JP3884551B2 - X線スペクトル分析による物質名の検索方法及び検索システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は試料のX線スペクトルの分析結果から試料の組成、濃度と共に、物質名を特定できるようにした検索方法及び検索システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、サンプリングした試料のX線スペクトルに基づいて物質名の判定をおこなう実用化されたシステムとして、例えば警察の鑑識課等で使用されるGSR(Gun-Shot Residue) システムが公知である。
【0003】
このシステムは、例えば図4に示すように、銃を発射した際にその発射した者の着衣等に付着した火薬を採取し、これを電子顕微鏡を使って反射電子像を得、その粒径、真円度等を求めると共に、X線スペクトル分析装置によりその組成、濃度を求め、これらを予め設定してある粒子判定基準と照合して物質名の判定をおこなうものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した物質名の判定システムはもっぱら特定用途向けに構成されたものであり、粒子判定の情報もGSR固有のもののみであったため、他の一般物質(金属や鉱物等)を判定することは不可能であった。
【0005】
本発明はこのような実情に鑑みてなされ、GSRシステム等の用途別にまたは金属、鉱物等の分野別に物質名を短時間で正確に判定することが可能なX線スペクトル分析による物質名の検索方法及び検索システムを提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。
即ち、本発明のX線スペクトル分析による物質名の検索方法は、物質名、組成、濃度、マッチファイル名及び判定条件を含む物質情報を用途別ないしは分野別にディレクトリを分けてファイル保存しておき、試料のディレクトリを指定するとともに、試料のX線スペクトルから該試料の組成又は組成及び濃度を求めるための自動定性処理系統又はファイル保存されているマッチング用スペクトルデータとのスペクトルマッチングを行い、マッチファイル名、組成又は組成及び濃度を求めるスペクトルマッチング処理系統のいずれかを選択し、自動定性処理系統では、試料の組成又は組成及び濃度のいずれかの情報を求める一方、スペクトルマッチング処理系統では、試料のマッチファイル名、組成又は組成及び濃度の情報を求める前処理過程をおこなった後、その求めた組成又は組成及び濃度のいずれかの情報、又は、マッチファイル名、組成又は組成及び濃度の情報のうちの少なくともいずれか一つの情報と前記ディレクトリに保存されている前記判定条件を含む前記物質情報とを照合して物質判定をおこない、試料の物質名を読み出すことを特徴としている。
また、本発明のX線スペクトル分析による物質名の検索システムは、物質名、組成、濃度、マッチファイル名及び判定条件を含む物質情報が用途別ないしは分野別に分けてファイル保存されるディレクトリと、そのディレクトリを指定する手段とを備え、試料のX線スペクトルから該試料の組成又は組成及び濃度を求めるための自動定性処理系統又はファイル保存されているマッチング用スペクトルデータとのスペクトルマッチングを行い、マッチファイル名、組成又は組成及び濃度を求めるスペクトルマッチング処理系統のいずれかの選択に基づいて、自動定性処理系統では、試料の組成、組成及び濃度のいずれかの情報を求める一方、スペクトルマッチング処理系統では、試料のマッチファイル名、組成又は組成及び濃度の情報を求める前処理過程をおこなう手段と、この各前処理過程で求めた組成又は組成及び濃度のいずれかの情報、又は、マッチファイル名、組成又は組成及び濃度の情報のうちの少なくともいずれか一つの情報と指定された前記ディレクトリ内に保存されている前記判定条件を含む前記物質情報とを照合して物質判定をおこなって試料の物質名を読み出す処理手段とからなる自動分析処理を実行することを特徴としている。
【0007】
用途別ないしは分野別にディレクトリを分けて物質情報を保存しておくことにより、各ディレクトリ内での登録データの数を少なくすることができ、検索時間を短くすることができる。また、物質情報は、ユーザが独自に登録することができるので、ユーザ固有の分類を作成することができるため、登録データの少数化・検索時間の短縮をより確実におこなえる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明のX線スペクトル分析による物質名の検索方法及び検索システムの実施形態につき詳細に説明する。
図1は本発明の検索方法の概念構成を示すシステム系統図、図2は検索方法の基本的な手順を説明するためのフローチャートである。まず、物質判定の基準とすることのできる物質情報として、例えば物質名、組成、濃度、マッチファイル名、判定条件等を作成、収集し、これらをX線スペクトル分析装置のフロッピーディスクやハードディスク等に用途別ないしは分野別に分けてファイル保存する(図2のS1,S2)。
【0009】
図1に示すように、このX線スペクトル分析装置では、組成を求めるために自動定性処理系統X又はスペクトルマッチング処理系統Yが選択できる。自動定性の場合、定量計算はスタンダード・レス法、ピーク分離又はオーバーラップ・ファクタ法で計算される。スペクトルマッチングの場合、マッチング用スペクトルデータが、定性結果と共に、好ましいと考えられる定量条件を付加してファイル保存されており、このデータから組成、定量条件を呼び出して定量計算をおこなう。また、スペクトルマッチングの場合、前記マッチング用スペクトルデータからマッチファイル名も呼び出して物質判定のデータとして用いる。これらの結果としての試料の組成と組成及び濃度とマッチファイル名から判定条件に基づいて物質判定がおこなわれ該当する物質名が読み出される(図2のS4〜S5)。なお、前述のS1,S2のステップはメーカーサイドでおこなってもよく、ユーザーサイドでおこなってもよい。ユーザーサイドで物質情報を登録する場合は少なくとも物質名,組成,濃度についての情報を登録すればよい。
【0010】
上述の物質判定に至るまでの組成、組成及び濃度またはマッチファイル名を求める過程を前処理過程と称しており、その前処理過程では、組成を求めるために、自動定性をおこなうか、スペクトルマッチングをおこなうかの選択ができる。また、定量計算の有無も選択できるようになっていて、前処理の過程を用途、分野に応じて選択できるようになっている。前述の前処理過程から物質判定に至る分析処理過程は全て自動的におこなわれる。
【0011】
物質情報を用途別または分野別にディレクトリを分けて保存しておくことにより、用途,分野をまたがって同じ組成や近似する濃度からなる物質が存在する場合であっても、ディレクトリを指定することにより、用途,分野を誤った物質判定結果を得ることがなくなる。
また、物質判定における判定条件は、例えば組成が同じであっても濃度の差によって物質名が異なる場合や、組成が単一に特定されず幅がある物質の場合等においても、指定されたディレクトリ内で明確な物質判定をおこなえるようにするための境界条件を設定するものであり、信頼性の高い分析データ等に基づいて作成される。
【0012】
上述の判定条件については、例えばSi>80%、かつ、Al<5%であれば石英(Quartz) と特定され、また、金の純度が100%のものは24金(純金)と称され、金の純度が18/24(75%)であれば18金と称され、ステンレス鋼では、クロム系ステンレス鋼、クロム・ニッケル系ステンレス鋼があり、さらに用途別に細分化されJIS化されているものだけでも約70種に達しており、それぞれ各化学成分(%)と名称が特定されており、これら等を参考として境界条件の設定ができる。
【0013】
本システムによる物質判定では、まず、ディレクトリを指定すればその後は、上述のように、自動分析処理が実行されるが、その条件の設定が可能であり、例えば、組成を求めるために自動定性を用いるかスペクトルマッチングをおこなうか、定量計算の有無等を適宜に選択することができ、また、自動定性、マッチング、定量計算個々の内容についての条件設定も可能である。
【0014】
例えば、定量計算をおこなうための定量条件としては(図3参照)、必須的におこなわれる「エスケープピーク処理」と「バックグラウンド減算」の他、マッチング用スペクトルデータを用いた「リファレンススペクトル法」または理論計算による「オーバーラップ・ファクタ法」による「ピーク分離」が選択的におこなわれ、ZAF補正計算ではスタンダードデータを用いた「スタンダード法」または理論計算による「スタンダード・レス法」が選択できる。
【0015】
従って、この選択枝の組み合わせにより4つの定量条件の設定ができる。すなわち、(1)「リファレンススペクトル法」による「ピーク分離」と「スタンダード法」による「ZAF補正計算」、(2)「リファレンススペクトル法」による「ピーク分離」と「スタンダード・レス法」による「ZAF補正計算」、(3)「オーバーラップ・ファクタ法」による「ピーク分離」と「スタンダード法」による「ZAF補正計算」、(4)「オーバーラップ・ファクタ法」による「ピーク分離」と「スタンダード・レス法」による「ZAF補正計算」の4通りの定量条件の設定が可能である。
【0016】
なお、スペクトルマッチングを優先的におこなうことにより、試料に最も近似するマッチング用スペクトルデータを検索し、そのデータに付加されている組成と定量条件例えば前記(1)を併せて読み出し、リファレンススペクトルファイルから必要なリファレンススペクトルを呼び出し、スタンダードデータファイルから必要なスタンダードデータを呼び出すことにより(図3参照)、該当する組成について最適の条件下で自動的に定量計算をおこない(S4,5)、信頼性の高い濃度値を得、より正確な物質判定ができる。一方、対応する適切なマッチング用スペクトルデータがファイルされていない場合等においても、従来と同様の理論計算による前記・等の定量条件を選択した自動定量計算により、物質判定が可能である。
【0017】
【発明の効果】
物質情報を用途別ないしは分野別にディレクトリを分けてファイル保存しておき、試料のディレクトリを指定するとともに、試料のX線スペクトルから試料の組成又は組成及び濃度を求める自動定性処理系統若しくはマッチング用スペクトルデータからマッチファイル名、組成又は組成及び濃度を求めるスペクトルマッチング処理系統のいずれかを選択し分析することにより、試料の組成又は組成及び濃度のいずれかの情報、又は、マッチファイル名、組成又は組成及び濃度の情報を求める前処理過程をおこなった後、この各前処理過程で求めた試料の組成又は組成及び濃度のいずれかの情報、又は、マッチファイル名、試料の組成又は組成及び濃度の情報のうちの少なくともいずれか一つの情報を用いて物質判定をおこなうので、各ディレクトリ内での登録データの数を少なくすることができ、検索時間が短くなり、かつ、トータルとしてより多くの登録データ(物質情報)を用意することができる。また、物質情報はユーザが独自で登録することも可能なので、ユーザ固有の分類を作成することができる。これにより、ディレクトリ内の登録データの少数化や検索時間の短縮をより確実におこなえる。さらに、前処理であるX線スペクトル分析方法についても用途、分野別に適当な方法が選べるようにすることで、汎用性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のX線スペクトル分析による物質名の検索方法の一実施形態の概念構成を示すシステム系統図である。
【図2】 同検索方法の手順を説明するフローチャートである。
【図3】 同定量計算の処理流れを説明するためのフローチャートである。
【図4】 従来の物質判定システムの一例を示す系統図である。
Claims (2)
- 物質名、組成、濃度、マッチファイル名及び判定条件を含む物質情報を用途別ないしは分野別にディレクトリを分けてファイル保存しておき、試料のディレクトリを指定するとともに、試料のX線スペクトルから該試料の組成又は組成及び濃度を求めるための自動定性処理系統又はファイル保存されているマッチング用スペクトルデータとのスペクトルマッチングを行い、マッチファイル名、組成又は組成及び濃度を求めるスペクトルマッチング処理系統のいずれかを選択し、自動定性処理系統では、試料の組成又は組成及び濃度のいずれかの情報を求める一方、スペクトルマッチング処理系統では、試料のマッチファイル名、組成又は組成及び濃度の情報を求める前処理過程をおこなった後、その求めた組成又は組成及び濃度のいずれかの情報、又は、マッチファイル名、組成又は組成及び濃度の情報のうちの少なくともいずれか一つの情報と前記ディレクトリに保存されている前記判定条件を含む前記物質情報とを照合して物質判定をおこない、試料の物質名を読み出すことを特徴とするX線スペクトル分析による物質名の検索方法。
- 物質名、組成、濃度、マッチファイル名及び判定条件を含む物質情報が用途別ないしは分野別に分けてファイル保存されるディレクトリと、そのディレクトリを指定する手段とを備え、試料のX線スペクトルから該試料の組成又は組成及び濃度を求めるための自動定性処理系統又はファイル保存されているマッチング用スペクトルデータとのスペクトルマッチングを行い、マッチファイル名、組成又は組成及び濃度を求めるスペクトルマッチング処理系統のいずれかの選択に基づいて、自動定性処理系統では、試料の組成、組成及び濃度のいずれかの情報を求める一方、スペクトルマッチング処理系統では、試料のマッチファイル名、組成又は組成及び濃度の情報を求める前処理過程をおこなう手段と、この各前処理過程で求めた組成又は組成及び濃度のいずれかの情報、又は、マッチファイル名、組成又は組成及び濃度の情報のうちの少なくともいずれか一つの情報と指定された前記ディレクトリ内に保存されている前記判定条件を含む前記物質情報とを照合して物質判定をおこなって試料の物質名を読み出す処理手段とからなる自動分析処理を実行することを特徴とするX線スペクトル分析による物質名の検索システム。
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