JP3883928B2 - 気相成長炭素繊維の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、気相成長炭素繊維の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年直径1μm以下の微小径の炭素繊維が発見されており、かかる炭素繊維はその形状によって分類できる。図2(i)に示すような単層カーボンナノチューブがある。単層カーボンナノチューブはグラファイト状の炭素の層であるグラフェンシート5を丸めて円筒状にした形状を有する。また、図2(ii)に示すような多層カーボンナノチューブがある。多層カーボンナノチューブは複数のグラフェンシート5の円筒を同心円状に重ねた形状を有する。さらに、多数の小さなグラフェンシート5の層が軸方向に連続して積層したカーボンナノファイバーがある。カーボンナノファイバーには、図2(iii)及び図3に示すようにグラフェンシート5からなる頂部を切り欠いて底面が開放した略円錐形が重なり合って軸方向に伸びた構造のものや、図4に示すようにグラフェンシート5からなる底面が開放した多角錐形が積層して軸方向に伸びた構造のものや、図2(iv)に示すように小紙片状のグラフェンシート5が積層して軸方向に伸びた構造のものや、図5に示すように小紙片状をなすグラフェンシート5がハの字型に積層して軸方向に伸びた構造のものがある。これらの微小直径の炭素繊維は、素材強度を高めるための使用や、樹脂の導電性フィラーとしての使用、リチウムイオン2次電池の負極材としての使用、水素吸蔵体としての使用等が可能であり、その製造方法が研究開発されている。
【0003】
直径1μm以下の太さの炭素繊維のうち、カーボンナノファイバーの製造方法として鉄系触媒を利用した気相成長法がある。気相成長法における気相成長炭素繊維の成長機構として、以下のような機構が提案され、広く受け入れられている。まず、一酸化炭素を原料として、式1で表される反応により炭素を生成させる。
【0004】
2CO→CO2+C …(1)
そして、図3及び図5に示すように、生成した炭素を鉄の触媒微粒子14aの中に一旦溶解させるか又は鉄カーバイドの形態とし、グラフェンシート5の層が触媒微粒子14aの表面に析出する反応を繰り返し、カーボンナノファイバーである気相成長炭素繊維1を成長させる。この場合に使用される触媒としては、SUS板、インバーなどの合金板、鉄をシリカなどの不活性担体上に担持したものなどがある。かかる鉄系触媒を利用した気相成長法には幾つかの方法がある。
【0005】
気相成長法による第1従来技術(例えば、M.Audier et. al., Carbon, Vol. 19, p217〜224, 1981)として、Fe−Ni合金又はFe−Co合金の基板を触媒とし、この基板上にカーボンナノファイバーを製造する方法がある。
また、第2従来技術(例えば、曽根田靖ら、第24回炭素材料学会予稿集, p210, 1997)として、SUS304の基板を触媒とし、この基板上に一酸化炭素と水素の混合ガスからカーボンナノファイバーを製造する方法がある。
【0006】
さらに、第3従来技術として流動気相合成法(例えば、新エネルギー・産業技術総合開発機構主催「炭素系高機能材料ナノテクノロジーワークショップ」講演要旨集、平成13年4月25日)がある。この方法では、炭素の供給源となるベンゼン、及び触媒となる鉄化合物をフェロセンなどの蒸気を気相として供給し、鉄化合物を熱分解して鉄の微粒子を発生させ、この鉄微粒子を触媒としてカーボンナノファイバーを製造する。
【0007】
また、第4従来技術として、シリカ等の不活性担持体の上に担持された鉄を触媒としてカーボンナノファイバーを製造する方法がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、Fe−Ni合金、Fe−Co合金を用いて製造されるカーボンナノファイバー(第1従来技術)は繊維状から塊状まで多様な形態を有し、繊維直径が10nm以下のものから90nm程度のものまで得られている。さらに、約100nm程度の直径を有する太い繊維も混じり、微小直径で一定の形態を有するカーボンナノファイバーを得ることが難しいという不具合があった。
【0009】
また、SUS(ステンレス)を用いて製造されるカーボンナノファイバー(第2従来技術)は、繊維直径が30nm以下のものも製造可能であるが、約300nm程度の直径を有する太い繊維も混じり、微小直径で一定の形態を有するカーボンナノファイバーを得ることが難しかった。
さらに、フェロセンなどの鉄化合物を用いたもの(第3従来技術)は、触媒コストが高く、製造設備も複雑になるという問題があった。また、一酸化炭素を原料として、第3従来技術と同様の方法を用いたカーボンナノファイバーの製造方法は工業化されていない。
【0010】
また、シリカを担持した鉄触媒を用いて製造されるカーボンナノファイバー(第4従来技術)においては、生成したカーボンナノファイバーから付着している触媒を分離するのに手間とコストがかかるという不具合があった。
本発明は、上記した従来の技術の問題点を除くためになされたものであり、その目的とするところは、簡単な設備を用いて微小直径を有するカーボンナノファイバーを製造でき、生成したカーボンナノファイバーの直径が大きくばらつかず、生成したカーボンナノファイバーを容易に回収できる気相成長炭素繊維の製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、その課題を解決するために以下のような構成をとる。請求項1の発明は、鉄及び1質量%以上の珪素を含有する金属結晶からなる金属基板と、一酸化炭素を含有するガスとを高温下で接触させる気相成長炭素繊維の製造方法である。
【0012】
鉄系触媒を用いる気相成長法においては、得られるカーボンナノファイバーの繊維直径が触媒の粒径に依存すると考えられる。このため、金属基板を構成する金属結晶の微粒子を触媒として使用し、気相成長炭素繊維を金属基板上に生成させる。
高温下でガス中の一酸化炭素は、金属基板に浸炭し、金属基板上に金属結晶の微粒子が発生し、この微粒子の上で式1の反応によって炭素を生成する。なお、金属基板上に金属結晶の微粒子が発生するメカニズムの詳細は解明されていない。生成した炭素は、この金属結晶の微粒子中に溶解するか又は微粒子の表面を移動する。そして、金属基板と金属結晶の微粒子との間の境界において、金属結晶の微粒子の表面にグラフェンシートの層が析出し、以後、この析出が繰り返されて気相成長炭素繊維が生成する。生成した気相成長炭素繊維の頂部には金属結晶の微粒子が付着している。
【0013】
また、気相成長炭素繊維の生成において、金属基板中に存在する珪素が関与する機構はわかっていない。しかし、発明者が行った試験結果より、金属基板中の珪素含有量が多くなると、触媒として機能する金属結晶の微粒子の大きさは、ほぼ均一な微小径を有するものとなり、気相成長炭素繊維の繊維直径も小さく安定すると考えられる。そして、金属基板中の珪素含有量が少ないと、気相成長炭素繊維の繊維直径が小さく安定するという効果を期待できない。金属基板中の珪素含有量は好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上がよい。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載の気相成長炭素繊維の製造方法であって、前記金属基板を、珪素含有量が1質量%〜7質量%である電磁鋼板、又はFeSi2とする気相成長炭素繊維の製造方法である。
鉄及び珪素を成分として含有する金属結晶の基板として、電磁鋼板やFeSi2を挙げることができる。珪素含有量が1質量%〜7質量%である電磁鋼板や、FeSi2の金属結晶板を、気相成長炭素繊維を生成させる金属基板として使用する。
【0015】
なお、電磁鋼板において珪素含有量を2質量%〜5質量%とすることがより望ましく、また、電磁鋼板は方向性電磁鋼板でも無方向性電磁鋼板でもよい。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の気相成長炭素繊維の製造方法であって、金属基板と一酸化炭素を含有するガスとが接触するときの温度を、250℃〜800℃とする気相成長炭素繊維の製造方法である。
【0016】
気相成長炭素繊維を生成する反応は、反応温度が低すぎると充分な反応速度を得られない。また、炭素が一酸化炭素から式1の反応によって生成するが、式1の平衡は温度が高すぎると左向きに有利となり、式1の高い反応率を得られない。250℃〜800℃の温度範囲では、気相成長炭素繊維を生成する反応速度も速く、一酸化炭素から炭素を生成する反応率も高くなる。なお、この温度範囲は250℃〜800℃とすることが望ましいが、300℃〜700℃とすることがより望ましい。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の気相成長炭素繊維の製造方法であって、前記ガスが水素をも含有する気相成長炭素繊維の製造方法である。
水素は鉄の触媒活性を高める役割を担う。また、水素が存在することで、鉄触媒が早期に失活することを防止できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、図1を参照して本実施の形態の構成を説明する。
図1に示すように、電磁鋼板からなる金属基板10が石英管12内に設置されている。この金属基板10をなす電磁鋼板は鉄及び珪素を成分として含有する金属結晶の集合体の板である。金属基板10中の珪素含有量は1質量%以上である。なお、金属基板10は鉄を含有し、且つ珪素を1質量%以上含有する金属結晶の集合体の板であればよい。たとえば、鉄を3質量%以上含有する電磁鋼板であってもよいし、FeSi2の金属結晶であってもよい。
【0019】
また、石英管12は図示しないガス流入口とガス流出口を備えて中にガスを流すことができる構成となっている。金属基板10の面は石英管12内を流れるガス流の方向と平行に置かれている。金属基板10は石英管12内でガス流の中に位置していればよく、石英管12内での金属基板10の面の向きをガス流の方向に対して水平とすることも可能である。
【0020】
さらに、一酸化炭素と水素とを含有する反応原料ガスが準備されており、配管によってこの反応原料ガスを前記ガス流入口から前記ガス流出口へかけて石英管12内を流すことができるように構成されている。反応原料ガスの組成は一酸化炭素が30体積%、水素が70体積%となっている。反応原料ガスの組成を一酸化炭素が30体積%、水素が70体積%であるとしたが、かかる組成に限定されないことは勿論である。反応原料ガス中の一酸化炭素の濃度は任意であるが、生産性を低くしないために5体積%以上とすることが望ましく、10体積%以上とすることがさらに望ましい。また、水素の濃度は1体積%以上とすることが望ましく、3体積%以上とすることがさらに望ましい。
【0021】
また、反応原料ガスが窒素等の不活性ガスを含有していても問題はない。しかし、酸素や二酸化炭素などの酸化性ガスが気相成長炭素繊維を酸化して分解することを防止する必要がある。このため、反応原料ガス中の酸素濃度を一酸化炭素濃度の半分以下とし、二酸化炭素濃度を一酸化炭素濃度以下とすることが望ましい。
【0022】
さらに、図示しない熱源があり、この熱源が石英管12内の金属基板10及び石英管12内を流れる前記反応原料ガスを250℃〜800℃の温度範囲に昇温し維持可能な構成となっている。
本実施の形態は上記のように構成されており、次にその作用について説明する。
【0023】
まず、前記反応原料ガスを石英管12内の前記ガス流入口から前記ガス流出口へ向けて流す。そして、前記熱源により石英管12内の金属基板10と前記反応原料ガスとを加熱し、これらを250℃〜800℃の温度範囲まで昇温して維持する。
そして、気相成長炭素繊維1が金属基板10に生成する。生成する気相成長炭素繊維1はカーボンナノファイバーであり、従来のものと同様の形状を有する。たとえば、グラフェンシートからなる頂部を切り欠いて底面が開放した略円錐形が重なり合って軸方向に伸びたものや、グラフェンシートからなる底面が開放した多角錐形が積層して軸方向に伸びたものや、小紙片状のグラフェンシートが積層して軸方向に伸びたものや、小紙片状をなすグラフェンシートがハの字型に積層して軸方向に伸びたもの等である。
【0024】
ここで、一般に広く受け入れられている気相成長炭素繊維の成長機構として、たとえば、R.T.K.Baker, M.A.Barber, P.S.Harris, F.S.Feates, R.J.WaiteがJournalof Catalysis 26 (p51〜62、1972)に発表した機構がある。すなわち、前述した図3及び図5に示すように、触媒微粒子14a上で炭素が一酸化炭素などの炭素含有分子から成長し、その炭素が鉄の触媒微粒子14aの表面や内部を通じて移動、拡散し、気相成長炭素繊維1の成長方向に向かってグラファイトシート5の層を形成すると考えられている。この機構にしたがって考えると、気相成長炭素繊維1の繊維直径は触媒微粒子14aの粒子径と深い相関があることになる。すなわち、触媒微粒子14aが100nmの粒子径を有する場合は、約100nmの繊維直径の気相成長炭素繊維1が成長し、10nmの触媒微粒子14aからは約10nmの繊維直径の気相成長炭素繊維1が成長すると考えられる。
【0025】
一方、通常の鋼板を形成する鉄の結晶粒子の粒子径は数μm〜数十μmであり、電磁鋼板の場合には数mmの粒子径を有するものも存在する。しかしながら、通常の鋼板から繊維直径が数十nm〜数百nmである気相成長炭素繊維が得られている。
これらのことから、鋼板などを形成する鉄の結晶の粒子径と、この鋼板上で気相成長炭素繊維を生成させる場合に用いられる触媒微粒子の粒子径との間には相関がないことがわかる。数十μmの鉄の結晶から数十nmの触媒微粒子が発生する機構は現時点では不明であるが、たとえば、数十nmおきに結晶の格子欠陥があり、この格子欠陥がきっかけとなって数十nmの触媒微粒子が発生する機構などが推定される。
【0026】
珪素と鉄を含有する金属基板10を使用すると、生成する気相成長炭素繊維1の繊維直径が小さく安定する理由は現時点では不明である。しかしながら、前述のように繊維直径は成長の基点となる触媒微粒子14aの粒子径に依存することから、珪素と鉄を含有する金属基板10を使用した場合に、何らかの理由で、発生する触媒微粒子14aの粒子径が小さく均一になるものと考えられる。
【0027】
次いで、石英管12内から金属基板10を取りだし、金属基板10に震動を与え、金属基板10上から気相成長炭素繊維1を落して回収する。金属基板10に震動を与えて、気相成長炭素繊維1を金属基板10から落して回収する替わりに、気相成長炭素繊維1を金属基板10からブラシで掻き取って落下させて回収することも可能である。したがって、簡便な設備を用いて容易に気相成長炭素繊維1を回収可能である。なお、気相成長炭素繊維1の先端に付着した鉄の触媒微粒子14aは酸洗や熱処理などにより除去可能である。
【0028】
この回収された気相成長炭素繊維1を樹脂の導電性フィラーとして使用することが可能であり、リチウムイオン2次電池の負極材としての使用、水素吸蔵体としての使用等が可能である。各用途に応じて、気相成長炭素繊維1に洗浄、精製、熱処理などの処理を行う。
本実施の形態にかかる気相成長炭素繊維の製造方法によって、微小な鉄の結晶を触媒として気相成長炭素繊維が生成させることができ、生成する気相成長炭素繊維の形態は微小な直径を有する繊維として安定している。
【0029】
(実施例)
(実施例1)
実施例1における条件を以下のものとした。金属基板10は珪素を3.3質量%含有する方向性電磁鋼板とし、金属基板10の大きさを長さ100mm×幅10mm×厚さ0.5mmとし、石英管12を横置きの直径20mmの大きさとし、反応原料ガスの組成を一酸化炭素が30体積%、水素が70体積%とし、石英管12内を流れる反応原料ガスの流速を標準状態に換算して350cm3/sとし、石英管12内で反応原料ガスと金属基板10を550℃まで昇温して同温度で30分維持し、その後室温まで放置して冷却した。
【0030】
そして、金属基板10上に生成した気相成長炭素繊維を回収し、走査型電子顕微鏡で観察した。その結果、回収された気相成長炭素繊維は繊維直径が70nm〜100nmであり、長さが3μm〜5μmのカーボンナノファイバーであることを確認した。
(実施例2)
金属基板10は珪素を3.0質量%、アルミニウムを0.5質量%、マンガンを0.3質量%含有する無方向性電磁鋼板であり、他の条件は実施例1と同様とした。回収された気相成長炭素繊維を実施例1と同様に観察した結果、実施例1と同様のカーボンナノファイバーであること確認した。
【0031】
(実施例3)
金属基板10を大きさが長さ100mm×幅10mm×厚さ10mmのβ−FeSi2とし、他の条件は実施例1と同様とした。回収された気相成長炭素繊維を実施例1と同様に観察した結果、繊維直径が100nm〜120nmであり、長さが3μm〜5μmのカーボンナノファイバーであることを確認した。
【0032】
(比較例1)
金属基板として、大きさが長さ100mm×幅10mm×厚さ1mmであり、珪素の含有量が0.5質量%以下である普通鋼SS400板を用いた以外は、実施例1と同様の条件で、気相成長炭素繊維を製造した。回収された気相成長炭素繊維を実施例1と同様に観察した結果、繊維直径50nm〜200nm、繊維長1μm〜5μmであった。
【0033】
(比較例2)
金属基板として、大きさが長さ100mm×幅10mm×厚さ0.3mmであり、珪素の含有量が0.3質量%以下であり、鉄、コバルト及びニッケルの合金からなるインバーを用いた以外は、実施例1と同様の条件で、気相成長炭素繊維を製造した。回収された気相成長炭素繊維を実施例1と同様に観察した結果、繊維直径50nm〜100nm、繊維長2μm〜5μmであったが、塊状の気相成長炭素も混在していた。
【0034】
(比較例3)
金属基板として、大きさが長さ100mm×幅10mm×厚さ1mmであり、珪素の含有量が1質量%以下であるSUS304板を用いた以外は、実施例1と同様の条件で、気相成長炭素繊維を製造した。回収された気相成長炭素繊維を実施例1と同様に観察した結果、30nm〜40nmの繊維直径の気相成長炭素繊維の中に約300nmの繊維直径の気相成長炭素繊維も混在していた。
【0035】
【発明の効果】
本発明は、上記のような気相成長炭素繊維の製造方法であるので、簡単な設備を用いて微小直径を有するカーボンナノファイバーを製造でき、生成したカーボンナノファイバーの直径が大きくばらつかず、生成したカーボンナノファイバーを容易に回収できる気相成長炭素繊維の製造方法を提供できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る金属基板と石英管の構成図である。
【図2】従来の気相成長炭素繊維の構造を示す説明図であり、(i)は単層カーボンナノチューブを示し、(ii)は多層カーボンナノチューブを示し、(iii)及び(iV)はカーボンナノファイバーを示す。
【図3】気相成長炭素繊維が鉄の触媒微粒子から生成する状況の説明図である。
【図4】カーボンナノファイバーを形成するグラフェンシートの一形状の斜視図である。
【図5】他の構造の気相成長炭素繊維が鉄の触媒微粒子から生成する状況の説明図である。
【符号の説明】
1 気相成長炭素繊維
5、5a、5b グラフェンシート
10 金属基板
12 石英管
14 鉄の結晶
14a 鉄の触媒微粒子
【発明の属する技術分野】
本発明は、気相成長炭素繊維の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年直径1μm以下の微小径の炭素繊維が発見されており、かかる炭素繊維はその形状によって分類できる。図2(i)に示すような単層カーボンナノチューブがある。単層カーボンナノチューブはグラファイト状の炭素の層であるグラフェンシート5を丸めて円筒状にした形状を有する。また、図2(ii)に示すような多層カーボンナノチューブがある。多層カーボンナノチューブは複数のグラフェンシート5の円筒を同心円状に重ねた形状を有する。さらに、多数の小さなグラフェンシート5の層が軸方向に連続して積層したカーボンナノファイバーがある。カーボンナノファイバーには、図2(iii)及び図3に示すようにグラフェンシート5からなる頂部を切り欠いて底面が開放した略円錐形が重なり合って軸方向に伸びた構造のものや、図4に示すようにグラフェンシート5からなる底面が開放した多角錐形が積層して軸方向に伸びた構造のものや、図2(iv)に示すように小紙片状のグラフェンシート5が積層して軸方向に伸びた構造のものや、図5に示すように小紙片状をなすグラフェンシート5がハの字型に積層して軸方向に伸びた構造のものがある。これらの微小直径の炭素繊維は、素材強度を高めるための使用や、樹脂の導電性フィラーとしての使用、リチウムイオン2次電池の負極材としての使用、水素吸蔵体としての使用等が可能であり、その製造方法が研究開発されている。
【0003】
直径1μm以下の太さの炭素繊維のうち、カーボンナノファイバーの製造方法として鉄系触媒を利用した気相成長法がある。気相成長法における気相成長炭素繊維の成長機構として、以下のような機構が提案され、広く受け入れられている。まず、一酸化炭素を原料として、式1で表される反応により炭素を生成させる。
【0004】
2CO→CO2+C …(1)
そして、図3及び図5に示すように、生成した炭素を鉄の触媒微粒子14aの中に一旦溶解させるか又は鉄カーバイドの形態とし、グラフェンシート5の層が触媒微粒子14aの表面に析出する反応を繰り返し、カーボンナノファイバーである気相成長炭素繊維1を成長させる。この場合に使用される触媒としては、SUS板、インバーなどの合金板、鉄をシリカなどの不活性担体上に担持したものなどがある。かかる鉄系触媒を利用した気相成長法には幾つかの方法がある。
【0005】
気相成長法による第1従来技術(例えば、M.Audier et. al., Carbon, Vol. 19, p217〜224, 1981)として、Fe−Ni合金又はFe−Co合金の基板を触媒とし、この基板上にカーボンナノファイバーを製造する方法がある。
また、第2従来技術(例えば、曽根田靖ら、第24回炭素材料学会予稿集, p210, 1997)として、SUS304の基板を触媒とし、この基板上に一酸化炭素と水素の混合ガスからカーボンナノファイバーを製造する方法がある。
【0006】
さらに、第3従来技術として流動気相合成法(例えば、新エネルギー・産業技術総合開発機構主催「炭素系高機能材料ナノテクノロジーワークショップ」講演要旨集、平成13年4月25日)がある。この方法では、炭素の供給源となるベンゼン、及び触媒となる鉄化合物をフェロセンなどの蒸気を気相として供給し、鉄化合物を熱分解して鉄の微粒子を発生させ、この鉄微粒子を触媒としてカーボンナノファイバーを製造する。
【0007】
また、第4従来技術として、シリカ等の不活性担持体の上に担持された鉄を触媒としてカーボンナノファイバーを製造する方法がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、Fe−Ni合金、Fe−Co合金を用いて製造されるカーボンナノファイバー(第1従来技術)は繊維状から塊状まで多様な形態を有し、繊維直径が10nm以下のものから90nm程度のものまで得られている。さらに、約100nm程度の直径を有する太い繊維も混じり、微小直径で一定の形態を有するカーボンナノファイバーを得ることが難しいという不具合があった。
【0009】
また、SUS(ステンレス)を用いて製造されるカーボンナノファイバー(第2従来技術)は、繊維直径が30nm以下のものも製造可能であるが、約300nm程度の直径を有する太い繊維も混じり、微小直径で一定の形態を有するカーボンナノファイバーを得ることが難しかった。
さらに、フェロセンなどの鉄化合物を用いたもの(第3従来技術)は、触媒コストが高く、製造設備も複雑になるという問題があった。また、一酸化炭素を原料として、第3従来技術と同様の方法を用いたカーボンナノファイバーの製造方法は工業化されていない。
【0010】
また、シリカを担持した鉄触媒を用いて製造されるカーボンナノファイバー(第4従来技術)においては、生成したカーボンナノファイバーから付着している触媒を分離するのに手間とコストがかかるという不具合があった。
本発明は、上記した従来の技術の問題点を除くためになされたものであり、その目的とするところは、簡単な設備を用いて微小直径を有するカーボンナノファイバーを製造でき、生成したカーボンナノファイバーの直径が大きくばらつかず、生成したカーボンナノファイバーを容易に回収できる気相成長炭素繊維の製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、その課題を解決するために以下のような構成をとる。請求項1の発明は、鉄及び1質量%以上の珪素を含有する金属結晶からなる金属基板と、一酸化炭素を含有するガスとを高温下で接触させる気相成長炭素繊維の製造方法である。
【0012】
鉄系触媒を用いる気相成長法においては、得られるカーボンナノファイバーの繊維直径が触媒の粒径に依存すると考えられる。このため、金属基板を構成する金属結晶の微粒子を触媒として使用し、気相成長炭素繊維を金属基板上に生成させる。
高温下でガス中の一酸化炭素は、金属基板に浸炭し、金属基板上に金属結晶の微粒子が発生し、この微粒子の上で式1の反応によって炭素を生成する。なお、金属基板上に金属結晶の微粒子が発生するメカニズムの詳細は解明されていない。生成した炭素は、この金属結晶の微粒子中に溶解するか又は微粒子の表面を移動する。そして、金属基板と金属結晶の微粒子との間の境界において、金属結晶の微粒子の表面にグラフェンシートの層が析出し、以後、この析出が繰り返されて気相成長炭素繊維が生成する。生成した気相成長炭素繊維の頂部には金属結晶の微粒子が付着している。
【0013】
また、気相成長炭素繊維の生成において、金属基板中に存在する珪素が関与する機構はわかっていない。しかし、発明者が行った試験結果より、金属基板中の珪素含有量が多くなると、触媒として機能する金属結晶の微粒子の大きさは、ほぼ均一な微小径を有するものとなり、気相成長炭素繊維の繊維直径も小さく安定すると考えられる。そして、金属基板中の珪素含有量が少ないと、気相成長炭素繊維の繊維直径が小さく安定するという効果を期待できない。金属基板中の珪素含有量は好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上がよい。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載の気相成長炭素繊維の製造方法であって、前記金属基板を、珪素含有量が1質量%〜7質量%である電磁鋼板、又はFeSi2とする気相成長炭素繊維の製造方法である。
鉄及び珪素を成分として含有する金属結晶の基板として、電磁鋼板やFeSi2を挙げることができる。珪素含有量が1質量%〜7質量%である電磁鋼板や、FeSi2の金属結晶板を、気相成長炭素繊維を生成させる金属基板として使用する。
【0015】
なお、電磁鋼板において珪素含有量を2質量%〜5質量%とすることがより望ましく、また、電磁鋼板は方向性電磁鋼板でも無方向性電磁鋼板でもよい。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の気相成長炭素繊維の製造方法であって、金属基板と一酸化炭素を含有するガスとが接触するときの温度を、250℃〜800℃とする気相成長炭素繊維の製造方法である。
【0016】
気相成長炭素繊維を生成する反応は、反応温度が低すぎると充分な反応速度を得られない。また、炭素が一酸化炭素から式1の反応によって生成するが、式1の平衡は温度が高すぎると左向きに有利となり、式1の高い反応率を得られない。250℃〜800℃の温度範囲では、気相成長炭素繊維を生成する反応速度も速く、一酸化炭素から炭素を生成する反応率も高くなる。なお、この温度範囲は250℃〜800℃とすることが望ましいが、300℃〜700℃とすることがより望ましい。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の気相成長炭素繊維の製造方法であって、前記ガスが水素をも含有する気相成長炭素繊維の製造方法である。
水素は鉄の触媒活性を高める役割を担う。また、水素が存在することで、鉄触媒が早期に失活することを防止できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、図1を参照して本実施の形態の構成を説明する。
図1に示すように、電磁鋼板からなる金属基板10が石英管12内に設置されている。この金属基板10をなす電磁鋼板は鉄及び珪素を成分として含有する金属結晶の集合体の板である。金属基板10中の珪素含有量は1質量%以上である。なお、金属基板10は鉄を含有し、且つ珪素を1質量%以上含有する金属結晶の集合体の板であればよい。たとえば、鉄を3質量%以上含有する電磁鋼板であってもよいし、FeSi2の金属結晶であってもよい。
【0019】
また、石英管12は図示しないガス流入口とガス流出口を備えて中にガスを流すことができる構成となっている。金属基板10の面は石英管12内を流れるガス流の方向と平行に置かれている。金属基板10は石英管12内でガス流の中に位置していればよく、石英管12内での金属基板10の面の向きをガス流の方向に対して水平とすることも可能である。
【0020】
さらに、一酸化炭素と水素とを含有する反応原料ガスが準備されており、配管によってこの反応原料ガスを前記ガス流入口から前記ガス流出口へかけて石英管12内を流すことができるように構成されている。反応原料ガスの組成は一酸化炭素が30体積%、水素が70体積%となっている。反応原料ガスの組成を一酸化炭素が30体積%、水素が70体積%であるとしたが、かかる組成に限定されないことは勿論である。反応原料ガス中の一酸化炭素の濃度は任意であるが、生産性を低くしないために5体積%以上とすることが望ましく、10体積%以上とすることがさらに望ましい。また、水素の濃度は1体積%以上とすることが望ましく、3体積%以上とすることがさらに望ましい。
【0021】
また、反応原料ガスが窒素等の不活性ガスを含有していても問題はない。しかし、酸素や二酸化炭素などの酸化性ガスが気相成長炭素繊維を酸化して分解することを防止する必要がある。このため、反応原料ガス中の酸素濃度を一酸化炭素濃度の半分以下とし、二酸化炭素濃度を一酸化炭素濃度以下とすることが望ましい。
【0022】
さらに、図示しない熱源があり、この熱源が石英管12内の金属基板10及び石英管12内を流れる前記反応原料ガスを250℃〜800℃の温度範囲に昇温し維持可能な構成となっている。
本実施の形態は上記のように構成されており、次にその作用について説明する。
【0023】
まず、前記反応原料ガスを石英管12内の前記ガス流入口から前記ガス流出口へ向けて流す。そして、前記熱源により石英管12内の金属基板10と前記反応原料ガスとを加熱し、これらを250℃〜800℃の温度範囲まで昇温して維持する。
そして、気相成長炭素繊維1が金属基板10に生成する。生成する気相成長炭素繊維1はカーボンナノファイバーであり、従来のものと同様の形状を有する。たとえば、グラフェンシートからなる頂部を切り欠いて底面が開放した略円錐形が重なり合って軸方向に伸びたものや、グラフェンシートからなる底面が開放した多角錐形が積層して軸方向に伸びたものや、小紙片状のグラフェンシートが積層して軸方向に伸びたものや、小紙片状をなすグラフェンシートがハの字型に積層して軸方向に伸びたもの等である。
【0024】
ここで、一般に広く受け入れられている気相成長炭素繊維の成長機構として、たとえば、R.T.K.Baker, M.A.Barber, P.S.Harris, F.S.Feates, R.J.WaiteがJournalof Catalysis 26 (p51〜62、1972)に発表した機構がある。すなわち、前述した図3及び図5に示すように、触媒微粒子14a上で炭素が一酸化炭素などの炭素含有分子から成長し、その炭素が鉄の触媒微粒子14aの表面や内部を通じて移動、拡散し、気相成長炭素繊維1の成長方向に向かってグラファイトシート5の層を形成すると考えられている。この機構にしたがって考えると、気相成長炭素繊維1の繊維直径は触媒微粒子14aの粒子径と深い相関があることになる。すなわち、触媒微粒子14aが100nmの粒子径を有する場合は、約100nmの繊維直径の気相成長炭素繊維1が成長し、10nmの触媒微粒子14aからは約10nmの繊維直径の気相成長炭素繊維1が成長すると考えられる。
【0025】
一方、通常の鋼板を形成する鉄の結晶粒子の粒子径は数μm〜数十μmであり、電磁鋼板の場合には数mmの粒子径を有するものも存在する。しかしながら、通常の鋼板から繊維直径が数十nm〜数百nmである気相成長炭素繊維が得られている。
これらのことから、鋼板などを形成する鉄の結晶の粒子径と、この鋼板上で気相成長炭素繊維を生成させる場合に用いられる触媒微粒子の粒子径との間には相関がないことがわかる。数十μmの鉄の結晶から数十nmの触媒微粒子が発生する機構は現時点では不明であるが、たとえば、数十nmおきに結晶の格子欠陥があり、この格子欠陥がきっかけとなって数十nmの触媒微粒子が発生する機構などが推定される。
【0026】
珪素と鉄を含有する金属基板10を使用すると、生成する気相成長炭素繊維1の繊維直径が小さく安定する理由は現時点では不明である。しかしながら、前述のように繊維直径は成長の基点となる触媒微粒子14aの粒子径に依存することから、珪素と鉄を含有する金属基板10を使用した場合に、何らかの理由で、発生する触媒微粒子14aの粒子径が小さく均一になるものと考えられる。
【0027】
次いで、石英管12内から金属基板10を取りだし、金属基板10に震動を与え、金属基板10上から気相成長炭素繊維1を落して回収する。金属基板10に震動を与えて、気相成長炭素繊維1を金属基板10から落して回収する替わりに、気相成長炭素繊維1を金属基板10からブラシで掻き取って落下させて回収することも可能である。したがって、簡便な設備を用いて容易に気相成長炭素繊維1を回収可能である。なお、気相成長炭素繊維1の先端に付着した鉄の触媒微粒子14aは酸洗や熱処理などにより除去可能である。
【0028】
この回収された気相成長炭素繊維1を樹脂の導電性フィラーとして使用することが可能であり、リチウムイオン2次電池の負極材としての使用、水素吸蔵体としての使用等が可能である。各用途に応じて、気相成長炭素繊維1に洗浄、精製、熱処理などの処理を行う。
本実施の形態にかかる気相成長炭素繊維の製造方法によって、微小な鉄の結晶を触媒として気相成長炭素繊維が生成させることができ、生成する気相成長炭素繊維の形態は微小な直径を有する繊維として安定している。
【0029】
(実施例)
(実施例1)
実施例1における条件を以下のものとした。金属基板10は珪素を3.3質量%含有する方向性電磁鋼板とし、金属基板10の大きさを長さ100mm×幅10mm×厚さ0.5mmとし、石英管12を横置きの直径20mmの大きさとし、反応原料ガスの組成を一酸化炭素が30体積%、水素が70体積%とし、石英管12内を流れる反応原料ガスの流速を標準状態に換算して350cm3/sとし、石英管12内で反応原料ガスと金属基板10を550℃まで昇温して同温度で30分維持し、その後室温まで放置して冷却した。
【0030】
そして、金属基板10上に生成した気相成長炭素繊維を回収し、走査型電子顕微鏡で観察した。その結果、回収された気相成長炭素繊維は繊維直径が70nm〜100nmであり、長さが3μm〜5μmのカーボンナノファイバーであることを確認した。
(実施例2)
金属基板10は珪素を3.0質量%、アルミニウムを0.5質量%、マンガンを0.3質量%含有する無方向性電磁鋼板であり、他の条件は実施例1と同様とした。回収された気相成長炭素繊維を実施例1と同様に観察した結果、実施例1と同様のカーボンナノファイバーであること確認した。
【0031】
(実施例3)
金属基板10を大きさが長さ100mm×幅10mm×厚さ10mmのβ−FeSi2とし、他の条件は実施例1と同様とした。回収された気相成長炭素繊維を実施例1と同様に観察した結果、繊維直径が100nm〜120nmであり、長さが3μm〜5μmのカーボンナノファイバーであることを確認した。
【0032】
(比較例1)
金属基板として、大きさが長さ100mm×幅10mm×厚さ1mmであり、珪素の含有量が0.5質量%以下である普通鋼SS400板を用いた以外は、実施例1と同様の条件で、気相成長炭素繊維を製造した。回収された気相成長炭素繊維を実施例1と同様に観察した結果、繊維直径50nm〜200nm、繊維長1μm〜5μmであった。
【0033】
(比較例2)
金属基板として、大きさが長さ100mm×幅10mm×厚さ0.3mmであり、珪素の含有量が0.3質量%以下であり、鉄、コバルト及びニッケルの合金からなるインバーを用いた以外は、実施例1と同様の条件で、気相成長炭素繊維を製造した。回収された気相成長炭素繊維を実施例1と同様に観察した結果、繊維直径50nm〜100nm、繊維長2μm〜5μmであったが、塊状の気相成長炭素も混在していた。
【0034】
(比較例3)
金属基板として、大きさが長さ100mm×幅10mm×厚さ1mmであり、珪素の含有量が1質量%以下であるSUS304板を用いた以外は、実施例1と同様の条件で、気相成長炭素繊維を製造した。回収された気相成長炭素繊維を実施例1と同様に観察した結果、30nm〜40nmの繊維直径の気相成長炭素繊維の中に約300nmの繊維直径の気相成長炭素繊維も混在していた。
【0035】
【発明の効果】
本発明は、上記のような気相成長炭素繊維の製造方法であるので、簡単な設備を用いて微小直径を有するカーボンナノファイバーを製造でき、生成したカーボンナノファイバーの直径が大きくばらつかず、生成したカーボンナノファイバーを容易に回収できる気相成長炭素繊維の製造方法を提供できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る金属基板と石英管の構成図である。
【図2】従来の気相成長炭素繊維の構造を示す説明図であり、(i)は単層カーボンナノチューブを示し、(ii)は多層カーボンナノチューブを示し、(iii)及び(iV)はカーボンナノファイバーを示す。
【図3】気相成長炭素繊維が鉄の触媒微粒子から生成する状況の説明図である。
【図4】カーボンナノファイバーを形成するグラフェンシートの一形状の斜視図である。
【図5】他の構造の気相成長炭素繊維が鉄の触媒微粒子から生成する状況の説明図である。
【符号の説明】
1 気相成長炭素繊維
5、5a、5b グラフェンシート
10 金属基板
12 石英管
14 鉄の結晶
14a 鉄の触媒微粒子
Claims (4)
- 鉄及び1質量%以上の珪素を含有する金属結晶からなる金属基板と、一酸化炭素を含有するガスとを高温下で接触させることを特徴とする気相成長炭素繊維の製造方法。
- 請求項1に記載の気相成長炭素繊維の製造方法であって、前記金属基板を、珪素含有量が1質量%〜7質量%である電磁鋼板、又はFeSi2とすることを特徴とする気相成長炭素繊維の製造方法。
- 請求項1又は請求項2に記載の気相成長炭素繊維の製造方法であって、金属基板と一酸化炭素を含有するガスとが接触するときの温度を、250℃〜800℃とすることを特徴とする気相成長炭素繊維の製造方法。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の気相成長炭素繊維の製造方法であって、前記ガスが水素をも含有することを特徴とする気相成長炭素繊維の製造方法。
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