JP3888020B2 - ヒートシュリンクバンド用鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、テレビなどのカラー陰極線管において、パネル周囲を緊締するヒートシュリンク用バンド用鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カラー陰極線管では、管体内が1.0×10-7Torr程度の高真空状態であることから、パネル面の変形防止および管体の内爆防止といった処理を必要としている。このような観点から、バンド状に成形した鋼板からなるヒートシュリンクバンドを400℃から600℃程度の温度域で数秒〜数十秒間加熱・膨張させ、カラー陰極線管ガラスパネルにはめこみ、冷却・収縮によって張力を付与する、いわゆる焼きばめ処理によってパネル面の変形を補正している。
【0003】
さらに、このようなヒートシュリンクバンドは、内部磁気シールドと同様、地磁気をシールドする機能をも有しており、地磁気による電子ビームの蛍光面上の着弾位置のずれ、すなわち色ずれが発生するのを防止する機能を有している。このような目的で、ヒートシュリンクバンドの材料としては、従来から軟鋼が用いられていた。
【0004】
特開平10−208670号公報には、空気圧によるパネル面の変形を補正する張力が確保されるとともに、十分な磁気シールド性を有するヒートシュリンクバンドの製造方法が提案されている。
【0005】
この技術では、重量%でC≦0.005%、2.0%≦Si≦4.0%、0.1%≦Mn≦1.0%、P≦0.2%、S≦0.020%、Sol.Al≦0.004%又は0.1%≦Sol.Al≦1.0%、N≦0.005%を含有する鋼を、熱間圧延及び/又は冷間圧延する工程と、700〜900℃で焼鈍する工程と、冷圧率3〜15%で軽冷圧する工程とを備える。その結果、上記軽冷圧する工程後に、加熱冷却された後の0.3Oeにおける透磁率μがμ≧250となり、降伏応力YSがYS≧40kgf/mm2となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術においては、このヒートシュリンクバンド用鋼板には、軟鋼が用いられているものの、地磁気レベル(約0.3Oe)での透磁率がおよそ200程度であり、磁気シールド性が充分ではなかった。そのため、地磁気による色ずれに対しては、蛍光面の位置を調整するなどの煩雑な工程が必要となっていた。
【0007】
また、特開平10−208670号公報記載の技術では、Si量の増加により、透磁率が向上するという効果はあるが、3%前後添加しているため、強度が高すぎ、YS<40kgf/mm2が要求される場合には対応が困難である、という問題があった。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、防爆性に問題を生じないレベルの強度を保ちつつ、充分な磁気シールド性を維持し、特に色ずれの少ないカラー陰極線管を実現できるヒートシュリンクバンド用鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は次の発明により解決される。第1の発明は、化学成分として、重量%で、C:0.005%以下、Si:0.1%以下、Mn:0.1%以上2%以下、P:0.15%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.08%以下、N:0.005%以下、Ti:0.02%以上0.06%以下、B:0.0003%以上0.005%以下、を含み、残部 Fe 及び不可避不純物からなり、焼きばめ後の状態で0.3 Oeの磁界における透磁率と板厚(mm)との積が350以上であることを特徴とするヒートシュリンクバンド用鋼板である。
【0010】
この発明は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果なされたものである。検討の過程で、以下の知見を得た。
(1)Siを0.1%を超えて添加すると、高温でのバンドの強度が高くなりすぎるため、バンドとパネルとの密着性が低下し、地磁気ドリフト性が劣化すること。
(2)焼きばめ処理後の透磁率を高く保つためには、TiおよびBを添加して炭化物・窒化物を形成し、固溶C・固溶N量を低減することが有効であること、
(3)ヒートシュリンクバンド用鋼板の素材のSi量が0.1%以下の場合、地磁気レベルの外部磁界強度である0.3 Oeでの透磁率μ(比透磁率)と板厚t(mm)との積:μ×tが350以上となると、色ずれの改良がみられること。
【0011】
これらの知見に基づき、詳細な検討を行い、化学成分および諸特性値を決定した。まず、各化学成分の限定理由について説明する。
【0012】
C: Cは、鋼板の強化に寄与する元素であるが、透磁率にとっては好ましくなく、この悪影響を防ぐために、その含有量を0.005%以下、好ましくは、0.003%以下、さらに好ましくは0.002%以下とする。
【0013】
Si: この発明では、無添加とするか、あるいは脱酸剤等として添加する場合でも、前述のように0.1%以下とする。
【0014】
Mn: Mnは熱間延性の改善に効果があり、また、固溶強化による鋼板の強度上昇にも寄与する元素である。そこで、下限を0.1%とする。一方、Mn量が2%を超えると透磁率の劣化をもたらすため、その含有量を2%以下とする。なお、これらの規定範囲内では、所望の強度レベルに応じてMn含有量を選択すればよい。
【0015】
P: Pは鋼板の強化に寄与する元素であり、必要に応じて添加してもよい。しかしながら、0.15%を超えて添加した場合には、鋼板の脆化を招き、冷間圧延時のコイル破断などの問題を生じるため、その含有量を0.15%以下に規定する。
【0016】
S: Sは、熱間延性および透磁率の両者にとって好ましくなく、これらに悪影響をおよぼさない観点から、その含有量を0.02%以下に規定する。
【0017】
sol.Al: Alは加工性を劣化させるので、この影響を防ぐために、その含有量を0.08%以下に規定する。
【0018】
N: Nは、Cと同様、鋼板の強化に寄与する元素であるが、透磁率にとって好ましくなく、この悪影響を防ぐために、その含有量を0.005%以下、好ましくは0.003%以下とする。
【0019】
Ti: Tiは、Bと共に、本発明でもっとも重要な成分の一つである。Tiを添加することにより、固溶Nを窒化物として、あるいは固溶Cを炭化物などとして固定することができ、固溶C・固溶Nに起因する材質の経時変化を抑えることができる。しかし、過度の添加は却って透磁率に悪影響をおよぼすため、その含有量を0.02%以上0.06%以下、好ましくは、0.03%以上0.05%以下とする。
【0020】
B: Bは、Tiと共に、本発明でもっとも重要な成分の一つである。Bは鋼板の脆性改善に効果を有し、また、固溶Nを固定する性質も有するので、0.0003%以上添加する。しかしながら、過度の添加は、鋼板の延性劣化を招くため、その含有量を0.005%以下、好ましくは、0.002%以下、さらに好ましくは、0.0010%以下に規定する。
【0021】
次に、特性値の規定として、焼きばめ後の状態で0.3 Oeの磁界における透磁率と板厚(mm)との積が350以上とする。これは後述のように色ずれ性と透磁率との関係から従来技術に比べて色ずれ(電子ビームのドリフト量)が顕著に低下する条件として決定される。
【0022】
なお、ヒートシュリンクバンドには、耐食性の観点からメッキを施すこともあるが、この場合であっても、メッキ前の特性が本発明の範囲を満足すれば、所定の特性が得られる。
【0023】
第2の発明は、焼きばめ後の状態で0.3 Oeの磁界における透磁率と板厚(mm)との積が400以上であることを特徴とする第1の発明のヒートシュリンクバンド用鋼板である。
【0024】
この発明は、透磁率と板厚の積をさらに限定することにより、色ずれを従来技術に比べて5%以上低下させることができる。
【0025】
第3の発明は、第1の発明の化学成分を有する鋼を熱間圧延し、引き続いて冷間圧延し、次いで、得られた鋼板を800℃以上900℃以下の温度域にて焼鈍する、あるいは、この焼鈍の後さらに圧延率0.5%以下の調質圧延を施す、ことを特徴とするヒートシュリンクバンド用鋼板の製造方法である。
【0026】
この発明では、透磁率を確保する1つの方法として、800℃以上900℃以下の焼鈍を行う。焼鈍温度の範囲は後述の実験結果から決定され、この温度範囲で高い透磁率が得られる。焼鈍温度の下限温度未満では、再結晶およびその後の粒成長が不十分なため透磁率が低く、上限を超えると、変態点を通過するため結晶粒が微細化し透磁率が低下する。
【0027】
焼鈍後は、調質圧延を施さないか、あるいは調質圧延を施してもその圧延率を0.5%以下とする必要がある。これは、調質圧延の圧延率が上限を超えると、調質圧延に伴い導入される歪みの増加により透磁率が低下するからである。
【0028】
第4の発明は、焼鈍後あるいは焼鈍と調質圧延の間で、250℃以上500℃以下の温度域にて過時効処理を行うことを特徴とする第3の発明のヒートシュリンクバンド用鋼板の製造方法である。
【0029】
この発明は、第3の発明の800℃〜900℃の焼鈍に引き続き、さらに炭化物の析出処理にあたる過時効処理を250〜500℃の温度域で実施すると、一層好適であるという検討結果に基づきなされた。
【0030】
このようにして、透磁率が高く地磁気ドリフトが小さいヒートシュリンクバンドに好適な鋼板が得られる。以下、発明に至る検討の詳細について説明する。
【0031】
1.Si量と地磁気ドリフトとの関係
試料は、C:0.003%、Mn:0.9%、P:0.07%、S:0.007%、sol.Al:0.03%、N:0.002%以下、Ti:0.04%、B:0.0010%を含み、Si:0.01%〜0.2%まで変化させた鋼を用いた。この鋼を、実験室溶解後、2.5mmtまで熱間圧延し、その後、1.0mmtまで冷間圧延し、850℃で90秒の焼鈍後、450℃で2分間の過時効処理を施した。鋼板は、調質圧延を施さず、所定の形状のバンドに加工し、500℃に加熱後、29インチTV陰極線管パネルにはめ込み、地磁気ドリフト性の評価を行なった。
図1は、鋼中のSi量と地磁気ドリフトとの関係を示す図である。
【0032】
縦軸のBh、Bvは電子ビームのランディングポイントのドリフト量を示すものである。具体的には、CRTに対して0.35 Oeの垂直磁界と0.3 Oeの水平磁界を印加した状態で、CRTを360°回転させ、電子ビームのランディングポイントの基準点に対する位置ずれ(ランディングエラー)を測定し、これのピークtoピークの値を水平ドリフト量Bhとした。
【0033】
また、水平磁界を0 Oeとし、垂直磁界を0 Oeから0.35 Oeに変化させたときのランディングエラーを垂直ドリフト量Bvとして測定した。なお、縦軸のランディングエラーのドリフト量については、Si量が0.1%の場合の値を1としたときの相対値をもって示している。
【0034】
図1より、地磁気ドリフト性は、Si量が0.1%までは良好な特性を示すが、0.1%を超えると劣化する傾向が認められた。通常、Si量が増加すると、透磁率が向上するため、地磁気ドリフト性が改善されるものと予想されていたため、この現象をさらに詳細に検討した。
【0035】
その結果、Siが0.1%を超えて含まれると、パネルとバンドとの密着性が低下し、パネルとバンドとの間にすきまが発生していることがわかった。このような空隙は磁気シールド性を劣化させる要因となるため、地磁気ドリフト性が低下したものと考えられる。Si量が増加した場合にパネルとバンドとの密着性が低下する原因は明らかでないが、Siは高温強度を高めることから、焼きばめ収縮時の密着性が低下し、隙間が生じたものと考えられる。
以上の結果より、Si量を0.1%以下とする。
【0036】
2.透磁率と色ずれ性の関係
試料として、C:0.002%、Si:0.02%、Mn:0.8%、P:0.07%、S:0.006%、sol.Al:0.04%、N:0.002%以下、Ti:0.04%、B:0.0008%の組成を有する鋼を実験室溶解後、まず3.2mmtまで熱間圧延した。その後、0.8mmt〜1.6mmtまで冷間圧延し、850℃または870℃で90秒の焼鈍後、450℃で2分間の過時効処理を施した後に、そのまま調質圧延を施さずに、所定の形状のバンドに加工した。
【0037】
加工したバンドを、500℃で60秒間加熱後、29インチTV陰極線管パネルにはめ込み、地磁気ドリフト性の評価を行なった。ここで、従来材として、C:0.04%、Si:0.01%、Mn:0.21%、P:0.015%、S:0.013%、sol.Al:0.02%、N:0.002%の組成の鋼板に、過時効処理後、1%の調質圧延を施した材料についても同様の検討を行なった。
【0038】
図2は、色ずれ性と透磁率との関係を示す図である。図中の横軸は、地磁気相当の外部磁界0.3 Oeでの透磁率μと板厚t(mm)との積μ×tを示し、縦軸のBh、Bvは電子ビームのランディングポイントの水平、垂直方向のドリフト量を示すものである。なお、透磁率μは、焼きばめ前の焼鈍板から採取したリング試験片について、焼きばめ相当の500℃で60秒の熱処理を施した後に測定を行なった。
【0039】
なお、縦軸のランディングエラーのドリフト量については、上述の従来材の値を1としたときの相対値をもって示している。
【0040】
図2から、μ×tが300程度まではBh、Bv共に従来材との比が1.0前後で、従来材と同程度の値であるが、350から顕著に減少する傾向が見られる。これより、地磁気による色ずれは、μ×tが増加することによって改善され、その値が350以上で従来材よりも優れた値になることがわかる。さらにμ×tが400以上になると、Bh、Bv共に従来材との比が0.95以下となり、色ずれを従来技術に比べて5%以上低下させることができる。
【0041】
3.調圧率と透磁率の関係
試料は、C:0.003%、Si:0.01%以下、Mn:1.0%、P:0.08%、S:0.005%、sol.Al:0.04%、N:0.002%以下、Ti:0.05%、B:0.0007%の組成を有する。この鋼を実験室溶解後、2.8mmtまで熱間圧延し、1.0mmtまで冷間圧延した後、850℃で90秒の焼鈍に引き続き450℃で2分間の過時効処理を施し、圧延率0〜2%の調質圧延を施して鋼板を製造した。透磁率μの測定は、この試料に焼きばめ相当の熱処理である500℃、60秒の焼鈍を施したものについて行った。
【0042】
図3は、調質圧延の圧延率と透磁率の関係を示す図である。なお、ここでは透磁率の代りに、0.3 Oeの磁界における透磁率μと板厚t(mm)との積μ×tと、調質圧延の圧延率との関係を示してある。調質圧延の圧延率が0.5%までは、圧延率の増加に従い材料の透磁率が若干低下するものの、著しい透磁率の変化は認められない。一方、0.5%を超えた圧延率の調質圧延を施すと、透磁率の著しい低下が認められる。
【0043】
この原因は必ずしも明らかではないが、本発明者らの考察結果によれば、調質圧延の圧延率が0.5%までの極めて小さい場合は、調質圧延により鋼板に導入される歪みが鋼板の極表面に比較的均一に導入されるものの、鋼板内部では極めて粗にしか導入されず、その結果、透磁率の低下が著しくなかったものと推察される。
【0044】
この種の鋼板において、調質圧延は、一般的に加工成形後のストレッチャ・ストレインマークと呼ばれる表面不良を防止する目的で行われるものであるが、ヒートシュリンクバンドの場合、バンドとするための成形・加工はもともと厳しいものではないため、調質圧延を施さずとも著しい表面不良は発生しない。むしろ、高い透磁率を得るという観点からは、外観上問題ない場合には、調質圧延を省略することが望ましい。
【0045】
4. 焼鈍温度と透磁率の関係
試料としては、C:0.002%、Si:0.03%、Mn:1.2%、P:0.08%、S:0.005%、sol.Al:0.03%、N:0.002%以下、Ti:0.03%、B:0.0005%の組成を有する鋼を実験室溶解後、2.8mmtまで熱間圧延し、その後、1.0mmtまで冷間圧延し、720℃〜930℃で90秒の焼鈍後、450℃で2分間の過時効処理を施し、調質圧延を施さずに、焼きばめ相当の熱処理である500℃、60秒の焼鈍を施したものを用いた。
【0046】
図4は、焼鈍温度と、0.3 Oeの磁界における透磁率μと板厚t(mm)との積μ×t、との関係を示した図である。
【0047】
焼鈍温度が780℃までは、焼鈍温度の上昇にともない材料の透磁率が若干向上するものの、著しい透磁率の変化は認められない。一方、800℃〜900℃の温度域で焼鈍を施すと、透磁率が著しく向上する。さらに、930℃まで焼鈍温度を高めると、逆に透磁率は減少する。
【0048】
この透磁率の変化は鋼板のミクロ組織と対応しており、▲1▼焼鈍温度が800℃未満の場合は再結晶およびその後の粒成長が不十分なために透磁率の大幅な向上が認められず、▲2▼焼鈍温度が800℃以上900℃以下の場合には再結晶・粒成長にともなって、透磁率が向上し、▲3▼焼鈍温度が900℃を超えると変態が生じるため結晶粒が微細化して再び透磁率が低下するものと考えられる。
【0049】
したがって、焼鈍温度は、800℃以上900℃以下であることが必要であり、840℃以上900℃以下であることが好ましい。高温域での材質安定性を考慮すると、焼鈍温度は840℃以上875℃以下であることがさらに好ましい。
【0050】
5.過時効条件と磁気特性およびその経時変化
試料としては、C:0.002%、Si:0.01%以下、Mn:1.0%、P:0.07%、S:0.006%、sol.Al:0.04%、N:0.002%以下、Ti:0.03%、B:0.0008%の組成を有する鋼を、実験室溶解後、3.2mmtまで熱間圧延した。その後、1.2mmtまで冷間圧延し、850℃で90秒の焼鈍後、170℃〜550℃で2分間の過時効処理を施し、調質圧延を施さずに、焼きばめ相当の500℃、60秒の熱処理を施した。また、経時変化を調査するために、焼きばめ相当の熱処理の後にさらに150℃で100時間の熱処理(加速試験)を施した試料も用いた。
【0051】
図5は、過時効条件と磁気特性およびその経時変化を示す図である。この図から明らかなように、150℃、100時間の加速試験後の0.3 Oeの磁界における透磁率μと板厚t(mm)との積μ×tにおよぼす過時効処理温度の影響は、比較的軽微である。これは、既に述べた添加成分元素およびその含有量の限定にしたがった効果である。ただし、この中でも、250℃以上500℃以下の温度で過時効処理を施した場合は、優れた透磁率を有することがわかる。
【0052】
このように、250℃以上500℃以下の温度で過時効処理を施すことにより、その他の温度域にて過時効処理を施した場合に比べて、加速試験後も優れたμ×tを得ることができる。この原因は明確ではないが、鋼中の炭化物の溶解および析出挙動と関連したものと考えられる。
【0053】
すなわち、焼鈍時に炭化物などが部分的に溶解して固溶Cが発生した場合、過時効温度が250℃未満では鋼中の固溶Cが焼きばめ処理後も充分に析出せず、焼きばめ直後の透磁率は高いものの、焼きばめ後に微細に炭化物が析出し透磁率の低下を招く。
【0054】
一方、過時効温度が500℃を超えると、固溶C量残存量が増加し、引き続く焼きばめ処理によっても充分に炭化物を析出されることができず、結果的に微細に炭化物が析出するため加速試験後に透磁率の低下が観察されるものと推察される。
【0055】
【実施例】
表1の供試鋼を溶製後、1200℃〜1280℃に加熱し、仕上温度900℃、巻取温度680℃にて板厚3.2mmtに熱間圧延した。得られた熱延板を酸洗後、板厚0.8mmt〜1.6mmtまで冷間圧延した後、750℃〜950℃にて90秒間焼鈍し、その後、210℃〜550℃、2分間の過時効処理を施した。
【0056】
【表1】
【0057】
これらの鋼板に、さらに焼きばめ相当の500℃、5秒間の加熱を施し、室温まで空冷した後、降伏応力、直流磁気特性(0.3 Oeにおける透磁率、および外部磁界10 Oeまで励磁したときの保磁力)をリング試験片(外径45mm、内径33mm)によって測定した。
【0058】
また、磁気安定性の評価として、焼きばめ相当熱処理後に150℃×100時間の熱処理を施した材料の直流磁気特性についても評価を行った。さらに、850℃焼鈍材を所定の形状のバンドに加工し、500℃に加熱後29インチTV陰極線パネルにはめ込み、地磁気ドリフト性の評価を行った。その結果を表2に示す。なお、地磁気ドリフト性については、表1に示す従来材である供試鋼Fの1%調質圧延材の地磁気ドリフト量を1としたときの相対値で表示した。
【0059】
【表2】
【0060】
表2に示すように、供試鋼成分、焼鈍温度、調質圧延率が本発明範囲にある本発明例にあっては、0.3 Oeの磁界における透磁率μと板厚t(mm)との積μ×tが350以上であり、地磁気ドリフト性に優れた特性を示すことが確認された。また、過時効処理温度が、250℃以上500℃以下の範囲内の場合には、さらに安定した磁気特性を示すことが確認された。一方、本発明範囲を外れた比較例にあっては、μ×tが適正値を外れており、色ずれ対策として煩雑な工程が必要となる。
【0061】
なお、供試鋼成分、焼鈍温度、調質圧延率などが本発明範囲にある本発明例の降伏強度は、大部分が25 kgf/mm2前後でその他いずれも23〜28kgf/mm2であり、防爆性に支障のないレベルであった。
【0062】
【発明の効果】
本発明は、Si量の低減およびTi+Bの添加により、低Siにもかかわらず高い透磁率を確保し、また透磁率と板厚との積に着目して色ずれの低減を図っている。その結果、本発明によれば、透磁率が高く地磁気ドリフトが小さいヒートシュリンクバンドに好適な鋼板が得られる。本発明による鋼板を陰極線管のヒートシュリンクバンドに用いることによって、充分な磁気シールド性が確保され、色ずれの問題が解決される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Si量と地磁気ドリフト量との関係を示す図。
【図2】μ×tと地磁気ドリフト量との関係を示す図。
【図3】調質圧延率とμ×tとの関係を示す図。
【図4】焼鈍温度とμ×tとの関係を示す図。
【図5】過時効処理温度とμ×tとの関係を示す図。
Claims (4)
- 化学成分として、重量%で、C:0.005%以下、Si:0.1%以下、Mn:0.1%以上2%以下、P:0.15%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.08%以下、N:0.005%以下、Ti:0.02%以上0.06%以下、B:0.0003%以上0.005%以下、を含み、残部 Fe 及び不可避不純物からなり、焼きばめ後の状態で0.3 Oeの磁界における透磁率と板厚(mm)との積が350以上であることを特徴とするヒートシュリンクバンド用鋼板。
- 焼きばめ後の状態で0.3 Oeの磁界における透磁率と板厚(mm)との積が400以上であることを特徴とする請求項1記載のヒートシュリンクバンド用鋼板。
- 請求項1記載の化学成分を有する鋼を熱間圧延し、引き続いて冷間圧延し、次いで、得られた鋼板を800℃以上900℃以下の温度域にて焼鈍する、あるいは、この焼鈍の後さらに圧延率0.5%以下の調質圧延を施す、ことを特徴とするヒートシュリンクバンド用鋼板の製造方法。
- 焼鈍後、あるいは焼鈍と調質圧延との間で、250℃以上500℃以下の温度域にて過時効処理を行うことを特徴とする請求項3記載のヒートシュリンクバンド用鋼板の製造方法。
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