JP3793709B2 - 塗床とその施工方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は塗床、詳しくは帯電防止の求められる電気、電子部品等の開発、生産に係わる工場等に必要とされる塗床とその施工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子部品等の生産、開発の工場、試作室をはじめ、各種の事業場等では帯電防止機能を持たせた床材が広く求められている。例えば半導体工場では、帯電防止床の要求が益々レベルアップし、クリーン度についても同様な状況にある。
従来、工場の塗床には耐薬品性、耐水性、耐摩耗性等に優れるエポキシ樹脂を表面にライニングした床が使用されているが、硬度が高く柔軟性に欠けるためコンクリート床下地の伸縮に追随できずクラックが生じ、絶えず補修が必要になることがあった。また近年、ますます電子部品、特に半導体分野では高密度化が進み、ファインパターンを実現するために使用する特定のレジスト材料ではアンモニアガスが回路のパターン形成に悪影響を及ぼし誤作動に伴う品質不良を引き起こす原因になるケースが多発している。しかしエポキシ樹脂はアミン系硬化剤を使用するためアンモニアガスの発生が避けられず、使用できない事態に立ち至っていた。
このような状況を考慮して、発明者らは既に特願平11−86761号において、この様な課題を解決した導電床とその施工法を提案している。しかしながら、尚、施工期間が長い、施工管理が煩雑である等の課題が明らかになり、改良が求められていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記の課題、即ちコンクリート床下地の伸縮に追従性があり、帯電防止機能があり、施工管理が簡便であつて、しかも電子部品等の作業工程に悪影響を及ぼさない塗床とその施工法を提供せんとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記の課題を解決すべく検討した結果なされたもので、下記に詳細について説明する。
本発明に係わる塗床は▲1▼下塗り、▲2▼上塗りの段階を経て仕上げられる。通常一日の施工、若しくは二日の施工で▲1▼〜▲2▼の作業が実施されて仕上げられる。
【0005】
下塗りには、導電性のあるウレタン樹脂系の樹脂モルタルを使用する。該樹脂モルタルには水系ポリオールを主剤とし、硬化剤としてイソシアネート化合物、好ましくはポリメリックMDIを使用するとともに水硬性セメント、導電性材料並びに必要により骨材を配合したものである。
【0006】
樹脂モルタルの主剤に使用される水系ポリオールには水性ポリオール或いは水分散性ポリオールが使用でき、水性ポリオールとはポリヒドロキシグリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、プロピレングリコール、ヘキサンジオールグリセリン、ヘ゜ンタエリスリトール等の多価アルコール若しくはオキシアルキレン誘導体と多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、若しくは多価カルボン酸エステルより得られるエステル化合物、ポリカーボネートポリオール、ポリカブロラクトンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアセタールポリオール、ひまし油ポリオール等のポリオール化合物やその変性体が挙げられる。
【0007】
水分散性ポリオールとは水酸基を持つ水に分散可能な樹脂であつて、例えば、水酸基含有成分としてメタクリル酸2ヒドロキシエチルエステル、メタクリル酸2ヒドロキシプロピルエステル等の少なくとも1種を含み、アクリルロニトリル、メタクリル酸、メタアクリル酸アルキルエステル等の不飽和化合物から選ばれる少なくとも1種類の不飽和化合物とを乳化重合して調整されたアクリル共重合体系ポリオールや、芳香族系、脂肪族系、脂環族ジイソシアネート或いはそれを使用したイソシアネートオリゴマーとポリエチレングリコール、ポリプロピレンク゛リコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリット、ソルビトール等の多価アルコール或いはビスヒドキシプロピオン酸、ヒドロキシ酢酸等のヒドロキシカルボン酸の中から選ばれた少なくとも1種類以上のアルコール化合物をウレタン化反応し、必要によりカルボン酸を中和したウレタン系ポリオール等、その他ポリオールエーテル類、ポリエステルポリオール類等が挙げられる。これらは界面活性剤の乳化作用を利用して水中に分散させることができる。
なお、主剤に硬化助剤として水系ジブチル錫ジウラートを0.01〜0.2重量%添加することによりタックフリーまでの時間を短縮することもできる。
【0008】
硬化剤のイソシアネート化合物は2個以上の官能基を持つポリメリックジイソシアネート、好ましくはポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートであつて、NCO%が15〜32%のものが望ましい。
ポリメリックMDIはダウケミカル社製のホムリメリックMDI「PAPI 12027」、ICIポリウレタン社製のポリメリックMDI「ルビネートM」またはバイヤ社製のポリメリックMDI等を使用できる。
このようなポリメリックMDIを使用する目的は溶剤の使用に伴う前記のような様々な課題を排除するためであり、この種の硬化剤を使用することにより本発明の目的を果たすことができる。
【0009】
本発明に使用される水硬性セメントはポルトランドセメント、白色セメント、高炉セメント等が挙げられる。
【0010】
必要により配合される骨材には碍子のリサイクル粉末、珪砂、炭酸カルシュウム、消石灰、カオリン、クレー、製鉄ダスト、その他ガラス片、セラミックの粉砕物等がある。これらの骨材は単独若しくは混合して使用できる。骨材の粒子径は0.05〜3.ミリ好ましくは0.1〜1.5ミリか゛使用に適している。0.05ミリ以下では作業性が悪くなり好ましくない。5ミリ以上では作業性が劣り、仕上がり性もよくないため好ましくない。
【0011】
これらの配合材料の好ましい配合割合は水性ポリオール100重量部に対して水硬性セメント50〜300重量部、イソシアネート化合物100〜120重量部のほか、骨材が0〜300重量部が配合される。
水硬性セメントが50重量部以下では水硬製セメントによる水分の吸収が少なくなりイソシアネート化合物と水分との反応により発砲する傾向があり適さない。300重量部以上ではモルタル床用配合物が硬くなり過ぎて作業性が低下する、水硬性セメントが多いため耐薬品性が悪くなるため好ましくない。
イソシアネート化合物が100重量部以下では硬化性が劣るため好ましくない。一方120重量部以上では水分反応して発砲する傾向があり適さない。
【0012】
骨材の配合により鏝で塗布する際に骨材がスペーサーとなって均一な厚みの塗布厚が得られやすい、鏝が骨材の上を滑つて鏝の移動が滑らかになり作業性を改善できる、コストを削減できる等の効果が得られる。
【0013】
樹脂モルタルには導電性を付与するために導電材料が配合される。
導電材料としては炭化珪素、カーボングラファイト、炭素繊維、金属粉末、導電性金属酸化物等があり表面の導電レベルに対応した添加量が選定される。
また、その他炭素繊維のクロス又はマツト等を上記樹脂にて含浸しながら塗布してもよい。導電材料の配合率は104〜108 Ωの表面抵抗を得るために樹脂モルタル100重量部に対して5〜80重量%が適合している。
【0014】
下塗り材は密着性に優れるためコンクリート、発泡コンクリート、石材、アスフアルト、その他の下地にも問題なく施工できる。ただし、下地に汚れが付着していたり、ヒビワレがないこと、植物油や鉱物油がしみこんでいないことが望ましい。汚れが付着している場合は洗剤による洗浄、ヒビワレについてはセメント配合物の充填、油類に対しては中性洗剤による洗浄等により調整が行われることが望ましい。
下地の含水率に関しては、未乾燥の状態であつても、水分と反応できるウレタン樹脂の特性のため問題なく施工でき、本発明の特徴になつている。
下塗り層は厚み0.5〜2ミリが好ましく、下塗り材を1回若しくは複数回塗工することにより形成される。塗工作業は鏝、ヘラ、レーキ等により行われることが適している。
【0015】
該下塗り層の上に上塗り層が塗工されて仕上げられる。
該上塗り層にはウレタン樹脂系の塗り床材が採用される。該塗り床材の主剤は疎水性ポリオール、例えば分岐型ポリエーテル、直さ型ポリエーテルポリオール、分岐型ポリエステルポリオール、直鎖型ポリエステルポリオール、脂肪酸変性ポリエステル、水酸基含有ポリウレタン、ポリアクリレート等が使用される。
【0016】
硬化剤としてはトルエンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、芳香族ホムリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート等が使用できる。
【0017】
該塗り床材には、導電性を付与するために導電材料として、例示すれば炭素繊維、カーボングラファイト、酸化亜鉛、チタン酸カリウム等が配合される。これらの中で好ましくは白色もしくは無色の材料が床表面の色調の選択性を確保する上で好ましい。添加量は導電材料と要求レベルにより異なり表面抵抗5×104Ω〜1×108Ω程度を確保する添加量が選定される。尚、上塗りの塗布はコテ、ローラー等による仕上げが適合している。
【0018】
また、粘度調整、たれ止め、充填性等の効果をえるために充填材として炭酸カルシウム、珪石粉、硫酸バリウム、チタン白、クレー等が配合されてもよい。更に着色のために酸化チタン、ベンガラ、酸化鉄、カーボンブラック等の各種の顔料を含むトナーが配合されてもよい。更にウレタン樹脂は夏期の30℃以上の高温で、かつ60%以上の高湿下での施工時においては、空気中の湿気と反応して塗布表面に微少な泡が発生した状態に仕上がる懸念があるため、吸湿材としてゼオライト、活性炭、活性白土、珪藻度、消石灰等をウレタン樹脂100重量部に対して5重量部以上を配合しておくことが好ましい。
【0019】
以下、実施例、比較例により本発明を更に説明する。
実施例1
打設後、60日経過したコンクリート(含水率 5.2%)の表面に下記のように調製した塗り床材を鏝により0.8ミリ厚に塗布し、硬化させて下塗り層を形成した。
下塗り層は5時間で硬化した。 該下塗り層に上塗り層用にウレタン系樹脂の塗り床材(アイカPUR JJ−103/導電材料としてカーボングラファイトを30重量%配合)を鏝で1.2kg/m2塗布して上塗り層を形成して実施例1の床を仕上げた。
上塗り層の硬化時間は20℃において8時間であり、下塗り層と上塗り層の施工期間は1日であつた。
下塗り層用の塗り床材は次ぎのように準備した。主剤としてポリオール(バイエル社 商品名デイスモーン1150)を50重量部当たりに界面活性剤(花王(株)レベノール)5重量部を水45重量部に分散させた水系油脂ポリオール100重量部に、硬化剤としてポリメリックMDI(バイエル社、商品名スミジュール 44V20)を100重量部、セメントを100重量部、並びに導電材料として炭化珪素を100重量部を容器に配合し、ハンドミキサーで十分に撹拌したのち、消石灰3.5重量部並びに粒子径0.5〜1ミリの珪砂200重量部を添加、撹拌し、調製した。
【0020】
実施例2
打設後、下地に10日経過した湿潤状態のコンクリートを使用する以外は実施例1と全て同一にして実施例2の下塗り層と上塗り層とを施工した。
【0021】
比較例1
打設後、28日経過したコンクリート(含水率4.5%)をサンドペーパー#40を装着したポリッシャーでサンデイングして平滑としたのち、クリナーで研磨物を吸引、除去して下地処理した。続いてプライマーとしてアイカピュールJJ−11(エポキシ系樹脂/溶剤)をローラーバケにて0.2kg/m2塗布した。更に下塗りとしいてアイカピュールJJ−12(エポキシ系樹脂)を鏝にて0.5kg/m2塗布した。以上で第1日目の施工作業が終了した。
硬化した該下塗りの表面に中塗りとしてアイカピュールJJ−160(エポキシ系樹脂に導電材料としてカーボングラファイトを30重量%配合)を0.2kg/m2ローラーバケにて塗布して硬化させた。以上で第2日目の施工作業を終了した。
硬化した中塗り層の表面をサンドペーパー#80で研磨、清掃したのち、アイカピュールJJ−165(ポリエステルポリオール/メチレンジイソシアネート系のウレタン樹脂、導電材料として酸化亜鉛を30重量%添加したもの)を鏝にて1.0kg/m2塗布し、硬化させて上塗り層を仕上げた。以上で第3日目の施工作業を終了した。
【0022】
比較例2
比較例1において、下地に打設後10日経過した湿潤状態のコンクリートを使用する以外は全て比較例1と同一の条件で施工して比較例2の塗り床を施工した。施工後30日経過した時点において下地に含まれる水分が揮発して塗り床面を突き上げて生じたと思われるフクレが床面に発生していた。
【0023】
【表1】
Figure 0003793709
【0024】
測定法
1.表面抵抗:2つの電極を91.4cmの間隔で床面に置いて、その電極間に500vを印加した時の表面抵抗を測定する。
2.耐衝撃性:1.8kgの鋼球を高さ80cmより同一場所に落下させ床の異常状態を確認する。
3.伸び(ゼロスパンション):中央部にvノッチを入れたモルタル板(幅100×長さ300×厚み80ミリ)の上に各仕様の仕上げを行い、長さ方向に1分当たり2ミリの引っ張りスピードで伸ばした時のクラックが発生する迄の伸び(ミリ)を測定する。
5.コンクリート付着強さ:JISK6909「研削としい用フェノール樹脂試験方法」により付着強さ(N/mm2)を測定する。
6.仕上がり外観 :施工後30日経過した時点での外観を評価する。
【0025】
【発明の効果】
本発明になる塗床はコンクリート等の下地に下塗り層として、密着性も硬化性に優れ、下地が未乾燥であつても施工できるウレタン樹脂系の樹脂モルタルを採用し、その上に上塗り材としてウレタン樹脂系の上塗り材を塗工して仕上げたものであるため、従来の塗り床材の施工期間に比べて大幅に施工期間を短くできる。また、下地の乾燥程度の調整、確認等の管理が不要になるため極めて施工が簡便になる。
しかも、下塗り層及び上塗り層とも導電性があるため、帯電防止性能に優れた塗り床に仕上げられ、電子部品等の帯電を嫌う事業場の床に最も好ましい仕上げ材となる。
また、高密度化が進んだ半導体工場において、ファインパターンを実現するために使用する特定のレジスト材料においては、エポキシ樹脂系の塗り床材を使用した場合は硬化剤に使用するアミン系化合物から発生するアンモニアガスが回路パターン形成に悪影響を及ぼして品質不良の原因になつていたが、本発明の塗り床材では特殊なガスを発生することがないため、回路パターン形成に悪影響を及ぼすことはなく、安心して使用できる。

Claims (2)

  1. 下地に導電材料が配合されたウレタン樹脂系の樹脂モルタルが塗布されたのち、導電材料を含むウレタン樹脂系の上塗り材が塗布されて仕上げられていることを特徴とする塗床。
  2. 下地に導電材料を含むウレタン樹脂系の樹脂モルタルを塗布したのち、導電材料を含むウレタン樹脂系の上塗り材を塗布して仕上げることを特徴とする塗床の施工方法。
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