JP3883246B2 - ビスカスカップリング - Google Patents
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Description
【発明の属する技術の分野】
本発明は、粘性流体を介してトルク伝達するビスカスカップリングに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、例えば四輪駆動(4WD)車の前後両車軸間の動力伝達装置としてビスカスカップリングを使用する際には、出力軸から入力軸へのトルク伝達を阻止することによって制動時における前後輪間の制動力の干渉を防止するためにワンウェイクラッチが用いられている。
【0003】
このようなワンウェイクラッチ内蔵ビスカスカップリングが例えば特開平4−157216号公報に開示されている。以下、図5〜図9によりその構成を説明する。
【0004】
図5に、4WD車の動力系の構成を示す。この動力系は、エンジン1、トランスミッション3、フロントデフ5(前輪側のデファレンシャル装置)、前車軸7,9、左右の前輪11,13、方向変換歯車15を含むトランスファ17、ビスカスカップリング18、プロペラシャフト21、リヤデフ23(後輪側のデファレンシャル装置)、後車軸25,27、左右の後輪29,31などから構成されている。
【0005】
図6に、ビスカスカップリング18の断面図を示す。ビスカスカップリング18は、トランスファ17とプロペラシャフト21の間に設けられている。ハウジング20(第1の伝達部材)とハブ22(第2の伝達部材)は相対回転自在に配置されている。ハブ22はスプライン32により連結軸43にスプライン嵌合し、ハウジング20と連結軸43との間にはベアリング48が配置されている。更に、ハウジング20とハブ22の間にはベアリング60とシール62とが配置され、ハウジング20と連結軸43は相対回転自在に配置されている。ベアリング48を軸方向に固定するために、連結軸43にはワッシャ50とロックナット54が装着され、ハウジング20には止め歯52が装着されている。ハウジング20はボルト穴58に螺着されるボルトによりトランスファ17側にフランジ連結され、エンジン1からの駆動力により回転駆動される。連結軸43はプロペラシャフト21側に連結されている。
【0006】
ハウジング20とハブ22の間には作動室40が形成され、作動室40には高粘度のシリコンオイル(粘性流体)が封入されている。更に、ハウジング20とハブ22の間にはXリング28,30(断面がX字状のシール)が配置され、作動室を液密に保っている。
【0007】
図7に拡大して示したように、作動室40の内部ではアウタープレート34(第1のプレート組)とインナープレート36(第2のプレート組)とが交互に配置されるとともに、回転軸方向両端に位置するアウタープレート34の内側にはそれぞれ間隔保持プレート38が配置されている。アウタープレート34はハウジング20内周との間に設けられたスプライン係合手段44により軸線方向移動自在にスプライン連結されており、各アウタープレート34の間にはスペーサーリング46が配置されている。
【0008】
図8に示すように、各インナープレート36の内周には、外周縁からの距離が周方向に沿って減少する傾斜面を有する切欠部66が等間隔に形成されている。そして、この切欠部66とハブ22との外周縁とで構成された開口にはインナープレート36の切り欠き部を軸線方向に貫通するかみ合い要素である円筒状のローラ24が配置されると共に、間隔保持プレート38の内周には、図9に示すように各々のローラ24を等間隔に保持する切り欠きである保持部68が形成されており、いわゆるワンウェイクラッチが構成されている。なお、ローラ24の両端面はハブ22に装着された止め輪26により軸線方向への移動を制限されている。
【0009】
上記構成によれば、図11に示すように、インナープレート36とハブ22がそれぞれ矢印90及び矢印92の方向に相対回転すると、ローラ24が切欠部66の狭い箇所84まで転動して噛み合い、インナープレート36とハブ22が連動するようになる。また、図10に示すようにインナープレート36とハブ22がそれぞれ矢印86及び矢印88の方向に相対回転すると、ローラ24が切欠部66の広い箇所82まで転動して噛み合いが外れ、インナープレート36とハブ22の連動を解除する。
【0010】
このとき、各々のローラ24は、間隔保持プレート38によって常に等間隔に保たれているので、すべてのローラ24が同じ方向に転動される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、各々のローラー24の相互間隔は2つの間隔保持プレート38によって規制されているが、この2つの間隔保持プレート38はそれぞれ相対運動可能であるので、ローラ24の倒れ(ローラ24の軸線がハブ22の軸線と非平行になること)については規制することができなかった。すなわち、図12(インナープレート36及びアウタープレート34は省略)に示すように2つの間隔保持プレート間に例えばズレaが生じ、結果としてビスカスカップリングの作動が不安定になることがあった。
【0012】
本発明は上記欠点に鑑みてなされたもので、ローラの倒れを防止することにより、ビスカスカップリングの作動の安定化を図ることができるビスカスカップリングを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、相対回転自在に配置された第1及び第2の伝達部材と、
粘性流体が封入された作動室と、
前記作動室内に配置されるとともに第1の伝達部材と係合され、かつ周方向に等間隔で形成された切欠部を有する第1のプレート組と、
前記作動室内で前記第1のプレート組と交互に配置され、かつ周方向に等間隔で形成された切欠部を有する第2のプレート組と、
前記各第2のプレート組の切欠部内を軸線方向に貫通する噛み合い要素とを有するビスカスカップリングにおいて、
略環状に形成されて前記第2の伝達部材の周面に装着され、前記第2のプレート組を周方向に回動可能に軸線方向に等間隔で保持するスリットと、
前記噛み合い要素を前記第2の伝達部材の周面と協働して軸線方向と平行に保持する凹部と、
前記凹部に保持された前記噛み合い要素の軸線方向の動きを規制する規制部とを有する保持部材
を備えたことを特徴とするビスカスカップリングを提供することにより解決される。
【0014】
【作用】
本発明によれば、第2の伝達部材の周面に装着された保持部材であるケージに設けられた凹部が前記噛み合い要素を前記第2の伝達部材の周面と協働して、噛み合い要素の周方向の位置規制を行う。
従って、噛み合い要素は倒れを起こさずに常に軸線方向と平行に保持されるのでビスカスカップリングの作動の安定化を図ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図1〜図4を参照して本発明の一実施形態を説明する。なお、ビスカスカップリング18の従来例と同様の構成は説明を省略する。
図1はケージ70の部分断面図であり、右側部分はケージ70がインナープレート36を保持している状態を表し、左半分はケージ70がローラ24を保持している状態を表す。図1に示すように、作動室40内において、ハブ22の周面にはインナープレート36及びローラ24を保持する保持部材であるケージ70が装着され、ケージ70の外周面にアウタープレート34(第1のプレート組)とインナープレート36(第2のプレート組)とが交互に配置されている。
【0016】
図2はハブ22,ケージ70及びローラ24の組立斜視図であり、ハブ22に装着したケージ70にローラ24を保持した状態を表す。ケージ70は、係合部78がハブ22の端面に係合することによりハブ22の周面に装着されている。そして、ケージ70は略環状に形成されており、軸線方向にわたる凹部72と凸部74とを周方向に交互に連続して備えている。凹部72は、ハブ22の周面と協動してローラ24を軸線方向に平行に保持し、保持されたローラ24が凹部内で周方向に移動しない大きさに形成されている。従って、ローラ24を等間隔に保持する間隔保持プレートが不要となる。更に、凹部72にはローラ24の軸線方向の位置を規制するストッパ72aが設けられている。また、各凸部74には、スリット76が等間隔に設けられている。スリット76は、図1及び図3の正面図に示すように、インナープレート36を周方向に回動可能に保持することによって、それぞれのインナープレート36を所定の間隔に保って位置決めを行う。従って、従来必要であったインナープレートの位置決めを行うスペーサーリングが不要となる。
【0017】
以上のような構成からなる本発明の作動形態を図4を参照して説明する。
最初に、トルク伝達時の状態を説明する。図3に示すトルク遮断状態から、図4に示すように、前輪と後輪との間に回転速度差が生じると、インナープレート36とハブ22がそれぞれ矢印90及び矢印92の方向に相対回転する。すると、ローラ24がケージ70に保持されたまま切欠部66の狭い箇所84まで転動して噛み合い、インナープレート36とハブ22が連動するようになる。この結果、インナープレート36とアウタープレート34との間のせん断抵抗により、ハブ22とハウジング20との間でトルクが伝達される。この際、ハブ22の周面に装着されたケージ70の凹部72がハブ22の周面と協動してローラ24の周方向の位置規制を行う。従って、ローラ24の倒れについては規制することができ、すべてのローラ24は同時に同じように動き、結果としてビスカスカップリングの作動が安定化する。
【0018】
トルク遮断時の状態についても同様に、ハブ22の周面に装着されたケージ70の凹部72がハブ22の周面と協動してローラ24の周方向の位置規制を行うので、ローラ24の倒れについては規制することができ、結果としてビスカスカップリングの作動が安定化する。
【0019】
【発明の効果】
以上のように本発明は、略環状に形成されて第2の伝達部材の周面に装着され、第2のプレート組を周方向に回動可能に軸線方向に等間隔で保持するスリットと、噛み合い要素を前記第2の伝達部材の周面と協働して軸線方向と平行に保持する凹部と、前記凹部に保持された前記噛み合い要素の軸線方向の動きを規制する規制部とを有する保持部材をビスカスカップリングが備えているので、噛み合い要素であるローラの倒れを防止することができ、ビスカスカップリングの作動の安定化を図ることができる。
更に、前記保持部材により、ローラを等間隔に保持する間隔保持プレート及び第2のプレート群であるインナープレートの位置決めを行うスペーサーリングが不要となり、簡単な構成で安定した作動を保証できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態におけるビスカスカップリングの要部断面図で、ケージの近傍を表す。
【図2】本発明の一実施形態におけるビスカスカップリングの要部斜視図であり、ハブに装着したケージにローラを保持した状態を表す。
【図3】本発明の一実施形態におけるトルク遮断時のビスカスカップリングの要部正面図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるトルク伝達時の作動形態の要部正面図である。
【図5】ビスカスカップリングを用いた車両の動力系を示すスケルトン機構図である。
【図6】従来のビスカスカップリングの断面図である。
【図7】従来のビスカスカップリングの要部拡大図である。
【図8】従来のインナープレート及びアウタープレートの正面図である。
【図9】従来のインナープレート及びアウタープレートの正面図である。
【図10】従来のトルク伝達時の要部正面断面図である。
【図11】従来のトルク遮断時の要部正面断面図である。
【図12】従来の間隔保持プレート及びローラを示す断面図である。
【符号の説明】
1 エンジン
3 トランスミッション
5 フロントデフ
7,9 前車輪
11,13 前輪
15 方向変換歯車
17 トランスファ
18 ビスカスカップリング
20 ハウジング
22 ハブ
23 リアデフ
24 ローラ
25,27 後車軸
29,31 後輪
26 止め輪
28,30 Xリング
32 スプライン
34 アウタープレート
36 インナープレート
38 間隔保持プレート
40 作動室
43 連結軸
44 スプライン係合手段
46 スペーサーリング
48 ベアリング
50 ワッシャ
52 止め歯
54 ロックナット
58 ボルト穴
60 ベアリング
62 シール
66 切り欠き部
70 ケージ
72 凹部
72a ストッパ
74 凸部
76 スリット
78 係合部
84 狭い箇所
Claims (1)
- 相対回転自在に配置された第1及び第2の伝達部材と、
粘性流体が封入された作動室と、
前記作動室内に配置されるとともに第1の伝達部材と係合され、かつ周方向に等間隔で形成された切欠部を有する第1のプレート組と、
前記作動室内で前記第1のプレート組と交互に配置され、かつ周方向に等間隔で形成された切欠部を有する第2のプレート組と、
前記各第2のプレート組の切欠部内を軸線方向に貫通する噛み合い要素とを有するビスカスカップリングにおいて、
略環状に形成されて前記第2の伝達部材の周面に装着され、前記第2のプレート組を周方向に回動可能に軸線方向に等間隔で保持するスリットと、
前記噛み合い要素を前記第2の伝達部材の周面と協働して軸線方向と平行に保持する凹部と、
前記凹部に保持された前記噛み合い要素の軸線方向の動きを規制する規制部とを有する保持部材
を備えたことを特徴とするビスカスカップリング。
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JP05049597A JP3883246B2 (ja) | 1997-03-05 | 1997-03-05 | ビスカスカップリング |
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JPH10246252A JPH10246252A (ja) | 1998-09-14 |
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Family Applications (1)
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JP (1) | JP3883246B2 (ja) |
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1997
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