JP3885992B2 - ライニング層並びにその施工法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はライニング層並びにその施工法に関するものであって、詳しくはウレタン系樹脂を使用した樹脂モルタルからなるライニング層とその施工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、下水道等のライニングは主にエポキシ樹脂系の下地調整層の上部にエポキシ樹脂系の上塗り層をライニングして仕上げられていた。しかしながらエポキシ樹脂にはカブレ、臭気があり作業環境上に問題がある、冬季の低温硬化性が悪く施工期間が長くなる等の課題が残されていた。また、下地調整層に使用するエポキシ樹脂エマルジョンは耐酸性が悪く酸性の廃液が混入する場合のあるライニング層には適合しないという潜在的な問題があった。更に下地が水分を含む状態において施工すると下地の水分が揮発してライニング層を突き上げるため施工後にフクレて剥離が生じることがあった。
【0003】
本発明は斯かる上記のような問題に鑑み、鋭意検討した結果なされたものであって、限定した骨材を含むウレタン樹脂系のライニング層を形成させることにより前記従来の課題、問題を解決したものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記のような課題、即ち、エポキシ樹脂系のモルタルライニングを施工した際のカブレや臭気、冬季の低温硬化性の問題並びに耐酸性等の性能を向上させんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記のような課題を解決するために本発明に係わるライニング層には水に分散しうる水性ポリオールを主剤とし、硬化剤としてイソシアネート化合物、好ましくはポリメリックMDIを使用するとともに水硬性セメント、好ましくは高炉セメント並びに骨材を少なくとも配合した配合物を使用している。
【0006】
ライニング層に使用する配合物の主剤の水性ポリオールにはポリヒドロキシ化合物としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール若しくはオキシアルキレン誘導体と多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、若しくは多価カルボン酸エステルより得られるエステル化合物。ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアセタールポリオール、ヒマシ油ポリオール等のポリオール化合物やその変性体が挙げられる。また、水性ポリオールには、水分散性ポリオールがある。
水分散性ポリオールとは水酸基を有する水に分散可能な樹脂であって、例えば、水酸基含有成分としてメタアクリル酸2ヒドロキシエチルエステル、メタアクリル酸2ヒドロキシプロピルエステル、メタアクリル酸2ヒドロキシプロピルエステル等の少なくとも1種を含み、アクリロニトリル、メタアクリル酸、メタアクリル酸アルキルエステル等の不飽和化合物から選ばれる少なくとも1種類の不飽和化合物とを乳化重合して調製されたアクリル共重合体系ポリオールや、芳香族、脂肪族、脂環族ジイソシアネートあるいはそれらを使用したイソシアネートオリゴマーとポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリット、ソルビトール等の多価アルコールあるいはビスヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酢酸等のヒドロキシカルボン酸の中から選ばれた少なくとも1種類以上のアルコール化合物をウレタン化反応し、必要によりカルボン酸を中和したウレタン系ポリオール等を挙げられる。なお、主剤に硬化助剤として水系ジブチル錫ジウラートを0.1重量%添加することによりタックフリー迄の時間を短縮することができる。
【0007】
ライニング層に使用する配合物の硬化剤にはイソシアネート化合物、詳しくは2個以上の官能基を持つポリメリックジイソシアネート、好ましくはポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートMDIであって、NCO%が15〜32%のものが好ましい。
ポリメリックMDIはダウケミカル社製のポリメリックMDI「PAPI2027」、ICIポリウレタンズ社製のポリメリックMDI「ルビネートM」又はバイアー社製のポリメリックMDI「MONDUR XP700」等を使用できる。
このようなポリメリックMDIを使用する目的は溶剤の使用に伴う前記のような様々な問題を排除するためであり、この種の硬化剤を使用することなく本発明の目的を果たすことができない。
【0008】
本発明に使用される水硬性セメントにはポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、高アルミナ含有の速硬化型セメント等が使用できる。
【0009】
本発明に適宜骨材が配合される。骨材としては、碍子のリサイクル粉末、珪砂、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、製鉄ダスト、その他ガラス、その他セラミックの粉砕物等がある。
この中でも碍子のリサイクル粉末は寸法変化率が小さいため床材の環境変化による寸法変化を抑制する作用があり好ましいことが確認されている。
これらの骨材は単独で使用されるか、適宜、複数の成分が混合されて使用される。該骨材の粒子径は0.05〜3mmが使用され、0.1〜2mmの粒子サイズがさらに好ましい。0.05mm未満では作業性が悪くなり好ましくない。3mmを超えると作業性が劣り、仕上がりがよくないため好ましくない。
【0010】
また、ライニング層を着色する目的で水系ポリオールに着色トナーを予め添加することにより混合状態が判りやすく、混合を確実にできるため斑の無い仕上がりが得られる。
これらの配合材料の好ましい配合割合は水性ポリオール100重量部に対して、水硬性セメント50〜300重量部、イソシアネート化合物100〜120重量部、骨材50〜300重量部が適合している。
【0011】
水硬性セメントが50重量部未満では水硬性セメントによる水分の吸収が少なくなりイソシアネート化合物と水分との反応により発泡する傾向が強くなり適さない。300重量部を超えるとはモルタル床用配合物が硬くなりすぎて作業性が低下する、水硬性セメントが多いため耐薬品性が悪くなる等の傾向があり好ましくない。
イソシアネート化合物が100重量部未満では硬化性が劣るため好ましくない。
逆に120重量部を超えると水分と反応して発泡する傾向があり適さない。
骨材について述べれば50重量部未満では仕上がり床の耐摩耗性が劣ること、仕上がり性が悪くなるため好ましくない。300重量部を超えるとライニング材が高粘度となるため作業性が悪くなり好ましくない。
【0012】
このように調製されたライニング層は一般にコンクリートの床下地に塗工されるが、下地として汚れがないこと、ヒビ割れがないこと、植物油、鉱物油等がしみこんでいないことが好ましい。
汚れが有る場合は洗剤による洗浄、ヒビ割れが有る場合はセメント配合物による充填、オイル等については中性洗剤による洗浄等の手段により調整できる。
下地に使用されるコンクリート等の乾燥程度については特に制約はなく、この点が本発明の特徴になっている。
【0013】
以下具体的な実施例について説明する。
実施例1
主剤として水性ポリオール(メーカー名 バイエル社、商品名 ディスモフェン1145)を50重量部、界面活性剤(花王 レベノール)7重量部、水50重量部、硬化剤としてポリメリックMDI(メーカー名 バイエル、商品名 44V10)を100重量部の比で配合した樹脂340重量部、更に高炉セメントを150重量部、粒子径0.5〜1ミリの珪砂250重量部、水60重量部を容器に配合し充分にハンドミキサーにて攪拌したものを実施例1のライニング材とした。
該ライニング材を セメントモルタルを打設後60日経過した下地(含水率4.8%)に3ミリ厚に鏝で塗布して実施例1のライニング層を施工した。
【0014】
実施例2
実施例1と同様に調整した樹脂340重量部、ポルトランドセメントを150重量部、粒子径0.5〜1ミリの珪砂300重量部、水60重量部を容器に配合し充分にハンドミキサーにて攪拌したものを実施例2のライニング材とした。
該ライニング材をセメントモルタルを打設後15日経過した湿潤状態の下地に3ミリ厚に鏝で塗布して実施例2のライニング層を施工した。
【0015】
比較例1
エポキシ樹脂 (メーカー名 アイカ工業(株) 品番 JE−2371)100重量部と硬化剤100重量部とを配合したエポキシ樹脂200重量部と、ポルトランドセメント800重量部を容器に配合し、ハンドミキサーにて撹拌したものを比較例1のライニング材とした。
該ライニング材をセメントモルタルを打設後60日経過した下地(含水率4.8%)に3ミリ厚に鏝で塗布して比較例1のライニング層を施工した。
【0016】
比較例2
実施例2に使用したと同一の下地を使用する以外は全て比較例1と同一の条件ライニング層を施工した。施工後1ヶ月経過した時点で下地の水分の揮発に起因すると思われるフクレがライニング層に多数認められた。
【0017】
比較例3
高炉セメント100重量部、粒子径0.5〜1ミリの珪砂200重量部、水60重量部を容器に配合し、ハンドミキサーで撹拌して比較例2のライニング材を調製した。
該ライニング材をセメントモルタルを打設後60日経過した下地(含水率4.8%)に3ミリ厚に 鏝で塗布して比較例2のライニング層を施工した。
【0018】
以上通り施工した実施例、比較例のライニング層について試験評価した結果を下記の表に示す。
なお、施工後1ヶ月経過した時点におけるライニング層のフクレは比較例2以外では認められなかった。
【表1】
Figure 0003885992
【0019】
試験方法
曲げ強度
常態 JIS R5201の規定する測定法に準じて測定する。
*試験体寸法 40×40×160ミリ
*試験体調整 型枠中にライニング材を流し込み、湿空中で24時間貯蔵したのち、脱型して、水中に10日間貯蔵したのち測定する。
3ヶ月間浸漬後 5%硫酸水を満たした容器中に試験体を浸し、5%硫酸水を1週間毎に交換しながら3ヶ月間浸漬したのち、常態の試験に準じて2個の試験体について測定する。
圧縮強度
常態 JIS R5201の規定する測定法に準じて測定する。
*試験体寸法 曲げ強度の試験体と同一
*試験体調整 曲げ強度の試験体調整と同一
3ヶ月間浸漬後 曲げ強度の試験体の同一の浸漬をしたのち、常態の試験に準じて2個の試験体についして測定する。
外観変化 目視で確認する。
△若干の変色が認められる。
×変色が激しい。
浸食深さ 曲げ強度を測定した試験体を5%硫酸水を満たした容器中に1週間毎に5%硫酸水を交換しながら3ヶ月間浸漬したのち、浸食深さを顕微鏡を使用して目視で確認する。
作業時のカブレ 各ライニング層を形成した際にカブレが有ったかどうかで判定する。
低温硬化性 5℃ 雰囲気下での指触乾燥迄の時間を測定する。
【0020】
【発明の効果】
本発明になるライニング層は耐酸性に優れているため、酸性の廃液が混入して酸性状態になりやすい下水道ピット等の内部ライニング材として使用されれば、そのような状態においても浸食されずに長期間にわたり使用することができる。
また、低温硬化性に優れ、しかも施工下地の乾燥が不十分であっても下地との密着性を
確保できるため、冬季の施工においてエポキシ樹脂系のライニング材の硬化性が悪いために工期が長くなるという問題や、下地が乾燥するまで施工できないといった問題を解決することができた。
更にエポキシ樹脂系のライニング材を施工する際のカブレなどの問題がなくなり、作業環境を改良することができた。

Claims (2)

  1. 耐酸性を要求される下水道のライニング層において、水に分散しうる水性ポリオール100重量部に対して、イソシアネート化合物100〜120重量部、水硬性セメント50〜300重量部を少なくとも含む配合物が塗工されて仕上げられているライニング層。
  2. 耐酸性を要求される下水道のライニング層において、水に分散しうる水性ポリオール100重量部に対して、イソシアネート化合物100〜120重量部、水硬性セメント50〜300重量部を少なくとも含む配合物を塗工し仕上げことを特徴とするライニング施工法。
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