JP3892714B2 - ポリカーボネート樹脂組成物及びそれよりなる医療用部品 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂組成物及びそれよりなる医療用部品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電離放射線による滅菌処理用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及びそれよりなる医療用部品に関する。更に詳しくは、電離放射線の照射処理を行っても色調や物性劣化が少なく、かつ薬液や血液による濡れ性に優れた樹脂組成物及びそれよりなる医療用部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネートは、耐熱性、耐衝撃性、透明性、衛生性等に優れているため注射器、外科用具、手術用器具やこれらを収容、包装する容器状包装具や、人工肺、人工腎臓、麻酔吸収装置、静脈用コネクター及び付属品、血液遠心分離装置等各種の医療用部品に使用されている。これらの医療用部品は、通常、完全滅菌が行われる。具体的な滅菌法としては、エチレンオキサイドによる接触処理、オートクレーブ中での加熱処理、γ線や電子線等の電離放射線による処理等がある。
このうち、エチレンオキサイドを使用することは、エチレンオキサイド自体の毒性、不安定性、廃棄処理に関する環境問題等があり、好ましくない。また、オートクレーブを使用する場合には、高温処理の際に樹脂の劣化を招くこと、エネルギーコストが高いこと、及び処理後の部品に湿気が残るために使用前に乾燥する必要があること等の欠点を有する。従って、低温で処理でき、しかも比較的安価である電離放射線による滅菌処理がこれらの方法に代わって使用されている。
【0003】
しかしながら、本来、無色透明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、電離放射線を照射されると黄色く変色する。この変色防止のため芳香族ポリカーボネートにポリエーテルポリオール又はそのアルキルエーテルを配合する方法(特開昭62−135556)、ベンジルオキシ又はベンジルチオ骨格を有する化合物を配合する方法(特開平8−225732)、特定のトリアジン系化合物を配合する方法(特開2001−72851)等が提案されている。これらの方法により得られた樹脂組成物は、黄変防止効果が充分でないか、または効果を発現するに充分な量の黄変防止剤を配合すると、樹脂組成物自体の強度を著しく損なうという欠点を有する。一方、特開平2−55062及び特開平2−68068には、ハロゲン化ビスフェノールから誘導される構成単位を分子鎖中に含む芳香族ポリカーボネートのポリマー又はオリゴマーを含有する組成物が提案され、γ線照射による黄変防止に効果があることが示されている。しかしながら、ハロゲン化物を使用する方法を含め、これまでに提案されている電離放射線により滅菌処理を施す医療用ポリカーボネート樹脂組成物は、医療用部品として使用される際に医療部品と薬液や血液との濡れ性が悪く、薬液や血液との界面に気泡が発生しやすくなり、薬液や血液の流動を阻害する畏れがあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
以上のことから、電離放射線により滅菌処理を施す医療用ポリカーボネート樹脂組成物には、滅菌処理による黄変や機械的強度の低下に対し耐性を有すると共に、医療用部品として使用される際に医療用部品と薬液や血液の界面で気泡の発生しないことが望まれていた。本発明は、このような課題を解決できる、放射線照射滅菌用ポリカーボネート樹脂組成物及びそれよりなる医療用部品を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、従来工業的に製造される芳香族ポリカーボネートは、専らホスゲンを用いる界面法により製造されたもの(「界面法ポリカーボネート」と称す)であり、上記の公報においてもかかるポリカーボネートが使用されているものであるが、これを溶融法で得られ、かつ末端OH基を特定量含有する芳香族ポリカーボネート(以下、「溶融法ポリカーボネート」と称す)を用いることにより、前記課題を解決し得ることを知り、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は、(A)溶融法で得られ、かつ末端OH基含有量が50〜1000ppmである芳香族ポリカーボネートと、(B)ハロゲン化ビスフェノールから誘導される構成単位を分子鎖中に含むハロゲン含有芳香族ポリカーボネートポリマー及びそのオリゴマーから選ばれる少なくとも1種を配合してなる電離放射線による滅菌処理用ポリカーボネート樹脂組成物に存する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明に使用される(A)溶融法で得られるポリカーボネートは、芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを溶融状で、エステル交換、重合して製造されるものである。
【0007】
芳香族ジヒドロキシ化合物
溶融法ポリカーボネートの原料の一つである芳香族ジヒドロキシ化合物は、下記一般式(1)で示される化合物である。
【0008】
【化1】
Figure 0003892714
【0009】
(式(1)中、Aは、単結合、置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状の2価の炭化水素基、又は、−O−、−S−、−CO−若しくは−SO2−で示される2価の基であり、X及びYは、炭素数1〜6の炭化水素基であり、p及びqは、0又は1の整数である。なお、XとY及びpとqは、それぞれ、同一でも相互に異なるものでもよい。)。
【0010】
一般式(1)で示される代表的な芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」とも言い、「BPA」と略記することもある。)が好ましい。
【0011】
炭酸ジエステル
原料の他の一つである炭酸ジエステルは、下記式(2)で示される化合物である。
【0012】
【化2】
Figure 0003892714
【0013】
(式(2)中、A’は、置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基であり、2つのA’は、同一でも相互に異なるものでもよい。)
【0014】
一般式(2)で示される代表的な炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等に代表される置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等に代表されるジアルキルカーボネートが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでも、ジフェニルカーボネート(以下、「DPC」と略記することもある。)、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。
【0015】
また、上記の炭酸ジエステルは、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
【0016】
これら炭酸ジエステル(上記の置換したジカルボン酸又はジカルボン酸のエステルを含む。以下同じ。)は、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常、過剰に用いられる。すなわち、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して1.001〜1.3、好ましくは1.01〜1.2の範囲内のモル比で用いられる。モル比が1.001より小さくなると、溶融法ポリカーボネートの末端OH基が増加して、特に1000ppmを越えると熱安定性、耐加水分解性が悪化し実用的でなく、また、モル比が1.3より大きくなると、溶融法ポリカーボネートの末端OH基は減少するが、同一条件下ではエステル交換反応の速度が低下し、所望の分子量のポリカーボネートポリマー及びオリゴマーの製造が困難となる傾向があり、さらに末端OH基含有量が50ppm未満では薬液や血液との濡れ性が劣り電離放射線による滅菌処理用に好ましくない。従って、本発明においては、末端OH基含有量が50〜1000ppmの範囲内に調整した溶融法ポリカーボネートが使用される。
【0017】
原料混合槽への原料の供給方法としては、液体状態の方が計量精度を高く維持し易いため、芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルのうち、一方又は両方を、溶融させて液体状態で供給することが好ましい。液体状態で原料を供給する場合には、計量装置としては、オーバル流量計、マイクロモーション式流量計等を用いることができる。
一方、固体状態で原料を供給する場合には、スクリュー式フィーダーのような容量を計量するものよりも、重量を計量するものを用いるのが好ましく、べルト式、ロスインウェイト式等の重量フィーダーを用いることができるが、ロスインウェイト方式が特に好ましい。
【0018】
エステル交換触媒
溶融法により芳香族ポリカーボネートを製造する際には、通常、触媒が使用される。本発明で使用されるポリカーボネートの製造方法においては、触媒種に制限はないが、一般的にはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物又はアミン系化合物等の塩基性化合物が使用される。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。 触媒の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して0.05〜5μモル、好ましくは0.08〜4μモル、さらに好ましくは0.1〜2μモルの範囲内で用いられる。触媒の使用量が上記量より少なければ、所望の分子量のポリカーボネートポリマー及びオリゴマーを製造するのに必要な重合活性が得られず、この量より多い場合は、ポリマー色相が悪化し、またポリマーの分岐化も進み、成形時の流動性が低下する傾向がある。
【0019】
アルカリ金属化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムの水酸化物、炭酸塩、炭酸水素化合物等の無機アルカリ金属化合物、アルコラート、フェノラート、有機カルボン酸塩等の有機アルカリ金属化合物等がある。これらのアルカリ金属化合物の中でも、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化セシウム等のセシウム化合物が好ましい。
【0020】
アルカリ土類金属化合物としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムの水酸化物、炭酸塩等の無機アルカリ土類金属化合物、アルコラート、フェノラート、有機カルボン酸塩等の有機アルカリ土類金属化合物等がある。
【0021】
塩基性ホウ素化合物としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩又はストロンチウム塩等が挙げられる。
【0022】
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリ−i−プロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の3価のリン化合物、又はこれらの化合物から誘導される4級ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0023】
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラエチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキサイド、テトラブチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキサイド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキサイド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキサイド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキサイド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキサイド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキサイド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキサイド等が挙げられる。
【0024】
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン,4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
【0025】
これらの触媒のうち、実用的にはアルカリ金属化合物が望ましい。
上記エステル交換触媒は、溶媒に溶解した触媒溶液の形態で用いるのが好ましい。溶媒としては、例えば、水、アセトン、アルコール、トルエン、フェノールの他、原料芳香族ジヒドロキシ化合物や炭酸ジエステル等を溶解する溶媒が挙げられる。これらの溶媒のなかでは水が好ましく、特にアルカリ金属化合物を触媒とする場合には、水溶液とすることが好適である。
【0026】
溶融重合法:
本発明で使用される溶融法ポリカーボネートの製造方法は、溶融法であって、上記末端OH基含有量が50〜1000ppmのポリカーボネートが得られる方法であれば、特に限定されるものではなく、公知の種々の方法が採用できるが、例えば、以下のような方法で製造できる。
すなわち、通常、原料混合槽等で芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを均一に攪拌混合した後、触媒を添加して溶融状態で重合(エステル交換反応)を行い、ポリマーが生産される。反応の形式は、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせの何れの形式でも良いが、一般的には2以上の重合槽での反応、すなわち2段階以上、通常3〜7段の多段工程で連続的に実施されることが好ましい。
【0027】
ポリカーボネートの重合反応の、具体的な反応条件としては、温度:150〜320℃、圧力:常圧〜2Pa、平均滞留時間:5〜150分の範囲とし、各重合槽においては、反応の進行とともに副生するフェノールの排出をより効果的なものとするために、上記反応条件内で、段階的により高温、より高真空に設定する。なお、得られるポリカーボネートの色相等の品質低下を防止するためには、できるだけ低温、できるだけ短い滞留時間の設定が好ましい。
【0028】
上記エステル交換反応において使用する装置は、竪型、管型又は塔型、横型のいずれの形式であってもよい。通常、タービン翼、パドル翼、アンカー翼、フルゾーン翼(神鋼パンテック(株)製)、サンメラー翼(三菱重工業(株)製)、マックスブレンド翼(住友重機械工業(株)製)、ヘリカルリボン翼、ねじり格子翼((株)日立製作所製)等を具備した1以上の竪型重合槽に引き続き、円盤型、かご型等の横型一軸タイプの重合槽やHVR、SCR、N−SCR(三菱重工業(株)製)、バイボラック(住友重機械工業(株)製)、メガネ翼、格子翼((株)日立製作所製)、又はメガネ翼とポリマーの送り機能を持たせた、例えばねじりやひねり等の入った翼及び/又は傾斜がついている翼等を組み合わせたもの等を具備した、横型二軸タイプの重合槽を用いることができる。
【0029】
溶融法で製造したポリカーボネート中には、通常、原料モノマー、触媒、エステル交換反応で副生する芳香族ヒドロキシ化合物等の低分子量化合物が残存している。なかでも、原料モノマーと芳香族ヒドロキシ化合物は、残留量が多く、耐熱老化性、耐加水分解性等の物性に悪影響を与えるので、製品化に際して除去されることが好ましい。
【0030】
それらを除去する方法は、特に制限はなく、例えば、ベント式の押出機により連続的に脱気することにより除去してもよい。その際、樹脂中に残留している塩基性エステル交換触媒を、あらかじめ酸性化合物又はその前駆体を添加し、失活させておくことにより、脱気中の副反応を抑え、効率よく原料モノマー及び芳香族ヒドロキシ化合物を除去することができる。
【0031】
添加する酸性化合物又はその前駆体には特に制限はなく、重縮合反応に使用する塩基性エステル交換触媒を中和する効果のあるものであれば、いずれも使用できる。具体的には、塩酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アゼライン酸、アデノシンリン酸、安息香酸、ギ酸、吉草酸、クエン酸、グリコール酸、グルタミン酸、グルタル酸、ケイ皮酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、シュウ酸、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、ピクリン酸、ピコリン酸、フタル酸、テレフタル酸、プロピオン酸、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルホン酸、マロン酸、マレイン酸等のブレンステッド酸及びそのエステル類が挙げられる。これらは、単独で使用しても、また、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの酸性化合物又はその前駆体のうち、スルホン酸化合物又はそのエステル化合物、例えば、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸ブチル等が特に好ましい。
【0032】
これらの酸性化合物又はその前駆体の添加量は、重縮合反応に使用した塩基性エステル交換触媒の中和量に対して、0.1〜50倍モル、好ましくは0.5〜30倍モルの範囲で添加する。酸性化合物又はその前駆体を添加する時期としては、重縮合反応後であれば、いつでもよく、添加方法にも特別な制限はなく、酸性化合物又はその前駆体の性状や所望の条件に応じて、直接添加する方法、適当な溶媒に溶解して添加する方法、ペレットやフレーク状のマスターバッチを使用する方法等のいずれの方法でもよい。
【0033】
脱気に用いられる押出機は、単軸でも二軸でもよい。また、二軸押出機としては、噛み合い型二軸押出機で、回転方向は同方向回転でも異方向回転でもよい。脱気の目的には、酸性化合物添加部の後にベント部を有するものが好ましい。ベント数に制限は無いが、通常は2段から10段の多段ベントが用いられる。また、該押出機では、必要に応じて、安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤等の添加剤を添加し、樹脂と混練することもできる。
【0034】
本発明で使用されるポリカーボネートの分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、10,000〜100,000であり、好ましくは15,000〜50,000である。
【0035】
本発明に使用される(B)ハロゲン化ビスフェノールから誘導される構成単位を分子鎖中に含む芳香族ポリカーボネート(「ハロゲン化芳香族ポリカーボネート」と称す。)あるいはオリゴマー(「ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマー」又は「オリゴマー」と称す。)は、ハロゲン化ビスフェノールを芳香族ジヒドロキシ化合物の一部あるいは全部として使用して製造される公知のポリカーボネート又はオリゴマーである。原料として用いられるハロゲン化ビスフェノールは、前記一般式(1)におけるX、Yの少なくとも1つがハロゲン原子である化合物である。具体的にはビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’、5,5’−テトラブロモジフェニルスルフィド、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)メタン等が挙げられる。
【0036】
ハロゲン化ビスフェノールは前記一般式(2)で示される炭酸ジエステルとのエステル交換反応、あるいは、ホスゲン等のカーボネート基を導入し得る物質と反応させて芳香族ポリカーボネートあるいはオリゴマーを製造する。製造方法は特に限定されるものではなく、公知の任意の方法を採用することができる。例えば、ハロゲン化ビスフェノールと炭酸ジエステルを原料とする場合は、上記溶融法による芳香族ポリカーボネート(A)と同様にして製造することができる。又、ホスゲンを用いる場合は、界面法ポリカーボネートの製造法として公知の方法(例えば特開平2−55062参照)を採用することができる。
【0037】
本発明の(B)成分として使用されるハロゲン化芳香族ポリカーボネートの末端OH基含有量は、ポリカーボネートの製造法によっても異なるが、通常、5〜1,000ppmであることがこのましい。また、分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、10,000〜100,000であり、好ましくは15,000〜50,000である。
本発明の(B)成分として使用されるハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーの分子量は、600〜10,000である。
【0038】
本発明は、(A)および(B)からなる組成物中のハロゲン含有量が、0.1から10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%となる様に(A)および(B)を配合することが好ましい。従って、(B)成分のハロゲン含有量により異なるが、通常、重量比で(A):(B)が70〜98:2〜30、より好ましくは、(A):(B)が85〜97:3〜15の割合で配合される。
本発明組成物中のハロゲン含有量は、上記範囲より少なすぎると電離放射線の照射による黄変の抑制に効果がなく、一方、多すぎると機械的物性や耐熱性の低下を招くので好ましくない。
【0039】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、さらに電離放射線照射時の黄変防止効果を向上させるため、(A)溶融法ポリカーボネートと(B)ハロゲン化ポリカーボネートあるいはハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーの合計100重量部に対し、(C)ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールのエーテル、ポリアルキレングリコールのエステルから選ばれた1種以上の化合物を配合することができる。
本発明における(C)ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールのエーテル、ポリアルキレングリコールのエステルは、下記一般式(3)又は(4)で示される化合物である。
【0040】
【化3】
Figure 0003892714
【0041】
【化4】
Figure 0003892714
【0042】
(式(3)、(4)中、R3、R5、R6及びR8は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基又はアリールアルケニル基であり、これらの基の芳香環には更に、炭素数1〜10のアルキル基又はハロゲン原子が置換されていても良い。R4及びR7は、それぞれ、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。uは1以上の整数、wは2以上の整数であり、t及びvは、それぞれ、1〜10の整数である。)。
【0043】
一般式(3)又は(4)において、好ましくはR3,R5は水素原子、アルキル基、アリールアルキル基であり、R6,R8はアルキル基、アリール基であり、R4,R7は水素原子又はメチル基である。uは好ましくは1〜3000、より好ましくは1〜500の整数であり、wは2〜3000、より好ましくは2〜500の整数である。t、vは1〜7の整数であり、より好ましくは1〜5の整数である。
ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールのエーテル又はポリアルキレングリコールのエステルは、1種類又は2種類以上を混合して使用しても良い。
【0044】
一般式(3)で示される化合物の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールドデシルエーテル、ポリエチレングリコールベンジルエーテル、ポリエチレングリコール−4−ノニルフェニルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールメチルエーテル、ポリプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリプロピレングリコールドデシルエーテル、ポリプロピレングリコールベンジルエーテル、ポリプロピレングリコールジベンジルエーテル、ポリプロピレングリコール−4−ノニルフェニルエーテル、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0045】
一般式(4)で示される化合物の具体例としては、ポリエチレングリコール酢酸エステル、ポリエチレングリコール酢酸プロピオン酸エステル、ポリエチレングリコールジ酪酸エステル、ポリエチレングリコールジステアリン酸エステル、ポリエチレングリコールジ安息香酸エステル、ポリエチレングリコールジ−2,6−ジメチル安息香酸エステル、ポリエチレングリコールジ−p−tert−ブチル安息香酸エステル、ポリエチレングリコールジカプリン酸エステル、ポリプロピレングリコールジ酢酸エステル、ポリプロピレングリコール酢酸プロピオン酸エステル、ポリプロピレングリコールジ酪酸エステル、ポリプロピレングリコールジステアリン酸エステル、ポリプロピレングリコールジ安息香酸エステル、ポリプロピレングリコールジ2−、6−ジメチル安息香酸エステル、ポリプロピレングリコールジ−p−tert−ブチル安息香酸エステル、ポリプロピレングリコールジカプリン酸エステル等が挙げられる。
【0046】
本発明における(C)ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールのエーテル、ポリアルキレングリコールのエステルから選ばれた1種以上の化合物の配合量は、溶融法ポリカーボネートとハロゲン化ポリカーボネート或いはハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーの合計100重量部に対し、0.05〜5重量部である。配合量が5重量部を越えると機械的強度が低下しやすい。(C)の配合量は、黄変度の改良効果と機械的強度とのバランスの点から、(A)および(B)の合計100重量部に対し、好ましくは3重量部以下である。
【0047】
前記(A)および(B)又は(A)、(B)および(C)を配合してなる本発明組成物は電離性放線照射による黄変を防止し、さらに水による濡れ性に優れているので、医療用部品の製造に好適である。本発明組成物から医療用部品を製造する場合は、上記(A)、(B)または(A)、(B)および(C)を配合した組成物に更に、(D)離型剤を配合することが好ましい。離型剤の配合により、成形時の離型抵抗を低減することが出来、特に、薄肉の成形物を良好に製造することができる。
【0048】
本発明に使用できる(D)離型剤は、ポリカーボネート樹脂用として用いられる公知の離型剤で、オレフィン性炭素−炭素不飽和二重結合を分子中に実質的に含有しないものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸などの飽和高級脂肪酸とブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、ヘベニルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ブタントリオール、ペンタントリオール、エリトリット、ペンタエリトリットなどの飽和アルコールとのエステル又は部分エステル;パラフィン、低分子量ポリオレフィン、その他のワックス類などが例示される。
【0049】
(D)離型剤の配合量は、溶融法ポリカーボネートとハロゲン化ポリカーボネートあるいはハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーの合計100重量部に対し、3重量部以下であり、好ましくは1重量部以下である。3重量部を超えると耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染等の問題がある。該離型剤は1種でも使用可能であるが、複数併用して使用することもできる。
【0050】
本発明に係わるポリカーボネート樹脂組成物の製造方法は特に制限はなく、例えば(B)ハロゲン化ポリカーボネート或いはハロゲン化ポリカーボネートオリゴマー、(C)ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールのエーテル、ポリアルキレングリコールのエステルから選ばれた1種以上の化合物及び(D)離型剤を、(A)溶融法で得られ、かつ末端OH基含有量が50〜1000ppmである溶融法ポリカーボネートに、ポリカーボネートの重合時から最終成形品を成形する直前迄の任意の段階で、任意の順序で配合することができるが、(A)の▲1▼重合反応の途中、▲2▼重合反応終了時、又は▲3▼重合に使用した触媒を触媒失活剤で失活後、ペレット化する前のいずれかに添加することが、これら添加剤の分解を抑制し、着色抑制の観点から好ましい。
【0051】
配合方法としては、それぞれ前記(B)(C)、から選ばれた1種以上の化合物及び(D)離型剤を、(A)溶融法ポリカーボネートに直接混合又は混練することもできるが、適当な溶媒で溶解し、又は少量のポリカーボネート又は他の樹脂等で作成した高濃度のマスターバッチとして添加することもできる。
【0052】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに、他の熱可塑性樹脂、難燃剤、耐衝撃性改良剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、天然油、合成油、ワックス、有機系充填剤、無機系充填剤等の添加剤を添加しても良い。
【0053】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、回転成形等、公知の成形方法に従って、所望の成形品とすることができる。本発明の電離放射線による滅菌処理用ポリカーボネート樹脂組成物を適用できる医療用部品としては、具体的には、人工透析器、人工肺、麻酔用吸入装置、静脈用コネクター及び付属品、血液遠心分離器ボウル、外科用具、手術室用具やこれらを包装する容器状包装具、酸素を血液に供給するチューブ、チューブの接続具、心臓プローブ並びに注射器、静脈注射液等を入れる容器等が挙げられる。
【0054】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これら実施例に限定されるものではない。なお、溶融法ポリカーボネート、ハロゲン化ポリカーボネート、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマー及びポリカーボネート樹脂組成物の分析と物性評価は、下記の測定方法により行った。
【0055】
(1)ポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)
ウベローデ粘度計を用いて、塩化メチレン中、20℃の極限粘度[η]を測定し、下記式(I)より粘度平均分子量(Mv)を求めた。
【0056】
【数1】
[η]=1.23×10-4×(Mv)0.83 (I)
【0057】
(2)ポリカーボネートの末端OH基含有量
四塩化チタン/酢酸法(Makromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)により比色定量を行った。測定値は、ポリカーボネート重量に対する末端OH基の重量をppm単位で表示した。
【0058】
(3)試験片の成形
ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを120℃で4時間乾燥後、射出成形機(住友重機工業(株):ネオマット110/45)にて樹脂温度300℃、金型温度80℃、射出圧力1200kg/mm2の条件で50×60×3.2mmの試験片を成形した。
【0059】
(4)γ線照射と黄変度測定
上記(3)で成形した成形品を、空気中に放置したもの、及び成形品を脱酸素剤(商品名:エージレス、 三菱瓦斯化学(株)製)とともに密封したもの(脱酸素)とを用い、それぞれ2.5メガラッド(25kGy)のγ線を照射し、室温7日経過後の黄変度(Y.I.)の変化(ΔY.I.)をスガ試験機(株)製の色差計SM−3−CHにて測定した。
【0060】
(5)濡れ性評価(水滴接触角測定)
試験片と薬液及び血液の濡れ性を評価するため、上記(4)でγ線照射処理後の試験片上に、0.01gのイオン交換水を滴下させ、その水滴と試験片との接触角度をCRT画面上で求めた。
【0061】
(6)離型抵抗測定
射出成形機のシリンダー温度280℃、金型温度80℃でコップ形状の成形品を成形し、この成形品を金型から突き出す時の離型抵抗値(kg)を測定した。
【0062】
製造例1(溶融法ポリカーボネートの製造)
窒素ガス雰囲気下120℃で調製されたジフェニルカーボネート(DPC)融液205.0モル/h、及び、窒素ガス雰囲気下計量されたビスフェノールA(BPA)粉末197.1モル/h(DPC/BPAモル比1.04)を、窒素雰囲気下140℃に調整された原料混合槽に連続的に供給した。続いて、この原料混合液を容量100Lの第1竪型撹拌重合槽に連続的に供給した。一方、上記混合物の供給開始と同時に、触媒として2重量%の炭酸セシウム水溶液を、触媒導入管を介して、1.60mL/h(設定触媒量:BPA1モルに対し、0.5μモル)の流量で連続供給を開始した。
【0063】
第1竪型撹拌重合槽は、マックスブレンド翼を具備し、常圧、窒素雰囲気下、220℃に制御され、さらに平均滞留時間が60分になるように、槽底部のポリマー排出ラインに設けられたバルブ開度を制御しつつ、液面レベルを一定に保った。
【0064】
槽底より排出された重合液は、引き続き、第2、第3のマックスブレンド翼を具備した容量100Lの竪型撹拌重合槽、及び第4の格子翼を具備した容量150Lの横型重合槽に逐次連続供給された。
第2〜第4重合槽での反応条件は、それぞれ、下記のように、反応の進行とともに高温、高真空、低撹拌速度となるように条件設定した。
【0065】
【表1】
Figure 0003892714
【0066】
反応の間は、第2〜第4重合槽の平均滞留時間が60分となるように、液面レベルの制御を行い、また、各重合槽においては、副生したフェノールを副生物排出管より除去した。以上の条件下で、1500時間連続して運転した。第4重合槽底部のポリマー排出口から抜き出されたポリカーボネートは、溶融状態のまま、3段ベント口を具備した2軸押出機に導入され、p−トルエンスルホン酸ブチルをポリカーボネート重量に対し、4.0ppm(触媒の中和量に対し、4.4倍モル)添加し、水添、脱気した後、ペレット化した。得られたポリカーボネート(以下、MPC1と略記)の粘度平均分子量(Mv)及び末端OH基含有量は、それぞれ、21,500及び500ppmであった。
【0067】
製造例2(溶融法ポリカーボネートの製造)
製造例1の方法において、第4重合槽の温度を283℃にした以外は、製造例1と同様にして実施した。得られたポリカーボネート(以下、MPC2と略記)の粘度平均分子量(Mv)及び末端OH基含有量は、それぞれ、23,500及び520ppmであった。
【0068】
製造例3(ハロゲン化ポリカーボネートの製造)
120Lの反応容器に、9%水酸化ナトリウム水溶液42L、7.35kgのビスフェノールA、1.50kgのテトラブロモビスフェノールA、塩化メチレン50Lを入れ、撹拌下、温度を約20℃に保ちながら、ホスゲン4.2kgを30分で吹き込んだ。次に、塩化メチレン2Lに溶解したp-tert-ブチルフェノール209g、トリエチルアミン7mLを添加し、約1時間撹拌を続け重合させた。
重合反応液を水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和した後、洗液のpHが中性になるまで水洗を繰り返した後、イソプロパノールを35L加えて、重合物を沈殿させた。沈殿物を濾過し、その後乾燥することにより、白色粉末状のハロゲン化ポリカーボネートを得た。このハロゲン化ポリカーボネート(以下、BrPCと略記)の粘度平均分子量(Mv)は23,500で、重合後の反応モノマー量より計算したブロム含有量は8.15重量%であった。
【0069】
製造例4(ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーの製造)
120Lの反応容器に、9%水酸化ナトリウム水溶液30L、9.0kgのテトラブロモビスフェノールA、塩化メチレン23L、水10L、トリエチルアミン6mLを入れ、撹拌下、温度を約20℃に保ちながら、ホスゲン2.5kgを30分で吹き込んだ。次に、塩化メチレン10Lに溶解したp-tert-ブチルフェノール970g、トリエチルアミン50mLを添加し、約1時間撹拌を続け重合させた。
重合反応液を水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和した後、洗液のpHが中性になるまで水洗を繰り返した後、イソプロパノールを35L加えて、重合物を沈殿させた。沈殿物を濾過し、その後乾燥することにより、白色粉末状のハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーを得た。このハロゲン化ポリカーボネートオリゴマー(以下、BrPCOと略記)の平均重合度は5.0で、重合後の反応モノマー量より計算したブロム含有量は50.3%であった。
【0070】
比較製造例1(界面法ポリカーボネートの製造)
ビスフェノールAを界面法によりホスゲンと重縮合させ、フェノールで末端封止した。得られたポリカーボネート(以下、SPCと略記)の粘度平均分子量(Mv)及び末端OH基含有量は、それぞれ、22,100及び30ppmであった。
【0071】
実施例1〜5、比較例1〜5
各種成分を表−1又は表−2に示す比率で溶融・混練したポリカーボネート樹脂組成物のペレットを、前記(3)の条件で試験片に成形し、前記(4)の方法でγ線照射と黄変度測定、(5)の方法で水滴接触角の測定、(6)の方法で離型抵抗を測定し、それらの結果を表−1および表−2に示した。
【0072】
【表2】
Figure 0003892714
【0073】
【表3】
Figure 0003892714
【0074】
表−2および表−3より明らかなように、溶融法で製造され、末端OH基が特定範囲にある芳香族ポリカーボネートを使用した組成物は、界面法で得られた芳香族ポリカーボネートを用いた以外は同様の組成物に比し接触角が小さく、液体との濡れ性に優れている。又、ポリプロピレングリコールあるいはそのエステルを配合した組成物も接触角が小さく液体との濡れ性が良くなることが示されている。
【0075】
【発明の効果】
本発明により、滅菌のため電離放射線の照射処理を行っても色調や物性劣化が少なく、かつ薬液や血液による濡れ性に優れた樹脂組成物及びそれよりなる医療用部品が得られる。

Claims (6)

  1. (A)溶融法で得られ、且つ、末端OH基含有量が50〜1000ppmである芳香族ポリカーボネートと、
    (B)ハロゲン化ビスフェノールから誘導される構成単位を分子鎖中に含むハロゲン含有芳香族ポリカーボネートポリマー及びそのオリゴマーから選ばれる少なくとも1種
    を配合してなる電離放射線による滅菌処理用ポリカーボネート樹脂組成物。
  2. ハロゲン含有量が、前記(A)及び(B)の合計量の0.1〜10重量%となる様に(A)および(B)を配合してなる請求項1記載の電離放射線による滅菌処理用ポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 前記(A)及び(B)の合計100重量部に対し、(C)ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールのエーテル及びポリアルキレングリコールのエステルから選ばれる少なくとも1種の化合物を5重量部以下配合することを特徴とする請求項1又は2に記載の電離放射線による滅菌処理用ポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 前記(A)及び(B)の合計100重量部に対し、(D)オレフィン性の炭素−炭素不飽和結合を含有しない離型剤を3重量部以下配合することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電離放射線による滅菌処理用ポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 前記(A)がビスフェノールAと炭酸ジエステルを溶融状でエステル交換して得られる芳香族ポリカーボネートであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の電離放射線による滅菌処理用ポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の電離放射線による滅菌処理用ポリカーボネート樹脂組成物から成形された医療用部品。
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