JP3892097B2 - 殺菌清浄剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、使用に際し他種の薬剤、例えば酸性、アルカリ性等の薬剤と共用しても急激なハロゲンガスが発生する心配もなく、また、水温、水量等の環境条件によってもばらつきのない、安定して長期間使用出来る殺菌洗浄剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般家庭の流し台の排水口付近は、捨てた食料品の一部が付着し易く、また多湿であるので雑菌が繁殖しやすい環境下にある。その為、付着した食料品の一部の腐敗、カビなどの発生により異様な臭気が発したり、またはヌメリを生じたりして、使用者に不快感を引き起こしている。このため排水口付近は、常に洗浄し清潔にしておく必要がある。従来、これには、塩素化イソシアヌル酸を含む各種のハロゲン剤を用いる検討がなされてきた。しかしながら、塩素化イソシアヌル酸類は水と接触すると、急激に膨潤し、崩壊して初期塩素濃度が急上昇したり、一時に流れ去ってしまうなどの不都合があった。そこで更に固形ハロゲン剤組成物として用いる方法についても検討されてきた。例えば、特公平1−53844号公報には、塩素化イソシアヌル酸に常温で固体の酸性物質を配合して得られた加圧成形品が、特開平1−242505号公報には、塩素化イソシアヌル酸に含水硫酸アンモニウム塩を配合した組成物が、特開平7−277912号公報には固形ハロゲン剤にショ糖エステルを配合し錠剤化したものが記載されている。これら固形ハロゲン剤に各種薬剤を配合した方法により、初期塩素濃度の急上昇、あるいは膨潤、崩壊などによる流出は防ぐことができるものの、他の薬剤(例えば台所の流し周辺の除菌剤、漂白剤に用いられる次亜塩素酸アルカリ金属塩系洗浄剤、あるいはトイレボール内の防臭に使用される塩酸などの酸性物)と併用して用いると、急激なハロゲンガスの発生が生じる危険がともなうといった問題は、依然として未解決であった。特公平3−117号公報には、通水性のある収納具に固形ハロゲン剤を収納し、一時的に接触する水の量を制御する方法も検討されている。これにより、多少ハロゲンガスの発生量は抑えられるが通水性のある収納具を用いている為に、そのハロゲンガスの大量発生を避けるには不十分であり、危険性がある事にはかわりがない。さらに、特開平8−308918号公報には、通気性を有する熱溶着性不織布の間に固形活性ハロゲン化剤を全面的に重合溶着して固定化したものが開示されている。しかしながら、このものは、ハロゲン化剤とシートが密着している為、雰囲気中の湿度が変化するとハロゲンガスの放出量が変化し、効果を一定に制御する事が出来ない等の問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の諸問題を解決することを目的としてなされたものであり、その目的とするところは、活性ハロゲンを遊離する固形ハロゲン剤が各種薬剤、又は水と直接接触することを防ぐ事により大量の活性ハロゲンガスが急激に発生する事がなく、安全で、且つ終始安定した効果を長期間にわたり発揮しうる排水口用殺菌清浄剤を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、活性ハロゲンを遊離する固形ハロゲン剤又は固形ハロゲン剤を含有する組成物を、通水性は無いが透湿性の有する素材を一部、又は全部に用いた収納具に収納した事を特徴とする排水口用殺菌清浄剤である。以下、本発明を詳細に説明する。本発明に用いられる活性ハロゲンを遊離する固形ハロゲン剤としては、塩素化イソシアヌル酸化合物、ハロゲン化ヒダントイン、晒粉、クロラミンB(N−クロルベンゼンスルホンアミドナトリウム)、クロラミンT(N−クロル−p−トルエンスルホンアミドナトリウム)、及びハラゾーン(p−スルホンジクロルアミド安息香酸)であり、特に塩素化イソシアヌル酸化合物が好ましく用いられる。
【0005】
塩素化イソシアヌル酸化合物としては、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム塩及びその水和物、、ジクロロイソシアヌル酸カリウム塩が挙げられる。 ハロゲン化ヒダントイン類としては、ジクロロジメチルヒダントイン、ジブロモジメチルヒダントイン、ブロモクロロジメチルヒダントインが挙げられる。晒粉としては、市販の高度晒粉、または通常の晒粉が挙げられる。
【0006】
以上に例記した固形ハロゲン剤は、そのまま利用できるが、さらには固形ハロゲン剤から発生するハロゲンガスの量を制御する目的で、固形ハロゲン剤と混合しても安定な充填剤、例えばアルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムのような有機化合物、又はトリポリ燐酸ナトリウム、硫酸ナトリウムのような無機化合物を固形ハロゲン剤100重量部に対し1〜80重量部の範囲内で混合して用いる事も出来る。これら固形ハロゲン剤は、1種または2種以上併用して用いてもよい。また、混合後の形状は特に制限されるものではなく、粉末、顆粒、錠剤等の形状で利用する事が出来る。
【0007】
また、本発明に用いられる透湿性を有するが通水性のない素材(以下透湿性素材として称する)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸、ポリウレタン、セルロース、ポリアセタール、ポリカーボネートポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン等の熱可塑性樹脂を原料として、一般公知の方法によって製造されるフィルム状、不織布、織布等に加工したものが用いられる。
【0008】
以上の透湿性素材は、JIS Z 0208の測定により、その透湿度が好ましくは40(g/m2・24h)以上、より好ましくは500(g/m2・24h)以上、さらに好ましくは1500(g/m2・24h)以上であることが望ましい。透湿度の上限は特に制限されるものではないが、収納具に通水性があると固形ハロゲン剤と水とが直接接触してしまい、ハロゲンガス放出量を制御することが不可能となる為、通水性はあってはならない。
収納具に用いる透湿性素材は、その使用される場所を考慮して最も適した面積を任意に設定することが出来るが、一般には収納具の全表面積の1%以上に用いるとよい。さらに収納具の容量は、固形ハロゲン剤又は固形ハロゲン剤を含有する組成物の容量に対して1.01倍以上〜30倍以下の容量を有するものがよい。1.01倍未満のものではハロゲンガス放出量を制御することが困難であり、30倍を超えるものでは逆に、収納具の容量のみが大きくなり無駄である。
【0009】
【作 用】
本発明の殺菌清浄剤は、薬剤が通水性は無いが透湿性のある素材を一部または全部に使用した収納具に収納されている為、外部より直接水が浸透する事はなく、常に水は水蒸気の形で収納具内部に侵入してくる。固形ハロゲン剤とその収納具との間には、空間が設けられている為、その透過した水蒸気が直ちに固形ハロゲン剤と接触することはない。この透過する水蒸気の量は、その容器内部の飽和水蒸気圧で制御されている。固形ハロゲン剤は、容器外部から透湿性のある素材を透過して侵入した水蒸気と接触することで穏やかに加水分解してハロゲンガスを発生する。さらに放出されるハロゲンガス量は、その容器内の全圧により制御されており、ハロゲンガスの発生により容器内部の全圧が上昇すると、透湿性のある素材を通して外部にハロゲンガスが放出される。ハロゲンガスが十分に放出され、容器内部のハロゲンガスの分圧が下がると、外部より水蒸気が容器内部へ侵入してくる。以上の水蒸気の侵入、ハロゲンガスの発生、ハロゲンガスの放出、さらに水蒸気侵入といったメカニズムにより、常に一定のごく少量のハロゲンガスが系外に放出される。
【0010】
すなわち、ハロゲンガスが容器外へ十分に放出(透過)されると、あらためて容器外部から水蒸気を容器内部に積極的に誘引する事が可能となり、常に安定してハロゲンガスの放出量を制御することが出来る。したがって、使用環境の水の流速、または温度等の違い、使用雰囲気の湿度の高低により、効果にばらつきがなく長期間にわたり安定した効果が期待できる。更に酸性、アルカリ性の薬剤に代表される他の薬剤との共用による急激なハロゲンガスの大量発生を回避する事も出来る。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明を実施例により、更に詳細に説明する。但し、本発明の範囲は、これらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
実施例1
固形ハロゲン剤を含有する組成物として、トリクロルイソシアヌル酸(日産化学工業(株)製、商品名「ハイライト90G」)85重量%と硫酸ナトリウム15重量%よりなる組成物15gを用いた。 また、透湿性素材としては透湿度4340(g/m2/24h、40度/90%)の旭・デュポン フラッシュスバンプロダクツ(株)製ポリエチレン不織布(商品名タイベック1082D)の8x8cmを用い、他の片面に実験的に透湿性のない旭化成工業(株)製ポリ塩化ビニリデン系多層フィルム(商品名バリアロン−LF)8x8cmを用いて外周部4面を富士インパルス(株)製足踏み式インパルスシーラーにて5mm幅で溶着し、座布団状の収納具(全容量38.5ml)を作成したものに該組成物15g(体積13.6ml)を入れて殺菌清浄剤(収納具の容量は、固形ハロゲン剤組成物の容量の2.8倍)を作製した。
【0012】
実施例2
実施例1においてトリクロルイソシアヌル酸85重量%の代わりにT−ブロム−3−クロロ−5,5−ジメチルヒダントイン(多木化学(株)製、商品名「アクアブロム」)85重量%を用いた以外は、実施例1と同様にして殺菌洗浄剤を作製した。
【0013】
実施例3
実施例1においてトリクロルイソシアヌル酸85重量%の代わりに晒粉を用いた以外は、実施例1と同様にして殺菌洗浄剤を作製した。
【0014】
実施例4
実施例1の透湿性素材を用いた収納具の代わりに、収納具全部を透湿性素材の透湿度4340(g/m2/24h、40度/90%)の旭・デュポン フラッシュスパンプロダクツ(株)製ポリエチレン不織布(商品名タイベック1082D)を用いた以外は、実施例1と同様にして殺菌清浄剤を作製した。
【0015】
実施例5
実施例1のトリクロルイソシアヌル酸(日産化学工業(株)製、商品名「ハイライト90G」)85重量%と硫酸ナトリウム15重量%よりなる組成物15gの代わりに、トリクロルイソシアヌル酸20重量%と硫酸ナトリウム80重量%よりなる組成物を15g用いた以外は、実施例1と同様にして殺菌清浄剤を作製した。
【0016】
実施例6
実施例1のにおいて、容量が38.5mlの収納具に代わり、容量が295mlの収納具の中に、固形ハロゲン剤組成物(体積13.6ml)を入れた以外は、実施例1と同様にして殺菌清浄剤(収納具の容量が、固形ハロゲン剤組成物の容量の21.7倍)を作製した。
【0017】
以上、実施例にて作製した殺菌清浄剤を用いて次の評価方法により性能を試験した。
評価方法
長期間使用した台所排水口から、ヌメリの原因となるスライム形成菌(桿菌類)を採取分離し、前培養した懸濁液を下記に示す細菌類培養液に添加したものを2リットルビーカーに2リットル用意する。その中に市販されているステンレススチール製台所流し台排水口用ストレーナー(直径11cm、高さ13cm)を浸漬させた後取り出す。そのストレーナーを実際の家庭内の台所流し台排水口に取り付けて内部に実施例1から5において作製した殺菌清浄剤を入れ60日間使用した。 ストレーナー表面に菌の増殖によるスライムの生成状況の観察及び検知管を用いてストレーナー内の底面部から3cmのハロゲンガス濃度を測定した。
【0018】
記
細菌類培養液
トリペプトン 17g
ソイペプトン 3g
ブドウ糖 2.5g
リン酸2カリウム 2.5g
塩化ナトリウム 5g
以上を精製水に溶解し1リットルとした。
【0019】
実施例1〜6の結果は、表1及び表2に示す通りである。
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
比較例1
実施例1において、透湿性素材としてのポリエチレン不織布を使用しないで実験的に透湿性のない旭化成工業(株)製ポリ塩化ビニリデン系多層フィルム(商品名バリアロン−LF)8x8cmのみを用いて、実施例1と同様にして殺菌清浄剤を作製した。
【0022】
比較例2
実施例1において、通水性、透湿性に富む旭化成工業製ポリプロピレン製不織布(商品名エルタスPU5025)の8x8cmを用いた以外は、実施例1と同様にして殺菌洗浄剤を作製した
【0023】
比較例3
固形ハロゲン剤にその不織布を密着させた状態で熱溶着する為、透湿性素材としてより柔軟性のある、日東電工(株)製ポリエチレンフィルム(商品名ブレスロンBRN35−1N3C)を用いて全面を熱溶着し、収納具の容量が固形ハロゲン剤の容量の1.00倍である以外は、実施例4と同様にして殺菌清浄剤を作製した。
【0024】
比較例1〜3の結果は表3に示す通りである。
【表3】
【0025】
実用試験
実施例1〜2、比較例1〜2において作成した殺菌清浄剤を市販されているステンレススチール製台所流し台排水口用ストレーナー(直径11cm、高さ13cm)の底面に置き、これを実際の家庭内の台所流し台排水口に取り付けた後、湯(90℃)、又は塩酸系洗浄剤(商品名、大日本除虫菊株式会社製サンポール)、又は次亜塩素酸系アルカリ除菌漂白剤(商品名、花王株式会社製キッチンハイター)50mlを、その排水口に流し入れ、3分後の排水口上辺部のハロゲンガス濃度を検知管を用いて測定した。これらの結果は表4に示す通りである。
【0026】
【表4】
【0026】
【発明の効果】
本発明によって得られた殺菌清浄剤は、通気性、透湿性を有するが通水性を有しない素材を包装材に用いる事で固形ハロゲン剤と他の薬剤とが直接接触する事がなく、いかなる場合にも急激なハロゲンガスの大量発生を避ける事ができ、また常に安定した量のハロゲンガスが放出されることから長期間にわたり除菌清浄効果が期待できる。
Claims (8)
- 活性ハロゲンを遊離する固形ハロゲン剤又はその固形ハロゲン剤を含有する組成物を収納具に収納する殺菌洗浄剤において、該収納具の一部、又は全部に、通水性はないが透湿性のある素材で構成されていることを特徴とする排水口用殺菌清浄剤。
- 固形ハロゲン剤が塩素化イソシアヌル酸化合物である請求項1記載の排水口用殺菌清浄剤。
- 固形ハロゲン剤がハロゲン化ヒダントインである請求項1記載の排水口用殺菌清浄剤。
- 固形ハロゲン剤が晒粉である請求項1記載の排水口用殺菌清浄剤。
- 前記固形ハロゲン剤を含有する組成物が、更に、充填剤を含有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の排水口用殺菌清浄剤。
- 前記充填剤の含有量が、前記固形ハロゲン剤100重量部に対し1〜80重量部の範囲内であることを特徴とする請求項5に記載の排水口用殺菌清浄剤。
- 通水性はないが透湿性のある素材が、JIS Z 0208の測定法により、透湿度が40(g/m2・24h)以上である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の排水口用殺菌清浄剤。
- 収納具の容量が、固形ハロゲン剤又はその固形ハロゲン剤組成物の容量の1.01倍以上〜30倍以下であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に排水口用殺菌清浄剤。
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