JP3884983B2 - 廃棄物処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃棄物処理装置に係り、特に、回収した飛灰を溶融する燃焼溶融炉を備えた廃棄物処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
廃棄物処理装置は、熱分解炉により廃棄物を熱分解し、燃焼溶融炉により熱分解ガスを燃焼するとともに、熱分解ガスに同伴された不燃固形物などを溶融処理するものである。このような燃焼溶融炉から排出される飛灰には、例えば、鉛などの重金属が含まれているため、埋立て処理する場合には重金属の溶出を抑える安定化処理が必要であった。そこで、特開昭64-49816号公報では、これらの飛灰を捕集して燃焼溶融炉に投入し、溶融処理するという方法が提案されている。
【0003】
このような溶融処理により生成されたスラグは、一般に、アスファルトやコンクリートの骨材やブロックなどの土木資材に利用されている。また、これらのスラグは、環境庁告示46号溶出試験を実施し、6項目(Pb、Cd、Cr6+、T−Hg、As、Se)の土壌環境基準を満足することが、有効利用の必須条件である。さらに安全性を厳しくとらえ、特定の地方自治体では、例えば、鉛などの重金属の含有濃度を一定の値(例えば、東京都溶融スラグ資源化指針に定められている基準)以下に抑えることを要望される場合がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような固形物であるスラグの成分分析には時間(例えば、1〜2週間)がかかるため、廃棄物の処理現場でスラグが生成される時点においては、鉛の含有濃度を知ることができない。このため、従来では、鉛の濃度を調整してスラグを製造することができず、特定の自治体の土木資材としての基準値に適さないスラグが生成される場合がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、スラグに含有される鉛の濃度を制御することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の廃棄物処理装置は、上記課題を解決するために、廃棄物を熱分解する熱分解炉と、熱分解炉から排出される熱分解ガスを燃焼するとともに、少なくとも熱分解ガスに同伴された不燃固形物を溶融する燃焼溶融炉と、燃焼溶融炉から排出された燃焼排ガスに含まれる飛灰を回収する集塵装置と、集塵装置が回収した飛灰を燃焼溶融炉に投入する飛灰還流手段とを備え、この飛灰還流手段は、燃焼排ガスの硫黄酸化物または塩化水素の濃度に基づいて、燃焼溶融炉に投入する飛灰の量を制御することを特徴とする。
【0007】
すなわち、本発明は、スラグ中の鉛の濃度と、燃焼溶融炉に投入する飛灰の量を介して排ガス中の硫黄酸化物及び塩化水素の濃度との間に相関があることから、排ガス中の硫黄酸化物または塩化水素の濃度を分析することにより、スラグ中の鉛の濃度を推定できることに着目してなされたものである。そして、この推定値に基づいて燃焼溶融炉に投入する飛灰の量を調整することにより、スラグに含有される鉛の濃度を制御することができる。このようにスラグの鉛の濃度を制御できれば、特定の地方自治体の土木資材基準に適したスラグを製造することができる。
【0008】
また、飛灰還流手段は、回収した飛灰を燃焼溶融炉に導く搬送路中の飛灰抜き出す抜き出し手段を備え、燃焼排ガスの硫黄酸化物または塩化水素の濃度が設定値以上である場合に、搬送路内の飛灰を抜き出すようにするができる。これにより、スラグに含有される鉛の濃度を設定値に対応する濃度以下に制御することができる。この場合において、排ガス中の硫黄酸化物または塩化水素の濃度は、SOx計(一般にSO2計またはSO3計)やHCl計などの一般的な計測機器を用いて計測することができる。ここで、設定値は、事前試験またはシミュレーションなどにより予め求めた、例えば、図2に示すようなスラグ中のPb濃度と除塵バグフィルタ出口のSO2濃度との関係、もしくは、図3に示すようなスラグ中のPb濃度と除塵バグフィルタ出口のHCl濃度との関係に基づいて設定され、具体的には、設定値をYとすることでスラグ中のPb濃度がXになるように制御することができる。
【0009】
この場合において、抜き出し手段は、搬送路内の飛灰を抜き出し(系外に排出)側に導く、例えば、ダンパなどの周知の装置で形成され、計測機器の検出値が設定値以上である場合に飛灰を抜き出すように制御されている。なお、飛灰の抜き出し率は、事前に求められた例えば、図4に示すような飛灰の抜き出し率とSO2の濃度との関係、もしくは、図5に示すような飛灰の抜き出し率とHClの濃度との関係などに基づいて調整され、具体的には、ダンパを開く時間の割合もしくはダンパの開度などで調節することができる。なお、飛灰の抜き出し率の変化に対するSO2の濃度の変化は、HClの濃度の変化に比べて大きいので、SO2を検出値とする方が好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の廃棄物処理装置の全体系統構成図である。図1に示すように、熱分解ドラム1は、両端を閉塞された2重構造の筒状容器であり、一端を他端より少し高くすることにより傾斜させて設けられている。この一端側に適宜破砕された廃棄物3の投入口が設けられ、他端側に廃棄物3を熱分解して生成される熱分解ガスの流出口と、熱分解残渣の排出口とが設けられている。熱分解ドラム1の内筒に廃棄物を搬送するスクリューフィーダが設けられ、内筒と外筒の間に軸心と平行となる多数のパイプが配設され、パイプ内を熱分解の熱源である高温空気が他端側から一端側に向けて通流するようになっている。
【0011】
燃焼溶融炉5は、熱分解ドラム1から排出される熱分解ガスが供給されて、燃焼されるとともに、同ガス中に含まれる不燃固形物が溶融されてスラグ7として排出されるようになっている。高温空気加熱器9は、燃焼溶融炉5の後流に配置され燃焼溶融炉5から排出される燃焼排ガスと空気とを熱交換させ、燃焼排ガスの熱を回収して高温空気を生成するようになっている。高温空気は、熱分解ドラム1における熱分解の熱源として熱分解ドラム1に循環供給するようになっている。熱分解ドラム1におくられた高温空気は、廃棄物を加熱して熱分解させた後、再び高温空気加熱器9に戻されて加熱されるようになっている。
【0012】
廃熱ボイラ11は、高温空気加熱器9の後流に位置され、高温空気加熱器9から排出される燃焼排ガスが通流される。廃熱ボイラ11には、水が通流する伝熱管が配設されており、燃焼排ガスの熱を回収して蒸気13を生成し、図示していない発電装置に送るようになっている。
【0013】
減温塔15は、廃熱ボイラ11から排出される燃焼排ガスに水を噴霧して、温度を下げるようになっている。減温塔15で温度が下げられた燃焼排ガスは、除塵バグフィルタ17に導かれ、飛灰が捕集されるようになっている。除塵バグフィルタ17により除塵された燃焼排ガスは、脱塩用の脱塩バグフィルタ19に導かれ、脱塩剤との反応により燃焼排ガス中に含まれる塩化水素が取り除かれる。また、除塵バグフィルタ17により捕集された飛灰は燃焼溶融炉5に投入されるようになっている。脱塩用バグフィルタ19から排出される燃焼排ガスは、誘引送風機21を介して煙突23から大気25へ放出される。
【0014】
高温空気加熱器9と廃熱ボイラ11で捕捉される飛灰は、管路を経て抜き出し手段である切替ダンパ27に搬送されるようになっている。切替ダンパ27は、搬送されてくる飛灰の搬送先を切り換えるもので、一方の搬送先は燃焼溶融炉5であり、他方の搬送先は飛灰を貯留する図示していない飛灰貯留ホッパである。この切り替えは、除塵バグフィルタ17と脱塩用バグフィルタ19との間を通流する燃焼排ガス中の硫黄酸化物濃度を分析する分析計29の検出値に応じて、図示していない制御装置からの制御信号により行われるようになっている。この制御装置は、予め記憶されている設定値と、分析計29から入力された検出値とを比較し、設定値>検出値である場合には、飛灰を燃焼溶融炉5へ搬送する信号及び飛灰貯留ホッパにたまった飛灰を燃焼溶融炉5に戻す信号を出力し、設定値≦検出値である場合には、飛灰を飛灰貯留ホッパへ送る信号を出力するようになっている。
【0015】
脱塩用バグフィルタ19から排出される脱塩残渣は、灰処理装置35へ搬送されて薬剤処理される。さらに、熱分解ドラム1から排出される熱分解残渣は、分別装置37へ送られ、鉄、アルミなどの金属39を再利用するために系外へ搬送し、未燃炭素であるチャーを燃焼溶融炉5へ搬送するようになっている。
【0016】
次に、このように構成される廃棄物処理装置の動作及び特徴を説明する。熱分解ドラム1で熱分解される廃棄物3から可燃性のガスが生成され、後流の燃焼溶融炉5へ送られる。熱分解溶融炉5では、可燃性のガスと分別装置37から送られるチャーを燃焼させるとともに、ガスやチャーに含まれる灰分を溶融し、スラグ7として排出する。燃焼溶融炉5で燃焼された可燃性のガスは、燃焼排ガスとして後流にある高温空気加熱器9、廃熱ボイラ11で熱回収される。熱回収された燃焼排ガスは、減温塔15で温度を下げられ、除塵バグフィルタ17に送られた除塵された後燃焼排ガス中の塩化水素を取り除く脱塩用バグフィルタ19に送られて酸化カルシウムなどの脱塩剤を添加されて脱塩処理される。脱塩後の燃焼排ガスは誘引送風機21より煙突23から大気25へ放出される。
【0017】
燃焼溶融炉5から排出される燃焼排ガス中には、硫黄酸化物、塩化水素及び鉛化合物などを含む飛灰が混じり、これらの飛灰は、燃焼溶融炉5の後流に位置する高温空気加熱器9や廃熱ボイラ11で重力沈降や慣性の作用により捕捉され、また、減温塔15や除塵バグフィルタ17においても捕集される。このとき、鉛化合物などの固体は飛灰内に含有されて捕集される。一方、硫黄酸化物及び塩化物は飛灰に含有されて捕捉されるものもあるが、二酸化イオウなどの気体状になるものは後流に流出して脱塩用バグフィルタ19で処理され脱塩残渣とともに灰処理装置35へ搬送されて薬剤処理される。
【0018】
このようにして、高温空気加熱器9、廃熱ボイラ11、減温塔15、除塵バグフィルタ17で捕捉された飛灰が、系外へ排出せずに燃焼溶融炉5へ戻されることで、系内を循環する飛灰、ひいてはスラグ中の鉛化合物濃度が高くなる。ここで、燃焼溶融炉5に投入された鉛化合物は、一定の比率でスラグ7と飛灰とに分配され、また、燃焼溶融炉5に投入された硫黄酸化物や塩化水素も同様に、一定の比率で燃焼排ガスと飛灰とに分配されることから、系内の硫黄酸化物、鉛化合物の量の増加とともに燃焼排ガスに含まれる硫黄酸化物の量も増加する。
【0019】
そこで、本実施の形態では、燃焼排ガス中の硫黄酸化物の濃度を分析する分析計29を設け、硫黄酸化物の濃度が設定値以上のときに、切替ダンパ27を切替えて高温空気加熱器9と廃熱ボイラ11で捕捉された飛灰を系外に抜き出すようにしている。これにより、スラグ7に含有される鉛の濃度を制御することができる。このようにスラグ7の鉛の濃度を制御できれば、特定の自治体の土木資材基準に適したスラグを製造することができる。
【0020】
本実施の形態では、硫黄酸化物の分析計を設けたがこれに限らず塩化水素の分析計を用いることができる。また、本実施の形態では、高温空気加熱器9と廃熱ボイラ11で捕捉した飛灰を抜き出す構成としたが、減温塔15、除塵バグフィルタ17で捕捉された飛灰を抜き出す構成とすることもできるが、この場合、抜き出した飛灰にダイオキシンの除去処理を施す必要がある。
【0021】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、スラグに含有される鉛の濃度を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の廃棄物処理装置の全体系統構成図である。
【図2】横軸にPb濃度、縦軸にSO2濃度を表し、スラグ中のPb濃度と除塵バグフィルタ出口の燃焼排ガスのSO2濃度との関係を示したグラフである。
【図3】横軸にPb濃度、縦軸にHCl濃度を表し、スラグ中のPb濃度と除塵バグフィルタ出口の燃焼排ガスのHCl濃度との関係を示したグラフである。
【図4】横軸に飛灰の抜き出し率、縦軸にSO2濃度を表し、飛灰の抜き出し率とSO2の濃度との関係を示したグラフである。
【図5】横軸に飛灰の抜き出し率、縦軸にHCl濃度を表し、飛灰の抜き出し率とHClの濃度との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
1 熱分解ドラム
3 廃棄物
5 燃焼溶融炉
7 スラグ
9 高温空気加熱器
11 廃熱ボイラ
15 減温塔
17 除塵バグフィルタ
27 切替ダンパ
Claims (2)
- 廃棄物を熱分解する熱分解炉と、該熱分解炉から排出される熱分解ガスを燃焼するとともに、少なくとも該熱分解ガスに同伴された不燃固形物を溶融する燃焼溶融炉と、該燃焼溶融炉から排出された燃焼排ガスに含まれる飛灰を回収する集塵装置と、該集塵装置が回収した飛灰を前記燃焼溶融炉に投入する飛灰還流手段とを備え、
該飛灰還流手段は、前記燃焼排ガスの硫黄酸化物または塩化水素の濃度に基づいて、前記燃焼溶融炉に投入する飛灰の量を制御する廃棄物処理装置。 - 前記飛灰還流手段は、前記集塵装置が回収した前記飛灰を搬送する搬送路に、該搬送路中の飛灰を抜き出す抜き出し手段を備え、
前記燃焼排ガスの硫黄酸化物または塩化水素の濃度が設定値以上である場合に、前記搬送路内の飛灰を抜き出すことを特徴とする請求項1に記載の廃棄物処理装置。
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