JP3890969B2 - 暖房便座装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トイレ内の保温・暖房用として用いられる暖房便座装置の熱源として便座後方の本体ケースから便座内部に吹き込む温風を用い便座を暖める暖房便座装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
暖房便座は、トイレ使用者が便座に着座した時にヒヤリ感を与えないようにしたもので、一般家庭に広く普及している。従来の暖房便座構造を図8、図8のE−E’断面図を図9に示す。従来の暖房装置は図8,図9のように、放熱用の金属箔59と該金属箔59に接着された紐状のヒータ56を便座裏側53aに固定し、便座後方に配置された暖房便座装置本体ケース52から電力を供給し、紐状ヒータ56を発熱させ、金属箔59で便座53全面に伝熱している。最近では便器と暖房便座装置の脱着を簡単にできるものがあり、清掃時便器前面だけでなく上面の隅々までお手入れ可能になり、便器と便座間に入り込み悪臭のもとになっていた男性小便時の飛びはねた尿を拭き取り、清潔に保つことができる。更に本体ケースと便座及び便座上に回動自在に取り付けた便蓋も着脱可能に構成しているため、便器だけでなく暖房便座装置本体ケース全面も清掃することができる。
【0003】
しかしながら、従来の暖房便座では、便座53内の紐状ヒータ56と本体ケース52とが電力線54で接続されているため、電力線54の長さの範囲でしか便座53を移動させることができず、浴室等のトイレ外の広い場所で洗うことができない。また、従来便座の一般的な製造方法はポリプロピレン樹脂またはアクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂で成形された便座表面層53bと底板部53cを振動又は超音波溶着で固定しているため、その製法上表面層53bと底板部53cの併せ面53d全てを一体化することができず、トイレ内で便座を水洗いする際、未溶着部から洗浄水が浸水し、万が一紐状ヒータの絶縁部57aに亀裂が生じると漏電する可能性があり、拭き取り掃除しかできない状態であった。
【0004】
便座に付着する汚れは、ほこりや尿だけでなく、局部洗浄装置で局部を洗浄した際に飛散する便も考えられるため、こすって汚れを取ろうとすると、便座表面に傷が付きやすく、その傷部に次の汚れが付着しやすくなるという、悪循環を引き起こす。そのため、こびりついた汚れはなかなか拭き取り掃除では対応できない課題があった。また、表面層と底板とは前述のごとく全面が一体化されていないため、部分的に生じる隙間に入った汚れは除去できず、悪臭を発散するだけでなく、美観を損なうという課題もあった。
【0005】
前記課題を解決するために、図10に示す便座63の後方部の暖房便座装置本体ケース62に温風装置65を配置し、内部が中空構造になっている便座63に向かって吹き出し口66から送風する暖房便座装置が考えられている。この暖房便座装置は便座内にヒータ等の電気部品を内蔵しないため、本体ケースと便座を連結する電力線が不要になり、トイレ以外のどこでも持ち運び、水洗いできる、清掃性の向上した暖房便座装置を提供できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この便座内部に送風して便座を暖める暖房便座装置は、本体ケースから送風された温風が便座内部を流れる際、徐々に便座表面層樹脂材63aと底板樹脂材63bに伝達され、風の移動と共に熱量が低下し、便座後方から送風した温風の熱量は便座の吹き出し口付近でほとんど奪われ、便座先端側に熱を供給することができず、便座全面を均一に昇温できない課題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本体ケースに設けた温風装置から便座内部に送風する際、便座長手方向後端2カ所に設けた吹き出し口から交互に温風を吹き出す構成にし、便座先端側にもそれぞれの吹き出し口から送風する温風の相乗効果で暖めることができる快適な暖房便座装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
本発明においては、上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、空気を送風する送風ファンと、空気を加熱し温風とするためダクト内に配置されたヒータと、前記送風ファンと前記ヒータを収納する本体ケースと、排気口と略長手方向後端2カ所に吸気口を有し前記本体ケースの前方に配置され内部を中空構造にした便座と、前記ダクトと連通して前記吸気口と対向する前記本体ケースの前側面2カ所に開口した吹き出し口と、から構成され、それぞれの吹き出し口から送風される風量は大小異なり且つ交互に切り替わることを特徴とする。
【0009】
ここで言う便座長手方向とは、便座長手方向とは使用者が便座に着座した時に大腿部の向きと平行になる方向を示す。
本体ケース内の送風ファン及びヒータで生成された温風を便座長手方向後端2カ所から同風量の風を便座先端に向かって吹き出すと便座内部で衝突し風の流れが止まるため、吹き出し口付近に熱の対流による異常加熱を起こす。本発明では、吹き出し口から異なる風量で吹き出すため、便座内に風量の大きい方から小さい方への風の流れが発生し、便座長手方向全面を昇温することができる。また、それぞれの吹き出し口から送風される風量の大小関係を交互に切り替えるため、風の流れが一方向だけでなく双方向になり、便座表面層樹脂に伝熱する熱量が左右同条件になる。一般に、便座表面層樹脂に伝熱する熱量は吹き出し口からの距離が遠くなれば小さくなり、便座先端部の加熱量は減少するが、本発明ではそれぞれの吹き出し口から送風される温風の相乗効果により便座先端部も吹き出し口周辺部と略同温に加熱できる。また、本方式では、便座内部にヒータを必要としないので、本体ケースと便座間に電力線などの電線類が無く、便座,便蓋の着脱機構を設ければ、トイレ以外の場所でのお手入れも可能になる。
【0010】
本発明において請求項2記載の発明は、前記2カ所の吸気口の間の略中央部に排気口を設けたことを特徴とする。
【0011】
本発明では、排気口を便座の吸気口の間の略中央部に設けたため、吹き出し口から送風される風量の大きい方からの風は、便座先端側、他側の吹き出し口、便座後方部を経由して排気口から排出され、小さい方からの風は直接吹き出し口から便座後方部を経由して排気口から排出される。風量の大きい方の風は排気口に到達する前に便座にほとんどの熱を奪われ、便座後方部及び排気口周辺を昇温する熱量を保持できないが、風量の小さい方から送風される風は、吹き出し口から排気口までの道程が短く高温状態を持続しているため、排出直前まで便座を昇温でき便座後方部も加熱する。その結果、便座に深く着座する人や身長の高い人に対しても尾てい骨付近が便座に接触する際のヒヤリ感を与えることのない快適な暖房便座装置を提供できる。
【0012】
本発明において請求項3記載の発明は、前記2カ所の吹き出し口から送風される温風は、それぞれの他側の吹き出し口から排気されない風量に設定したことを特徴とする。
【0013】
それぞれの吹き出し口から送風される風量の差が大きくなりすぎると、風量の小さい側から吹き出す風が他側の風に押し戻され、吹き出し口を逆流し本体ケース内のダクトを通過して、送風ファンの吸気口から温風が排気される。前述のように風量の大きな風が便座先端側を通り、排気口に到達するころには、ほとんど熱量を奪われているため、便座後方部を加熱できない。またそれそれの吹き出し口に対し、2個のヒータを設ける場合は、温風を形成した後にそれぞれの吹き出し口へ温風を分配する弁がいらず、吹き出し口直前にヒータを配設でき、ダクト内で放熱するエネルギーロスが少ない利点はあるが、大風量側の温風により小風量側の風が逆流までいかず滞留する場合は、ヒータ内の風の移動が無いため、ヒータの異常発熱が考えられる。その対策として、温度ヒューズをヒータへの電力線の途中に直列接続し、設定温度以上になると断線し、ヒータへの電力供給を強制的に停止したり、ヒータ内に設けた温度検出素子からの温度を検知してヒータへの通電量を制限したりしなければならない。本発明では、常にそれぞれの吹き出し口から便座内部に吹き出す風量で送風するため、ヒータ部が異常温度にならず、吹き出した風を全て便座後端の排気口から排出し、便座全面を加熱することができる。
【0014】
本発明において請求項4記載の発明は、前記2カ所の吹き出し口から送風される熱量が同量となるように、風量の大小を切り替えるタイミングを制御することを特徴とする。
【0015】
吹き出し口から送風される風量を小風量から大風量に切り替える際、最初の切り替え時はヒータが全く暖まっていないため飽和温度までに時間がかかり、大風量から便座内に送風する熱量は所定の量より少なくなり、その分便座左右で温度ムラを生じる。また、2ヵ所の吹き出し口から送風される温風を夫々専用のヒータで暖める場合、一般に送風ファンの風量を増加させるだけでなくヒータの発熱量も増加するように設定する。この時ヒータへの通電量を変えるとヒータの熱容量に応じて所定の温度になるまでの時間遅れを生じるため風量を切り替える際はヒータが飽和温度になるまでの時間を考慮しなければならない。本発明では、風量切替時のヒータの立ち上がり温度状態を見込み、風量の大小関係を切り替えるタイミング特に最初の風量切替時間を遅らせ、それぞれの吹き出し口から便座内部に供給する総熱量を同量に設定しているため、便座左右の表面温度にムラの無い快適な暖房便座装置を提供できる。
【0016】
本発明において請求項5記載の発明は、前記2カ所の吹き出し口から送風される風量差を、吹き出し開始初期から時間が経過すると小さくすることを特徴とする。
【0017】
それぞれの吹き出し口から送風される風量の差を通電時間に応じて、最初は大きくその後に小さくしている。風量差の大きいときは、風量の大きい側の風が便座先端側を通り、他側の吹き出し口を通り、便座後方部を通り排気される流れに支配される。その為、吹き出し口からの通風距離の影響を受け温風の熱量が徐々に減少していくため、吹き出し口から便座先端にかけて加熱し、便座先端から他側の吹き出し口を通り排気口までは加熱量が小さくなるが、それぞれの吹き出し口から送風される風量の大小を切り替えるので、便座後方を除く部分を重点的に昇温できる。その後風量差を小さくすると、それぞれの吹き出し口から吹き出される風が便座先端側で衝突する量が増え、便座先端側に流れる風が減少し、両方から送風される風が便座後方を通り、排気される割合が多くなる。その為、吹き出し口から後方部を加熱するようになる。その結果、通電後まもなく使用者が着座する場合は、着座部の大半を占める便座後方以外の部分を加熱しているため、ヒヤリ感をほとんど与えることがなく、通電後充分時間が経過して着座する場合は、便座後方部も暖まりヒヤリ感の除去だけでなく暖か感も提供できる。
【0018】
本発明において請求項6記載の発明は、前記ダクト内の前記ヒータと前記吹き出し口の間に風路切替ダンパーを配置し、該風路切替ダンパーの開度で前記吹き出し口から送風される風量を制御したことを特徴とする。
【0019】
本発明は、本体ケース内に設けた1組のヒータ及び送風ファンから発生する温風を本体内に設けた風路切替ダンパーによって便座の吸引口を介し、吹き出し口から送風されるため、省スペースで温風回路を構成でき、コンパクトな暖房便座装置を提供できる。またそれぞれの吹き出し口から送風される風量の大小関係を交互に切り替える際、風路切替ダンパーの開度のみで対応できるので、ヒータ及び送風ファンへの通電量を切り替えることなく連続通電でき、ヒータ切替直後のヒータの立ち上がり性向上のため事前に小風量側のヒータに余熱を与えたり、風量を下げる際にヒータ内部の異常温度上昇を避けるため、先にヒータ通電量を制限し、ダクト内の温度低下に伴い送風ファンの風量を小さくするなどの複雑な制御を必要としない。その為温風量切替時のエネルギーロスの少ない昇温特性の良い暖房便座装置を提供できる。
【0020】
本発明において請求項7記載の発明は、前記吸気口から便座内部に向かって通風路を配設し、該通風路は便座表面層及び底板との間に空気層を設けたことを特徴とする。
【0021】
本発明は、便座の吹き出し口周辺部への加熱を抑え、吹き出し口から送風される温風を便座先端側に到達する前に極力便座に触れないよう、温風が上下左右方向に広がるのを規制する通風路を形成し、更に通風口と便座を形成している表面樹脂材及び底板材との間に空気層を設けたため、通風路から吹き出す風は空気層の断熱効果で便座への伝熱がない。また、送風される風速に応じて通風路後方からエジェクター効果により、非加熱状態の空気を巻き込みながら便座先端側に風が移動するため、通風路周辺だけでなく先端側にかけて断熱効果を持続し、一定の熱量を便座の各部位に供給できる。
【0022】
本発明において請求項8記載の発明は、前記通風路出口の送風圧が略零になるように前記排気口の開口面積を設定したことを特徴とする。
【0023】
本発明は、通風路から吹き出される風が滞留することなく便座内部を通り排気されるよう排気口の開口面積を設定してるため、便座内部に圧力が籠もり、熱の滞留による局所加熱を起こすことが無く、安全性を確保した暖房便座装置を提供できる。
【0024】
本発明において請求項9記載の発明は、前記排気口は便座の最下点に配置したことを特徴とする。
【0025】
本発明は、排気口が便座の最下点になるように配設したため、本体ケースから便座を取り外し、水道水を用い水圧で便や尿やほこりなどの汚れを落とす場合に、排気口もしくは通風路から浸入した水を内部に留めておくことなく、最下点に位置する排気口から全て排水でき、菌の繁殖や便座の開閉時の衝撃で残水をトイレ内に撒き散らすことのない清潔性を保てる暖房便座装置を提供できる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例に係る暖房便座装置を説明する。
(実施例1)
図1に第1の実施形態における暖房便座装置の概念図,図2に図1のA部拡大断面図、図3に温風の流れの概念図、図4には第2の実施形態の概念図、図5には温風制御のタイムチャートを示す。また、図6に排気口の位置を示し、図7に便座,便蓋の着脱構造図を示す。
【0027】
暖房便座装置1は、本体ケース2に回動自在に取り付けてある便座3と便座3の上方に同様に本体ケース2に回動自在に取り付けてある便蓋4とで構成されている。本体ケース2と便座3及び本体ケース2と便蓋4は簡単な着脱構造にしているため、取り外しが自在である。着脱構造は便座3、便蓋4が開状態(図7の状態)のとき、便座側ヒンジ部に挿入している取付部材80のひっかかり部80aを図7のC方向に回動させると、本体側の突起部材85のくぼみ部85aの嵌合が解除され、便座3を上方に引き上げると本体ケース2から取り外すことができる。便座3,便座4を同軸で回動させ、共通の軸受け部に前記取付部材を設ければ同時に便座3,便蓋4を取り外すことができる。脱着構造はこの構造に限定することはなく、ハートカム機構を用いワンプッシュで着脱する構造や、ワンタッチで着脱できるカプラーや、クイックフャスナー、スナップフィット等着座時に便座が前後左右方向にがたつかなければ何れを用いても良い。
【0028】
本体ケース2には、トイレ内から空気を吸引口9から吸引して送風する送風ファン5とその下流側に送風ファン5から送られてくる風を加熱するヒータ6、更に下流側には便座3に対向する本体ケース2の前側面に2カ所の吹き出し口7a,7bが配置してあり、吹き出し口とヒータの間にはそれぞれの吹き出し口から送風される風量を調整及び切り替える風路切替ダンパー8を設けている。送風ファン5,ヒータ6は第2の実施形態のように左右それぞれの吹き出し口7a,7bに対応させて2個ずつ設けたり、正逆回転できる送風ファンと2個のヒータ6を配設しても良いが、部品点数の削減、本体ケース2内の有効スペースの確保を考慮すると第1の実施形態のように1セットにした方が望ましい。ヒータ6と吹き出し口7a,7bの間には温風温度を測定する温度検出素子(図示せず)を配設しており、温度検出素子の信号に基づいて便座表面温度を推定し、送風ファン5の回転数及びヒータ6の発熱量を制御する制御部10も本体ケース内に配設している。その他本体ケース内には、便座3の開閉状態を検知する便座開閉検出素子13も構成しており、男性小便時のように着座せず、便座開状態で使用する場合には、ファン風量及びヒータ通電量を減少あるいは停止して、余剰エネルギーを削減するようにあらかじめ制御部10にプログラミングされている。送風ファン5の送風口とヒータ6と温度検出素子及び吹き出し口7はダクト11内に構成されている。また、便座3の後端3aには本体ケース2の吹き出し口7a,7bに対向する位置に温風吸気口15a,15bを配置している。15a,15bから便座内部にむけて温風ダクト16(16a,16b)が配置してあり、温風ダクト16の前後左右には空気層18が存在し、温風ダクト16から送風される温風19の流速によって温風ダクト16の周辺からエジェクター効果により空気20を巻き込み便座先端側に送風するように構成されている。また、それぞれの温風吸引口15a,15bの略中央部に排気口21を配置している。排気口21を便座上面に配置すると、便座内を通過した風が着座中の人体の露出している臀部から腰に当たるため暖かく、更に夏場はヒータ6を非通電にすると涼風があたり快適な暖房便座装置を提供できる。
【0029】
本実施形態では、暖房便座装置に電源が投入され、便座が閉状態にあることを便座開閉検出素子13により検知すると、あらかじめダクト11内に配置している温度検出素子により室温を検知して、便座の表面温度を想定し、使用者が調整した設定温度と便座表面温度との差に応じた熱量を制御部10で演算し、ヒータ6及び送風ファン5への通電量を制御する。前記表面温度と設定温度の差が大きいときにはヒータ6及び送風ファン5への通電量を大きくし、差が小さくなるに連れ通電量を減少するようにプログラムが組まれている。本実施形態では、便座温度を直接測定せず、ダクト11内の温度とトイレ内温度から想定しているため、使用者が連続して着座する場合、先に使用した人の体温によって、吹き出し口7から供給した熱量以上に便座が昇温していることを認識できない場合もある。その際は、使用者の着座時間から便座の昇温状態を想定し、離座した瞬間から一定時間は、ヒータ6及び送風ファン5への通電量を制限もしくは停止し、設定温度を保持できるよう設定している。一方便座開閉検出素子13が開状態を検知した場合、ヒータ6,送風ファン5の通電量を制限あるいは停止するが、この便座開状態のまま使用者が退出した場合、便座3への熱の供給が制限されたままになり、次使用者が着座する際にヒヤリ感を生じる可能性があるため、便座開状態をブザーやLED表示などで報知する報知手段を設け使用者に便座を閉じるように促したり、便座のヒンジ部に電動部材を設け、使用者が退出した際自動的に便座を閉状態にして便座3への送風を再開しても良い。
【0030】
代表的な温風制御方法を図3の概念図、図5のタイムチャートを用い説明する。
電源投入後、送風ファン5,ヒータ6に通電されると同時に風路切替ダンパー8は、吹き出し口7aから送風される風量が吹き出し口7bから吹き出される風量より大きくなるように設定されている。この時の便座内の温風の流れを図3(a)に示す。吹き出し口7aから送風される風は、便座3内の吸引口15a,温風ダクト16aを通り、便座先端3bを通り、他側の温風ダクト16bから送風される温風と衝突し、排気口21から排気される。また、吹き出し口7bから送風される風は便座3内の吸引口15b、温風ダクト16bを通り、温風ダクト16aからの風と衝突し、便座先端側3bには行かず、直接排気口21から排出される。
【0031】
一般に吹き出し口7aから送風される温風は、吹き出し口からの距離に応じて温風通路内に徐々に熱を奪われ減少するため、便座内に吹き出す際、温風ダクト16bの出口周辺である便座3c部の温度が最も高温になる。本実施形態では、この便座3c部への伝熱を極力抑えるように温風ダクト16aから放出する温風が拡散せず便座先端3bに到達するように通路面積を絞り、更に温風ダクト16aから便座3への伝熱と温風の熱量確保を目的に空気層18を温風ダクトの全周に配置している。そのため、温風19からの風速に応じて空気層18からの風20をエジェクター効果により巻き込むので該巻き込んだ風20の断熱効果にり便座先端3bまで熱を保持した状態で温風19が送風される。その結果、温風ダクト16aから送風する温風は、吹き出し口から便座先端にかけて均一に暖めるために寄与し、温風ダクト16bから送風する温風は吹き出し口から排気口にかけて暖める。このように、風量の小さな温風は、温風ダクト出口から排気口までの便座後方部を加熱できるため、風量比率は、図5のように例えば4対1とし、小側にも零ではない風量を送風するのが望ましい。この時排気口21の断面積が小さいと便座3内に送風圧がかかり温風ダクト16aから送風される風が前記送風圧の影響を受け、便座先端3bに流れず出口付近に滞留するので、便座内部が加圧ず大気圧と略同圧になるように充分面積を確保するのが望ましい。
【0032】
次にta時間経過すると、風路切替ダンパー8が切り替わり、吹き出し口7bからの風量が7aからの風量より多くなるように設定する。この風路切替ダンパー8の切替量は、通風路の開度で制御されており、図5に示すように風量比率が切替前後で完全に反転するように設定している。この時の便座内の温風の流れを図3(b)に示す。図3(a)とは反転し、吹き出し口7bから送風される温風は、便座3内の温風吸引口15b、温風ダクト16b、便座先端部3bを通り、他側の温風ダクト16aから送風される風と衝突し、排気口21から排出されるため、便座3の温風ダクト16bの出口周辺から便座先端3bにかけて加熱する。また、温風ダクト16aから送風される風は前記温風ダクト16bからの風と衝突し排気口21から直接排出されるため、便座3の温風ダクト16aから排気口21にかけて加熱する。
【0033】
更にtb時間が経過すると、風路切替ダンパー8を切り替え初期の風量設定に戻すが、この切り替えるタイミングはヒータ6が飽和状態になる時間t1を見込み、ta−t1とtbが同時間になるように設定すると便座両側に供給する熱量が同一になり、温度差のない暖房便座を提供できる。尚他の切替タイミングでは同一のヒータを用いているため、切替毎にヒータの通電量を変更することが無く速やかに風量を変更できるので、切替時のエネルギーロスの少ない暖房便座装置となる。
風量を交互に切り替えるうちに設定温度と便座温度の差が小さくなると、便座3の左右の切替タイミングによる温度差を小さくするため、図5のt2区間のように、徐々に送風時間を短くすると同時にヒータ6の発熱量も減少させる。更に、便座3の温風ダクト16a,16bから便座先端3cまでを中心に暖めていた熱量を下げ、便座後方部を中心に暖めるために、図5のt3,4の区間のように温風ダクト16a,16bからの送風量の差を減少させ、最終的に零にする。その時の概念図を図3(c)に示す。それぞれの吹き出し口から送風される風量が等しい場合、便座先端部3bで温風が衝突し風の流れが止まり、排気口21に向かって風が流れるため、便座後方部を暖めることができる。便座表面温度が設定温度と略同温になると、便座への送風を停止するが、図5t4区間に示すとおり、まずヒータ6の通電を停止し、ダクト11内の全ての温度が室温と略同温になったのを確認した後、送風ファン5の通電を停止すると送風路内で熱の滞留が無くなるなり、ダクト11を構成する樹脂が熱変形することがなく安全性を確保できる。
【0034】
このように電源投入直後は、人体が着座する大部分である、便座の温風ダクト16から先端部3bにかけて重点的に暖め、万が一この時間帯に使用者が着座した場合にもヒヤリ感を感じないように対応し、徐々に便座後方部も暖めて全面均一な温度に昇温し快適な暖か感を提供するようにそれぞれの温風ダクトから送風される風量及びヒータの発熱量は制御されている。より速く便座を暖めるには、電源投入後のそれぞれの温風ダクトから送風される風量の差を大きく設けた方がよい。送風ファン5,ヒータ6が大容量の温風を送風できる能力があれば、本体ケース2内にトイレに人体が入室したことを検知できる人体検知センサーを内蔵し、該人体検知センサーが人体を検知したタイミングに同期して、ヒータ6,送風ファン5へ通電を開始し、使用者が着座する迄の間に便座3の表面をヒヤリ感の感じない温度まで昇温することができ、待機電力の必要ない省エネルギーな暖房便座装置を提供することができる。この時ダクト及び吹き出し口を耐熱材料の樹脂、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂,ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂,ポリフェニレンエーテル(変性PPO)等を用いると高熱の温風を吹き出すことができ、即暖性を向上させることが可能である。
【0035】
前記のように、便座内に温風を送風する構成として、図4の第2の実施形態に示したように2カ所の吹き出し口7a,7bそれぞれに対応する、送風ファン5a,5b及びヒータ6a,6bを設けても良い。この方式では風路切替ダンパー等の風量を切り替える弁を必要としないので、吹き出し口の直前にヒータを配設できるなどダクトをコンパクトに設計できることから、ダクト部の放熱量を抑えた効率の良い風路の設計が可能になる。但し、この構成では、温風の風量を大小切り替える際、ヒータ6a,6bの通電量もそれに併せ増減させなければならない。ヒータ6a,6bは図5t1区間のようにそれぞれ飽和温度に達するまでの時間遅れを生じるため、この時間遅れを見込み送風時間を延ばすか、あらかじめ小風量側のヒータの通電量を増やしておく等の制御が必要である。また、風量差を大きくすると図4(b)に示すように大風量の温風が、便座先端3bを通り、他側の吹き出し口から風を押し戻して、吸気口から本体ケース2の外部に排気するようになり、便座後方の排気口21から温風が排出されないためその部位の便座を加熱できない。また他側の吹き出し口から押し戻されず、バランスよくつり合った場合は、ヒータ上の風の流れが止まり、ヒータの発熱量が上昇し、ダクト11を構成している樹脂材が熱変形する可能性があるため、それぞれの吹き出し口から送風する風量差の設定には注意が必要である。万が一、ヒータ上の発熱量が急上昇した際は、ヒータへ通電するリード線の途中に温度ヒューズを設け、異常発熱した際、ヒータへの通電を強制的に遮断するような安全装置を設ければ良い。
【0036】
本実施形態では、暖房便座装置1の本体ケース2内に温風吹き出しユニットを設け、該ユニットから温風を便座3内送風し、温風の持つ熱量を便座に伝熱しながら暖めるため、従来の暖房便座のように、便座3内には紐状ヒータ56や便座温度を検知するサーミスターが必要なく、本体ケース2と便座3を接続する電線54が無くなる。また、従来は表面樹脂材53bに紐状ヒータ56を接着した後底板樹脂材53cとを溶着し一体にしていたが、本実施形態では電子部品を設けないため、ブロー成形等によって、表面樹脂層と底板樹脂材を一体成形することが可能である。そのため便座の肉厚を全周略一定に設定すれば、溶着代の肉厚分ヒータからの伝熱がなかったり、紐状ヒータを便座の内周部に配設することが難しく、量産バラツキにより加熱できなかったりで、子供やお尻の小さい方は便座内部に入り込み、非加熱部にお尻が接し不快感を与えていたが、本発明は便座内周を含む全ての面を均一に昇温するすることができ、全ての使用者に快適な暖房便座を提供できる。更に便座3は一部品で形成されているのでリサイクル性もよく、環境に優しい暖房便座装置の提案になる。
【0037】
排水口21の開口位置の好適な実施形態について説明する。排気口21の位置は本体ケース2から便座3を取り外した際、便座内に浸入した水を全て排出できる便座3の外周が好ましく、更に言えば、図6(a)に示すように、便座3の後部を湾曲させ、排気口21は便座3の最後部かつ開状態にした際の最下点に配置することが好ましい。この場合、図6(b)に示すように便座3を開状態にした際、前記便座3、便蓋4簡易着脱機構を設けて取り外し、浴室等のトイレルーム外で水洗いした時に温風吸引口15a,15bから浸入した水を容易に排水でき、便座3内に入り込んだ水に雑菌が繁殖したり、便座開閉時の衝撃でトイレ内に散水したりすることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態における暖房便座装置の概念図である。
【図2】図1のA部拡大断面図である。
【図3】風の流れの概念図である。
【図4】第2の実施形態における暖房便座装置の概念図である。
【図5】温風制御のタイムチャートである。
【図6】排気口位置を示した図である。
【図7】便座,便蓋の着脱構造図である
【図8】従来の暖房便座の外観図である。
【図9】図8のE−E’断面図である。
【図10】従来の温風式暖房便座の概念図である。
【符号の説明】
1,51,61 暖房便座装置
2,52,62 本体ケース
3,53,63 便座
4,57,64 便蓋
5,65 送風ファン
6,56,67 ヒータ
7,66 吹き出し口
8 風路切替ダンパー
9 吸引口
10 制御部
11 ダクト
13 便座開閉検知素子
15 温風吸引口
16 温風ダクト
18 空気層
19 温風
20 風
21 排気口
54 電力線
55 電源コード
59 金属箔
80 取付部材
85 突起部材

Claims (9)

  1. 空気を送風する送風ファンと、空気を加熱し温風とするためダクト内に配置されたヒータと、前記送風ファンと前記ヒータを収納する本体ケースと、排気口と略長手方向後端2カ所に吸気口を有し前記本体ケースの前方に配置され内部を中空構造にした便座と、前記ダクトと連通して前記吸気口と対向する前記本体ケースの前側面2カ所に開口した吹き出し口と、から構成され、それぞれの吹き出し口から送風される風量は大小異なり且つ交互に切り替わることを特徴とする暖房便座装置。
  2. 前記2カ所の吸気口の間の略中央部に前記排気口を設けたことを特徴とする請求項1記載の暖房便座装置。
  3. 前記2カ所の吹き出し口から送風される温風は、それぞれの他側の吹き出し口から排気されない風量に設定したことを特徴とする請求項1,2記載の暖房便座装置。
  4. 前記2カ所の吹き出し口から送風される熱量が同量となるように、風量の大小を切り替えるタイミングを制御することを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の暖房便座装置。
  5. 前記2カ所の吹き出し口から送風される風量差を、吹き出し開始初期から時間が経過すると小さくすることを特徴とする請求項1乃至4何れか1項記載の暖房便座装置。
  6. 前記ダクト内の前記ヒータと前記吹き出し口の間に風路切替ダンパーを配置し、該風路切替ダンパーの開度で前記吹き出し口から送風される風量を制御したことを特徴とする請求項1乃至5何れか1項記載の暖房便座装置。
  7. 前記吸気口から便座内部に向かって通風路を配設し、該通風路は便座表面層及び底板との間に空気層を設けたことを特徴とする請求項1乃至6何れか1項記載の暖房便座装置。
  8. 前記通風路出口の送風圧が略零になるように前記排気口の開口面積を設定したことを特徴とする請求項7記載の暖房便座装置。
  9. 前記排気口は便座の最下点に配置したことを特徴とする請求項1,2何れか1項記載の暖房便座装置。
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