JP3892210B2 - 眼鏡用プラスチックフォトクロミックレンズ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は眼鏡用プラスチックフォトクロミックレンズに関し、さらに詳しくは、発色、退色の速度が速く、退色過程の色調が一定で外観性能に優れた眼鏡用プラスチックフォトクロミックレンズに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、有機フォトクロミック染料は、極めて多くの品種のものが開発され、市販の製品として入手できる染料も増えている。眼鏡用レンズへの応用も、市場のプラスチック化への志向とともに盛んになり、有機フォトクロミック染料を応用したプラスチック製フォトクロミックレンズが眼鏡用として市販されている。
【0003】
これらは明るい屋外で発色して高濃度のカラーレンズと同様な防眩効果を有し、室内に移ると高い透過率を回復するものであるが、反応速度についてはさらに速いものが求められている。特に退色時の速度は十分に発色した状態から発色前の透過率を回復するまでに数十分程度かかっているのが現状であり、1分程度で高い発色濃度に達する発色過程と比較すると非常に遅く、改善が望まれていた。
【0004】
発色時の色調としては圧倒的にグレー、または、ブラウン系が好まれる傾向があり、それには可視光全域にわたる吸収が必要となるが、各染料単独での吸収幅はこれらの発色色調を得るには十分でなく、通常複数種の吸収波長の異なる染料を混合して目的とする発色色調とする手法がとられている。
ところが、複数種の染料を同時に含むレンズとした場合には、各染料の発色、退色の速度が揃っていないと、これらの途中で本来目的とする色調から一時的に大きくはずれた色調に変化してしまうという問題が生じる。
【0005】
近年、青色系染料には反応速度の速い染料が開発され、市販されているが、グレーやブラウンの発色を得るために必要な黄色系染料や赤色系染料にはこれと同等の反応速度を有する染料がなく、これらを同時に使用して作製したレンズは退色途中で発色時の色調よりも大きく黄味、または赤味に偏った色調に変化する現象が見られる。
特開平7−43525号公報にはこの問題を解決する手段として、フォトクロミック成形体をあらかじめ着色しておく方法が示されている。しかし、眼鏡用レンズの場合、発色前の着色は使用者に歓迎されないことが多く、好ましい方法ではなかった。
【0006】
このように、フォトクロミック染料の組み合わせを検討する場合は、できる限り反応速度の揃ったものを選ぶのが常套手段であった。そこで、グレーやブラウンに発色するレンズを得るためには、できる限り反応速度の速い赤黄味染料が選択される一方で、これよりもはるかに速度の速い青色染料の利用は避け、赤黄味染料と同程度の速度の染料を組み合わせ方法が用いられ、このことが全体としての反応速度が制限される原因ともなっていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、退色途中の色調が本来目的とする色調から一時的に大きくはずれてしまうという問題がなく、しかも、反応速度の速い青色染料を用いて従来技術で提案されているものよりもさらに反応速度の速い眼鏡用プラスチックフォトクロミックレンズを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、それぞれ異なる発色特性および退色特性を有するフォトクロミック染料2種とさらに異なる発色特性を有するフォトクロミック染料とを組み合わせて、レンズ基材樹脂中に含ませることにより、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(A)レンズ基材樹脂中での発色時の主波長の吸収が540〜640nmにあり、吸収の半値幅が120nm以上で、かつ20℃での退色の半減期が90秒以内であるフォトクロミック染料の1種以上と、(B)レンズ基材樹脂中での発色時の主波長の吸収が420〜540nmにあるフォトクロミック染料の1種以上と、(C)レンズ基材樹脂中での発色時の主波長の吸収が540〜640nmにあり、かつ20℃での退色の半減期が、上記(A)成分のフォトクロミック染料の2〜20倍の範囲にあるフォトクロミック染料の1種以上を、レンズ基材樹脂中に含むことを特徴とする眼鏡用プラスチックフォトクロミックレンズを提供するものである。
【0010】
なお、各染料の退色の半減期は、本発明の眼鏡用プラスチックフォトクロミックレンズと同じ基材樹脂中に0.05重量%のフォトクロミック染料を単独で均一に含有させた厚さ2.0mmの平面レンズをキセノンランプ(1.2mW/cm2・UV365)で5分間発色させてから、退色過程の主波長の吸収強度が暗所で半分になるまでに要した時間として定義する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の眼鏡用プラスチックフォトクロミックレンズ(以下、単に「本発明の眼鏡用レンズ」と称すことがある。)において用いられる(A)成分、(B)成分及び(C)成分のフォトクロミック染料としては、特に分子構造上の制約はなく、例えばスピロオキサジン、スピロピラン、クロメン、フルギド、またはフルギミド化合物等が挙げられる。また、分子構造の開示がない市販染料を用いることも可能である。
【0012】
フォトクロミック染料は、一般に基材樹脂により発色時の吸収波長、吸収強度、耐光性、発退色の反応速度等多くの物性が影響を受けることが知られている。したがって、本発明における基材樹脂としては、染料が持つこれらのフォトクロミック性能を効率的に発現させる良好な染料適応性に加え、眼鏡用レンズとしての高い透明性と十分な耐熱性、剛性、切削研磨加工性などが求められる。
【0013】
本発明の眼鏡用レンズに用いられる(A)成分のフォトクロミック染料は、このようなレンズ基材樹脂中で、発色時の主波長の吸収が540〜640nmにあり、吸収の半値幅が120nm以上で、かつ、20℃での退色の半減期が90秒以内である特性を有する染料である。すなわち、反応速度が速く、吸収幅が大きいことが特徴の青色系染料である。グレーやブラウンの発色にこのような染料を用いることで全体の反応速度を速めることができる。吸収の半値幅は120nm以上でないと、これよりも反応速度の遅い(B)成分や(C)成分のフォトクロミック染料の影響が強くなり、全体としての反応速度の改善効果が不十分となる。このような(A)成分のフォトクロミック染料としては、例えば市販品である「CNN−7」[(株)トクヤマ製]などが挙げられる。本発明においては、この(A)成分のフォトクロミック染料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
また、(B)成分のフォトクロミック染料は、該レンズ基材樹脂中での発色時の主波長の吸収が420〜540nmにある染料で、グレーやブラウンの発色を得るために前記(A)成分のフォトクロミック染料と同時に使用する黄色、または赤色系染料である。全体の反応速度を速めるためには青色系染料と同等の速い反応速度をもつものが好ましいが、実用的な耐久性とこのような速い反応速度を同時に備えた染料は見出されていない。しかし、このような中でもできる限り反応速度の速いもの選ぶことが、全体の反応速度を速くする上で、また、退色途中の色調変動を抑える上でも有利であることは言うまでもない。このような(B)成分のフォトクロミック染料としては、例えば市販品である「CNN−4」[(株)トクヤマ製]、「コーンイエロー」、「ルビー」、「ベリーレッド」(以上、ジェームスロビンソン社製)、「イエローL」(グレートレイクス社製)などが挙げられる。本発明においては、この(B)成分のフォトクロミック染料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
一方、(C)成分のフォトクロミック染料は、該レンズ基材樹脂中での発色時の主波長の吸収が540〜640nmにあり、かつ、20℃での退色の半減期が、前記(A)成分のフォトクロミック染料の2倍から20倍の範囲にある染料である。すなわち、反応速度の遅い青色系染料である。前記(A)成分および(B)成分のフォトクロミック染料に少量加えることによって、退色途中の色調が赤黄味に変動する現象を抑えることができる。このことは、本発明の要件を満たす反応速度の速い青色系染料に反応速度の遅い赤黄色系染料を組み合わせても、(C)成分のフォトクロミック染料の効果で退色途中の色調変動を防ぎ、発色時の色調を保ったまま退色させることができることを表している。20℃での退色の半減期が(A)成分のフォトクロミック染料の2倍未満であると退色途中の色調変動防止効果が不十分となり、20倍を超えると退色途中の色調が青味に偏ったり、発色前の透過率を回復するのに長時間を要することになるため好ましくない。
【0016】
この(C)成分のフォトクロミック染料の好ましい添加量は、前記(A)成分のフォトクロミック染料の速い反応速度を損なわない範囲で選定することが肝要であり、通常重量基準で、(A)成分のフォトクロミック染料の添加量の1/50〜1/2の範囲、好ましくは1/40〜1/4の範囲で選ばれる。このような(C)成分のフォトクロミック染料としては、例えば市販品である「CNN−3」、「FG−3」、「FG−7」[以上、(株)トクヤマ製]、「オックスフォートブルー」(ジェームスロビンソン社製)、「ブルーA」(グレートレイクス社製)などが挙げられる。本発明においては、この(C)成分のフォトクロミック染料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明においては、前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分のフォトクロミック染料の合計添加量については特に制限はないが、眼鏡用レンズに求められる退色時の高い透過率と発色時の適度な遮光性を考慮すると、基材樹脂100重量部に対し、0.001〜0.1重量部の範囲で選定するのが有利である。
【0018】
本発明の眼鏡用レンズを製造するには、基材樹脂形成用の原料単量体中に、前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分のフォトクロミック染料を含有させ、これを重合させる方法が好ましく用いられる。
上記単量体としては、例えばエチレン性不飽和結合を有する脂肪族単量体や、芳香族ビニル系単量体等が使用可能であるが、眼鏡用レンズとしての高い透明性と十分な耐熱性、剛性、切削研磨加工性等を考慮すると、主としてメタクリル酸エステル系単量体を用いることが好ましく、これらの物性を損なわない範囲で、これと共重合可能な単量体を併用することができる。
【0019】
メタクリル酸エステル系単量体の例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート等の単官能メタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン等の多官能メタクリレートが挙げられる。
【0020】
これらの化合物と共重合可能な単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、2,2−ビス[4−(アクリロキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン等のアクリル酸エステル系単量体、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、p−クロルメチルスチレン、ジビニルベンゼン等の核置換スチレンや、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、N−置換マレイミド、さらには、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ジアリルフタレート等のアリル化合物が挙げられる。
【0021】
本発明に使用される良好な単量体組成物としては、これらを適宜2種以上混合して用いることが好ましい。本出願人らはこのような単量体組成物の例をすでに特開平8−169923号公報の中で提案した。
本発明のレンズの製造方法としては、これらの単量体混合物に前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分のフォトクロミック染料を溶解し、これを注型重合する方法が採用される。この注型重合には公知の熱硬化重合法や紫外線硬化重合法が適用可能である。
【0022】
以下、熱硬化重合法を例にとって説明する。この方法は、フォトクロミック染料を溶解した単量体混合物に適量の重合開始剤を加え、型に注入して加熱重合するものである。この際の重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤や、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の過酸化物系開始剤が用いられるが、フォトクロミック染料の効果を減退、または消失させずに良好な重合状態が得られるように、種類と添加量を決定することが肝要である。これらの開始剤は通常単量体総量の0.001〜5重量%の範囲で使用することが好ましい。また、加熱温度は用いる開始剤により大きく異なるが、通常は20〜80℃の範囲である。
【0023】
本発明の眼鏡用レンズにおける基材樹脂には、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じ、各種添加剤、例えば熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、帯電防止剤、通常の染料などを適宜添加することができる。
【0024】
本発明の眼鏡用レンズにおいては、通常基材樹脂表面に、多官能アクリレート、またはメタクリレート系の紫外線硬化被膜、あるいは、シリコーン系、メラミン系の熱硬化被膜による耐摩耗性の付与が行われるが、中でも最も一般的になっているのがオルガノポリシロキサン系硬化液を用い、熱硬化させる方法である。アクリル系樹脂にオルガノポリシロキサン系硬化液を用いた例としては、特開昭52−112698号公報、特開昭61−166824号公報等に示されている方法が挙げられる。さらに、オルガノポリシロキサン系硬化液に金属コロイドを加えた例として、特開昭60−221702号公報等がある。
【0025】
高濃度の金属コロイドを含むオルガノポリシロキサン系硬化液を用いる方法は、金属コロイドを含まないものに比べて非常に硬く、耐久性に富んだ膜を形成しうるため優れた表面改質方法であるが、基材がアクリル系樹脂の場合には、金属コロイドの量を増やしていくに従い、基材との密着性が著しく低下する傾向が見られる。この傾向は基材の分子構造にも関係があり、強度、耐熱性、耐溶剤性等の向上のために架橋密度を高めたものほど顕著に現れる。
【0026】
基材樹脂と硬化被膜の密着性を高める方法としては、KOH、NaOH等のアルカリ剤で基材樹脂表面をあらかじめ処理しておく方法が知られているが、架橋密度の高い強靱なアクリル系基材樹脂に高濃度の金属コロイドを含む高品質の硬化被膜を付与するには、多くの場合これだけでは不十分である。
【0027】
このような組み合わせで基材樹脂と硬化被膜との密着性を高めるためには、(1)基材樹脂に研磨剤を含ませた布、紙、スポンジ等をこすり合わせて表面を物理的にエッジングしておく方法、(2)基材樹脂をプラズマ処理しておく方法、(3)基材樹脂をオゾン水で処理しておく方法、(4)基材樹脂に特定波長の紫外線を照射して表面を活性化しておく方法、(5)基材樹脂と硬化被膜の間にプライマー層を設ける方法等が有効である。基材樹脂、および硬化被膜の組成によって、これらを適宜選択、または組み合わせることが好ましい。
【0028】
前記(1)の基材樹脂に研磨剤を含ませた布、紙、スポンジ等をこすり合わせて表面を物理的にエッジングしておく方法においては、研磨剤の種類、粒径等に特に限定はなく、ダイアモンド、アルミナ、酸化鉄、酸化クロム、酸化セリウム等公知の研磨剤が使用可能で、硬化被膜を付与した状態で眼鏡用レンズとして十分な透明性が維持できる程度に均一にレンズ表面を研磨、エッジング処理する。水分散、オイル分散、または、ペースト状のものも使用できるが、通常は水分散、粒径0.1〜10μm程度のものを布紙、スポンジ等にしみこませ、5〜30秒間程度基材樹脂表面を研磨する方法が使い勝手が良く好ましい。
【0029】
また、前記(2)の基材樹脂をプラズマ処理しておく方法においては、用いる装置の大きさ、形式、形状によりその条件も多少異なるが、通常空気、ヘリウム、アルゴン、水素、酸素、窒素等の非重合性気体1.3〜1300Pa程度の雰囲気下600秒間以内で行われる。
このようにして、プラズマ処理を終えたレンズ基材は24時間以内にコーティング組成物の塗布、硬化を行うことが好ましい。
【0030】
次に、前記(3)の基材樹脂をオゾン水で処理しておく方法においては、使用するオゾン水は、例えば、市販のオゾン水製造装置を用いて製造することができる。このオゾン水の原料となる水は、イオン交換、蒸留、逆浸透等の方法で得られた純水が用いられるが、必要なオゾン濃度が得られる範囲で水道水等を混合してもよい。
【0031】
また、オゾン水におけるオゾン濃度が不安定にならない程度の範囲で、塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ剤、アルコ−ル等の有機溶媒等を添加することもできる。
オゾン水のオゾン濃度は、本発明で得られる効果を有する範囲であれば、特に限定されないが、1ppm以上、実用的なことを考慮すれば、5ppm以上が特に好ましい。
【0032】
オゾン水の処理温度に関しては、特に限定されないが、オゾン水の温度が高くなると、オゾンの分解が早まり、濃度を維持しにくくなることを考慮すると、好ましくは50℃以下、特に好ましくは30℃以下である。
オゾン水へのレンズ基材の浸漬時間は、基材の素材、硬化被膜の材料、オゾン水のオゾン濃度等の条件により左右され、特に限定されないが、1分間以上浸漬するのが好ましい。
【0033】
さらに、前記(4)の基材樹脂に特定波長の紫外線を照射して表面を活性化しておく方法においては、光源として低圧水銀灯が好ましく用いられる。この低圧水銀灯は185及び254nmの紫外線を含んでおり、これが大気中の酸素からオゾン、活性酸素原子を生成して基材表面を活性化させ、同時に基材表面の高分子鎖を分解して活性化すると言われている。これらの紫外線は大気、あるいは、生成するオゾンにより吸収されるので、照射はランプから20cm以内で行うことが好ましく、さらに好ましくは10cm以内である。通常30秒から600秒間の照射で密着性の改善が見られる。
【0034】
一方、前記(5)の基材樹脂と硬化被膜の間にプライマー層を設ける方法においては、該プライマー層として、様々なものを用いることができるが、好ましくはポリウレタン系プライマーである。このポリウレタン系プライマーとしては熱可塑系、熱硬化系のいずれも使用でき、熱硬化系ポリウレタンとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの環状3量体をβ―ジケトンによってブロックしたもの、イソホロジイソシアネート、4,4‘−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートのそれぞれの数分子を種々の方法で結合付加させた付加物、イソシアヌレート、アファネート、ビュウレット、カルボジイミドをアセト酢酸、マロン酸、メチルエチルケトオキシム等でブロックしたものなどのブロック型ポリイソシアネートと、例えばポリエステルポリオールおよび/またはアクリルポリオール等のポリオールとを反応して得られたものを用いることができる。
これらの前処理は2種類以上を組み合わせたり、アルカリ処理を組み合わせてさらに効果を高めることも可能である。
【0035】
本発明の眼鏡用レンズにおいては、基材樹脂上に設けられた硬化被膜の表面に、レンズの反射防止効果を向上させるため、反射防止膜を施すこともできる。この反射防止膜は、例えば真空蒸着法、イオンスパッタリング法、イオンプレーティング法などによりSiO,SiO2,Si34,TiO2,ZrO2,Al23,MgF2等の誘電体よりなる単層あるいは多層の薄膜を積層することにより形成され、これにより大気との界面の反射を低く抑えることができる。反射防止膜は、単層からなる場合、その光学的膜厚は、λ0/4(λ0=450〜650nm)であるのが好ましい。また光学的膜厚がλ0/4−λ0/4の屈折率の異なる二層膜、光学的膜厚がλ0/4−λ0/2−λ0/4またはλ0/4−λ0/4−λ0/4の屈折率の異なる三層膜よりなる多層反射防止膜、あるいは一部等価膜で置き換えた多層コートによる反射防止膜からなるものが有用である。
また、公知の方法により防曇性、防汚性、帯電防止性などを付与することができる。
【0036】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例、および比較例中の物性評価の方法は以下の通りである。
【0037】
(a)発色時色調
以下の条件を満足する晴天時に太陽光下、白色紙上で発色させ、5分後の色調を目視で判定した。
気温:15℃以上、20℃以下
紫外線強度:1.0mW/cm2・UV365以上、1.3mW/cm2・UV365以下、
【0038】
(b)退色反応速度
厚さ2.0mmの平面レンズをキセノンランプ(1.2mW/cm2・UV365)を用いて20℃で5分間発色させてから、退色過程の550nmでの吸収強度が暗所で半分になるまでに要した時間をレンズの退色時半減期として測定し、以下の基準で判定した。
A:退色時半減期60秒未満。
B:退色時半減期60秒以上120秒未満。
C:退色時半減期120秒以上。
【0039】
(c)退色途中色調安定性
発色時色調を確認したレンズを直ちに太陽光の入らない23℃の室内に移し、蛍光灯下で退色過程の色調変化を10分間目視で観察した。そして、発色時色調との最大色調差を以下の基準で判定した。
A:発色時色調のまま退色し、目視上差はほとんど感じない。
B:発色時色調よりも多少赤味、または黄味で退色する。
C:発色時色調とは明らかに異なる強い赤味、または黄味に変化する。
【0040】
(d)表面硬度
スチールウール#0000で付加荷重20Nで20回(往復)表面を摩擦して傷の付きにくさを以下の基準で判定した。
A:ほとんど傷がつかない。
B:極わずかに傷がつく。
C:少し傷がつく。
D:多く傷がつく。
【0041】
(e)密着性
硬化被膜表面を1mm間隔のゴバン目(10×10個)にカットし、セロハン粘着テープ(ニチバン(株)製No.405)を強く貼付け、90度方向に急激にはがして残ったゴバン目の数を調べた。
【0042】
参考例1 基材樹脂1中のフォトクロミック染料の性能確認
単量体組成物としての2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン50重量部、トリエチレングリコールジメタクリレート40重量部、グリシジルメタクリレート10重量部に、重合速度調整剤として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン1重量部、表1に示すフォトクロミック染料1種類を0.05重量部、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルパーオキシネオデカネート0.50重量部、離型剤として信越化学(株)製「信越シリコーンKF353A」0.0001重量部を加え混合溶解した。この調合液を2枚のガラスモールド及びプラスチック製のガスケットからなる型に注入し、これを熱風循環式加熱炉に入れて40℃で12時間加熱し、その後4時間かけて85℃まで昇温し、そのまま2時間加熱して重合を行った。型をはずして得られた重合体は直径75mm、厚さ2.0mm、度数0.00ジオプターのメニスカス形状のレンズをなす透明性の高い樹脂組成物であった。これを更に120℃で2時間加熱してアニーリングを行った。
【0043】
このレンズをキセノンランプ(1.2mW/cm2・UV365)を用いて20℃で発色させながら5分後に分光測定を行った。このときの吸収曲線から染料吸収の半値幅を求めた。その後、ランプを消灯し、吸収強度が発色時の半分になるまでの時間を測定して退色反応速度を表す半減期とした。基材樹脂1中の各染料の性能は表1の通りであった。
なお、図1は、フォトクロミック染料における吸収半値幅を測定するための説明図である。
【0044】
【表1】
Figure 0003892210
【0045】
(注)
CNN−3、CNN−4、CNN−7、FG−3:(株)トクヤマ製
CY(コーンイエロー)、FL(フレーム)、RU(ルビー)、BR(ベリーレッド)、OB(オックスフォードブルー):ジェームスロビンソン社製
ブルーA:グレートレイクス社製
【0046】
参考例2 基材樹脂2中のフォトクロミック染料の性能確認
参考例1において、単量体組成物の組成を、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン50重量部、トリエチレングリコールジメタクリレート15重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート15重量部、ベンジルアクリレート10重量部、グリシジルメタクリレート10重量部に変更した以外は、参考例1とまったく同様にして直径75mm、厚さ2.0mm、度数0.00ジオプターの平面レンズをなす透明性の高い樹脂組成物を得た。
基材樹脂2中の各染料の性能は表2の通りであった。
【0047】
【表2】
Figure 0003892210
(注)
各染料については、表1の脚注と同じである。
【0048】
実施例1
単量体組成物としての2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン50重量部、トリエチレングリコールジメタクリレート40重量部、グリシジルメタクリレート10重量部に、重合速度調整剤として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン1重量部、フォトクロミック染料として(株)トクヤマ製「CNN−7」を0.040重量部、「CNN−4」を0.020重量部、ジェームスロビンソン社製「ベリーレッド」を0.020重量部、(株)トクヤマ製「CNN−3」を0.005重量部、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルパーオキシネオデカネート0.50重量部、離型剤として信越化学(株)製「信越シリコーンKF353A」0.0001重量部を加え混合溶解した。この調合液を2枚のガラスモールド及びプラスチック製のガスケットからなる型に注入し、これを熱風循環式加熱炉に入れて40℃で12時間加熱し、その後4時間かけて85℃まで昇温し、そのまま2時間加熱して重合を行った。型をはずして得られた重合体は直径75mm、厚さ2.0mm、度数0.00ジオプターの平面レンズをなす透明性の高い樹脂組成物であった。これを更に120℃で2時間加熱してアニーリングを行った。
【0049】
このレンズの評価結果は表4の通りであり、発退色の反応速度が速く、しかも退色途中の色調が発色時の色調と差がないため、眼鏡用レンズとして好適に使用できるものであった。
図2は、該レンズの発色時および退色時における波長と光線透過率との関係を示すグラフであり、図3は、該レンズの波長550nmにおける光線透過率変化を示すグラフである。
【0050】
実施例2
フォトクロミック染料の組成を表3のように変化させた以外は、実施例1と同様にしてレンズを作製し、同様に評価を行った。このレンズの評価結果は表4の通りであり、発退色の反応速度が速く、しかも退色途中の色調が発色時の色調と差がないため、眼鏡用レンズとして好適に使用できるものであった。
【0051】
比較例1
フォトクロミック染料の組成を表3のように変化させた以外は、実施例1と同様にしてレンズを作製し、同様に評価を行った。結果は表4の通りであり、本発明の必須成分であるレンズ基材樹脂中での発色時の主波長の吸収が540〜640nmにあり、吸収の半値幅が120nm以上で、かつ、20℃での退色の半減期が90秒以内であるフォトクロミック染料を含まないため、発退色の反応速度が遅く、眼鏡用レンズとして好ましくないものであった。
【0052】
比較例2、3
フォトクロミック染料の組成を表3のように変化させた以外は、実施例1と同様にしてレンズを作製し、同様に評価を行った。結果は表4の通りであり、本発明の必須成分であるレンズ基材樹脂中での発色時の主波長の吸収が540〜640nmにあり、かつ、20℃での退色の半減期がフォトクロミック染料(A)の2倍から20倍の範囲であるフォトクロミック染料を含まないため、発退色の反応速度は速いが、退色途中の色調が発色時の色調から大きくはずれてしまい、眼鏡用レンズとして好ましくないものであった。
【0053】
実施例3
単量体組成物の組成を2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン50重量部、トリエチレングリコールジメタクリレート15重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート15重量部、ベンジルアクリレート10重量部、グリシジルメタクリレート10重量部に変更した以外は、実施例1とまったく同様にして直径75mm、厚さ2.0mm、度数0.00ジオプターの平面レンズをなす透明性の高い樹脂組成物を得た。
このレンズの評価結果は表4の通りであり、発退色の反応速度が速く、しかも退色途中の色調が発色時の色調と差がないため、眼鏡用レンズとして好適に使用できるものであった。
【0054】
実施例4
フォトクロミック染料の組成を表3のように変化させた以外は、実施例3と同様にしてレンズを作製し、同様に評価を行った。このレンズの評価結果は表4の通りであり、発退色の反応速度が速く、しかも退色途中の色調が発色時の色調と差がないため、眼鏡用レンズとして好適に使用できるものであった。
【0055】
比較例4
フォトクロミック染料の組成を表3のように変化させた以外は、実施例3と同様にしてレンズを作製し、同様に評価を行った。結果は表4の通りであり、本発明の必須成分であるレンズ基材樹脂中での発色時の主波長の吸収が540〜640nmにあり、吸収の半値幅が120nm以上で、かつ、20℃での退色の半減期が90秒以内であるフォトクロミック染料を含まないため、発退色の反応速度が遅く、眼鏡用レンズとして好ましくないものであった。
【0056】
比較例5、6
フォトクロミック染料の組成を表3のように変化させた以外は、実施例3と同様にしてレンズを作製し、同様に評価を行った。結果は表4の通りであり、本発明の必須成分であるレンズ基材樹脂中での発色時の主波長の吸収が540〜640nmにあり、かつ、20℃での退色の半減期がフォトクロミック染料(A)の2倍から20倍の範囲であるフォトクロミック染料を含まないため、発退色の反応速度は速いが、退色途中の色調が発色時の色調から大きくはずれてしまい、眼鏡用レンズとして好ましくないものであった。
【0057】
【表3】
Figure 0003892210
【0058】
【表4】
Figure 0003892210
【0059】
実施例5
実施例1で得られたレンズにヤマト科学(株)製「PR−501A」を用いて酸素80Pa雰囲気下に300秒間プラズマ処理を行った。続いて金属コロイドとしてシリカを含むオルガノポリシロキサン系コーティング組成物の信越化学(株)製「KP−64」を10℃でディッピング法(引き上げ速度20cm/分)にて塗布し、これを120℃で90分間加熱硬化させた。こうして得られた表面硬化被膜付きレンズの評価結果は、実施例1のレンズと同様、発退色の反応速度、退色途中の色調が良好で、しかも、表面硬度B、密着性100/100であり、眼鏡用レンズとして好適に使用できるものであった。
【0060】
実施例6
実施例3で得られたレンズにヤマト科学(株)製「PR−501A」を用いて酸素雰囲気下(80pa)に300秒間プラズマ処理を行った。続いて60℃の10重量%NaOH水溶液に360秒間浸漬後、洗浄、加熱乾燥させた。冷却後コーティング組成物として信越化学(株)製「KP−64」を10℃でディッピング法(引き上げ速度20cm/分)にて塗布し、これを120℃で90分間加熱硬化させた。こうして得られた表面硬化被膜付きレンズの評価結果は、実施例3のレンズと同様、発退色の反応速度、退色途中の色調が良好で、しかも、表面硬度B、密着性100/100であり、眼鏡用レンズとして好適に使用できるものであった。
【0061】
一方、実施例3で得られたレンズを60℃の10重量%NaOH水溶液に360秒間浸漬後、洗浄、加熱乾燥させた。冷却後コーティング組成物として信越化学(株)製「KP−64」を10℃でディッピング法(引き上げ速度20cm/分)にて塗布し、これを120℃で90分間加熱硬化させた。こうして得られた表面硬化被膜付きレンズは実施例3のレンズと同様、発退色の反応速度、退色途中の色調が良好で、表面硬度もBを保っているが、本発明における基材樹脂と硬化被膜との密着性を高める工程を含む製造方法によるレンズではないため、密着性が0/100であり、眼鏡用レンズとして好ましくないものであった。
【0062】
参考例3 コーティング組成物(a)の調製
SiO2濃度40重量%のコロイド状シリカ[「スノーテックス−40」、水分散シリカ、平均粒径10〜20mμ、日産化学(株)製]240重量部に0.5モル/リットル塩酸2.0重量部、酢酸20重量部を加えた液を、35℃にして撹拌しながらγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(3官能有機ケイ素化合物)95重量部を滴下し室温にて8時間撹拌し、その後16時間放置した。この加水分解溶液320重量部にメチルセロソルブ80重量部、イソプロピルアルコール120重量部、ブチルアルコール40重量部、アルミニウムアセチルアセトン16重量部、シリコーン系界面活性剤0.2重量部、紫外線吸収剤0.1重量部を加えて8時間撹拌後、室温にて24時間熟成させコーティング組成物を得た。これをコーティング組成物(a)とする。このコーティング組成物中のコロイド状シリカの量は、コロイド状シリカとγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの合計量を基準にして80mol%(SiO固形分換算値)であった。
【0063】
実施例7
実施例1で得られたレンズを、(株)ロキテクノ製オゾン水製造装置「OZ−DW3M」を用いて製造したオゾン水の槽中に30分間浸漬処理した。オゾン濃度は自然放置で低下するので、常に一定濃度のオゾン水を供給して槽内の濃度を保つようにする。この際の水温は24℃、オゾン濃度は16ppmであった。続いてコーティング組成物(a)を10℃でディッピング法(引き上げ速度20cm/分)にて塗布し、これを120℃で90分間加熱硬化させた。こうして得られたレンズの評価結果は実施例3のレンズと同様、発退色の反応速度、退色途中の色調が良好で、しかも、表面硬度A、密着性100/100であり、眼鏡用レンズとして好適に使用できるものであった。
【0064】
一方、実施例1で得られたレンズを60℃の10重量%NaOH水溶液に360秒間浸漬後、洗浄、加熱乾燥させた。冷却後コーティング組成物(a)を10℃でディッピング法(引き上げ速度20cm/分)にて塗布し、これを120℃で90分間加熱硬化させた。こうして得られた表面硬化被膜付きレンズは実施例1のレンズと同様、発退色の反応速度、退色途中の色調が良好で、表面硬度もBを保っているが、本発明における基材樹脂と硬化被膜との密着性を高める工程を含む製造方法によるレンズではないため、密着性が0/100であり、眼鏡用レンズとして好ましくないものであった。
【0065】
実施例8
実施例3で得られたレンズを、低圧水銀灯照射装置であるアイグラフィックス(株)製紫外線改質装置「OC−2506」を用いて、照射距離30mmで180秒間処理した。続いて60℃の10重量%NaOH水溶液に360秒間浸漬後、洗浄、加熱乾燥させた。冷却後コーティング組成物(a)を10℃でディッピング法(引き上げ速度20cm/分)にて塗布し、これを120℃で90分間加熱硬化させた。こうして得られた表面硬化被膜付きレンズの評価結果は実施例3のレンズと同様、発退色の反応速度、退色途中の色調が良好で、しかも、表面硬度A、密着性100/100であり、眼鏡用レンズとして好適に使用できるものであった。
【0066】
実施例9
2倍量の水に分散させた(株)フジミインコーポレーテッド製アルミナ研磨剤「Hexalite−A9」をスポンジに含ませ、実施例3で得られたレンズの表面を20秒間均一に擦った。研磨剤を洗い落としてから60℃の10重量%NaOH水溶液に360秒間浸漬後、洗浄、加熱乾燥させた。冷却後コーティング組成物(a)を10℃でディッピング法(引き上げ速度20cm/分)にて塗布し、これを120℃で90分間加熱硬化させた。こうして得られた表面硬化被膜付きレンズの評価結果は実施例3のレンズと同様、発退色の反応速度、退色途中の色調が良好で、しかも、表面硬度A、密着性100/100であり、眼鏡用レンズとして好適に使用できるものであった。
【0067】
【発明の効果】
本発明により、発退色の反応速度が速く、しかも、退色途中の色調が目的とするグレーやブラウンから大きくはずれて、一時的に黄色、赤味の強い色調に変化するという問題が解消された眼鏡用プラスチックフォトクロミックレンズを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】フォトクロミック染料における吸収半値幅を測定するため説明図である。
【図2】実施例1で得られたレンズの発色時および退色時における波長と光線透過率との関係を示すグラフである。
【図3】実施例1で得られたレンズの波長550nmにおける光線透過率変化を示すグラフである。

Claims (8)

  1. (A)レンズ基材樹脂中での発色時の主波長の吸収が540〜640nmにあり、吸収の半値幅が120nm以上で、かつ20℃での退色の半減期が90秒以内であるフォトクロミック染料の1種以上と、(B)レンズ基材樹脂中での発色時の主波長の吸収が420〜540nmにあるフォトクロミック染料の1種以上と、(C)レンズ基材樹脂中での発色時の主波長の吸収が540〜640nmにあり、かつ20℃での退色の半減期が、上記(A)成分のフォトクロミック染料の2〜20倍の範囲にあるフォトクロミック染料の1種以上を、レンズ基材樹脂中に含むことを特徴とする眼鏡用プラスチックフォトクロミックレンズ。
  2. レンズ基材樹脂が、(A)成分、(B)成分及び(C)成分のフォトクロミック染料を含む単量体を重合させて得られたものである請求項1に記載の眼鏡用プラスチックフォトクロミックレンズ。
  3. レンズ基材樹脂が、研磨剤により研磨された表面に硬化被膜を有するものである請求項1又は2に記載の眼鏡用プラスチックフォトクロミックレンズ。
  4. レンズ基材樹脂が、非重合性気体雰囲気下にプラズマ処理されてなる表面に硬化被膜を有するものである請求項1又は2に記載の眼鏡用プラスチックフォトクロミックレンズ。
  5. レンズ基材樹脂が、オゾン水により処理された表面に硬化被膜を有するものである請求項1又は2に記載の眼鏡用プラスチックフォトクロミックレンズ。
  6. レンズ基材樹脂が、低圧水銀灯により照射処理された表面に硬化被膜を有するものである請求項1又は2に記載の眼鏡用プラスチックフォトクロミックレンズ。
  7. レンズ基材樹脂が、密着層を施した表面に硬化被膜を有するものである請求項1又は2に記載の眼鏡用プラスチックフォトクロミックレンズ。
  8. 硬化被膜が、アルコキシル基およびエポキシ基を有する有機ケイ素化合物と金属コロイドを主成分とする硬化液を用いて形成されたものである請求項3ないし7のいずれか1項に記載の眼鏡用プラスチックフォトクロミックレンズ。
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