JP3697549B2 - 粒子線装置における試料物質同定装置 - Google Patents

粒子線装置における試料物質同定装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、粒子線を試料に照射し試料から発生する信号により得られた構成元素、元素の濃度、元素の分布状態などの試料データから自動的に物質名を同定することができるようにした粒子線装置における試料物質同定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、粒子線(電子、イオン、X線、中性粒子などのプローブ)を試料に照射し、試料から発生する2次的あるいは反射的な粒子(電子、イオン、X線、中性粒子など)のエネルギー(波長あるいは質量)や強度を検出して、試料の構成元素(組成)やその濃度、並びに試料面上の各元素の分布状態を調べるため、様々な粒子線装置が開発されている。
【0003】
これらの粒子線装置では、構成元素、元素濃度、元素分布を正確に求めるための様々な工夫がなされている。例えば、これらの測定結果と化学分析値との比較は、装置の性能を評価する上で大切であり、この比較結果を向上させるための改良がなされている。そして、上記粒子線装置により得られた構成元素、濃度、分布等の分析データに基づいて、成分表などを頼りに人手を用いて試料の物質名の特定を行うようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の粒子線装置においては、試料の元素、濃度、分布を正確且つ客観的に求めることはできるが、その試料がどのような物質名(化合物、混合物、規格、組織、相などとしての名称)なのか、どのようなクラス分けに属するのかなどを自動的に同定したり効率よく調べたりすることができず、上記のように元素濃度などの計測結果を用いて、例えば成分表等を参照しながら、物質名等を探し出すような煩雑な作業が必要であった。
【0005】
本発明は、従来の粒子線装置における上記問題点を解消するためになされたもので、請求項1に係る発明は、試料の物質名を自動的に短時間で同定できるようにした粒子線装置における試料物質同定装置を提供することを目的とする。また請求項2に係る発明は、検索すべき範囲を限定し検索時間を著しく短縮すると共に信頼性を向上させることの可能な試料物質同定装置を提供することを目的とする。また請求項3に係る発明は、物質の組織や微細構造の情報を利用できるようにして検索結果の信頼性の向上を図ることの可能な試料物質同定装置を提供することを目的とする。また請求項4に係る発明は、注目する元素の濃度の合計値が物質の特質を特徴づける場合に検索の信頼性を向上させることの可能な試料物質同定装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するため、請求項1に係る発明は、粒子線を試料に照射し試料から発生する信号により試料の構成元素、元素の濃度、元素の分布状態などの試料分析データを収集する粒子線装置において、未知試料に対して得られた各試料における構成元素とその濃度データを入力する手段と、試料の物質名を検索するために使用する元素名を指定する手段と、物質名に対して各物質を特徴づける各構成元素の濃度範囲が示されている検索データが収納されているデータベースとを有し、データ入力手段から入力された構成元素及びその濃度データと、データベースに収納されている検索データとに基づいて、元素名指定手段で指定された元素名を検索の条件として、試料の物質名の検索を行い試料の物質名を同定する手段を備えて試料物質同定装置を構成するものである。
【0007】
このように構成した試料物質同定装置においては、物質名同定手段により自動的に試料の物質名が検索され同定されるので、成分表などを頼りに物質の特定を人手を用いて行う必要がなくなり、物質同定時間を短縮することができ、また同定した物質名からデータベースが提供する豊富な情報を利用することができる。また物質を特徴づける元素名を指定して物質名を同定するように構成されているので、同定に必要な検索時間を短縮することができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記請求項1に係る試料物質同定装置において、更に試料の物質名を検索するために使用する物質の種類を指定する手段を備え、前記データベースは更に物質名に対する物質の種類が示されている検索データを収納しており、前記物質名検索同定手段は構成元素及びその濃度データと、データベースの検索データとに基づいて、指定された元素名と、指定された物質の種類名を検索の条件として、試料の物質名の検索を行い物質名を同定するように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
このように物質名を同定する検索条件として、更に物質の種類を指定するように構成することにより、検索すべき範囲が限定され、検索時間をより一層短縮することができ、また検索範囲が限定されているので、検索条件を指定元素だけとした場合に比較して、同定結果の信頼性を向上させることができる。またデータベースの構築が容易になり利用もしやすくなる。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る試料物質同定装置において、前記元素名指定手段は、試料の粒魂、下地毎あるいは試料の領域毎の元素の指定を行うように構成されていることを特徴とするものである。このように、検索条件として粒塊・下地毎、あるいは領域毎の元素を指定できるように構成しているので、物質の組織や微細構造の情報が利用でき、検索結果の信頼性を向上させることができる。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に係る試料物質同定装置において、前記元素名指定手段は、濃度を加算する元素、又は濃度に重み付けをして濃度加算する元素の指定を行うように構成されていることを特徴とするものである。このように、濃度を加算する元素名を指定して検索を行うようにしているので、注目する元素の濃度の合計値が物質の性質を特徴づける場合に、物質同定の信頼性の向上を図ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に実施の形態について説明する。図1は、本発明に係る粒子線装置による試料物質同定装置の実施の形態を示す概略ブロック構成図で、本実施の形態においては、粒子線装置として電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)を用い、該EPMAに試料物質同定装置を適用したものを示している。図1において、1はEPMA本体で、電子線発生部、光学顕微鏡、光学系、試料ステージ、分光素子、X線分光検出器などで構成されている。2は未知試料に対して得られた各試料における元素の濃度に関するデータを入力する手段で、3は前記データ入力手段2における元素のうち、検索に使用する元素を指定する手段である。4は物質名に対して各物質を特徴づける各構成元素の濃度範囲を示している検索データが収納されているデータベースで、5は検索を行い物質名を同定するための手段(ソフトウェアなど)である。
【0013】
次に、図1に示した実施の形態の動作について説明する。ここでは、試料としてステンレス鋼を分析したときの物質名の同定を例にとり、動作を説明する。元素濃度データ入力手段2で入力されるデータには、EPMA本体1において各試料に対して測定されたC,Si ,Mn ,P,S,Ni ,Cr ,Mo ,Cu ,・・・・・などの濃度データが含まれている。次に、元素濃度データ入力手段2で入力されるデータのうち、実際に物質名を特定するために使用する元素を指定する。物質名を求める場合には、必ずしも測定した全元素を検索条件にする必要はなく、濃度の高い元素を選んで指定する必要もない。むしろ、物質を特徴づける元素の指定が望ましい。
【0014】
例えば、上記ステンレス鋼の分析においては、Fe ではなくステンレス鋼の代表的な元素のNi ,Cr ,C,Sを指定する。この指定に基づいて、検索同定手段5はデータベース4から該当する物質名の候補を抽出する。この検索の態様例を表1に示す。
【0015】
【表1】
Figure 0003697549
【0016】
表1に示すように、試料によっては該当する物質名の候補は複数個ある場合(試料S2,S3)もあるし、該当するものがない場合(試料S6)もある。次に、物質名が同定されると、この物質に関する情報がデータベースから引き出すことができる。例えば、表1の備考に示したように、合金の組織としての情報も利用できる。なお、物質名として2つ以上の候補が検索結果として出力された場合は、濃度データのみからは、単一の物質を特定することは困難であるが、他の手法、例えば溶融している合金の分布状態をパターン認識などで求め、物質の同定を行うなどの手法が用いられる。
【0017】
以上のように本実施の形態によれば、粒子線装置であるEPMAの従来の役割である試料の元素の濃度情報の提供にとどまるのではなく、試料の物質の同定が容易に行えるようになり、更に同定した物質名から、その物質に関してデータベースが提供する豊富な情報を利用することができるようになる。
【0018】
上記実施の形態においては、物質名検索同定手段における検索の条件として、検索に使用する元素を指定するようにしたものを示したが、検索条件としてはこれ以外にも様々な変形が可能である。例えば、検索条件として元素の他に、次に示すようなデータベースの物質の種類(分類)を指定する手段を加えてもよい。
(1) 無機物、有機物
(2) 金属材料、非金属材料
(3) 鉄鋼、鉄合金、非鉄合金(銅合金、アルミニウム合金、・・・・・)
このような物質の種類を指定する手段を設けて、この種類指定を検索条件に加えることにより、単に指定元素と濃度に関するデータから物質を特定する場合の膨大なデータ検索時間を著しく短縮できるだけでなく、この種類指定はデータベースの構築や利用の上でも重要な検索条件である。
【0019】
また、1つの物質に対し、物質を構成する元素の平均的な組成よりも、その組織や微細構造が物質を特徴づける場合が多い。このような場合に対応させるため、例えば、次に示すように検索の対象とする各粒塊と元素を指定すること、更に粒塊の下地になっている元素を指定することにより、組織や微細構造のデータベースを利用できるようにしてもよく、検索結果の信頼性を向上させることができる。なお、この例はセラミックに対する指定例である。
・粒塊1:Sn ,Ti ,Zr
・粒塊2:Fe ,Ti ,Zr
・下地 :O,Al ,Ca
また、上記のように粒塊と下地に分けて指定する代わりに、粒塊や下地を下記のように異なる元素や異なる濃度の領域とみなして、その領域を指定するようにすることもできる。
なお、この例は鉱物に対する指定例である。
・領域1:Si ,O
・領域2:Mg ,O
・領域3:Al ,O
【0020】
また、物質によっては注目する元素の濃度の合計値が物質の性質を特徴づける場合がある。このような場合、濃度を加算する元素名を指定して、データベースの検索を行うことができる。例えば、下記のように指定して、測定した指定元素の濃度データの加算値がデータベースの中の指定元素の加算値の範囲内にある物質名をリストアップするようにしてもよい。
・試料1〜100 で濃度加算する元素:Ni ,Cr
・試料101 〜 200で濃度加算する元素:C,Si ,Mn ,P,S
【0021】
元素によっては、その濃度は他の特定元素の濃度の何倍かと同等に扱うというような場合があり、そのような場合において濃度加算するときは、次に示すように濃度に重み付けをして加算するようにしてもよい。
・試料201 〜 300で濃度加算する元素:A(1.00),B(2.5),C(0.5)
なお、元素A,B,Cのカッコ内の数字は重み付け係数を示している。
【0022】
また、物質名に対して、各物質を特徴づける元素及びその濃度を定義したデータと物質の種類が示されている検索データを、予めデータベースに収納しておいて、上記のように検索のための元素名は指定せずに、物質の種類を検索条件として指定するようにしてもよい。
【0023】
【発明の効果】
以上実施の形態に基づいて説明したように、請求項1に係る発明によれば、物質名検索同定手段により自動的に物質名を同定するようにしているので、成分表などを頼りに人手で物質を特定する必要はなくなり、物質同定時間を短縮することができ、また同定した物質名からデータベースが提供する豊富な情報を利用することができる。また物質を特徴づける元素名を指定して物質名を同定するようにしているので、同定に必要な検索時間を短縮することができる。また請求項2に係る発明によれば、物質名を同定する検索条件として、更に物質の種類を指定するようにしているので、検索すべき範囲が限定され検索時間をより一層短縮することができ、また検索範囲が限定されているので、検索条件を指定元素の濃度データだけとした場合に比較して、同定結果の信頼性を向上させることができる。また請求項3に係る発明によれば、検索条件として粒塊・下地毎、あるいは領域毎の元素を指定できるように構成しているので、物質の組織や微細構造の情報が利用でき、検索結果の信頼性を向上させることができる。また請求項4に係る発明によれば、濃度を加算する元素名を指定して検索を行うようにしているので、注目する元素の濃度の合計値が物質の性質を特徴づける場合に、物質同定の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る粒子線装置における試料物質同定装置の実施の形態を示す概略ブロック構成図である。
【符号の説明】
1 EPMA本体
2 元素濃度データ入力手段
3 元素指定手段
4 データベース
5 検索同定手段

Claims (4)

  1. 粒子線を試料に照射し試料から発生する信号により試料の構成元素、元素の濃度、元素の分布状態などの試料分析データを収集する粒子線装置において、未知試料に対して得られた各試料における構成元素とその濃度データを入力する手段と、試料の物質名を検索するために使用する元素名を指定する手段と、物質名に対して各物質を特徴づける各構成元素の濃度範囲が示されている検索データが収納されているデータベースとを有し、データ入力手段から入力された構成元素及びその濃度データと、データベースに収納されている検索データとに基づいて、元素名指定手段で指定された元素名を検索の条件として、試料の物質名の検索を行い試料の物質名を同定する手段を備えていることを特徴とする試料物質同定装置。
  2. 前記請求項1に係る試料物質同定装置において、更に試料の物質名を検索するために使用する物質の種類を指定する手段を備え、前記データベースは更に物質名に対する物質の種類が示されている検索データを収納しており、前記物質名検索同定手段は構成元素及びその濃度データと、データベースの検索データとに基づいて、指定された元素名と、指定された物質の種類名を検索の条件として、試料の物質名の検索を行い物質名を同定するように構成されていることを特徴とする試料物質同定装置。
  3. 前記元素名指定手段は、試料の粒魂、下地毎あるいは試料の領域毎の元素の指定を行うように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に係る試料物質同定装置。
  4. 前記元素名指定手段は、濃度を加算する元素、又は濃度に重み付けをして濃度加算する元素の指定を行うように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に係る試料物質同定装置。
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