JP3893539B2 - 形状測定方法及びその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、形状測定方法およびその装置に係り、特に、試料に電磁波(光線)または荷電粒子を照射して試料から発生する信号を用いて試料の断面形状または三次元形状を非破壊、非接触で計測するに好適な形状測定方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体ウェハに配線パターンを形成するに際しては、半導体ウェハ上にレジストと呼ばれる塗布材を塗布し、レジストの上に配線パターンのマスクを重ねてその上から可視光線あるいは紫外線を照射し、可視光線あるいは紫外線でレジストを感光することによって配線パターンを形成する方法が採用されている。このようにして得られた配線パターンは照射する可視光線あるいは紫外線の強度や絞りによってパターンのスロープ部分の傾斜角や形状が変化するため、高精度の配線パターンを形成するには、パターンの三次元形状を測定して検査する必要がある。この検査のためには、ウエハを切断し、断面形状を測定することで断面形状を正確に測定することはできるが、この方法では手間とコストがかかることになる。
【0003】
そこで、従来、電子顕微鏡画像を用いて、非破壊、非接触でパターンの断面形状を測定する手法が提案されている。例えば、特公平5−54605号公報に記載されているように、Shape from Shading法(例えば、池内:「反射率地図に基づき、二次元濃淡画像より三次元形状を再構成する2手法」、電子通信学会論文誌,VOL.J−65−D,No.7,pp.842−849(1982年7月))とステレオマッチング法を併用して断面形状を測定するようにしたものがある。上記公報には、電子顕微鏡の二次電子検出器で検出した信号波形の特徴点を検出し、特徴点のステレオマッチングにより断面の高さの絶対値を測定し、特徴点間の形状をShape from Shading法によって求めることが開示されている。
【0004】
また、スペクトラCD( 例えば、Jhon Allgair,et al.:Implemention of Spectroscopic Critical Dimention for Gate CD Control and Stepper Characterization,:SPIE’s 26th Symposium on Microlithography,Feb.2001.)は、紫外線照射によるレジストパターンの損傷を防ぐために、試料に可視光線を照射し、試料からの反射光スペクトルと予めデータベースとして用意された様々な三次元形状に対応する反射光スペクトルとの照合を行うことによって三次元形状を推定している。
【0005】
なお、この種の技術に関連するものとしては、例えば、特開平7−27549号公報、特許2,716,997号、特開平5−290786号公報、特公平7−122574号公報、特許2,650,281号公報に記載されているものが挙げられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記ステレオマッチング法を用いる手法は、入力信号のSN比が悪い場合、特徴点の対応でずれが生じ、三次元形状の計測に大きな誤差が生じる。また、上記スペクトラCDでは、データベースの構築のために計測データを必要とし、測定できるパターンがラインの繰返し構造(格子パターン)に限定される。また出力が立体画像表示ではなく、数値データ(配線の幅と高さ、傾斜角)であるため、三次元形状を表示するには十分ではない。
【0007】
また、従来技術においては、単一の二次電子検出器を用いて任意のパターンの三次元形状を測定することについては十分配慮されていない。
【0008】
本発明の課題は、特徴点のマッチングを用いることなく、試料の断面形状または三次元形状を正確に測定することができる形状測定方法およびその装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明は、Shape from shading法を用いて、試料の断面形状候補または三次元形状候補を複数個推定し、これら形状候補の中から実際の測定結果とつじつまが合うものを選択し、選択したものを試料の断面形状または試料の三次元形状に関する測定結果とするものである。
【0010】
具体的には、本発明は、試料に対して走査方向の軸に沿って相対移動しながら前記試料の表面に電磁波または荷電粒子を照射し、前記電磁波または荷電粒子の照射に伴って前記試料で反射した電磁波または前記試料から発生した荷電粒子の信号強度を検出し、この検出出力を基に前記電磁波または荷電粒子の照射位置における試料表面の傾斜角を算出し、この算出値から前記試料の断面形状候補を推定し、前記試料の断面形状候補に対する電磁波または荷電粒子の入射角を前記試料に対する電磁波または荷電粒子の入射角とは異なる角度に変えたと仮定して前記試料の断面形状候補で反射した電磁波または前記試料から発生した荷電粒子の信号強度を推定し、前記信号強度の推定結果と前記試料に対する電磁波または荷電粒子の入射角を前記仮定したときの角度に変更したときに得られた信号強度の検出出力とを照合し、この照合結果を基に前記試料の断面形状を推定する形状測定方法を作用したものである。
【0011】
前記形状測定方法を採用するに際しては、試料に電磁波または荷電粒子を照射するときに、試料に対して走査方向の軸(X軸)および前記軸と直交する奥行き方向の軸(Y軸)に沿って相対移動しながら試料の表面に電磁波または荷電粒子を照射し、さらに照合結果を基に試料の断面形状(高さ方向の形状)を推定するときに、この推定結果を試料に対する電磁波または荷電粒子が前記奥行き方向の軸に沿って照射されるごとに順次蓄積し、この推定結果を基に試料の三次元形状を推定する方法を採用することもできる。
【0012】
前記形状測定方法を採用するに際しては、以下の要素を付加することができる。
【0013】
(1)前記断面形状候補を推定するに際して、前記信号強度の検出出力と前記試料の断面形状に関する複数種類のパラメータの中から選択された複数のパラメータを用いて前記電磁波または荷電粒子の照射位置における試料表面の傾斜角を算出する。
【0014】
(2)前記試料の断面形状を推定するに際しては、前記信号強度の推定結果と前記信号強度の検出出力との差を小さくするためのパラメータを選択する。
【0015】
(3)前記試料の断面形状を推定するに際しては、前記信号強度の推定結果と前記信号強度の検出出力との差が最小値を示すまでパラメータを選択する。
【0016】
(4)前記断面形状候補の推定結果と前記断面形状の推定結果および前記複数のパラメータをデータベースとして保存する。
【0017】
(5)前記試料に対する電磁波または荷電粒子の入射角を変更するに際しては、前記電磁波または荷電粒子の照射方向を一定として、前記試料の取り付け角度を変更するか、あるいは前記試料の取り付け角度を一定として、前記試料に対する前記電磁波または荷電粒子の照射方向を変更する。
【0018】
前記した手段によれば、実際に、試料に電磁波または荷電粒子を照射して得られた信号強度から試料表面の傾斜角を算出し、この算出値から試料の断面形状候補を、例えば、複数個推定し、この推定によって得られた試料の断面形状候補に対して、実際に試料に電磁波または荷電粒子を照射したときの入射角とは異なる角度で電磁波または荷電粒子を照射したと仮定し、試料の断面形状候補から得られる信号強度を推定し、この信号強度の推定結果と、前記試料に対する入射角を前記仮定したときの角度に変更したときに、試料から得られる実際の信号強度とを照合し、この照合結果から、例えば、照合結果が最小値を示すような試料の断面形状を最もらしい試料の断面形状として選択するようにしているため、特徴点のマッチングを行うことなく、試料の断面形状を試料の高さ(Z軸方向の長さ)の絶対値で求めることができる。さらに試料に対して、奥行き方向の軸(Y軸)に沿って電磁波または荷電粒子を照射したときに得られる試料の断面形状を蓄積することで、試料の三次元形状を求めることができる。
【0019】
また、本発明は、試料に対して走査方向の軸に沿って相対移動しながら前記試料の表面に電磁波または荷電粒子を照射する照射手段と、前記照射手段の照射に伴って前記試料で反射した電磁波または前記試料から発生した荷電粒子の信号強度を検出する信号強度検出手段と、前記信号強度検出手段の検出出力を基に前記電磁波または荷電粒子の照射位置における試料表面の傾斜角を算出し、この算出値から前記試料の断面形状候補を推定する断面形状候補推定手段と、前記試料の断面形状候補に対する電磁波または荷電粒子の入射角を前記試料に対する電磁波または荷電粒子の入射角とは異なる角度に変えたと仮定して前記試料の断面形状候補で反射した電磁波または前記試料から発生した荷電粒子の信号強度を推定する信号強度推定手段と、前記信号強度推定手段の推定結果と前記試料に対する電磁波または荷電粒子の入射角を前記仮定したときの角度に変更したときに得られた前記信号強度検出手段の検出出力とを照合して前記試料の断面形状を推定する断面形状推定手段とを備えてなる形状測定装置を構成したものである。
【0020】
前記形状測定装置を構成するに際しては、照射手段としては、試料に対して走査方向の軸(X軸)および前記軸と直交する奥行き方向の軸(Y軸)に沿って相対移動しながら前記試料の表面に電磁波または荷電粒子を照射する機能を有するものを用いることができ、前記断面形状推定手段としては、前記照射手段が前記走査方向の軸に沿って相対移動したときに得られた推定結果を、前記照射手段が前記奥行き方向の軸に沿って相対移動するごとに順次蓄積し、この蓄積結果を基に前記試料の三次元形状を推定する機能を有するもので構成することができる。
【0021】
前記各形状測定装置を構成するに際しては、以下の要素を付加することができる。
【0022】
(1)前記断面形状候補推定手段は、前記信号強度検出手段の検出出力と前記試料の断面形状に関する複数種類のパラメータの中から選択された複数のパラメータを用いて前記電磁波または荷電粒子の照射位置における試料表面の傾斜角を算出してなる。
【0023】
(2)前記断面形状推定手段は、前記信号強度推定手段の推定結果と前記信号強度検出手段の検出出力との差を小さくするためのパラメータの選択を前記断面形状候補推定手段に対して指令してなる。
【0024】
(3)前記断面形状推定手段は、前記信号強度推定手段の推定結果と前記信号強度検出手段の検出出力との差が最小値を示すまでパラメータの選択を前記断面形状候補推定手段に対して指令してなる。
【0025】
(4)前記断面形状候補推定手段の推定結果と前記断面形状推定手段の推定結果および前記複数のパラメータをデータベースとして保存するデータ保存手段を備えてなる。
【0026】
前記した手段によれば、実際に、試料に電磁波または荷電粒子を照射して得られた信号強度から試料表面の傾斜角を算出し、この算出値から試料の断面形状候補を、例えば、複数個推定し、この推定によって得られた試料の断面形状候補に対して、実際に試料に電磁波または荷電粒子を照射したときの入射角とは異なる角度で電磁波または荷電粒子を照射したと仮定し、試料の断面形状候補から得られる信号強度を推定し、この信号強度の推定結果と、前記試料に対する入射角を前記仮定したときの角度に変更したときに、試料から得られる実際の信号強度とを照合し、この照合結果から、例えば、照合結果が最小値を示すような試料の断面形状を最もらしい試料の断面形状として選択するようにしているため、特徴点のマッチングを行うことなく、単一の信号強度検出手段を用いて、試料の断面形状を試料の高さ(Z軸方向の長さ)の絶対値で求めることができる。さらに試料に対して、奥行き方向の軸(Y軸)に沿って電磁波または荷電粒子を照射したときに得られる試料の断面形状を蓄積することで、試料の三次元形状を求めることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態を示す三次元形状測定装置の全体構成を示すブロック構成図である。図1において、三次元形状測定装置は、電子銃1、試料台2、電子検出器3、表示器(CRT)4、信号入力部5、画像処理部6を備えて構成されており、試料台2上には試料7が固定されている。
【0028】
試料台2は、傾斜可能に構成されており、本実施形態においては、試料台2はそのチルト角がφ=0、φ=φのいずれかに選択できるように構成されている。すなわち、試料台2に固定された試料7の取付角度は、試料台2の傾斜角であるチルト角φ=0とφ=φのいずれかに選択できるようになっている。
【0029】
試料台2上に固定された試料7に対しては、電子銃1から荷電粒子として電子ビームが照射されるようになっている。この場合、電子銃1から試料7に対しては、試料7に対して走査方向の軸(X軸)に沿って相対移動しながら電子ビームが照射されるとともに、走査方向の軸と直交する奥行き方向の軸(Y軸)に沿って相対移動しながら電子ビームが照射されるようになっている。試料7に対して電子ビームが照射されると、この電子ビームは一次電子として試料7に入射され、入射された一次電子の一部が二次電子として試料7から発生し、この二次電子が電子検出器3によって検出されるようになっている。すなわち、照射手段としての電子銃1から試料7に対して電子ビームが照射されると、試料7から二次電子が発生し、この二次電子の信号強度が電子検出器3で検出されるようになっており、電子検出器3は、試料7から発生した二次電子の信号強度を検出する信号強度検出手段として構成されている。電子検出器3の検出出力は、表示器4と信号入力部5に入力されるようになっている。信号入力部5は、例えば、AD変換器などで構成されており、電子検出器3で検出された信号強度に関する信号がデジタル信号として画像処理部6に出力されるようになっている。そして画像処理部6の処理結果は断面形状測定結果として、表示器4の画面上に表示されるようになっている。
【0030】
画像処理部6は、電子検出器3の検出出力を基に電子ビームの入射位置における試料表面の傾斜角(入射ビームと反射ビームとの成す角)を算出し、この算出値から試料7の断面形状(高さ方向(Z軸方向)の断面形状)を推定する断面形状推定候補推定手段と、試料7の断面形状候補に対して、電子ビームの入射角(チルト角φ=0のときの入射角)をチルト角φ=φに変えて電子ビームを照射したと仮定したときに、試料7の断面形状候補から発生した電子ビームの信号強度を推定する信号強度推定手段と、この信号強度推定手段の推定結果と、試料7に対する電子ビームの入射角を変更したとき、すなわちチルト角をφ=0からφ=φに変換したときに、電子検出器3によって実際に検出された信号強度とを照合して試料の断面形状を推定する断面形状推定手段としての機能を備えて構成されている。さらに、この断面形状推定手段は、電子銃1が試料7に対して走査方向の軸に沿って相対移動したときに得られた推定結果を、電子銃1が奥行き方向の軸(Y軸)に沿って相対移動するごとに順次蓄積し、この蓄積結果を基に試料7の三次元形状を推定する機能を備えて構成されている。
【0031】
具体的には、画像処理部6は、図2に示すように、試料7に対して電子銃1から電子ビームが照射されている過程で、電子検出器3の検出による信号強度による信号を順次取り込み(ステップ201)、試料台2のチルト角φ=0のときの信号強度をメモリに格納するとともに(ステップ202)、試料台2のチルト角がφ=φに変更されたときの信号強度をそれぞれメモリに格納する(ステップ203)。
【0032】
チルト角φ=0のときに得られた信号強度を基に、Shape from shading法にしたがって試料7の断面形状を計算する(ステップ205)。この場合、三次元形状パラメータとして、例えば、試料7の材質に依存するパラメータn、試料7の断面の高さに関するパラメータkを取り込み(ステップ204)、以下に示す(1)式にしたがって二次電子の信号強度Isを算出する。
【0033】
この場合、本実施形態では、Shape from shading法によれば、試料7から反射した二次電子が試料断面の傾斜角(θ)に依存する性質があることを利用している。
【0034】
すなわち、図3に示すように、試料7の表面に電子ビームが一次電子として照射されると、試料7からは二次電子が発生し、この二次電子は試料7内部で指数関数的に減少しながら試料表面に到達し、それから外部に放出されるようになっている。よって、例えば、「走査電子顕微鏡」、日本電子顕微鏡学会関東支部編、共立出版)に記載されているように、最短脱出距離zcosθが短い程二次電子の放出量が多くなり、この関係は、次の(1)式で表される。なお、Ipは試料7に入射する一次電子の信号強度、Isは試料内部の深さzで励起して試料表面に到達した二次電子の信号強度、θは入射電子ビームと反射電子ビームとの成す角である。
【0035】
【数1】
Figure 0003893539
(1)式において、Iは試料7の平坦部における二次電子の信号強度であり、xはある座標軸(走査方向の軸であるx軸)上における原点(回転中心)からの距離である。(1)式から、傾斜角θが大きくなる程Is(x)が大きくなることが分かる。
【0036】
電子銃1から試料7に対して電子ビームが順次走査されている過程で二次電子の信号強度が電子検出器3で検出されると、走査方向の位置における信号強度として、図4(a)に示すような信号波形が得られる。
【0037】
図4(a)に示すような二次電子の信号強度に関する信号波形が得られると、位置(走査方向の位置)xにおける試料断面の傾斜角θ(x)は、(1)式から次式で表される。
【0038】
【数2】
Figure 0003893539
ここで試料断面の高さが単調増加していると仮定すると、試料断面形状プロファイルh(x)は次の(3)式で表される。
【0039】
【数3】
Figure 0003893539
すなわち、(3)式に(2)式を代入すると、断面形状h(x)が求められる。この場合、傾斜角θが大きいところはh(x)が大きいことを意味している。そして、図4(a)に示すような信号波形が得られたとすると、図4(b)に示すような試料断面形状として、位置xに対する高さ方向(Z軸方向の高さ)に沿った試料断面形状が求められることになる。この場合、パラメータn、kの値を変えることで、試料7の断面形状候補として複数個のものを求めることができる。
【0040】
次に、(3)式を基に推定された試料の断面形状候補に対して、図5に示すように、チルト角をφ=0からφ=φに変更して電子ビームを照射したと仮定したときに、試料の断面形状候補から発生した電子ビームの信号強度を推定するためのシミュレーションを行う(ステップ206)。この場合、試料7は傾斜する前の位置x1で見える試料7上の点は、試料7を傾斜した後は位置x2で見えることになる。例えば、断面形状プロファイルh(x)を三角形で表したとき、その三角形の頂点の位置は、試料7が傾斜する前には位置x1に見えるが、試料7をチルト角φ=φだけ傾斜したあとは、位置x2に見えることになる。このことは、チルト角φ=0で得られた信号強度をIs1(x)とし、チルト角をφ=φとして、試料7を実際に傾斜したあと検出された信号強度をIs2(x)とすると、Is1(x1)+δI(x1)=Is2(x2)で表される。ただし、x1、x2は試料台2の回転中心0からの距離(走査方向の位置)、δI(x1)は(3)式で得られた断面形状をチルト角φ=φで傾斜したときに、(1)式の影響によって生じるIs1(x)の増減分であり、(1)式から次式で求められる。
【0041】
【数4】
Figure 0003893539
また図5からx2は次式で表される。
【0042】
【数5】
Figure 0003893539
したがって(5)式とIs1(x1)+δI(x1)=Is2(x2)であることから、次式が成り立つ。
【0043】
【数6】
Figure 0003893539
(6)式は、Is1(x)を用いて、試料7を傾斜したあとのIs2(x)をシミュレーションしていることに相当する。すなわち、(6)式においては、推定した試料の断面形状候補が正しいとするならば、試料台2を傾斜する前後における明るさは同じとしている。
【0044】
次に、(6)式の左辺とを照合し、両者の差が最小になるか否かについての処理を行う(ステップ207、208)。
【0045】
この場合、次の(7)式を用いて、走査範囲(走査方向の長さ)0〜lについて照合を行う。
【0046】
【数7】
Figure 0003893539
ここで、試料台2を傾斜するときの誤差により、傾斜の前後でIs1(x)、Is2(x)の座標原点でずれが生ずることがある。そこで、そのずれを補正するパラメータΔxを新たに、三次元形状のパラメータとして加える。
【0047】
さらに、(7)式にしたがった照合を行うときに、(7)式にしたがって各走査位置における値Eを順次プロットし、Eの値が最小値を示すか否かの判定を行う。Eの値が最小値を示さないときには、パラメータn、kの値を変更し、ステップ205からステップ208までの処理を繰返して行う。さらにEの値が最小値を示すまで同じ処理を繰返すとともに、1つの走査ラインについて最小値が得れたときには、走査ラインにおける試料の断面形状(二次元の形状)として、高さの絶対値(Z軸方向の長さ)を求める。さらに1つの走査ラインに関する試料の断面形状が測定されたあとは、複数の走査ラインについて、すなわちY軸方向に沿って走査ラインを変更する毎に、Eの値を順次蓄積する。そして各走査ラインにおけるEの蓄積結果(試料7の断面形状)を基に試料7の三次元形状を推定し、この推定結果を出力する(ステップ210)。
【0048】
ここで、パラメータnのみを変えたときの複数の断面形状候補の例を図6(a)に示す。また実際は、k、Δxの値も変えた断面形状候補も存在する。このため、これら断面形状候補の中から、ステップ205〜209の処理を繰返して最適パラメータを推定し、そのパラメータの値を順次変更して得られたときの断面形状を図6(b)に示す。
【0049】
またステップ205〜209の処理によってパラメータn、k、Δxの値に対する断面形状候補、信号波形の照合誤差、そして実際の断面形状(入手可能であれば)のデータベースを構築する。よってこのデータベースを解析することにより、ステップ205におけるShape from shadingを定義した(2)式、(3)式およびステップ204で設定したパラメータの妥当性を検討することができる。またこれらの式とパラメータが妥当であると判定できれば、構築したデータベースを参照することで、Shape from shadingの計算を行わずに、ステップ203の入力信号に対する断面形状を直接決定できる。
【0050】
本実施形態では、試料台2の傾きを変えることにより、試料7に愛する電子ビームの角度を変えたものについて述べたが、電子ビームの偏向あるいは試料7と試料7との間に傾き角が既知の試料を挿入することにより、電子ビームの照射角を変えることもできる。この場合には試料台2の傾きを変える機構がなくても良いことになる。
【0051】
このように、本実施形態によれば、入力信号波形のシミュレーションを利用することで、ステレオ画像の特徴点のマッチングを必要とせずに、試料7に関する断面形状の高さの絶対値を求めることができる。またスペクトラCDと異なり、任意のパターンの断面形状を測定することができる。
【0052】
また、前記実施形態においては、試料7に対して、荷電粒子として電子ビームを照射するものについて述べたが、荷電粒子として陽子を用いることもでき、荷電粒子の代わりに、可視光線、紫外線などの電磁波を用いることができる。この電磁波を用いたときには、試料7に対して電磁波を照射し、試料7で反射した電磁波の信号強度を検出することになる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、特徴点のマッチングを行うことなく、試料の断面形状を試料の高さの絶対値で求めることができる。さらに試料に対して、奥行き方向の軸に沿って電磁波または荷電粒子を照射したときに得られる試料のを断面形状を蓄積することで、試料の三次元形状を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す三次元形状測定装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】画像処理部の処理内容を説明するためのフローチャートである。
【図3】二次電子強度の傾斜角依存性を説明するための図である。
【図4】(a)は二次電子強度の信号波形を示す図、(b)は走査位置に対する試料の断面形状を説明するための図である。
【図5】試料台の傾斜によって生じる立体視の原理を説明するための図である。
【図6】(a)はパラメータnを変更したときの試料の断面形状を説明するための図、(b)はパラメータn、kを変更したときの試料の断面形状の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
1 電子銃
2 試料台
3 電子検出器
4 表示器
5 信号入力部
6 画像処理部
7 試料

Claims (13)

  1. 試料に対して走査方向の軸に沿って相対移動しながら前記試料の表面に電磁波または荷電粒子を照射し、前記電磁波または荷電粒子の照射に伴って前記試料で反射した電磁波または前記試料から発生した荷電粒子の信号強度を検出し、この検出出力を基に前記電磁波または荷電粒子の照射位置における試料表面の傾斜角を算出し、この算出値から前記試料の断面形状候補を推定し、前記試料の断面形状候補に対する電磁波または荷電粒子の入射角を前記試料に対する電磁波または荷電粒子の入射角とは異なる角度に変えたと仮定して前記試料の断面形状候補で反射した電磁波または前記試料から発生した荷電粒子の信号強度を推定し、前記信号強度の推定結果と前記試料に対する電磁波または荷電粒子の入射角を前記仮定したときの角度に変更したときに得られた信号強度の検出出力とを照合し、この照合結果を基に前記試料の断面形状を推定する形状測定方法。
  2. 試料に対して走査方向の軸および前記軸と直交する奥行き方向の軸に沿って相対移動しながら前記試料の表面に電磁波または荷電粒子を照射し、前記電磁波または荷電粒子の照射に伴って前記試料で反射した電磁波または前記試料から発生した荷電粒子の信号強度を検出し、この検出出力を基に前記電磁波または荷電粒子の照射位置における試料表面の傾斜角を算出し、この算出値から前記試料の断面形状候補を推定し、前記試料の断面形状候補に対する電磁波または荷電粒子の入射角を前記試料に対する電磁波または荷電粒子の入射角とは異なる角度に変えたと仮定して前記試料の断面形状候補で反射した電磁波または前記試料から発生した荷電粒子の信号強度を推定し、前記信号強度の推定結果と前記試料に対する電磁波または荷電粒子の入射角を前記仮定したときの角度に変更したときに得られた信号強度の検出出力とを照合し、この照合結果を基に前記試料の断面形状を推定するとともに、この推定結果を前記試料に対する電磁波または荷電粒子が前記奥行き方向の軸に沿って照射される毎に順次蓄積し、この蓄積結果を基に前記試料の三次元形状を推定する形状測定方法。
  3. 請求項1または2に記載の形状測定方法において、前記断面形状候補を推定するに際して、前記信号強度の検出出力と前記試料の断面形状に関する複数種類のパラメータの中から選択された複数のパラメータを用いて前記電磁波または荷電粒子の照射位置における試料表面の傾斜角を算出することを特徴とする形状測定方法。
  4. 請求項3に記載の形状測定方法において、前記試料の断面形状を推定するに際しては、前記信号強度の推定結果と前記信号強度の検出出力との差を小さくするためのパラメータを選択することを特徴とする形状測定方法。
  5. 請求項3に記載の形状測定方法において、前記試料の断面形状を推定するに際しては、前記信号強度の推定結果と前記信号強度の検出出力との差が最小値を示すまでパラメータを選択することを特徴とする形状測定方法。
  6. 請求項3、4または5のうちいずれか1項に記載の形状測定方法において、前記断面形状候補の推定結果と前記断面形状の推定結果および前記複数のパラメータをデータベースとして保存することを特徴とする形状測定方法。
  7. 請求項1、2、3、4、5または6のうちいずれか1項に記載の形状測定方法において、前記試料に対する電磁波または荷電粒子の入射角を変更するに際しては、前記電磁波または荷電粒子の照射方向を一定として、前記試料の取り付け角度を変更するか、あるいは前記試料の取り付け角度を一定として、前記試料に対する前記電磁波または荷電粒子の照射方向を変更することを特徴とする形状測定方法。
  8. 試料に対して走査方向の軸に沿って相対移動しながら前記試料の表面に電磁波または荷電粒子を照射する照射手段と、前記照射手段の照射に伴って前記試料で反射した電磁波または前記試料から発生した荷電粒子の信号強度を検出する信号強度検出手段と、前記信号強度検出手段の検出出力を基に前記電磁波または荷電粒子の照射位置における試料表面の傾斜角を算出し、この算出値から前記試料の断面形状候補を推定する断面形状候補推定手段と、前記試料の断面形状候補に対する電磁波または荷電粒子の入射角を前記試料に対する電磁波または荷電粒子の入射角とは異なる角度に変えたと仮定して前記試料の断面形状候補で反射した電磁波または前記試料から発生した荷電粒子の信号強度を推定する信号強度推定手段と、前記信号強度推定手段の推定結果と前記試料に対する電磁波または荷電粒子の入射角を前記仮定したときの角度に変更したときに得られた前記信号強度検出手段の検出出力とを照合して前記試料の断面形状を推定する断面形状推定手段とを備えてなる形状測定装置。
  9. 試料に対して走査方向の軸および前記軸と直交する奥行き方向の軸に沿って相対移動しながら前記試料の表面に電磁波または荷電粒子を照射する照射手段と、前記照射手段の照射に伴って前記試料で反射した電磁波または前記試料から発生した荷電粒子の信号強度を検出する信号強度検出手段と、前記信号強度検出手段の検出出力を基に前記電磁波または荷電粒子の照射位置における試料表面の傾斜角を算出し、この算出値から前記試料の断面形状候補を推定する断面形状候補推定手段と、前記試料の断面形状候補に対する電磁波または荷電粒子の入射角を前記試料に対する電磁波または荷電粒子の入射角とは異なる角度に変えたと仮定して前記試料の断面形状候補で反射した電磁波または前記試料から発生した荷電粒子の信号強度を推定する信号強度推定手段と、前記信号強度推定手段の推定結果と前記試料に対する電磁波または荷電粒子の入射角を前記仮定したときの角度に変更したときに得られた前記信号強度検出手段の検出出力とを照合して前記試料の断面形状を推定する断面形状推定手段とを備え、前記断面形状推定手段は、前記照射手段が前記走査方向の軸に沿って相対移動したときに得られた推定結果を前記照射手段が前記奥行き方向の軸に沿って相対移動する毎に順次蓄積し、この蓄積結果を基に前記試料の三次元形状を推定してなる形状測定装置。
  10. 請求項8または9に記載の形状測定装置において、前記断面形状候補推定手段は、前記信号強度検出手段の検出出力と前記試料の断面形状に関する複数種類のパラメータの中から選択された複数のパラメータを用いて前記電磁波または荷電粒子の照射位置における試料表面の傾斜角を算出してなることを特徴とする形状測定装置。
  11. 請求項10に記載の形状測定装置において、前記断面形状推定手段は、前記信号強度推定手段の推定結果と前記信号強度検出手段の検出出力との差を小さくするためのパラメータの選択を前記断面形状候補推定手段に対して指令してなることを特徴とする形状測定装置。
  12. 請求項10に記載の形状測定装置において、前記断面形状推定手段は、前記信号強度推定手段の推定結果と前記信号強度検出手段の検出出力との差が最小値を示すまでパラメータの選択を前記断面形状候補推定手段に対して指令してなることを特徴とする形状測定装置。
  13. 請求項10、11または12のうちいずれか1項に記載の形状測定装置において、前記断面形状候補推定手段の推定結果と前記断面形状推定手段の推定結果および前記複数のパラメータをデータベースとして保存するデータ保存手段を備えてなることを特徴とする形状測定装置。
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