JP3885364B2 - 近赤外線吸収フィルター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、近赤外線吸収フィルターに関するものである。本発明に係る近赤外線吸収フィルターはプラズマディスプレイから発する近赤外線を吸収するフィルターの用途に好適である。
【0002】
【従来の技術】
一般に、近赤外線吸収剤を含有させた樹脂であるプラスチック性近赤外線吸収フィルターは、従来からよく知られているものである。その用途としては、サングラス、溶接用眼鏡、ビルや飛行機の窓、あるいは情報読み取りのための光学読み取り装置等が挙げられる。
【0003】
また、最近では、大型薄型の壁掛けテレビとして注目されているプリズマディスプレイパネル(PDP)が、近赤外線を発生し、リモコンなどの誤作動をおこすことがあることから、PDP用フィルターとしても近赤外線吸収フィルターが求められている。
これに対し、特公平2−4881号公報においては、ベンゼンジチオール系金属錯体が熱可塑性樹脂に配合されている光学フィルターが、特公平6−38125号公報においては、アントラキノン化合物あるいは、中心に金属原子を配位するナフタロシアニン系化合物のうちの少なくとも一種を含有する近赤外線吸収フィルムが、特開平4−174402号公報においては、アルミニウム化合物を含有する合成樹脂組成物を更に重合、硬化させた近赤外線吸収フィルターが提案されている。さらに、特開昭63−112592号公報には、アミノチオフェノレート系金属錯体色素として、下記一般式(II)で表される近赤外吸収色素および近赤外線吸収フィルターが開示されている。
【0004】
【化4】
【0005】
(式中、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン、アミノ基、置換アミノ基を示し、Dはイオウ、セレン、イミノ基を、またEは水素原子またはアミノ基を示す。R′はアルキル基を示し、mは1または2を示す。)
しかし、これらのフィルターにおいては、耐光性が劣り実用的に十分でない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、近赤外線吸収性能、可視光線透過性能および耐光性に優れる、PDP用フィルターに好適な、近赤外線吸収フィルターを提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題に鑑み検討を行った結果、上記一般式(II)で表される色素において、窒素に結合している水素を、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいアラルキル基とすることにより、近赤外線吸収フィルターに必須の条件である、近赤外線吸収率が高く、可視光線透過率が高く、かつ、特に耐光性に優れた近赤外線吸収フィルターが得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明の要旨は、下記一般式(I)
【0008】
【化5】
【0009】
(式中、R1 およびR2 は、それぞれ置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいアラルキル基、
【0010】
【化6】
【0011】
は、それぞれ置換基を有していてもよいベンゼン環、Xは、SまたはSe、M1 は、Ni、Pd、Co、Fe、TiO、Sn、SnCl2 またはCu、Z+ は、[R 11 R 12 R 13 R 14 M 2 ] + (R 11 〜R 14 は、それぞれ水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいアラルキル基、R 11 とR 12 は互いに連結してM 2 原子含有脂肪族環を形成してもよく、M 2 は、窒素、リンまたは砒素を表す)、置換基を有していてもよいNアルキル置換ピリジニウムカチオンまたは置換基を有していてもよいNフェニル置換ピリジニウムカチオンを表す。)
で表される金属錯体を含むことを特徴とする近赤外線吸収フィルターに存する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書中、Meはメチル基を、Etはエチル基を、Buはブチル基を、Prはプロピル基を、Phはフェニル基を表し、i−はイソを、n−は直鎖、t−はターシャリーを表す。
【0013】
本発明の近赤外線吸収フィルターに用いられる一般式(I)で表される金属錯体について説明する。
一般式(I)において、R1 およびR2 はそれぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。
【0014】
R1 およびR2 は、好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基、さらに好ましくは、置換基を有していてもよいアリール基である。
R1 とR2 は、互いに異なっていてもよいが、合成などの面から同じであることが望ましい。
【0015】
置換基を有していてもよいアルキル基としては、通常、アリール基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい炭素数1〜5のアルキル基、好ましくは、メチル基、エチル基、t−ブチル基、n−ブチル基などの置換基を有さない炭素数1〜5のアルキル基が用いられる。
【0016】
置換基を有していてもよいアリール基としては、通常、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよいアリール基、好ましくは、アルキル基またはアリール基などの置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基としては、通常アルキル基、アリール基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよいアラルキル基、さらに好ましくは、アルキル基またはアリール基などの置換基を有していてもよいアラルキル基が用いられる。
【0017】
【化7】
【0018】
とは、それぞれ置換基を有していてもよいベンゼン環を表し、置換基を有する場合は、それぞれ同じ置換基を有していても、それぞれ異なる置換基を有していてもよいが、
【0019】
【化8】
【0020】
とが同じであることが好ましい。好ましくは、
【0021】
【化9】
【0022】
であり、R3 〜R10はそれぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アミノ基、置換アミノ基またはシアン基を表し、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ブチル基などの炭素数1〜5のアルキル基、アリール基、ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基、メトキシ基、エトキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基などの炭素数1〜5のアルコキシ基、ニトロ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子などのハロゲン原子、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの置換アミノ基またはシアノ基が挙げられ、さらに好ましくは、水素原子などが用いられる。
具体的に、
【0023】
【化10】
【0024】
等が挙げられ、
【0025】
【化11】
【0026】
等が挙げられる。
Xは、SまたはSeを表し、好ましくはSが用いられる。
M1 はNi、Pd、Pt、Co、Fe、TiO、Sn、SnCl2 またはCuを表し、好ましくはNiが用いられる。
Z+ は、陽イオンを表し、好ましくは、[R11R12R13R14M2 ]+ 、置換基を有していてもよいNアルキル置換ピリジニウムカチオンまたは置換基を有していてもよいNフェニル置換ピリジニウムカチオンなどが挙げられる。
【0027】
R11〜R14は、それぞれ水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいアラルキル基を表し、好ましくは、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基などの置換基を有していてもよい炭素数1〜5のアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表し、さらに好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基が用いられる。R11とR12が互いに連結してM2原子含有脂肪族環を形成してもよい。
【0028】
M2 は、窒素、リンまたは砒素を表し、好ましくは窒素またはリンが用いられる。
[R11R12R13R14M2 ]+ としては、Me4 N+ 、Et4 N+ 、n−Pr4 N+ 、i−Pr4 N+ 、n−Bu4 N+ 、Ph4 N+ 、Me4 P+ 、Et4 P+ 、n−Pr4 P+ 、i−Pr4 P+ 、n−Bu4 N+ 、Ph4 P+ 、
【0029】
【化12】
【0030】
などが挙げられる。
置換基を有していてもよいNアルキル置換ピリジニウムカチオンとしては、
【0031】
【化13】
【0032】
などが挙げられる。
置換基を有していてもよいNフェニル置換ピリジニウムカチオンとしては、
【0033】
【化14】
【0034】
などが挙げられる。
本発明の近赤外線吸収色素は、好ましくは、下記一般式(II)〜(IV)で表される。
【0035】
【化15】
【0036】
式中、R15は置換基を有していてもよいアルキル基を示し、好ましくはメチル基、エチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ブチル基などのアルキル基、更に好ましくは炭素数1〜5のアルキル基が用いられる。
【0037】
【化16】
【0038】
は置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、好ましくは、ベンゼン環、2,6ジアルキルベンゼン環、2,4,6−トリアルキルベンゼン環、さらに好ましくはベンゼン環が用いられる。
これらのうち、一般式(II)のものが好適に用いられる。
本発明に用いる金属錯体は、例えば次のようにして製造するすることができる。
すなわち下記一般式(V)
【0039】
【化17】
【0040】
(式中、
【0041】
【化18】
【0042】
R1 、R2 、Xは、一般式(I)と同様の意義を有する。)で表される化合物を溶媒に溶かし、金属カリウムまたは水酸化カリウムを添加してイオン化させた後、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、TiO、Sn、SnCl2 又は、Cu錯体などの陽イオンと反応させ、さらに窒素、リン又は、砒素の4級塩を加えて安定化させることにより、深い青〜緑白の色素として一般式(I)で表される化合物が合成できる。
【0043】
上記反応は、通常溶媒中で行われる。溶媒としては例えば、テトラヒドロフラン(以下「THF」と略記する)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール等のアルコール、1,2,3−トリクロロプロパン、テトラクロルエチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、スクアラン等の芳香族炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N,N′,N′−テトラメチル尿素等のアミド類、ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類、アセトニトリル、プロパンニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、エナント酸メチル、リノール酸メチル、ステアリン酸メチル等のエステル類が用いられる。これらの溶媒の中で、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒が好ましい。
【0044】
また、上記反応の反応温度は、室温もしくは、0℃〜50℃で円滑に実施できる。
一般式(V)で表される化合物は、2−アミノベンゼンチオールをN−アリール化することにより合成できる。また、フェノチアジンのLi等の還元剤による還元的開環反応によっても合成することができる。例えば、N−フェニル置換体であるN−フェニル−o−アミノベンゼンチオールは、WO9616051に従い、次のようにして合成することができる。すなわち、式(VI)に示すようにフェノチアジンにLiを反応させ、N−フェニル−o−アミノベンゼンチオールを合成することができる。
【0045】
【化19】
【0046】
また、N−置換体であるN−メチル−o−アミノベンゼンチオールやN−フェニル−o−アミノベンゼンチオールは、式(VII)に示すようにHetrocycles 23(10)2509(1985)に従い、ベンゾチアゾールを原料として、水酸化リチウムアルミニウム(以下、「LAH」と略記する)による還元的開環反応により、合成することができる。
【0047】
【化20】
【0048】
更に、前記中心金属を含む金属錯体化合物は、近赤外領域に強い吸収を示し、ブルー乃至グリーンの色調であり、PDP用前面フィルターとして好適に使用できる。
本発明の近赤外線吸収フィルターは、一般式(I)で表される金属錯体を含んでいればよく、通常、透明基板の少なくとも一方の面に一般式(I)で表される金属錯体を含む近赤外線吸収層を設けてなるが、一般式(I)で表される金属錯体を透明基板中に練り込んでもよい。
【0049】
透明基板としては、実質的に透明であって、吸収、散乱が大きくない基板であればよく、特に制限はない。その具体的な例としては、ガラス、ポリオレフィン系樹脂、非晶質ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂等を挙げることができる。これらの中では、特に非晶質ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂が好ましい。
【0050】
これらの透明基板を構成する樹脂は、一般的に公知である添加剤、例えばフェノール系、燐系などの酸化防止剤、ハロゲン系、燐酸系等の難燃剤、耐熱老化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等を配合することができる。
また、透明基板を構成する樹脂は、公知の射出成形、Tダイ成形、カレンダー成形、圧縮成形等の方法や、有機溶剤に溶解させてキャスティングする方法などを用い、フィルム又はシート(板)状に成形される。その厚みは、目的に応じて通常10μm〜5mmの範囲にされる。かかる基材は、未延伸でも延伸されていてもよい。さらに、異なる樹脂からなる複数の層が積層されていてもよい。
【0051】
本発明の近赤外線吸収フィルターの製造方法としては、例えば透明基板に、一般式(I)で表される金属錯体を含む塗工液をコーティングすることにより製造される。
一般式(I)で表される金属錯体を含む塗工液の調製方法は、通常一般式(I)で表される金属錯体を溶剤中にバインダー樹脂とともに溶剤に溶解させる方法が用いられる。
【0052】
この方法では、一般式(I)で表される金属錯体が溶剤中に溶解しない場合は、予め、一般式(I)で表される金属錯体を分散剤に溶かした後、バインダーとともに溶剤中に分散させる方法が通常用いられる。
このとき溶剤に溶解される一般式(I)で表わされる金属錯体、バインダー、分散剤などの固形分濃度は、通常5〜50重量%、全固形分に対する一般式(I)で表わされる金属錯体の濃度は、通常1〜80重量%、好ましくは5〜70重量%である。
【0053】
バインダーとしては、ポリメチルメタクレート樹脂、ポリエチルアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。バインダーの配合量は、一般式(I)で表される金属錯体に対して、通常10〜200重量%、好ましくは30〜100重量%である。
【0054】
分散剤としては、ポリビニルブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、硬化ロジン、ロジンエステル、マレイン化ロジン、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。分散剤の配合量は、一般式(I)で表される金属錯体に対して、通常0〜100重量%、好ましくは0〜70重量%である。
【0055】
また、一般式(I)で表される金属錯体を含む塗工液には、一般式(I)で表される金属錯体の他の近赤外線吸収剤を添加しても良い。添加できる近赤外線吸収剤としては、有機物質であるニトロソ化合物及びその金属錯塩、シアニン系化合物、スクワリリウム系化合物、チオールニッケル錯塩系化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、トリアリルメタン系化合物、インモニウム系化合物、ジインモニウム系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、アミノ化合物、アミニウム塩系化合物、あるいは、無機物であるカーボンブラックや、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズ、周期律表4A、5Aまたは6A族に属する金属の酸化物、もしくは炭化物、またはホウ化物などが挙げられる。
【0056】
一般式(I)で表される金属錯体を含む塗工液のコーティングは、ディッピング法、フローコート法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法及びエアーナイフコート法等の公知の塗工方法で、膜厚が、通常0.1〜30μm、好ましくは0.5〜10μmとなるように塗布される。
【0057】
本発明の近赤外線吸収フィルターは、そのままPDP用フィルターとして用いることができるが、電磁波カット層、反射防止層、ぎらつき防止(ノングレア)層などを設けることが好ましい。
電磁波カット層は、金属酸化物等の蒸着あるいはスパッタリング方法等が利用できる。通常は酸化インジウムスズ(ITO)が用いられる。誘電体層と金属層を基材上に交互にスパッタリング等で積層させることで1000nm以上の光をカットすることもできる。誘電体層としては酸化インジウム、酸化亜鉛などの透明な金属酸化物等であり、金属層としては銀あるいは銀−パラジウム合金が一般的であり、通常、誘電体層より3層、5層、7層あるいは11層程度積層する。基材は、該フィルターをそのまま利用しても良いし、樹脂フィルムあるいはガラス上に蒸着あるいはスパッタリング後に、該フィルターと貼り合わせても良い。
【0058】
反射防止層は、表面への蛍光灯などの外光の写り込みを防ぎ、表面の反射を抑えてフィルターの透過率を向上させるために設けられ、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法等で単層あるいは多層に積層させる方法、アクリル樹脂、フッ素樹脂などの屈折率の異なる樹脂を単層あるいは多層に積層させる方法等がある。また、反射防止処理を施したフィルムを該フィルター上に貼り付けることもできる。
【0059】
また、ぎらつき防止(ノングレア)層は、フィルターの視野角を広げる目的で、透過光を散乱させるために設けられ、シリカ、メラミン、アクリル等の微粉体をインキ化して、表面にコーティングする方法などを用いることができる。インキの硬化は、熱硬化あるいは光硬化を用いることができる。また、ノングレア処理したフィルムを該フィルター上に貼り付けることもできる。
【0060】
本発明の近赤外線吸収フィルターは、更に必要に応じて、ハードコート層を設けてもよい。
本発明の近赤外線吸収フィルターは単独はもちろん透明のガラスや他の透明樹脂板等と貼り合わせた積層体として用いてもよい。
本発明の近赤外線吸収フィルターは、ディスプレイ用フィルター、サングラス、保護眼鏡、リモコン受光器などに好適に使用できる。
【0061】
【実施例】
以下に、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
配位子の合成例1
N−メチル−o−アミノベンゼンチオールの合成は、Hetrocycles23(10)2509(1985)を参考にし、ベンゾチアゾールを原料として、LAHによる還元的開環反応により、窒素雰囲気下で以下のように行った。
モレキュラシーブにて乾燥したTHF約10ml、LAH0.038g(0.001mol)をフラスコ内に入れ、その中にベンゾチアゾール1.35gを滴下したところ発熱した。発熱がおさまった後、フラスコをオイルバスに入れ、バス温度60〜70℃に保ちながら、約3時間還元させた。原料のフェノチアジンが消失したのをTLCで確認後、LAHを分離し、THFを留去し、1.30g(収率93.5%;オレンジ色、半固体状態、マススペクトル[M/Z=139])のN−メチル−o−アミノベンゼンチオールを得た。
【0062】
金属錯体の合成例1
エタノール約20mlにKOH0.004molを溶かし、その溶液にN−メチル−o−アミノベンゼンチオール0.49g(0.004mol)のエタノール溶液10mlを攪拌しながら加えリガンド溶液とした。
撹拌している上記リガンド溶液にエタノール10mlにニッケル(II)クロリド・6水和物0.48g(0.002mol)を溶解させた溶液を滴下したところ、溶液は、濃紺に変化した。
【0063】
この状態で、約1時間攪拌した後、エタノール10mlにテトラブチルアンモニウムブロミド0.002molを溶解した溶液を加え、さらに1時間攪拌した。
生成した沈殿を濾別し、エタノールで洗浄し、乾燥したところ、収量0.57g(収率55%)で下記一般式(VIII)で表わされるテトラブチルアンモニウムビス(2−メチルアミノベンゼンチオール)ニッケレート錯体が得られた。この錯体は、メタノール溶液で、844nmにε=37000の強い吸収を示した。
【0064】
【化21】
【0065】
金属錯体の合成例2
テトラブチルアンモニウムビス(2−フェニルアミノベンゼンチオール)ニッケレート錯体の合成を以下のように合成した。
N−フェニル−o−アミノベンゼンチオールを配位子とする錯体は、特許(WO9616051)中のN−フェニル−o−アミノベンゼンチオールの合成をを参考にし、フェノチアジン0.40g(0.002mol)にLi0.084g(0.012mol)を反応させ、開環したリチオ体を合成後、その溶液にニッケル(II)クロリド・6水和物0.24g(0.001mol)をエタノール10mに溶解させた溶液を添加した。
【0066】
その後、金属錯体の合成例1と同様に、テトラブチルアンモニウムブロミドを作用させ、濾過、洗浄、乾燥したところ、収量0.59g(収率85%)で下記一般式(IX)で表わされるテトラブチルアンモニウムビス(2−フェニルアミノベンゼンチオール)ニッケレート錯体が得られた。この錯体は、メタノール溶液で、908nmにε=35000の強い吸収を示した。
【0067】
【化22】
【0068】
金属錯体の合成例3
テトラブチルアンモニウムブロミドの代わりに、テトラブチルホスホニウムブロミドを使用した以外は、金属錯体の合成例2と同様の方法で合成したところ、収量0.57g(収率80%)で下記一般式(X)で表わされるテトラブチルホスホニウムビス(2−フェニルアミノベンゼンチオール)ニッケレート錯体が得られた。この錯体は、メタノール溶液で、920nmにε=36000の強い吸収を示した。
【0069】
【化23】
【0070】
実施例1
金属錯体の合成例1で得たテトラブチルアンモニウムビス(2−メチルアミノベンゼンチオール)ニッケル錯体の5重量%メチルエチルケトン溶液0.6gに、ポリメチルメタクリレート樹脂のメチルエチルケトン/トルエン(=1/1)溶液(樹脂濃度20重量%)を3.0g添加し、超音波洗浄機にて、完全に溶解させた後、この塗工液を、バーコータ#24で乾燥後の膜厚が6μmとなるよう塗工し、近赤外線吸収フィルターを得た。
【0071】
このフィルターの近赤外線吸収を、日立分光光度計U−3500で測定した。λmaxは、875nmであり、透過率は20.2%であった。
また、リモートコントロール装置前面に、このフィルターを置き、電気機器の操作を試みたが、電気機器は作動せず、リモートコントロール装置で使用される近赤外線を遮蔽することを確認した。
【0072】
更にキセノンロングライフフェードメーター(FAL−25AX−HCB−EC)(スガ試験機社製品)により、200時間照射し、875nmにおける照射前後の吸収強度を測定したところ、照射後の強度は、照射前強度の75.5%と、耐光性が高いことが確かめられた。また、200時間照射後の近赤外線フィルターをリモートコントロール装置前面に置き電気機器の操作を試みたが、電気機器は作動さず、リモートコントロール装置で使用される近赤外線を遮蔽することを確認した。
【0073】
実施例2
金属錯体の合成例2で得たビス(2−フェニルアミノベンゼンチオール)ニッケル錯体の5重量%メチルエチルケトン溶液0.6gに、ポリメチルメタクリレート樹脂のメチルエチルケトン/トルエン(=1/1)溶液(樹脂濃度20重量%)を3.0g添加し、超音波洗浄機にて、完全に溶解させた後、この塗工液を、バーコータ#24で塗工し、近赤外吸収フィルターを得た。塗布膜圧は、6μmであった。
【0074】
このフィルターの近赤外吸収を、日立分光光度計U−3500で測定した。
λmaxは、1055nmであり、透過率は17.8%であった。
実施例1と同様にリモートコントロール装置を使用し、使用される近赤外線を遮蔽することを確認した。
更にキセノンロングライフフェードメーター(FAL−25AX−HCB−EC)(スガ試験機社製品)により、200時間照射し、1055nmにおける照射前後の吸収強度を測定したところ、照射後の強度は、照射前の強度の70.9%であり、耐光性が高いことが確かめられた。また、200時間照射後の近赤外線フィルターをリモートコントロール装置前面に置き電気機器の操作を試みたが、電気機器は作動さず、リモートコントロール装置で使用される近赤外線を遮蔽することを確認した。
【0075】
比較例
エタノール約20mlにKOH0.004molを溶かし、この溶液にo−アミノベンゼンチオール0.50g(0.004mol)のエタノール溶液10mlを攪拌しながら加え、リガンド溶液とした。
撹拌しているリガンド溶液にエタノール10mlにニッケル(II)クロリド・6水和物0.48g(0.002mol)を溶解した溶液を滴下したところ、溶液は、濃紺に変化した。
【0076】
この状態で、約1時間攪拌した後、エタノール10mlにテトラブチルアンモニウムブロミド0.002molを溶解した溶液を加え、さらに1時間攪拌した。
生成した沈殿を濾別し、エタノールで洗浄し、乾燥すると収量0.61g(収率56%)で下記一般式(XI)で表わされるテトラブチルアンモニウムビス(アミノベンゼンチオール)ニッケレートが得られた。この錯体は、メタノール溶液で、807mにε=24000の吸収を示した。
【0077】
【化24】
【0078】
得られた色素を実施例1と同様の方法でフィルム化したところ、λmaxは、824nmであり、透過率は、19.8%であった。
更にキセノンロングライフフェードメーター(FAL−25AX−HCB−EC)(スガ試験機社製品)により、200時間照射し、824nmにおける照射前後の吸収強度を測定したところ、照射後の強度は、照射前の強度の50.8%であり、耐光性に劣る。
【0079】
【発明の効果】
本発明によれば、近赤外線遮蔽性能、可視光線透過性能、耐光性に優れた近赤外線吸収フィルターが得られる。
Claims (7)
- 下記一般式(I)
で表される金属錯体を含むことを特徴とする近赤外線吸収フィルター。 - 透明基板の少なくとも一方の面に一般式(I)で表される金属錯体を含む近赤外線吸収層を有することを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外線吸収フィルター。
- 請求項1ないし3のいずれか一項に記載の近赤外線吸収フィルターを用いることを特徴とするプラズマディスプレイパネル用フィルター。
- 電磁波カット層を有することを特徴とする請求項4に記載のプラズマディスプレイパネル用フィルター。
- 反射防止層を有することを特徴とする請求項4または5に記載のプラズマディスプレイパネル用フィルター。
- ぎらつき防止層を有することを特徴とする請求項4ないし6のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイパネル用フィルター。
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