JP3891101B2 - 硬貨識別装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は自動販売機などに搭載され、投入された硬貨の通路に沿って設けたセンサの出力に基づいて硬貨通路を通過する硬貨の真偽及び種類を識別する電子式の硬貨識別装置であって、特に硬貨の縁部と表面の凹凸模様を切り分けて硬貨の全ての部分における特徴を高精度に識別する機能、さらには硬貨縁部の識別精度をより高める機能を備えた硬貨識別装置に関する。
なお以下各図において同一の符号は同一もしくは相当部分を示す。
【0002】
【従来の技術】
図18は硬貨選別機能を備えた従来の電子式硬貨識別装置のセンサ部分を単純化した原理構造を示す正面図、図19は図18のセンサ部分を硬貨通路2の上方から見た横断面図である。
硬貨投入口1から投入された硬貨(コインともいう)CNは、自重で硬貨通路2上に落下したのち硬貨通路2上を転動しながら矢印DRの方向に落下を続け、この間に硬貨通路2に沿って設けられた識別コイルより成る硬貨識別センサSによって後述のようにその特性を検出される。
【0003】
なお、硬貨識別センサSは、断面がE型の対のポットコア(壺型コア)にそれぞれコイルを収納して構成され、このセンサの対の片側づつ(片側センサという)Sa,Sbを、そのポットコアの開口面が硬貨通路2の側壁2a,2bの面上で互いに対向するように(従って開口面が硬貨CNの面に対向できるように)配設し、この開口面同士が対向するギャップ内を硬貨CNが通過して行くように構成されている。
また、対の片側センサ同士のコイルは互いに接続されて1つの識別コイルを形成している。
【0004】
硬貨識別センサSによって検出された特性値のピーク値は、予め定められている金種別の上限値および下限値と比較され、検出特性値がこの上限値および下限値の間にある金種があれば当該の硬貨をその金種の正貨と判定し、それ以外は偽貨と判定する。
そして、この判定結果に基づいて振り分け用のゲート4を駆動して、正貨は正貨通路5に振り分けて収納し、偽貨は返却通路6に振り分けて返却するようにしている。
図20は、図18の硬貨識別センサSによって投入硬貨の真偽を判定する一連の回路の構成の一例を示すブロック回路図、図21は図20の動作を硬貨識別センサから得られる硬貨特性の波形データによって説明する特性図である。
【0005】
図20において、硬貨識別センサS,インダクタンスL,抵抗R1,R2でブリッジ回路10を構成し、このブリッジ回路10の電源として発振器OSCが接続されている。
このブリッジ回路10の検出電圧は差動増幅回路11に接続され、その出力電圧は整流回路12,A/D変換器13を通してデジタル値の検出特性値(便宜上、センサ出力ともいう)Xに変換され、差算出回路14に入力される。
差算出回路の他の入力端子には、硬貨識別装置ごとのバラツキを補正するために中心値メモり17から出力される硬貨金種別の中心値Mが与えられ、この差算出回路14からは検出特性値Xから各中心値Mを引いた金種別の差の絶対値|X−M|が出力され比較回路15に入力される。
【0006】
比較回路15の他の入力端子には許容差メモリ18から出力される金種別の許容差Nが与えられており、比較回路15は各金種別の差の絶対値|X−M|をそれぞれ対応する金種についての許容量Nと順次比較し、|X−M|≦Nの場合、すなわち(M−N)≦X≦(M+N)のときは論理“1”を出力し、|X−M|>Nの場合は“0”を出力し、判定回路l6に入力する。
図21(a)は、硬貨通路2(図18)に硬貨CNが投入されたときのA/D変換器13の出力値(検出特性値)Xの経時変化(つまり、硬貨識別センサSから得られる硬貨特性の波形データとしてのセンサ出力)を、同図(b)は、同国(a)に対応する比較回路15の出力CPの経時変化をそれぞれ示す。
【0007】
ここで正貨判定は同図(a)のように、硬貨CNが硬貨識別センサSを通過したときの検出特性値Xのピーク値がある金種についての(M−N)と(M+N)の間にあったとき同図(b)のように当該金種の正貨と判定する。すなわち、この例では判定回路16に1回だけ“1”となるパルスが比較回路15から入力したときに正貨と判定する。
なお、前記の許容差Nとしては、これに代わり金種ごとの中心値Mに対する上限幅NH と下限幅NL とに分けて指定する場合もある。この場合は、(M−NL )≦X≦(M+NH )のとき比較回路15の出力は“1”となり、X<(M−NL )または(M+NH )<Xのとき“0”となる。
【0008】
図16は従来の現実の硬貨識別装置における、硬貨識別センサの配置例を示す。即ち硬貨が転動する硬貨通路2に沿って材質センサS1,外径センサS2,板厚センサS3が設けられており、この各センサS1〜S3それぞれに図20と同様な回路が設けられて、各センサS1〜S3が当該センサに対応する図20と同様な回路内に硬貨識別センサSに代わって組み込まれている。
そして、これら材質センサS1,外径センサS2,板厚センサS3を介してそれぞれ得られた硬貨特性の波形データ(つまりA/D変換器13の出力としてのセンサ出力)Xのピーク値を当該硬貨の材質,外径,板厚の特性値として検出し、この各検出特性値Xのピーク値が何れも、前述した硬貨識別センサSの場合と同様に、ある金種の硬貨にそれぞれ対応する所定の範囲にあれば、その金種の正貨と判定していた。
【0009】
なお、図17は特に図16の板厚センサS3の、硬貨通路2を挟んで対をなすポットコア030の片方を示した斜視図で、031は全体として一体をなすポットコア030の一部を形成する円柱状の磁極部、032は磁極部031のポットコア開口面側の端面となる円形の磁極面、033は磁極部031を囲むようにポットコア030の一部を形成する円筒状の外壁である。
磁極部031を付勢する図外のコイルは磁極部031と外壁033との間の空間に収納される。そして対のポットコア030は、その磁極面032が硬貨通路2を挟んで互いに対向するように配設されている。
【0010】
しかし、上述した従来の構成の硬貨識別装置では外国貨の外径や板厚を加工した変造貨を日本の正貨と判定することがあり、近年、変造貨の不正使用による自動販売機の被害が頻発している。このような被害を防ぐにはコインの縁部の形状と表面の凹凸模様とを精度よく検査することが求められる。
かかる要求に応じて、例えば、複数の脚部を有するコアの隣接する2つの脚部の一方に第1のコイルを、他方に第2のコイルをそれぞれ設けて検知コイルを形成し、前記脚部により形成される磁極から発生する磁束が相互に反発し合うように前記第1のコイルおよび第2のコイルを励磁して双峰型磁界を発生させ、この双峰型磁界内に被検査コインを通過させ、このコイン通過の際に発生する前記検知コイルの電気的特性変化に基づき被検査コインの特徴を検査するコイン検査方法および装置が公開されている(特許文献1参照。)。
【0011】
またさらに、本出願人の先願としての特許願2001−240145号において、前記板厚センサS3の構造を変えて硬貨の板厚のみならず、硬貨表面の凹凸の検知能力を高めようとする硬貨選別装置が提案されている。次に、この本出願人の先願になる発明(以下単に先願発明という)の技術の要点を説明する。
図10は、先願発明の硬貨選別装置(以下では硬貨識別装置と言い換える)のセンサ部分全体の概略配置を示す正面図である。先願発明の硬貨識別装置においても図16と同様に投入硬貨が転動する硬貨通路2に沿って、投入硬貨の材質,外径,板厚を検知するセンサがそれぞれ配置されている。
【0012】
ここで材質センサS1,外径センサS2は図16と同じものであるが、板厚センサは、板厚のほかに硬貨の面上の凹凸を高精度で検知できる、外形の四角な板厚センサS30に置き換わっている。
図11は、硬貨通路2の上方から見たセンサ部分全体の断面を示す。また図12は、図10の板厚センサS30の部分の拡大図で、この図12は硬貨通路2を転動降下する硬貨CNの進行方向としての矢印DR方向に対する板厚センサS30の磁極面32Aと32Bの配置を示す。
図13は板厚センサS30の細部の構成を示し、同図(a)は板厚センサS30のポットコア30の形状を示す斜視図、同図(c)は硬貨通路2の上方から見た板厚センサS30の断面図、同図(b)と(d)はそれぞれ、対をなす板厚センサS30の片側を同図(c)のPとQの矢印方向に見た図である。
【0013】
図13(a)に示すように、板厚センサS30のポットコア30は、フェライトなどの高透磁率の磁性材料からなる第1,第2の2つの磁極コア31A,31Bと、同じ磁性材料からなり第1の磁極コア31Aの三方を囲む第1外壁33Aおよび第2の磁極コア31Bの三方を囲む第2外壁33Bと、同じ磁性材料からなり磁極コア31A,31Bおよび外壁33A,33Bをポットコア30の非開放側の端面で一体に結合する底板コア34とからなる。
そして、第1,第2の2つの磁極コア31A,31Bは、所定のほぼ長方形の断面を持つ角柱状に形成され、この長方形の長辺に対応する側面同士が所定の隙間を置いて平行となるように並んでいる。
【0014】
なお、磁極コア31A,31Bのそれぞれの磁極面32A,32Bと外壁33A,33Bのポットコア開放面側の端面は図13(c)に示すように、ほぼ1つの平面に含まれ、且つ磁極コア31A,31Bおよび外壁33A,33Bについてのポットコアの非開放面側の端面に相当する部分は前記のようにポットコアの底面を形成する底板コア34に一体に結合されている。
また、図13(b)〜図13(d)に示すように、対の一方のポットコア30の第1磁極コア31Aと第2磁極コア31Bにはそれぞれ第1コイル35aと第2コイル35bが巻かれており、他方のポットコア30の第1磁極コア31Aと第2磁極コア31Bにはそれぞれ第1コイル35cと第2コイル35dが巻かれている。
【0015】
なお、本例では後述の図14に示すように第1コイル35aと第2コイル35b、および第1コイル35cと第2コイル35dはそれぞれ直列に接続され、さらに直列コイル35a,35bと直列コイル35c,35dも直列に接続されている。
図13(b)と図13(d)の一点鎖線の矢印は、発振器OSCを電源として各コイル35a〜35dを流れる高周波電流の或る同一時点における電流の方向を示し、図13(c)の点線の矢印はこの時点において、2つのポットコア30それぞれの磁極面32Aと32B間を出入りする磁束φの方向を示す。
【0016】
この図13(c)から明らかなように、同一のポットコア30内の磁極面32Aと32Bは異極性となり、且つ対のポットコア30の硬貨通路2を挟んで対向する磁極面32A同士および32B同士はそれぞれ同極性となるように、各磁極コア31Aと31Bの励磁が行われる。
この板厚センサS30は図12に示すように、ポットコア30の、ほぼ長方形をなす磁極面32Aと32Bの長辺が硬貨CNが進行する矢印DRの方向に対して直交するように配置されている。
図14は先願発明の硬貨識別装置の制御回路の要部の構成を示すブロック図である。同図において、硬貨通路2を挟み直列接続されたコイルS1a,S1bからなる材質センサS1は検出回路101に接続され、検出回路101の出力は整流回路121によって整流され、さらにA/D変換器131によりデジタル値に変換されて材質判定手段161に入力されている。
【0017】
同様に硬貨通路2を挟み直列接続されたコイルS2a,S2bからなる外径センサS2は検出回路102に接続され、検出回路102の出力は整流回路122によって整流され、さらにA/D変換器132によりデジタル値に変換されて外径判定手段162に入力されている。
また、図13で述べた直列接続のコイル35a,35bと35c,35dとが硬貨通路2を挟んで直列接続された板厚センサS30も同様に検出回路103に接続され、検出回路103の出力は整流回路123によって整流され、さらにA/D変換器133によりデジタル値に変換されるが、このA/D変換器133のデジタル出力は板厚判定手段163に入力されるほか、凹凸判定手段164にも入力される。
【0018】
そして、各判定手段161〜164の判定結果は総合真偽判定手段200に入力され、最終的に当該の投入硬貨の真偽が判定される。
ここで、検出回路101,102,103は何れも図20のブリッジ回路10,発振器OSC,差動増幅回路11からなる回路から硬貨識別センサSのみを除いた回路と同様な構成を持ち、この各構成回路にそれぞれ材質センサS1,外径センサS2,板厚センサS30が硬貨識別センサSに置換わる形で接続されている。
整流回路121,122,123は何れも図20の整流回路12に相当し、A/D変換器131,132,133は何れも図20のA/D変換器13に相当する。
【0019】
また、材質判定手段161,外径判定手段162,板厚判定手段163も何れも図20の差検出回路14,比較回路15,判定回路16,中心値メモリ17,許容差メモリ18からなる回路と同様な構成を持っている。
このような構成により、材質判定手段161は従来と同様、A/D変換器131の出力である材質センサS1からの波形データ、つまり当該硬貨の材質の検出特性値のピーク値が、図21で述べたと同様に、材質に関わり且つ硬貨識別装置ごとに金種別に定まる中心値Mを挟む、金種別の所定の上下限幅内にあるか否かを金種毎に調べ、ピーク値が上下限幅内にある金種が存在すれば真,存在しなければ偽の仮判定信号を出力する。
【0020】
同様に、外径判定手段162もA/D変換器132の出力である外径センサS2からの波形データ、つまり当該硬貨の外径の検出特性値のピーク値が、外径に関わり且つ硬貨識別装置ごとに金種別に定まる中心値Mを挟む、金種別の所定の上下限幅内にあるか否かを金種毎に調べ、該当する金種が存在すれば真,存在しなければ偽の仮判定信号を出力する。
また同様に、板厚判定手段163もA/D変換器133の出力である板厚センサS30からの波形データ、つまり当該硬貨の板厚の検出特性値のピーク値が、板厚に関わり且つ硬貨識別装置ごとに金種別に定まる中心値Mを挟む、金種別の所定の上下限幅内にあるか否かを金種毎に調べ、該当する金種が存在すれば真,存在しなければ偽の仮判定信号を出力する。
【0021】
次に凹凸判定手段164の動作を述べる。
図15(b)は同図(a)のような凹凸の断面形状を持つ硬貨CNが板厚センサS30の部分を通過した時の板厚センサ出力(この場合、図20のセンサ出力Xに相当する図14のA/D変換器133の出力でXTとする)の波形(経時的変化)の例を示す。
図15(b)に示すように、硬貨厚みの影響を受けて板厚センサ出力XTの波形は、外周の凸部に対応する領域A1にて凸形状が形成され、内周の凹凸部に対応する領域A2では硬貨面の凹凸模様に対応した凹凸の波形が形成される。
【0022】
凹凸判定手段164は、この板厚センサ出力XTの波形上の所定の基準レベルLVS以上の領域における所定時間間隔の時系列のサンプリングデータ列を所定の複数区間に等分割して、この区間毎のサンプリングデータの代表値を求め、この各代表値にそれぞれ当該区間に応じて予め定めた重み係数を乗じ、この重み係数をそれぞれ乗じた各データ代表値を加算して硬貨の凹凸を表す特性値を求める。
そして、この特性値が、図21で述べたと同様に、この特性値に関わり且つ硬貨識別装置ごとに金種別に定まる中心値を挟む、金種別の所定の上下限幅内にあるか否かを金種毎に調べる。
【0023】
その結果、凹凸判定手段164は、この特性値がこの上下限幅内にある金種が存在すれば真,存在しなければ偽の仮判定信号を出力する。
総合真偽判定手段200は材質判定手段161,外径判定手段162,板厚判定手段163,凹凸判定手段164の真,偽の仮判定信号を総合し、判定手段161〜164の全ての仮判定信号が真である金種が存在するとき、当該の投入硬貨をその金種の正貨であると判定する。
【0024】
【特許文献1】
特開2001−174438号公報(第1,2頁)
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した先願発明の板厚センサS30の形状には、次のような問題があった。
図4は、先願発明の板厚センサS30の開放側(硬貨通路側)の端面部分の或る時点における磁束分布と、硬貨が板厚センサ部分を通過する際の、各硬貨の位置での板厚センサ出力XTの波形を示す。
図4に示すようにこの時点において、板厚センサS30では、第1コイル35a(または35c)により、第1磁極コア31Aから第1外壁33Aへ流れる磁束φ2、および第1磁極コア31Aから第2磁極コア31Bへ流れる磁束φ1を発生させ、また第2コイル35b(または35d)により、第1磁極コア31Aから第2磁極コア31Bへ流れる磁束φ1、および第2外壁33Bから第2磁極コア31Bへ流れる磁束φ3を発生させるように各コイル35a〜35dは結線されている。
【0026】
このように板厚センサS30では発生させる磁束がφ1〜φ3に分かれているが、これは第1磁極コア31Aおよび第2磁極コア31Bをそれぞれ通る磁束のうち第1磁極コア31Aおよび第2磁極コア31Bを環流する磁束φ1以外の漏れ磁束を第1外壁33Aおよび第2外壁33Bにて拾うことで板厚センサS30の磁束の存在領域を限定するために行われていた。
しかしこの場合、3つの磁束φ2,φ1,φ3によって硬貨の特徴を検出し、その総和として板厚センサ出力XTの波形を得ることになるため、結果的に特徴を示す情報が重複して特徴を明瞭に抽出しにくいという問題があった。
【0027】
次に図4により、硬貨CNが、板厚センサS30によって発生する硬貨通路の電磁場内を矢印DRの方向へ順次、例えば硬貨CNaの走行線上で硬貨CNa,硬貨CNb,硬貨CNcにそれぞれ対応する位置へ移動して行く際の硬貨位置と板厚センサ出力XTの波形との関係、および波形に含まれる問題点を説明する。まず、硬貨CNが板厚センサS30から外れた位置にあるときにはセンサ出力XTはその波形上のL20のレベルにある。
そこから、硬貨が、硬貨CNaに対応する位置に転がってきたときには、磁束φ2にて硬貨縁部分の特徴を検知してセンサ出力XTは増加する。但し、この状態では磁束内へ進入した硬貨面積は少ないため、センサ出力XTはその波形上ののレベルL21程度となる。
【0028】
次に硬貨の先頭側の縁部分がほぼ第1磁極コア31A上に進んだときには磁束φ2と磁束φ1の谷間にてセンサ出力XTは若干低下し、その波形上のL22のレベルとなる。
次に硬貨が硬貨CNbに対応する位置に進んだときには、今度は磁束φ1にて硬貨縁部分の特徴を検知してセンサ出力XTは更に増加しその波形上のL23のレベルとなる。しかしながらこの際に磁束φ2によっても硬貨模様部分の特徴を検知してしまっていることが問題として挙げられる。
次に硬貨先頭側の縁部分がそこからほぼ第2磁極コア31B上に進んだときには磁束φ1と磁束φ3の谷間にてセンサ出力XTはその波形上のL24のレベルまで低下する。但し、この際にも磁束φ2,φ1にて硬貨模様の特徴を検知している。
【0029】
次に硬貨が硬貨CNcに対応する位置まで進んだときには、磁束φ3において硬貨縁部分の特徴を検知するため再びセンサ出力XTはその波形上のL25のレベルまで増加する。但し、この際にも磁束φ2,φ1によって硬貨模様を検知しているため、それらを複合した形でセンサ出力XTが得られている。
そこから更に硬貨が矢印DR方向に転がって硬貨先頭側の縁部分がセンサS30上から抜けると磁束φ2,φ1,φ3によって硬貨模様部分の特徴を検知し図中A10の領域のように模様に応じたセンサ出力XTの波形が生ずる。
以上のように、先願発明のセンサS30は3つの磁束φ1,φ2,φ3により特徴抽出を行うために硬貨の縁と模様の特徴を切り分けられずに硬貨縁部の特徴を示すセンサ出力XTの波形(図中のレベルL23の点)の後に再び硬貨縁部の特徴を示すセンサ出力XTの波形(図中のレベルL25の点)が現れるという問題があり、そのため、硬貨の縁から模様へ切り替わる部分での特徴を精度よく検知することができなかった。
【0030】
主として請求項1に関わる発明(以下第1発明という)は、この問題を解消し、板厚センサが発生する磁束の種類を1つにして、硬貨の縁と模様の特徴を切り分けることにより硬貨の全ての部分にて特徴を正確に検知し、より検銭率の向上を図ることができる板厚センサS31を備えた硬貨識別装置を提供することを目的とする。
ところで、硬貨の識別精度の更なる向上が日々望まれるなかで、第1発明の板厚センサS31にもさらに改善すべき課題がある。
図8,9はこの課題を説明するための図である。ここで、図8は第1発明の板厚センサS31が組み込まれた硬貨識別装置内の板厚センサS31と硬貨CNとの関係を示す正面図で図12に対応している。また、図9(a),(b)は板厚センサS31の部分を通過する硬貨CNの面上における板厚センサS31の軌跡の例を示す。
【0031】
なお、図8において板厚センサS31は、詳しくは後述するが、ほぼ長方形でその長方形の長辺の方向が硬貨CNの進行する矢印DRの方向に直交するように、この矢印DR方向に並んで配置された互いに異極性の磁極面32A,32Bを持つ片側センサを対にしてなり、対の片側センサの同極性の磁極面32A同士および同極性の磁極面32B同士は硬貨通路2を挟む側壁上で対向している。
硬貨CNは、この磁極面32A同士および32B同士が対向する間をRTの回転方向に転がりながら矢印DRの方向に進んで行く。このとき板厚センサS31は、硬貨CNの面上を図9(a)あるいは(b)に示す軌跡LCで通過する。
【0032】
即ち、この図9(a),(b)に示すように投入する硬貨CNの初期位置の差によって、板厚センサS31を通過するときの硬貨CNの模様の位置が異なったものとなる。
実際には硬貨CNの初期位置を規制できないため、板厚センサS31を通過する硬貨模様の位置はその都度変わってしまう。この模様の通過位置の差から、硬貨凹凸模様に対応した板厚センサ出力XT1(後述の図3参照)上の凹凸を示す波形は異なったものとなる。
つまり、硬貨の凹凸模様による特徴検出は硬貨の初期位置により異なるので、凹凸模様の細かな特徴の検出は実際上困難であり、大きな特徴を掴む程度しかできない。そのため、硬貨の模様部分よりも全周に渡ってほぼ同等の形状(特徴)を持っている硬貨縁部の形状を今よりも更に高精度に検出することが有効である。
【0033】
主として請求項2に関わる発明(以下第2発明という)は、このような課題を解決するためになされたものであり、硬貨縁部の特徴をより高精度に検出して更なる検銭率の向上を計ることができる硬貨識別装置を提供することを目的とする。
【0034】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために、請求項1の硬貨識別装置は、
発振器(OSC)を電源とする複数のセンサ(材質センサS1,外径センサS2,板厚センサS31など)を硬貨通路(2)に沿って配置し、(検出回路101〜103、整流回路121〜123、A/D変換器131〜133、判定手段161〜164、総合真偽判定手段200などを介し)該硬貨通路上の硬貨(CN)の通過に伴って前記の各センサより得られる信号波形から当該硬貨の真偽を判定する硬貨識別装置であって、
前記センサの少なくとも1つ(S31など)が、前記硬貨通路を挟みつつ、該硬貨通路の両側面間の中央を通る平面(以下通路中央面という)に対し、少なくとも該通路中央面の近傍では、面対称の構造を持つて対となる鉄心を備え、
この対の鉄心の各々は、前記通路中央面側を向き、該通路中央面に平行で、ほぼ所定長の短辺(H)と長辺(G)からなる長方形状の磁極面(32A,32B)を端面とし、前記通路中央面に垂直に反通路中央面側へ延びる角柱状のほぼ同形状の2つの磁極鉄心(第1磁極コア31A,第2磁極コア31B)を持ち、
この2つの磁極鉄心は、その反通路中央面側の端部が連結鉄心(底板コア321など)によって相互に結合されると共に、その前記磁極面の端面同士がほぼ同一平面に含まれ、該端面の前記長方形の長辺が硬貨の進行方向(矢印DR方向)と直交し、且つこの長辺同士が所定の隙間を置いて平行となるように並ぶと共に、この2つの磁極鉄心の磁極面が互いに異極性となり、且つ前記硬貨通路を挟み対向する対の磁極面間では同極性となるように前記発振器を電源とするコイル(35a〜35d)によって付勢され、
この際、前記連結鉄心に結合された前記2つの磁極鉄心をそれぞれ通る磁束のうち、この2つの磁極鉄心を含む磁路を環流する主磁束(φ1)以外の漏洩磁束(φL)の少なくとも前記硬貨通路を構成する空間内での大きさが前記主磁束の大きさに対して無視できるように構成されてなるようにする。
【0035】
また請求項2の硬貨識別装置は請求項1に記載の硬貨識別装置において、
前記長方形の長辺の長さが該長方形の短辺の長さの4ないし6倍であるようにする。
また請求項3の硬貨識別装置は、請求項1または2に記載の硬貨識別装置において、
前記長方形の短辺の長さが3mm以下であるようにする。
第1発明の作用は、板厚センサの対となる片側分のコア形状を、先願発明の板厚センサS30のポットコア30から第1,第2の外壁33A,33Bを取り除いて、コアの開放側端面にはほぼ長方形で、この長方形の長辺が硬貨の進行方向と直交し、且つこの長辺同士が所定の隙間を置いて平行に並ぶ、互いに異極性の2つの磁極面が形成されるのみの形状とし、この2つの磁極面間に流れる磁束、つまり1種類の磁束のみで硬貨の識別を行うことにより、硬貨の縁と模様の特徴を正確に切り分け得るようにするものである。
【0036】
また、第2発明の作用は、上記磁極面の長方形の長辺の長さが短辺の長さの4〜6倍となるようにして、前記磁束を集中させ、硬貨の特徴を安定して掴むのに有効な硬貨の縁部分の識別能力をより高めるものである。
【0037】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
以下、図1〜3を参照して、第1発明の硬貨識別装置の実施の形態を説明する。
(実施例1)
図1は第1発明の第1の実施例としての板厚センサS31の対を構成する片側センサ分の構成を示す。なお、同図(a)はこの片側センサの正面図、同図(b)は同図(a)のF−F断面図である。
【0038】
この板厚センサS31は、前述した図10〜12および図14において、先願発明の板厚センサS30に置き換わって用いられる。なお、前述のように図8は現実に板厚センサS31を硬貨識別装置に組み込んだ図12に対応する図である。
板厚センサS31の構造を要約すれば、図13で述べた先願発明の板厚センサS30のポットコア30から第1外壁33Aおよび第2外壁33Bを取り除き、底板コア34を第1磁極コア31Aおよび第2磁極コア31Bの非開放側(反硬貨通路側)の端面を連結するのみの構造の底板コア341に置き換えて、コア全体を本例ではいわゆるU字型の一体型コアとしたものである。なお、各コア31A、31B、および341は、ポットコア30と同様にフェライトなどの高透磁率の磁性材料からなる。
【0039】
なお、図1において、ほぼ長方形の断面を持つ角柱状の第1磁極コア31Aおよび第2磁極コア31Aは、長方形断面の長辺側の側面を互いに平行に対向させている。
また、対の片側センサの一方側の第1磁極コア31Aと第2磁極コア31Bにはそれぞれ第1コイル35aと第2コイル35bが巻回され、対の片側センサの他方側の第1磁極コア31Aと第2磁極コア31Bにはそれぞれ第1コイル35cと第2コイル35dが巻回されている。
そして、板厚センサS31を構成する対の片側センサ同士は、第1磁極コア31Aの磁極面32A同士と第2磁極コア31Bの磁極面32B同士が硬貨通路2を挟んで対向するように、且つ、ほぼ長方形の磁極面32Aおよび32Bの長辺の方向が硬貨通路2上の硬貨CNの進行方向である矢印DR方向に直交するように硬貨通路2の側壁2a,2bに装着される。
【0040】
また、同一の片側センサ内の第1磁極コア31Aと第2磁極コア31Bのそれぞれの開放側端面の磁極面32Aと磁極面32Bは互いに異極性となり、また対の片側センサの第1磁極コア31Aの磁極面32A同士は互いに同極性となって硬貨通路2を挟んで対向し、同様に第2磁極コア31Bの磁極面32B同士も互いに同極性となって硬貨通路2を挟んで対向するように、コイル35a〜35dは直列に接続されて励磁される。
図3は、或る時点における板厚センサS31の開放側(つまり硬貨通路側)の端面部分の磁束分布と、硬貨CNがこの板厚センサ部分を通過する際の、各硬貨位置での板厚センサ出力XT1の波形を示す。なお、この板厚センサ出力XT1は図14における板厚センサS30のセンサ出力XTに対応するもので、図14の板厚センサS30をS31に置き換えたときの板厚センサ出力をXT1とする。
【0041】
なお、図3では先願発明の板厚センサS30と比較するため本第1発明の板厚センサS31の出力XT1の波形を実線で、先願発明における板厚センサ出力XTの波形(図4)を点線でそれぞれ示す。
図3に示すように第1発明の板厚センサS31では、第1コイル35a(または35c)および第2コイル35b(または35d)により、第1磁極コア31Aおよび第2磁極コア31Bを含む磁路(つまり、第1磁極コア31、磁極面32Aと32Bとの間の硬貨通路を含む空間、第2磁極コア31B、底板コア341からなる閉磁路)を環流する磁束φ1のみを発生させる。
【0042】
この際に先願発明の板厚センサS30で発生していた、第1磁極コア31Aを流れる磁束のうち第2磁極コア31Bを流れない漏れ磁束を発生させないように、同様に第2磁極コア31Bを流れる磁束のうち第1磁極コア31Aを流れない漏れ磁束を発生させないように、第1磁極コア31Aと第2磁極コア31Bの断面積を第1コイル35a(または35c),第2コイル35b(または35d)に流す電流によって発生する起磁力を考慮して決定する。
また、第1磁極コア31Aと第2磁極コア31Bとの間隔も第1コイル35a(または35c),第2コイル35b(または35d)に流す電流によって発生する起磁力を考慮して漏れ磁束が発生しないように、できるだけ近づけるようにする。
【0043】
次に、硬貨CNが、板厚センサS31によって発生する硬貨通路の電磁場内を矢印DRの方向へ順次、例えば硬貨CNaの走行線上で硬貨CNa,硬貨CNb,硬貨CNcにそれぞれ対応する位置へ移動して行く際の硬貨位置と板厚センサ出力XT1の波形との関係を説明する。
まず、硬貨CNが板厚センサS31から外れた位置にあるときには板厚センサ出力XT1は先願発明の板厚センサ出力XTと同じくその波形上のL20のレベルにある。
そこから、硬貨が硬貨CNaに対応する位置に転がってきたときには、先願発明のセンサS30とは異なり磁束の影響を受けないため、第1発明の板厚センサ出力XT1は点線のセンサ出力XTのレベルL21から実線のセンサ出力XT1のレベルL211へ低下する。
【0044】
次に硬貨の先頭側の縁部分がほぼ第1磁極コア31A上に進んだときには磁束φ1の影響は未だ少なく、第1発明のセンサ出力XT1は先願発明のセンサ出力XTと同じくその波形上のレベルL22となる。
次に硬貨が硬貨CNbに対応する位置に進んだときには、磁束φ1にて硬貨縁部分の特徴を検知して、第1発明の実線のセンサ出力XT1は点線のセンサ出力XTのレベルL23より増加しレベルL231となる。
これは、第1発明の板厚センサS31では先願発明の板厚センサS30に比べて第1磁極コア31Aと第2磁極コア31Bの間だけに磁束を集中させているためであり、第1発明ではこのようなセンサ出力レベルの向上によって検銭率を更に向上させることができる。
【0045】
次に硬貨の先頭側の縁部分がそこからほぼ第2磁極コア31B上に進んだときには磁束φ1の影響は少なくなり、実線のセンサ出力XT1のレベルは点線のセンサ出力XTのレベルと同様にレベルL24まで低下する。
次に硬貨が硬貨CNcに対応する位置まで進んだときには、第1発明のセンサS31では先願発明のセンサS30と異なり磁束の影響を受けないため、実線のセンサ出力XT1のレベルは点線のセンサ出力XTのレベルL25からレベルL251まで低下する。この実線波形は、先願発明の点線波形とは異なり、実際の硬貨の縁部分と模様部分の特徴により近づいた波形となっている。
【0046】
そこから更に硬貨が矢印DR方向に転がって硬貨の先端側の縁部が板厚センサS31上から抜けると磁束φ1によって硬貨模様部分の特徴を検知してA10の領域のように先願発明の板厚センサS30と同様な模様に応じた出力波形が得られる。
このように、第1発明の板厚センサS31では、先願発明の板厚センサS30のように硬貨の縁部分と模様部分の特徴を切り分けられずに硬貨縁部の特徴を示す出力波形(点線波形のレベルL23の点)の後に再び硬貨縁部の特徴を示す出力波形(点線波形のレベルL25の点)が現れるという問題が発生せず、1回のみ硬貨縁部の特徴を示す出力波形(実線波形のレベルL231の点)が現れる。
【0047】
このため、硬貨の縁から模様へ切り替わる部分での特徴(実線波形のレベルL251の点)を精度よく検知することができるようになる。
なお、第1発明の板厚センサS31のセンサ出力XT1は図14で述べた先願発明と同様な板厚判定手段163および凹凸判定手段164に入力されて判定され、さらに先願発明と同様な総合真偽判定手段200によって、材質判定手段161および外径判定手段162の判定結果と共に総合的に判定される。
(実施例2)
図2は第1発明の第2の実施例としての板厚センサS31’の構成を示し、同図(a)は板厚センサS31’の正面図、同図(b)は同図(a)のF−F断面図である。
【0048】
図2の板厚センサS31’の図1の板厚センサS31に対する相違は、図1の底板コア341が図2では第1磁極コア31Aおよび第2磁極コア31Bとの結合部の周囲に全体としてほぼ矩形の鍔状に広がった大きな面積の底板コア341’に置き換わった点のみである。
これは、第1コイル35a(35c)および第2コイル35b(35d)のそれぞれ第1磁極コア31Aおよび第2磁極コア31Bへの取付け易さや板厚センサ全体の組立て易さ等を考慮したものである。
図2の程度に底板コアの形状を大きくしても、第1磁極コア31Aと第2磁極コア31Bとの間の磁束の流れには影響を与えないため、この第2実施例の板厚センサS31’の出力波形は図3に示した第1実施例の板厚センサS31の出力XT1の波形と全く同じになり、同じ効果を得ることができる。
【0049】
(実施の形態2)
以下、図5〜7を参照して、第2発明の硬貨識別装置の実施の形態を説明する。
図5は第2発明の一実施例としての板厚センサS31−1の対を構成する片側センサ分の構成を示し、この図は図1に対応している。なお、図5(a)はこの片側センサの正面図、同図(b)は同図(a)のF−F断面図である。
本第2発明の板厚センサS31−1は、第1発明の板厚センサS31(図1)において、図5に示す第1磁極コア31Aおよび第2磁極コア31Bのほぼ長方形の断面(換言すれば磁極面32Aおよび32B)における長辺の長さGを、先願発明の設計手法に準ずれば短辺の長さHの3倍程度に選ぶところを、短辺の長さHの4〜6倍にしたものである。なお、板厚センサS31−1の短辺長Hは3mm以下としている。
【0050】
板厚センサS31−1のその他の構成や硬貨識別装置への組込み方法等は(実施の形態1)で述べた内容と同じであり説明を省略する。
図5では第1磁極コア31Aおよび第2磁極コア31B部分における或る時点における磁束分布を太い矢印で示している。同図に示すように、第1コイル35a(または35c)により、第1磁極コア31Aから第2磁極コア31Bへ流れる磁束φ1を発生させ、第2コイル35b(または35d)によっても磁束φ1を発生させている。
なお、φLは第1磁極コア31Aおよび第2磁極コア31Bをそれぞれ通る磁束のうち、第1磁極コア31Aおよび第2磁極コア31Bを含む磁路を環流する磁束φ1以外の漏れ磁束である。この板厚センサS31−1の構成では漏れ磁束φLの大きさは磁束φ1の大きさに比べ無視することができる。
【0051】
この板厚センサS31−1の磁極コア31A,31Bの形状では、2つの磁極面32Aと32Bの間の磁気抵抗が最も小さくなるため、磁束φ1の強度が最も強く、効率的に磁束の流れをつくることが可能となっている。その結果、漏れ磁束φLは僅かとなり、その大きさは磁束φ1の大きさに比べ無視することができ、硬貨CNの縁の形状を検知するのに有利となる。
図7は板厚センサS31の磁極コア31Aおよび31Bの長方形断面の長辺Gと短辺Hの長さの比率(G/H)を変えたときの、硬貨縁部センサ出力XT1Eおよび硬貨模様部センサ出力XT1Pの変化を示した特性図である。
【0052】
ここで、硬貨縁部センサ出力XT1Eは、図3に示したセンサ出力XT1の波形上の硬貨縁部の検出レベルとしてのレベルL231に相当し、硬貨模様部センサ出力XT1Pは、センサ出力XT1の波形上の硬貨模様部の検出レベルとしての領域A10内の値の平均値に相当する。
図7に示すように辺の比率(G/H)が大きくなるほど、硬貨縁部センサ出力XT1Eは増加し、逆に硬貨模様部センサ出力XT1Pは減少する傾向となる。ただし、硬貨縁部センサ出力XT1Eは、辺の比率(G/H)が6を越えると(この場合、実際上、短辺長Hの値そのものが小さく1mm程度になる)、磁極コア31Aおよび31Bの根元部分で漏れ磁束が発生するため低下を始める。
【0053】
なお、辺の比率(G/H)が小さい場合、硬貨模様部センサ出力XT1Pが増加し、硬貨縁部センサ出力XT1Eが減少するがこの理由を次に述べる。
図6は板厚センサS31の辺の比率(G/H)を0.5以下にした場合の或る時点における磁束分布の例を太い矢印で示す。図6の場合、磁極面32Aと32Bの間の磁気抵抗が図5の場合に比べて大きくなるため、第1磁極コア31Aおよび第2磁極コア31Bを含む磁路を環流する磁束φ1は図5の板厚センサS31−1に比べて小さくなると同時に硬貨通路に沿って大きく広がる。また、磁束φ1の大きさに対する漏れ磁束φLの割合が多くなり、無視できなくなる。
【0054】
その結果、図6の形状の板厚センサS31は硬貨の模様部分の検出には有利であるが、硬貨縁部の検出には不利となる。
図9で述べたように硬貨の識別精度を高めるには硬貨の模様部分よりも縁部の識別精度を高める方が有効である。しかし同時に、識別精度は若干下がるにせよ、同一の板厚センサによって硬貨の模様部分(表面の凹凸部分)の識別もできることが望ましい。
この条件を満たすには、図7の特性から辺の比率(G/H)を4〜6に、つまり図5の形状の板厚センサS31としての板厚センサS31−1を用いればよいことが分かる。
【0055】
これにより、先願発明の設計手法を準用した場合は硬貨縁部と模様部の両方を検知することに重点を置くため、辺の比率(G/H)を3程度に選ぶのであるが、本第2発明では辺の比率(G/H)を4〜6にすることで、第1磁極コアと第2磁極コアの間に、より集中して磁界を発生させ、より正確に硬貨縁部の形状(特徴)を検知することができる。
【0056】
【発明の効果】
複数のセンサを硬貨通路に沿って配置し、この硬貨通路上の硬貨の通過に伴って前記の各センサより得られる信号波形から当該硬貨の真偽を判定する電子式の硬貨識別装置において、
第1発明によれば、それぞれほぼ長方形の磁極面を端面とし、この長方形の長辺側の側面を平行にして並ぶ角柱状の第1,第2の2つの磁極コアの反硬貨通路側の端部同士を底板コアで一体に結合してU字型コアを構成し、
このU字型コアに組み込んだコイルによってその2つ磁極コアの磁極面が互いに異極性となるように励磁して片側センサとし、
この片側センサを対にして、同極性の磁極面同士が硬貨通路を挟んで対向し合うように、且つ前記磁極面の長方形の長辺が硬貨の進行方向に直交するように硬貨通路の両側に配置して板厚センサとし、
この板厚センサでは、そのU字型コアの2つの磁極コアをそれぞれ通る磁束のうち、この2つの磁極コアを含む磁路を環流する主磁束(換言すれば、この2つの磁極コアの磁極面間に流れる磁束)以外の漏洩磁束が主磁束に対し無視できるように構成したので、次のような効果を得ることができる。
【0057】
(1)硬貨の縁と模様の特徴を切り分けて硬貨の全ての部分において正確に特徴を検知することが可能となり、更なる検銭率の向上を図ることができる。
(2)磁極コアからの漏れ磁束を先願発明よりも低減することが可能となるため、硬貨の特徴を表すセンサ出力レベルを向上することが可能となる。
(3)板厚センサのコア形状をU字型の一体型コアとすることで従来の板厚センサに比べてコア形状の簡素化,小型化,更には低コスト化が可能となる。
また、第2発明によれば、第1発明の板厚センサにおける角柱状の第1,第2の2つの磁極コアの長方形の断面(従って磁極面)の長辺の長さが短辺の長さの4〜6倍となるよう構成し、第1磁極コアと第2磁極コアの間に集中して効率的に磁界を発生させるようにしたので、硬貨縁部の形状(特徴)をより高精度に検知することが可能になり、さらに検銭率を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1発明の第1の実施例としての板厚センサの構成図
【図2】第1発明の第2の実施例としての板厚センサの構成図
【図3】第1発明の板厚センサの出力の説明図
【図4】先願発明の板厚センサの出力の説明図
【図5】第2発明の一実施例としての板厚センサの構成図
【図6】第1発明の板厚センサの磁極コアの辺の比率(G/H)を大きく下げた場合の磁束分布の説明図
【図7】第1発明の板厚センサの磁極コアの辺の比率(G/H)と、硬貨の縁部および模様部の各センサ出力との関係を示す特性図
【図8】硬貨識別装置内の第1発明の板厚センサ部分を拡大した正面図
【図9】第1発明の板厚センサに対する課題の説明図
【図10】先願発明の一実施例としての硬貨選別装置の要部の原理構造を示す正面図
【図11】図10の硬貨通路の上方から見たセンサ部分の断面図
【図12】図10の板厚センサ部分の拡大図
【図13】先願発明の一実施例としての板厚センサの詳細構成を示す図
【図14】先願発明の一実施例としての制御回路の構成図
【図15】図14の凹凸判定手段の動作説明用の板厚センサ出力の波形図
【図16】従来装置の図10に対応する正面図
【図17】従来の板厚センサのポットコアの斜視図
【図18】図16のセンサ部分を単純化した原理構造図
【図19】図18のセンサ部分を上から見た横断面図
【図20】従来装置の要部の回路構成を示すブロック回路図
【図21】図20の動作説明用の特性図
【符号の説明】
1 硬貨投入口
2 硬貨通路
4 ゲート
5 正貨通路
6 返却通路
10 ブリッジ回路
11 差動増幅回路
31A 第1磁極コア
31B 第2磁極コア
32A,32B 磁極面
35a,35c 第1コイル
35b,35d 第2コイル
101〜103 検出回路
121〜123 整流回路
131〜133 A/D変換器
161 材質判定手段
162 外径判定手段
163 板厚判定手段
164 凹凸判定手段
200 総合真偽判定手段
341,341’ 底板コア
CN 硬貨
DR 硬貨進行方向の矢印
G 長辺,長辺長
H 短辺,短辺長
OSC 発振器
S1 材質センサ
S2 外径センサ
S31,S31’,S31−1 板厚センサ
φ1 磁束
φL 漏洩磁束
Claims (3)
- 発振器を電源とする複数のセンサを硬貨通路に沿って配置し、該硬貨通路上の硬貨の通過に伴って前記の各センサより得られる信号波形から当該硬貨の真偽を判定する硬貨識別装置であって、
前記センサの少なくとも1つが、前記硬貨通路を挟みつつ、該硬貨通路の両側面間の中央を通る平面(以下通路中央面という)に対し、少なくとも該通路中央面の近傍では、面対称の構造を持つて対となる鉄心を備え、
この対の鉄心の各々は、前記通路中央面側を向き、該通路中央面に平行で、ほぼ所定長の短辺と長辺からなる長方形状の磁極面を端面とし、前記通路中央面に垂直に反通路中央面側へ延びる角柱状のほぼ同形状の2つの磁極鉄心を持ち、
この2つの磁極鉄心は、その反通路中央面側の端部が連結鉄心によって相互に結合されると共に、その前記磁極面の端面同士がほぼ同一平面に含まれ、該端面の前記長方形の長辺が硬貨の進行方向と直交し、且つこの長辺同士が所定の隙間を置いて平行となるように並ぶと共に、この2つの磁極鉄心の磁極面が互いに異極性となり、且つ前記硬貨通路を挟み対向する対の磁極面間では同極性となるように前記発振器を電源とするコイルによって付勢され、
この際、前記連結鉄心に結合された前記2つの磁極鉄心をそれぞれ通る磁束のうち、この2つの磁極鉄心を含む磁路を環流する主磁束以外の漏洩磁束の少なくとも前記硬貨通路を構成する空間内での大きさが前記主磁束の大きさに対して無視できるように構成されてなることを特徴とする硬貨識別装置。 - 請求項1に記載の硬貨識別装置において、
前記長方形の長辺の長さが該長方形の短辺の長さの4ないし6倍であることを特徴とする硬貨識別装置。 - 請求項1または2に記載の硬貨識別装置において、
前記長方形の短辺の長さが3mm以下であることを特徴とする硬貨識別装置。
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