管のフッ素樹脂被覆を観察した場合、ベローズの内面側に突き出た山の頂部付近、とくに頂部の端に厚いフッ素樹脂被膜が形成されている。この厚い部分の膜厚は、中間厚み300μmを目標にコーティングした場合でも約600μmに達する。逆に、内面側から引っ込んだ谷では、非常に薄いフッ素樹脂被膜となっている。この薄い部分のフッ素樹脂被膜の厚みは、中間厚み300μmとするようにコーティングしても50μm程度にしかならない。このように大きなフッ素樹脂被覆の厚み変動が生じると、たとえ厚めにフッ素樹脂コーティングを行なっても、上記の凹部のように薄い部分の形成は避けられない。上記のベローズ継手が用いられる分野では、1ヵ所でもフッ素樹脂コーティングが破壊されると、使用不可となる。
【0006】
一方、上記のような問題を解消する装置として次のものが知られている。すなわち、金属ベローズ管にその形状を合わせたフッ素樹脂ベローズ材を形成しておき、金属ベローズ管の内面にそのフッ素樹脂ベローズ材を嵌め込んだ装置が知られている。この場合、フッ素樹脂ベローズ材は金属ベローズ管の内面に粘着していない。しかし、フッ素樹脂ベローズ材は、弾性、伸縮性に富むので、金属ベローズ管の内面に押し込まれ凹凸形状に嵌め合わされ、フッ素樹脂被覆材として機能することができる。
【0007】
しかしながら、上記の配管系統は正圧だけでなく負圧で使用される場合もある。負圧で使用された場合、上記のフッ素樹脂ベローズ材は管壁から離脱し、流動体の流動を阻害する。したがって、負圧で使用される用途に対して、上記のフッ素樹脂ベローズ材は用いることができない。負圧の用途に対しては、フッ素樹脂被覆は、管壁である金属層に粘着してしていなければならない。上記のフッ素樹脂ベローズ部材は、特殊な用途以外は使用することはできなかった。
【0008】
本発明は、負圧下での使用が可能であり、フッ素樹脂被膜の厚みむらが抑制されたベローズ継手の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のベローズ継手の製造方法は、ストレート状の金属管の内面にフッ素樹脂をコーティングする工程と、前記金属管の外側にベローズ加工用の型具を装着し、前記内面にフッ素樹脂がコーティングされた金属管の内側に対して水圧を付与することによりベローズ加工を施す工程とを備える。
【0010】
この製造方法によれば、ベローズ加工前のストレート状の管の内面にフッ素樹脂コーティングを施すので、フッ素樹脂被膜の厚みにむらを生じることがない。また、フッ素樹脂被覆は、通常の方法、すなわち金属管にブラスト処理を施し、次いでプライマー層を形成した後に、その上に形成されるので、高い粘着力をもって金属管と粘着されている。このため、負圧で使用しても金属管から剥離することがない。
【0011】
また、上記のベローズ加工を施す工程においてフランジを取り付け、そのフランジの取り付けの際、フランジの内径にフッ素樹脂コーティングされた金属管を貫通させ、フランジより先に出た管端部にも上記のベローズ加工と同時にベローズ加工を施し、その後、その管端部をフランジ外側端面に押し付けそのベローズ加工された部分を折り畳む加工を施し、次いで機械加工により管端部の所定箇所で切断して、フッ素樹脂の層が外側に面するような折畳み露出部を形成することができる。
【0012】
上記の方法でベローズ継手を形成して、そのベローズ継手同士を接続する場合、相対向する上記の折畳み露出部の外層のフッ素樹脂被膜の間にパッキンを介在させる。このため、折畳み露出部のフッ素樹脂被膜/パッキン/折畳み露出部のフッ素樹脂被膜、のシール部が形成され、これらの各部分を押し付け合うことで液体の漏れがないシール部が形成される。すなわち、上記フランジ側に折り畳まれ露出された管端部にはフッ素樹脂面が外側に向いて露出していて、そのフッ素樹脂面をこのベローズ継手が接続される相手の部材に向けている。このため、たとえば、接続相手のフランジとボルトナットにより接続される際に、相手側のフッ素樹脂面とパッキンを介して当接し、流動体が接触する部分を隙なく被覆することができる。このため、金属イオンの混入を嫌う流動体や、腐蝕性の流動体が金属に接触することがなくなる。上記の方法の場合、フランジは、ベローズの山と山との間に挟まれ、すなわちベローズの谷部の位置に嵌め合わされる。フランジは、リジッドに固定はされないが、上記の位置に位置付けられる。
【0013】
なお、上記の折畳み露出部は、最低限、フランジの内径から突き出るベローズ管の谷に相当した部分から山に相当した部分までの半ピッチ分でよいが、さらに1〜数ピッチ分を上記半ピッチ分に付加した構成にしてもよい。
【0014】
また、ヘルール同士の接続により接続部を形成する場合、フッ素樹脂をコーティングする工程の前に、金属管の端部にヘルールを溶接する工程を備え、フッ素樹脂コーティングの工程では、ヘルールと金属管との溶接部を含む管端部をもコーティングする。
【0015】
上記の溶接工程では、ヘルールの内周面の当接面側の端部を余厚部として残すように、機械加工により切削して内径を拡大し、その後、金属管を当接面側と反対側の端部から前記ヘルールの内径に挿入し、そのヘルールの余厚部を溶かし込みながらその金属管の端部とヘルールとを接合してもよい。
【0016】
ベローズ継手を構成する金属管は、例えば0.3mm程度の薄いものであり、薄物のステンレス鋼の溶接に常用されるTIG(Tungsten Inert Gas)溶接を行なった場合、ステンレス管に孔が開いてしまい歩留りを大きく低下させる。上記の方法によれば、余厚部、すなわち切削し残されたヘルール内周端部が溶接棒として機能し、そこに熱が集中するため、薄い管端とヘルール内周とを、健全な溶接部を形成しながら、問題なく接合することができる。
【0017】
また、上記の溶接により、ヘルールの内周から相手当接面側にかけてアールがつく。このため、この後のフッ素樹脂コーティングにおいて、ヘルール内周面から相手当接面にかけて、容易にフッ素樹脂被膜を形成することができる。このため、高い信頼性のフッ素樹脂被膜を形成することができる。ヘルールは、フランジの一種であるが、上記のベロース管部に溶接されてベローズ継手を構成するものを、便宜上ヘルールと呼ぶ。
【0018】
前記フッ素樹脂をコーティングする工程は、前記金属管内面をブラスト処理し、プライマー塗装処理し、次いで、フッソ樹脂塗装処理するものであるのが好ましい。
また、前記フッソ樹脂塗装処理は、フッソ樹脂と充填材とを混合したベース層と、フッソ樹脂のみからなるクリア層とを積層した構造を形成するものであるのが好ましい。
さらに、前記プライマー塗装処理は、金属壁とフッソ樹脂との粘着力を高めるためのプライマー塗料を塗布した後に焼成してプライマー層を形成するものであり、前記フッソ樹脂塗装処理は、前記プライマー層の上にフッソ樹脂を塗布した後に焼成してフッソ樹脂層を形成するものであるのが好ましい。
【0026】
上記本発明の製造方法によるベローズ継手では、ベローズ管部の凸部と凹部とにかかわらず、フッ素樹脂被膜の金属壁への粘着力を高めるブラスト処理およびプライマー塗装が、均等に行なわれる。すなわち、ブラスト処理およびプライマー塗装は、ストレート状の金属管に対して行なわれ、その後にベローズ加工が行なわれる。このため、フッ素樹脂被膜の金属壁への粘着力は凸部でも凹部でも同じになり、ベローズ継手に大きな負圧がかかっても、フッ素樹脂被膜は剥離することがない。この結果、負圧を伴なう大きな内圧変動下において、高い耐久性を確保することができる。
【0027】
上記のフッ素樹脂被膜と金属壁との粘着力は、たとえば次のピール試験によって求めることができる。このピール試験では、幅5mm程度の細長い試験体を用いる。ベローズの山および谷の位置が長手方向の中心軸に一致するように円周方向に沿って試験体を採取し、これを矯正して平板状にした後、一方の端部から所定距離範囲のフッ素樹脂被膜を金属から剥がす。上記フッ素樹脂被膜が剥がされた部分の金属を、他の部分に対して直角に折り曲げる。そして、金属から剥がされた部分のフッ素樹脂被膜をばね秤などにより、粘着している部分に直交するように引張り、粘着している部分から剥がし、剥がれたときの荷重を求める。上記山の部分および谷の部分の試験体を、ベローズ管部の中央部と端とについて各々3試験体以上採取して、上記荷重を求める。
【0028】
本発明では、ベローズ管部の中央部および端において、山と谷との間に差異はほとんどなく、あっても中間値に対して±50%以内に入るが、従来法による場合、±50%以内に入らず、これを超えてしまう。なお、フッ素樹脂被膜と金属壁との粘着力を求める試験方法は、上記のピール試験に限定されず、その細部が変更されてもよい。たとえば平坦にすることを省略してもよい。また、金属とフッ素樹脂被膜との粘着力が求められるのであれば、別の試験方法であってもよい。
【0029】
なお、上記ピール試験では、通常の場合、フッ素樹脂が金属から剥がれる前に、フッ素樹脂被膜が破断するのが良好に粘着している被膜であるとされる。上記のピール試験の説明では、剥がれる荷重を求める方法を説明したが、荷重が求められない場合、山部および谷部の両方で、フッ素樹脂が金属から剥がれる前に、フッ素樹脂被膜が破断した場合であってもよい。この場合、具体的な数値がなくても、山部と谷部とが同等の粘着力を有していると判断してよい。従来の方法による場合には、たとえば山部では金属から剥がれる前にフッ素樹脂被膜が破断するほど良好であっても、谷部では金属から剥がれる前にフッ素樹脂被膜が破断することはなく、低い荷重でフッ素樹脂被膜が金属から剥がれる場合が生じる。
【0030】
上記のベローズ管部の凹凸の1周期であるピッチを50mm以下の範囲としてもよい。ベローズ管部の山と谷とのピッチ(1周期)を50mm以下の場合、従来の方法ではフッ素樹脂被膜の厚みの均一性を確保することが難しかった。すなわち、ピッチが50mm以下に小さくなると、ベローズ管部内面において、山と山との間隔が狭くなり、フッ素樹脂は山に引き付けられ谷部へのフッ素樹脂の供給が阻害される。このため、従来の方法では、谷部のフッ素樹脂被膜の厚みが極端に薄くなる。本発明では、ベローズ加工の際には、すでにフッ素樹脂被覆は形成されている。このため、ピッチの範囲が50mm以下であっても、フッ素樹脂被膜の厚みの均一性に優れたフッ素樹脂被膜を有するベローズ継手を得ることができる。
【0031】
なお、通常のベローズ管部では、ピッチPと、後で説明する山高hとはほぼ同じにするが、必ずしも同じにする必要はなく、山高hはピッチPに対して、0.55P≦h≦1.5Pの範囲にあれば、どのような値をとってもよい。上記の山高hとピッチPとの範囲関係は、ベローズ加工が行ないやすい範囲を表している。
【0032】
【発明の実施の形態】
次に図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
【0033】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるベローズ継手を示す部分断面斜視図である。断面部分はフッ素樹脂被覆の状態を示すために設けたものであり、通常は断面部分は他の部分が連続しており、断面部分が切り込まれていないことは言うまでもない。ベローズ継手10は、ベローズ管部1と、フランジ21と、折畳み露出部11とを有する。ベローズ管部1は、ステンレス鋼などの薄板をパイプ状に加工しながら自動溶接して製造した金属管3にベローズ加工を施して形成されている。ベローズ管部1は、その先端部にフランジ21の内径に挿入され突き抜け折り返された折畳み露出部11を有し、その折畳み露出部11とベローズの張り出し部(膨出部)との間の谷間に、上記のフランジ21を挟んでいる。したがって、ベローズ管部1とフランジ21とは、回転が可能な緩い拘束で結合している。フランジ21には、ボルトナットによって相手方と連結される際に用いられるボルト孔23が設けられている。
【0034】
図2は、本発明に係るベローズ継手の製造工程を示す図である。まず、ステンレス鋼などの薄板を、パイプ状に加工しながら自動溶接して金属管を製造する。次いで、(S1)ベローズ管部と溶接接合しないフランジを有するバーンストン型継手を製造する場合には、上記金属管の内面にフッ素樹脂コーティングを施す。次いで、フッ素樹脂コーティングが施された金属管にベローズ加工を施す。フッ素樹脂コーティングの工程およびベローズ加工の工程については、この後に詳しく説明する。一方、(S2)ベローズ管部と溶接するフランジ、すなわちヘルールを用いる場合には、金属管にヘルールフランジを溶接する。この後の工程は、上記(S1)の工程と同じである。
【0035】
上記の製造工程によれば、ヘルールなどフランジが溶接されるか否かの違いはあるが、上記の工程(S1)および(S2)では、直管の状態においてフッ素樹脂コーティングを施す。このため、膜厚の均一なフッ素樹脂被膜を形成することができる。
【0036】
図3は、フッ素樹脂コーティングの処理工程を示す図である。まず、直管の脱脂のために420℃程度に加熱し、焼成する。次いで、アルミナなど粉体を管内面に吹き付けてブラスト処理を行ない、錆層などを除去し、金属管の金属層を露出させる。上記のブラスト処理により、さらに表面を粗面化することができ、この後に塗装するプライマー層およびフッ素樹脂層の金属壁への接着度を高めることができる。
【0037】
次いで、金属壁と、フッ素樹脂層との粘着力を高めるために、プライマー塗装を行なう。プライマー塗装の塗料は、任意の市販品を用いることができる。市販品のプライマー塗料には、クロムイオンなど金属表面との結合力を高める成分が含まれている。この後、400℃程度に加熱してプライマー層と金属壁との結合を強固なものとする。
【0038】
上記プライマー塗装−焼成の後、フッ素樹脂コーティングを施す。フッ素樹脂としては、任意の市販のフッ素樹脂を用いることができ、たとえばPFA樹脂、FEP樹脂、ETFE樹脂のいずれかを用いることができる。これらのフッ素樹脂をプライマー層の上に塗布してもよいが、さらに望ましくは、(f1)フッ素樹脂および充填材を混合したベース層と、(f2)フッ素樹脂層のみからなるクリア層とを積層した構造とする。充填材には、任意の市販されている充填材を用いることができる。
【0039】
塗装機には、特殊帯電方式の静電塗装機、たとえば、エアロチャージガン(米国:ノードソン社製)を用いる。このエアロチャージガンを直管に挿し込んで、粉体を噴出させる。エアロチャージガンは、従来の静電粉体塗装と異なり、粉体または空気との摩擦により帯電するため、エアロチャージガンの先端が直管の中に入りさえすれば、直管の中央部まで塗装できる特徴を有する。ただし、管に凹凸などがある場合には、度々説明するように、被膜の不揃いが生じることは避けられない。また、エアロチャージガンを用いない静電粉体塗装では、金属管をプラスアースし、粉体をマイナスアースとして塗装を行なうものの、金属管の中央部はマイナスイオンが多く帯電し、塗料の塗着を阻害するため、塗装被膜の厚みに偏倚を生じ、入口付近の塗装膜の厚みが厚くなることが避けられなかった。上記のエアロチャージガンの使用により、金属管の中央部と入口とを問わず、金属管の全体にわたって均一な塗装厚を得ることが可能である。
【0040】
上記のベース層の塗装の後、プライマー層とベース層とを融着させるために、300℃〜350℃程度で焼成を行なう。この後、ベース層の表面にクリア層を静電粉体塗装する。次いで、ベース層とクリア層とを融着させるために、300℃〜350℃程度で焼成する。この後、所定の膜厚が得られるまで、クリア層の静電粉体塗装と、焼成とを繰り返し、フッ素樹脂層の全体厚みを0.3mmとする。フッ素樹脂被膜の厚みは、金属管の肉厚と必ずしも関係ない。
【0041】
上記の工程で被覆されたフッ素樹脂層は、金属壁との粘着力が強いために、負圧下でもフッ素樹脂層の剥離を生じることなく、使用することができる。また、ベローズ加工後に、上記のフッ素樹脂コーティングを行なう場合は、フッ素樹脂層のみならず、プライマー層にもフッ素樹脂層と同じ程度の膜厚変動を生じる。このため、フッ素樹脂層の金属壁への粘着力は、プライマー層の厚みに応じた粘着力の変動を生じることとなる。上記本発明の製造方法では、プライマー塗装も直管状態で行なうので、均一な厚みのプライマー層を得ることができる。したがって、フッ素樹脂層の金属壁への粘着力もベローズの山や谷の位置によらず均一なものとなる。
【0042】
図4(a)〜図4(c)は、フッ素樹脂コーティングが施された金属管に対してベローズ加工を施す手順を示す図である。図4(a)は、金属管3の外側にベローズ加工用の型具51,53を装着した状態を示す断面図である。金属管3の断面図の片側は省略している。ベローズ管部1となる部分の金属管3の内面にはフッ素樹脂被膜5が形成されている。型具51は、金属管3の側部から金属管3を囲い込むように2分割されている。そして、所定の間をおいて山部(谷部)ができるように、押さえ部51aにアール加工がなされている。ベローズ管部の張り出し部は型具の押さえ部51aの間の空間に膨出する。型具を装着した後、直管の両端を封止する。
【0043】
次いで、図4(b)に示すように、封止した直管の一端側から水を注入し、圧力を高め、押え部51aに押えられている部分以外の直管部を外側に膨出させる。このとき、型具51同士の間隔を詰めることにより、水圧を上げ、張り出し部を張り出させる。その後、図4(c)に示すように、シリンダストロークで押さえてゆきながら余剰圧分の水を抽出してゆく。通常、ベローズ加工は、この段階まで行なう。逆に、この段階の張り出し量(膨出量)が所望のベローズとなるように、型具を選定する。図4(c)に示すように、ベローズ管の片側の管壁の谷から山頂までの高さを山高hと称する。この山高hは、図4(a)の型具間の隙間により決まる。
【0044】
フランジの外側端部では、型具53により膨出した部分をフランジ21に押し付け、膨出した部分を折り畳み、頂部近傍の平坦箇所で切断して、フッ素樹脂被膜5が外側に露出する構造にする。この部分が図1に示した折畳み露出部11となる。この折畳み露出部11は、このベローズ継手のフランジ同士を対面させて、ボルトナット等により接続した場合、互いのフッ素樹脂面がパッキンを介して押し付け合うすることにより液体を遮断するシールを形成する。このため、ベローズ継手を通過する流動体が金属管に接することが避けられる。
【0045】
図4(c)に示すように、直管の外径をDoとし、ベローズ管の最外径をD1とするとき、金属管たとえばSUS304ステンレス管などの場合、D1/Doを1.5程度にすることができる。
【0046】
上記のベローズ加工は基本的に金属管素材の延び率が、{(D1−Do)/Do}以上であれば、どのような山高hのベローズをも製造することができる。たとえば、山(谷)と山(谷)との間隔であるピッチは、5mm程度以上を容易に製造することができる。よほど変わったベローズでない限り、基本的にはピッチPと山高hとはほぼ等しく、P≒hの関係がある。本発明では、ピッチを5mm程度にしても、直管状態ですでに均一な厚みのフッ素樹脂被覆が形成されているので、均一な厚みのフッ素樹脂被覆を得ることができる。しかし、従来のベローズ継手では、ピッチが小さくなるとフッ素樹脂を均一にコーティングできなくなり、ピッチ50mm以下の範囲のものについて、フッ素樹脂被膜をほぼ均一に製造することは不可能であった。本発明は、上記のようにピッチの小さいベローズ継手を得る上からも、非常に有効である。これはまた、上記ピッチと山高の関係に基づき、口径の小さいベローズ継手を得る上からも非常に有効であるといえる。
【0047】
本発明の場合、フッ素樹脂被覆を形成する際の制約を受けることなく、金属管の加工と同等の加工を行うことができる。したがって、山高(D1−Do)/2についても、その製造可能範囲は、本発明による方が従来の方法によるよりも広い範囲をカバーすることができる。ただし、口径(直管時の内径)およびベローズ継手については、フッ素樹脂塗装を行なう際に用いる、粉体噴射管の内径や長さに制約をうける。この結果、口径はたとえば25.4mm程度が最小限度であり、ベローズ継手長さはたとえば最大500mm程度である。
【0048】
口径が2000mm程度で、長さが数百mmのものは、従来のようにベローズ加工した後にフッ素樹脂コーティングを施す方法が用いられる。この場合でも、ピッチがたとえば50mm以下の場合、フッ素樹脂コーティングにおいてベローズ加工部の谷の部分では、フッ素樹脂被覆層は山の部分より薄くなり、上記(tmax/tmin)が3を超えてしまう。
【0049】
図5は、バーンストン型のベローズ継手同士を接続した状態を示す図である。バーンストン型のベローズ継手の場合、フランジ21同士を対面させて、ボルト25とナット27とによって接続する。この接続において、折畳み露出部11における相対するフッ素樹脂層5同士がパッキン43を介して押し付け合い、シールを形成する。このため、中を流れる流動体は金属管に接することなく、フッ素樹脂被膜5に接して流動する。この結果、金属イオンの混入を避けるべき流動体や、強い腐蝕性の流動体を、不都合を生じることなく流動させることができる。
【0050】
本実施の形態によれば、負圧環境で使用してもフッ素樹脂被膜の剥離を生じることのない強固な粘着力を有し、かつフッ素樹脂被膜の均一な膜厚に起因する耐久性に優れたベローズ継手を容易に得ることができる。
【0051】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2におけるベローズ継手の部分断面斜視図である。図1と同様に、断面部分はフッ素樹脂被覆の状態を示すために設けたものであり、通常は断面部分が切り取られていないことは言うまでもない。また、図7は図6の部分断面図である。図6および図7において、本ベローズ継手の端部にはヘルール31が溶接により固定されている。このベローズ管部1の端部はストレート状とされており、ヘルール31と溶接により接合されている。ヘルールの端面には、溝33が設けられており、パッキンなどを介して相手方との接続においてシール部を形成する。図7のA部において、ヘルール31とベローズ管部1とが溶接により接合されている。
【0052】
図8(a)〜図8(d)に、図7のA部の形成方法を示す。まず、図8(a)に示すように、ヘルールの内径を余厚部31aを残して切削除去する。溶接部の厚みt1は、金属管3の肉厚と同程度とすることが望ましいが、必ずしも同じである必要はない。
【0053】
次いで、図8(b)に示すように、ヘルールの内径に金属管3の端部を挿入し、余厚部31aに当接させる。この後、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接により、余厚部31aを溶融させながら管端部を溶融させ、両者を接合する。この溶接により溶接部35が形成される。この溶接部は表面張力などの作用により、ヘルールの外側端面において角張らず、曲率半径Rを有した滑らかなコーナー部を形成する。このため、この後の工程で行なわれるフッ素樹脂コーティングを安定して高い信頼性をもって行なうことができる。上記の余厚部は、上記の滑らかなコーナーの形成だけでなく、TIG溶接において、アークによって管端の内側よりに孔が開く事態を避ける上でも有効に作用する。
【0054】
この後、図8(d)に示すように、管の内面から上記コーナー部を経てヘルールの外側端面(当接面)にいたる部分にフッ素樹脂コーティングを施す。このフッ素樹脂コーティングは、図4に示すように、ブラスト処理、プライマー塗装、フッ素樹脂ベース層の塗装、フッ素樹脂トップ層の塗装および各処理の間の焼成を経て形成される。すなわち、フッ素樹脂コーティングの工程は、実施の形態1における工程と同じである。したがって、高い負圧にも対応できる、金属に対して高い粘着力をもって被覆するフッ素樹脂層を形成することができる。
【0055】
図9は、ヘルールを用いたベローズ継手の接続状態を示す図である。ヘルール31の当接面に設けた溝33の間に、たとえば十字断面のパッキン43を介在させる。突き合わされた両方のヘルールの外側に、両方のヘルールを押し合う方向に力を及ぼす締結部材39を配置する。上記ベローズ継手を、上記のように接続させることにより、流動体を金属に接触させることのない接続部を形成することができる。
【0056】
(実施例)
次に、上記実施の形態1のベローズ継手を製造(図3の工程S1)した本発明の実施例について説明する。まず、厚み0.3mm(300μm)のSUS304のステンレス帯鋼を用意し、パイプ状に加工しながら自動溶接して、金属管を形成した。自動溶接にはTIG溶接を用い、上記帯鋼の側端面同士を突き合わせて、側端面を溶融させながら接合した。次いで、実施の形態1に説明したフッ素樹脂コーティング法(図4参照)に基づいて、上記の金属管の内面にフッ素樹脂コーティングを施した。フッ素樹脂被膜の厚みは、300μmを目標にして、フッ素樹脂と充填材との混合物で形成されるベース層の上にクリア層を塗装した。クリア層のコーティングにおいては、クリア層の塗装と焼成とを繰り返した。次いで、実施の形態1で説明した型具を用い、フランジを配置した状態で、ベローズ加工を施した。試験片は、ベローズ管部の中央部から切り出して、その断面を走査型電子顕微鏡で観察した。観察には、少なくとも1ピッチの長さが必要である。観察の方法などは、上述の方法により、視野を複数選び測定した。
【0057】
一方、比較材として、従来のように、上記の方法で製造した金属管にベローズ加工を施した後、その内面に上述のフッ素樹脂コーティング法でフッ素樹脂被膜を形成した。試験体は上記本発明例と同様に、ベローズ管部の中央から切りだし、その断面を観察した。
【0058】
上記本発明例の断面を図10に、また比較例の断面を図11に示す。図10によれば、金属管3の内面に均一な厚みのフッ素樹脂被膜5が形成されている。この厚みは、平均300μmであり、250μm〜350μmの範囲に入っている。このため、(tmax/tmin)は、1.4である。また、中間厚みは、{(350+250)/2}=300μmであり、その中間厚みからの偏倚は±50/300=約0.17と±20%の範囲内に入っている。
【0059】
一方、比較例では、金属管3の内側表面にフッ素樹脂被膜5が被覆されているが、ベローズの内面側に突き出た凸部の頂部付近Hに、とくに頂部の端に厚いフッ素樹脂被膜が形成されている。この厚い部分の膜厚は、約600μmである。一方、内面側から引っ込んだ凹部Bでは、非常に薄いフッ素樹脂被膜となっている。この薄い部分のフッ素樹脂被膜の厚みは、約50μmである。したがって、厚い部分の膜厚tmaxと薄い部分の膜厚tminとの比は、12に達する。また、中間厚みは、(600+50)/2=325μmである。この中間厚みからの偏倚は、±275/325=約±0.85であり、±85%となり、これも、非常に大きい。
【0060】
このように大きなフッ素樹脂被覆の厚み変動が生じると、たとえ厚めにフッ素樹脂コーティングを行なっても、上記の凹部のように薄い部分の形成は避けられない。上記のベローズ継手が用いられる分野では、1ヵ所でもフッ素樹脂コーティングが破壊されると、使用不可となる。これに比較して本発明のベローズ継手は、フッ素樹脂被覆の厚みが均一であるので、耐久性が非常に優れたものとなる。
【0061】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態はあくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されることはない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【0062】
【発明の効果】
本発明のベローズ継手の製造方法を用いることにより、フッ素樹脂被膜の厚みむらが抑制されたベローズ継手を得ることができる。その得られたベローズ継手は、負圧下での使用が可能である。また、ピッチの範囲などフッ素樹脂コーティングのしやすさなどによって制約を受けず、ベローズ継手の製造可能な形状の範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1におけるベローズ継手の部分断面斜視図である。
【図2】 本発明のベローズ継手の製造工程を示す図である。
【図3】 フッ素樹脂コーティングの工程を示す図である。
【図4】 (a)はフッ素樹脂コーティングされた直管にベローズ加工の型具を装着した状態、(b)は上記管に水圧を加えてベローズ加工を開始した状態、(c)は管端部に折畳み露出部を形成した状態を示す図である。
【図5】 図1に示すベローズ継手同士を接続した状態を示す断面図である。
【図6】 本発明の実施の形態2におけるヘルールを結合したベローズ継手を示す部分断面斜視図である。
【図7】 図6のベローズ継手の断面図である。
【図8】 図7のA部拡大図であり、(a)はヘルールの内面を余厚部を残して切削した状態、(b)は金属管を挿入した状態、(c)は余厚部を溶融して溶接した状態、(d)は内面および当接面にフッ素樹脂コーティングを施した状態を示す図である。
【図9】 図6のベローズ継手同士を接続した状態を示す図である。
【図10】 本発明例のベローズ継手におけるベローズ管部の断面図である。
【図11】 比較例のベローズ継手におけるベローズ管部の断面図である。
【符号の説明】
1 ベローズ管部、3 金属管(金属壁)、5 フッ素樹脂被覆(コーティング層)、10 ベローズ継手、11 折畳み露出部、21 フランジ、23 ボルト孔、25 ボルト、27 ナット、31 ヘルール、31a 余厚部、33当接面溝、35 溶接部、39 締結具、43 パッキング、51,53 ベローズ加工型具、P ピッチ、Do 口径(谷部径)、D1 外径(山部径)、h山高。

Claims (7)

  1. ストレート状の金属管の内面にフッ素樹脂をコーティングする工程と、
    前記金属管の外側にベローズ加工用の型具を装着し、前記内面にフッ素樹脂がコーティングされた金属管の内側に対して水圧を付与することによりベローズ加工を施す工程とを備える、ベローズ継手の製造方法。
  2. 前記ベローズ加工を施す工程においてフランジを取り付け、そのフランジの取り付けの際、前記フランジの内径に前記フッ素樹脂コーティングされた金属管を貫通させ、前記フランジより先に出た管端部にも前記ベローズ加工と同時にベローズ加工を施し、その後、その管端部を前記フランジ外側端面に押し付けそのベローズ加工された部分を折り畳む加工を施し、次いで機械加工により管端部の所定箇所で切断して、フッ素樹脂の層が外側に面するような折畳み露出部を形成する、請求項1に記載のベローズ継手の製造方法。
  3. 前記フッ素樹脂をコーティングする工程の前に、前記金属管の端部にヘルールを溶接する工程を備え、前記フッ素樹脂コーティングの工程では、前記ヘルールと金属管との溶接部を含む管端部をもコーティングする、請求項1に記載のベローズ継手の製造方法。
  4. 前記溶接工程では、前記ヘルールの内周面の当接面側の端部を余厚部として残すように、機械加工により切削して内径を拡大し、その後、前記金属管を当接面側の反対側端部から前記ヘルールの内径に挿入し、そのヘルールの前記余厚部を溶かし込みながらその金属管の端部とヘルールとを接合する、請求項3に記載のベローズ継手の製造方法。
  5. 前記フッ素樹脂をコーティングする工程は、前記金属管内面をブラスト処理し、プライマー塗装処理し、次いで、フッソ樹脂塗装処理するものである、請求項1〜4のいずれか1つに記載のベローズ継手の製造方法。
  6. 前記フッソ樹脂塗装処理は、フッソ樹脂と充填材とを混合したベース層と、フッソ樹脂のみからなるクリア層とを積層した構造を形成するものである、請求項5に記載のベローズ継手の製造方法。
  7. 前記プライマー塗装処理は、金属壁とフッソ樹脂との粘着力を高めるためのプライマー塗料を塗布した後に焼成してプライマー層を形成するものであり、
    前記フッソ樹脂塗装処理は、前記プライマー層の上にフッソ樹脂を塗布した後に焼成してフッソ樹脂層を形成するものである、請求項5または6に記載のベローズ継手の製造方法。
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