JP3891053B2 - ポリアニリンを含む皮膜を表面に備える金属基材 - Google Patents

ポリアニリンを含む皮膜を表面に備える金属基材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、チューブおよびフィン等を有する熱交換器の伝熱面などの金属基材の表面にポリアニリンを含む皮膜を形成したものに関し、例えば、カーエアコンやエアコン等の熱交換器のように、臭気物質の分解脱臭機能や有害微生物の殺菌機能を有する熱交換器等に適用される。
【0002】
【従来の技術】
一般に、熱交換器に形成される皮膜には、においや汚れの成分となる物質に対して、付着を防止する皮膜材料が用いられている。しかし、熱交換器のチューブやフィン等の表面形状が複雑な金属基材には、官能基を有し極性の高い物質は付着しやすく、一度付着しだすと防止するのは難しい。よって、初期の状態から付着した物質を分解できる機能が必要である。
【0003】
例えば、従来の熱交換器に脱臭殺菌性能を付与したものとして、特開平8−296992号公報や特開平12−24512号公報に記載のように、熱交換器のアルミフィン表面に光触媒(二酸化チタンの膜)を塗布したものが提案されている。
【0004】
また、特に熱交換器には限定しないが、従来、皮膜(高分子膜)成分に殺菌剤としての銀類を添加して、付着した微生物を殺菌することにより、これらによる臭気の発生を防止しようというものがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来公報に記載のものにおいては、光触媒用のランプ(紫外線を照射するランプ等)の増設が必要であり、コスト増やランプの耐久性、特にカーエアコンの場合には振動に対する耐久性が問題である。さらに、送風機からのほこり等がランプに付着して照射強度が低下する恐れもある。
【0006】
また、上記従来公報では、二酸化チタンを光触媒としてアルミ表面へ成膜しているため、剥がれが生じやすく耐久性が低いといったことから、熱交換器の基本性能や生産性を維持することが困難である。特に、二酸化チタン等の無機物が温調機の風により飛散すると埃臭を招く恐れがある。
【0007】
そのため、二酸化チタンの代わりに、従来通り高分子膜を成膜して、その高分子膜に殺菌剤(上記銀類等)等を添加することが考えられるが、殺菌剤の溶出などに伴い、能力や耐久性に問題が生じる。
【0008】
このようなことから、本発明者等は、活性酸素発生機能を有し、活性酸素によって脱臭や殺菌を行うことのできる高分子皮膜として、ポリアニリン膜(特開平9−175801号公報参照)に着目した。ポリアニリン膜は、通常の殺菌剤よりも多種の臭気物質に対して分解機能を有する活性酸素(スーパーオキシド)を発生する能力が高い。
【0009】
例えば、水などの電解質成分が存在する環境において、ポリアニリンをポリアニリンよりも卑(酸化還元電位が負側)である金属と接触させることで、ポリアニリンは金属から電子を奪取し、活性酸素を発生させる。このようなことから、卑な金属は酸化する(錆びる)ことになる。
【0010】
特に、ポリアニリン膜にピンホールが発生した場合などには、下地の金属基材が水分にさらされ、その部分の下地にて局所的に酸化が進行する。このような局所的な酸化(腐食)は、基材全体が均一に酸化していく場合に比べて進行が早い。そのため、金属基材の耐用年数よりも早い時期に基材が部分的に腐食する、すなわち孔食が発生し、基材に孔が空いてしまうことになる。
【0011】
例えば、金属基材として熱交換器を用いた場合、なかでも、内部に熱交換流体が循環するチューブとこのチューブに取り付けられたフィンを有する蒸発器を用いた場合には、孔食によって生じた孔から熱交換流体(冷媒)が漏洩するという問題を招く。
【0012】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、ポリアニリンを含む皮膜を表面に備える金属基材において、下地である金属基材の孔食を抑制することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、ポリアニリンを含む皮膜(20)を表面に備える金属基材において、皮膜の下地が2層以上の金属材料からなる金属層(11、12)からなり、金属層は下層にいくにしたがい貴な金属材料で構成されていることを特徴とする。
【0014】
それによれば、下地である金属層のうちポリアニリンを含む皮膜に近い層が遠い層よりも卑な金属材料からなる。すると皮膜の下地に局所的に腐食が生じても、この卑な層が犠牲的に腐食して、この犠牲的な腐食が続いている間はそれよりも下の層は腐食しない。そのため、皮膜の下地全体としては孔食の進行を抑えることができる。
【0015】
よって、本発明によれば、ポリアニリンを含む皮膜を表面に備える金属基材において、金属基材の孔食を抑制することができる。
また、請求項1に記載の発明では、皮膜(20)は、ポリアニリンおよび/またはその誘導体からなり、このポリアニリンおよび/またはその誘導体に対して第1アミノ基、第2アミノ基、第3アミノ基、アンモニウム基、硝酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、および水酸基からなる群から選ばれる少なくとも一種類の親水性官能基が付与されたものからなることを特徴とする。 それによれば、ポリアニリンを含む皮膜が親水性となるため、皮膜全体が水を通しやすくなる。一般にピンホールの全くない皮膜は実現が難しく、皮膜にピンホールが存在した場合、ピンホールから局所的に水分が侵入する。このとき、皮膜が非親水性(疎水性)であると、水分の侵入は実質的にピンホールのみとなり、下地において局所的な腐食すなわち孔食が発生しやすくなる。
しかし、本発明では、ピンホールだけでなく皮膜全体から水分が侵入することから、皮膜全体において下地の金属層からの電子の奪取が行われる。そのため、より孔食が発生しにくい構成にできると考えられる。実際に、本発明では、疎水性の皮膜に比べて、皮膜にピンホールなどの孔が存在しても孔食を抑制できることが確認されている。
【0016】
ここで、請求項2に記載の発明のように、金属層における最上層(12)は亜鉛を含む金属材料からなり、この最上層の下側の層(11)はアルミ合金からなるものにできる。アルミ合金は亜鉛よりも貴な金属材料であり、それにより上記請求項1に記載の金属層構成を適切に実現することができる。
【0017】
より具体的には、請求項3に記載の発明のように、最上層(12)が亜鉛を1%以上含む金属材料からなり、アルミ合金がAl−Mn系合金であるものにできる。さらに、最上層としては、請求項4に記載の発明のように、亜鉛以外の残部がAlとそれ以外の不純物を含んでなるアルミ合金からなるものにできる。
【0018】
また、請求項5に記載の発明のように、皮膜(20)と金属層(11、12)との間に層間膜(30)が介在しているものであっても良い。
【0019】
ここで、請求項6に記載の発明のように、層間膜(30)は電気的絶縁性を有する絶縁膜を採用することができる。それによれば、層間膜が障壁となって、下地の金属層からポリアニリンを含む皮膜へ電子が流れるのを抑制することができる。つまり、金属層の酸化防止のためには好ましい。
【0020】
また、請求項7に記載の発明のように、層間膜(30)としては、金属層の表面に対してリン酸亜鉛処理、リン酸チタン処理、クロメート処理、モリブデン酸系処理、塩化セレン系処理、およびシラン化合物処理のうち少なくとも1種類の処理を施すことにより生成された膜を採用することができる。
【0021】
それによれば、上記酸化防止作用を発揮する層間膜を適切に実現できるとともに、これらの層間膜はその表面が粗いものにできるため、皮膜の密着性を高めることができ、好ましい。
【0025】
また、請求項に記載の発明では、金属層(11、12)は下層にいくにしたがい膜厚が厚いものであることを特徴とする。
【0026】
それによれば、金属層の上層が先に犠牲的に腐食するが、その後下層の腐食が発生しても下層はより厚くなっているので孔が空きにくくなり、好ましい。
【0027】
ここで、請求項に記載の発明のように、金属層(11、12)としては、金属を成形加工してなる熱交換器の伝熱面にすることができる。つまり、金属基材として熱交換器を適用することができる。
【0028】
さらには、請求項10に記載の発明のように、そのような熱交換器としては蒸発器を用いることができ、その伝熱面は、内部に熱交換流体が循環するチューブとこのチューブに取り付けられたフィンであるものにできる。
【0029】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。図1は本発明の実施形態に係る金属基材の要部を示す概略断面構成図である。
【0031】
この金属基材10は、例えば金属を成形加工してなる熱交換器の伝熱面にすることができる。特に、熱交換器として、内部にフロンなどの熱交換流体が循環するチューブとこのチューブにろう付けなどにより取り付けられたフィンを有するチューブ−フィン型の蒸発器を採用することができる。その場合、伝熱面は、上記チューブやフィンの表面である。
【0032】
金属基材10は、その表面にポリアニリンを含む皮膜20を備える。ここで、この皮膜20の下地は、2層以上の金属材料からなる金属層11、12からなり、この金属層11、12は下層にいくにしたがい貴な金属材料で構成されている。つまり、下地である金属層11、12のうち皮膜20に近い上層12が遠い下層11よりも卑な金属材料からなる。
【0033】
図示例では、金属層は二つの層11と12からなる。例えば、金属層における最上層としての上層12が亜鉛を含む金属材料からなり、この上層12の下側の下層11が亜鉛よりも貴な金属材料であるアルミ合金からなる。
【0034】
より具体的には、上層12が亜鉛を1%以上含む金属材料からなり、下層11を構成するアルミ合金をAl−Mn系合金にすることができる。下層11であるAl−Mn系合金に対して、上層12が亜鉛を1%以上含むものであれば、上層12と下層11とで卑、貴の差が生じ、後述する犠牲的腐食の効果が得られる。
【0035】
ここで、上層12を構成する亜鉛を1%以上含む金属材料としては、亜鉛そのものでも良いし、あるいは亜鉛以外の残部がAlとそれ以外の不純物を含んでなるアルミ合金からなるものでも良い。
【0036】
このような複数層からなる金属層11、12の形成方法としては、下層11の上に、下層11を構成する金属よりも卑な金属材料をめっきすることにより形成したり、または、異なる2種類の金属材料が積層されたクラッド材を用いることで実現可能である。
【0037】
また、金属層11、12においては、下層にいくにしたがい、すなわち皮膜20から離れた層になるほど、その膜厚が厚いものであることが好ましい。
【0038】
一方、皮膜20は、ポリアニリン、またはポリアニリン誘導体、またはポリアニリンとポリアニリン誘導体との混合物からなるポリアニリン膜である。
【0039】
特に、このポリアニリン膜においては、ポリアニリンおよび/またはその誘導体に対して第1アミノ基、第2アミノ基、第3アミノ基、アンモニウム基、硝酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、および水酸基からなる群(以下、親水性官能基群という)から選ばれる少なくとも一種類の親水性官能基が付与されたものであることが好ましい。それによれば、皮膜20が親水性となり、皮膜20全体が水を通しやすくなる。
【0040】
これらの親水性官能基は、ポリアニリン膜を構成するポリアニリンやポリアニリン誘導体に化学的に結合したものでも良いし、ポリアニリン膜中に混合されるバインダ中の含有物として膜中に存在していても良い。
【0041】
バインダは、ポリアニリン膜内においてポリアニリンやその誘導体の間に介在するものであり、このバインダ自体が親水性官能基を有する化合物であっても良いし、バインダ中に親水性官能基を有する化合物が混合されていても良い。
【0042】
例えば、バインダとしては、アミノ基を有するポリアクリルアミド等を用いることができる。また、親水性官能基を有する化合物としては、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、カルボン酸、p−スチレンスルホン酸等を用いることができる。
【0043】
また、ポリアニリンやポリアニリン誘導体としては、限定するものではないが、次の化学式1に示すドープ型のものや化学式2に示す非ドープ型のものを用いることができる。
【0044】
【化1】
Figure 0003891053
【0045】
【化2】
Figure 0003891053
【0046】
ここで、上記化学式1および化学式2において、Aは陰イオンを表し、nは2以上5000以下の範囲の整数を表し、xとyは、x+y=1および0≦y≦0.5を同時に満たす数である。
【0047】
ドープ型は、ポリアニリンやポリアニリン誘導体に静電相互作用にて付着したドーパント(上記化学式1,2中の陰イオンA)を有するものであり、通常、非ドープ型よりも、活性酸素の発生能力や親水性に優れる。
【0048】
このような皮膜20としてのポリアニリン膜の金属層11、12上への成膜は次のようにして行うことができる。上記親水性官能基群から選ばれた親水性官能基を有するアニリンを用意し、これを重合反応させて、親水性官能基を有するポリアニリンを得る。このポリアニリンを溶剤に溶かしたものを、金属基材10の表面に塗布し、乾燥させる(第1の成膜方法)。
【0049】
また、本実施形態の皮膜20としてのポリアニリン膜は、上記親水性官能基群群から選ばれた親水性官能基が付与された添加物とポリアニリンとを混合した溶液を、金属基材10の表面に塗布し、乾燥させることにより成膜することができる(第2の成膜方法)。
【0050】
この第2の成膜方法における添加物としては、上述したようなアミノ基を有するポリアクリルアミド等のバインダや、親水性官能基を有する化合物(p−スチレンスルホン酸等)や、親水性官能基を有する化合物が混合されたバインダを用いることができる。
【0051】
また、上記第1および第2の成膜方法では、ポリアニリン膜の成膜と同時に親水性官能基の付与すなわちポリアニリン膜の親水化を行っていたが、ポリアニリンを用いて金属基材10の表面にポリアニリン膜を成膜する工程の後に、ポリアニリン膜を親水化する工程を行う方法(第3の成膜方法)であっても良い。
【0052】
ポリアニリン膜を親水化する方法としては、オゾン暴露、プラズマ暴露、熱処理、紫外線照射、溶液浸漬から選ばれる少なくとも一種類を採用することができる。また、ポリアニリン膜が成膜されたチューブおよびフィンをプロトン酸水溶液に浸漬させることによっても、親水化は行える。
【0053】
このようなポリアニリン膜が皮膜20として形成された金属基材10として、上記チューブ−フィン型の蒸発器10を用いた例について、その作動を述べる。水蒸気を含んだ空気が蒸発器10を通過する際、蒸発器10と空気とが接触すると空気の露点が下がり、空気中の水蒸気が水滴となって、蒸発器10のチューブやフィンの表面(つまりポリアニリン膜の表面)に凝縮水として付着する。
【0054】
この凝縮水とポリアニリン膜とが接触すると、ポリアニリンが凝縮水中の酸素を還元し、活性酸素となる。そして、この活性酸素が凝縮水中の臭気物質や微生物、細菌などの物質を分解する。その結果、蒸発器10を通過した空気は、脱臭・殺菌されたクリーンな空気となる。
【0055】
ところで、本実施形態の金属基材10においては、下地である金属層11、12のうち皮膜20に近い上層12が遠い下層11よりも卑な金属材料からなる。すると皮膜20の下地に局所的に腐食が生じても、比較的卑な上層12が犠牲的に腐食して、この犠牲的な腐食が続いている間すなわち上層12が残っている間はそれよりも下の下層11は腐食しない。
【0056】
そのため、皮膜20の下地全体としては孔食の進行を抑えることができる。よって、本実施形態によれば、ポリアニリンを含む皮膜20を表面に備える金属基材10において、該金属基材10の孔食を抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態の好ましい形態では、皮膜20を、ポリアニリンおよび/またはその誘導体からなり、このポリアニリンおよび/またはその誘導体に対して上記親水性官能基群から選ばれる少なくとも一種類の親水性官能基が付与されたものとしている。それにより、皮膜20を親水性とし、皮膜20全体にて水を通しやすくしている。
【0058】
一般にピンホールの全くない皮膜20を成膜することは難しい。皮膜20にピンホールが存在した場合、ピンホールから局所的に水分が侵入する。このとき、皮膜20が非親水性つまり疎水性であると、水分の侵入は実質的にピンホールのみとなり、下地において局所的な腐食すなわち孔食が発生しやすくなる。
【0059】
しかし、上記好ましい親水性の皮膜20の採用により、皮膜20全体から水分が侵入するため、皮膜20全体において下地の金属層からの電子の奪取が行われる。下地の金属層11、12では上層12の犠牲腐食が終了するまで下層11は実質的に腐食しないが、当該犠牲腐食が終了すると今度は、下層11の腐食が開始する。
【0060】
そのとき、水分の侵入がピンホールのみであると、下層11の孔食が発生しやすくなる。その点、親水性の皮膜20とすることで下層11の腐食の集中を防ぐことができ、より孔食が発生しにくくできると考えられることから、疎水性の皮膜20に比べて、皮膜20にピンホールが存在しても、孔食を抑制しやすくできる。
【0061】
また、上述したように、金属層11、12は下層にいくにしたがい膜厚が厚いものであることが好ましい。図示例では上層12よりも下層11の方が膜厚が厚くなることが好ましい。これは、金属層の上層12が先に犠牲的に腐食するが、その後下層11の腐食が発生しても下層11はより厚くなっているので孔が空きにくくなるためである。
【0062】
また、本実施形態の変形例として、図2(a)、(b)、(c)に示すように、皮膜20と金属層11、12との間に層間膜30が介在しているものであっても良い。この層間膜30としては、スパッタや蒸着などにて形成される電気的絶縁性を有する絶縁膜や、層間膜30の下地となる金属層の上層12よりも貴であって下層11よりも卑な金属膜などを採用できる。
【0063】
図2中、(a)は層間膜30が絶縁膜31である場合、(b)は層間膜30が金属膜32である場合、(c)は層間膜30が下から順に金属膜32、絶縁膜31の積層膜からなる場合を示している。
【0064】
それによれば、層間膜30が絶縁膜31の場合、この絶縁膜31が障壁となって、下地の金属層11、12からポリアニリンを含む皮膜20へ電子が流れるのを抑制することができる。つまり、金属層11、12の酸化防止のためには好ましい。
【0065】
また、このような層間膜30に用いる絶縁膜31としては、金属層の表面すなわち本例では上層12に対してリン酸亜鉛処理、リン酸チタン処理、クロメート処理、モリブデン酸系処理、塩化セレン系処理、およびシラン化合物処理のうち少なくとも1種類の処理を施すことにより生成された膜を採用することができる。
【0066】
それによれば、上記酸化防止作用を発揮する層間膜30としての絶縁膜31を適切に実現できるとともに、この絶縁膜31はその表面が粗いものにできるため、その上の皮膜20の密着性を高めることができ、好ましい。
【0067】
また、層間膜として、特に金属層の上層12よりも貴であって下層11よりも卑な金属膜32を用いた場合、下層11よりも比較的貴である金属膜32が錆びにくいため、錆び防止の効果がある。
【0068】
また、基材10の金属層が3層以上であっても良い。例えば3層の場合、最上層が、亜鉛とその残部のAl合金とからなる金属材料からなり、その下の層が、亜鉛とその残部のAl合金とからなり且つ該最上層よりも亜鉛の量が少ない金属材料からなり、最下層がアルミ合金からなるものにできる。
【0069】
それによって、3層からなる金属層は下層にいくにしたがい貴な金属材料で構成されたものになる。この場合も、皮膜20に近い層から順に卑、貴の差によって犠牲的な腐食が生じるため、金属基材10の孔食を抑制することができる。
【0070】
次に、本実施形態を以下に示す各実施例を参照してより具体的に説明する。なお、本実施形態はこれら実施例に限定されるものではない。
【0071】
【実施例】
(実施例1)
本実施例は、上記金属基材10と上記皮膜20との間に上記層間膜30としての絶縁膜31を介在させた具体例を示すものである。
【0072】
本例では、蒸発器のチューブなどに用いられるAl−Mn系合金からなるアルミニウム含有金属材の表面に、それよりも卑な亜鉛の層をめっきにより積層した試験片を用いた。この試験片において、Al−Mn系合金からなる下層11と亜鉛からなる上層12とからなる金属層が形成される。この試験片の形状は、30mm×70mmの四角形片とした。
【0073】
この試験片について、まず、洗浄処理を行った。洗浄処理は、試験片の表面をアルカリ洗浄することで行った。洗浄に用いるアルカリ溶液は、15重量%のNa2SiO3と、59重量%のノニオン界面活性剤と、1重量%のカチオン界面活性剤とを含有する溶液を、さらに水で希釈した4%希釈液であった。この洗浄液で試験片を洗浄処理した後、流水にて水洗した。
【0074】
次に、層間膜形成のために、リン酸チタン処理を行う。水洗された試験片を0.3%硝酸水溶液に30秒間浸し、水洗して酸を除去した後、試験片の表面(つめり、本例ではめっきされた亜鉛層の表面)を化成処理することにより層間膜としてのリン酸チタン皮膜を形成する。
【0075】
これを液きり、乾燥した後、皮膜としてのポリアニリン膜の成膜を行った。成膜に用いる溶剤の一例としては、1−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略す)を用い、これに可溶なポリアニリンを2重量%溶解させた。この溶液中に上記試験片を浸漬させた後、液きり、乾燥を実施し、ポリアニリン膜を形成した。
【0076】
乾燥は、乾燥炉中で行い、乾燥温度140℃、乾燥時間15分で行った。成膜されたポリアニリン膜の乾燥状態が不十分であると、膜剥がれを生じる恐れがある。すると、硝酸によってチューブとフィンが腐食する恐れがある。本例では、上記乾燥条件にて十分に乾燥を行った。
【0077】
このようにして、下層がAl−Mn系合金層であって上層が亜鉛からなる金属層、層間膜としてのリン酸チタン皮膜、ポリアニリン膜が順次積層された試験片、すなわち本例の金属基材を作成した。一方、比較例として、上記アルミ含有金属材の表面に直接、電解重合法にてポリアニリン膜を成膜した試験片を作成した。
【0078】
本実施例および比較例の試験片について、錆び測定試験としての塩水噴霧試験を行った。この試験はJISZ2371に基づくもので、次のような条件で行った。塩水の濃度(%):5±0.5、塩水の比重(at35℃):1.0259〜1.0329、塩水のpH:6.5〜7.2(at35℃)。
【0079】
また、塩水噴霧試験機の運転条件については、噴霧量(m1/h):1〜2、噴霧圧力(MPa)0.098±0.010、温度(℃)は試験層の温度として35±2とした。
【0080】
本実施例および比較例の試験片について、上記塩水噴霧試験を行った後、目視にて観察した。その結果、アルミ含有金属材表面に亜鉛層、リン酸チタン皮膜を形成した本実施例の試験片では、試験片の広い範囲で色が紫から青、黄色に変色しており、ポリアニリンが基材の広い箇所から電子を奪い還元されていることがわかった。
【0081】
一方、アルミ含有金属材表面に亜鉛層、リン酸チタン皮膜を形成しなかった比較例の試験片では、明らかに孔の発生が確認された。これは、亜鉛が塗布された本実施例は、亜鉛層全体が犠牲となり酸化されているのに対し、アルミ含有金属材のみの比較例では、始めに犠牲になった箇所から集中的に腐食していると考えられるためである。
【0082】
この現象について、図3、図4を参照して具体的に説明する。図3は比較例の試験片の厚さ方向に沿った概略断面を示し、図4は本実施例の試験片の厚さ方向に沿った概略断面を示す。比較例の場合、塩水噴霧試験前の断面構成は図3(a)に示すように、アルミ含有金属材11の外側に皮膜20が形成されている。
【0083】
一方、本実施例の場合、塩水噴霧試験前の断面構成は図4(a)に示すように、金属層の下層となるアルミ含有金属材11の外側に上層となる亜鉛層12、その外側に層間膜となるリン酸チタン皮膜31、最表面に皮膜としてのポリアニリン膜20が形成されている。
【0084】
ここで、比較例では図3(b)に示すように、ポリアニリン膜20にピンホールなどの孔21が発生すると、ポリアニリン膜20が貴な部分、孔21から露出するアルミ含有金属材11が卑な部分となり、電解質である塩水を介して、図中の矢印に示すような電子(e-)の流れが生じる。
【0085】
そして、図3(c)に示すように、孔21に露出するアルミ含有金属材11の部分が集中して腐食し、深い孔食が起こり易い。このため、比較例の構造を有する金属基材を、蒸発器のチューブ材などに用いた場合は冷媒が漏洩する可能性が高くなる。
【0086】
一方、本実施例では、図4(b)に示すように、ポリアニリン膜20およびリン酸チタン皮膜31にピンホールなどの孔21が発生すると、ポリアニリン膜20が貴な部分、孔21から露出する亜鉛層12が卑な部分となる。
【0087】
そして、図4(c)に示すように、この卑な亜鉛層12が犠牲的に腐食する。そのため亜鉛層12は層面方向に腐食していく。この犠牲的な腐食が続いている間はそれよりも下のアルミ含有金属材11は腐食しない。そのため、皮膜20の下地全体としては孔食の進行を抑えることができ、金属基材の寿命確保に効果がある。
【0088】
(実施例2)
本実施例は、上記皮膜20としてのポリアニリン膜として親水性のものと疎水性のものとを用いた場合の効果の相違について調べたものである。
【0089】
上記実施例1と同様、アルミニウム含有金属材の表面に、亜鉛層をめっきにより積層した、30mm×70mmの四角形の試験片を用い、この試験片の洗浄処理、リン酸チタン処理を行った。これを液きり、乾燥した後、皮膜としてのポリアニリン膜の成膜を行った。
【0090】
成膜に用いる溶剤としてNMPを用い、これに可溶なポリアニリンを2重量%溶解させたポリアニリン溶解液と、このポリアニリン溶解液にさらに親水化剤(共栄社化学社製)を添加したものとの2種類の原料液を作成した。これら2種類の原料液の各々に、リン酸チタン皮膜まで形成された試験片を浸漬させた後、液きり、上記実施例1と同様、140℃、15分で乾燥を実施した。
【0091】
こうして、親水化剤を添加した原料液からは親水性のポリアニリン膜(接触角が40°以下)が形成された試験片が得られ、親水化剤を添加しない原料液からは、比較的疎水性のポリアニリン膜(接触角が約80°)が形成された試験片が得られる。ここで、前者を親水性試験片、後者を疎水性試験片ということとする。
【0092】
そして、これら親水性および疎水性の両試験片に対してアルミ含有金属材11がむき出しになる箇所を作り、これらを純水および5%食塩水に浸漬させた。5%食塩水は純水より導電性の高いもので腐食を促進するものである。具体的には各試験片の端部を切断することで、切断後の試験片の端面にてアルミ含有金属材11がむき出しとなるようにした。
【0093】
その後、親水性および疎水性の各試験片について、上記浸漬を行った後、目視にて観察した。その結果、疎水性試験片では、5%食塩水に浸漬したものについて端面から変色し、そこからポリアニリン膜が電子を奪取している可能性が高いことがわかった。
【0094】
一方、親水性試験片では、純水、5%食塩水の両方の場合において、極端に集中した色の変化がなく、全体的に少し青く変色した。これはポリアニリン膜が親水性であるため試験片全面に水が浸透し、試験片全面よりポリアニリン膜が電子を奪取している可能性が高いためと考えられる。
【0095】
この現象について図5を参照して具体的に説明する。図5において(a)〜(c)は疎水性試験片の厚さ方向に沿った概略断面を示し、(d)および(e)は親水性試験片の厚さ方向に沿った概略断面を示す。
【0096】
図5(a)、(d)に示すように、両試験片ともに金属層の下層となるアルミ含有金属材11の外側に上層となる亜鉛層12、その外側に層間膜となるリン酸チタン皮膜31、最表面に皮膜としてのポリアニリン膜20が形成されており、両端面ではアルミ含有金属材11が露出している。
【0097】
疎水性試験片については、図5(b)に示すように、ポリアニリン膜20が貴な部分、端面に露出するアルミ含有金属材11が卑な部分となり、電解質である水を介して試験片の端面にて金属表面がイオン化し、図中の矢印に示すような電子(e-)の流れが生じる。
【0098】
そして、図5(c)に示すように、上記端面に露出するアルミ含有金属材11の部分が集中して腐食する。このことは、上記端面を皮膜のピンホールとして考えた場合、疎水性のポリアニリン膜20を皮膜として用いた金属基材において次のような現象につながる。
【0099】
疎水性のポリアニリン膜20にピンホールが存在した場合、ピンホールのみから局所的に水分が侵入するが、亜鉛層12が犠牲腐食するため、亜鉛層12が残っている間はアルミ含有金属材11の腐食は実質起こらない。しかし、亜鉛層12が犠牲腐食して無くなると、ピンホールに露出するアルミ含有金属材11にて集中的に腐食が起こり、孔食が発生しやすくなる。
【0100】
このように、疎水性のポリアニリン膜20を皮膜として用いた金属基材においても、もちろん上記した犠牲腐食による孔食抑制効果は発揮されるが、ピンホールが存在した場合に対応して、さらなる改良が望まれる。
【0101】
その点、親水性試験片については、ピンホールに相当する上記端面が存在しても親水性のポリアニリン膜20全体から水分が侵入するため、図5(e)中の矢印に示すように、ポリアニリン膜20全体において下地の金属層11、12からの電子の奪取が行われる。
【0102】
そのため、親水性試験片においては、ポリアニリン膜20にピンホールなどの孔が存在していても、犠牲層である亜鉛層12が犠牲腐食によって無くなったときに下層のアルミ含有金属材11における腐食の集中を防ぐことができ、より孔食を発生しにくくできると考えられる。
【0103】
このように、本実施例における検証によれば、皮膜20に用いるポリアニリン膜としては、皮膜にピンホールなどの孔が存在する場合には、疎水性のものよりも親水性のものの方が金属基材10の孔食防止の観点から好ましいことが確認された。
【0104】
(実施例3)
本実施例では、さらに上記実施例2において作製した親水性試験片、疎水性試験片について活性酸素発生能の測定を行ったものである。この測定に用いた試験片の形状を図6に示す。
【0105】
上記実施例2にて作製した親水性試験片および疎水性試験片について、それぞれ、試験片を10mm×10mmにカットして端面にてアルミ含有金属材11を露出させたものと、試験片を15mm×15mmにカットした後端面をシール材および粘着テープで被覆したものとを作製した。前者を端面露出タイプ、後者を端面被覆タイプということとする。
【0106】
図6では、(a)において端面露出タイプの斜視図を示し、(b)において端面被覆タイプの厚さ方向に沿った断面形状を示す。図6(b)に示すように端面被覆タイプの試験片は、試験片の端面のおよび板面の周辺部を樹脂接着剤からなるシール剤40、粘着テープ42で被覆し、主面において被覆されていない部分の幅Wが10mmになるようにしている。つまり、主面における被覆されていない部分は10mm×10mmの四角形である。
【0107】
この測定は、端面露出タイプの親水性試験片、端面被覆タイプの親水性試験片、端面露出タイプの疎水性試験片、端面被覆タイプの疎水性試験片のそれぞれを純水、5%食塩水に浸して、1時間、3時間、5時間毎にその純水および食塩水を取り出し、取り出されたこれらの水をESRで測定して過酸化水素(H22)発生量を調べるものである。
【0108】
水とポリアニリンとの反応で活性酸素が発生していれば、ESR測定により過酸化水素が検出される。よって、過酸化水素の発生量が多いほど、活性酸素発生能が高いということになる。
【0109】
測定結果を図7、図8に示す。図7は端面露出タイプのものについての結果を示し、(a)は疎水性試験片、(b)は親水性試験片を示す。図8は端面被覆タイプのものについての結果を示し、(a)は疎水性試験片、(b)は親水性試験片を示す。各試験片の測定はn=2で行った。
【0110】
図7(a)に示す端面露出タイプの疎水性試験片では、過酸化水素発生量すなわち活性酸素発生能は、5%食塩水に浸した場合の方が純水に浸した場合に比べて極度に上昇した。
【0111】
上記実施例2でも述べたように、端面露出タイプの疎水性試験片では、端面に露出するアルミ含有金属材11において、集中的にポリアニリンが金属の電子を奪取する。そして、純水よりも導電性の高い食塩水ではこの集中的な電子の奪取が顕著となる。図7(a)に示す結果は、このことを実証している。
【0112】
一方、図7(b)に示す端面露出タイプの親水性試験片では、活性酸素発生能は、5%食塩水に浸した場合と純水に浸した場合とで、端面露出タイプの疎水性試験片ほどには差が見られなかった。これは、上記実施例2に述べたように、ポリアニリン膜20全体において下地の金属層11、12からの電子の奪取が広く行われるため、電解質の差がさほど顕著とならないためと考えられる。
【0113】
また、図8(a)に示す端面被覆タイプの疎水性試験片、および図8(b)に示す端面被覆タイプの親水性試験片では、活性酸素発生能は食塩水と純水とで差は見られなかった。このことから、ポリアニリン膜すなわち皮膜にピンホールなどの孔が存在しなければ、皮膜が親水性であっても疎水性であっても同等の活性酸素発生能を発揮できることがわかる。
【0114】
以上、本実施例の検証結果からも、皮膜20に用いるポリアニリン膜としては、皮膜にピンホールなどの孔が存在する場合には、疎水性のものよりも親水性のものの方が金属基材10の孔食防止の観点から好ましいことが確認された。
【0115】
(実施例4)
本実施例は、皮膜と金属層との間に介在する層間膜による皮膜の密着性向上効果を検証したものである。
【0116】
本例では、上記実施例1と同様に、アルミニウム含有金属材の表面に、亜鉛層をめっきにより積層した、30mm×70mmの四角形の試験片を用い、この試験片の洗浄処理、リン酸チタン処理を行い、層間膜としてのリン酸チタン皮膜を形成した。
【0117】
これを液きり、乾燥した後、上記実施例1と同様に、NMPに可溶なポリアニリンを2重量%溶解させた溶液中に上記試験片を浸漬させた後、液きり、乾燥を実施し、皮膜としてのポリアニリン膜を形成した。これを「層間膜付きの試験片」ということとする。
【0118】
一方、この層間膜付試験片の製法において、上記リン酸チタン処理を行わない以外は、同様の手順でポリアニリン膜まで形成した試験片を作製した。これを「層間膜無しの試験片」ということとする。
【0119】
そして、これら「層間膜付きの試験片」および「層間膜無しの試験片」について皮膜としてのポリアニリン膜の密着性を評価した。その評価方法を図9に示す。図9(a)に示すように、カッターナイフを用いてポリアニリン膜20の下地が露出するようにポリアニリン膜20に縦横1mm間隔の平行線を引き、碁盤目を形成する。この碁盤目は縦横11本の平行線で区画され、ポリアニリン膜20は1mm×1mmの大きさで100個の単位Uに分断される。
【0120】
そして、図9(b)に示すように、この碁盤目部分を覆うように試験片K上のポリアニリン膜20の表面に粘着テープ21を十分に密着させる。この粘着テープ21のポリアニリン膜20上への密着領域の大きさは、例えば図9中(b)に数値として示すように20mm×24mm程度とする。
【0121】
次に、この粘着テープ21を一気に剥がす。そのとき、テープ21にくっついて一緒に剥がれたポリアニリン膜20の単位Uの個数をカウントする。このカウントされた単位Uの個数が多いほどポリアニリン膜の密着性が悪く、少ないほど密着性が良いことになる。
【0122】
図10は、このような評価方法により「層間膜付きの試験片」および「層間膜無しの試験片」についてポリアニリン膜の密着性を評価した結果を示す図である。n数は4にて行った。図10から、層間膜を介在させた層間膜付きの試験片では、層間膜を介在させない層間膜無しの試験片に比べて大幅にポリアニリン膜の密着性が向上できている。
【0123】
このように、リン酸チタン処理等の化成処理を施して形成された層間膜を皮膜と金属層との間に介在させることで、皮膜は物理的に強固な剥がれにくい膜とすることができる。そして、皮膜が剥がれにくいということは、結果的に下地の金属層の露出を防止し、腐食防止に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る金属基材の要部を示す概略断面図である。
【図2】皮膜と金属層との間に層間膜が介在している例を示す概略断面図である。
【図3】実施例1の比較例の試験片における腐食の様子を示す概略断面図である。
【図4】実施例1の試験片における孔食抑制作用を示す概略断面図である。
【図5】実施例2に用いた各試験片の概略断面図である。
【図6】実施例3に用いた各試験片の構成を示す図である。
【図7】端面露出タイプの試験片における活性酸素発生能の測定結果を示す図である。
【図8】端面被覆タイプの試験片における活性酸素発生能の測定結果を示す図である。
【図9】実施例4におけるポリアニリン膜の密着性評価方法を示す図である。
【図10】上記図9に示す評価方法により密着性を評価した結果を示す図である。
【符号の説明】
11…金属層の下層、12…金属層の上層、20…皮膜、30…層間膜。

Claims (10)

  1. ポリアニリンを含む皮膜(20)を表面に備える金属基材において、
    前記皮膜の下地が2層以上の金属材料からなる金属層(11、12)からなり、
    前記金属層は下層にいくにしたがい貴な金属材料で構成されており、
    前記皮膜(20)は、ポリアニリンおよび/またはその誘導体からなり、このポリアニリンおよび/またはその誘導体に対して第1アミノ基、第2アミノ基、第3アミノ基、アンモニウム基、硝酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、および水酸基からなる群から選ばれる少なくとも一種類の親水性官能基が付与されたものからなることを特徴とする金属基材。
  2. 前記金属層における最上層(12)が亜鉛を含む金属材料からなり、この最上層の下側の層(11)がアルミ合金からなることを特徴とする請求項1に記載の金属基材。
  3. 前記最上層(12)が亜鉛を1%以上含む金属材料からなり、前記アルミ合金がAl−Mn系合金であることを特徴とする請求項2に記載の金属基材。
  4. 前記最上層(12)における亜鉛以外の残部が、Alとそれ以外の不純物を含んでなるアルミ合金からなることを特徴とする請求項3に記載の金属基材。
  5. 前記皮膜(20)と前記金属層(11、12)との間に層間膜(30)が介在していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の金属基材。
  6. 前記層間膜(30)は電気的絶縁性を有する絶縁膜であることを特徴とする請求項5に記載の金属基材。
  7. 前記層間膜(30)は、前記金属層の表面に対してリン酸亜鉛処理、リン酸チタン処理、クロメート処理、モリブデン酸系処理、塩化セレン系処理、およびシラン化合物処理のうち少なくとも1種類の処理を施すことにより生成された膜であることを特徴とする請求項5また6に記載の金属基材。
  8. 前記金属層(11、12)は下層にいくにしたがい膜厚が厚いものであることを特徴とする請求項1ないしのいずれか一つに記載の金属基材。
  9. 前記金属層(11、12)が金属を成形加工してなる熱交換器の伝熱面であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか一つに記載のに記載の金属基材。
  10. 前記熱交換器は蒸発器であり、その伝熱面は、内部に熱交換流体が循環するチューブとこのチューブに取り付けられたフィンであることを特徴とする請求項に記載の金属基材。
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