JP3882487B2 - 化学物質総合管理システム及び化学物質総合管理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
現在流通している様々な材料或いは製品には、環境へのインパクトの大きい、数百種類の化学物質(以下「管理物質」と呼ぶ)が含まれており、製造,流通,貯蔵などのプロセスにおいて、それらの成分となる管理物質のどのくらいの量が移動され、どのくらいの量が大気や土壌,水系に排出され、或いは、出荷製品中に含まれて市場に提供されているのかを調査する必要がある。
【0002】
そこで各事業者が事業所内や企業内におけるこれら管理物質の排出と移動についての量的なデータを国や自治体に報告することによって、国内全体の環境インパクトを推定する法的な制度(「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(平成11年7月13日公布法律第86条)」、以下、PRTR法と略す)がスタートしている。
【0003】
本発明は、このPRTR法を円滑に実行するための化学物質総合管理システム及び化学物質総合管理方法に関するものである。
【0004】
【従来の技術】
従来、各事業者が事業所内や企業内におけるこれら管理物質の排出と移動についての量的なデータを国や自治体に報告するためのシステムとして、管理物質の基礎データを部署や工程毎に入力し、その結果を上位の組織(事業所,会社)単位で括って集計する機能を有しているものがある。法的な制度への対応書類としてはこの結果のみが必要なためである。このシステムに関する資料としては、例えば「日立評論」第82巻第8号(2000年8月発行)の37頁から40頁に記載されている。
【0005】
なお、PRTR法では、排出量を報告すべき対象物質(第1種指定化学物質、以下「管理物質」)が定められている。そのリストの一例を図8に示す。リストには、指定された一化学物質の名称が通常一つ記載され、一部の化学物質に関しては別名称が一個のみ記載されているものもある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の通り法指定の「管理物質」リストには、指定された一つの化学物質に対し、その名称が通常一つのみ記載され、一部の化学物質に関してはその別名称が一つのみ記載されている。しかし、通常、化学物質の名称は、和名,英名とも複数の別名称があり、また、複数の略称を持つ場合や、作業現場では慣用名や呼称が使われるケースも多い。
【0007】
したがって、通常材料或いは製品メーカーから供給される材料或いは製品の成分組成情報に記載の化学物質名称が、法指定の「管理物質」名称に一致しないケースがあり、法指定の「管理物質」か否かを判定しづらく、或いは、法指定の
「管理物質」を見落としてしまうミスが生じるという課題がある。
【0008】
また、法指定の「管理物質」名称は、通常作業現場で使われている名称と異なるケースが多く、混乱を招いたり、或いは、排出量の数値に実感が伴わないという課題がある。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、第1番目の発明の目的は、使用している化合物が「管理物質」であるか否かの判断が容易に行える化学物質総合管理システム及び化学物質総合管理方法を実現することにある。
【0010】
また、第2番目の発明の目的は、使用している化合物が「管理物質」であるか否かの判断が様々な場所で容易に行える化学物質総合管理システム及び化学物質総合管理方法を実現することにある。
【0011】
更に、第3番目の発明の目的は、使用している化合物が「管理物質」であるか否かの判断が容易に行える化学物質総合管理システムを利用したビジネス形態を実現することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記第1番目の発明の目的を達成するために、本発明では、材料或いは製品の成分組成情報をデータベース化した材料組成データベースと、法律により管理が必要とする化学物質をリスト化した管理物質データベースと、を少なくとも備え、製造工程で投入される材料或いは製品について前記材料組成データベースより前記材料或いは製品を構成する化学物質を特定し、該特定した化学物質を前記管理物質データベースより法律により管理を必要とする化学物質かどうか特定して事業者が取り扱う材料或いは製品を構成する化学物質を管理する化学物質総合管理システムであって、前記管理物質データベースにリスト化されている化学物質名称と該化学物質名称の少なくとも1つの別名称をデータベース化した物質名称データベースを備えたものである。
【0013】
物質名称データベースは、管理物質データベースにリスト化されている化学物質の和名,略称,英名,呼称、及び慣用名の少なくとも一つがデータベース化されている。つまり、物質名称データベースには、管理物質データベースにリスト化されている化学物質が持つあらゆる観点の名称が登録されているため、使用している化学物質をあらゆる名称から特定することでその化学物質が管理物質であるか否かの判断が確実に行えるのである。
【0014】
なお、化学物質総合管理システムにおいては、化学物質毎の排出移動先における当該化学物質の重量比率データを排出係数データとしてデータベース化した排出係数データベースを備え、当該特定された化学物質について前記排出データベースにより当該化学物質の排出移動量を算出して事業者が取り扱う材料或いは製品に含有されている化学物質を管理するものであってもよく、更には、事業者が取り扱う材料或いは製品に含有されている化学物質とその排出移動量の報告書を作成するものであってもよい。この報告書作成にあたっては、報告書に記載する化学物質名称は、物質名称データベースに記録されている法で指定された化学物質名称で自動的に記載するようにすれば、化学物質名称を間違うことがないようにできる。
【0015】
また、物質名称データベースは管理物質データベースにリスト化されている化学物質のCAS番号に関連づけられてデータベース化されているため、管理物質データベースにリスト化されている化学物質と、物質名称データベースにリスト化されている該化学物質名称の少なくとも1つの別名称との関連付けを確実なものとすることができる。
【0016】
また、化学物質管理システムを利用するユーザーが使用する化学物質名称は、物質名称データベースに記録されているいずれかの名称を主として指定し使用でき、ユーザーが実感を伴いつつ、使い勝手よく排出量の管理を行うことができる。
【0017】
また、上記第1番目の発明の目的を達成するために、本発明では、製造工程で投入される材料或いは製品について前記材料組成データベースより前記材料或いは製品を構成する化学物質を特定するステップと、該特定された化学物質を前記管理物質データベース、および/または、前記物質名称データベースより法律により管理を必要とする化学物質かどうか特定するステップと、を含むようにしたものである。
【0018】
更に、当該特定された化学物質について前記排出データベースにより当該化学物質の排出移動量を算出するステップと、を含むものであってもよく、該特定された化学物質とその排出移動量の報告書を作成するステップと、を含むものであってもよい。
【0019】
上記第2番目の目的を達成するため、本発明では、材料或いは製品の成分組成情報をデータベース化した材料組成データベースと、法律により管理が必要とする化学物質をリスト化した管理物質データベースと、前記管理物質データベースにリスト化されている化学物質名称と該化学物質名称の少なくとも1つの別名称をデータベース化した物質名称データベースと、を少なくとも格納した専用サーバと、該専用サーバの各データベースに通信回線を介してアクセス可能に構成され、製造工程で投入される材料或いは製品を構成する化学物質を管理可能とするものである。
【0020】
また、上記のように構成された専用サーバに格納された各データベースを用い、製造工程で投入される材料或いは製品について前記材料組成データベースより前記材料或いは製品を構成する化学物質を特定し、該特定された化学物質を前記管理物質データベースより法律により管理を必要とする化学物質かどうか特定すると共に、当該特定された化学物質について前記排出データベースにより当該化学物質の排出移動量を算出して事業者が取り扱う材料或いは製品に含有されている化学物質を管理するものである。
【0021】
更には、事業者が取り扱う材料或いは製品に含有されている化学物質とその排出移動量の報告書を作成するものであってもよい。
【0022】
これによって、例えば、社内の様々な事業所における様々な部署の端末計算機等にて、それぞれ製造工程で投入される材料或いは製品を構成する化学物質を管理することができる。
【0023】
上記第3番目の発明の目的を達成するため、本発明では、材料或いは製品の成分組成情報をデータベース化した材料組成データベースと、法律により管理が必要とする化学物質をリスト化した管理物質データベースと、前記管理物質データベースにリスト化されている化学物質名称と該化学物質名称の少なくとも1つの別名称をデータベース化した物質名称データベースと、を少なくとも備え、通信回線を介して化学物質を管理する事業者からの要求に対し、前記各データベースに格納されているデータを提供するものである。
【0024】
また、化学物質を管理する事業者からの要求に対し、当該事業者の製造工程で投入される材料或いは製品について前記材料組成データベースより前記材料或いは製品を構成する化学物質を特定し、該特定された化学物質を前記管理物質データベースより法律により管理を必要とする化学物質かどうか特定すると共に、当該特定された化学物質について前記排出データベースにより当該化学物質の排出移動量を算出し、該算出結果を当該事業者に通信回線を介して送信するものであってもよい。
【0025】
更に、化学物質を管理する事業者からの要求に対し、当該事業者の製造工程で投入される材料或いは製品について前記材料組成データベースより前記材料或いは製品を構成する化学物質を特定し、該特定された化学物質を前記管理物質データベースより法律により管理を必要とする化学物質かどうか特定すると共に、当該特定された化学物質について前記排出データベースにより当該化学物質の排出移動量を算出し、該特定された化学物質とその排出移動量の報告書を作成し、該報告書を当該事業者に通信回線を介して送信するものであってもよい。
【0026】
これによって、使用している化合物が「管理物質」であるか否かの判断が容易に行える化学物質総合管理システムを利用したビジネス形態を実現することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施の形態である化学物質総合管理システムの全体構成を示している。
【0028】
ここで、まず、各データベースの内容を説明する。
【0029】
MSDSデータベース110は、製品安全性情報シートと呼ばれる材料の取り扱い注意事項や有害性,法規制への該当項目を示すデータであり、材料及び製品毎にデータベース化してある。
【0030】
材料組成データベース111は、材料の成分組成をデータベース化してある。一つの材料は通常複数の化学物質で構成されている。化学物質にはCAS番号
(Chemical Abstract Services)と呼ばれる識別子が存在する。本データベースのレコードは材料或いは製品名,組成成分となる化学物質のCAS番号,その化学物質名、その質量組成(%)の下限、および上限の各々をフィールドとして構成する。
【0031】
管理物質データベース112は、具体的にはPRTR法で制定されている法指定化学物質のデータベースである。その他、各種団体や事業者の判断により定めた、環境に重大な影響を与える化学物質やその周辺の化学物質として管理が必要な化学物質をリストアップしたデータベースを含むこともある。これらは、任意のジャンル(毒物,劇物,管理対象,法規指定化学物質,自主管理化学物質など)と、その該当化学物質の識別子をフィールドとするレコード群を収納する。
【0032】
そして、この管理物質データベース112にリスト化されている法指定化学物質のうち化合物についてリストアップしたデータベースが化合物データベース
113である。
【0033】
物性値データベース114は、化学物質のCAS番号とその物性値をフィールドとするレコード群を収納する。物性値には、分子質量から対象化学物質の質量に換算する場合の係数,水への溶解度,蒸気圧や密度などの値を含む。
【0034】
排出係数データベース115は、各々のプロセスと投入材料の組み合わせに対して、排出移動先(大気,水域,土壌,消費,依託廃棄,リサイクル,製造含有など)毎の投入化学物質と排出移動化学物質の重量比率をフィールドとしたレコードを収納する。例えば、ある部署の生産ラインにおける塗装プロセスでは、塗料Aの投入に対して、塗料A中の成分であるキシレンの80%が大気に排出されるなどのデータである。
【0035】
結果データベース116は、本システムの各々の手段が利用したレコードやその結果として生成したレコードを収納し、その対応情報も収納するデータベースである。
【0036】
物質名称データベース117は、管理物質データベース112にリスト化されている化学物質名称以外の複数の別名をデータベース化したものであり、データベースの詳細は後述する。
【0037】
次に、図1に示した各データベースの内容を図2から図7を用いて具体的に説明する。
【0038】
図2は、MSDSデータベース110のデータ構造例を示し、物質名をキーインデックスにして、取扱注意事項,毒性,適用法規などの製品安全性情報が記述されている。
【0039】
図3は、材料組成データベース111のデータ構造例を示し、材料名をキーインデックスにして、CAS番号などの組成物質の識別子,組成成分の名称、および組成の数値(上限及び下限)が記載されている。材料名には、市場流通品としての名称または事業所が購入する際の品番などを用いる。必ずユニーク(1対1)に定まるコード体系であればどのようなものを用いてもよい。
【0040】
図4は、管理物質データベース112のデータ構造例を示し、CAS番号などの化学物質の識別子をキーインデックスにして、化学物質名,その化学物質の法規制情報,その化学物質がどのような団体に指定されているかの情報が記述されている。
【0041】
図5は、物性値データベース114のデータ構造例を示し、CAS番号などの化学物質の識別子をキーインデックスにして、分子量から対象物質の質量に換算する場合の係数,水への溶解度,蒸気圧や密度などの情報が記述されている。
【0042】
図6は、排出係数データベース115のデータ構造例を示し、事業のプロセスの名称をキーインデックスにして、投入される化学物質,排出先,投入される化学物質の質量に対する排出割合を示す係数が記載されている。
【0043】
図7(a)(b)は、化合物データベース113のデータ構造例を具体的に説明するものであり、法指定化学物質に該当する対象化合物と、該当しない非対象化合物のそれぞれについてリストアップされている。
【0044】
図7(a)では、法指定化学物質に該当する対象化合物として、「亜鉛化合物(溶解性)」に該当する亜鉛化合物のデータベースを示し、図7(b)では、法指定化学物質に該当しない対象化合物として、「亜鉛化合物(溶解性)」に該当しない亜鉛化合物のデータベースを示している。
【0045】
図8は、図4に示す管理物質データベース112の元データとなる排出量を報告すべき第1種指定化学物質のリストの一部である。前述のように、リストには、指定された一化学物質の名称が通常一つ記載され、一部の化学物質に関しては別名が一個のみ記載されているものである。政令番号,CAS番号と共にリスト化されている。
【0046】
図9は、物質名称データベース117のデータ構造例を示しており、管理物質データベース112にリスト化されている化学物質名称(図9では、「第1種指定化合物名(法律での名称)」に相当)と、それ以外の少なくとも1つ以上の別名称をデータベース化しているものである。別名称としては、和名,英名、略称のほか、慣用的に使われる呼称も登録できるようになっている。また、図4で示した管理物質データベース112におけるCAS番号に対応するCAS番号をキーインデックスとして各化学物質名称に関連づけられている。図9から、例えば、キシレンは、ジメチルベンゼンやキシロールといった和名、xylenes、
Dimethylbenzene、Xylolという英名を持っていることがわかる。
【0047】
図10は、本発明の一実施形態における情報処理の流れを説明するもので、仮想的に単純化したものである。
【0048】
まず、塗料Aという材料を購入するところから始まる(▲1▼)。塗料Aの購入量は100m3 /月であり、タンクへの貯蔵料は一定であることが普通であるから、プロセスへの投入量も同じく100m3 /月と想定する。この塗料Aの密度が1,200kg/m3 であることから、その投入量は120,000kg/月となる。
【0049】
全てが塗装工程(▲2▼)に投入されるとする。ここまでの情報処理は図1に示すデータ入力手段102により行う。
【0050】
つぎに、塗料Aにはジメチルベンゼンが30%,クロム酸亜鉛が1%,クロム酸鉛が1%、各々含まれていることを図1に示す材料組成データベース111から読み取る。ここで、ジメチルベンゼンは、図8の第一種指定化合物にリスト化されていない物質名である。しかし、図9の物質名称データベース117を参照することにより、ジメチルベンゼンは管理物質であるキシレンの別名であることがわかる。この関連づけは、CAS番号のみによっても可能ではあるが、材料・製品メーカーから提示される材料組成データのCAS番号に間違いがある場合もあり、また、入力ミスも起こる可能性があるため、CAS番号だけに頼るのは必ずしも確実とはいえない。したがって、物質名称データベース117による検索による管理物質の確認を行うことが望ましい。
【0051】
上記の結果、塗装工程への物質の投入量はキシレンが36,000kg/月 、クロム酸亜鉛が1,200kg/月、クロム酸鉛が1,200kg/月ということが計算できる。この計算は図1に示すプロセス集計手段103により行う。
【0052】
つぎに、塗装工程においては、出荷製品の上にスプレーにより塗料を塗装することとすると、一部は乾燥して大気に放出されることになる(▲3▼)。その割合はキシレンの94%、クロム酸亜鉛,クロム酸鉛の0%であることを図1に示す排出係数データベース115より読み取る。従って、キシレンは毎月33,840kg 大気中に放出されているということが評価される。また同様に産業廃棄物
(▲4▼)としては、一月当たりキシレンが1,800kg 、クロム酸亜鉛,クロム酸鉛がそれぞれ120kg廃棄され、また出荷製品中にはキシレンが360kg、クロム酸亜鉛,クロム酸鉛がそれぞれ1,080kg の割合で含有されていることが評価できる。この評価計算は、図1に示す評価計算手段104により行う。
【0053】
さて、こうして得られた結果は、図1に示す総合集計手段105で集計されるが、この前の評価計算手段104において、集計すべき分類に分けておく必要がある。
【0054】
ここで、図4に示す管理物質データベース112から、キシレンはPRTR法第一指定物質であることがわかる。
【0055】
一方、クロム酸亜鉛は、まず「亜鉛化合物」に該当するが、この「亜鉛化合物」は図4に示す管理物質データベース112、及び図8に示す第一指定化学物質から、「亜鉛化合物(溶解性)」は管理物質(PRTR法第一指定物質)であることがわかる。
【0056】
しかしながら、図4に示す管理物質データベース112からはクロム酸亜鉛が管理物質かどうかは判断ができない。そこで、図7(a),(b)に示す化合物データベース113から、クロム酸亜鉛は「亜鉛化合物(溶解性)」に該当しないことが分かる。
【0057】
以上の結果に基づいて、報告書のデータが算出できるが、化学物質管理システムを利用するユーザーが使用する化学物質名称は、物質名称データベースに記録されているいずれかの名称を主として指定し使用できるように設定可能とし、ユーザーが実感を伴いつつ、使い勝手よく排出量の管理を行うことができる。
【0058】
例えば、上記のケースでは、計算過程におけるキシレンという物質名がユーザーにとってなじみの薄い名称であれば、別名であるジメチルベンゼンを使用するように設定可能である。
【0059】
一方、化学物質管理システムで作成する官庁提出報告書に記載する化学物質名称は、物質名称データベースに記録されている法で指定された化学物質名称で自動的に記載するようにでき、名称を間違うことがないようにできる。すなわち、ユーザーが通常使う名称はジメチルベンゼンとしておいても、報告書では、自動的にキシレンに変更して報告できるシステムとする。
【0060】
次に、図1に示す本発明の一実施の形態である化学物質総合管理システムにおける各手段の機能を図11から図14を用いて具体的に説明する。
【0061】
図11は、図1に示すデータ入力手段102の機能をフロー図で示したものである。データ入力手段102は資材購入帳票や在庫管理帳票から材料投入量、または購入量、或いは在庫量に関する情報を読み込む。
【0062】
図11では、一例として購買実績のレコードを読み込むことから始める(11a)。購買実績のレコードからまず材料の投入された日付を特定する(11b)。つぎに材料の質量を特定(11c)した後、発注者名などを利用して材料が投入されるプロセスを特定する(11d)。これらの一連の結果をプロセス投入量レコードとして結果データベース116に収納する。結果データベース116の元となるデータへリンク情報も併せて収納する(11e)。
【0063】
ここでリンク情報とは、データ入力手段102があらかじめ存在するデータレコード(元レコードと呼ぶ)を読み込み、これを情報処理して新たなデータレコード(結果レコードと呼ぶ)を生成した場合に、両者を関係付けることができる情報である。1対1の関係の場合はどちらかに相手方へのポインターを付加することで実現できる。また両者とも複数で、N対Nの関係がある場合は、元レコードに対しては全ての結果レコードへのポインターを、結果レコードに対しては全ての元レコードに対するポインターを付加する。
【0064】
図12は、図1に示すプロセス集計手段103の機能をフロー図で示したものである。
【0065】
結果データベース116からプロセスに投入された材料の質量を読み出す
(12a)。つぎに材料組成データベース111から上記材料の成分の組成を検索し、管理物質データベース112及び物質名称データベース117を参照して管理物質毎の取扱量に換算する(12b)。材料の投入量も質量(kg)の単位になっているので、質量パーセントで収納された成分組成と掛け算することにより、管理物質の取扱量を質量(kg)で得ることができる。最後に上記の結果を示す化学物質取扱量レコードと元となるデータへリンク情報も併せて結果データベース116に収納する(12c)。
【0066】
図13は、図1に示す評価計算手段104の機能をフロー図で示したものである。
【0067】
結果データベース116から物質取扱量レコードを取り出し、プロセスに投入された管理物質毎の質量を読み出す(13a)。つぎに排出係数データベース
115から管理物質毎にプロセスの排出移動係数を読み出す(13b)。さらに管理物質データベース112及び化合物データベース113から管理物質か否かを判断し、また、管理物質のなかで対象化合物については、対象物質換算率を呼び出す(13c)。つぎにプロセスの大気,水域,土壌への排出量、あるいは製品への移動量,廃棄物としての移動量を計算する(13d)。排出移動係数は、投入物質と排出移動物質の比率を示した数値であることから、投入量にこの係数を掛け算することで、各々の排出移動先への管理物質の排出移動量を計算できる。最後に上記排出移動レコードおよび読み込んだ元レコードへのリンク情報を結果データベース116に格納する(13e)。
【0068】
図14は、図1に示す総合集計手段105の機能をフロー図で示したものである。
【0069】
指定された集計範囲(例えば職場,部,課,ライン,工程,工場,事業所,事業グループ,地域など)に該当するプロセス群を特定する(14a)。つぎに指定された期間(例えば1999年4月1日から1999年5月31日)における上記プロセス群の排出移動レコードを結果データベースから読み出す(14b)。さらに指定された管理物質グループ(例えば環境庁が指定する管理物質)の排出移動レコードのみを取り出す(14c)。そして、これらのレコードを集計する(14d)。最後に集計結果のレコードおよび読み込んだ元レコードへのリンク情報を結果データベース116に格納する(14e)。結果データベース116に格納されているデータは、結果表示手段106により、内容検索,読みだし,様々な集計結果の表示が可能とされている。
【0070】
また、図1に示した調査支援手段101は、上記の各々のデータベースのレコード群から相互の共通するフィールドを関連付けて検索したり、名称やCAS番号などの識別子で検索する、或いはフィールド内のテキストについての部分一致でレコードを検索し、画面やファイルとして出力する機能を有する。
【0071】
ここで、調査支援手段101により物質名称データベース117を検索した場合のインターフェース(WWWブラウザの画面)の例を図15(a)(b)に示す。この例では、対象となる管理物質の別名の一覧が表示されている。
【0072】
なお、この図15(a)の15aに示す画面で、「追加」をクリックすると、図15(b)の15bに示すように該当する化学物質の別名を追加編集することができる。
【0073】
以上説明した本発明の一実施の形態である化学物質総合管理システムは、図
16に示すように広域ネットワークを利用したシステムとしも実現可能である。
【0074】
すなわち、統括管理部署に専用サーバ1101を設置し、図1に示した各データベースと各手段を全て格納する。社内ネットワーク1102をこの専用サーバに接続することにより、社内の様々な事業所における様々な部署の端末計算機
1103にて全ての機能を活用可能とする。また、社外の汎用データ提供サイト1105にデータベースを置き、インターネット1104を介してこれに接続することで、専用サーバ1101に格納しきれない広い範囲のデータや、頻繁に改訂されるデータについても活用を可能とするものである。
【0075】
次に、図17を用いて、図1で示した化学物質総合管理システムを利用したビジネス形態の一例を説明する。
【0076】
17aに示すアウトソーシング会社の専用サーバに、図1に示した各データベースを置き、インターネット等の広域ネットワーク網17bを介して化学物質管理企業17c,17dに接続することで、化学物質管理企業17c,17dはアウトソーシング会社17aの専用サーバに格納されているデータベースを用いて管理物質の排出移動量を算出することができる。
【0077】
なお、化学物質管理企業17c,17dがアウトソーシング会社17aの専用サーバに格納されているデータベースを用いて管理物質の排出移動量を算出するプロセスは、データベースがアウトソーシング会社17aの専用サーバに格納されているデータベースを利用すること以外は、図1を用いて説明した化学物質総合管理システムにおけるものと同様である。
【0078】
図18は、図17で示したビジネス形態の一例を実行するための処理フロー図である。まず、18aに示すように、化学物質管理企業は、コンピュータを介して契約先のアウトソーシング会社の専用サーバにインターネット等の広域ネットワーク網を介してアクセスする。もちろん、インターネットは一例であり、専用回線等を介してアクセスするものであってもよい。
【0079】
次に、18bに示すように、アウトソーシング会社17aは、アクセスしてきた化学物質管理企業17c,17dとの契約に基づき、サーバに格納されている各種データベースへのアクセスを化学物質管理企業17c,17dに対して許可する。
【0080】
そして、18cに示すように、化学物質管理企業17c,17dは、工程に投入される材料の種類と量を示すデータをコンピュータに入力し、アウトソーシング会社17aの各種データベースに基づいて、管理物質の排出移動量を算出することになる。
【0081】
ここで、アウトソーシング会社17aの持つデータベースには、物質名称データベースが含まれ、管理物質データベースにリスト化されている化学物質の和名,略称,英名,呼称、及び慣用名の少なくとも一つがデータベース化されている。つまり、物質名称データベースには、管理物質データベースにリスト化されている化学物質が持つあらゆる観点の名称が登録されているため、使用している化学物質をあらゆる名称から特定することでその化学物質が管理物質であるか否かの判断が確実に行えるのである。
【0082】
次に、図19を用いて、図1で示した化学物質総合管理システムを利用したビジネス形態の他の一例を説明する。
【0083】
19aに示すアウトソーシング会社の専用サーバに、図1に示した各データベースを置き、化学物質管理企業19c,19dからの依頼に応じて、当該化学物質管理企業の化学物質の管理を行う。
【0084】
つまり、化学物質管理企業19c,19dはインターネット等の広域ネットワーク網19bを介してアウトソーシング会社19aに接続し、化学物質の管理業務を依頼すると共に、管理に必要なデータのやり取りを行うのである。
【0085】
なお、この管理には当該化学物質管理企業が取り扱う材料或いは製品に含有されている化学物質とその排出移動量の報告書を作成することが含まれてもよい。
【0086】
また、アウトソーシング会社19aは専用サーバに格納されているデータベースを用いて管理物質の排出移動量を算出するプロセスは、図1を用いて説明した化学物質総合管理システムにおけるものと同様である。
【0087】
図20は、図19で示したビジネス形態の一例を実行するための処理フロー図である。まず、20aに示すように、化学物質管理企業19c,19dは、インターネット等の広域ネットワーク網を介して契約先のアウトソーシング会社19aにアクセスする。もちろん、インターネットは一例であり、専用回線等を介してアクセスするものであってもよい。
【0088】
次に、20bに示すように、アウトソーシング会社19aは、アクセスしてきた化学物質管理企業19c,19dとの契約に基づき、依頼に応じるか否か判断する。
【0089】
次に、20cに示すように、化学物質管理企業19c,19dから化学物質の管理に必要なデータを要求し、そのデータを基に、アウトソーシング会社19aのサーバに格納されている各種データベースを利用して当該化学物質管理企業の取り扱う材料或いは製品に含有されている化学物質の排出移動量の算出を行う。
【0090】
そして、20dに示すように、化学物質管理企業19c,19dに対し、化学物質の管理結果を報告する。
【0091】
以上説明したビジネス形態の一例において、化学物質管理企業は、予めアウトソーシング会社から提供を受けるサービス内容に関する契約を結び、その契約に基づいて受けたサービスの対価を支払う仕組みが考えられる。対価の支払いは、年間契約,月間契約、或いは受けたサービスによるメニュー契約がなどが考えられる。
【0092】
【発明の効果】
以上説明したように第1番目の発明によれば、化合物が「管理物質」であるか否かの判断が容易に行える化学物質総合管理システム及び化学物質総合管理方法を実現することができる。
【0093】
また、第2番目の発明によれば、化合物が「管理物質」であるか否かの判断が様々な場所で容易に行える化学物質総合管理システム及び化学物質総合管理方法を実現することができる。
【0094】
更に、第3番目の発明によれば、使用している化合物が「管理物質」であるか否かの判断が容易に行える化学物質総合管理システムを利用したビジネス形態を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態である化学物質総合管理システムの全体構成を示す図である。
【図2】MSDSデータベース110のデータ構造例を示す図である。
【図3】材料組成データベース111のデータ構造例を示す図である。
【図4】管理物質データベース112のデータ構造例を示す図である。
【図5】物性値データベース114のデータ構造例を示す図である。
【図6】排出係数データベース115のデータ構造例を示す図である。
【図7】(a)(b)は化合物データベース113に格納されている構造例を示す図である。
【図8】図4に示す管理物質データベース112の元データとなる排出量を報告すべき第1種指定化学物質のリストの一部を示す図である。
【図9】物質名称データベース117のデータ構造例を示す図である。
【図10】本発明の一実施の形態における情報処理の流れを説明するための図である。
【図11】データ入力手段102の機能を説明するためのフロー図である。
【図12】プロセス集計手段103の機能を説明するためのフロー図である。
【図13】評価集計手段104の機能を説明するためのフロー図である。
【図14】総合集計手段105の機能を説明するためのフロー図である。
【図15】図15(a)は物質名称データベース117を検索した結果のインターフェース(WWWブラウザの画面)の例を示す図であり、図15(b)はその内容を編集する場合の例を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態における化学物質総合管理システムの系統構成図である。
【図17】図1で示した化学物質総合管理システムを利用したビジネス形態の一例を説明する図である。
【図18】図17で示したビジネス形態の一例を実行するための処理フローである。
【図19】図1で示した化学物質総合管理システムを利用したビジネス形態の他の一例を説明する図である。
【図20】図19で示したビジネス形態の一例を実行するための処理フロー図である。
【符号の説明】
101…調査支援手段、102…データ入力手段、103…プロセス集計手段、104…評価計算手段、105…総合集計手段、106…結果表示手段、110…MSDSデータベース、111…材料組成データベース、112…管理物質データベース、113…化合物データベース、114…物性値データベース、115…排出係数データベース、117…物質名称データベース、1001a…物質名称一覧表示画面、1001b…物質名称メンテナンス画面、1101…専用サーバ、1102…社内ネットワーク、1103…端末計算機、1104…インターネット、1105…汎用データ提供サイト。
Claims (1)
- 材料或いは製品の成分組成情報をデータベース化した材料組成データベースと、
法律により管理を必要とする化学物質をリスト化した管理物質データベースと、
プロセスに関連付けて、排出移動先毎の投入化学物質と排出移動化学物質の重量比率データを排出係数データとして化学物質毎にデータベース化した排出係数データベースと、
前記管理物質データベースにリスト化されている化学物質のCAS番号に関連付けて、前記管理物質データベースにリスト化されている化学物質名称と該化学物質名称の少なくとも一つの別名称をデータベース化した物質名称データベースと、
プロセスで投入される材料或いは製品の投入量レコードを入力として、前記材料組成データベースより前記材料或いは製品を構成する化学物質を特定すると共に、特定した化学物質を、前記管理物質データベース及び前記物質名称データベースを参照して、管理物質かどうか特定すると共に、当該プロセスにおける管理物質毎の取扱量に換算するプロセス集計手段と、
前記プロセス集計手段で得られた管理物質毎の取扱量のレコードである物質取扱量レコードを入力として、前記排出係数データベースから管理物質毎に当該プロセスの排出係数を読み出し、管理物質の排出移動先毎の排出移動量を計算する評価計算手段と、
前記評価計算手段で得られたプロセス毎で排出移動先毎の管理物質の排出移動量のレコードである排出移動レコードを格納する結果データベースと、
指定された管理物質グループの排出移動レコードを前記結果データベースから取り出し、取り出した排出移動レコードを集計し、集計結果のレコードを、集計の元となる排出移動レコードへのリンク情報とともに、前記結果データベースに格納する総合集計手段とを有し、
化学物質管理システムを利用するユーザーが使用する化学物質名称は、前記物質名称データベースに記録されているいずれかの別名称を主として指定し使用可能とし、
前記結果データベースの内容に基づき作成される報告書に記載される化学物質名称は前記管理物質データベースに登録されている化学物質名称としたことを特徴とする化学物質総合管理システム。
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