JP3894100B2 - Fmcwレーダ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、FMCW方式によりレーダ波を送受信するレーダ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車両等に搭載され、オートクルーズ制御や衝突防止制御等に用いられるレーダ装置の一つとして、ターゲットとの距離及び相対速度を同時に検出可能なFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave )方式のレーダ装置(以下「FMCWレーダ装置」という)が知られている。
【0003】
このFMCWレーダ装置では、図10(a)に示すように、周波数が三角波状に漸次増減するよう変調されたレーダ波を送受信し、その送受信信号をミキシングすることで得られるビート信号の周波数(以下「ビート周波数」という)に基づいて、ターゲットとの距離や相対速度を求めている。
【0004】
なお、図10(a)において、実線は送信信号Ssの周波数の変化、点線はターゲットにより反射されたレーダ波(以下では「反射波」ともいう。)の受信信号Srの周波数の変化を示している。
受信信号Srは、レーダ波がターゲットとの間を往復するのに要する時間、即ちターゲットまでの距離Rに比例した時間Trだけ遅延し、ターゲットとの相対速度Vに比例した周波数fdだけ偏倚(ドップラシフト)する。
【0005】
従って、送信信号Ssの周波数が増加する(周波数の変化率が正となる)上り変調期間中に得られるビート周波数をfb1、送信信号Ssの周波数が減少する(周波数の変化率が負となる)下り変調期間中に得られるビート周波数をfb2とすると(図10(b)参照)、これらビート周波数fb1,fb2と、遅延時間Trに基づく周波数fr及びドップラシフト周波数fdとは、次の(1)(2)式に示す関係が成立する。
【0006】
fb1=fr−fd (1)
fb2=fr+fd (2)
これら(1)(2)式からは、(3)(4)式を導くことができる。
(fb1+fb2)/2=fr (∽R) (3)
(fb1−fb2)/2=fd (∽V) (4)
即ち、上述したように周波数frはターゲットとの距離Rに比例し、周波数fdはターゲットとの相対速度Vに比例するため、これらビート周波数fb1,fb2に基づいて、ターゲットとの距離R,相対速度Vを求めることができるのである。
【0007】
なお、上述した技術は、FMCWレーダ装置において一般的なものであり、公知・公用の技術に該当するので、特に先行技術文献は開示しない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述のように構成されたFMCWレーダ装置では、至近距離を大きな相対速度で移動するターゲットについては、そのターゲットとの距離Rや相対速度Vを、正しく検出することができないという問題があった。
【0009】
即ち、至近距離では、距離Rに比例した周波数frが小さいため、相対速度のVに比例した周波数の絶対値|fd|が、これを上回ってしまう場合(fr<|fd|)がある。
そして、ターゲットが接近している時には、受信信号の周波数はプラス側に偏倚(fd>0)するため、上り変調期間にて検出されるビート周波数fb1が負値(fr−fd<0)となり、逆にターゲットが遠離っている時には、受信信号の周波数はマイナス側に偏倚(fd<0)するため、下り変調期間にて検出されるビート周波数fb2が負値(fl+fd<0)となる。
【0010】
但し、ビート周波数fb1,fb2がマイナスの値として検出されることはなく、0Hzで折り返された値、即ち(5)(6)式にて求められるような値が検出されることになり、(3)(4)式が成立しなくなるため、ビート周波数fb1,fb2からターゲットとの距離Rや相対速度Vを正しく求めることができないのである。
【0011】
fb1=|fr−fd|=fd−fr (5)
fb2=|fr+fd|=−fr−fd (6)
なお、このようなビート周波数の折り返しを防止する方法として、送信信号の周波数の変化率(周波数掃引の傾き)を大きくすることが知られている。
【0012】
即ち、周波数掃引の傾きを大きくすると、距離Rに対する周波数frの変化率が大きくなり、一方、相対速度Vに基づく周波数偏倚(ドップラシフト)fdは、周波数掃引の傾きによっては変化しないため、ビート周波数がマイナス値となる状況(fr<|fd|)が発生し難くなるのである。
【0013】
しかし、周波数掃引の傾きをどれだけ大きくしても、ビート周波数の折り返しが発生する可能性をゼロとすることはできず、また、周波数掃引の傾きを大きくするほど、送信信号を生成する発振器はより広い範囲で発振周波数をリニアな特性で変調させることを可能とする高性能な特性が要求されることになり、現状では、十分に傾きを大きくすることができなかった。
【0014】
本発明は、上記問題点を解決するために、至近距離を大きな相対速度で移動するターゲットを確実に検出するFMCWレーダ装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた本発明のFMCWレーダ装置では、信号生成手段が、周波数が漸次変化するよう変調された送信信号を生成し、送受信手段が、その送信信号に基づくレーダ波の送信、及びレーダ波を反射したターゲットからの反射波の受信を行う。
【0016】
そして、ビート信号生成手段が、送受信手段からの受信信号及び送信信号と同じ周波数を有するローカル信号に基づいてビート信号を生成し、信号処理手段が、このビート信号に基づいて、レーダ波を反射したターゲットに関する情報を求める。
【0017】
なお、信号生成手段では、互いに大きさが異なり且つ符号が等しい第1及び第2の変化率、並びに少なくとも一方が前記第1及び第2の変化率とは異なる第3及び第4の変化率にて、送信信号の周波数を変化させる。
そして、信号処理手段では、第1演算手段が、第1の変化率にて周波数を変化させる第1変調期間、及び第2の変化率にて周波数を変化させる第2変調期間を第1測定期間とし、この第1測定期間にて得られるビート信号に基づいて、ターゲットとの距離及び相対速度を求めると共に、第2演算手段が、第3の変化率にて周波数を変化させる第3変調期間、及び第4の変化率にて周波数を変化させる第4変調期間を第2測定期間とし、この第2測定期間にて得られるビート信号に基づいて、ターゲットとの距離及び相対速度を求める。
これにより、測定条件を変えて測定することで得られたビート信号に基づく2種類の演算結果が得られることになる。
【0018】
なお、第1変調期間と第2変調期間とで、同じターゲットについてのビート信号の周波数(ビート周波数)を比較すると、ターゲットとの相対速度Vに比例した周波数偏倚(ドップラシフト)fdは、いずれの場合も同じ大きさとなり、一方、ターゲットとの距離Rに比例した周波数frは、送信信号の周波数の変化率の違いにより、互いに異なったものとなる。
【0019】
第1及び第2変調期間にてそれぞれ検出されるビート周波数をfb1,fb2、その時の距離Rに比例した周波数をfr1,fr2、第1及び第2の変化率の符号を正(即ち周波数が漸次増加する)、両変化率の比をN(=[第2の変化率]/[第1の変化率])とすると、これらの間に(7)(8)式が成立する(図9参照)。
【0020】
fb1=fr1+fd (7)
fb2=fr2+fd=N×fr1+fd (8)
この(7)(8)式からは、次の(9)(10)式を導くことができる。
(fb2−fb1)/(N−1)=fr1 (∽R) (9)
(fb2−N×fb1)/(1−N)=fd(∽V) (10)
なお、第1及び第2の変化率の符号を負(即ち周波数が漸次減少する)ように設定した場合には、fdを−fdに置き換えればよい。
【0021】
つまり、第1及び第2変調期間における周波数の変化率の符号が同じであっても、両変調期間にて検出されるビート周波数からターゲットとの距離Rや相対速度Vを求めることが可能であることがわかる。
また、送信信号の周波数が漸次増加する変調期間では、ドップラシフトにより周波数がマイナス側にどれだけ偏倚しても、ビート周波数が負(送信信号Ssの周波数が受信信号Srの周波数より小)になることはなく、また、送信信号の周波数が漸次減少する変調期間では、ドップラシフトによる周波数がプラス側にどれだけ偏倚しても、ビート周波数が負(送信信号Ssの周波数が受信信号Srの周波数より大)になることはない(図10参照)。
【0022】
従って、第1及び第2変調期間の双方にて、送信信号の周波数が漸次増加するように第1及び第2の変化率を設定した場合(請求項7の場合)には、当該装置から遠離るターゲットについて、ビート周波数の折り返しが発生することを確実に防止でき、逆に、送信信号の周波数が漸次減少するように第1及び第2の変化率を設定した場合(請求項8の場合)には、当該装置に接近するターゲットについて、ビート周波数の折り返しが発生することを確実に防止できる。
【0023】
このため、特に後者の場合には、近距離で自車両に接近するターゲットを検知する必要のある自動車用衝突防止レーダ等に好適に用いることができる
【0024】
そして、請求項9に記載のように、第1及び第2演算手段での演算結果のうち、互いに一致しないものがある場合、その演算結果の算出に使用されたビート信号のいずれかにて周波数の折り返しが発生しているものとして、その演算結果の除去或いは補正を行うように構成すれば、演算結果の信頼性を向上させることができる。
【0025】
なお、第3及び第4の変化率は、請求項2に記載のように、互いに大きさが異なり且つ前記第1及び第2の変化率とは符号が異なるように設定してもよい。
【0026】
この場合、第1及び第2測定期間のうち、二つの変調期間の周波数が漸次増加するように設定された一方の測定期間にて得られたビート信号に基づいて、至近距離に存在し大きな相対速度で遠離るターゲットとの距離や相対速度を確実に検出できると共に、二つの変調期間の周波数が漸次減少するように設定された他方の測定期間にて得られたビート信号に基づいて、至近距離に存在し大きな相対速度で接近するターゲットとの距離や相対速度を確実に検出することができる。
【0027】
つまり、至近距離に存在する全てのターゲットを確実に検出できるようにすることが可能となる。
また、第3及び第4の変化率は、請求項3に記載のように、互いに符号が異なり且つ絶対値の大きさが等しいように設定してもよい。
【0028】
この場合、第2測定期間では、周波数が漸次増加する変調期間と周波数が漸次減少する変調期間とを有する一般的なFMCWレーダ装置と同様の測定を行うことができる。
次に、請求項4記載のFMCWレーダ装置では、信号生成手段は、互いに大きさが異なり且つ符号が等しい第1及び第2の変化率、並びに該第1及び第2の変化率のいずれか一方と絶対値の大きさが等しく且つ符号が異なる第5の変化率にて、送信信号の周波数を変化させる。
そして、信号処理手段では、第1演算手段が、第1の変化率にて周波数を変化させる第1変調期間、及び第2の変化率にて周波数を変化させる第2変調期間を第1測定期間とし、この第1測定期間にて得られるビート信号に基づいて、ターゲットとの距離及び相対速度を求めると共に、第2演算手段が、第5の変化率にて周波数を変化させる第5変調期間、及び第1及び第2変調期間のうち第5の変化率と絶対値の大きさが等しい変化率にて周波数を変化させる方を第2測定期間とし、この第2測定期間にて得られるビート信号に基づいて、ターゲットとの距離及び相対速度を求める。
【0029】
この場合、請求項3記載のFMCWレーダ装置と同様に、第2測定期間では、一般的なFMCWレーダ装置と同様の測定を行うことができ、しかも、第1及び第2測定期間が、各測定期間を構成する二つの変調期間のうち一方の変調期間を共用しているため、測定(ビート信号の取得)に要する時間、取得したビート信号(のサンプリング値)を格納するメモリの容量、及びその測定結果を処理する第1及び第2演算手段での処理量,処理時間を大幅に削減することができる。
【0030】
ところで、送受信手段が、送信アンテナと受信アンテナとの組合わせからなるチャンネルを複数有する場合、請求項6に記載のように、周波数の変化率の符号が両変調期間で等しい第1測定期間では一部のチャンネルを、周波数の変化率の符号が両変調期間で互いに異なる第2測定期間では全てのチャンネルを順次使用して、レーダ波の送受信を行うように構成してもよい。
【0031】
この場合、全てのチャンネルを使用する第2測定期間にて得えられるビート信号に基づけば、ターゲットの方位を求める際に良好な分解能が得られる代わりに、ターゲットについての情報が得られるまでの時間が長くなり、一方、一部のチャンネルのみを使用する第1測定期間にて得られたビート信号に基づけば、ターゲットの方位を求める際の方位分解能が低下する代わりに、ターゲットについての情報が得られるまでの時間を短縮できる。
【0032】
従って、信号処理手段は、請求項5に記載のように、第1演算手段での演算結果を、直ちに危険な存在となる可能性が高く、方位角度の広がりの大きい近距離ターゲットの捕捉のために主として用い、第2演算手段での演算結果を、直ちには危険な存在となる可能性が低く、方位角度の広がりの小さい遠距離ターゲットの捕捉のために主として用いるように構成することが望ましい。
【0033】
また、信号処理手段は、請求項10に記載のように、各変調期間のうち、信号生成手段にて生成される送信信号の周波数が安定した変化率で変化する区間にて得られるビート信号を用いて処理を行うことが望ましい。
なお、信号処理手段が、リニアリティの良い上記区間でのみビート信号を取得(サンプリング)するように構成してもよいし、変調期間の全期間にわたってビート信号を取得後、その中から、上記区間以外のデータを廃棄するように構成してもよい。具体的には、周波数が不連続的に変化する変調期間の境界部分の近辺では、周波数の変化が不安定になるため、これらの区間以外にて得られるビート信号を用いればよい。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下に参考例及び本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[参考例]
図1(a)は、参考例の車載用のFMCWレーダ装置の全体構成を表すブロック図である。
【0035】
図1(a)に示すように、本参考例のFMCWレーダ装置2は、ミリ波帯又はマイクロ波帯で発振し、変調信号Mに従って発振周波数が変化する電圧制御発振器(VCO)10と、VCO10の出力を送信信号Ssとローカル信号Lとに電力分配する分配器12と、送信信号Ssに応じたレーダ波を放射する送信アンテナ14と、レーダ波を受信する受信アンテナ16と、受信アンテナ16からの受信信号Srにローカル信号Lを混合してビート信号Bを生成するミキサ20と、変調信号Mを生成する信号生成処理や、ミキサ20が生成したビート信号Bに基づいて、レーダ波を反射したターゲットとの距離Rや相対速度Vを求めるターゲット検出処理等を行う信号処理部22とを備えている。
【0036】
なお、信号処理部22は、CPU,ROM,RAMからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成され、更に、ミキサ20が生成するビート信号BをサンプリングするA/D変換器、A/D変換器を介して取り込んだデータに対して高速フーリエ変換(FFT)処理等を施すための演算処理装置(例えばDSP)、変調信号Mを生成するためのD/A変換器等を備えている。
【0037】
そして、信号処理部22が実行する信号生成処理では、VCO10の発振周波数、即ち送信信号Ssやローカル信号Lの周波数を、図1(b)に示す鋸歯状のパターンに従って変化させるための変調信号Mを生成する。
具体的には、変調範囲ΔF(本参考例では、中心周波数が76.5GHz,変調幅が100MHz)の間を、第1の変化率A1にて直線的に周波数を減少させる変調期間(第1変調期間に相当する。)TD1と、同じく変調範囲ΔFの間を、第2の変化率A2にて直線的に周波数を減少させる変調期間(第2変調期間に相当する。)TD2とからなる測定期間Tを繰り返すように設定されている。
【0038】
即ち、第1及び第2の変化率A1,A2は、互いに大きさが異なり且つ符号が等しくなるようにされている。但し、第2の変化率A2は、第1の変化率A1のN倍(本参考例ではN=2)に設定されている。
このように構成された本参考例のFMCWレーダ装置2では、VCO10が信号処理部22からの変調信号Mに従って生成した出力を、分配器12が電力分配することにより、送信信号Ss及びローカル信号Lを生成し、このうち送信信号Ssは、送信アンテナ14に供給され、レーダ波として送出される。
【0039】
この送信アンテナ14から送出されターゲットに反射して戻ってきたレーダ波(反射波)は受信アンテナ16にて受信され、その受信信号Srがミキサ20に供給される。すると、ミキサ20では、この受信信号Srに分配器12からのローカル信号Lを混合することによりビート信号Bを生成して、信号処理部22に供給する。
【0040】
そして、信号処理部22は、測定期間T中にビート信号Bをサンプリングし、測定期間Tが終了する毎に、サンプリングしたデータに基づいてターゲット検出処理を実行する。
なお、ターゲット検出処理では、測定期間中にサンプリングされたデータを必ずしも全て使用する必要はなく、測定期間の中でVCO10の周波数の変化率が安定する(リニアリティの良い)区間、即ち変調範囲の上限及び下限付近を除いたデータ取得区間でサンプリングされたデータのみを用いればよい。具体的にはデータ取得区間でのみサンプリングを行ってもよいし、測定期間の全期間に渡ってサンプリングされたデータの中から、データ取得区間のデータのみを抽出してもよい。
【0041】
ここで、信号処理部22が実行するターゲット検出処理を、図2に示すフローチャートに沿って説明する。
本処理が起動すると、まず、測定期間Tを構成する各変調期間TD1,TD2毎に、ビート信号Bの周波数分布を求めるFFT処理を行い(S110)、このFFT処理により得られたビート信号Bの周波数分布からピーク成分を抽出するピークサーチ処理(S120)を行う。
【0042】
そして、ピーク成分の信号強度や過去の履歴情報などに基づき、両変調期間TD1,TD2の間で、同一ターゲットからの反射波に基づいて生成された対になるべきピーク成分(以下「ピークペア」という。)を特定するペアマッチ処理を行い(S130)、ペアマッチ処理で特定された各ピークペアについて、そのピーク成分の周波数(以下「ビート周波数」という。)から、それぞれターゲットとの距離Rや相対速度Vを求める距離、速度算出処理を行って(S140)、本処理を終了する。
【0043】
なお、距離、速度算出処理では、変調期間TD1にて検出されたピーク成分の周波数(以下「ビート周波数」という。)をfb1、変調期間TD2にて検出されたビート周波数をfb2として、これら一対のビート周波数fb1,fb2から、上述の(9)(10)に従って、ターゲットとの距離Rに比例した周波数fr、及び相対速度Vに比例した周波数fdを求め、その周波数fr,fdからFMCW方式において周知の演算式を用いてターゲットとの距離Rや相対速度Vを求める。
【0044】
以上説明したように、本参考例のFMCWレーダ装置2においては、両変調期間TD1,TD2における周波数の変化率A1,A2が、互いに大きさが異なり且つ符号が同じとなる(但しいずれも周波数を減少させる)ように設定されている。このため、いずれの変調期間TD1,TD2においても、ドップラシフトによるビート周波数のマイナス側への偏倚に対しては、ビート周波数の折り返しが発生することを確実に防止できる。その結果、当該装置に接近するターゲット、特に、至近距離にあり(Rが小)、大きな相対速度(|V|が大)で接近するターゲット、即ち当該装置を搭載した車両に衝突する危険性のあるターゲットを確実に検出することができる。
【0045】
なお、本参考例では、両変調期間TD1,TD2における周波数の変化率A1,A2が、いずれも周波数を減少させるように設定されているが、逆にいずれも周波数を増大させるように設定してもよい。この場合、いずれの変調期間においても、ドップラシフトによるビート周波数のプラス側への偏倚に対しては、ビート周波数の折り返しが発生することを確実に防止でき、当該装置から遠離るターゲットを、至近距離であっても確実に検出することができる。
【0046】
即ち、変化率A1,A2の符号は、ターゲットの相対速度Vのうち、より重要な向きにおいて、ビート周波数の折り返しが発生しないように設定すればよい。
参考例において、VCO10及び信号生成処理が信号生成手段、送信アンテナ14,受信アンテナ16が送受信手段、分配器12,ミキサ20がビート信号生成手段、信号処理部22のビート信号検出処理が信号処理手段(第1演算手段)に相当する。
[第実施形態]
次に第実施形態について説明する。
【0047】
なお、本実施形態では参考例とは信号処理部22が実行する信号生成処理、及びターゲット検出処理の内容が一部が異なるだけであるため、これらの相異する部分を中心に説明する。
即ち、本実施形態において、信号処理部22が実行する信号生成処理では、VCO10の発振周波数を、図2に示すパターンに従って変化させるための変調信号Mを生成する。
【0048】
具体的には、参考例と同様に、変調範囲ΔFの間を、第1の変化率A1にて直線的に周波数を減少させる変調期間(第1変調期間に相当する。)TD1と、同じく変調範囲ΔFの間を、第2の変化率A2にて直線的に周波数を減少させる変調期間(第2変調期間に相当する。)TD2とからなる第1測定期間T1を備える。これに加えて、変調範囲ΔFの間を、第1の変化率A1とは符号の異なる第3の変化率A3(=−A1)にて直線的に周波数を増大させる変調期間(第3変調期間に相当する。)TU1と、同じく変調範囲ΔFの間を、第2の変化率A2とは符号の異なる第4の変化率A4(=−A2)にて直線的に周波数を増大させる変調期間(第4変調期間に相当する。)TU2とからなる第2測定期間T2を備える。
【0049】
即ち、第1及び第2の変化率A1,A2は、互いに大きさが異なり且つ符号が等しくなるように設定され、第3及び第4の変化率A3,A4は、互いに大きさが異なり且つ符号が等しくなる(但し、第1及び第2の変化率A1,A2とは符号が異なる。)ように設定されている。
【0050】
そして、信号生成処理では、これら第1測定期間T1と第2測定期間T2とが交互に繰り返されるような変調信号Mを生成し、また、ターゲット検出処理は、両測定期間T1,T2でのビート信号Bのサンプリングが終了する毎に起動される。具体的には、第1測定期間T1の終了時、又は第2測定期間T2の終了時のいずれか一方のタイミングで起動される。
【0051】
次に、ターゲット検出処理を、図4に示すフローチャートに沿って説明する。
本処理が起動すると、まず、第1測定期間T1中にサンプリングされたデータに基づいて、参考例におけるターゲット検出処理(S110〜S140)と全く同様の処理(S210)を実行する。但し、この場合、測定期間Tを第1測定期間T1に読み替えるものとする。また、この処理が第1演算手段に相当する。
【0052】
次に、第2測定期間T2中にサンプリングされたデータに基づいて、S210と同様に、参考例におけるターゲット検出処理(S110〜S140)と全く同様の処理(S220)を実行する。但し、この場合、変調期間TD1を変調期間TU1に、変調期間TD2を変調期間TD4に、測定期間Tを第2測定期間T2に読み替えるものとする。また、この処理が第2演算手段に相当する。
【0053】
そして、S210,S220にて各測定期間T1,T2毎に算出された演算結果(ターゲットとの距離Rや相対速度V)を比較して、両測定期間T1,T2の間で互いに一致する演算結果については同一ターゲットに基づくものとして統合し(S230)、統合することのできない不一致の演算結果があるか否かを判断する(S240)。
【0054】
その結果、不一致の演算結果がなければ、ビート周波数の折り返しによる虚像が発生していないものとして、そのまま本処理を終了し、一方、不一致の演算結果があれば、ビート周波数の折り返しによる虚像が発生しているものとして、これら虚像に対する補正処理(S240)を行った後、本処理を終了する。
【0055】
なお、S240の補正処理では、不一致となった演算結果を、単に破棄するだけでもよいし、一方の測定期間で得られたビート周波数に折り返しが生じているものとして距離Rや相対速度Vを再計算し、他方の測定期間で得られた演算結果に一致するものがあれば、これを同一のターゲットに基づくものとして統合するようにしてもよい。また、過去の履歴情報などに基づいて、虚像であるか否かを推定するようにしてもよい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1測定期間T1を構成する両変調期間TD1,TD2では、いずれもレーダ波の周波数が減少するように設定されているため、この第1測定期間T1にて検出されるビート信号Bに基づいて、当該装置に接近するターゲットを確実に検出でき、また、第2測定期間T2を構成する両変調期間TU1,TU2では、いずれもレーダ波の周波数が増大するように設定されているため、この第2測定期間T2にて検出されるビート信号Bに基づいて、第1測定期間T1とは逆に、当該装置から遠離るターゲットを確実に検出できる。
【0057】
しかも、本実施形態では、各測定期間T1,T2にて、それぞれターゲットの距離Rや相対速度Vを求め、両測定期間T1,T2の間で演算結果が一致するものを同一ターゲットのものとして統合するようにされている。つまり、演算結果が互いに一致するものは、いずれもビート周波数の折り返しによる虚像ではないと特定できるため、信頼性の高い情報を得ることができる。
【0058】
そして、補正処理にて、特に、不一致となった演算結果を破棄するようにした場合には、虚像に基づいて存在しないターゲットを検出してしまうことを確実に防止できる。
また、補正処理にて、ビート周波数の折り返しがあるものとした再計算や、履歴に基づく推定などを行うようにした場合には、至近距離に存在するターゲットが検出されずに放置されることを防止できる。
[第実施形態]
次に第実施形態について説明する。
【0059】
なお、本実施形態では参考例とは構成の一部、及び信号処理部にて実行する処理内容の一部が異なるだけであるため、これら参考例とは相異する部分を中心に説明する。
図3に示すように、本実施形態のFMCWレーダ装置2aは、単一の受信アンテナ16の代わりに、複数の受信アンテナ(本実施形態では8個)からなる受信側アンテナ部17と、受信側アンテナ部17を構成する受信アンテナのいずれかを選択信号Xに従って択一的に選択し、選択された受信アンテナからの受信信号Srをミキサ20に供給するスイッチ部18とを備えている。
【0060】
なお、受信側アンテナ部17を構成する各受信アンテナは、その正面方向に対する利得の低下が3dB以内の角度範囲を表すビーム幅が、いずれも送信アンテナ14のビーム幅全体を含むように設定されている。
そして、各受信アンテナは、それぞれが送信アンテナ14との組合せで使用され、これらの組合せを、以下ではチャンネル1〜8と称する。但し、受信側アンテナ部17を構成する各アンテナとチャンネル1〜8との対応関係は配列順でもランダムでもよく、任意に設定してよい。
【0061】
次に、信号処理部22aが実行する信号生成処理では、VCO10の発振周波数を、図6に示すパターンに従って変化させるための変調信号Mを生成する。
具体的には、変調範囲ΔFの間を、第1の変化率A1にて直線的に周波数を減少させる変調期間(第1変調期間に相当する。)TD1と、変調範囲ΔFより変調幅が広く(ここでは上限周波数が高く)設定された第2変調範囲ΔF2の間を、第2の変化率A2にて直線的に周波数を減少させる変調期間(第2変調期間に相当する。)TD2とからなる第1測定期間T1を備える。但し、第2の変化率A2は、第1の変化率A1のN1倍(本実施形態ではN1=2)に設定されている。
【0062】
また、変調範囲ΔFの間を、第の変化率A5にて直線的に周波数を増大させる変調期間TU1と、変調範囲ΔFの間を、第の変化率A5とは符号の異なる第の変化率A6(=−A5)にて直線的に周波数を減少させる変調期間TD3とからなる第2測定期間T2を備えている(変調期間TU1,TD3が第及び第変調期間に相当する。)。
【0063】
即ち、第1及び第2の変化率A1,A2は、互いに大きさが異なり且つ符号が等しくなるように設定され、第及び第の変化率A5,A6は、互いに符号が異なり且つ絶対値の大きさが等しくなるように設定されている。
また、信号生成処理では、上述したような変調信号Mを生成すると共に、第1測定期間T1の間は、一部のチャンネル(本実施形態ではチャンネル1〜3)を順次選択する操作を繰り返し、第2測定期間T2の間は、全てのチャンネル1〜8を順次選択する操作を繰り返すように、スイッチ部18を動作させるための選択信号Xを生成するようにされている。
【0064】
但し、第1測定期間T1の開始時には、予め設定された近距離範囲の上限距離(例えば50m)をレーダ波が往復するのに要する時間以上に設定された待ち時間W1だけ経過した後、選択信号Xによるチャンネルの切り替えを開始し、また、第2測定期間T2の開始時には、当該装置によるターゲットの最大検知距離(例えば100m)をレーダ波が往復するのに要する時間以上に設定された待ち時間W2だけ経過した後、選択信号Xによるチャンネルの切り替えを開始するように設定されている。
【0065】
また、信号処理部22aでは、ターゲット検出処理の代わりに、第1測定期間が終了する毎に第1演算手段としての近距離ターゲット検出処理を、第2測定期間が終了する毎に第2演算手段としての全範囲ターゲット検出処理を実行する。
これら近距離ターゲット検出処理、及び全範囲ターゲット検出処理を、図7に示すフローチャートに沿って次に、ターゲット検出処理を、図7に示すフローチャートに沿って説明する。
【0066】
まず、近距離ターゲット検出処理は、図7(a)に示すように、第1測定期間T1中にサンプリングされたデータに基づいて、第1実施形態におけるターゲット検出処理(S110〜S140)と同様の処理(S310)を実行する。但し、この場合、測定期間Tを第1測定期間T1に読み替えるものとする。
【0067】
なお、FFT処理は、いずれか一つのチャンネルのデータのみについてのみ行ってもよいし、各チャンネル毎にFFT処理を行い、その結果から使用した全チャンネルの平均周波数分布を求め、この平均周波数分布に基づいてピーク抽出を行うようにしてもよい。
【0068】
S310にて検出されたターゲット(距離R,相対速度Vが算出されたターゲット)のうち、距離Rが近距離範囲外のもの(これを「中・遠距離ターゲット」という。)が存在するか否かを判断し(S320)、存在すれば、その中・遠距離ターゲットの演算結果を破棄する(S330)。
【0069】
そして、距離Rが近距離範囲内のターゲット(これを「近距離ターゲット」という。)についてのみ、各チャンネルで得られたデータに基づいて、その方位を算出する方位算出処理を行って(S340)、本処理を終了する。
次に、全範囲ターゲット検出処理は、図7(b)に示すように、第2測定期間T2中にサンプリングされたデータに基づいて、第1実施形態におけるターゲット検出処理(S110〜S140)と同様の処理(S410)を実行する。但し、この場合、測定期間Tを第2測定期間T2、変調期間TD1,TD2を変調期間TU1,TD3に読み替えるものとし、距離・相対速度の算出(S140)には、周波数が漸増する上り変調期間と周波数が漸減する下り変調期間とで検出されたビート信号に基づいて距離・相対速度を算出するFMCW方式において、一般的に使用される公知の式を用いるものとする。
【0070】
S410にて検出されたターゲットのうち、近距離範囲内のターゲットの演算結果を、近距離ターゲット検出処理での演算結果と比較し、これと不一致となる近距離ターゲットが存在するか否かを判断し(S420)、存在すれば、その不一致となった近距離ターゲットは、ビート周波数の折り返しなどにより生じた虚像であるものとして、その演算結果を破棄する(S430)。
【0071】
そして、破棄されずに残ったターゲットについてのみ、各チャンネルで得られたデータに基づいて、その方位を算出する方位算出処理を行って(S340)、本処理を終了する。
以上説明したように、本実施形態のFMCWレーダ装置2aにおいては、一部のチャンネルのみを使用する第1測定期間T1と、全チャンネルを使用する第2測定期間T2とを交互に設け、第1測定期間T1を構成する二つの変調期間TD1,TD2では、いずれも周波数が漸減し、第2測定期間T2を構成する二つの変調期間TU1,TD3では、一方で周波数が漸増し他方で周波数が漸減するように設定し、第1測定期間T1では近距離ターゲットのみを、第2測定期間T2では検知範囲内の全てのターゲットを検出対象としている。
【0072】
従って、本実施形態のFMCWレーダ装置2aによれば、第1測定期間T1が終了する毎に実行する近距離ターゲット検出処理での演算結果に基づいて、近距離ターゲットについては高い距離精度にて応答性よく検出することができ、特に、接近中のターゲットについては漏れなく検出することができる。
【0073】
また、本実施形態のFMCWレーダ装置2aによれば、第2測定期間T2が終了する毎に実行する全範囲ターゲット検出処理での演算結果に基づいて、全検知範囲内のターゲットを高い方位精度(方位分解能)にて検出することができ、特に、近距離ターゲットについては、近距離ターゲット検出処理での演算結果と一致しない演算結果を破棄するようにされているため、ビート周波数の折り返しに基づく誤検知を防止することができる。
【0074】
なお、本実施形態では、第1測定期間T1と第2測定期間T2とを交互に設けているが、第1測定期間T1を複数回繰り返す毎に、第2測定期間を1回挿入する等、両測定期間T1,T2は任意の比率で設ければよい。
また、本実施形態では、第1及び第2測定期間T1,T2を通して、周波数が漸減する変調期間を3個(TD1〜TD3)、周波数が漸増する変調期間を1個(TU1)備えているが、図8に示すように、変調期間TD2を省略し、変調期間TD1,TD3を第1測定期間T1、変調期間TU1,TD3を第2測定期間T2として、両測定期間T1,T2にて、変調期間TD3を共用するように構成してもよい。この場合、変調期間TU1が第変調期間に相当する。
【0075】
そして、近距離ターゲット検出処理では、変調期間TD3にて得られる全チャンネルのデータのうち、第1測定期間T1にて必要となるチャンネル(本実施形態ではチャンネル1〜3)のデータのみを抽出して使用すればよい。従って、この場合、信号処理部22aでは、サンプリングしたデータを保存するために必要なメモリ量、及びそのデータの処理にかかる計算量を大幅に削減することができる。
【0076】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な態様にて実施することが可能である。
例えば、上記実施形態では、送信アンテナを一つ、受信アンテナを一つ又は複数備えたレーダ装置に本発明を適用したが、送信アンテナを複数備えたレーダ装置に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例のFMCWレーダ装置の構成を示すブロック図、及びレーダ波の変調方法を示すグラフである。
【図2】 参考例におけるターゲット検出処理の内容を示すフローチャートである。
【図3】 第実施形態におけるレーダ波の変調方法を示すグラフである。
【図4】 第実施形態におけるターゲット検出処理の内容を示すフローチャートである。
【図5】 第実施形態のFMCWレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図6】 第実施形態におけるレーダ波の変調方法を示すグラフである。
【図7】 第実施形態における近距離ターゲット検出処理、及び全範囲ターゲット検出処理の内容を示すフローチャートである。
【図8】 第実施形態の変形例におけるレーダ波の変調方法を示すグラフである。
【図9】 本発明にて使用するビート周波数の関係を示す説明図である。
【図10】 FMCWレーダの動作を示す説明図である。
【符号の説明】
2,2a…FMCWレーダ装置、12…分配器、14…送信アンテナ、16…受信アンテナ、17…受信側アンテナ部、18…スイッチ部、20…ミキサ、22,22a…信号処理部。

Claims (10)

  1. 周波数が漸次変化するよう変調された送信信号を生成する信号生成手段と、
    該信号生成手段が生成した送信信号に基づくレーダ波の送信、及び該レーダ波を反射したターゲットからの反射波の受信を行う送受信手段と、
    前記送受信手段からの受信信号及び前記送信信号と同じ周波数を有するローカル信号に基づいてビート信号を生成するビート信号生成手段と、
    該ビート信号生成手段が生成したビート信号に基づいて、レーダ波を反射したターゲットに関する情報を求める信号処理手段と、
    を備えたFMCWレーダ装置において、
    前記信号生成手段は、互いに大きさが異なり且つ符号が等しい第1及び第2の変化率、並びに少なくとも一方が前記第1及び第2の変化率とは異なる第3及び第4の変化率にて、前記送信信号の周波数を変化させ、
    前記信号処理手段は、
    前記第1の変化率にて周波数を変化させる第1変調期間、及び前記第2の変化率にて周波数を変化させる第2変調期間を第1測定期間とし、該第1測定期間にて得られるビート信号に基づいて、前記ターゲットとの距離及び相対速度を求める第1演算手段と、
    前記第3の変化率にて周波数を変化させる第3変調期間、及び前記第4の変化率にて周波数を変化させる第4変調期間を第2測定期間とし、該第2測定期間にて得られるビート信号に基づいて、前記ターゲットとの距離及び相対速度を求める第2演算手段と、
    を備えることを特徴とするFMCWレーダ装置。
  2. 前記第3及び第4の変化率は、互いに大きさが異なり且つ前記第1及び第2の変化率とは符号が異なることを特徴とする請求項1記載のFMCWレーダ装置。
  3. 前記第3及び第4の変化率は、互いに符号が異なり且つ絶対値の大きさが等しいことを特徴とする請求項1記載のFMCWレーダ装置。
  4. 周波数が漸次変化するよう変調された送信信号を生成する信号生成手段と、
    該信号生成手段が生成した送信信号に基づくレーダ波の送信、及び該レーダ波を反射したターゲットからの反射波の受信を行う送受信手段と、
    前記送受信手段からの受信信号及び前記送信信号と同じ周波数を有するローカル信号に基づいてビート信号を生成するビート信号生成手段と、
    該ビート信号生成手段が生成したビート信号に基づいて、レーダ波を反射したターゲットに関する情報を求める信号処理手段と、
    を備えたFMCWレーダ装置において、
    前記信号生成手段は、互いに大きさが異なり且つ符号が等しい第1及び第2の変化率、並びに該第1及び第2の変化率のいずれか一方と絶対値の大きさが等しく且つ符号が異なる第5の変化率にて、前記送信信号の周波数を変化させ、
    前記信号処理手段は、
    前記第1の変化率にて周波数を変化させる第1変調期間、及び前記第2の変化率にて周波数を変化させる第2変調期間を第1測定期間とし、該第1測定期間にて得られるビート信号に基づいて、前記ターゲットとの距離及び相対速度を求める第1演算手段と、
    前記第5の変化率にて周波数を変化させる第5変調期間、及び前記第1及び第2変調期間のうち前記第5の変化率と絶対値の大きさが等しい変化率にて周波数を変化させる方を、第2測定期間とし、該第2測定期間にて得られるビート信号に基づいて、前記ターゲットとの距離及び相対速度を求める第2演算手段と、
    を備えることを特徴とするFMCWレーダ装置。
  5. 前記信号処理手段は、前記第1演算手段での演算結果を、主として近距離ターゲットの 捕捉のために用い、前記第2演算手段での演算結果を、主として遠距離ターゲットの捕捉のために用いることを特徴とする請求項3又は請求項4記載のFMCWレーダ装置。
  6. 前記送受信手段は、送信アンテナと受信アンテナとの組合わせからなるチャンネルを複数有し、前記第1測定期間では一部のチャンネルを、前記第2測定期間では全てのチャンネルを順次使用して、レーダ波の送受信を行うことを特徴とする請求項3乃至請求項5記載のFMCWレーダ装置。
  7. 前記第1及び第2変調期間では、送信信号の周波数が漸次増加することを特徴とする請求項1乃至請求項6いずれか記載のFMCWレーダ装置。
  8. 前記第1及び第2変調期間では、送信信号の周波数が漸次減少することを特徴とする請求項1乃至請求項6いずれか記載のFMCWレーダ装置。
  9. 前記信号処理手段は、前記第1及び第2演算手段での演算結果のうち、互いに一致しないものがある場合、該演算結果の算出に使用されたビート信号のいずれかにて周波数の折り返しが発生しているものとして、該演算結果の除去或いは補正を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項8いずれか記載のFMCWレーダ装置。
  10. 前記信号処理手段は、前記各変調期間のうち、前記信号生成手段にて生成される送信信号の周波数が安定した変化率で変化する区間にて得られるビート信号を用いて処理を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項9いずれか記載のFMCWレーダ装置。
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