JP6215990B2 - アルミニウム製フィン材 - Google Patents

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Description

本発明は、熱交換器などに使用されるアルミニウム製フィン材に関する。
熱交換器は、ルームエアコン、パッケージエアコン、冷凍ショーケース、冷蔵庫、オイルクーラ、ラジエータなどの様々な分野の製品に用いられている。熱交換器のフィンの材料としては、熱伝導性、加工性、耐食性などに優れるアルミニウムやアルミニウム合金が一般的である。プレートフィン式やプレートアンドチューブ式の熱交換器は、フィンが狭い間隔で並列した構造を有している。
熱交換器のフィンは、表面温度が露点以下になると結露水が付着した状態になる。フィンの表面の親水性が低い場合には、付着した結露水の接触角が大きくなるため、結露水は半球状の水滴となり高さが大きくなる傾向がある。また、結露水が合わさって大きくなると、隣接するフィン間にブリッジを形成し、フィン間の通風路を閉塞することもある。このような状態では、フィン表面の吸放熱が妨げられたり、通風抵抗が増大したりして、熱交換器の熱交換効率が悪化することが知られている。
従来、このような結露水に起因する問題に対処するために、アルミニウム製フィン材にプレーコートを施し、フィンの表面に親水化皮膜を形成する技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やカリウム塩と、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩と、N−メチロールアクリルアミドとからなる成分に対してポリアクリル酸と、ジルコニウム化合物とを含有する親水性表面処理剤を用いる技術が開示されている。
また、特許文献2には、スルホン酸基またはスルホン酸基誘導体を含有し、かつ、カルボキシル基、カルボキシル基誘導体、水酸基および水酸基誘導体のうちの少なくとも1種を含有する親水性樹脂からなる親水性塗膜が開示されている。そして、親水性樹脂として、アクリル酸/スルホン酸系モノマー共重合体塩、カルボキシル基を有するポリマーとして、ポリアクリル酸が挙げられている(段落0030参照)。
さらに、特許文献3には、アルミニウム板又はアルミニウム合金板の表面に耐食性皮膜層と親水性皮膜層とをこの順に備えるアルミニウム製フィン材が開示されている。そして、親水性皮膜層は、カルボキシル基を有する単量体のみから構成される重合体、カルボキシル基を有する単量体を含む共重合体、又は、それらの混合物を含む樹脂組成物からなるとされている(段落0027参照)。これら重合体や共重合体の例としては、ポリアクリル酸や、アクリル酸とスルホン酸基含有単量体との共重合体が挙げられている(段落0029参照)。
特許第2520308号公報 特開2008−224204号公報 特開2013−190178号公報
特許文献1〜3に開示されるように、親水性皮膜は、ポリアクリル酸をはじめとするアクリル酸系樹脂を用いて形成されることがある。アクリル酸系樹脂は、親水性基を有しており、塗工性も良い材料である。また、アクリル酸系樹脂は、水素結合による相互作用を形成したり、成膜時に焼付けられて脱水縮合による架橋を形成したりするため、皮膜強度や皮膜間の密着性を高める観点からも有用である。
しかしながら、熱交換器のフィンは、アルカリ性溶液に晒されることがある。例えば、空調機の室内機などに備えられる熱交換器は、アルカリ性洗浄液によって洗浄されることが少なくない。このようなアルカリ性溶液は、アクリル酸系樹脂が形成しているエステル結合を加水分解する作用を有している。そのため、親水性皮膜がアルカリ性溶液に繰り返し暴露されると、樹脂が軟化して結露水に溶出し易くなったり、親水性皮膜が吸湿して膨潤し易くなったりしてしまう。さらには、軟化した親水性皮膜が膨潤して皮膜ごと剥離し、フィン間の通風抵抗を増大させたり、親水性皮膜としての機能が失われたりする虞すらある。それ故、親水性皮膜には、アルカリ性溶液に対する耐性が求められている。
一方、熱交換器のフィンは、熱交換器の使用環境中に存在している臭気成分に晒されることもある。例えば、空調機の室内機などに備えられる熱交換器のフィンは、空気中に存在しているイソ吉草酸やn−ヘプタン酸をはじめとする脂肪酸系の臭気成分に暴露され得る。このような臭気成分がフィンに付着して濃縮されると、フィンの表面の親水性が低下したり、周囲に不快臭が発散されたりしまう。そのため、フィン材は、良好な親水性に加え、臭気成分が濃化し難い性質を有していることが望ましい。
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、良好な親水性を備え、アルカリ性溶液に対する耐性を有していながら、臭気成分が濃化し難いアルミニウム製フィン材を提供することを課題とする。
前記課題を解決した本発明に係るアルミニウム製フィン材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基板と、前記基板上に形成された親水性皮膜層と、を備えるアルミニウム製フィン材であって、前記基板と前記親水性皮膜層との間に耐食性皮膜層をさらに備え、前記親水性皮膜層は、アクリル酸系樹脂を含む樹脂組成物からなり、前記親水性皮膜層の皮膜付着量が0.02〜10g/m2 であり、前記耐食性皮膜層は、ポリオレフィン系樹脂およびアクリル系樹脂からなる群より選択される1種以上を含む樹脂組成物からなり、前記耐食性皮膜層の皮膜付着量が0.01〜8.0g/m 2 であり、前記アルミニウム製フィン材は、前記親水性皮膜層の面積1.0m 2 当たり2リットルの体積としたイオン交換水に1時間浸漬させたとき、得られる抽出液のpHが8.0〜10.0であることとした。
このようなアルミニウム製フィン材によると、親水性皮膜層がアクリル酸系樹脂を含んでいるため、良好な親水性を示す皮膜がフィン材の表面に塗工性良く形成される。加えて、成膜時に焼付けなどの処理を行うことにより、皮膜強度や皮膜間の密着性を良好にすることができる。また、親水性皮膜層の皮膜付着量が適切な範囲にあるので、親水性皮膜層の機能が有意に発現する一方、成膜性やフィンの熱交換効率も良好なものとなる。また、基板と親水性皮膜層との間に耐食性皮膜層を備えているため、基板の腐食が防止されてフィンの耐食性が一層良好になる。また、基板と親水性皮膜層との密着性が高くなり、親水性皮膜層の機能がより持続的になる。さらには、耐食性皮膜層の皮膜付着量が適切な範囲にあるので、耐食性皮膜層の機能が有意に発現する一方、成膜性やフィンの熱交換効率や外側の親水性皮膜層の性能も良好なものとなる。さらに、アルミニウム製フィン材は、イオン交換水に浸漬させて得られる抽出液のpHが弱アルカリ性域である。すなわち、親水性皮膜層は、これと同等の弱アルカリ性を示す樹脂によって形成されている。それ故、アクリル酸系樹脂は、脱プロトン化して生じたアニオン性基同士で反発を生じ、エステル結合などの架橋が形成され難くなるなどして、分子間の結合力が予め弱められる。つまり、アクリル酸系樹脂は、敢えて、緩やかに溶出できる状態とされる。その結果、アルカリ性溶液への暴露によって加水分解が進行したとしても、樹脂が均一性良く緩やかに溶出することが可能になり、親水性皮膜層の急激な変質が局所的に進行するのが防止される。そのため、親水性皮膜層は、アルカリ性溶液に対する耐性が備わり、アルカリ洗浄を繰り返し受けても剥離し難くなって、フィンの親水性が持続的になる。一方、抽出液のpHは強アルカリ性域ではないので、親水性皮膜層と臭気成分とは酸塩基反応を生じ難く、臭気成分がフィンの表面に濃化するのも防止される。ひいては、臭気成分の付着に起因する親水性の低下や不快臭の発生が防止される。
本発明に係るアルミニウム製フィン材は、前記抽出液のpHが9.0〜10.0であることが好ましい。
このようなアルミニウム製フィン材によると、イオン交換水に浸漬させて得られる抽出液のpHがやや高く、親水性皮膜層はこれと同等にpHが高いアクリル酸系樹脂によって形成されているため、親水性皮膜層のアルカリ性溶液に対する耐性がより強化される。
本発明に係るアルミニウム製フィン材は、前記親水性皮膜層が、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩およびポリアクリル酸アンモニウムからなる群より選択される1種以上を含む樹脂組成物からなることが好ましい。
このようなアルミニウム製フィン材によると、良好な親水性を発揮させつつ、皮膜強度や皮膜間の密着性についても一層向上させることができる。また、水系の塗料を使用して塗工性良く親水性皮膜を形成することが可能になる。
本発明に係るアルミニウム製フィン材は、前記基板と前記親水性皮膜層との間に化成処理皮膜層をさらに備え、前記化成処理皮膜層は、無機酸化物または有機−無機複合化合物からなることが好ましい。
このようなアルミニウム製フィン材によると、基板と親水性皮膜層との間に化成処理皮膜層を備えているため、基板の腐食が防止されてフィンの耐食性が良好になる。また、基板と親水性皮膜層との密着性が良くなり、親水性皮膜層の機能が持続的になる。
本発明に係るアルミニウム製フィン材は、前記親水性皮膜層の表面に潤滑性皮膜層をさらに備え、前記潤滑性皮膜層は、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩からなる群より選択される1種以上を含む樹脂組成物からなることが好ましい。
このようなアルミニウム製フィン材によると、親水性皮膜層の表面に潤滑性皮膜層を備えているため、フィン材の表面の潤滑性が高められる。それ故、フィン材をフィンに加工するときの成形性が向上する。
本発明に係るアルミニウム製フィン材は、良好な親水性を備え、アルカリ性溶液に対する耐性を有していながら、臭気成分が濃化し難い性能を有する。
本発明に係るアルミニウム製フィン材の一構成例(構成A)を模式的に示す断面図である。 本発明に係るアルミニウム製フィン材の一構成例(構成B)を模式的に示す断面図である。 本発明に係るアルミニウム製フィン材の一構成例(構成C)を模式的に示す断面図である。 本発明に係るアルミニウム製フィン材の一構成例(構成D)を模式的に示す断面図である。 本発明に係るアルミニウム製フィン材の一構成例(構成E)を模式的に示す断面図である。 本発明に係るアルミニウム製フィン材の一構成例(構成F)を模式的に示す断面図である。 本発明に係るアルミニウム製フィン材の一構成例(構成G)を模式的に示す断面図である。 本発明に係るアルミニウム製フィン材の一構成例(構成H)を模式的に示す断面図である。
以下、本発明に係るアルミニウム製フィン材を実施するための形態(実施形態)について適宜図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において共通する構成については同一の符号を付し、重複した説明を省略する。また、以下の説明において「〜」で表記された数値範囲には両端の値が含まれる。
<アルミニウム製フィン材>
本発明に係るアルミニウム製フィン材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基板と、基板上に形成された親水性皮膜層と、を備える。本明細書において、皮膜層につき「〜上に形成された」というとき、当該皮膜層が基板側の表面に接して形成されている状態と、当該皮膜層が他の皮膜層を挟んで基板側の表面に積層されている状態の両方が含まれる。すなわち、本発明に係るアルミニウム製フィン材は、以下のとおり、皮膜層の構成が異なる各種の形態を採ることができる。なお、親水性皮膜層は、図示にかかわらず、基板の片面側のみに形成されていてもよいし、基板の両面側ないし全面に形成されていてもよい。
<アルミニウム製フィン材(構成A)>
図1に示す形態のアルミニウム製フィン材10は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基板2と、基板2の表面に形成された親水性皮膜層3と、を備えている。アルミニウム製フィン材10において、親水性皮膜層3は、外気に接する最外層の皮膜を形成している。以下、図1に示す皮膜層の構成を構成Aという。
(基板)
基板2は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。基板2としては、熱伝導性および加工性に優れることから、JIS H 4000:2014に規定されている1000系のアルミニウムを好適に用いることができる。より具体的には、基板2として合金番号1050、1070、1200のアルミニウムが好ましく用いられる。但し、基板2としては、2000系ないし9000系のアルミニウム合金を用いることも妨げられない。
基板2は、フィン材の用途や仕様などに応じて適宜の厚さとしてよい。熱交換器用のフィン材については、フィンへの加工性、フィンの強度、熱伝導性などを適切に確保する観点から、0.08〜0.3mmの基板を用いることが好ましい。基板2の厚さが0.08mm以上であれば、一般的なフィン材に求められる程度の強度を確保することができる。一方、基板2の厚さが0.3mm以下であれば、フィンに加工するときに各種の加工を施し易いので有利である。
(親水性皮膜層)
親水性皮膜層3は、主として、フィンの親水性を高めるために設けられる。親水性皮膜層3が設けられることによって、フィンの表面に付着する結露水の接触角は小さくなり、熱交換器の熱交換効率が悪化し難くなる。また、親水性が高められることによって、フィンの表面に付着した結露水の流動性も高くなる。そのため、フィンの表面に汚染物質が付着したとしても、結露水によって容易に洗い落とされるようになり、汚染物質の除去性が向上する。
親水性皮膜層3は、アクリル酸系樹脂を含む樹脂組成物からなる。アクリル酸系樹脂が用いられることにより、親水性が良好な親水性皮膜層3が、水系塗料を用いて塗工性良く形成される。また、アクリル酸系樹脂は、水素結合を形成できるし、成膜時に焼き付けられることによって脱水縮合による架橋を形成する。そのため、親水性皮膜層3の皮膜強度や他の皮膜層との密着性が高められる。
アクリル酸系樹脂は、詳細には、アクリル酸のみが重合してなる単独重合体、アクリル酸を単量体として含む共重合体、アクリル酸塩のみが重合してなる単独重合体、アクリル酸塩を単量体として含む共重合体、アクリル酸誘導体のみが重合してなる単独重合体およびアクリル酸誘導体を単量体として含む共重合体からなる群より選択される1種以上の樹脂である。アクリル酸誘導体としては、スルホン酸基、スルホン酸のアルカリ金属塩基、スルホン酸のアンモニウム塩基を有するアミド化置換体、エステル化置換体などが挙げられる。共重合体を構成する単量体は、アクリル酸、アクリル酸塩、アクリル酸誘導体およびこれら以外の他の単量体のうちのいずれであってもよい。他の単量体としては、アクリル酸類と重合可能な反応基を有する単量体であれば特に限定されない。例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、マレイン酸などが挙げられる。
アクリル酸系樹脂は、鎖状であってもよいし、架橋剤を介して架橋されていてもよい。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アジリジン系架橋剤などが挙げられる。また、アクリル酸系樹脂は、成膜時の焼付けなどで起こる脱水縮合により架橋されていてもよい。なお、脱水縮合による架橋は、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイドなどのポリオール類を介して形成されていてもよい。
アクリル酸系樹脂の具体例としては、例えば、日本触媒製「アクアリック(登録商標)GL」、日本触媒製「アクアリック(登録商標)HL」、楠本化成製「ネオクリル(登録商標)A−614」、日本パーカライジング製「バルトップ(登録商標)」、東亜合成製「ジュリマー(登録商標)」、東亜合成製「アロン(登録商標)」、東亜合成製「ATBS(登録商標)」、大成ファインケミカル製「アクリット(登録商標)AKW」、旭化成ファインケム製「VSA−H」などが挙げられる。
アクリル酸系樹脂としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩およびポリアクリル酸アンモニウムからなる群より選択される1種以上がより好ましい。ポリアクリルのアルカリ金属塩としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウムなどが挙げられる。これらの樹脂によると、成膜後に残る親水性基によって良好な親水性を発揮させつつ、高い皮膜強度や密着性をも得ることができる。特に好ましいアクリル酸系樹脂は、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩およびポリアクリル酸アンモニウムからなる群より選択される1種以上である。これらの樹脂によると、特に高い親水性が得られるためである。
親水性皮膜層3は、塗装性、作業性、皮膜の物性などを改善するための各種の水系溶媒や塗料添加物が添加されていてもよい。塗料添加物としては、例えば、水溶性有機溶剤、架橋剤、界面活性剤、表面調整剤、湿潤分散剤、沈降防止剤、酸化防止剤、消泡剤、防錆剤、抗菌剤などが挙げられる。これらの塗料添加物は、1種が単独で添加されていてもよいし、複数種が添加されていてもよい。
親水性皮膜層3の厚さ、すなわち皮膜付着量は、0.02〜10g/m2 であることが好ましい。皮膜付着量が0.02g/m2 以上であれば、良好な親水性が得られる。一方、皮膜付着量が10g/m2 以下であると、成膜性が良く、割れなどの欠陥が低減される。また、皮膜の伝熱抵抗が低く抑えられるので、フィンの熱交換効率が損なわれ難い。皮膜付着量は、親水性を高める観点からは、より好ましくは0.1g/m2 以上、さらに好ましくは0.3g/m2 以上とする。また、成膜性や熱交換効率を良くする観点からは、より好ましくは3.0g/m2 以下、さらに好ましくは2.0g/m2 以下とする。
親水性皮膜層3は、表面における水との接触角が30°未満であることが好ましく、15°未満であることがより好ましく、10°未満であることがさらに好ましい。親水性皮膜層3の表面の親水性が高く接触角が小さいほど、フィンに結露水などの水分が付着したときの通風抵抗が低減されるので、フィンの熱交換効率の低下を避けることができる。一方、親水性皮膜層3の水との接触角は、通常3°以上である。なお、水との接触角は、成膜直後などの清浄な親水性皮膜層3の表面に、約0.5μLの室温(25℃)の純水を滴下した後、3〜5秒程度以内に速やかに接触角計で計測すればよい。また、接触角は、3〜5点の計測から算術平均を採って求めればよい。具体的には、接触角は、樹脂Aや樹脂Bの種類、混合比、pHや、皮膜付着量などを調節することによって小さくすることが可能である。
親水性皮膜層3の皮膜付着量は、親水性皮膜層3の成膜に用いる塗料組成物の濃度や、成膜に用いるバーコーターNo.の選択などによって調整することができる。また、親水性皮膜層3の皮膜付着量は、蛍光X線、赤外膜厚計、皮膜剥離による重量測定などで測定することが可能である。
<アルミニウム製フィン材の他の形態>
本発明に係るアルミニウム製フィン材は、図2〜4に示すように、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基板2と親水性皮膜層3との間に、化成処理皮膜層4や耐食性皮膜層5をさらに備える形態としてもよい。なお、各皮膜層は、図示にかかわらず、基板2の片面側のみに形成されていてもよいし、基板2の両面側ないし全面に形成されていてもよい。
図2に示す形態のアルミニウム製フィン材20は、基板2の表面に化成処理皮膜層4と、親水性皮膜層3と、をこの順に備えている。以下、図2に示す皮膜層の構成を構成Bという。また、図3に示す形態のアルミニウム製フィン材30は、基板2の表面に耐食性皮膜層5と、親水性皮膜層3と、をこの順に備えている。以下、図3に示す皮膜層の構成を構成Cという。また、図4に示す形態のアルミニウム製フィン材40は、基板2の表面に化成処理皮膜層4と、耐食性皮膜層5と、親水性皮膜層3と、をこの順に備えている。以下、図4に示す皮膜層の構成を構成Dという。これらの構成B〜Dにおいて、親水性皮膜層3は、外気に接する最外層を成している。
(化成処理皮膜層4)
化成処理皮膜層4は、無機酸化物または無機−有機複合化合物からなる。化成処理皮膜層4は、主として、基板2の耐食性を高めたり、外側に配される皮膜層の密着性を良くするために設けられる。
無機酸化物としては、主成分としてクロム(Cr)またはジルコニウム(Zr)を含むものが好ましい。このような無機酸化物の具体例としては、リン酸クロメート処理、リン酸ジルコニウム処理、クロム酸クロメート処理、リン酸亜鉛処理、リン酸チタン酸処理などによって形成されるものが挙げられる。但し、無機酸化物の種類は、これらの処理で形成されるものに限定されない。
無機−有機複合化合物としては、例えば、塗布型クロメート処理や、塗布型ジルコニウム処理などによって形成されるものが挙げられる。このような無機−有機複合化合物の具体例としては、例えば、アクリル−ジルコニウム複合体などが挙げられる。
化成処理皮膜層4は、CrやZrなどの金属元素の質量に換算した付着量が1〜100mg/m2 であることが好ましい。付着量が1〜100mg/m2 であれば、良好な耐食性を得ることができる。化成処理皮膜層4の厚さは、フィン材の用途などに応じて適宜の厚さにしてよいが、1〜100nmとすることが好ましい。
化成処理皮膜層4の付着量は、化成処理皮膜層4の成膜に用いる化成処理液の濃度や、成膜処理時間を調節することによって調整することができる。また、化成処理皮膜層4の付着量は、蛍光X線、赤外膜厚計、溶出による重量測定などで測定することが可能である。
(耐食性皮膜層)
耐食性皮膜層5は、主として、基板2の耐食性を高めるために設けられる。耐食性皮膜層5が設けられることによって、結露水などの水分、酸素、塩化物イオンをはじめとするイオン種などが基板2側に浸入し難くなり、基板2の腐食や臭気を発生するアルミ酸化物の生成などが抑制される。
耐食性皮膜層5は、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂およびポリウレタン系樹脂からなる群より選択される1種以上を含む樹脂組成物からなる。これらの樹脂は、水分散性であることが好ましい。アクリル系樹脂としては、アクリル酸系樹脂およびポリアクリル酸エステルのいずれであってもよい。これらの中でも特に好ましい樹脂は、ポリオレフィン系樹脂またはアクリル酸系樹脂である。ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂であると、耐食性皮膜層5が柔軟になるので、割れなどの欠陥が良好に低減される。一方、アクリル酸系樹脂であると、親水性皮膜層3との間で、水素結合や架橋などの相互作用が形成され、皮膜間の密着性がより高くなる。
耐食性皮膜層5の樹脂は、鎖状であってもよいし、架橋剤を介して架橋されていてもよい。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アジリジン系架橋剤などが挙げられる。また、アクリル酸系樹脂は、成膜時の焼付けなどによる脱水縮合で架橋されていてもよい。脱水縮合による架橋は、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイドなどのポリオール類を介して形成されていてもよい。
ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、三井化学製「ケミパール(登録商標)」、東邦化学工業製「ハイテック(登録商標)S3148」などが挙げられる。また、アクリル系樹脂の具体例としては、楠本化成製「ネオクリル(登録商標)A−614」、日本パーカライジング製「バルトップ(登録商標)」、東亜合成製「ジュリマー(登録商標)」、大成ファインケミカル製「アクリット(登録商標)AKW」などが挙げられる。また、ポリエステル系樹脂の具体例としては、東洋紡績製「バイロナール(登録商標)MD−1200」などが挙げられる。また、エポキシ系樹脂の具体例としては、DIC製「エピクロン(登録商標)840」などが挙げられる。また、ウレタン系樹脂の具体例としては、楠本化成製「ネオレッズ(登録商標)R−9660」などが挙げられる。
耐食性皮膜層5は、塗装性、作業性、皮膜の物性などを改善するための各種の水系溶媒や塗料添加物が添加されていてもよい。塗料添加物としては、例えば、水溶性有機溶剤、架橋剤、界面活性剤、表面調整剤、湿潤分散剤、沈降防止剤、酸化防止剤、消泡剤、防錆剤、抗菌剤などが挙げられる。これらの塗料添加物は、1種が単独で添加されていてもよいし、複数種が添加されていてもよい。
耐食性皮膜層5の厚さ、すなわち皮膜付着量は、0.01〜8.0g/m2 であることが好ましい。皮膜付着量が0.01g/m2 以上であれば、良好な耐食性や層同士の密着性がが得られる。一方、皮膜付着量が8.0g/m2 以下であると、成膜性が良く、割れなどの欠陥が低減される。また、皮膜の伝熱抵抗が低く抑えられるので、フィンの熱交換効率が損なわれ難い。皮膜付着量は、耐食性を高める観点からは、より好ましくは0.1g/m2 以上、さらに好ましくは0.5g/m2 以上とする。また、成膜性や熱交換効率を良くする観点からは、より好ましくは5.0g/m2 以下、さらに好ましくは3.0g/m2 以下とする。
耐食性皮膜層5の皮膜付着量は、耐食性皮膜層5の成膜に用いる塗料組成物の濃度や、成膜に用いるバーコーターNo.の選択などによって調整することができる。また、耐食性皮膜層5の皮膜付着量は、蛍光X線、赤外膜厚計、皮膜剥離による重量測定などで測定することが可能である。
<アルミニウム製フィン材の他の形態>
本発明に係るアルミニウム製フィン材は、図5〜8に示すように、親水性皮膜層3の表面に潤滑性皮膜層6をさらに備える形態としてもよい。なお、各皮膜層は、図示にかかわらず、基板2の片面側のみに形成されていてもよいし、基板2の両面側ないし全面に形成されていてもよい。
図5に示す形態のアルミニウム製フィン材50は、基板2の表面に親水性皮膜層3と、潤滑性皮膜層6と、をこの順に備えている。以下、図5に示す皮膜層の構成を構成Eという。また、図6に示す形態のアルミニウム製フィン材60は、基板2の表面に化成処理皮膜層4と、親水性皮膜層3と、潤滑性皮膜層6と、をこの順に備えている。以下、図6に示す皮膜層の構成を構成Fという。また、図7に示す形態のアルミニウム製フィン材70は、基板2の表面に耐食性皮膜層5と、親水性皮膜層3と、潤滑性皮膜層6と、をこの順に備えている。以下、図7に示す皮膜層の構成を構成Gという。また、図8に示す形態のアルミニウム製フィン材80は、基板2の表面に化成処理皮膜層4と、耐食性皮膜層5と、親水性皮膜層3と、潤滑性皮膜層6と、をこの順に備えている。以下、図8に示す皮膜層の構成を構成Hという。これらの構成E〜Hにおいて、潤滑性皮膜層6は、外気に接する最外層を成している。
(潤滑性皮膜層)
潤滑性皮膜層6は、主として、フィン材の表面の潤滑性を高めるために設けられる。潤滑性皮膜層6が設けられることによって、フィン材の表面の摩擦係数が低減され、フィン材をフィンに加工するときのプレス成形性などが向上する。例えば、熱交換器の伝熱管を通す貫通孔を、ドローレス加工によっても不具合無く成形することが可能となる。
潤滑性皮膜層6は、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩からなる群より選択される1種以上を含む樹脂組成物からなる。カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などが挙げられる。これらの樹脂は、ウレタン変性、アルキル変性などの公知の改質が施されていてもよい。これらの中でも特に好ましい樹脂は、ポリエチレングリコールとカルボキシメチルセルロースナトリウムとの混成の樹脂である。ポリエチレングリコールとカルボキシメチルセルロースナトリウムとの質量比は、5:5から9:1の範囲とすることが好ましい。このような組成の樹脂によると、成膜性や潤滑性が一層良好となる。
潤滑性皮膜層6の厚さ、すなわち皮膜付着量は、0.01〜0.8g/m2 であることが好ましい。皮膜付着量が0.01g/m2 以上であれば、良好な潤滑性が得られる。また、皮膜付着量が0.8g/m2 以下であれば、必要十分な潤滑性が得られ、伝熱抵抗も低く抑えられる。皮膜付着量は、潤滑性を高める観点からは、0.02g/m2 以上であることがより好ましい。また、付着量を可及的に低減する観点からは、0.4g/m2 以下とすることがより好ましい。
潤滑性皮膜層6の皮膜付着量は、潤滑性皮膜層6の成膜に用いる塗料組成物の濃度や、成膜に用いるバーコーターNo.の選択などによって調整することができる。また、潤滑性皮膜層6の皮膜付着量は、蛍光X線、赤外膜厚計、皮膜剥離による重量測定などで測定することが可能である。
(アルミニウム製フィン材の抽出液)
以上の構成を有する本発明に係るアルミニウム製フィン材は、親水性皮膜層3をイオン交換水に浸漬させたとき、得られる抽出液のpHが8.0〜10.0の弱アルカリ性域となるように製造される。詳細には、後記するとおり、親水性皮膜層3の成膜に用いる塗料組成物のpHを弱アルカリ性域に調整して親水性皮膜層3を形成する。これによって、抽出液のpHも同等の弱アルカリ性域にすることができる。
本発明に係るアルミニウム製フィン材は、このように親水性皮膜層3の成膜に用いる塗料組成物を予め弱アルカリ性にしておくことにより、アルカリ性溶液に対する耐性が高められたものとなる。詳細には、塗料組成物のpHを弱アルカリ性域に調整しておくことで、脱プロトン化した親水性基同士の間で反発が惹起される。そのため、アクリル酸系樹脂は、脱水縮合による架橋を形成し難くなる。その結果、アクリル酸系樹脂の分子間の結合力がやや弱められ、アルカリ洗浄を受けて以後、樹脂が親水性皮膜層3から均一性良く溶出できるようになる。そのため、アルカリ洗浄を繰り返し受けたとしても、アクリル酸系樹脂の急激な溶出が局所的に進行したり、親水性皮膜層3が吸湿して急激に膨潤したりするのが防止される。ひいては、界面剥離をはじめとする親水性皮膜層3の変質が防止され、親水性をより長期間持続させることが可能となる。
また、本発明に係るアルミニウム製フィン材は、親水性皮膜層3をイオン交換水に浸漬させたときに得られる抽出液のpHを10.0以下に制約することにより、空気中の臭気成分が表面で濃化し難いものとなる。例えば、空調機の室内機の使用環境などには、汗や足の臭気の原因物質として知られるイソ吉草酸、n−吉草酸や、腐敗臭を生じるn−ヘプタン酸、酪酸などをはじめ臭気成分が存在している。こうした酸性物質は、親水性皮膜層3を形成しているアルカリ酸系樹脂のpHが強アルカリ側であると、容易に酸塩基反応を生じて濃化し、不快臭を発散したり、親水性皮膜層3の親水性を低下させたりする。そのため、抽出液のpHを弱いアルカリ性に制約することで、不快臭の発生や、親水性の劣化を防止することが可能となる。
抽出液のpHは、詳細には、親水性皮膜層3が形成されている常温のフィン材を、室温(20℃±5℃)のイオン交換水に浸漬し、静置した後にフィン材を取り出し、得られる抽出液のpHを公知の手法で計測して求めることができる。フィン材の浸漬は、親水性皮膜層3の全体にイオン交換水が浸潤し、安定したpHが計測できる程度の時間を確保して行えばよい。具体的には、親水性皮膜層3の面積1.0m2 当たり2リットルの体積としたイオン交換水にフィン材を1時間浸漬させたとき、得られる抽出液のpHが弱アルカリ性域の範囲内となればよい。なお、イオン交換水としては、25℃における導電率が5×10-5S/m以下であり、室温(20℃±5℃)の水を用いるものとする。pHの計測にあたっては、計測対象のフィン材の容積、枚数などは特に限定されない。なお、pHの計測は、水素電極式、ガラス電極式、半導体式、化学滴定式などの適宜の方式によって行ってよい。
抽出液のpHは、pH8.0〜10.0の範囲内であれば適宜の値とすることが可能である。但し、抽出液のpHは、アルカリ性溶液に対する耐性を高める観点からは、8.5以上とすることがより好ましく、9.0以上とすることがさらに好ましい。また、酸性物質との酸塩基反応が生じるのを確実に避ける観点からは、9.5以下としてもよい。抽出液のpHは、具体的には、親水性皮膜層3の成膜に用いる塗料組成物にアルカリを添加することによって調整することができる。アルカリとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウムなどの水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩など適宜の種類を用いることができる。なお、通常、親水性皮膜層3を形成するアクリル酸系樹脂のpHは、中性域よりも酸性側である。
<アルミニウム製フィン材の製造方法>
次に、アルミニウム製フィン材の製造方法の一例について説明する。前記の実施形態に係るアルミニウム製フィン材は、基板製造工程と、皮膜層形成工程と、を経て製造することができる。
(基板製造工程)
基板製造工程では、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基板2を製造する。例えば、地金を溶解し、溶湯を任意形状に凝固させて、Alなどの化学成分を所定量含有する鋳塊を得る。そして、鋳塊を必要に応じて面削し、熱間圧延や冷間圧延を施すことによって板材を得て基板2とする。なお、基板2を製造するにあたっては、鋳塊に均質化熱処理を施してもよいし、圧延時に中間焼鈍を行ってもよい。また、圧延された板材に、溶体化熱処理、調質などを施してもよい。
(皮膜層形成工程)
皮膜層形成工程では、基板2の表面に皮膜層を形成する。詳細には、基板2の表面に必要に応じて洗浄や脱脂を施した後、清浄な基板2の表面に、親水性皮膜層3などの各皮膜層を成膜する。
親水性皮膜層3は、具体的には、次の手順にしたがって成膜することができる。はじめに、アクリル酸系樹脂を水系溶媒に分散させて塗料組成物を得た後、水酸化ナトリウムなどのアルカリを添加することによって塗料組成物のpHを弱アルカリ性域に調整する。なお、成膜時の焼付けによりアクリル酸系樹脂の官能基が減少し、親水性皮膜層3のpHが目標より僅かに低下することがあるので、塗料組成物のpHは目標の範囲よりもアルカリ寄りにしてもよい。次いで、塗料組成物を、バーコーター、ロールコーターなどの適宜の塗布装置を用いて塗布した後、焼付けを行うことにより成膜する。親水性皮膜層3の塗装焼付け温度は、通常、100〜300℃の範囲で行えばよい。
化成処理皮膜層4は、化成処理液をスプレーなどで塗布したり、化成処理液に基板2を浸漬させたりした後、加熱乾燥させることによって形成することができる。また、耐食性皮膜層5や潤滑性皮膜層6は、各皮膜層用の樹脂を溶媒に分散させて塗料組成物を得た後、その塗料組成物を、バーコーター、ロールコーターなどの適宜の塗布装置を用いて塗布した後、焼付けを行うことにより成膜することができる。耐食性皮膜層5や潤滑性皮膜層6の塗装焼付け温度は、通常、100〜300℃の範囲で行えばよい。
以上の工程を経ることにより、本発明に係るアルミニウム製フィン材を製造することが可能である。親水性皮膜層3の成膜に用いる塗料組成物のpHを予め弱アルカリ性域に調整しておくことにより、製造されたフィン材から得られる抽出液のpHも同等の弱アルカリ性域となる。また、潤滑性皮膜層6の材料は、通常、pHが中性域であるので、潤滑性皮膜層6が最外層を成していても、抽出液のpHは同等の弱アルカリ性域となる。
以上、本発明を実施するための実施形態について説明したが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を示す。
図1〜8に示す構成A〜Hのアルミニウム製フィン材(試験材No.1〜250)をそれぞれ作製した。基板2としては、JIS H 4000:2014に規定されている合金番号1200の規格であって、厚さが0.1mmのアルミニウム板を使用した。
親水性皮膜層3については、基板2の表面または基板2上の皮膜層の表面に、表1に示す親水性皮膜層用樹脂を含む塗料組成物をバーコーターで塗布し、焼き付けることによって形成した。なお、親水性皮膜層用の塗料組成物は、親水性皮膜層用樹脂を含む溶液に水酸化ナトリウムを添加して弱アルカリ性域に調整した後、固形分量が各表に示す付着量となるように塗布した。
化成処理皮膜層4については、基板2の表面に、リン酸クロメート処理またはポリアクリル酸−ジルコニウム塩による塗布型ジルコニウム処理を施して形成した。
耐食性皮膜層5については、基板2の表面または基板2上の皮膜層の表面に、表2に示す耐食性皮膜層用樹脂を含む塗料組成物をバーコーターで塗布し、焼き付けることによって形成した。なお、耐食性皮膜層用の塗料組成物は、固形分量が各表に示す付着量となるように塗布した。
潤滑性皮膜層6については、親水性皮膜層3の表面に、潤滑性皮膜層用樹脂を含む塗料組成物をバーコーターで塗布し、焼き付けることによって形成した。なお、潤滑性皮膜層用の樹脂としては、ポリエチレングリコール(三洋化成製PEG20000)とカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬製セロゲン)とを質量比8:1で混合した樹脂を用いた。また、潤滑性皮膜層用の塗料組成物は、固形分量が各表に示す付着量となるように塗布した。
Figure 0006215990
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次に、作製した各試験材について、イオン交換水に浸漬させたときに得られる抽出液のpHを確認した。具体的には、試験材の親水性皮膜層3の面積1m2 当たり2リットルの体積となるように水槽にイオン交換水を注ぎ、このイオン交換水中に試験材を浸漬させた。なお、イオン交換水の導電率は5×10-5S/m、水温は20℃とした。そして、イオン交換水中で1時間静置させた後、水槽から試験材を取り出し、水槽に残された抽出液のpHを計測した。その結果を表3〜11に示す。
次に、作製した各試験材について、臭気付着性、耐アルカリ性(アルカリ性溶液に対する耐性)、親水性および耐食性のそれぞれを、以下の手順で評価した。なお、親水性については、具体的には、水の接触角と水の濡れ性とを評価した。
(臭気付着性)
面積が0.25dm2 の試験材を、蛇腹形状に折り曲げて試料とした。また、臭気成分としてはイソ吉草酸を準備した。0.01mLの臭気成分を入れたシャーレをデシケータ内の底部に置き、試料を臭気成分に直接触れないようにしてデシケータ内に入れて蓋を閉じた。そして、密閉されたデシケータを恒温恒湿槽に収容し、恒温恒湿槽中で25±2℃に保持して30分間静置した。その後、デシケータ内の試料を取り出し、外気に曝しながら風速1.5〜2.5m/sの空気を1分間あてた後、臭気を官能評価した。官能評価は、パネラ6名が試料の臭気を嗅ぐことにより行った。各パネラには下記の<評価基準1>にしたがって点数付けさせ、6名のうちで最高点と最低点を付けた2名分を除いて、試験材毎に平均点を算出した。そして、下記の<評価基準2>にしたがって臭気付着性を判定した。
<評価基準1>
0点:臭気を感じない
1点:弱く臭気を感じる
2点:楽に臭気を感じるが、強いとは感じない
3点:強く臭気を感じる
4点:とても強く臭気を感じる
<評価基準2>
◎:特に良好 :平均点が1以下
○:良好 :平均点が1点を超え、2点以下
△:不良 :平均点が2点を超え、3点以下
×:著しく不良 :平均点が3点を超える
(耐アルカリ性)
面積が1dm2 の試験材をアルカリ液に15分間浸漬した後、流水で5分間水洗してアルカリ液を除去し、室温で自然乾燥させる操作を1サイクルとし、このサイクルを計15サイクル繰り返した。なお、アルカリ液としては、pHを12.0に調整した1リットルの溶液を用いた。その後、試験材の表面を観察し、皮膜層の塗布面積に対する変質した皮膜の面積率を確認した。そして、下記の<評価基準>にしたがって耐アルカリ性を判定した。
<評価基準>
◎:特に良好 :皮膜の剥がれおよび膨潤の程度が10%未満の面積率
○:良好 :皮膜の剥がれおよび膨潤の程度が10%以上30%未満の面積率
△:不良 :皮膜の剥がれおよび膨潤の程度が30%以上50%未満の面積率
×:著しく不良 :皮膜の剥がれおよび膨潤の程度が50%以上の面積率
(親水性の評価(水の接触角の測定))
試験材を流量0.1L/分の水道水に8時間晒した後、80℃で16時間乾燥させる操作を1サイクルとし、このサイクルを計5サイクル繰り返した。そして、試験材を室温に戻した後、表面に約0.5μLの純水を滴下し、接触角測定器(協和界面科学社製:CA−05型)を用いて接触角を測定した。水の接触角は、各試験材毎に3点を計測し、それらの平均値として求めた。そして、下記の<評価基準>にしたがって水の接触角の程度を判定した。
<評価基準>
◎:特に良好 :接触角が15°未満
○:良好 :接触角が15°以上、30°未満
△:不良 :接触角が30°以上、50°未満
×:著しく不良 :接触角が50°以上
(親水性の評価(水濡れ性の評価))
試験材の表面に霧吹き器によって純水を吹きかけ、表面の水濡れの様子を目視で観察し、皮膜層の塗布面積に対する濡れた皮膜の面積率を確認した。そして、下記の<評価基準>にしたがって水濡れ性を判定した。
<評価基準>
◎:特に良好 :濡れ面積率が90%以上
○:良好 :濡れ面積率が70%、90%未満
△:不良 :濡れ面積率が50%、70%未満
×:著しく不良 :濡れ面積率が50%未満
(耐食性)
試験材について、JIS Z 2371:2000に示された方法で、480時間の塩水噴霧試験を行い、表面の腐食の程度を確認し、規定のレイティングナンバ(Rating Number、以下R.N.と略す)で腐食の程度を評価した。そして、下記の<評価基準>にしたがって耐食性を判定した。
<評価基準>
◎:特に良好 :R.N.9.8以上
○:良好 :R.N.9.5以上、9.8未満
△:やや不良 :R.N.9.3以上、9.5未満
×:著しく不良 :R.N.9.3未満
表3〜11に、作製した各試験材(No.1〜250)の構成、抽出液のpH、各評価結果を示す。
Figure 0006215990
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表3〜11に示すpHは、各試験材をイオン交換水に浸漬させて得た抽出液のpHである。抽出液のpHは、No.1〜250に係る試験材のいずれにおいても、親水性皮膜層用の塗料組成物で調整したpHと同等のpHになることが確認された。
表3〜11に示すように、No.1〜216に係る試験材は、親水性皮膜層3がアクリル酸系樹脂を含む樹脂組成物からなり、親水性皮膜層3の皮膜付着量が適切な範囲にあり、抽出液のpHが適切な弱アルカリ性域の範囲にある。これらの試験材では、化成処理皮膜層4や耐食性皮膜層5の有無にかかわらず、臭気付着性、耐アルカリ性および親水性がいずれも良好となった。また、親水性皮膜層3に加えて、化成処理皮膜層4や耐食性皮膜層5を備えることにより、耐食性も兼ね備えられたフィン材となった。
これに対して、対照のNo.217〜223、No.225〜230、No.232〜239、No.241〜248、No.250に係る試験材では、臭気付着性、耐アルカリ性および親水性のいずれかについて評価が不良であった。
詳細には、No.217〜222、No.227〜230、No.233〜238、No.243〜248に係る試験材は、pHが弱アルカリ性域を逸脱しているため、臭気付着性および耐アルカリ性のいずれかが不良となった。
また、No.223、No.239に係る試験材は、耐食性皮膜層5を備えているものの、耐食性皮膜層5の付着量が少ないため、却って親水性皮膜の機能が不良となった。
一方、No.224、No.240に係る試験材は、耐食性皮膜層5を備えているものの、耐食性皮膜層5の付着量が多いため、成膜性や熱交換効率を良好にする観点からは適していないといえる。
また、No.225、No.241に係る試験材は、親水性皮膜層3の皮膜付着量が0.02g/m2 以上でないため、親水性が不良となった。
一方、No.226、No.242に係る試験材は、親水性皮膜層3の皮膜付着量が10g/m2 以下でないため、成膜性や熱交換効率を良好にする観点からは適していないといえる。
また、No.231、No.249に係る試験材は、親水性皮膜層3が珪酸ソーダによって形成されているため、アクリル酸系樹脂とは異なり、シリカに固有の臭気が生じる虞があるし、親水性皮膜の機能が持続し難い傾向がある。
また、No.232、No.250に係る試験材は、親水性皮膜層3が酢酸ビニル系樹脂によって形成されているため、良好な親水性が付与されなかった。
10 アルミニウム製フィン材
2 基板
3 親水性皮膜層
4 化成処理皮膜層4
5 耐食性皮膜層
6 潤滑性皮膜層

Claims (5)

  1. アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基板と、前記基板上に形成された親水性皮膜層と、を備えるアルミニウム製フィン材であって、
    前記基板と前記親水性皮膜層との間に耐食性皮膜層をさらに備え、
    前記親水性皮膜層は、アクリル酸系樹脂を含む樹脂組成物からなり、
    前記親水性皮膜層の皮膜付着量が0.02〜10g/m2 であり、
    前記耐食性皮膜層は、ポリオレフィン系樹脂およびアクリル系樹脂からなる群より選択される1種以上を含む樹脂組成物からなり、
    前記耐食性皮膜層の皮膜付着量が0.01〜8.0g/m 2 であり、
    前記アルミニウム製フィン材は、前記親水性皮膜層の面積1.0m 2 当たり2リットルの体積としたイオン交換水に1時間浸漬させたとき、得られる抽出液のpHが8.0〜10.0であることを特徴とするアルミニウム製フィン材。
  2. 前記抽出液のpHが9.0〜10.0であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム製フィン材。
  3. 前記親水性皮膜層が、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩およびポリアクリル酸アンモニウムからなる群より選択される1種以上を含む樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアルミニウム製フィン材。
  4. 前記基板と前記親水性皮膜層との間に化成処理皮膜層をさらに備え、
    前記化成処理皮膜層は、無機酸化物または有機−無機複合化合物からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアルミニウム製フィン材。
  5. 前記親水性皮膜層の表面に潤滑性皮膜層をさらに備え、
    前記潤滑性皮膜層は、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩からなる群より選択される1種以上を含む樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載のアルミニウム製フィン材。
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