JP3893942B2 - 紫外線照射装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
誘電体バリア放電ランプを用いた紫外線照射装置に関し、特に水による冷却機構を具備した紫外線照射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、金属やガラスなどの被処理体に空気中で紫外線を照射することにより、当該紫外線およびこれにより生成されるオゾンの作用によって被処理体を処理する技術、例えば被処理体の表面に付着した有機汚染物を除去する洗浄処理技術や、被処理物の表面に酸化膜を形成する酸化膜形成処理技術が開発され、実用化に至っている。
【0003】
このような紫外線処理を行うための紫外線照射装置または紫外線処理装置においては、紫外線を放射するランプが設けられると共に、近年、紫外線の誘電体バリア放電ランプを紫外線源に備えたエキシマ光照射装置が開発されており、半導体産業や液晶産業の分野において、ワーク表面の有機物汚染物のドライ洗浄を初めとして、表面改質やアッシング等に広く応用されている。例えばドライ洗浄においては、大気中に置かれた基板に真空紫外線を照射するという簡便な方法であり、従来より知られる低圧水銀灯を用いた紫外線洗浄に比較して高効率の処理を達成することができる。
【0004】
上記紫外線照射装置の一例として、例えば特許第2789557号公報には、誘電体バリア放電ランプを該ランプに冷却用ブロックを添設して該冷却用ブロックを冷却用流体で冷却することにより、主要の誘電体バリア放電ランプを冷却する紫外線照射装置が記載されている。又、特許第2528244号公報に記載のものは、エキシマ発生源本体の一部を直接冷却用流体で冷却するエキシマ発生源からなる紫外線照射装置について記載されている。
【0005】
誘電体バリア放電ランプなどの紫外線源を冷却する効果は、放電ガスの温度上昇を抑制することであり、これにより、エキシマ分子の形成効率の低下を抑制し、よって紫外線の発生効率を高めるというものである。
上記二つの公報に記載の紫外線照射装置はいずれも冷却用流体を装置内に流通させて冷却するものであり、係る冷却用流体としては水が好適に使用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記紫外線照射装置においては、紫外線照射装置内に水を流通させる構造上、当該装置の内部に水導出入用の配管がランプハウス内に配置されており、この配管と水の流路を繋ぐ継手が必要に応じて取付けられることになる。そのような継手部分からは水が漏出する可能性があり、万一に備え、漏水対策が必要となる。
【0007】
ランプハウス内に漏出した水は略密閉状態のランプハウス内に貯められるので当該ランプハウスの内容積を超えない程度で水の供給を停止させれば足りる。然るに、万一水がランプハウス内容積を越えて供給された場合は、外部に漏れ出て大きな事故に至ってしまう。また、ランプハウス内に多量に水が入ると、装置を通常どおり使用可能な状態にするには大変な手間と時間が掛かってしまう。このためにも、ランプハウス内の水漏れを最小限にとどめる必要があり、水漏れが生じた場合にはその初期段階で検知する必要がある。
【0008】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、僅かな冷却水の洩出でも反応性よく検知できて、ランプハウス内への水漏れを最小限に防止することが可能な紫外線照射装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の紫外線照射装置は、紫外線を放射するランプと、このランプが収納されるランプハウスと、当該ランプハウス内に冷却用の水を導入する配管とを具備し、前記ランプハウスの内部に水が浸入したときに当該水が紫外線と反応して気体状態のH2とOに解離したことに基いて生じる圧力変化を測定して漏水を検出する圧力スイッチが設けられていることを特徴とする。又、上記の紫外線照射装置のランプハウス内に水センサを設けてもよい。又、前記圧力スイッチ又は前記水センサは漏水を検知すると異常信号を制御部に送信し、当該制御部はこの異常信号に基づいて前記配管に取り付けられた電磁弁に停止信号を送信することにより冷却水の導入を遮断する制御手段を具備してもよい。
【0010】
【作用】
ランプハウス内においては、真空紫外光を好ましく透過させる為に窒素を充填している。通常の点灯時においては、収納室内には紫外線が発生しているので、収納室内に水が浸入すると、気体又は液体状態の水(H2O)は紫外線と反応して気体状態のH2とOに解離し、収納室に充満する。この際、収納室内の圧力が一時に高くなる。収納室内の圧力を圧力計により測定すれば、圧力変化を読むことにより、収納室内の漏水を検知する手段として使用することが可能になる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の紫外線照射装置の一例における構成を示す説明用断面図である。この紫外線照射装置は、複数(図示の例では4つ)の誘電体バリア放電ランプ20と、この誘電体バリア放電ランプ20が収納されるランプ収納室Rを形成する、例えば矩形の箱型のランプハウス10とを具えてなるものである。
【0012】
ランプハウス10は、下面に開口12を有する全体が矩形の箱型の枠材11と、この枠材11の開口12を気密に塞ぐよう設けられた、誘電体バリア放電ランプ20からの真空紫外線をランプ収納室Rの外部に放出するための窓部材13とにより構成されている。また、枠材11の一側面には、ランプ収納室R内に不活性ガスを導入するためのガス導入孔14が形成されており、枠材11の他側面には、ランプ収納室R内のガスを排出するガス排出孔15が形成される。
【0013】
窓部材13を構成する材料としては、紫外線に対して透過性を有するもの、例えば波長200nm以下の真空紫外線に対して透過性を有する合成石英ガラスを用いることができる。
【0014】
誘電体バリア放電ランプ20においては、図2にも示すように、誘電体よりなる円筒状の一方の壁材21と、この一方の壁材21内にその筒軸に沿って配置された、当該一方の壁材21の内径より小さい外径を有する誘電体よりなる他方の壁材22とを有する放電容器23が設けられている。この放電容器23においては、一方の壁材21および他方の壁材22の各々の両端部が封止壁部24によって接合され、一方の壁材21と他方の壁材22との間に円筒状の放電空間Sが形成されている。
【0015】
放電容器23における一方の壁材21には、その外周面25に密接して、例えば金網などの導電性材料よりなる網状の一方の電極26が設けられ、放電容器23における他方の壁材22には、その外面27を覆うようアルミニウムよりなる膜状の他方の電極28が設けられている。そして、一方の電極26および他方の電極28は、それぞれ電流供給用のコード29によって適宜の電源装置(図示省略)に接続されている。
【0016】
放電容器23における一方の壁材21および他方の壁材22を構成する誘電体材料としては、例えば波長200nm以下の真空紫外線に対して透過性を有する合成石英ガラスを用いることができる。
【0017】
放電容器23内には、放電用ガスとして例えばキセノンガスまたはアルゴンと塩素との混合ガスが充填されて波長200nm以下の真空紫外線を放射する。放電用ガスは、放電容器23における放電空間Sの放電ギャップの距離d(mm)と当該放電用ガスの圧力p(kPa)との積pdが80〜500となるよう充填されていることが好ましい。このような条件で放電用ガスが充填されることにより、真空紫外領域のエキシマ光が高い効率で得られる。そして、誘電体バリア放電ランプ20における一方の電極26と他方の電極28との間に高周波電圧が印加されると、放電容器23内の放電空間Sにおいて誘電体バリア放電が発生し、これにより、封入用ガスを構成する元素によるエキシマが生成され、このエキシマによる真空紫外領域のエキシマ光が一方の壁材21を介して一方の電極26の網目から放射される。具体的には、放電用ガスとしてキセノンガスを用いる場合には、キセノンエキシマによる波長172nmにピークを有する真空紫外線が放出され、放電用ガスとしてアルゴンと塩素との混合ガスを用いる場合には、アルゴン−塩素エキシマによる波長175nmにピークを有する真空紫外線が放出される。
【0018】
そして、誘電体バリア放電ランプ20から放射された真空紫外線は、窓部材13を介してランプ収納室Rの外部に放出される。ここで、ランプ収納室R内は窒素ガスで充満した状態とされているため、誘電体バリア放電ランプ20からの真空紫外線は当該ランプ収納室R内において吸収されることがない。窓部材11の直下には例えば液晶製造工程で使用されるCr基板やシリコンウェーハなどの被処理物Wが配置されており、窓部材13を透過した真空紫外光がこの被処理物Wに照射されることになる。ランプ収納室R内の雰囲気が空気である場合には、誘電体バリア放電ランプ20からの真空紫外線の大部分は当該空気に吸収されて、大きい出力の真空紫外線を外部に放出することができなくなる。
【0019】
ランプハウス10内の上部には、アルミニウムよりなる冷却ブロック30が設けられている。この冷却ブロック30の下面には、それぞれ誘電体バリア放電ランプ20の外径より大きい径を有する断面が半円形の4つの溝31が、互いに離間して並ぶよう形成されており、これらの溝31の各々に沿って誘電体バリア放電ランプ20が配置されている。
【0020】
冷却ブロック30には、貫通孔が設けられており、例えば冷却水を流通するための管材が挿通されて、冷却水流通路32が形成されている。この冷却水流通配管32の一端部には継手部33を介して冷却水導入管34が接続されており、一方の他端部も同様に継手部35を介し、冷却水排出管36が接続されている。
【0021】
また、冷却水導入管34及び冷却水排出管36は、ランプハウス10における枠材11を貫通して、各々外端部が収納室Rの外部に突出しており、図示省略の外部冷却水配管に接続されている。
【0022】
上記の紫外線照射装置においては、ガス導入孔14からランプ収納室Rに例えば窒素ガスが導入されることにより、当該ランプ収納室R内が窒素ガスで充満した状態とされる。収納室R内の圧力は、例えばゲージ圧力で300Paとされる。
【0023】
ランプハウス10の枠材11には、該ランプハウス10内部の圧力を計測する圧力計測手段と所定の圧力基準に達したときに異常信号を発信する発信手段を備えた圧力スイッチ40が取付けられている。圧力スイッチ40は、例えば、微差圧スイッチなどから構成され、ランプハウス10内部の圧力を、大気圧と収納室R内の圧力との差異を元に、数〜数十Paのオーダーで検出可能である。圧力スイッチ40は、例えばランプハウス10の内圧が所定の基準値以上に上昇した場合水漏れと判断し、異常信号を制御部41に送信する。制御部41は、圧力スイッチ40からの異常信号を受信すると、上述の冷却水導入管34に取付けられた電磁弁42に、冷却水の導入を遮断するよう停止信号を送信する。しかる後、この電磁弁42が閉鎖されて、冷却水の供給が停止されるようになる。また、圧力スイッチ40にアラーム機能を具備させておいてもよい。なお、圧力スイッチ40における水漏れの判断基準については、通常時のランプハウス10の内圧との関係により、適宜に設定することができる。例えば、単位時間内で増大した圧力の差を計測して、単位時間内に基準値以上に圧力が上昇した際、異常信号を送信させるようにしてもよい。なお、紫外線照射装置の仕様によってはランプ収納室Rに窒素ガスを流過させながら使用する場合があり、このため窒素ガスにより内圧が急に変化する可能性がある。係る場合、圧力スイッチ40が窒素ガスによる圧力変化を検出しないように、ガス導入口14とガス排出口15とに窒素ガスの流量変化を監視できるような流量計等(図示せず)を取付けたり、圧力スイッチ40とは別に窒素ガスによる内圧変化を監視可能な圧力計(図示せず)を取付けたりすればよい。
【0024】
本発明者らは、下記のような実験を行って、ランプハウス内の圧力を元に、当該ランプハウス内の水の存在を検知できるということを確認した。即ち、ランプハウス内において、紫外光が直接照射されない個所に約10ccの水が入った容器を配置してランプを点灯させたところ、ランプ点灯前の内圧が当初約300Paであったものが、照射時間約1s後に約500Paまで圧力が上昇することが確認された。これは、ランプハウス内に導入された少量の水が一部水蒸気となって浮遊しており、この水蒸気に紫外線が照射されることで、水の分子(H2O)が一時的に変化して、H2、Oに解離し、その結果、内圧が上昇したことによると推察される。なお、紫外線照射によるH2Oの解離反応については、平成7年度照明学会全国大会において豊間根らによる「UV照射による石英ガラスのガス放出特性」の発表で同様の報告がなされている。
このように、極めて小量の水であっても、ランプハウスの内圧が急上昇することが確認されたので、圧力スイッチを用いてランプハウス内の圧力を監視することによって、水漏れが発生した場合には、正確、かつ、瞬時にこれを検知することが可能になる。よって、水漏れの発生から冷却水の供給を停止するまで、極めて短時間で対応することができ、ランプハウス内への水漏れを最小限にとどめることができる。
【0025】
再度、図1を参照し、更なる発明の実施形態を説明する。同図に示すように、冷却水の配管に対応し、かつ、光取出し窓13からの光を遮光しない位置に、漏水受け用のパン43が設置されており、このパン43には水センサ44が配置されている。水センサは、具体的には漏液センサであり、例えばティアンドティ社製のLSP−8A−0を用いることができる。パン43は、図1に示すように、横から見るとやや傾斜してランプハウス10の床面に設置されており、水が傾斜に沿って下側に流下すると、パン43の下側部分43aに配置された水センサ44がこれを検出して漏水を検知する。このように、パン43を傾斜させてランプハウス10内に配置すると、水センサ44を多数配置することなく少量の水漏れでも確実に検知できる。
【0026】
水センサ44は、例えば制御部41に接続されており、当該水センサ44が水を検知すると制御部41に異常信号を送信し、該制御部41が電磁弁42に対し、封鎖する信号を送信する。先に説明した圧力スイッチ(40)のみで漏水を検知する場合は、ランプ不点灯時は紫外線が発生しないためにランプハウス10の内圧の異常上昇が発生せず、漏水を検知することができない、という場合があるが、本実施形態のように、圧力スイッチ(40)に加えて水センサ44を取付けることにより、この紫外線照射装置の不使用時においても漏水を検知できるようになり、ランプハウス10内の水漏れを常に検知することが可能となる。
【0027】
無論、ランプの不点灯時、つまり、紫外線照射装置の不使用時には、通常は冷却水の流通を停止しているので多量の水が洩出する可能性は低い。然るに、そのような場合においても、継手部分の緩み等を事前に察知できるという利点があり、この場合は水漏れを未然に防止することが可能となる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記の紫外線照射装置に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。例えば、ランプの冷却方法としては、水が流通される冷却ブロックを用いてランプを冷却するという方法に限定されず、ランプを構成する誘電体の一部を円管状に構成してこれに直接水を流通させて冷却する方法でも良い。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本願発明によれば、ランプハウス内部に水が浸入したときに当該水が紫外線と反応して気体状態のH 2 とOに解離したことに基いて生じる圧力変化を測定して漏水を検出する圧力スイッチを設けたので、ランプハウス内において水漏れが発生した場合には、内圧の変化でこれを検知することが可能となり、極小量の水漏れであっても、確実にこれを検知することが可能である。
【0030】
また、更に水センサをランプハウス内に配置することにより、ランプ不点灯時においても水漏れを監視することが可能となる。
【0031】
また、圧力スイッチ又は水センサが漏水を検知すると異常信号を制御部に送信し、当該制御部はこの異常信号に基づいて前記配管に取り付けられた電磁弁に停止信号を送信することにより冷却水の導入を遮断する制御手段を具備したので、水漏れ発生後、即座に冷却水の供給を停止することが可能となり、ランプハウス内への水漏れを最小限に止めることができる。よって、ランプハウスの外部に水が漏れ出るような事故を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の紫外線照射装置の一例における構成を示す説明用断面図
【図2】誘電体バリア放電ランプの説明用断面図
【符号の説明】
10 ランプハウス
11 枠材
12 開口
13 窓部材
14 ガス導入口
15 ガス排出口
20 誘電体バリア放電ランプ
21 一方の壁材
22 他方の壁材
23 放電容器
24 封止壁部
25 外周面
26 一方の電極
27 外面
28 他方電極
29 コード
30 冷却ブロック
31 溝
32 冷却水流通路
33 継手部
34 冷却水導入管
35 継手部
36 冷却水排出管
40 圧力スイッチ
41 制御部
42 電磁弁
43 パン
44 水センサ
Claims (3)
- 紫外線を放射するランプと、
このランプが収納されるランプハウスと、
当該ランプハウス内に冷却用の水を導入する配管とを具備し、
前記ランプハウスの内部に水が浸入したときに当該水が紫外線と反応して気体状態のH2とOに解離したことに基いて生じる圧力変化を測定して漏水を検出する圧力スイッチが設けられている
ことを特徴とする紫外線照射装置。 - 前記ランプハウス内に水センサを設けたことを特徴とする請求項1記載の紫外線照射装置。
- 前記圧力スイッチ又は前記水センサが漏水を検知すると異常信号を制御部に送信し、当該制御部はこの異常信号に基づいて前記配管に取り付けられた電磁弁に停止信号を送信することにより冷却水の導入を遮断する制御手段を具備したことを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外線照射装置。
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