JP3887795B2 - プラスチゾル組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、ゾルとして流動性が良好でしかも貯蔵安定性が優れ、成形加工性が良く、成形品の外観、安全性、耐熱性などが良好で製品の硬度制御が容易なアクリル樹脂系プラスチゾル組成物に関する。より具体的な利用分野の例としては、はんだ付けなどの工程ではんだが付着しないように部分的に皮膜を形成し、はんだ付け後にそれを剥離するために用いる可剥離性一次マスク(ストリッパブルマスク)、フレキシブル基板を用いたキーボード(メンブレンキーボード)のスペーサー材料などがある。
【0002】
【従来の技術】
プラスチゾルは、樹脂粉末を可塑剤に分散した流動性ある高粘度ペースト状物で、これをスプレー塗布、デイップ塗布、スクリーン印刷などの手段で物品に塗布した後、熱処理を行うことで、樹脂粉末が可塑剤で膨潤してゲル化し、可撓性のある皮膜に変化するもので、樹脂フィルム、玩具、手袋、自動車のアンダーコーテイングなどの分野で広く利用されている。代表的なプラスチゾルとしては塩化ビニル系樹脂(以下、PVCと略す。)をフタル酸エステル系可塑剤と組み合わせたものが良く知られている。しかしながら、PVCはその構成成分として塩素を含むため、燃焼時に発生する塩化水素ガスやダイオキシンによる公害が、また代表的なフタル酸エステル系可塑剤であるジオクチルフタレート(DOP)には環境ホルモンの疑いがあり、近年、脱PVC、脱DOPのプラスチゾルへの転換が急がれている。
【0003】
このような背景の中で、アクリル樹脂系粉末に可塑剤を組み合わせたアクリル樹脂系プラスチゾルが提案されてきている。特公昭55−16177号では、特定のアクリル樹脂を可塑剤と混合したプラスチゾルが提案されている。この中で、プラスチゾルの具備すべき重要な課題として樹脂と可塑剤の適合性とゾルの貯蔵安定性をあげている。樹脂と可塑剤の適合性については、例えばPMMA(ポリメチルメタクリレート)とフタル酸エステル系可塑剤のDBP(ジブチルフタレート)は適合性が悪く、ゲル化した皮膜から可塑剤が滲みだしてくるが、MMA(メチルメタクリレート)に約5〜25%ブチルメタクリレートを共重合したアクリル系樹脂はDBPとの適合性が改善される、としている。また、貯蔵安定性はゾルを室温で8日間放置後の粘度が初期の3倍以下であることとし、可塑剤の種類によって特定アクリル樹脂の最適粒子サイズとガラス転移温度があること、などとしている。
また、特開平7−25953号は、常温における良好な作業性(流動性)と優れた貯蔵安定性および加熱成形皮膜からの可塑剤の滲み出しがないプラスチゾルを得るために、コア・シェル重合体を提案している。また、特開平8−165398号では、特定のアクリル樹脂共重合体に可塑剤とアクリル系モノマーを組み合わせたもの、特開平8−295850号では、グランジェント構造を有するアクリル樹脂共重合体に可塑剤と充填剤を組み合わせたもの及びそれらにさらに有機溶剤を加えたものが提案されている。
【0004】
また、特開平10−298391号には、PMMAと可塑剤(安息香酸エステル)からなるプラスチゾルにおいて、アクリル樹脂の粒径分布曲線に2個以上のピークをもつ樹脂を使うことによって貯蔵安定性が改善されるとしている。
しかしながら、いずれの先願においても40℃で1ヶ月程度保存できるような、高い保存安定性のプラスチゾルは開発されていない。ここで、40℃1ヶ月安定であるという目標は、40℃1ヶ月は25℃3ヶ月に相当するという経験則から決定したもので、逆にいえば、室温で3ヶ月程度安定なプラスチゾルを開発することが目標となる。プラスチゾルの保存安定性が向上することによって、安定した作業条件でゲル化物がえられるので商品の品質が安定するいう大きなメリットがある。又、一度ゲル化してしまったものはプラスチゾルとして使用できなくなるので廃棄することになる。保存安定性の良いプラスチゾルは、この廃棄物を減らすことができるので経済的であり資源の有効利用になるというメリットもある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ゾルとして流動性が良好でしかも貯蔵安定性が優れ、成形加工性が良く、成形品の外観、安全性、耐熱性などが良好で製品の硬度制御が容易なアクリル樹脂系プラスチゾル組成物を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は,このような課題を解決すべく,鋭意検討の結果、アクリル樹脂系粉末と可塑剤を主成分とするアクリル樹脂系プラスチゾル組成物において、可塑剤として縮合リン酸エステルを用いること、及びそれに必要に応じさらにヒドロキシ脂肪酸エステルを添加したことによって、上記の課題がすべて解決することを見出し本発明を完成するに至った。
本発明において 、アクリル樹脂系粉末としてはメチルメタクリレート(MMA)を主成分とする単独重合体(PMMA)あるいは共重合体の粉末が用いられる。これらの粒径は0.5〜100μm、分子量数10万以上、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上、好ましくは70℃以上が好ましい。ここで、粒径がこの値より小さいと低温でも可塑剤への溶解性が高くなりプラスチゾルとしての安定性が損なわれるし、数100μmレベルまで粒子径が大きくなると粒子間の融着が不完全となり、特に低い熱処理条件ではゲル化しにくい傾向が強くなり好ましくない。
【0007】
また、Tgが50℃以下になるとゲル化した皮膜に粘着性が残ったり、ゲル膜強度が弱くなる問題がある。また、分子量が20万以下ではゲル膜強度が弱くゾルの安定性も悪くなるので好ましくない。
本発明に供されるアクリル樹脂系粉末としては、日本ゼオン社からゼオンアクリルレジンFシリーズの商品名で市販されているものが用いられる。例えば、ゼオンアクリルレジンF301(エポキシ含有MMA樹脂、粒径約2μm、Tg約100℃、分子量は部分架橋構造を有するため不明)、F303(改質PMMA、粒径約2μm)、F320(PMMA、粒径約1μm、Tg約107℃、分子量300万)、F325(PMMA、粒径約1μm、Tg約107℃、分子量40万)、F340(MMA共重合体、粒径約1μm、Tg約90℃、分子量300万)などである。
これらのアクリル系樹脂粉末は単独あるいは混合して使用できるが、ゲル皮膜強度とゾル保存安定性の点から高分子量PMMA(例えば、F320)をベースに用いることが好ましい。
【0008】
本発明では可塑剤として、成膜性、揮発性(熱安定性)、保存安定性を考慮して縮合リン酸エステルを主成分として用いる。従来のリン酸エステル系可塑剤として知られているTPP(トリフェニルフォスフェート)、TCP(トリクレジルフォスフェート)、TXP(トリキシレニルフォスフェート)、CDP(クレジルジフェニルフォスフェート)などは次式(1)で示されるような構造であり、いわば単量体であるのに対し、縮合リン酸エステルは、次式(2)で示すように2量体と呼べる構造を有する。
【0009】
(RO)P=O (1)
(RO)P(O)−O−R‘−O−(O)P(OR) (2)
ここで、Rはフェニル基、クレジル基、キシレニル基などを示す。
R‘は、−Ph−
−Ph−C(CH−Ph−
−Ph−CH−Ph−
尚、Phはフェニル基を示す
【0010】
すなわち、レゾルシノールやビスフェノールA、ビスフェノールFのような分子内に2ヶの水酸基を有するフェノール類に2ヶのジフェニルフォスフェートあるいはジクレジルフォスフェートが結合した構造となっている。市販品としてレゾルシノールビス(ジフェニルフォスフェート)(RDP)、ビスフェノールAビス(ジフェニルフォスフェート)(BDP)、ビスフェノールAビス(ジクレジルフォスフェート)(BDCP)などがあり、これらは近年エンジニアリングプラスチックスの難燃剤として注目されているものである。
【0011】
本発明で用いられる2量体構造(2)を有する縮合リン酸エステルであるRDP、BDPなどは、単量体構造を有するTCPやCDPに比べ耐熱性が非常に優れているため、プラスチゾルを加熱によりゲル化させて皮膜化する工程で可塑剤の揮発がほとんどなく、作業環境に悪臭が漂わないという特長がある。また形成した皮膜の耐熱性が非常に良好で、たとえば250℃付近で10分程度加熱しても皮膜特性に変化がない(従来の単量体タイプの可塑剤を用いた場合には、可塑剤の半分以上が気散してしまい、皮膜が硬くもろくなる)。このことは、これらの熱重量分析の結果(図1)からも容易に理解できる。
【0012】
本発明においては、可塑剤としてこれら縮合リン酸エステルを主成分とし、これにアクリル樹脂系粉体と親和性のある他の可塑剤を配合することも可能である。その例としては、リン酸エステル系可塑剤であるTCP(トリクレジルフォスフェート)、CDP(クレジルジフェニルフォスフェート)などや安息香酸エステル系可塑剤であるジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、ポリエチレングリコールジベンゾエート、ポリプロピレングリコールジベンゾエートなどがある。この場合、どのような構造と物性の可塑剤を併用するかにもよるが、縮合リン酸エステル100重量部に対して0〜50重量部にすることが好ましい。これ以上の配合量では、一般にプラスチゾル配合物の耐熱性や保存安定性が悪くなるので好ましくない。
【0013】
本発明において、アクリル樹脂系粉末と縮合リン酸エステルを主成分とする可塑剤の混合比は、プラスチゾルの用途、成膜方法など必要な流動性のレベルが異なるし、使用する可塑剤自身の粘度や添加剤の種類(無機フィラーや有機フィラー、他の樹脂成分、密着性促進剤、界面活性剤など)とその添加量によっても異なるが、一般的にはアクリル樹脂系粉末100重量部に対し本発明の可塑剤を100〜300重量部、好ましくは120〜250重量部の範囲が用いられる。この範囲より可塑剤が少ないとプラスチゾルの粘度が高すぎて流動性が悪く皮膜形成しにくいし、この範囲を超えて可塑剤が配合されると一般的には皮膜強度が低下するし、成膜された皮膜にタックが残る場合もあり好ましくない。
【0014】
本発明において、上記本発明のプラスチゾル組成物に、さらにヒドロキシ脂肪酸エステルを添加することによって皮膜特性(特に弾性率や伸び)を制御することが可能となる。ヒドロキシ脂肪酸エステルは、ヒマシ油脂肪酸および12−ヒドロキシステアリン酸の、酸基と水酸基の一方または両方をエステル化したもので、低い流動点を有し、本発明のアクリル樹脂系プラスチゾルとの相溶性が良好である。
そのため、これらの種類と添加量を制御することにより本発明のプラスチゾルの皮膜特性を広い範囲で調整することが可能になる。本発明に利用できるヒドロキシ脂肪酸エステルとしては、流動点が−0℃以下のメチルリシノレート、エチルリシノレート、ブチルリシノレート、エチレングリコールモノメチルリシノレート、プロピレングリコールモノリシノレート、トリメチロールプロパンモノリシノレート、ソルビタンモノリシノレート、グリセリルトリアセチルリシノレート、メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、ブチル12−アセトキシステアレートなどがある。
【0015】
本発明において、本発明のプラスチゾル組成物とヒドロキシ脂肪酸エステルの混合比は、プラスチゾルの組成や使用するヒドロキシ脂肪酸エステルの種類によって異なるが、一般にはプラスチゾル組成物100重量部に対して0〜25重量部が用いられる。ヒドロキシ脂肪酸エステルの添加量が多くなると皮膜は柔らかく伸びやすくなるが、この範囲を超えて添加するとゲル化しにくくなったり、多くの場合、耐熱性が低下するので好ましくない。
【0016】
本発明のアクリル樹脂系プラスチゾル組成物は、特定のアクリル樹脂系粉末と特定の可塑剤を主成分として構成されるが、必要に応じて炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、シリカ、アルミナのような無機系フィラーあるいはシリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂などの有機系フィラー、アエロジルや有機ベントナイトのようなチキソトロピック性付与剤、シラン系、アルミ系またはチタン系各種カップリング剤のような密着性付与剤、シリコーン油やアクリル樹脂系の消泡剤や分散剤や帯電防止剤のための非イオン系界面活性剤、着色のための顔料などを適宜配合しても良い。さらに、本発明のプラスチゾル組成物に、エポキシ樹脂およびその硬化剤、フェノール樹脂、ウレタン樹脂など熱硬化性樹脂やアクリル系オリゴマー、アクリル系モノマー、光重合開始剤などからなる感光性樹脂を配合することも可能である。
【0017】
本発明のプラスチゾル組成物は、その用途に応じ、アクリル樹脂粉体と可塑剤の混合比や添加剤の選択とその添加量によって任意の流動性に調整できるので、スプレー塗布、デイップ塗布、スクリーン印刷、刷毛塗り、ロール塗布、カーテン塗布など各種塗布方法によって物品に塗布することができる。
本発明を塗布した物品は、一般に80〜240℃の温度で処理される。ゲル化に必要な時間は、処理温度で異なるが、一般に2分〜2時間である。加熱の方法としては、熱風、赤外線、高周波加熱などが一般的である。
【0018】
本発明のプラスチゾル組成物は、はんだ付けなどの工程ではんだが付着しないように部分的に皮膜を形成し、はんだ付け後にそれを剥離するために用いる可剥離性一次マスク(ストリッパブルマスク)、フレキシブル基板を用いたキーボードのスペーサー材料などへの応用を目的として行ったものであるが、ゾルとして流動性が良好でしかも貯蔵安定性が優れ、成形加工性が良く、成形品の外観、安全性、耐熱性などが良好で製品の硬度制御が容易なアクリル樹脂系プラスチゾル組成物であるため、自動車やトラックなどの車体保護膜や布や紙などの基材へ含浸、被覆したシート、あるいは非接着面に塗布・ゲル化してから剥離して得た単独シート、金属製手形やパイプに浸漬塗布後、ゲル化させてから剥離して得た手袋や中空体などの製造に広く利用することができる。
【0019】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例1〜2、比較例1〜7
アクリル樹脂粉末ゼオンアクリルレジンF320を100重量部に対し各種可塑剤120重量部を混合してプラスチゾルとした。これをガラス−エポキシ基板に約200μm厚にバーコーターで塗布し、120℃10分の熱処理を行ってゲル化・皮膜化した。皮膜の外観(成膜性)およびプラスチゾルを室温で1週間放置後の状態観察を行った。結果を表1に示した。また、表1には、熱重量分析の結果(空気中、5℃/min.昇温した場合、重量が10%減少する温度)を揮発性として併記した。
【0020】
この結果から明らかなように、使用する可塑剤の種類によってプラスチゾルの性能が著しく異なり、リン酸エステル系可塑剤(CDP,TCP,RDP,BDP)が成膜性と保存安定性で良好な結果である。しかしながらCDP、TCPのような単量体構造のリン酸エステル系可塑剤を用いたプラスチゾルは、上記熱処理条件でゲル化させたところ、これらの可塑剤の揮発によって作業環境に異臭が充満するという問題が発生するという欠点があり、作業環境を著しく悪くすることがわかった。さらにまた、これらの皮膜をさらに高い温度で処理すると、可塑剤の気散がより激しくなり、そのような熱処理を受けた皮膜は可撓性が消失し、柔軟性を失ってしまうという大きな欠点があった。これに対し、本発明のRDP、BDPのような2量体構造の縮合リン酸エステルを可塑剤に用いた場合では、可塑剤自身がPMMA自身よりも良好な熱分解特性を有しており、通常の成膜温度および使用温度である80〜250℃、数分〜2時間程度の条件では数%程度以下しか揮発せず、環境を汚染しないばかりか特性の安定した皮膜が形成できることがわかった。
【0021】
実施例3〜19、比較例8
以下に示す配合物(配合量の単位は重量部)をロール分散後、真空脱泡してプラスチゾルを作成した。
これらは、25℃、40℃各1ヶ月放置後の粘度を初期粘度と比較してプラスチゾルの保存安定性を評価した結果を表2に示す。粘度はEHD型ブックフィールド粘度計で25℃においてずり速度5s−1における値(単位:Pa・s)を示した。
【0022】
アクリル樹脂系プラスチゾルの公知例では、室温放置8日で粘度が初期の3倍以下(特公昭55−16177号)、40℃10日間でゲル化しない(特開平7−25953号)、20℃15日で粘度変化少ない(特開平8−165398号)25℃6日間で2倍以下(特開平8−295850号)のなどが示されているが、本発明のものは40℃1ヶ月でもゲル化せず、粘度の上昇も3倍以下に収まっており、公知のアクリル樹脂系プラスチゾルに比べ格段に保存安定性が格段に高いことが明らかである。尚、単量体タイプのリン酸エステルを可塑剤に用いた場合(比較例8)は、25℃においても40℃でも1ヶ月後にはゲル化して全く流動性を示さなかった。
【0023】
実施例9、比較例8のプラスチゾルを銅箔パターン形成したガラスエポキシ片面銅張積層板(ソルダーレジストなし、以下基板1とする)とスルーホール(直径0.9mm)基板(ガラスエポキシ両面銅張積層板にスルーホールを形成したもので、スルーホール周辺はソルダーレジストを形成してあるもの、以下基板2とする)に100メッシュポリエステル板を用いてスクリーン印刷した。これらを130℃10分間熱処理してゲル化させた。
これらの試験片を用いて、はんだ付け後にそれを剥離するために用いる可剥離性一次マスク(ストリッパブルマスク)としての実用性を以下の方法で評価した。ストリッパブルマスクとしては、ゲル化膜が基板から剥離できるかどうか、ゲル膜をさらに高温で処理した後にも良好な剥離性があるかどうかである。
【0024】
(表1)
Figure 0003887795
【0025】
DOP:ジオクチルフタレート
DBP:ジブチルフタレート
DOA:ジオクチルアジペート
O180A:エポキシ化油(カポックスO180A、花王社製)
Benzoflex9-88:ジプロピレングリコールジベンゾエート
CDP:クレジルジフェニルフォスフェート
TCP:トリクレジルフォスフェート
RDP:レゾルシノールビスジフェニルフォスフェート
BDP:ビスフェノールAビスジフェニルフォスフェート
Figure 0003887795
揮発性
減量が10%となる温度(大気中5℃/min.で昇温した場合のTGA曲線から算出)
【0026】
(表2)
Figure 0003887795
【0027】
F301:アクリル樹脂粉末(エポキシ含有PMMA)
F303:アクリル樹脂粉末(改質PMMA)
F320:アクリル樹脂粉末(PMMA)
F325:アクリル樹脂粉末(PMMA)
F340:アクリル樹脂粉末(MMA共重合体)
RDP:レゾルシノールビスジフェニルフォスフェート
TXP:トリキシレニルフォスフェート
TCP:トリクレジルフォスフェート
9-88:Benzoflex9-88:ジプロピレングリコールジベンゾエート
ライトンA:重炭酸カルシウム(白石カルシウム社製)
#200:アエロジル200(日本アエロジル社製)
初期粘度:25℃における初期粘度(単位;Pa・s)
25℃保管:25℃1ヶ月保存したものの25℃における粘度
40℃保管:40℃1ヶ月保存したものの25℃における粘度
結果を以下の表3に示した。本発明のプラスチゾルから得られたゲル膜は非常に優れた耐熱性、剥離性を有することが明らかである。
【0028】
(表3)
Figure 0003887795
a)スルーホール抜け性(基板2):
○ すべてのホールにゲル膜が残らず剥離できる
△ スルーホール内にゲル膜が残る
b)無処理皮膜剥離性(基板1)
○ ガラエポ基板から容易に剥離する
× 剥離しにくくゲル膜が切れる
c)熱処理皮膜剥離性(基板1)200℃30分熱処理後、冷却して剥離性を評価した
○ ガラエポ基板から容易に剥離する
× 剥離しにくくゲル膜が切れる
d)はんだ耐熱試験後皮膜剥離性(基板1)260℃5秒間はんだ浴上に置い て、冷却後の剥離性を評価した
○ ガラエポ基板から容易に剥離する
× 剥離しにくくゲル膜が切れる
【0029】
実施例20〜29
表4及び5に記載の配合でプラスチゾルを作成した。ここで、配合量はすべて重量部である。
このプラスチゾルをガラス−エポキシ基板にバーコーターで塗布し、130℃10分熱処理してゲル化皮膜を作成した。これを幅1cm、長さ6cmに切り出してから剥離して短冊状フィルムをえた。この試料を引っ張り試験機で機械的特性の評価をおこなった。その結果も併せて表4、5に記載した。但し、表4の結果は引張速度10mm/min.であり、表5は50mm/min.である。
ここでは、プラスチゾルへのヒドロキシ脂肪酸エステル(表では添加油と表示)の添加効果を確認したもので、これらの添加によって皮膜強度を極端に落とすことなく、伸びの大きな皮膜を得ることができるし、添加するヒドロキシ脂肪酸エステルの種類と添加量を調整することで皮膜特性を幅広く変えることが可能であった。
【0030】
(表4)
Figure 0003887795
【0031】
(表5)
Figure 0003887795
【0032】
添加油A:グリセリルトリアセチルリシノレート
添加油B:ブチルリシノレート
添加油C:プロピレングリコールモノリシノレート
添加油D:トリメチロールプロパンモノリシノレート
添加油E:ソルビタンモノリシノレート
平均膜厚 単位:μm
最大荷重強度 単位:N/mm
破断強度 単位:N/mm
最大伸び 単位:%
破断伸び 単位:%
引張弾性率 単位:N/mm
【0033】
尚、実施例24のプラスチゾルを40℃に保管し、所定時間保管後の粘度を25℃で測定した結果(ずり速度10S−1 )、調製直後18.5Pa・sであったプラスチゾルが、40℃保管4日後28.0Pa・sにあがっていたが、それ以降はほぼ一定で7日後28.5Pa・s、14日後29.0Pa・s、27日後28.6Pa・s、50日後28.7Pa・sと安定していた。
【0034】
比較例9
70重量部のアクリル樹脂系粉末ゼオンアクリルレジンF320に対し、グリセリルトリアセチルリシノレート50重量部の混合物をロール分散、真空脱泡した。
これをガラス・エポキシ基板に厚さ約200μmとなるようにバーコートを行い、130℃10分間熱処理した所、全くゲル化せずペースト状のままで固体皮膜にならなかった。即ち、本発明の添加剤であるヒドロキシ脂肪酸エステルは、アクリル樹脂粉末の可塑剤としては作用しないことが分かった。
【0035】
実施例30
100重量部のアクリル樹脂系粉末ゼオンアクリルレジンF320に対し、BDP160重量部、RDP40重量部、ポリウレタン球状粒子(アートパールHT−400T、根上工業社製)40重量部、アエロジル200を2重量部添加した混合物をロール分散、真空脱泡してプラスチゾルとした。
これをSUS製金属柄杓の握り部分(直径10mm)に浸漬塗布し、130℃10分の熱処理を行ってゲル化・皮膜化した。皮膜厚さは約2.5mmですべりにくく、握り易い状態になった。また、この柄杓で溶融はんだを掬い取る操作を繰り返したが、握り部分の温度上昇が少なく作業性が向上した。また、繰り返し使用しても皮膜はタフで何らの損傷がなかった。
【0036】
実施例31
2枚のポリエステル(PET)基板に電極パターンを形成し、押圧によって上下電極を接触させることによって電気的スイッチングが可能なキーボード(メンブレンキーボード)において、上下電極が常時接触しないように空間を形成するスペーサー材料としてプラスチゾルが利用できる。そのような目的に使用するプラスチゾル組成物として以下の配合物をロール分散後、真空脱泡して調製した。
【0037】
アクリルレジンF320(アクリル樹脂粉末、日本ゼオン社製) 21重量部
ビスフェノールAビスジフェニルフォスフェート(可塑剤) 29重量部
QR9276(ウレタン樹脂、旭電化社製) 32重量部
ED503(エポキシ樹脂希釈剤、旭電化社製) 6.5重量部
エピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂) 7重量部
EH4070S(エポキシ硬化剤、旭電化社製) 4.5重量部
アエロジル#200(チクソトロピック性付与剤、デグサ社製)0.1重量部
炭酸カルシウム 2重量部
フタロシアニン系青色顔料 0.5重量部
消泡剤 1重量部
これらをスクリーン印刷で、下部電極をパターン印刷したPET基板に塗布し、150℃10分熱処理してスペーサー材とした。このスペーサー材料は、従来のPVC−DOP系スペーサーと同様の作業性条件で製膜が可能で、基材のPETへの密着性が良好であり、代替が可能であった。尚、従来品は廃棄時にDOPによる環境ホルモンの流出やPVC焼却時のダイオキシンが発生するなどの課題があった。
【0038】
【発明の効果】
本発明になるプラスチゾルは、ゾルとして流動性が良好でしかも貯蔵安定性が優れ、成形加工性が良く、成形品(ゲル化物)の外観、安全性、耐熱性などが良好で製品の硬度制御が容易なアクリル樹脂系プラスチゾル組成物を提供できる。 そのため、はんだ付けなどの工程ではんだが付着しないように部分的に皮膜を形成し、はんだ付け後にそれを剥離するために用いる可剥離性一次マスク(ストリッパブルマスク)、フレキシブル基板を用いたキーボードのスペーサー材料などへの応用が可能である。また、自動車やトラックなどの車体保護膜や布や紙などの基材へ含浸、被覆したシート、あるいは非接着面に塗布・ゲル化してから剥離して得た単独シート、金属製手形やパイプに浸漬塗布後、ゲル化させてから剥離して得た手袋や中空体などの製造に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられる2量体構造を有する縮合リン酸エステルと従来の単量体構造を有するエステルの熱重量分析の図である。
本発明のRDPはレゾールシノールビス(ジフェニルフォスフェート)、BDPはビスフェノールAビス(ジフェニルフォスフェート)であり、従来のCDPはクレジルジフェニルフォソフェート、TCPはトリクレジルフォスフェートである。

Claims (3)

  1. アクリル樹脂粉末と可塑剤を主成分とするアクリル樹脂系プラスチゾル組成物において、可塑剤として縮合リン酸エステルを、アクリル樹脂系粉末100重量部に対して100〜300重量部用いることを特徴とするプラスチゾル組成物。
  2. 請求項1の縮合リン酸エステルが、レゾルシノールビス(ジフェニルフォスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルフォスフェート)、ビスフェノールAビス(ジクレジルフォスフェート)から選ばれた1種または2種以上の混合物を用いることを特徴とする特許請求項1記載のプラスチゾル組成物。
  3. 請求項1、2に記載のプラスチゾル組成物において、ヒドロキシ脂肪酸エステルを、プラスチゾル組成物100重量部に対して0〜25重量部用いることを特徴とするプラスチゾル組成物。
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